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平成 24 年判決において,最高裁は,保証ファクタリングを買主(債務者)からの「委託を受け ない保証」として構成した(図  5)10。確かに,保証ファクタリングでは,債務不履行が生じた場 合には,債務者が支払うべき代金額を金融機関が売主(債権者)

に支払うのであるから,あたかも当該金融機関が連帯根保証人と してその債務の履行を行ったかのようにも見える。しかし,保証 ファクタリングは,民法上の保証に関してこれまでに学説で議論 されてきた内容とは,以下に述べるような相違点がいくつかある ために,保証制度の枠組みの中でその仕組みを検討することには 困難があるように思われる。

まず,保証ファクタリングと保証との違いを考える際に,保証 では保証人と債務者の間に法的なまたは人的な何らかの関わり合 いがある場合を想定してきたのに対して,保証ファクタリングでは,保証人と債務者の間に,法的 にも人的にも関わりがないという点を考える必要がある。

保証ファクタリングは,買主(債務者)の委託に基づかないのみならず,買主(債務者)にあえ て知らせないままに行われる。もちろん,民法上,保証委託がない場合にも(民 462 条 1 項),さ らには債務者の意思に反している場合にも(同条 2 項),保証契約を締結しうる。しかし,そのよ うな保証がなされる背景には,保証人になろうとする者と債務者との間に何らかの(法的または人 的な)関わり合いがあるのが一般的であって,見ず知らずの第三者が頼まれもせずに保証債務を引 き受けてくれることは普通には起こりえない。そこで,情義的な関係を考慮すれば,たとえ委託の ない保証であっても,保証契約の締結によって債務者のために事務管理が成立すると考えることに 抵抗がない11。このことは,前述の平成 24 年判決において問題とされたように,保証契約が締結 された後に債務者に対する破産手続開始決定があり,その後に保証人が弁済をして求償権を取得す る際に,求償権が破産債権に該当するかどうかという問題を考える上で重要になってくる。これに

売主(債権者) 買主(債務者)

金融機関

B A

C

図5 保証ファクタリングの法律関係   (保証と構成する場合)

売掛

ファクタリング保証 契約

保証 求償

最判平 24・5・28 民集 66 巻 7 号 3123 頁における理論上の問題について

東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

対して,保証ファクタリングの場合には,結果的には買主(債務者)の利益になり得るとしても,

金融機関には,買主(債務者)のためにするという意思はみられず,保証ファクタリングの締結に よって,買主(債務者)のための事務管理が成立するかどうかということが問題となり得る12

つぎに,債権者と債務者の間の契約が有償か,無償かという違いを考える必要がある。一方で,

保証は,常に,無償契約として考えられてきた13。ところが,保証ファクタリングでは,売主(債権者)

から金融機関に対して「保証料」が支払われ,有償契約となっている。

従来,情義的保証に対して,機関保証や法人保証が特別な性質を有するものであることが主張さ れてきた。しかし,そこにおいても,保証委託の対価として,債務者が保証人に対して保証委託料 を支払うのであり,債権者と保証人の保証契約は無償で行われることが想定されてきた14。ところ が,保証ファクタリングでは,買主(債務者)にその存在を知らされない代わりに,売主(債権者)

が「保証料」を支払うのである。もちろん,金融機関からみれば,信用リスクを引き受ける対価を 保証委託料という形で主債務者から受け取ろうが,保証料という形で債権者から受け取ろうが,経 済的には大して違いがない15。しかし,三者の関係を法的に捉えた場合に,金融機関が対価をどち らから受け取るのかということは大きな影響を与えるものといえる。なぜならば,保証料の存在は,

売主(債権者)と金融機関の間で締結される保証ファクタリング契約が有償契約であることを示す のであるが,このことは,従来,保証契約の特徴が対価関係なくして保証人が片務的に債務を負担 することにあるものと捉えられてきたこととは相容れないからである。「保証料」名目で保証の対 価が債権者と保証人との間で発生するのは,まさに保証ファクタリングが債務者の信用のためでは なく,債権者の「与信を管理するため」に行われる有償・双務の契約であることを示している。

さらに,保証ファクタリングと保証との違いを考えるには,債務とその裏付けとなる信用との関 係を考える必要がある。

一方で,民法において議論されてきた保証は,債務者の信用補充(債務の肩代わり)のために与 えられるものであり,債務とその回収不能の危険としての信用リスクとが切り離されて取引される ことはなかった。ところが,保証ファクタリングでは,複数の買主(債務者)を組み合わせて(す なわち,一社ごとの信用リスクに応じて保証料率が決定されるのではなくその信用リスクを総合的 に考慮して)保証料率を計算し,金融機関は信用リスクを最小化する。このことは,保証ファクタ リングにおいては,個々の買主(債務者)の信用を補充するのではなく,個々の買主(債務者)か ら切り離された「信用(リスク)」が取引対象になっているもの(債権者の負担する信用リスクの 肩代わり)と見ることができる。このような信用リスクそのものを対象とする取引について,従来,

民法において,その特徴に照らした研究が十分に行われてきたとは言い難い状況にある16。 保証ファクタリングは,売主(債権者)にとっては,売買代金債権の回収を確実にする手段とな る。そこで,一見すると,売主(債権者)からは,保証ファクタリングは,資力の十分な金融機関 が買主(債務者)の負担する売掛代金債務を保証する契約のようにもみえる。しかし,ここまでに 述べたように,保証ファクタリングは,保証的機能を有するのみである。これを保証そのものとし て構成することは,その実態に即した法律構成とはいえないものと考えられる。 

4 おわりに

本稿において検討したように,平成 24 年判決において,「保証ファクタリング」が「債務者か らの委託を受けない保証」として構成されたことは,実態にそぐわない法律構成であって,再検 討の必要がある。平成 24 年判決の評釈には,「保証ファクタリング」がクレジット・デフォルト・

スワップ(CDS)と同じ機能を果たすことを指摘するものがあり17,保証ファクタリングの法的性 質を考える上で,CDS との対比が有用と考えられる。そこで,今後,さらに,この検討を行う予

東アジア・東南アジアにおける西洋近代法と慣習法の関係

定である18

平成 24 年判決は,現在進められている債権法改正において,明文化が検討されている(民法(債 権関係)改正の要綱仮案・第 24,3(2))。そこでは,「差押え後に取得した債権が差押え前の原 因に基づいて生じたものであるときは,第三債権者は,当該債権による相殺をもって差押債権者に 対抗することができる。ただし,差押え後に他人の債権を取得したものであるときは,この限りで ない。」とする規定が検討されている。しかし,本稿において問題提起したように,平成 24 年判 決において問題となった「保証ファクタリング」の法的性質が「債務者からの委託を受けない保証」

とは異なるものであるとすれば,この判決を一般化して条文化するにはさらに慎重な検討が必要と なるはずである。そこで,本稿に指摘した平成 24 年判決の抱える理論的問題点は,債権法改正に 向けても,検討すべき喫緊の課題といえるだろう。

<注>

1

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11

ここでいう保証契約は,「保証ファクタリング」契約である。はじめに述べたように,保証ファクタリ ングを保証と考えることには問題があると考えられるのであるが,平成 24 年判決においては,第一審 から保証ファクタリング契約を保証として構成しているものであり,同判決を紹介するにあたっては,

裁判所の見解を尊重して,判決に述べられているとおり保証と表記する。

前述・注 1 に述べたように,保証契約が締結されたと考える場合には,Y が A に対して取得する権利は 求償権(および,弁済者代位によって代位する B の A に対する権利)ということになる。

「『将来の請求権』とは,法定の停止条件が付された債権で,未だ法定の停止条件が成就せず,効力の発 生していないものを意味するとされ,保証人による弁済等がされる前の保証人の主たる債務者に対する 事後求償権がこれに該当する」と述べられている。

保証ファクタリングには,みずほファクタリングの「回収保証」(ただし,「保証ファクタリング」の 名称も同時に用いられている) < http://www.mizuho-factor.co.jp/service/kaisyu̲hosho/> ,三井住友銀 行の「販売先信用保証(【商品名】「ポートフォリオ型ファクタリング(保証)」)」 <http://www.smbc-fs.

co.jp/service/factoring/> ,三菱 UFJ ファクター会社の「根保証」 < https://www.muf.bk.mufg.jp/settle/

nehosho01.html > ,りそな決済サービスの「売掛債権の支払保証(ファクタリング)」 <http://www.

resona-ks.co.jp/factoring/factoring.html> などがある(前述の URL について 2014 年 10 月 31 日確認)。

以下に述べる保証ファクタリングの流れについては,これらのホームページを参考にした(以降の注に おいて,ホームページから引用する際には同注に挙げた URL を参照)。

たとえば,平成 24 年判決の被告となった三井住友銀行のホームページでは「貴社が販売先に対して保 有している商取引上の売上債権(受取手形・売掛金)の支払を、弊行が保証する商品です」と紹介され ている。

たとえば,三井住友銀行のホームページでは「20 社以上」と記されている。

たとえば,三井住友銀行のホームページでは「保証対象とする販売先ごとの信用力に基づき算出した料 率を、それぞれの保証限度額で金額加重平均した料率。(販売先ごとに異なる料率を適用するものでは ありません。)」と記されている。

たとえば,三井住友銀行のホームページでは「販売先に対しては、貴社が保証を掛けている事実は通知 いたしません。(※但し、販売先の倒産等により弊行が保証を履行する際には、当該販売先に対して保 証の事実を通知します。)」と記されている。

たとえば,三井住友銀行のホームページでは「販売先の倒産等により回収不能となった売上債権につい て,あらかじめ販売先毎に設定した保証限度額を上限として,販売先に代わって弊行が貴社にお支払い いたします。」と紹介されている。

藤澤尚江「中小企業金融としてのファクタリング取引(上)」阪法 54 巻 1 号(2004 年)252-253 頁に 紹介された売掛債権保証型ファクタリングは,本稿で検討する「保証ファクタリング」と同じ仕組みで あり,同論考は,これを「債権に対する保証を中心に他のサービスが付加されたもの」(253 頁)とする。

栗田隆「主債務者の破産と保証人の求償権――受託保証人の事前求償権と無委託保証人の事後求償権を

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