• 検索結果がありません。

自治体における規制改革システムの構築 : 栃木県を事例として

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "自治体における規制改革システムの構築 : 栃木県を事例として"

Copied!
49
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

自治体における規制改革システムの構築

栃木県を事例として

児玉博昭

はじめに 一規制改革の意義と経緯 二自治体における規制改革の現状と課題 三自治体における規制改革の事例研究 四自治体における規制改革の推進方策

はじめに

︵一︶研究の背景 これまで規制改革といえば、主として国の課題であり、自治体とは縁が遠い話であった。なぜならば、規制の多くは 国の定める法律や政令に基づいており、自治体の裁量は乏しかったからである。しかし近年、地方分権を契機として状

(2)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)22 況は一変している。地方分権一括法により、自治体の権限が拡大するとともに、構造改革特区により、法律による規制 であっても地域ごとに緩和することが可能となった。こうした制度の整備は、歴史的にみても極めて画期的であると言 えよう。 ところが、これほど規制改革のための環境が整ったにもかかわらず、実際の規制改革は期待ほど進んでいない。もち ろん一部の地域では熱心な取り組みも見受けられるが、総じて自治体の動きは鈍く、うたい文句ほど住民の生活に大き な変化は現れていない。制度的には整備されても十分活用されていないというのが実態のようである。 もっとも、自治体が規制改革に取り組むといっても、住民は自治体に対して何を求めているのか、また、自治体は住 民からの要望にどこまで応えうるのか、必ずしも明確ではないし、地域ごとに判断は異なるはずである。その意味から も、今後はそれぞれの自治体が規制改革のあり方を具体的に議論し、独自の方針を提示していくことが望まれる。 こうした中、栃木県でも規制改革のあり方について検討が行われている。栃木県では、平成十四年度に規制改革に関 する推進指針を定めて、基本的な考え方を示すとともに、平成十六年度には行政改革推進委員会に規制改革忙関する専 門部会を設けて、具体的な検討を行った。検討結果は同部会の報告書﹃活力と安心、県民のための規制改革﹄︵平成 十六年十一月︶として取りまとめられている。 ︵一一︶研究の目的 本稿の目的は、この栃木県の事例をふまえ、自治体は規制改革にどう取り組むべきか、 のような仕組みづくりが必要かを考察することにある。 規制改革を進めるためにはど

(3)

本稿の構成は次のとおりである。まず、規制改革の意義を確認するとともに、自治体における規制改革の現状を把握 する。次に、いわば各論として規制改革の事例を個別具体的に検討し、むすびに、総論として自治体における規制改革 の推進システムの構築を提言する。 なお、先に述べた栃木県の規制改革専門部会の報告書は、筆者が部会長を務めた関係から、とりわけ検討の進め方や 提言の内容に、筆者の主張が強く反映されている。したがって、必然的に本稿の構成と内容は、この報告書のそれと重 複ないし類似する点が多いことをあらかじめ断っておきたい。

規制改革の意義と経緯

︵一︶規制の意義と手段 第二次臨時行政改革推進審議会﹃公的規制の緩和等に関する答申﹄︵一九八八年十二月︶によると、公的規制とは、 ﹁国や地方公共団体が企業・国民の活動に対して特定の政策目的の実現のために関与・介入するもの﹂を指す。﹁許認可 等の手段による規制を典型﹂とするが、﹁規制的な行政指導や価格支持等の制度的な関与など﹂も広く含まれる。 公的規制は、国民や企業の自由な活動に任せていては問題が生じるおそれがある場合に、外部不経済、情報の不完全 性、規模の利益による不利益を回避するため、あるいは、産業の健全育成、食料の安定供給などの政策目的を達成する ために行われる。

(4)

白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)24 こうした公的規制は、経済的規制と社会的規制に分けられることがある。経済的規制とは価格規制や参入規制のこと をいい、産業の健全な発展と消費者の利益を目的に、参入資格、供給量・価格などに直接統制を及ぼすものである。一 方の社会的規制とは健康規制、安全規制や環境規制のことをさし、国民の安全の確保、環境の保全などを目的に、財・ サービスの提供に一定の基準を設けたり制限を加えたりするものである。 もっとも、この経済的規制と社会的規制に分類する考え方に関しては、専門家の間でも疑問の声がある。一般に経済 的規制の根拠には自然独占性、社会的規制の根拠には外部性、公共財、情報の非対称性があげられるが、いずれも市場 の失敗であり、あえて区別する実益に乏しい。また、健康規制や医療規制においても価格規制や参入規制は問題となる し、環境規制にしても排出権取引や環境税は価格・数量規制にあたる。実際にも両者には重複する部分もあり、双方を 目的とする規制も多いことから、個々の規制を単純にいずれかに選別することは難しい。この分類は見直しの際にある 程度有益ではあるが、両者の区別は相対的であると考えたほうがよいだろう。 ︵一一︶規制改革の必要性 公的規制は、必要な限りで例外的に課すものであり、また、状況に応じて常に見直すべきものであることは言うまで もない。経済的規制は、本来は自然独占が発生しやすく市場原理が十分に機能しない場合に適用されるべきであるが、 実際には規制の必要性が乏しい産業にも適用されている。原則自由・例外規制の基本的な考え方に立ち、規制が必要な 場合でも需給統制などの量的規制から事業者要件などの質的規制に転換すること、異常事態への対応などに限定し、通 常は自由とする必要がある。また、社会的規制についても、本来は環境変化に対応して見直すべきところ、実際には国

(5)

民に必要以上の負担や制約を課している。 パらロ がある。 社会経済情勢の変化や技術革新の進展などに対応して常に見直しを行う必要 ︵三︶規制改革の経緯 規制改革に関する近年の取り組みをさかのぼると、行政改革委員会の規制緩和小委員会に始まり、行政改革推進本部 の規制改革委員会、内閣府の総合規制改革会議、そして規制改革・民間開放推進会議へと受け継がれてきた。平成七年 四月、行政改革委員会に﹁規制緩和小委員会﹂が設置され、同委員会の規制緩和の推進に関する意見をふまえ﹃規制緩 和推進計画﹄が毎年度改定された。平成十年一月には、行政改革推進本部に﹁規制緩和委員会﹂が設置され︵その後 ﹁規制改革委員会﹂に改称︶、同委員会の規制改革についての見解を受けて﹃規制緩和推進三か年計画﹄が同様に改定さ れた。続いて平成十三年四月、内閣府に﹁総合規制改革会議﹂が設置され、同会議の規制改革の推進に関する答申によ り﹃規制改革推進三か年計画﹂の実施状況が監視されている。そして平成十六年四月には、﹁規制改革・民間開放推進 会議﹂が後継組織として設置され、同会議の規制改革の推進に関する答申により﹃規制改革・民問開放推進三か年計画﹄ の実施状況が監視されている。こうした流れの中で、取り組みの焦点は、経済的規制から社会的規制へ、また、個別規 制の緩和・撤廃から、事後チェックルールの整備、競争政策の強化、官製市場改革、行政サービスの民間開放へと移っ

パレ

てきた。

(6)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)26 ︵四︶規制改革の新潮流 こうした中、地域の特性に応じて規制改革を進めるものとして創設されたのが、﹁構造改革特区﹂制度である。この 制度は、総合規制改革会議が平成十四年七月に﹁規制改革特区﹂として構想を打ち出し、詳細な制度設計を重ねて、同 年十二月の﹁構造改革特別区域法﹂によって実現した。 構造改革特区は、各地域の特性に応じて規制の特例措置を定めた構造改革特別区域を設定し、教育、農業、社会福祉 などの分野における構造改革を推進し、地域の活性化を図り、国民経済を発展させることを目的とする。具体的には、 地方自治体等から規制緩和の提案を募集し、特区で実施できる規制緩和をメニュー化、地方自治体はメニューに基づき 特区計画を策定し国に申請、国は特区計画を認定し規制緩和を適用する。 なお、構造改革特区に類似する制度として、過去にもいわゆる﹁パイロット自治体﹂制度があった。特定の地域に改 革を先行させるという仕組みは共通するが、パイロット自治体が、地方分権の推進を主な目的としており、単なる閣議 決定でしかなく、特例措置も法律の範囲内に限定していたのに対して、構造改革特区は、構造改革の推進を主な目的と し、根拠法令があり、特例措置のため法律の改正まで想定している点が大きく異なる。 また、構造改革特区に関連する制度として、現在﹁地域再生﹂制度がある。特例措置を地域が提案し、地方自治体の 計画を国が認定、適用するという仕組みは共通するが、地域再生が行政サービスの民間開放や各種施策の集中・連携等 を手法とするのに対して、構造改革特区は規制緩和を手法とする点が異なっている。

(7)

︵五︶小括 国においては、過去十年問にわたり規制改革を推進し、数千項目にも及ぶ規制緩和を実施してきたが、国の主導で行 う全国一律の規制改革の進め方にも行き詰まりが見え始めている。他方、自治体においては、これまで自治体が行う規 制は、国の法律や政令に基づくものが多く、自治体が独自に規制を緩和することは難しかったが、近年、地方分権一括 法の施行に伴い自治体の裁量が拡がり、また、構造改革特区制度により自治体が創意工夫を発揮できる環境が整ってき たといえよう。

二自治体における規制改革の現状と課題

これまで自治体では規制改革にどう取り組んできたのか。栃木県を例に、自治体における規制改革の現状を整理して おこう。栃木県では、平成十四年四月に﹃栃木県規制改革推進指針﹄を策定し、同指針に基づき、公的規制の必要性を 見直し、規制の廃止・緩和や手続の簡素化を進めている。 ︵一︶規制改革の指針 ﹃栃木県規制改革推進指針﹄では、栃木県の基本的な考え方として、社会経済情勢の変化や多様化する県民の二ーズ と行政の役割のあり方、さらに国や他の都道府県の取組状況などに適切に対応しながら、国の示す﹃規制改革推進三か 年計画﹄にならい﹁経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限との原則﹂の下で、公的規制の必要性を見直すこ

(8)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)28 ととする。そして、行政サービスの向上、経済の活性化及び行政の合理化・効率化の観点から、県として改善可能なも のについて規制の廃止、より緩やかな規制への移行、添付書類の削減等による簡素化を実現するとともに、新たに公的 規制を設ける必要が発生している分野においては、条例に基づく必要最小限の規制を行うこととしている。 この指針では、①法律及び政令に基づく許認可、届出等で知事の権限によって対応できるもの、②条例及び規則に基 づく許認可、届出等、③指導要綱等、行政指導として行われている事前協議、届出等を対象としている。 現行の規制については、別に定める見直しの観点に立って、規制の目的・趣旨、規制の対象・基準・方法、手続の面 から見直し、規制の廃止・緩和、手続の簡素化を検討し、新たな規制については、経済的規制については﹁原則自由・ 例外規制﹂を、社会的規制については必要な限度にとどめるとともに、原則として、その規制を一定期間経過後に見直 すサンセット方式を採用するとしている。 ︵一一︶規制改革の観点 見直しの観点としては、次の観点が示されている。①規制の趣旨・目的については、規制目的の実質的必要性はある か、県で規制を行う必要はあるか、規制施策の目的は達成できているか、申請者に対し過大な負担を要求していないか、 目的を逸脱した規制となっていないか、法令等の趣旨を越えた規制となっていないか、同目的の他の規制と統合できな いか、経済的誘導等規制以外の手法で目的を達成できないか、規制の根拠は妥当かなど。②規制の対象・基準・手法に ついては、指定区域、対象者等規制の対象範囲は妥当か、規制基準は妥当か、許認可制から屈出制へなど、より緩やか な規制に移行できないか、同種類似のものは、最も低い規制に整合させられないかなど。③手続については、申請書記

(9)

載事項は簡略化できないか、添付書類の省略、簡略化できないか、押印は廃止できないか、変更申請等を必要としない 事項を拡大できないか、申請書の提出部数を削減できないか、申請書の副本に添付する証明書類は写しでたりるように できないか、有効期間は延長できないか、標準処理期間を短縮できないか、更新時の手続を簡略化できないか、出先機 関の管轄区域を越えた申請など窓口を拡大できないかなどである。 ︵一一一︶規制改革への取組状況 この指針に基づき、県の許認可等の手続に関する調査を実施し、その結果、平成十六年度の時点で四千三百六件の手 続を把握した。これらの手続について、当該手続の廃止をはじめ、押印の廃止、申請書類等の削減、提出部数の削減、 申請書類のダウンロード様式の作成など、申請手続の簡素化を検討している。検討にあたっては、処理件数が多く効果 の大きいものや、電子化を想定した場合の実現性の高いもの︵添付書類や手数料のないもの︶から順次検討を行い、平 成十四年度は百五十件、平成十五年度は八十六件を対象としている。これら計二百三十六件の検討結果を見ると、規制 の廃止・緩和は二件、押印廃止やダウンロード化などの手続の簡素化が二百五十二件となっている。

(10)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)30 図表一栃木県の規制改革の検討結果 年度 検討 対象 件数 規制廃止 規制緩和 簡素化 押印廃止 ダウン ロード 書類削減 その他 計 一四年度 一五〇件 一 ○ 六三︵○︶ 六二︵五︶ 二三 九五 二四三 一五年度 八六件 一 ○ 四︵一八︶ 一︵二二︶ 三 一 九 ︵注︶括弧内は措置済みのもの ︵出典︶栃木県行政改革推進室資料 ︵四︶規制改革の課題 栃木県の規制改革の取り組み状況に対しては、①手続等の簡素化を計画的に見直すこと、②手続等の簡素化に関して 積極的に情報を開示すること、③手続等の簡素化以外の規制改革に取組むこと、④手続等の事務処理を迅速化すること などが、課題として指摘されている。 ︵五︶小括 これまでの規制改革の取り組みをみると、規制の廃止・緩和はほとんどなく、押印の廃止、申請書類のダウンロード 化など手続の簡素化が大半を占めている。これでは規制改革というよりも単なる事務改善にすぎないというのが率直な 印象であろう。

(11)

手続の簡素化に比べて規制の廃止・緩和が進まなかった理由として、先に述べたとおり、県の規制には国の法律等に 基づくものが多く、県が独自に措置しにくいことがあげられる。しかし、次節で見るように、自治体は国の方針に追従 しがちであり、改革には慎重な姿勢がとることが多い。規制改革を阻害する制度上の制約が多いからではなく、規制改 革を推進する運用上の誘因が少ないこども要因の一つではないかと考えられる。いずれにせよ、自治体にとっては、本 来の意味での規制改革に本格的に取り組むことが今後の課題であり、そのためにも規制改革を積極的に進める仕掛けづ くりが必要であるといえよう。

一二自治体における規制改革の事例研究

自治体の規制改革に関しては、どのような要望があり、どのように対応しているのか、個別具体的に検討することに しよう。 国の規制改革の進め方を見ると、まず、国民の意見・要望を受け付け、ヒアリングを行い、関係省庁との意見交換や 折衝を経て、内閣総理大臣への答申を行う。答申を最大限に尊重するよう閣議で決定されて、計画が改定されるという 手続を踏んでいる。自治体において規制改革を進める場合も、こうした国の進め方にならい、県民の意見・要望を受け 付け、関係部局との意見交換などを経て、知事等へ答申を行うことになるであろう。 そこで、栃木県行政改革推進委員会の規制改革専門部会では、規制改革を検討するにあたり、インターネットなどを

(12)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)32 通じて、広く県民や県内企業から規制に関する要望を募った。その結果、産業活性化分野で十一件、保健福祉分野で六 件、教育分野で二件、まちづくり分野で十三件、環境分野で四件、計三十六件の事例が寄せられた。 同部会では、これらの要望について、県の所管課から、規制が廃止・緩和された場合の問題点や当該規制に対する県 の見解を聞き、検討を行い部会として意見を付した。、その結果、廃止すべきが二件、緩和すべきが十七件、妥当である が六件、措置済みが二件、強化すべきが五件、その他が四件と仕分けられた。 以下では、これらの事例について、規制に対する要望、規制の仕組み、県の見解を示し、それに対する意見を述べる。 なお、同部会の報告書では、部会としての意見が付されているが、本稿は個人の見解として理解していただきたい。 ︵一︶産業活性化分野 ︻事例一ア︼工場立地における緑地面積率規制︵工場立地法︶ 工場を立地する場合には、工場立地法の定めにより、敷地の一定割合を緑地にしなければならない。事業者からはこ の緑地面積の割合を引き下げてほしいといった要望がある。 工場立地法の工場立地に関する準則では、緑地面積の敷地面積に対する割合︵緑地面積率︶は百分の二十以上と定め られている︵準則第二条︶。もっとも、この緑地面積率の規制に関しては、都道府県は、地域の実情に応じて、条例に より一定の範囲内で引き上げや引き下げができることになっている。 ところが、県︵産業政策課︶の対応をみると、県内一律の基準を設けることは難しいという理由から、条例による地 域準則を定めていない。

(13)

緑地面積の規制は、工場の立地にあわせて緑地を整備することにより、周辺の生活環境との調和に配慮したものであ るが、自然環境や住民二ーズなど地域の実情を勘案して柔軟に基準を設定できるようになっている。こうした法の趣旨 を活かすためにも、県内一律に国の準則を適用するのではなく、県内各地域の実情に応じて準則を設定することが望ま しい。 ︻事例一イ︼大型店の営業時間の延長手続規制︵大規模小売店舗立地法︶ 大型店が営業時間を延長する場合には、大規模小売店舗立地法の定めにより、騒音対策を講じ住民に説明しなければ ならない。小売業界では営業時問を延長する動きが広がっており、煩雑な手続をなるべく簡素化してほしいといった要 望がある。 大規模小売店舗立地法では、大規模小売店舗︵大型店︶が営業時間を延長する場合、騒音問題への対応策と騒音の予 測・評価などを都道府県等に届け出るとともに︵第六条︶、地域住民に対して説明会を行うこととなっている︵第七条︶。 市町村や地域住民は、都道府県等に対し意見を述べることができ︵第八条︶、都道府県等はこれらの意見をふまえ問題 のある場合は店舗設置者に対し意見を述べることができる。 県︵経営支援課︶の見解は、騒音対策を講じなければ、営業時間の延長による夜間の騒音が懸念されること、騒音の 予測・評価を行わないと、対策の有効性を検証できず、地域住民も生活環境への影響度を判断できないこと、説明会を 設けなければ、地域住民に意見陳述の機会が保障されなくなることから、いずれも必要な手続であるとする。 大型店の営業時間の規制は、大型店の営業に関して地元の意見を反映させることにより、周辺の生活環境の悪化を防

(14)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)34 止するためである。その意味で、説明会自体は地域住民に意見表明の機会を与えるために欠かせない手続である。しか し、実施後の是正勧告など事後的な統制も可能なことから、事前の手続に時問をかけすぎて迅速な実施を妨げてはなら ない。また、騒音の正確な予測は困難であり、騒音対策のほうが重要であることを考えると、騒音予測などの添付書類 を要求しすぎてはならないと考える。 ︻事例一ウ︼法人関係税の優遇措置︵法人税法、地方税法︶ 法人は、法人税法や地方税法の定めにより、国税として法人税を、地方税として法人県民税や法人事業税を負担しな ければならない。企業を県内に誘致するために、,法人関係税を優遇すべきではないかといった意見がある。 法人税法では、内国法人は法人税を納める義務があると定め︵第四条︶、また、地方税法では、法人住民税、法人事 業税をはじめとした各種地方税を納める義務が定められている。 県︵税務課︶は、公平性の原則に基づき、県税の優遇措置には慎重な姿勢を崩さない。もっとも、過疎地域や農村地 域工業等導入地区など一定の地区においては、条例に基づき事業税、不動産取得税の課税を免除する措置を講じている。 また、県︵産業政策課︶では、一定の要件のもと企業が用地を取得したり工場を建設したりした場合に、不動産取得税 相当分を補助する制度を設けている。 法人住民税は行政活動の経費を住民として分担するものであり、法人事業税は事業活動を行う際に利用する行政サー ビスの対価を負担するものである。誘致企業も同様に負担すべきものであり、誘致のための優遇措置は別途講じたほう がよい。問題はこれらの優遇措置が十分知られてないことであり、過疎地域等における減免制度、用地取得や工場建設

(15)

の際の補助制度などについて、いっそうの周知を図るべきと考える。 ︻事例一工︼工業団地の販売価格規制 前の事例と関連して、県内の工業団地の土地の販売価格や賃貸料が高いため、企業を県内に誘致するために、価格を 下げるべきではないかという意見がある。 県︵地域整備課︶の説明によると、価格設定は特に法令に基づくものではなく、地価動向や団地の採算性などを勘案 しながら適正な価格設定を行っており、不動産鑑定を実施し、分譲価格の見直しを行っているという。 企業誘致の方法は、税や補助金などの優遇措置に限られず、低廉な用地の提供といった方法もある。行政運営は硬直 化するきらいがあり、何ら規制がなく見直しが可能な施策も規制の枠があるかのような印象を与えることがある。規制 は環境の変化に応じて絶えず見直すべきだが、このことは硬直化しがちな施策全般に当てはまることといえよう。 ︻事例一オ︼価格・品質等の表示規制︵消費税法、食品衛生法、﹂、AS法︶ 食料品などを販売する場合、消費税法や食品衛生法に基づいて、価格や品質を表示しなければならない。表示規制に 変更があると、システムの変更など多大な費用がかかるため、変更を少なくしてほしいといった要望がある。 消費税法では、予め課税資産の譲渡等にかかる資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務にかかる消 費税額及び特別地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示するものと定められている︵第六十三条の二︶。 また、食品衛生法では、販売の用に供する食品等の表示基準を定めるとともに、表示がない場合、その販売を禁止する

(16)

白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)36 ことが盛り込まれている︵第十九条︶。さらに、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律︵JAS法︶で は、日本農林規格の検査に合格した製品にJASマークを貼付するとともに、品質表示基準に従った表示をしなければ ならないと定められている。 県︵生活衛生課︶の説明では、表示項目の変更は、表示を見る消費者と表示を行う事業者にとってわかりやすいよう 見直しが行われているという。 食品表示の規制は、品質を適正に表示することにより、食品の安全性を確保することにある。適正な食品表示が求め られるのは当然であるが、問題は政府の政策変更に伴う費用を事業者だけに負担させてよいかということである。規制 の制定・改廃においては、規制による費用面の影響も吟味し、規制に伴う費用の負担をできるかぎり抑えなければなら ないと考える。 ︻事例一力︼旅行業の資産要件規制︵旅行業法︶ 旅行業を登録する場合には、旅行業法の定めにより、一定額の資産がなければならない。この基準資産額を引き下げ てほしいといった要望がある。 旅行業法では、旅行業を営もうとする者で、事業を遂行するために必要と認められる財産的基礎を有しない場合には、 その登録を拒否しなければならない︵第六条第一項第八号︶。その基準資産額は、海外旅行を主催できる第一種旅行業 は三千万円以上、国内旅行を主催する第二種旅行業は七百万円以上、手配旅行のみを行なう第三種旅行業は三百万円以 上となっている︵施行規則第三条︶。

(17)

県︵観光交流課︶の見解は、旅行業は旅行出発前に旅行代金を収受する取引形態であるため、旅行業者の財産的基礎 が十分でないと、旅行者が被害を受けるおそれがあるとする。 資産要件は、旅行業者の財産的基礎を確保することにより、旅行者を保護するものであるが、旅行業者には、消費者 保護の観点からは、資産とは別に営業保証金も課せられており、必要最小限度の規制といえるか疑問が残る。規制の手 段は目的を達成するために必要かつ合理的なものでなければならないと考える。 ︻事例一キ︼金融機関の営業時間規制︵銀行法︶ 銀行の営業時間は、銀行法の定めにより、原則として午前九時から午後三時までとなっている。この営業時問の規制 を撤廃してほしいといった要望がある。 銀行法施行規則では、銀行の営業時間は午前九時から午後三時までと定められており︵第十六条︶、変更する場合に は財務局等に届け出なければならない︵第三十五条第一項第七号︶。 県は、銀行業務は国の所管であるとし、あまり関心を示さない。 金融機関の営業時問の規制は、開店時間を制限することにより、決済業務の安全性を確保するためのものである。し かし、銀行が夕方まで営業時間を行えば、会社員も会社帰りに資産運用や住宅ローンの相談がしやすい。また、昼食時 に窓口を閉めることができれば、地方銀行なども行員の少ない出張所を活かした店舗戦略を打ち出しやすい。こうした 相談業務中心の店舗や出張所であれば、決済業務への影響も小さいと考えられる。県としても、利用者である県民の立 場に立ち、地域生活の向上という視点から、地域金融サービスについてもっと関心をもつべきであると考える。

(18)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)38 ︻事例一ク︼労働者の労働時間規制︵労働基準法︶ 労働時間は、労働基準法の定めにより、一日ごとや一週間ごとに一定時間を超えてはならない。この労働時間規制に 関しては、通年で一定時間を超えなければよいのではないかといった意見がある。 労働基準法では、使用者は労働者に、休憩時間を除き、一週間に四十時間を超えて労働させてはならない、また、一 日に八時間を超えて労働させてはならないと定められている︵第三十二条︶。 県︵労政課︶の見解は、労働時間の短縮は豊かでゆとりある勤労者生活の実現に不可欠であり、労働時間規制を緩和 すると、勤労者の福祉を後退させるおそれがあるとする。 労働時間規制は、労働時間を制限することにより、労働者の健康に配慮したものである。しかし、一律に規制すれば、 多様な働き方を妨げることになりかねない。変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制など、業務の繁 閑に対応した弾力的な勤務制度が設けられている。就労形態が多様化する中で柔軟な規制が求められると思われる。 ︻事例一ゲ︼酒類製造業の許可規制︵酒税法︶ 酒類を製造する場合には、酒税法の定めにより、免許を受けなければならない。この酒類製造免許では、規制緩和が 進まず、特に焼酎について免許の新規取得を認めてほしいといった要望がある。 酒税法では、酒類を製造しようとする者は、製造場ごとに所轄税務署長の免許を受けなければならないと定められて いる︵第七条︶。免許の付与にあたっては、法律遵守や経営基礎、製造技術能力、製造設備の状況などのほか、製造見 込数量︵最低製造数量基準︶の審査が行われる。

(19)

県は、酒類免許は国の所管であるとし、あまり関心を示さない。 酒類製造業の許可規制は、税収を確保するためのものである。しかし、神社の濁酒など販売を目的とせず、伝統文化 的価値の大きいものは、構造改革特区の申請により酒税法の適用外となることもある。県としても、構造改革特区等で の対応を検討してもよいと考える。 ︻事例一コ︼酒類販売業の許可規制︵酒税法︶ 酒類を販売する場合にも、酒税法の定めにより、免許を受けなければならない。この酒類販売免許では、逆に急激に 規制緩和が進み、採算を度外視した価格競争が起きているため、不当な安売りを規制してほしいといった要望がある。 酒税法では、酒類を販売しようとする者は、販売場ごとに所轄税務署長の免許を受けなければならないと定められて いる︵第九条︶。免許の付与にあたっては、酒類の需給を調整するため、人口基準︵人口当たりの免許枠︶と距離基準 ︵店舗間の距離︶による審査が行われていたが、これらの要件が段階的に撤廃され、酒顛販売は事実上自由化されてい る。ところが、これに対しては、酒類販売への新規参入の抑制を図る酒類小売業者経営改善等緊急措置法が議員立法と して施行されている。同法は、酒販出店規制の完全撤廃に伴い、経営の悪化が見込まれる中小・零細酒販店を保護する ため、一定の基準を超えて供給過剰となった地域内で新規出店を制限することができる。 県は特に考え方を示していないが、既得権益の保護は規制緩和の流れに逆行しかねない。既存小売店の経営努力を促 すことが、消費者の利益につながる。もっとも、新規参入を幅広く認めると既存の小売店の経営にも少なからず影響を 及ぼすため、既存の酒類小売業者にも意見表明の機会を与えなければなるまい。

(20)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)40 ︻事例一サ︼風俗営業の営業時間規制︵風適法︶ パブやゲームセンターなどの風俗営業は、いわゆる風適法の定めにより、深夜の営業が禁止されている。この営業時 間規制に関して、旅館業者からは、旅館内では風俗営業の深夜営業を認めてほしいといった要望がある。 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律︵風適法︶では、風俗営業者は、午前零時から日の出時までの営業 が禁止されている︵第十三条︶。 県警察本部︵生活安全企画課︶の対応は、旅館内の風俗営業に対してのみ規制を廃止する理由が見当たらないとする。 風俗営業の営業時問規制は、営業時間を制限することにより、善良の風俗を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼ す行為を防止するためのものである。スナックなどでは、接待を伴えば風俗営業となり深夜の営業はできないが、接待 を伴わない飲食であれば公安委員会への届出により深夜にも営業できる。接待の有無の判断は実際には難しく、例えば 客の隣で話をすれば接待に当たるが、カウンター内なら接待に当たらない。宿泊客の利用に限られる旅館内の営業であ れば、風俗環境を乱すおそれも少ない。また、風俗営業にもキャバレーからゲームセンターまで多様な形態があり、営 業形態によっては営業時間規制を緩和してもよいのではないか。観光地再生の一環として構造改革特区等で対応が考え られる。 ︵二︶保健福祉分野 ︻事例ニア︼社会福祉事業の参入規制︵社会福祉法︶ 特別養護老人ホームなどの経営主体は、社会福祉法等の定めにより、 行政か社会福祉法人に限られている。この経営

(21)

主体に株式会社等の参入を認めてほしいといった要望がある。 社会福祉法では、入所施設サービスなどの第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営するこ とを原則とし︵第六十条︶、その他の者が経営しようとするときは、都道府県知事等の許可を受けなければならない ︵第六十二条︶。さらに、特別養護老人ホーム等の設置は、老人福祉法により、市町村等と社会福祉法人に限定されてい る︵第十五条︶。なお、在宅サービスなどの第二種社会福祉事業は、利用者への影響が小さいため、届出が必要なもの の、経営主体に特に制限はない。 県︵医事厚生課・高齢対策課・障害福祉課・児童家庭課︶の見解は、行政及び社会福祉法人以外の者が経営主体となっ た場合、公正な経営の担保、行政等関係機関との連携、サービスの質の低下、所得格差等によるサービス格差などが懸 念されるとする。 社会福祉事業への参入規制は、入所施設サービスは利用者への影響が大きいため、公的関与の強い社会福祉法人等に 経営主体を限定することにより、利用者を保護するものである。しかし、経営主体を限定することにより利用者を保護 できるとは限らないし、サービスの質や経営の安定は、参入後の事後的に統制することもできるはずである。さまざま な経営主体の参入を認める一方、サービスを評価し、利用者の選択に委ねることも十分あり得る。もっとも、新規参入 を幅広く認めると既存の社会福祉法人の経営にも少なからず影響を及ぼすため、既存の社会福祉関係者にも意見表明の 機会を与えなければなるまい。

(22)

白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)42 ︻事例ニイ︼認可外保育施設の届出規制︵児童福祉法︶ 認可外保育所も、児童福祉法の定めにより、設置届を提出しなければならない。この届出規制に関しては、そもそも 認可外なのだから、届出は不要ではないかといった意見がある。 児童福祉法では、児童福祉施設の認可を受けていないものについて、施設の設置者は、施設の名称・所在地、設置者 や管理者の氏名・住所などを都道府県知事に届け出なければならないと定められている︵第五十九条の二︶。 県︵児童家庭課︶の対応は、利用者への情報提供を行い、保護者が適切に施設を選択できるようにするとともに、悪 質な施設を排除するためには、届出は必要であるとする。 認可外保育施設の届出規制は、施設を効率的に把握するためのものである。保育サービスをめぐり各種トラブルが多 発していることを考えると、むしろ今後は施設の把握だけでなくサービスの把握まで求められるとも思われる。 ︻事例ニウ︼医療機関の広告規制︵医療法︶ 医療機関は、医療法の定めにより、一定事項以外は広告が禁止されている。この広告規制を緩和してほしいといった 要望がある。 医療法では、医療機関は、診療日や診療時間など一定の項目を除き、広告してはならないと定められている︵第 六十九条︶。また、同施行規則では、比較広告も禁止されている︵施行規則第四十二条の三︶。 県︵医事厚生課︶の見解は、医療は人の生命身体に直接関わり、広告にだまされて不適切なサービスを受けた場合の 被害は著しい。また、医療は専門性が高く、患者は広告からサービスの質を事前に判断することが難しいとする。

(23)

しかし、人命に関わることや専門性が高いことを理由に、広告を制限するというのは理解しがたい。むしろ詳細な情 報を消費者に提供しなければならないはずである。医療に関する情報開示を進め、患者の選択の拡大を図ることが求め られよう。 ︻事例ニエ︼医薬品の販売規制︵薬事法︶ コンビニエンスストアでは、薬剤師がいないため、薬事法の定めにより、頭痛薬や風邪薬など一般の医薬品でも販売 できない。この販売規制を緩和してほしいといった要望がある。 薬事法では、医薬品を販売する場合には、許可を受けなければならないが︵第二十四条︶、薬剤師などの資格を有す る者が店舗の実務を管理することが許可の要件となっている︵第二十六条等︶。 県︵薬務課︶の説明では、医薬品について専門的知識を有する者が、必要な服用方法や副作用情報などを購入者へ正 しく伝える必要があるという。 医薬品の販売規制に関しては、安全性と利便性の両面を考えなければならないが、一般医薬品にも、服役指導を要す る作用の強いものから、注意書きを読めば足りる作用の弱いものまである。地域生活の向上という観点からは、薬局が 閉店している夜間や休日でも購入できるよう、作用の弱い一般医薬品については、販売規制を緩和してもよいと考える。 ︻事例ニオ︼旅館の営業地域規制︵旅館業法︶ 旅館は、旅館業法の定めにより、学校等から一定距離離れていなければならない。 この距離規制を廃止してほしいと

(24)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)44 いった要望がある。 旅館業法では、施設の敷地の周囲概ね百メートルの区域内に、学校や児童福祉施設、社会教育に関する施設がある場 合、その設置によって当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときは、旅館業の許可を与え ないことができると定められている︵第三条第三項︶。 県︵生活衛生課︶の見解は、旅館の中には風紀上及び教育環境上好ましくない影響を与えるものがあり、そのような 旅館が学校近隣に設置された場合、学校の清純な教育環境が守られないおそれがある。もっとも、法の規定では、一律 に禁止されているわけではなく、個別の案件に応じて対応できるようになっているとする。 旅館の営業地域規制は、学校等の清純な教育環境を守るためのものである。しかし、清純な教育環境とはどのような ものか曖昧であるし、旅館がすべて風紀上及び教育環境上好ましくない影響を与えるわけでもない。個別の案件に応じ て対応すべきであるが、その場合には判断基準を明確にしなければならないと考える。 ︻事例ニカ︼食中毒による旅館の営業規制︵食品衛生法︶ 旅館で食中毒を起こした場合、法律では調理場だけの閉鎖で足りるはずだが、指導では全館の閉鎖となっている。調 理場のみの閉鎖でもよいのではないかといった要望がある。 食品衛生法では、禁止事項に違反した場合、営業の全部若しくは一部を禁止し、又は期間を定めて停止することがで きると定めている︵第五十五条︶。 県︵生活衛生課︶の説明によると、食中毒が発生した場合、一律に営業の全部禁止・停止処分を行っているわけでは

(25)

なく、必要に応じて食品の調理行為の禁止・停止、食品の提供行為の禁止・停止等を行っており、食品衛生の目的に従っ た必要最小限の処分を行うこととしているという。 旅館の営業停止処分は、施設の衛生状態を改善させることにより、事故の再発を防止するためのものであり、社会的・ 経済的な制裁を加えるものではない。食中毒を起こした旅館でも、素泊まりでもいいから泊まりたいという利用客がい れば、宿泊を認めてもいいはずである。こうした要望が出るからには、実際の指導は県の説明とは異なるのではないか。 食品衛生の目的に従った必要最小限の処分にとどめるよう厳格に運用しなければならないと考える。 ︵三︶教育分野 ︻事例三ア︼学校の設置主体規制︵学校教育法︶ 小学校、中学校などの設置主体は、学校教育法の定めにより、行政と学校法人に限られている。この設置主体に株式 会社などの参入を認めてほしいといった要望がある。 学校教育法では、学校、専修学校及び各種学校という区分を設けているが、国、地方公共団体及び私立学校法第三条 に規定する学校法人のみが、学校を設置することができると定めている︵第二条︶。ただし、盲学校、聾学校、養護学 校、幼稚園については、当分の間、学校法人によって設置されることを要しない︵第百二条︶。また、専修学校及び各種 学校については、学校法人によって設置されることを要しない。 県︵文書学事課︶の見解は、学校の健全な運営のために行政がどの程度関与できるのかが不透明であるとし、参入に 対して慎重な姿勢を崩さない。

(26)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)46 しかし、多様な参入主体を認めることは、学校教育の活性化ひいては地域社会の向上もつながる。実際にも構造改革 特区を活用して株式会社、特定非営利活動法人が学校を設置する動きが広がっている。もっとも、新規参入を幅広く認 めると既存の学校法人の経営にも少なからず影響を及ぼすため、既存の学校関係者にも意見表明の機会を与えなければ なるまい。 ︻事例三イ︼教育職員の免許規制︵教育職員免許法︶ 学校の教員は、教育職員免許法の定めにより、教員免許を持つ者でなければならない。この免許規制に関して、免許 を持たない民間人も教員として活用したいといった要望がある。 教育職員免許法では、教育職員は免許状を有する者でなければならないと定めている︵第三条︶。ただし、教科の領 域の一部の教授又は実習を担任する非常勤講師については免許状を有しない者を充てることができる︵第三条の二︶。 もっとも、公立学校の教員については、栃木県立公立学校新規採用教員選考試験の実施に関する規則により、選考試験 が課される。 県︵文書学事課・教育委員会事務局総務課︶の説明では、上記の例外規定により、各分野の有識者を特別非常勤講師 として活用している。また、民間人を校長に登用したり、高校の職業系専門学科で民間企業から実務家を講師に招いた り、総合的な学習の時間で民間人ボランティアを活用したりしている。私立学校では、県教育委員会に届出を行ったう えで学校設置者の判断により民間人を非常勤講師に採用している。また、私立学校が民間人を授業の補助を行う非常勤 職員として活用することに特に規制はないという。

(27)

教育現場に各分野で優れた知識や経験をもつ民間人を活用することは、教育サービスの向上と多様化につながる。多 様な人材を登用するためには、教員の選考試験で社会人に広く門戸を開放するとともに、実務経験を正しく評価するこ とが大切である。もとより多様な人材を登用する以上、画一的な評価基準を事前に設定することは難しい。民間人を登 用した結果どのような教育効果が得られたのかを事後的に検証していくことも一つの方法であると考える。 ︵四︶まちづくり分野 ︻事例四ア︼農地の転用規制︵農振法︶ 土地改良によって整備した農地は、いわゆる農振法の定めにより、一定期間を経過しないと、住宅地などに転用でき ない。この転用制限期間を短縮してほしいといった要望がある。 農業振興地域の整備に関する法律︵農振法︶では、市町村において農業振興地域整備計画を策定し、農用地区域を設 定する。農用地区域内の農地を転用する場合には、農業振興地域整備計画を変更し、農用地区域から除外しなければな らないが、除外するためには、次の要件を充たさなければならない︵第十三条二項各号︶。すなわち、①農用地区域以 外に代替すべき土地がないこと、②農業上の効率的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと、③土地改良施設などの有 する機能に支障を及ぼすおそれがないこと、④公共投資の効用を確保する観点から政令で定める基準に適合しているこ とであり、その基準として農業生産基盤整備事業︵土地改良事業︶完了後八年を経過していなければならない︵政令第 八条︶。 県︵農地計画課︶の説明では、農業振興地域の農用地区は、市町村が長期にわたり農業上の利用を確保すべき土地の

(28)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)48 区域として定めるもので、農業公共投資がこの農用地区域内に集中して行われるため、原則として転用は認められない という。なお、これら除外や適用の判断は市町村が行い、県としては要件を充たされ関係機関との調整を図られていれ ば同意することになっている。 確かに、優良な農地を確保するという農振法の趣旨からすると、多額の投資によって整備した農地の転用を安易に認 めることはできないかもしれない。しかし、地域の実情に応じて市町村で策定するとした計画の趣旨からすると、八年 という一律の期間設定が妥当かは再考の余地がある。社会経済環境の変化に合わせて市町村が柔軟に判断できるように, しなければならないと考える。 ︻事例四イ︼自然環境規制︵鳥獣保護法、自然公園法︶ 自然公園内で公共工事を実施する場合、いわゆる鳥獣保護法などにより、計画の変更や工事の中止を要求されること がある。工事事業者からは過度の要求が負担になっているとの不満が聞かれる。 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律︵鳥獣保護法︶は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化を目的とする法律であり、 自然公園法は、優れた自然の風景地の保護と利用促進を目的とする法律である。例えば特別保護地区に指定された区域 内で工作物を新築したりする場合には、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならない︵鳥獣保護法第 二十九条、自然公園法第十四条︶。 県︵自然環境課︶の説明では、自然公園にふさわしい鳥獣の生息環境を維持するためにはやむを得ない規制であると する。また、通常は工事の開始前に事前に調整を行っているが、着手後に貴重な鳥獣等が発見された場合には事後的に

(29)

調整が行われることになるという。 確かに、鳥獣の保護や景観の維持に影響を及ぼすおそれがある行為を規制することは必要である。しかし、自然環境 の保全を理由に、工期の延伸や工事費の増加に伴う負担を工事事業者に対して強いることが許されるわけではない。規 制のコストを抑制するよう努めなければならないと考える。 ︻事例四ウ︼大規模開発規制︵土地利用に関する事前指導要綱等︶ 大規模開発行為の審査は、事前協議を含めると数年かかる。開発事業者からはこの大規模開発の審査期間を短縮して ほしいといった要望がある。 土地利用に関する事前指導要綱では、五ヘクタール以上の土地を開発する場合、個別の法律に基づく許認可申請の前 に、県土の総合的・計画的な利用促進という観点から、地域の土地利用計画との整合性や周辺に及ぼす影響などについ て事前の調整手続が設けられている。事業者が事業計画を立案すると、まず関係市町村との協議があり、市町村では計 画を検討し、市町村長の意見を付して県に送付する。続いて県との協議に入り、土地利用対策課が総合調整、関係課が 個別審査を行い、指導事項に基づいて事業者と調整する。この事前協議を終えると、事業者は地元関係者と協定を締結 し、土地を取得した後、関係法令に基づき開発許可申請・届出等を行う。そして開発許可等を受けてようやく工事に着 手することができる。 県︵土地利用対策課︶の見解は、土地利用対策課での事前協議期問は半年程度であり、計画から工事の着手までに数 年を要するかどうかは、開発申請者側の計画の熟度などにかかわる問題であるとする。

(30)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)50 本来こうした事前協議が設けられているのは、事前に一括して関係部局と調整することで、計画の実現性を事前に確 認でき、手続に要する時間を短縮できるなどの利点があるからである。要綱の趣旨に基づき、審査期間の短縮など迅速 な処理に努めるとともに、標準処理期間の設定など個別審査に要する期間を知らせておくことも必要であると考える。 ︻事例四工︼敷地区分規制︵都市計画法︶ 建物を建築するために敷地を整地する場合には、都市計画法の定めにより、敷地をフェンスで囲まなければならない。 フェンスで視界が遮られてしまい、通行の妨げになるとの苦情がある。 都市計画法では、開発行為をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないと定められている ︵第二十九条︶。開発許可を受ける場合には、開発区域と隣接地との境界をフェンスで区分するように指導されている。 県︵都市計画課︶の見解は、開発区域と隣接地との境界を明確に区分しないと、敷地面積の上限が定められている建 築物などについては、隣接地と一体的な利用がなされるおそれがあるとする。 しかし、フェンス以外の方法によっても隣接地と区別することはできるはずである。フェンス以外のより制約の少な い方法を示すべきであると考える。 ︻事例四オ︼工場の増築規制︵都市計画法︶ 住居地域で開発許可を受けた工場を増築する場合、増築できる面積が一 制を二・○倍へ拡大してほしいといった要望があった。 ・五倍までに限られている。この工場増築規

(31)

都市計画法では、都市計画に用途地域を定めることとしており、用途地域には住居、商業、工業に関し十二種類ある が、用途地域が定められている地域では、建築物の用途、容積率・建ぺい率などが制限される︵第八条︶。 県︵都市計画課︶の説明では、用途地域の定められている地域で開発許可を受けた工場の増築については倍率の制限 はなく、用途地域の定めのない地域で開発許可を受けた工場の増築についても平成十三年度から一・五倍の制限は撤廃 されており、要望に示された規制は存在しないとのことである。 用途地域による建築物の規制は極めて複雑であり、改正も頻繁である。現行ではどのような規制を受けるのか、法令 の適用を事前に確認できる仕組みが必要であると考える。 ︻事例四力︼沿道サービス施設の立地規制︵都市計画法︶ タイヤ販売業は、都市計画法の定めにより、市街化調整区域には立地できない。タイヤ販売業を沿道サービスとして 認めてほしいといった要望がある。 都市計画法では、市街化調整区域における開発行為は、道路の円滑な交通を確保するための施設など特定の場合にの み認めており︵第三十四条八号︶、同法施行令では、こうしたいわゆる沿道サービス施設を休憩所と給油所に限ってい る︵施行令第二十九条の六︶。 県︵都市計画課︶の見解は、タイヤ販売業を認めると、自動車関連の販売・サービス業が広く認められることになり、 市街化を抑制すべき区域において施設の立地を制限している都市計画法の趣旨が損なわれるおそれがあるとする。 しかし、タイヤの交換も、ドライバーの休憩やガソリンの補給と同様、円滑な交通に不可欠であり、両者を区別する

(32)

白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)52 理由に乏しい。市街化調整区域の趣旨に反しない限りで、沿道サービス施設の範囲を見直す余地はあると思われる。 ︻事例四キ︼用途地域の用途制限︵都市計画法、建築基準法︶ 自動車整備工場は、都市計画法の定めにより、住居専用地域では建築できない。出店場所が限られてしまうため、こ の用途制限を緩和してほしいといった要望がある。 都市計画法では、都市計画に用途地域を定めることとしており、用途地域には住居、商業、工業に関し十二種類ある が、用途地域が定められている地域では、建築物の用途、容積率・建ぺい率などが制限される︵第八条︶。また、建築 基準法によると、自動車修理工場は、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域では建て ることができない︵第四十八条︶。ただし、特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上 やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない︵同条但書︶。 県︵都市計画課・建築課︶の見解は、自動車修理工場は、原動機の使用により騒音や振動を発生させるため、工業地 域や沿道への立地を促すように用途地域を指定しており、住居地域での立地を認めると、周辺の良好な居住環境を害す るおそれがあるとする。 だとすれば、自動車の修理を行わず、タイヤの交換だけの行う整備工場であれば、良好な居住環境を害するおそれが なく、住居地域に工場の立地を認めてもよいと考える。

(33)

︻事例四ク︼用途地域の建築規制︵建築基準法︶ 自動車整備工場は、建築基準法の定めにより、住居地域と商業地域では作業場の床面積が一定以下に制限されており、 車両一台分の面積しか確保できない。面積緩和の許可を受けるには、公聴会及び審査会を開催する必要があり時間がか かる。この面積規制を緩和するか、さもなければ審査手続を簡素化してほしいといった要望がある。 建築基準法によると、自動車修理工場は、作業場の床面積が第一種・第二種住居地域では五十、m以下、準住居地域で は百五十,m以下、近隣商業地域及び商業地域では三百、m以下でなければならない︵第四十八条︶。前記のように、特定 行政庁が例外的に許可をする場合においては、あらかじめ利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を 行い、かつ、建築審査会の同意を得なければならない︵同条第十三項︶。 県︵建築課︶の見解は、前事例と同様、作業場の面積増を認めると、周辺の良好な居住環境を害するおそれがあると する。また、建築許可にあたっては公聴会の開催、建築審査会への附議など法律に則った事務手続があるほか、利害関 係者との調整などで不測の期間を要することもあるので、一律に処理期問を短縮することは難しいとする。 騒音や振動の発生は、主に原動機の使用によるものであり、作業場の面積とは無関係のようにも思われる。原動機の 使用を制限しておけば、作業場面積の緩和を認めてもよいと考えられる。処理期間もできるかぎり短縮すべきと考える。 ︻事例四ケ︼建築物の建ぺい率規制︵建築基準法︶ 建築物の建築面積は、建築基準法の定めにより、 緩和してほしいといった要望がある。 敷地面積に対して一定割合を限度としている。この建ぺい率規制を

(34)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)54 建築基準法では、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合︵建ぺい率︶は、用途地域ごとに上限が定められており ︵第五十三条︶、例えば低層住宅専用地域内の建築物は十分の三ないし十分の六、商業地域内の建築物は十分の八などと なっている。したがって、建ぺい率の緩和には用途地域の変更などが必要となる。 県︵建築課・都市計画課︶の見解は、建ぺい率は、住宅地域や商業地域など地域の特性に合わせて適切な数値が設定 されており、過度に高い建ぺい率を設定すると、建築物の密集による防災性の低下、ゆとりあるまちづくりの促進に支 障をきたすおそれがあるとする。 生命や財産の安全を確保することは不可欠であるが、建築物の工法や性能が向上する中、技術の進歩に合わせた基準 の見直しも必要である。特に高度な利用を促す商業地域においては、耐火構造の建物など、防災性が低下するおそれが ない場合には、建ぺい率を緩和してもよいと考える。 ︻事例四コ︼建築物の完了検査規制︵建築基準法︶ 建築物の建築工事が完了した場合、建築基準法の定めにより、建築主は完了検査を受けなければならない。この全棟 完了検査を廃止してほしいといった要望がある。 建築基準法では、建築主は工事を完了したときは建築主事等の検査を申請しなければならないと定められている︵第 七条及び第七条の二︶。したがって、完了検査の廃止には建築基準法の改正が必要となる。 県︵建築課︶の見解は、地震などの災害で建築物の施工不良を原因とする被害が発生しているため、完了検査を廃止 すると建築物の安全性が確保されないおそれがあるとする。

(35)

生命や財産の安全を確保するために、完了検査以外に施工不良を確認する有効な手段が見当たらない場合には、 検査を廃止することは難しいと思われる。 完了 ︻事例四サ︼敷地内への出入口幅規制︵道路法︶ 道路から敷地へ車両の出入り口を設ける場合、出入り口の幅が制限されている。この出入り口幅を、車両が余裕をもっ て交差できる幅まで拡大してほしいといった要望がある。 道路法では、道路管理者以外の者が、道路を工事する︵車両の出入り口として歩道を切り下げる︶場合には、道路管 理者の承認を受けるよう定められている︵第二十四条︶。出入り口の承認幅は出入りする車種の大きさによって決めら れている。 県︵道路維持課︶の見解は、出入り口幅を広げると、運転が緩慢となって歩行者や自転車通行者を事故に巻き込んだ り、歩道への路上駐車を誘発して円滑な歩行空問の確保を妨げたりするおそれがあるとする。 歩行者や自転車通行者の安全を確保することは不可欠であるが、歩往者や自転車の安全を確保する対策を別途講じる ことで、出入り口幅を広げることもできると考える。 ︻事例四シ︼屋外広告物の設置規制︵県屋外広告物条例︶ 屋外広告物には、栃木県屋外広告物条例の定めにより、塔の高さ、 た広告物規制を他県並みに緩和してほしいといった要望がある。 看板の面積、面数などが制限されている。こうし

(36)

白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)56 栃木県屋外広告物条例では、屋外広告物の表示の場所、方法や屋外広告物を掲出する物件の設置、維持などについて 具体的な規制内容を定めている。 県︵都市計画課︶の見解は、きめ細かく誘導・規制することが望ましいとの屋外広告物審議会の答申を受けて同条例 及び施行規則を改正したばかりであり、条例改正後の屋外広告物の現状を検証する必要があるとする。 頻繁な規制の変更は無用の混乱を招くおそれがある。美しい自然景観の保全、それと調和した都市景観の形成という 本来の目的に照らし、現状を検証したうえで、今後の誘導・規制のあり方を検討しなければならないであろう。 ︻事例四ス︼ダム堆砂状況調査︵河川法︶ ダム貯水池の堆砂状況は、河川法の定めにより、毎年報告することになっている。堆砂の進まないダムについては、 測定や報告の頻度を緩和してほしいといった要望がある。 河川法では、ダムを設置する者は、河川管理者の指示に従い、当該機能を維持するために必要な施設を設け、又はこ れに代わるべき措置をとらなければならない︵第四十四条︶。これに基づき、ダム貯水池の堆砂状況を一年に一回報告 することが求められている。 県︵河川課︶の見解は、堆砂量を把握しないと、一定の容量を超えて堆砂が進んでも必要な措置を講じず、十分な利 水量が確保されないばかりか、洪水調節にも影響を与えるおそれがあるとする。 一律の規制緩和は難しいかもしれないが、ダムの目的︵治水、利水︶と状況︵堆砂量、堆砂進行状況、洪水発生︶に 応じて調査頻度を変更することできると思われる。

(37)

︵五︶環境分野 ︻事例五ア︼一般廃棄物の処理規制︵廃掃法︶ 事業所内で回収した木の葉を腐葉土の原材料として他の者にリサイクルを委託する場合、いわゆる廃掃法の定めによ り、委託先は一般廃棄物処理業の許可を受けていなければならない。リサイクルを促すため、この許可手続を免除して ほしいといった要望がある。 廃棄物の処理及び清掃に関する法律︵廃掃法︶では、事業活動に伴って生じた産業廃棄物以外の廃棄物は事業系の一 般廃棄物に区分される。一般廃棄物の処理は地方公共団体の事務とされており、他の者が業として行うことは原則とし て認められない。一般廃棄物の処分を業として行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない︵第七条第 六項︶。ただし、事業者自らその一般廃棄物を処分する場合や、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの処分を業 として行う場合は、この限りでない。また、一般廃棄物処理施設を設置しようとする者は、都道府県知事の許可を受け なければならない︵第八条︶。 県︵環境整備課︶は、一般廃棄物処理業の許可及び一般廃棄物処理施設設置の許可を受ければよいというが、いかに も手続主義的な対応である。 古紙・くず鉄・空きびんについては一般廃棄物処理業の許可は不要とされており、木の葉についても同様な取り扱い が望まれる。なお、専門部会での検討では、優良な処理業者には優遇措置を講じるべきであるとの意見が出されたが、 県の説明では、一般廃棄物処理業ではなく産業廃棄物処理業の優良化の推進に論点がすり替えられている。自治体の規 制改革では、要望に沿って説明責任を果たすよう心がけなければならないと考える。

(38)

白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)58 ︻事例五イ︼一般廃棄物の運搬規制︵廃掃法︶ 一般廃棄物は、いわゆる廃掃法の定めにより、原則としてその市町村内で処理しなければならない。市町村域を越え て運搬できるようにしてほしいといった要望がある。 廃棄物の処理及び清掃に関する法律︵廃掃法︶では、一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、市町 村長の許可を受けなければならない︵第七条第一項︶。また、産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、 都道府県知事の許可を受けなければならない︵第十四条第一項︶と定められている。 県︵環境整備課︶の説明では、一般廃棄物を積む場所の市町村と下ろす場所の市町村の双方の許可をとれば、市町村 域を越えて運搬できるという。 市町村ごとに許可を申請するのではなく、一か所に許可を申請すれば足りるよう、窓口の一元化による手続の簡素化 が図れないか検討する余地はあると思われる。 ︻事例五ウ︼PCBの基準値規制︵PCB廃棄物特別措置法︶ 油に含まれるPCB︵ポリ塩化ビフェニル︶の混入量は、いわゆるPCB廃棄物特別措置法の定めにより、一定基準 以下でなければならない。保管・管理の負担が大きいため、このPCB混入基準を欧米並みに緩めてほしいといった要 望がある。 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処置の推進に関する特別措置法︵PCB廃棄物特別措置法︶では、PCBの保管 について毎年度届出を行うこと、十五年以内に処理すること、PCB混入の基準が○・五PPm以下であることなどが

(39)

定められている。PCB廃棄物の処理基準を欧米と比較すると、イギリスやドイツは一〇PPm、アメリカとカナダが 二PPm、オランダが一PPmとなっており、わが国が最も厳しいことになる。 県︵環境整備課︶の見解は、基準値を緩和するためには、廃掃法施行規則を改正しなければならないが、基準値を緩 和した場合、基準値未満は廃油として処理されるため、処理施設の周辺環境に影響を及ぼすおそれがあるとする。 わが国が欧米に比べて厳しい処理基準を設けている背景には、現在の処理技術で処理が可能な水準という技術的制約 や、国土面積あたりの使用量︵保管量︶が高いという地域的特性のほか、昭和四十三年にカネミ油症事件が起こり PCBによる健康被害が社会問題になったという歴史的経緯がある。こうしたPCB廃棄物問題の背景について関係事 業者に対して周知を図り理解を求めなければならないと考える。 ︻事例五工︼土砂の地質分析結果の報告義務︵県土砂条例︶ 宅地造成などで土砂を搬入する場合、いわゆる県土砂条例の定めにより、地質分析結果の証明書を提出しなければな らない。測定の負担が大きいため、この証明書の提出義務をなくしてほしいといった要望がある。 栃木県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例︵県土砂条例︶では、面積が三千平方 メートル以上の埋め立て等事業に対しては許可制をとり︵第十条︶、地質分析結果の提出を求めている︵第十六条︶。埋 立地の土砂、搬入する土砂、完了後の土砂と三回の報告が求められている。これは、搬入土砂の安全性を確認し、土壌 の汚染を防止するためのものである。 県︵環境整備課︶の見解は、証明書の提出は、土砂が安全基準に適合しているかどうかを確認するために必要な手続

参照

関連したドキュメント

2013年,会議録を除く」にて検索したところ論文数18 Fig. Intra-operative findings in the case 1 : Arrow- head shows the partial laceration of the anterior rec- tal wall.

古物営業法第5条第1項第6号に規定する文字・番号・記号 その他の符号(ホームページのURL)

づくる溶岩を丸石谷を越えて尾添尾根の方へ 延長した場合,尾添尾根の噴出物より約250

〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

定率法 17 条第1項第 11 号及び輸徴法第 13

2) Jauch  EC,  et  al : Guidelines  for  the  early  management  of  patients  with  acute  ischemic  stroke : a  guideline 

法制執務支援システム(データベース)のコンテンツの充実 平成 13

(2) 輸入郵便物が法第 69 条の 11 第 1 項第 7 号に規定する公安若しくは風俗 を害すべき物品、同項第 8 号に規定する児童ポルノ、同項第