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土壌ダニの鋏角の形態と機能

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Academic year: 2021

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(1)Mem . Schoo . lB .O .S .T .K i n k iU n i v e r s i t yN o .23: 67~ 72 (2009). 67. 土壌ダニの鉄角の形態と機能 水谷勝己. 1. 要旨 本研究は土壌ダニの食性の違いによって生ずる鉄角の形態と機能の関係をあきらかにしようとするも ので,そのことにより手術用マイクロ工具の新たな発想が得られなし、かとの期待に基づいている.対象と したダニは生物理工学部構内から採取した植物遺体を食べるササラダニおよび小虫を捕食するトゲ、ダニで、 ある.両夕、、ニの鉄角の電子顕微鏡観察,鉄角可動指をレバー系とみなしたときの力点と作用点の力比の評 価などから以下のことを得た.. (1) ササラダニの鉄角はベンチ状の外形を呈し,力比が 0.35程度と大きい.そして,不動指と可動指 の噛み合いは丸みを帯びた突起と凹みが対になっている.そのため対象物に弱く作用する時には つかむ,強く作用する時には砕くのに適している.. (2) トゲ、ダニの鉄角は鉄状で大きく口開くことが出来るが力比は 0.2程度と小さい.そして,可動指の 先端にかま状突起,中間部に幾つかの鋸歯状突起を持っている.そのため弱く作用する時には突 き刺し,強く作用する時にはせん断するのに適している. (3) 両ダニの鉄角に共通する特徴的なものとして,鉄角は左右が対になっていること,不動指と可動. 指に分かれていること,突起があることである.. 1 .緒論 節足動物門のクモ形綱に属する小さなダニは口器としての欽角を持っている. 1 ). 土壌に生息する種類に. あっては落葉や朽木などの植物遺体,線虫などの小虫,カピなどの菌類等を餌としており. 2 ). その鉄角は. 食性に適応して変化しっかむ・かむ・切る・吸うなどの機能を効呆的に発揮しているものと推察される. 例えば, 日本の冷温帯林の土壌に生息するササラダニ類について食性と鉄角の形状や大きさとの関係が金 子によって調べられ,植物遺体食者である大きな鉄角のマクロタイプ,菌類食者の小さな鉄角のミクロタ イプ,それら両方を食する鉄角寸法が中間のパンタイプやフラグタイプに分類されること,. ミクロタイプ. . 6以上の幅広形状 やフラグタイプとは異なりマクロタイプやパンタイプの鉄角可動指は幅/長の比が 0. で力強く作用するのに適していることが明らかにされている. 3 ). 上記のつかむ・かむ・切る・吸うなどの機能は手術に用いられる作業工具においても共通する機能である. 最近のマイクロサージエリーや内視鏡下手術で、は術者にとって使い勝手が良く,患者にとって低侵襲性で あることが求められており. 4 ). 小さくてつかむ・切るなどの機能を効果的に実現できる作業工具に対する. 要求が強い. そこで,生物学的見地のみならず,マイクロ作業工具のための新たな発想を得るのに役立つかもしれな いと考え,土壌ダニの食性の違いに着目して鉄角の形態や機能などに関する特徴を明らかにすることとし. た. 2 .土壌ダニの採取 近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)構内の雑木林から落葉,腐葉土などを含む堆積士を採取し, 原稿受付. 2 0 0 8年 1 0月 3 1日. 1.近畿大学生物理工学部. 4 9 6 4 9 3和歌山県紀の川市西三谷 9 3 0 生体機械工学科,干 6.

(2) . Memoirs of The School of B. O. S. T. of Kinki University No. 23 (2009). ツルグレン装置に入れることにより採取士内の小動物を抽出した.ツルグレン装置内では,採取士はふる いの上に置かれており,上方から照らされる白熱灯により光と熱を嫌う土壌内の小動物が下方に移動し, ふるいを抜けて捕集容器内に落下していく.容器内に捕集されたもののうち数多くの存在が認められた図 1および図 2の 2種のダニを調査対象とした.文献と照合すれば,図 lはササラダニ亜目のコソデ、ダニ(以. 下ササラダニと記す),図 2はトゲ、ダニ亜目のホコダニ(以下トゲ、ダニと記す)と推定される. 5 ). 甲虫の. ような外観のササラ夕、ニは落葉などの植物遺体を餌とするダニで,背側から見たところ鉄角は露出してい ない.また,触肢のようなものを有していなし、.これに対し,. トゲ、ダニは小虫などを餌とする捕食性のダ. ニで,鉄角は前方に露出している.そして,小角や触肢としての最前脚を有している.両ダニとも体長は O .5 m m " ' ' O .7 mmである.. ( b ) 腹側顎体部. ( a ) 背側全体. 図 1 採取したササラダニ. ( a ) 背側全体. ( b ) 横側顎体部. 図 2 採取したトゲ、ダニ 3 .鉄角の形態 採取したダニを実体顕微鏡下で、メスなどを用いて顎体部と胴体部に分離し,顎体部から鉄角を取り出し た.鉄角は左右が対になっている. 図 3にササラダニの右側鉄角を示す.この例で見られるごとく,ダニの可動指は下側に位置するもので ある.ササラダニで、は可動指・不動指の噛み合う歯部は鉄角の先端部のみで,その部は大きく内側に湾曲し ている.図 4に鉄角先端部の不動指と可動指の噛合を示す.片方が凸の部分は相手側が凹で, うまく噛み 合うようになっている.凸状の突起は丸みを帯びており鋭くはない. 図 5にトゲ、ダニの右側鉄角を示す.ササラダニのものに比べて細長く,鉄角の根元部,中間部,先端部 で、の様相はそれぞれ異なっている.図 6 ( a ) に先端部を ( b ) に中間部を示す.可動指の先端部は鎌の先 のようで,不動指とはかみ合わずその横に入り込ようになっている.また,中間部では鋸歯状の突起が根 元に向かつて角度をつけ,互いにすりあうように存在しているのが特徴的である.突起はササラダニのも.

(3) . のに比べて鋭い.. 図 3 ササラダニの右側鉄角. 図5. 図 4ササラダニ鉄角先端部. a )および中間部 ( b ) 図 6 トゲ、ダニの鉄角先端部 (. トゲ、ダニの右側鉄角. 4 .鉄角可動指のレバー系としての評価. ササラダニとトゲダニの幾つかの鉄角について,運動を行 う可動指に着目して寸法測定を行った.また,可動指は筋肉. ら ~'-r~. の収縮によって閉じる構造をしているため,図 7に示すカニ のはさみと同様なレバー系とみなして(ただし,カニでは可 動指は上側に位置する) 6). ι!. ~F;.. 力比ろ/~をレバーの長さ比. L/4 から F;/~=L/4 として求めた.その際 L 1 は容易に測定. できる根元部の幅 L。を用いて,幾つかの解剖の結果をもとに. 図 7 カニはさみのレバー系. L 0.9L 。として求めた.また,参考として先端から 3μm 1= ,. の位置で測定した幅を先端部の幅として求めた.これらの結果を表 1に示す.. 表 1 ダニ可動指の寸法 ササラダニ. トゲ、ダニ. 可動指の高さ ( L1) μ m. 22 ( 1 .8 ). 2 3( 4 . 8 ). 可動指の長さ ( L 2) μ m. 6 3( 2 . 3 ). 1 1 7( 7 . 9 ). 力比 ( L11 L 2). 0 . 3 5( 0 . 0 2 ). 0 . 2( 0 . 0 3 ). 可動指先端部の幅(匂) μ m. 8. 4( 0 . 9 2 ). 3 . 9( 0 . 9 6 ). 可動指根元部の幅 ( L )μm o. 2 5( 2 . 0 ). 試料数. 8. 26 ( 5 . 3 ) 1 6. ( )内数値は標準偏差を示す..

(4) 0. Memoirs of The School of B. O. S. T. of Kinki University No. 23 (2009). また,ダニの鉄角は左右が対になっているがその隙聞はトゲ、ダニで、 5μmから 10μm程度であり狭いも のであった.. 5 .想定される鉄角の機能の特徴 ササラダニで、は力比が 0.35とトゲ、ダニのものに比べて大きい.また可動指の先端部の幅も比較的大 きい.これらと凹凸が互いに噛み合う歯部の形状とをあわせて考えると,ササラダニの鉄角は落ち葉など 硬くてもろいものを力強く噛み砕くのに適したものといえる. トゲ、ダニで、は大きく口開くことが出来るが. 力比は 0.2と小さい.しかし中間部を作用点とする場合で. はより大きな力比を得ることが出来ること,歯の噛み合いは鋭いため圧力としては高いことが予想される ことから,対象物を突き刺す,部分的には鉄のようにせん断するのに適したものであるといえる.そのよ うなことを示す例として,図 8に小虫の一部を突き刺している鉄角を,図 9に鉄角中間部の突起のある部 分の断面を示す.突起部はせん断鉄の刃状となっている.. 図 8 小虫の部分を突き刺すトゲ、ダニ鉄角. 図 9 トゲダニ鉄角突起部断面. 6 .鉄角と手術用マイクロ紺子,男万との比較. 1 4 哩. 3 0阻. 子刀 釦勢. シャフト部. ( a ) ホルダー. エンドグリップ. アリゲータジョウ. ハンドノレ部. 1 3 5 。ピック用. ( b )釦子. ( c )英刀. 図 10 硝子体手術用マイクロ釦子,努刀 ( D O R C社製).

(5) 7 1. 調査したダニの鉄角は 0 . 1m m 程度かそれより小さい.小さな器具が使われている手術の代表的な例とし て眼球の硝子体手術がある.硝子体およびその奥にある網膜に異常がある場合,強膜に穴をあけて手術器. . 5皿で、 2 5ゲージ ( 2 5 G )と呼ばれ, 具を硝子体に挿入し治療を行うものである.その穴の現在の最小径は 0 25Gの器具はそのような穴に適合するものとなっている.ここでは, 25Gの種々の器具のうちダニ鉄角と 機能が匹敵すると考えられる釦子と男万を取り上げることにした.図 10にオランダ閃RC社(日本アールイー メディカノレ杜)のものを例示する. 7 ). これらはホルダーのハンド、ル部を摘むと中空のシャフトが前方に移動し,そ. の先にあるを甘子や努刀が閉じる構造になっている. 以下に,ダニの鉄角と釦子,勇刀との比較検討を行う. まず,全体的形状に着目する.ここに挙げた鉛子や勇刀は細長く,幅広・湾曲形状のサダ、ラダニで、はなく, トゲダ ニに類似したものである.これは眼球という軟らかしものを対象としているため大きな力を必要としないこと,材 料が十分な強度を持つ金属であることによるものであろう.骨のような硬いものを対象とするのであれば力の点か らはササラダニタイプのほうが適している. 次に,歯の形状に着目する.釦子はつかむことに特化し,先でっかむ,広くつかむ,角度をつけてつかむなどの 違いはあるが同じ突形状の対向部が接触するようになっている.また,郭刀は切ることに特化し,直,直角,曲な. W 甘 ど刃形状の違いがあるが対向部がすれ違ようになっている.これらに対し,ササラダニは対向部が噛み合うので. 子と似ているが,噛み合いは凹と凸であるため弱く作用すればっかむで、あり,強く作用すれば砕くとなる.また, トゲ、ダニは突起部とそれのない部分で機能が異なり,突起部が弱く作用すれば突き刺し,強く作用すれば切るとな り,突起を持たない部分はつかみとなるであろう.いずれのダニの場合においても機能は一つに特化していない. 上記の突起部による突き刺しは浮遊物を捕まえるのに有効であると思われる. また,可動指と不動指に分かれていることに着目する.このことによって,指でお箸を使うときのように固定側 を目標にあわせればよいので位置決めが容易である. さらに,鉄角が左右で、対になっていることに着目する.左右同時に動くだけであれば作業の安定性が増す程度で あるが,別々に動かすことが出来るのなら複雑な作業を行わせる可能性がある.. 7 結論 調査したササラダニとトゲ、ダニの鉄角の形態と機能に関して得られた主な点は以下のごとくである.. (1) ササラダニの鉄角はベンチ状の外形を呈し,力比が 0 . 3 5程度と大きい.そして,不動指と可動指 の噛み合いは丸みを帯びた突起と凹みが対になっている.そのため弱く作用するとつかむ,強く 作用すると砕くのに適している.. (2) トゲ、ダニの鉄角は鉄状で大きく口開くことが出来るが力比は 0 . 2程度と小さい.そして.可動指の 先端にかま状突起,中間部に幾つかの鋸歯状突起を持っている.そのため弱く作用すると突き刺 し,強く作用するとせん断するのに適している.. (3) 両ダニの鉄角に共通するものとして,鉄角は左右が対になっている,不動指と可動指に分かれて いる,突起のあることが特徴的である.. 謝辞 本研究は,基礎機械工学科平成 12年 度 卒 業 研 究 生 加 藤 久 棋 氏 , 平 成 13年 度 卒 業 研 究 生 掛 橋 秀 伸氏の卒業研究などをもとにまとめたものであり,両氏の努力に感謝する.また,マイクロ釦子,努万の 資料はアーノレイーメデイカル株式会社からし、ただし、た.記して苗憶を表す..

(6) M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN O . 2 3( 2 0 0 9 ). 7 2. 参考文献 ( 1 ) 江原昭三,真梶得純 ( 1 9 9 6 ) 植物ダ ニ学, p p . 1 2 0 ,全国農業教育協会. F. ( 2 ) 青木淳一,渡辺弘之 ( 1 9 9 5 ) 士の中の生き物, p p . 8 4 9 4,築地書館. ( 3 ) Nobuhiro Kaneko ( 19 8 8 ) Feeding Habits and C h e 1 i c e r a 18 i z eo fO r i b a i t i dMites i nC o o 1 e v .Eco l .8 0 1,2 5 ( 3 ),3533 6 3 . Temperature8 0 i 1 si nJapan,R 司. 2 0 0 3 ) 微細放電加工によるマイクロ手術器 ( 4 ) 中須賀元,山本明,山岡正和,河田耕一,佐藤健夫 ( 具 , 2003年度精密工学会春季大会学術講演論文集, p . 6 7 .. ( 5 ) 青木淳一 ( 1 9 9 9 ) 日本産土壌動物, pp.173-436,東海大学出版会. ( 6 ) Warner,G.F.W.andJones,A . R .( 1 9 7 6 ) LeverageandMuscleTypei nCrabChe1ae,J .Zoo , . l Lond.,180,5 7 6 8 . ( 7 ) ア ー ル イ ー メ デ ィ カ ノ レ 社 (2004) ド ノ レ ク 社 マ イ ク ロ イ ン ス ツ ル メ ン ツ カ タ ロ グ , h t t p : / / w w w . r ・ e ・m edica l .c o . j p .. 英文抄録. FormandFunctionofCheliceraofSoilSpiderMite KatsumiMizutani1. Formso fc h e 1 i c e r ao ftwokindso fs o i 1s p i d e rm i t e swerei n v e s t i g a t e dbeingf o c u s e dont h ef u n c t i o n basedont h e i rf e e d i n gh a b i t s .Tw okindso fs p i d e rm i t e swereo r i b a t i dmiteandmesostigmatidmite which were c o l l e c t e d from t h es o i 1i nt h ef o r e s ti nK i n k iU n i v e r s i t yWakayama Campus. 8EM micrographso fbothm i t e ss u g g e s tt h a t( 1 )c h e 1 i c e r ao fo r i b a t i dmitehasanappearancel i k ec u t t i n g : 0 00 . 3 5 )andhencec o u 1 dp o w e r f u l l ycrunchhardmatters1 i k e p 1 i e rwithhighmechanica1advantage( f a l l e n1 e a v e,( 2 )c h e 1 i c e r ao fmesostigmatidmitehass l e n d e rarmswithsharpp r o t r u s i o n si nt h e i rt i p s andmidd1ep a r t sandhencec o u 1 dp i e r c eandc u tr e 1 a t i v e 1 y1 a r g es o f tmatters1 i k enematodei ns p i t eo f i t s10wmechanica1advantage( : 0 00 . 2 ) . 1 .D e p a r t m e n to f M e c h a n i c a lE n g i n e e r i n ga n dB i o m i m e t i c s, K i n k iU n i v e r s i t y , W a k a y a m a649-6493, J a p a n.

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参照

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