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研究所プロジェクト 平成26年(2014)年度 事業報告 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 利用統計を見る

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研究所プロジェクト 平成26年(2014)年度 事業報告

東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法

の関係

雑誌名

アジア文化研究所研究年報

49

ページ

272-214

発行年

2014

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00007399/

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平成 26(2014)年度 事業報告

東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と

慣習法の関係

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

平成 26 年度の研究概要

本年度は、 本研究計画の最終年度であり、東アジア各地域における慣習法と制定法の関係に関す る実地調査、東アジアのうち特に中国の現代法と慣習に関する関係について現地の研究者を招聘し ての共同研究、及び慣習の制定法化を視野に入れた論文執筆という三つの側面から研究を進めた。 研究対象については、現代における慣習を重点的研究対象の一つとしており、 特に民事法、商事法 について地域間の相違を念頭に置きながら研究を進めた。 海外調査は、5 月に韓国ソウル市においてクレジット決済の方式及び金融、保険に関する慣習を 対象として、現地の諸機関を訪問して行った。これには、後藤武秀、李芝妍、 深川裕佳が参加した。 数年来韓国法の状況について共同研究を行っている漢陽大学の李哲松教授(現建国大学教授)の紹 介により、 保険会社、銀行等の調査を行うことができた。第 2 回目の調査は、 9 月に台湾台北市に おいて行った。これには、後藤武秀、李芝妍、 深川裕佳が参加した。台北市での調査は、公平交易 委員会、台湾銀行資料室等で行ったが、 これには台湾大学の王泰升教授、蔡英欣副教授及び台北大 学の林超駿教授の援助を仰いだ。また、李芝妍と深川裕佳は初めての台湾における調査であったこ とから、台湾大学法律学院を正式に訪問し、図書館等諸施設を参観し、日本では閲覧困難な雑誌文 献を収集することができた。 海外の研究者を招聘しての共同研究は、『東アジアにおける会社を巡る慣習と法制度』を共通課 題として、8 月 30 日に東洋大学白山校舎 5301 番教室において開催された。招聘した研究者は、 中国清華大学法学院の朱大明副教授(現中国北京大学国際法学院副教授)、アモイ大学法学院の劉 永光副教授及び福州大学法学院の李秀文助理教授である。いずれも会社法の研究者であり、中国の 会社法規定とその運用の実際との差異について多様な観点から検討することができた。当日の報告 課題は以下の通りである。なお、本共同研究者の側からは、 井上貴也が報告を行った。 「会社法における定款自治」李秀文 「2014 会社法改正からみた企業統治の特徴」井上貴也 「中国における取締役会に関する法制度と実際の慣習」劉永光 「中国と日本の会社法の交錯」朱大明 研究成果発表としての論文執筆は、各自がそれぞれの研究課題に沿って行い、その一部は、本誌 に掲載した。 慣習法に関する研究は、総じて歴史的研究と考えられがちであり、特に東アジア社会では、近代 法成立時に各地域固有の伝統的慣習規範と西洋近代法との対立、同化過程として描かれることが多 かった。本研究も、そのような研究課題を一部において推進してきたが、しかしそれに止まること なく、現行法において頻繁に改正される会社法関係の慣習と立法化の関係、及び成文法規と現実と の乖離について研究することができたのは、従来の研究を一歩超えるものと評価できる。

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劉  永 光

一 はじめに 二 中国現行会社法上の規定 三 実態調査から見た取締役会運営の慣習 四 結語 一 はじめに 2005 年に、日中両国ともに会社法に対して大きな改正を行なった。その後、2014 年に、日本 会社法は監査役会の機能強化、多重代表訴訟制度の新設等に関して若干の改正が行なわれた1。同 じ年に、中国会社法でも会社の資本制度に関して改正が行なわれた2。これら一連の改正の効果の 如何は、今後さらなる注目を要するであろう。 両国の会社制度は経済のグローバル化に伴い規定の上では類似点も見受けられるところである が、今回は、中国における取締役会に関する法制度と実際の慣習について検討する。 二 中国現行会社法上の規定 中国現行会社法上、会社の種類には、有限責任会社と株式会社のみ存在する。日本会社法と比べ て、会社の種類については中国会社法はその規制がまだ厳しい。 取締役会の設置については、中国会社法第 50 条の定めによれば、小規模な有限責任会社を除いて、 原則としてすべての会社には取締役会の設置が義務付けられている。ただし、上場会社については、 「中国証券法」及び中国証券監督委員会から出された数多くの「規則」等により厳しい規制が課さ れている。紙面の関係で、以下では主に有限責任会社と非上場株式会社に焦点を絞って検討するこ とにする。 (一)取締役会の構成について 1 取締役及びその代表者の選任について 一般の取締役は株主(総)会により選出される(中国会社法 37 条 1 項 2 号)。ただし、2 つ以 上の国有企業又は 2 つ以上のその他の国有投資主体が投資して設立した有限責任会社は、その取 締役会の構成員に会社の従業員代表者をいれなければならない。これは、ドイツの「共同参与決定 法 Mitbestimmungsgesetz」に倣ったものといわれている3。その他の有限責任会社は、取締役会 の構成員に会社の従業員代表者をいれることができる。取締役会の従業員代表者は、会社従業員が 従業員代表者大会、従業員大会又はその他の形式を通じて民主的選挙によって選出される(中国会 社法 44 条)。

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中国における取締役会に関する法制度と実際の慣習 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 株主の人数が比較的少ない又は規模が比較的小さい有限責任会社は、執行取締役を 1 名置き、 取締役会を設置しないこともできる。執行取締役は、会社の総経理を兼任することができる(中国 会社法 50 条)。執行取締役の職権は、会社定款により定められる。 原則として、有限責任会社の取締役会は 3 名から 13 名までの取締役により構成される(中国会 社法 44 条)。 これに対して、株式会社の取締役会は 5 名から 19 名までの取締役により構成される(中国会社 法第 108 条)。その構成員については、特に厳しい条件を設けていない。 実務上、有限責任会社の取締役会の人数は 3 名が通例で、株式会社においては、その業種にも よるが、7 名から 9 名までが一般的である4。しかし、いずれの会社においても、取締役会会長(中 国会社法では「董事長」という用語を使用する)を 1 名置く必要があり、また取締役会副会長(中 国会社法では「副董事長」という用語を使用する)を置くこともできる。 会長、副会長の選出方法は会社の定款が定めるところに従う(中国会社法 45 条)。副会長の具 体的な人数について会社の定款に従い、通常 1 名から 2 名と定める。事実上、国有独資有限責任 会社を除いて、有限責任会社には、副会長を設置するのは、極く稀である。 中国会社法第 13 条の定めによれば、会社の定款により、取締役会会長を会社の法定代表者とす ることができる。定款が総経理を法定代表者とする場合、総経理が法定代表者を務める。法定代表 者制度は、単独代表制で恐らく日本法に馴染まない制度だと思われる。2005 年改正前の旧中国会 社法では、取締役会会長は当然に法定代表者となる。しかし、実務上取締役会会長による違法行為 が多発し、その責任追及が困難なため、2005 年会社法改正の時に、総経理も法定代表者になるこ とができると改めた。ただ、法律上の問題として、総経理は取締役会により選任され(中国会社法 49 条)、株主総会によって選任されるものではないため、その妥当性に疑問がないわけではない。 取締役会会長が法定代表者を務めるとき、取締役会会長は会社の定款に基づき、会社を代表する 権利を有する。取締役会会長以外の自然人が会社を代表する場合、会社から授権を得なければなら ない。中国の会社法において有限責任会社取締役会会長の職権が明らかにされていないので、会社 の定款に基づき、会社を代表すること以外に、取締役会会長が行使できるその他の職権も会社の定 款で明記すべきである。ただ、実務上ほとんどの会社は、その設立段階で取締役会会長の職権につ いて定めていない。その大きな要因の一つには、設立段階で登記機関から提供された「簡易な定款」 をそのままに使用したことがある。その「簡易な定款」の内容は、ほとんど現行会社法の条文の丸 写しであり、会社は、自分自身の具体的な状況に基づいて「定款」を作成するとはしない。もう一 つの要因は、恐らく設立コストと関係があると思われる。このことは、日本と違って、中国におい ては、会社を設立する際に、発起人がその設立費用を節約するため、ほとんど弁護士等法律専門家 に登記手続の依頼をしないのが実情である。 2 取締役の任期について 取締役の任期は会社定款の定めによるが、任期は 1 期 3 年を超えることはできない。取締役の 任期が満了し、連続して選出された場合は再任することができる。 取締役の任期満了時にすみやかに改選しない場合、又は取締役の在任期間中の辞任により取締役 会構成員が法定人数を下回った場合は、改選により選ばれた取締役が就任するまでは、元の取締役 はなおも法律、行政法規及び会社定款の規定に従い、取締役の職務を履行しなければならない(中 国会社法 45 条)。 (二)取締役会の職権について

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 中国会社法第 46 条、第 108 条の規定によれば、取締役会は株主(総)会に対し責任を負い、次 のような職権を行使する。 1 株主(総)会の招集権 中国会社法第 46 条 1 項 1 号は、まず取締役会の権限として株主(総)会の招集権を規定してい る。すなわち、取締役会は、「(1) 株主総会会議を招集し、かつ株主総会で業務報告」を行う。取 締役会会長がその会議を主宰する(中国会社法 40 条、101 条)。実務上、取締役会会長による「主 宰」は、いかなる法的効力を持つのかが問題となる。例えば、2004 年 1 月に発生した上場企業で ある「宏智科技」の株主総会決議事件は、まさにそれが問題の焦点となった。この事件では、株主 が二つの派閥に分裂し、そして各自がそれぞれの場所で株主総会を開いた。結局、一方の株主総会 では、取締役会会長がその会議に出席し、会議を主宰した。しかし、他方の株主総会には、取締役 会会長が出席さえしなかった。そこで取締役会会長が主宰しなかった株主総会決議の法的効果につ いて、争いが起きた5 2 業務執行権限 中国会社法第 46 条 1 項 2 号以下では、取締役会の具体的な業務執行権限について定めている。 すなわち、取締役会は、「(2) 株主総会の決議を実行する。(3) 会社の経営計画及び投資案を決定 する。(4) 会社の年度財務予算案及び決算案を作成する。(5) 会社の利益配当案と欠損補填案を作 成する。(6) 会社の登録資本金の増加又は減少案及び社債発行案を作成する。(7) 会社の合併、分 割、解散又は会社形態の変更案を立案する。(8) 会社の内部管理機構の設置を決定する。(9) 総経 理の選任又は解任及びその報酬事項を決定し、かつ総経理の指名に基づき会社の副総経理、財務責 任者の選任又は解任及びその報酬事項を決定する。(10) 会社の基本的管理制度を定める。」また、 法律に違反しない限り、会社定款をもって、取締役会の上述した職権のほかその他の職権について も定めることができる。例えば、他人のために担保を提供する権限(中国会社法 16 条)、会社資 産を他人に貸付ける権限(中国会社法 148 条)など。 (三)取締役会会議の招集、議事方式及び議決について 中国会社法第 47 条の定めによれば、取締役会会議は取締役会会長が招集及び主宰する。しかし 取締役会会長が職務を履行できない、又は職務を履行しない場合は、副取締役会会長が招集及び主 宰する。副取締役会会長が職務を履行できない、又は職務を履行しない場合は、半数以上の取締役 が共同で推薦する 1 名の取締役が招集し、主宰する。 取締役会決議の議決は、1 人 1 票により行う(中国会社法 48 条 3 項、111 条 2 項)。取締役会 は、議事の決定について議事録を作成し、会議に出席した取締役は、議事録に署名する(中国会社 法 48 条 2 項、112 条 2 項)。取締役会の議事方式及び議決手続きについて会社法に定めのある場 合を除き、会社定款の定めによる(中国会社法 48 条 1 項)。即ち、各会社が自身の状況を勘案し た上で決定する。実務において、取締役会会議は定例会と特別会議に分けられ(中国会社法 110 条 1 項、2 項)、決議事項はその重要性の差によって、特別決議と普通決議があり、それぞれ違う 程度の多数賛成票が求められている。また、取締役が取締役会会議招集を提案できるかどうか、取 締役会会議開催の通知はいつ送るべきか(たとえば会議開催 10 日前までに取締役会全員に知らせ る)、並びに通知発行の方式については、会社の定款によって定められる。なお、取締役が事前準 備できるように、会社は取締役会会議開催の時期、場所及び決議事項などの内容も通知しなれけれ

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中国における取締役会に関する法制度と実際の慣習 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 ばならない。通常なら、取締役は自ら取締役会会議に出席しなければならないが、出席できない場 合、会社経営決定の非公開性から、その他の取締役に委託して、かわりに出席してもらう。ただし、 委任状には授権の範囲を明記しなければならない。また、かかる決議事項が取締役と利害関係があ る場合、当該取締役は議決に参加してはならない、他の取締役に議決を委任することも不可である。 (四)取締役会決議の法的効果 中国会社法第 22 条 1 項の規定によれば、取締役会の決議内容が法律、行政法規に違反した場合、 当該決議は無効となる。取締役会会議の招集手続き、及び議決方式が法律、行政法規または会社定 款、もしくは議決内容が会社の定款に違反した場合、株主は決議が出された日から 60 日以内に人 民法院へ取消を請求することができる(同条 2 項)。会社がすでに取締役会の決議に基づき、変更 登記を済ませた場合、人民法院がかかる決議を無効、または取り消しした後、会社は会社登記機関 に変更登記の取り消しを申請しなければならない(同条 4 項)。 有限責任会社の取締役が取締役会の決議に対しどのような責任を負うかについて会社法には規定 されていない。しかし、株式会社の取締役の取締役会の決議に対する責任については、明文をもっ て定められている。即ち、取締役会の決議が法令または会社定款に違反し、会社に損失をもたらし た場合、反対の意思を明確に表明しかつそれを議事録に記載してある取締役を除き、決議に参加し た取締役は会社に賠償の責任をとらなければならない(中国会社法 112 条 3 項)。筆者が思うには、 この規定は有限責任会社の取締役にも適用すべきであろう。 三 実態調査から見た取締役会運営の慣習 今回は、厦門市内のある商工会の協力をえて 100 社に実態調査を施行した。その回答を分析し た結果、次のことが分かった。 まず、取締役の選任について、ほとんどの場合、大株主たちは、その持ち株の割合によって取締 役のポストを決める。自らかまたはその配偶者、親戚を取締役として選任する。今回の調査では、 極端な例として、次のようなこともあった。即ち、某林氏の族長が 14 もの林氏の後輩子孫が経営 する会社から取締役会会長のポストを依頼され、選任されたことがあった。この 75 歳を過ぎた族 長を取締役会会長に選任したのは、恐らくその族内における影響力を考慮したのであろう。とくに 家族企業の場合、これは、一種の慣習とも言えるであろう。調査からもう一つ分かったのは、多く の場合、取締役は、各大株主または利益関係者の代表として選出されるということである。これは 有限責任会社に限らず、株式会社についても当てはまる。例えば、今回調査した上場企業である福 耀玻璃株式会社を例にすると、会社の発行済み株式総数は 200,298.63 万株で、その創業者たる曹 徳旺氏が実際に支配した株式の割合は、33.98%に達している。そして曹氏は自ら代表取締役にな り、その子をも取締役会に送り込んだ6。このように、各取締役は、各大株主または利益関係者の 代表として選出されたため、株主間に利益をめぐる紛争が生じた場合、本来法が期待している取締 役会全体としての機能は発揮し得なくなる。 次に、取締役会の議決について。取締役会の議決の独立性が欠けている。議決過程においては、 取締役会会長の権限が大きすぎ、ほとんどの場合には、取締役会会長または大株主の利益を代表す る取締役によって可決される。そのためか、社外取締役制度を設けている会社においても、事実上 社外取締役が会議に参加しないケースは、相当数に上る。2004 年に上海証券取引研究センターが すでに株式会社を対象に調査を行ったが、その結果は 10 年経った今回の調査結果と基本的には合

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 致していると思われる。 第三に、取締役の人数について、今回の調査では、社外取締役を除けば、業務執行取締役の数は 3 名が最も多数であるということがわかった。この数字は多分今回の調査された会社の数が一定の 量に達していないことに関連していると考えられる。2006 年中国全国民営企業第 7 回サンプル調 査データによれば、中国では、63.5% の民営企業が取締役会という会社機関を設置し、その取締 役会の平均人数は、6.28 名である。これに対して、上場企業の取締役会の平均人数は、9.36 名で あり、その社外取締役の平均人数は、2.97 名であるとされている。 第四に、取締役の任期について、法が 1 期 3 年としているが、小規模会社では基本的には、株 主総会も開催せず、取締役の再任手続もしないでそのまま延長する。 第五に、一部の会社では、取締役会は株主総会を一度も招集せず、取締役会の議事録も存在しな い。その理由は、取締役はみな株主であり、取締役会会議は同時に株主総会でもあることによる。 四 結語 以上述べたように、中国においては、法制度と実際の慣習には、まだ若干の隔りが存在している。 次回法改正の時に、慣習の中の合理的なものを法に採り入れるべきであり、また会社も法の定めに 従って運営すべきであると考える。 (中国厦門大学法学院副教授) 本稿は、筆者が 2014 年 8 月 30 日に東洋大学アジア文化研究所の公開セミナーで報告したものを基に加 筆、訂正して完成したものである。 会社法の一部を改正する法律案、http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html、2014-6-27. http://www.gov.cn/zwgk/2014-02/18/content_2611545.htm、2014-8-15. 石少侠「会社法」、吉林人民出版社 1996 年、248 頁。 鄭江淮、崔恒虎、瀋春苗「中国上場会社取締役会の統治報告(2009)」、「取締役会」誌 2010 年 5 月号、48 頁。 その関連報道について、http://it.sohu.com/2004/01/17/44/article218654497.shtml、2014-8-10. http://biz.163.com/40319/4/0HRHTF4400020QEU.html、2014-8-10. を参照。 http://stockdata.stock.hexun.com/2009_sdgd_600660.shtml、2014-11-15. 1 2 3 4 5 6

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

清末民初における志田鉀太郎の中国商法に対する貢献

朱  大 明

一 はじめに 二 志田鉀太郎とは 三 志田鉀太郎の立法モデルと後世への影響 四 おわりに 一 はじめに 中国においては、1904 年に「大清商律」が制定された。この「大清商律」は中国の初めての商 法典である。しかし、「大清商律」は僅か 9 ヶ月で制定されたものであることもあり、商人階層の 意見を吸み取っておらず、外国の条文がそのまま導入されたので、中国の商慣習に合わないところ が多いと厳しく批判された。そのような背景のもとで、1906 年、当時の中国清国政府は「大清商律」 の改正を決定した。「大清商律」改正のため、清国政府は志田鉀太郎を修訂法律館の外国人顧問と して招聘した。志田鉀太郎の主導のもとで、「大清商律改正草案」が制定された。この「大清商律 改正草案」は清国の滅亡によって立法までには至らなかったが、中国における初めての比較法的な 手法による商法典として、その後の手形法、海船法等を含め、中国商法の発展に大きな影響を与え たと言われている。 本稿では、志田鉀太郎という人物を紹介し、志田鉀太郎が大清商律改正草案を主導することによっ て中国商法に対してなした貢献を歴史的な観点から検討したい。 二 志田鉀太郎とは 志田鉀太郎は、1868 年に生まれた。日本の明治時代の商法学者である。彼の専門は主として会 社法、保険法である。1899(明治 32)年の商法典の成立に大いに貢献した。 1899(明治 32)年の日本商法典の改正に際し、日本政府は商法典の草案作成のために「法典調 査会」を設置した。志田鉀太郎は商法典修正案の補助委員として任命された。法典調査会におけ る商法典の改正メンバーとしては、岡野敬次郎、田部芳、梅謙次郎の 3 名が商法典修正案の起草 委員となり、志田鉀太郎と加藤正治の 2 名が商法典修正案の補助委員となり、合計 5 名であった。 法典調査会は 1896(明治 29)年に商法典改正草案を作成した。同時に、「商法修正理由書」を発 行した。志田鉀太郎は「商法修正理由書」における会社法の部分を執筆した。この商法典改正草案 は 1899(明治 32)年に可決された。成立した商法典はいわゆる新商法典と呼ばれ、現在の日本 商法典の源でもある。 その後、志田鉀太郎は東京商科大学、東京大学、明治大学等の教授を経て、1940(昭和 15)年、 明治大学総長に任じられ、1951 年に逝去した。

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 一方、当時の中国政府である清国政府は、法律草案を起草するために、1904 年 5 月 15 日に専 門機関である修訂法律館を設置した1。修訂法律館は先進国の法律を参照するために、多くの外国 書籍を翻訳し2、しかも、先進国の法律を学習するため、修訂法律館の中に外国人顧問というポス トを設置した3。多くの外国の法律専門家を招聘し、中国の法律制定作業を担当させた。志田鉀太 郎は商法分野の専門家として招聘され4、中国の商法典である「大清商律」の改正を主導すると同 時に、1904 年に北京に設立された京師法律学堂5において教鞭をとり、商法の講義を担当し6、中 国人学生の教育を行った7 志田鉀太郎が清国に向け東京を出発したのは、1908 年 9 月 9 日であった。北京到着後、1908 年 10 月に修訂法律館の外国人顧問に着任した8。志田鉀太郎の主導の下で「大清商律改正草案」 が完成した。彼は自ら大清商律改正草案の中の「商総則」と「商行為」の二編を執筆した9。大清 商律改正草案の制定において志田鉀太郎が中核的役割を果たしたことから、中国法制史においてこ の大清商律改正草案は「志田案」とも呼ばれている10 三 志田鉀太郎の立法モデルと後世への影響 (一)志田鉀太郎と中国民商法の立法モデル論争 民商法の立法モデルは民商法制定の時に、まず考えなければならない問題である。中国において も、100 年前に清国政府が民商法を制定する際に、どのような民法、商法の立法モデルを採用す べきか、換言すれば、中国は「民商分立」の立法モデルを採るべきか、それとも「民商合一」の立 法モデルを採るべきかについて非常に激しく議論された。民商法の立法モデルについては、志田鉀 太郎は「民商分立」の立法モデルに対し明確に反対する意見を述べている。但し、志田鉀太郎は当 時の中国にとっては、領事裁判権を回収することも民商法を制定する一つの重要な理由となること から、法律の完備を表明するために、中国が商法典を制定しなければならないことは実際にはやむ を得ないことであるということも指摘していた11。また、当初、梅謙次郎を招聘する提案においては、 梅謙次郎が民商合一の立法モデルに賛成であることがその招聘する理由の一つであると書かれてい た12。結局、当時、清国の修訂法律大臣沈家本等の政府要員が民商合一の立法モデルに反対する意 見を持つため、清国政府は「民商分立」の立法モデルを採ることになったにもかかわらず13、志田 鉀太郎の中国民商法立法モデルに対する意見が多くの書籍に引用されたことからも、当時、彼の見 解は大きな影響があったと推測できる。 その後、「民商分立」立法体系は中華民国建国初期(中華民国北京政府)においても支配的地位 を占めた14 1929 年からの中国初めての会社法の制定の過程においては、民商法の立法モデルについて再び 議論がなされた15。「民商合一」の立法モデルを採ることに対して、多くの反対意見があったにも かかわらず16、当時、中華民国政府の要職にあった胡漢民(当時の立法院院長)及び林森(当時の 立法院副院長)の主導のもとで、1929 年 6 月に、中華民国政府の中央政治会議 183 回会議において、 「民商法統一の法典を制定する」との決議がなされたことにより17、民国政府は民商法立法の方針 を転換して「民商合一」の民商法立法モデルを採用した18 中華民国政府(南京政府)は「民商合一」の立法モデルを採ったとはいえ、具体的な立法の制度 設計については、会社法を民法典の中に規定するというスイスの立法モデルを採らず、単行法の形 で会社法等の商法部門法を制定した19。つまり、「民商合一」の立法モデルのもとで、商法典が存 在せず、会社法等は民法の特別法として位置づけられるものであった。このような、「民商合一」

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清末民初における志田鉀太郎の中国商法に対する貢献 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 のもとで、会社法等が特別法として定められる立法モデルはスイス法とも異なり、ドイツ法、日本 法とも異なり、中国法により創り出された特別な立法モデルであると言われる20。この法制度設計 の理由は、民法典の改正が困難となり、一方会社法や手形法等の商法分野の法律は社会的変動が多 く、単行法として定めておけば社会の事情に合わせて改正し易いという利点があることである21 このような中国の民商法の立法モデル及び「民商合一」の立法思想は、その後の中国の民商法の 発展に対し重大な影響を与えた22。今現在、約 80 年が経ったが、このような立法モデルは依然と して中国で引き継がれ、「民商合一」の法理論も未だに支配的な地位を占めている23 (二)「大清商律改正草案」の中国商法発展に対する影響 「大清商律改正草案」(志田案)は総則、商行為法、会社法、海船法、手形法の五編により構成さ れ、全部で 1008 条からなる24 以下では、「大清商律改正草案」(志田案)の帰趨をたどることを通じて、「大清商律改正草案」 が中国商法の発展に部分的に与えた影響を見ることにしたい。 1 商法総則と会社法 「大清商律改正草案」の制定の過程において、商法典の編纂には相当の時間を要するので、1910 年 5 月に清国政府の農工商部は、最も緊要な会社法の部分を先に改正する必要があると主張し、 当時施行されている「欽定大清商律」の二編(商人通例と会社律)を臨時に改正することを清国朝 廷に申請した25。翌 1911 年 1 月に清国朝廷は農工商部の申請を許可した26。そして、農工商部は、 外国人の手で作った法律草案が中国の国情に合わないと強く主張していた上海商務総会と上海商学 公会により提案された「商法総則草案」と「会社律草案」を「欽定大清商律改正草案」に改称して27 清国法律の審議機関である資政院に提出した28。当時の立法計画によれば、「欽定大清商律改正草案」 を可決した後、1915 年に志田鉀太郎主導の大清商律改正草案(志田案)を実施すると同時に「欽 定大清商律改正草案」を廃止する予定だったのであるが資政院が審議している間に29、清国の滅亡 により、「欽定大清商律改正草案」は法律となるに至らなかったのである30 上海商務総会と上海商学公会は大清商律を外国人の手で作ることに強く反対する意見を持ってい たが、「会社律調査案理由書」においては、具体的な法典の内容及び制度設計について外国法を参 考にしなければならないと主張し、イギリス法、ドイツ法等の外国法を考察した上、日本の商法典 は参考にする価値が高いと主張した31。上海商務総会と上海商学公会が「商法総則草案」と「会社 律草案」を制定していたころ、志田鉀太郎が中国で「大清商律改正草案」を編纂していることから、 上記の制定方針のもとで制定した「商法総則草案」と「会社律草案」が、志田のもとで起草中の「大 清商律改正草案」及び志田鉀太郎の個人の見解からの影響を受けなかったとは考えにくい。 「商法総則草案」と「会社律草案」は清国の滅亡により棚上げされることになったが、1911 年 中華民国成立後、中華民国政府は 1914 年 3 月 2 日に「商法総則草案」と「会社律草案」をほぼ そのまま、それぞれ、「商人通例」と「会社条例」へと改称して公布し、同年 9 月 1 日より施行し た32。特に、この「会社条例」は、その後 2 回の改正を経て、1929 年 12 月に「中華民国会社法」 となり、中国の最初の会社法となった。まさに、志田鉀太郎は中国会社法の形成に間接的な影響を 与えたと言ってもよいであろう。この会社法は現在でも台湾に引き継がれている。 2 商行為法

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 なお、中国において現在まで商行為法が存在しないことから、志田案における商行為法の部分は あまり重視されていないと考えられる。 3 海船法 「大清商律改正草案」における海船法の部分は、中国海商法の最初の法律草案である 。その後、 1925 年 6 月に中華民国政府は若干の修正を加えて、「海船律案」として公布・施行した 。中華民 国の「海船律案」は六編により構成され、全部で 263 条である。その法典の構造と内容は「大清 商律改正草案」における海船法の部分とほぼ同じである35 4 手形法 「大清商律改正草案」(志田案)における手形法の部分は、中国近代手形法の最初の法律草案であ る36。1922 年、中華民国政府は手形法編纂委員会を発足させ、手形法の制定が始まった。その後 中華民国手形法の草案を完成した。この草案は中国各地方の商慣習を調査したうえ、「大清商律改 正草案」における手形法の部分を参考にして制定したものである37 その草案は中国法制史上、中華民国手形法第一回草案と呼ばれ38、最終的に法律として成立する に至らなかったのであるが、重要であると位置付けられる39 (三)「大清商律改正草案」の意義 上述のように、「大清商律改正草案」は五編から構成され、中国において最初の比較的整備され た商法典である。「大清商律改正草案」は最終的に清国の滅亡によって正式な成立にまで至らなかっ たにもかかわらず、その各編はその後そのまま、或いは若干の修正が加えられて直接に法律として 用いられたり、又はその関連する商法分野の立法の参考にされたことにより立法に対し間接に影響 を与えたりすることで、中国商法史において重要な地位を占めるものであり、中国の商法の発展に 対し重要な影響を与えたことは否定できない。 四 おわりに 志田鉀太郎は 20 世紀末の時代に日本と中国との両国の商法典制定に参与し、両国の商法典編纂 において重要な役割を果たした人物である40。特に志田の功績は、「大清商律改正草案」に当時先 進国である日本の法理論・法制度の考えを取り入れて、中国近代の商法発展の方向を導いたことに あると言えよう。 また、志田鉀太郎は清国政府から求められ、大清商律改正草案の起草後も 1912 年 7 月までに 約 4 年間にわたり中国に留まり、京師法律学堂において商法の講義を担当して法学教育を行った 41。法学教育家として、当時の先進国である日本の法律、特に商法の法理論を中国に伝播するため に尽力し、中国近代の商法の法制度・法理論の普及の面で大いに貢献したと評価できよう。

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清末民初における志田鉀太郎の中国商法に対する貢献 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 黄源盛『法律の継受と近代中国法』(2007 年、元照出版有限会社)71 頁。 修訂法律館は多くの外国の法律を翻訳した。主として以下の通りである。 外国の法律については、ドイツ刑法、ドイツ裁判法、ロシア刑法、日本刑法、フランス刑法、オランダ 刑法、イダリア刑法、日本新刑法草案、等がある。その時、清国政府は刑法(「大清新刑律」)を改正し ていることから、その段階の翻訳は刑法が中心となった(黄源盛・前掲書 72 頁)。 黄源盛・前掲書 80 頁。 黄源盛・前掲書 80 頁。 京師法律学堂は 1905 年 9 月に清国政府により設立された法律専門人材を育成する専門学校であった。 その責任者は管理大臣と呼ばれ、中国近代史の著名な法学先駆者であって、当時の修律大臣でもあった 沈家本が初代の管理大臣を兼務した。 黄源盛・前掲書 78 頁。 当時京師法律学堂における開設授業科目は以下の通りである。 大清律例及び唐明律、現行法制及び歴代法制沿革、法学通論、経済通論、国法学、ローマ法、民法、刑法、 憲法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、裁判所編制法、国際公法、行政法、監獄法、訴訟実習、大清公 司律、大清破産律、国際私法、財政通論、外国文、体操等である(黄源盛・前掲書 78 頁)。 黄源盛・前掲書 83 頁。 黄源盛・前掲書 83 頁。 魏淑君『近代中国会社法史論』(2009 年、上海社会科学院出版社)66 頁。苗延波『中国商法体系研究』 (2007 年、法律出版社)55 頁。季立剛『民国商事立法研究』(2006 年、復旦大学出版社)23 頁。 何勤華、李秀清『外国法と中国法――20 世紀中国移植外国法の反省』(2003 年、中国政法大学出版社) 241 頁。 日本の梅謙次郎を招聘する提案は当時清国の翰林院学士である朱福詵により提出された。同提案におい ては、朱福詵も中国は「民商合一」の立法モデルを採用すべきであると主張した(苗延波・前掲書 143 頁)。 苗延波・前掲書 144 頁。 中華民国建国初期、民商法立法モデルについては、当時、王去非は中華民国は「民商合一」の立法モデ ルを採用すべきであると主張した。その「商律法典存続の将来観」は有名であった。また、朱学曾も「民 商合一」の立法モデルは中国の国情に相応しいとの意見を持ち、「民商法統一論」との論文を書いた(苗 延波・前掲書 144 頁)。 例えば、当時、施霖は民商合一の立法モデルの導入を主張し、有名な論文「民商法合一の理由」を書い た(苗延波・前掲書 147 ∼ 148 頁)。 日本の我妻栄博士は「民商合一」の立法モデルに対し反対の意見を述べた。我妻栄博士の意見は中国で 大きな影響があった。当時の中華民国立法院長である胡漢民及び立法院副院長である林森は我妻栄博士 の意見に対し反対の意見を発表した(苗延波・前掲書 148 頁)。 苗延波・前掲書 147 頁。 苗延波・前掲書 147 頁。 魏淑君・前掲書 157 頁。 苗延波・前掲書 149 頁。 王効文『中国会社法論』(復刻版、2004 年、中国方正出版社、原書は 1930 年出版)12 頁。 苗延波・前掲書 149 頁。 苗延波・前掲書 149 頁。 季立剛・前掲書 31 頁。 魏淑君・前掲書 81 頁。 魏淑君・前掲書 82 頁。 「欽定大清商律改正草案」は、「商法総則草案」と「会社律草案」との二つの部分からなり、上述のよう にそのもとは上海商務総会と上海商学公会が提出した「商法総則草案」、「会社律草案」及び「商法総則 調査理由書」と「会社律調査案理由書」であった。これらは、上海商務総会と上海商学公会が中国商業 習慣の調査を行ったうえ、諸外国の法制度を参照にして 1909 年 12 月に完成したものである。 謝振民『中華民国立法史』(下)(2000 年、中国政法大学出版社)804 頁。張家鎮等『商事習慣と商事 立法の理由書』(1914 年、民友社)2 頁。魏淑君・前掲書 82 頁。

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 王効文・前掲書 5 頁。 季立剛・前掲書 31 頁。 張家鎮等・前掲書 86 頁。 季立剛・前掲書 71 頁。 季立剛・前掲書 92 頁。 季立剛・前掲書 93 頁。 季立剛・前掲書 93 頁。 中華民国史法律志編纂委員会『中華民国史法律志(初稿)』(1994 年、台湾国史館)447 頁。 陳井星『中華民国手形百科全書(法令、判例、行規、実例)』(1981 年、哈佛企業管理顧問会社出版部) 1061 頁。 季立剛・前掲書 109 頁。 季立剛・前掲書 110 頁。 黄源盛・前掲書 83 頁。浜田道代編集『日本海車立法の歴史的展開』(1999 年、商事法務研究会)113 頁。 黄源盛・前掲書 83 頁。 (中国北京大学国際法学院副教授)

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

中国会社法における資本制度の改革

李  秀 文

一 はじめに 二 改正経緯と改正内容 三 日本法からの経験 四 中国会社法の今後の対応 五 結語 一 はじめに 2005 年、奇しくも日本と同時期に中国会社法は大きな改正がなされたのであるが、それから 8 年間が経ち、新たな改正を迎えた。新会社法修正案は 2013 年 12 月に開かれた第 12 期全国人民 代表大会(以下「全人代」という)常務委員会第 6 回会議で採択され、2014 年 3 月に施行された。 今回の改正は、政府の干渉を抑制することを念頭に、定款の自治を高めることによって会社意思の 尊重を図り、ならびに雇用を拡大し、経済発展を促進させるという目的のもと、会社の資本制度を 改革するものである。それは、主に 3 つの内容に関わるものであり、関連条文が 12 ヵ条に及んだ。 すなわち、①最低資本金制度の廃止1、会社の登録資本は定款で定めれば足りること、②出資期限 をも定款で定め、いわゆる株金払込予約制の導入2、③資本金検査報告書の提出が求められず、登 記事項が簡略化3されたことである。 今回の改正には、今後、投資効率が高まり、容易に起業できるというメリットがある。しかしな がら、債権者の利益をいかに保護するのかが問題となる。本論文では、最低資本金制度を廃止する ことにより、いかなる債権者の利益を保護する措置をとるのかについて、日本法上の経験を参考に しながら検討したい。 二 改正経緯と改正内容   (1)改正経緯 実は、今回の改正において最低資本金制度を改革する以前から、いくつかの動きがあった。まず、 2012 年に深圳と珠海では商事登記制度の改革が始められ、有限会社に対して株金払込予約制(原 語 :出資認缴制 語 :出資認缴制)を実験的に導入していた。これに加えて、2013 年 3 月 1 日に施行された「深圳 経済特区商事登記若干規定」の 16 条は「有限会社に対して登録資本の株金払込予約登記制度を実 行する。申請者は設立登記を申請する際に、商事登記機関において、全株主の払込を予約する株金 について登録資本総額を登記し、確実に払い込まれた資本を登記する必要がない。申請者は資本金 検査報告を提出する必要がない」と明確に規定していた。これらの実験的試みを経て、2013 年 3 月 10 日に開かれた全人代の会議で「国務院機構改革と職能転換に関する法案」が採択されたので ある。このように、株金確実払込制度(原語:出資実缴制原語:出資実缴制)から株金払込予約制度への変更は進行し、 同年 12 月に改正された「会社法」の公布へと至ったのである。そして、2014 年 2 月に「登録資

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 本登記制度改革法案」と「会社登記管理条例」(以下は、登記条例という)、8 月に「企業情報公示 暫定条例」(以下は、公示条例という)とが公布された。このように、会社法の改正に伴い、会社 登録資本登記制度の改革もなされた。 (2)改正内容 最低資本金改正内容対照表 年度 1993 年 2005 年 2013 年 有限会社 業 種 に よ っ て 異 な る が、最高は 50 万元 株金確実払込制 最低は 3 万元 (一人有限会社の場合 は 10 万元) 初回出資額は登録資本 の 20%を下回っては ならず、金銭出資額は 登録資本の 30%を下 回ってはならない。 残りの分は 2 年以内に 全額を払込む 最低資本金制度が廃止 出資金額、方法、期間 は定款に定める 株式会社 1000 万元 株金確実払込制 500 万元 発起設立の場合、初回 出 資 額 は 登 録 資 本 の 20 % を 下 回 っ て は な らない。 残りの分は 2 年以内に 全額を払込む 最低資本金制度が廃止 出資金額、方法、期間 は定款に定める 株金確実払込制から株金払込予約制への変遷に関する、中国において会社法が制定された 1993 年から 2014 年 3 月現在までの法改正の経緯の要点は、図表の通りである。これについて少し述 べると、まず、1993 年に会社法が制定された当時、債権者保護の目的で、厳格な資本金制度を 採っていた。具体的には、一方で有限会社に対して、業種ごとに異なる登録資本金を定め、10 万 元から 50 万元(約 150 万円から 600 万円)を、他方で株式会社に対しては 1000 万元(約 1 億 7000 万円)を、それぞれ登録資本金の最低限度額とし、かつ初回全額払込みを求めていた。 会社法制定から 12 年を経た 2005 年の会社法改正では、新たな経済実情に対応するため、最低 資本金制度が緩和されることとなった。すなわち、有限会社に対しては最低 3 万元(一人会社は 10 万元)(約 50 万円から 150 万円)、株式会社に対しては 500 万元(約 850 万円)の最低限度 額へと引き下げられたのである。これに加えて、全株主の初回出資額は、登録資本の 20%を払い 込めば、残りの部分は会社成立日から 2 年以内4に全額払い込めばよいとされたのである。 さらに 8 年後の今回の改正では、①法律、行政法規および国務院の決定により規定されている

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中国会社法における資本制度の改革 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 27 種類の会社以外には、有限会社と株式会社に対して最低資本金を要求しないこととした。従って、 その後は、一元でも会社を設立することができるようになった。②法律、行政法規および国務院の 決定により規定されている 27 種類の会社以外には、有限会社の株主あるいは発起設立により設立 された株式会社の発起人であっても、初回出資額を払い込むことを要しないし、一定期日までに株 金を実際に払い込むことも要しない。すなわち、出資回数、出資期間について会社定款に定めれば いいとされた。これに関連して、有限会社、発起設立により設立された株式会社の登録資本は、登 記機関で登記されている株主が予約した出資額の総額となった。ただし、募集設立により設立され た会社の登録資本は、登録機関で登記されている株主が実際に払い込んだ出資額の総額である。③ 「全株主の貨幣の出資比率が登録資本の 30%を下回ることができない」という規定が削除された。 新会社は、法律、行政法規の規定以外に、貨幣のみでなく、現物、知的財産権、土地使用権等の金 銭によって評価でき、かつ法律により譲渡できるものを財産として出資することもできると定めて いる。④従来は、株主が出資を履行した後、法定機関による資本金検査報告書の提出が必要とされ ていたが、新法はこれも削除した。しかも、貨幣のみでなく、現物出資についても同様である。 このように、中国会社法における最低資本金制度は、厳格的な資本制度から緩和の方向へと徐々 に変更され、今回の改正でついに廃除されるに至ったのである。 しかしながら、最低資本金制度を廃止したことを受けて、濫用的な会社設立から債権者を保護す るため、「登記条例」および「公示条例」において、行政部門と企業に企業情報の公示義務がある ことを明確に定めた5 まず、行政部門(工商行政管理部門およびその他の政府部門)が抜き打ち検査6により企業情報 を公示する義務を有し、その職責を果たせなければ、行政処分を課せられる場合があるのはもとよ り、犯罪を構成する場合には刑事責任が追及されると規定している(公示条例第 19 条)。 そして、企業が公示義務を果たさない場合7、「経営異常企業リスト」8に入り、企業信用公示シス テムを通して社会に対して公示する(公示条例第 17 条第 1 款)。そのほか、状況が著しい、他人 に損害を与えた、犯罪を構成する場合には、企業側が行政処罰を受けるか、損害賠償責任または刑 事責任を負う(公示条例第 17 条)。さらに、企業が公示義務に違反し、「厳重違法企業リスト」9 入れられた場合、その企業の法定代表者は以後三年間、ほかの企業の法定代表者に就任することが できないとする(公示条例第 17 条)。 このように、新会社法では、会社に資本金検査報告書の提出を要求しない代わりに、企業情報を 公示することを義務づけた。債権者は公示された情報に基づいてその企業の信用度を判断できるた め、ある程度債権者保護のシステムが整えられているといえる。ただし、企業が公示した情報が必 ずしも真実であるとは限らないため、その債権者を保護する機能については疑問が残る。 三 日本法からの経験 1899 年に日本商法典が制定された時、株式会社に対して最低資本金を求めていなかったが、 1991 年に株式会社に対して 1000 万円の最低資本金が必要と規定した(旧商法 168 条 2 号)。ま た、1938 年に有限会社法が制定され、有限会社に対して 1 万円の最低資本金を求めたが(有限会 社法 9 条)、1951 年に 10 万円、1991 年に 300 万円に変更した。すなわち、日本では、1991 年 から 2005 年まで最低資本金制度が導入されていた。しかし、その後、最低資本金制度は、必ずし も債権者を保護する機能を果たしていないと考えらえるようになったため、2005 年の改正で最低 資本金制度は廃止された。ただ、債権者を保護するため、会社法では、いくつかの措置が講じら れた。例えば、定期株主総会を開催した後に貸借対照表の公告(日本会社法 440 条 1 項)、新しい

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 会計参与制度の導入(日本会社法 333 条)、会計監査人を設置できる会社範囲の拡大(日本会社法 326 条 2 項)、適時かつ正確な会計帳簿の作成の義務付け(日本会社法 432 条 1 項)、会社の純資 産が 300 万円を超えなければ、利益配当することができないこと(日本会社法 458 条)等と規定 した。さらに、これらの規定に違反した場合には、取締役が株式会社に対して損害賠償責任を負う とする(日本会社法 462 条 1 項)。 そして、日本会社法では法人格否認の法理の適用、取締役の第三者に対する責任(日本会社法 429 条)なども債権者保護に関する重要な機能を果たしている。すなわち、取締役の職務執行に ついての悪意または重大な過失があった場合、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償 する責任を負うと規定されている。取締役の第三者に対する責任規定は、第二次世界大戦後、中小 企業が増えた結果、その倒産などによって満足を得られない場合に、会社に対して損害賠償請求権 を有する第三者が取締役個人に対して責任を追及することが多いと挙げられている10。その「法的 性質」、「損害の範囲」や「第三者の範囲」などについては、判例・学説に対立があるが、会社の実 体にそぐわない中小株式会社においては、適用されることが多いといわれる11 以上のように、日本は 2005 年の会社法改正で、最低資本金制度を廃止することになったが、会 社債権者を保護するため、多くの措置が採られていた。そのほか、日本会社法においては、多くの 中小規模の株式会社が存在しているため、法人格否認の法理の適用、取締役の第三者に対する責任 の規定はともに債権者保護に重要な制度であるといえる。 四 中国会社法の今後の対応 今回の中国会社法改正についての評価は、学者の間でも賛否両論に分かれた。まず、前向きな意 見は、最低資本金制度の廃止は会社に実際の運営資本が必要としないことではなく、株主が払込予 約した資本金は、会社の設立時に払込みを要しないに過ぎず、いずれ払わなければならないもので あるという。要するに、会社は債務超過、破産手続に入ったとたん、株主が予約した資本の範囲内 において債権者に対して連帯責任を負う。したがって、最低資本金制度の廃止は必ずしも債権者を 害するような状況をもたらすとは限らない12。これに対する消極的な意見は次のように述べる。す なわち、そもそも中国では信用できるような社会環境がいまだに構築されておらず、最低資本金制 度の廃止が債権者の利益を侵害することが十分考えられる。それに、中国会社法では株主総会中心 主義を採っており、取締役の権力が株主総会に制約される。会社が破産する際に、実際に取締役の 責任を追及することが容易ではない。一気に最低資本金制度の廃止を採ることよりも、徐々に求め られる登録資本の金額を減らして、会社設立のハードルを下げるほうがいい13 今回の改正により、会社法 28 条 1 項は、有限会社の株主が定款で規定されている予約した出資 額を期限通りに全額を払い込まなければならないとし、2 項は前項の規定通りに払い込まない場 合、会社に対して全額払い込む以外に、その他の全額払い込んだ株主に対して違約責任を負うと定 めている。そして、会社法 30 条は、現物出資の場合、財産の実際の価額が定款に定める価額より 著しく低いと判明した場合、当該出資を行った株主がその差額を補充し、会社設立した時のその他 の株主がこれについて連帯責任を負う。これに対して、株式会社の場合、会社法 83 条 1 項は、発 起設立の場合、発起人が定款の規定通りに予約した株式を全額引受けなければならないとし、第 2 項は前項の規定通りに出資を払い込まない場合、発起人協議により違約責任を負うとする。会社法 93 条は、株式会社が設立された後、発起人が定款の規定通りに出資を払い込まない、または現物 出資の実際の価額が定款に定める価額より著しく下回ることが判明した場合、発起人が補充納付ま たはその差額を補充し、その他の発起人が連帯責任を負うと定めている。

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中国会社法における資本制度の改革 東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 このように、中国新会社法の下で、株主が定款に規定された通りに出資義務を果たさず、それに 違反した場合、その他の株主に対して違約責任を負う。現物出資の場合、実際の価額が定款に規定 されている価額より下回ったとき、当該株主のみでなく、設立時のその他の株主も連帯責任を負う 必要がある。株式会社においても同様である。 また、会社法司法解釈(二)14の 22 条は次のように規定する、すなわち①会社が解散するとき、 株主の未払い出資も清算財産とする。未払い出資には、期限が到来したのに、まだ払い込んでいな い出資額、および会社法 26 条、80 条に規定されている期限がまだ到来していないが、分割払い の出資の残額という両方が含まれる。 ②会社財産で債務を履行することができない時、債権者は未払い出資の株主、会社設立時のその 他の株主、及び発起人に対して未払い出資範囲内において、会社債務について連帯責任で返済する と求めた場合、人民法院がそれを支持しなければならないとする。 要するに、会社が解散された時点、株主が定款に規定されている通りの予約した出資に対して、 仮に履行期限が到来していなくても、すべで払い込まなければならない。 さらに、会社法司法解釈(三)15の 13 条も同様な趣旨を示した。すなわち、 ①株主が出資義務を履行していない、または未完全履行の場合において、会社およびその他の株 主が会社に対してその完全履行を請求した時、人民法院はそれを支持しなければならない。 ②会社債権者が出資義務を履行していないまたは不完全履行の株主に対し、その未出資元利の範 囲内において、会社が債務を返済できない部分につき補充賠償責任を問うた場合、人民法院はその 請求を支持しなければならない。また、出資義務を未履行または未完全履行の株主が上記の責任を 引き受けた場合、その他の債権者が同様なことを請求しても、人民法院はそれを支持してはならな い。 ③株主が会社設立時に出資義務を履行しないまたは未完全履行の場合、原告が本条 1 項または 2 項の規定により提訴し、会社の発起人と被告株主が連帯責任を負うと請求したとき、人民法院はそ れを支持しなければならない。発起人はその責任を負った後であれば、被告株主に対して求償する ことができる。 ④株主が増資するときに出資義務を履行しないまたは未完全履行の場合、原告が本条第 1 項ま たは第 2 項の規定により提訴し、会社法 147 条 1 項に定めている義務を果たしていないことによ り出資の払込が満たしていないことに対して、取締役と上級管理職に相応する責任を負うようにと 請求した場合、人民法院はそれを支持しなければならない。取締役、上級管理職らはその責任を負っ た後に、被告株主に対して求償をすることができるとする。つまり、会社、出資義務を履行した株 主、債権者は出資義務未履行または不完全履行の株主に対して出資義務を果たせようと請求するこ とができる。会社設立時点で出資義務を履行していない場合、発起人は連帯責任を負う必要がある。 上記のように、会社法、司法解釈(二)、司法解釈(三)の各規定によれば、新法の下においても、 最低資本金制度が廃止されたものの、株主は予約した出資に対して出資義務を負わなければならな い16 しかしながら新会社法が施行されて以来、2014 年 3 月から 6 月まで、全国に新たに設立登記さ れた人民元一元の会社は 383 社17、資本金 10 億元以上の会社は 428 社18である。数字から見ると、 改正された後に、高額な登録資本の会社が大幅に増えたとは言えないが、これから徐々に増えるこ とが予想できよう。その時、中小規模の会社における債権者保護の措置としては、法人格否認の法 理の適用以外に、日本法上で定めている取締役の第三者に対する責任制度の導入も考えられる。

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東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係 五 結語 以上で述べたように、中国会社法は、投資活動を促進させ、会社をより容易に設立できるように するために、最低資本金制度、資本金検査報告書の提出などについて廃止することになった。一方、 債権者を保護するために、2014 年 2 月に国務院は「登録資本登記制度改革法案」を公布し、市場 主体たる会社の信用情報公示体制を構築することを明確に示した。会社は株主の出資状況、出資方 法、出資期間などの情報を市場主体の信用情報公示体制によって社会に公示しなければならないと 求められ、発起人はその情報の真実性と合法性に対して責任を負うと規定された。そして、同年 8 月に国務院は公布した公示条例の中においては、工商行政管理部門に対して企業登録登記などの情 報を公示し、その真実性と適時性に対して責任を負うと同時に、改めて企業に対して年度報告公示 と即時公示制度を構築すると要求した。このように、債権者は会社と取引する前に、企業に関する 情報をチェックし、信用できそうな企業を選別することができる。その意味において一定の程度で 債権者を保護する措置を採っていることは否めない。しかしながら、工商行政管理部門によるチェッ クは抜き打ち検査であり、企業自ら公示した情報は必ずしも真実であるとは限らない。そのため、 債権者の利益をより保護するため、法人格否認の法理の適用のほか、取締役の第三者に対する責任 制度の構築も重要な措置であると考えられる。 本論文は、2013 年度福建省社科研究項目課題『中小株主権益保護問題研究』(課題番号:600977)と 2013 年度福建省教育長課題『中小株主権益保護問題研究』(課題番号:JA13055S)の研究成果である。 <注> 1 2 3 4 5 6 7 8 法律、行政法規と国務院の規定により、銀行や保険など 27 種類の会社に関しては、最低資本金制度が 維持される。 従来の株金確実払込制度が廃止され、新会社法が一定期日までに株金を実際に払い込むことを義務とし ないことである。 新会社法 27 条では、会社営業許可証に会社の実際の受け取った資本を記入しなくてもよい、従来の資 本金検査報告書の提出も要求されない。 2005 年会社法では、投資会社は残りの部分は会社設立日から 5 年以内に全額払込で可能、一人会社は 分割払いを認めず、株主が会社定款に定める出資額を一括で払い込まなければならないと規定していた (2005 年会社法 26 条、59 条)。 改正される前に、株主の詐欺出資を防ぎ、行政部門を通して企業に対して監督するため、企業に年度検 査報告書の提出を求めていた。 工商行政管理部門が公示すべきな情報は、①登録登記、届出関係情報、②担保動産の登記情報、③株権 質入れの登記情報、④行政処罰の情報、⑤その他法律により公示すべき情報である(公示条例 6 条)。また、 工商行政管理部門以外の政府部門が公示すべき情報は、①行政許可、変更、延長などの情報、②行政処 罰の情報、③その他法律により公示すべき情報などである(公示条例 7 条)。 企業の年度報告の内容は、①企業住所、連絡先、②開業、休業、清算等に関する情報、③企業の投資に より設立された企業、購入した株権の情報、④株式会社と有限会社の株主および発起人が予約または実 際に払い込んだ出資額、出資時間、出資方法等の情報、⑤有限会社の株主が株権譲渡等により株権変更 に関する情報、⑥企業のホームページ、ネット販売の場合その名称、ホームページ等に関する情報、⑦ 従業員の数、資産総額、負債総額、対外的に提供している担保、所有者権益合計、営業総収入、主力業 務収入、利益総額、純利益、納税総額等に関する情報である(公示条例 9 条)。この中、第⑦項は企業 が公示するか否かについて任意に選択できるが、第①項から第⑥項までは必ず公示しなければならない。 期間内に年度報告を公示せず、または工商行政管理部門が規定している期間内に企業情報を公示せず、 または公示した情報が真実でない場合は、工商行政管理部門が当該会社を「経営異常企業リスト」に入れ、    

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