国連集団安全保障体制の現状と課題 : 「集団的意思の個別的執行」論の紹介を軸に
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(2) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月〕. 定が国際連合憲章の中に定められ,現在の国連集団安全保障鵠度が成立した。. しかし,この制度は,憲章創始者が構想した武力行使の禁止とその違反に対 する制裁の集権的執行システムとしては十分に機能することができなかった。. すなわち,もともと憲章の規定は,自衛権行使の容認(51条)など個別主義 的性格の制度を定めた規定もかなり内包している上に,国際の平和及び安全の 維持に関する主要な責任を負う安全保障理事会が常任理事国に認められた拒否 権制度のために屡々機能麻痺に陥り,また国連独自の皐事力を保持するという. 構想も実現していないため,武力紛争や武力紛争の恐れが生じた場合その解 決のため安全保障理事会が適切なタイミングにおいて決定を行い,自ら駆使で きる軍事力をもってその決定を執行するという本来の集権的体制が構築できて. いない。このため国連集団安全保障制度下において、武力紛争に関する事実の 認定,憲章を含む国際法の解釈及び当該認定や解釈に基づく執行はt依然とし て主権国家たる恕盟国の意思と行動能力が強く作用し,また制度の機能自体が それらに依拠せざるを得なくなっている。冷戦終結後,湾岸戦争の際の参加国 の行動が安全保障理事会の常任理事国すべての同意投票を得て採択されたのを 始め,拒否権行使の激減と憲章7章のもとで強制措置を決議する事例の増加に 伴い安全保障理事会は活性化したと言われ,一部には軍事的執行活動を安全保 障理事会の統制に緊密に服せしめる傾向が現れているが,実際には湾岸戦争後 の強制行動はすべて行動国の利害と一致する場合にのみその国の自発的参加に よって実施されたと見られている1〕ように,執行機能が行動国の行動能力と意 思に依拠せざるを得ない状況は変わっていない。. このように本来構想された執行体1闘が分権化して行く一方,冷戦終結後安全. 保障理事会が常任理事国間の連帯と共通の価値観をもって事態に対処し得るよ うになったかは極めて疑問でありZ),国際間に具体的危機が生じた際に,同理. 事会が必要な合意を得ることができなかった事例が屡々見られるが,その場合 に,安全保障理事会の明示の授権を待つことなく個別国家やその支援国が新た な合法論を展開して武力行使に踏み切ることが多くなっている。すなわち,こ 146.
(3) 国連集団安全保陳体制の現状と課題. れまで個別国家による武力行使が合法と認められるのは,自衛権に基づく場合 及び安全保障理事会の授権等に基づく場合とされて来たが,この他に安全保障. 理事会が常任理事国間の意見不一致により,憲章7章に基づく必要な強制措置 を決議し得ないために,人道上の切迫した危急を救う目的とか,確定している 国連の共適利益を実現する目的で止むを得ず個別国家やそのグループが個別的 ・に強制行動をとったような事案においては,合法性ないし正当性が主張される ようになっている。+このような傾向は,国連集団安全保障制度の執行体制の分. 権化に伴い,武力行使の禁止という最も重要な憲章規定の規範性が弛緩してい ると見るべきなのか,或いは動的な国際政治の現実を直視し,憲章の新たな解 釈を促しているとみるべきなのかについて,見極めを行う段階に来ていると思 われる。本稿では,安全保障理事会の機能の現状から,今後も同理事会の明示. の授権等がないまま行動が必要とされる事態は避けられないとの予測のもと に,後者の視点に立ち,最近の行動事例において主張された各種合法論の中で,. 筆者においてこのような事態への対処の仕組みを提供しうる最も優れた合法論 と考えられる学説を紹介し,それに基づき,実際の国際政治の場で適切な措置 がとられるための諸条件と今後の方向を考察してみたいと思う。. 二 個別的行動に対する合法性の主張 1 合法論に関する五つの類型 前述のとおり,冷戦後も安全保障理事会の明示の授権があったとは言えない 段階で個別的に武力行使が行われた例は少なくない。このような場合,行動国 は自衛権に基づくものと主張できるときはその旨主張したが,安全保障理事会 の授権を受けない違法な行動であるとの批判に対しては種々の根拠を掲げ行動 の合法性を主張した。それら行動国の主張や行動のどの点に着目するかによっ て種々の合法論が生まれ,これを類型化すると,凡そ五つのタイプに分けるこ とができよう:)。すなわち,①黙示の承認(lmplied Authorizations)論,②推. 147.
(4) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 論された権能(lmplied Powers)理論,③事後承認論,④人道的介入論の法規 範化説,及び,⑤集団的意思(Collective Will)の執行論であるe. 2 各合法論の概要 {1)黙示の承認(lmpfiied Authorizations)論. 安保理決議による明示の授権又は承認がない場合であっても,特定の安保理 決議の中の特定の文言又は決議自体の趣意から,黙示的な承認を引き出すこと. ができるとの主張。例えば,決議の申で「国際の平和と安全に対する脅威」の 認定が行われていたり,或は決議に基づき義務を課せられた国に対し「如何な る違反も重大な結果をもたらす」とか,「平和と安全の回復のため更なる行動 と追加の措置を考慮する」などの事項が定められているときには,それらの決 議事項によって,強制的行動は承認されており正当である旨行動国によって主 張される場合がある一t)。1998年12月の武装解除義務違反を理由とする対イラ. ク武力行使の際には米英両国によって主張され5),また1999年3月のコソボ. 危機介入の際にはNATO諸国によって合法理由の一つとして主張された㌔ しかし,上記のような安保理決議の中の字句表現は,例えば何時如何なる 追加的措置をとるかを決定する権限は安全保障理事会に存続し,加盟国に直接 授権されたものと見ることができないことはfiEらかであり,また,特定の字句. のニュアンスや決議全体の趣意により暗黙裡の承認であると決定することは一 般に容易ではなく,従って,黙示の承認の許容は,基本的世界秩序の実現のた めの方法としては疑問で,黙示の承認論により武力行使の正当化をはかる試み がしばしば生じたとしても,「制度的で破られない慣行」に昇華することはな い7}と見られている。. (2)推論された権能(lmplied Powers)理論. 安全保障理事会の国際の平和及び安全の維持に閲する責任は主要辟♪ではあっ. ても,排他的なものではなく,地域的取極が憲章7章と8章のギャップを埋 148.
(5) 国連集団安全保障体制の現状と課題. める残余の責任を有し,その責任に基づき行動できるとする説。コソボ危機介. 入の際にNATOの強制行動に参加した国及びコソボ近隣国等によって主張さ れた。安全保障理事会が一部の常任理事国間の意見不一致により機能し得なく. なった場合には,憲章8章の地域的取極の役割を目的論的に解すれば,安全保 障理事会が有する国際の平和及び安全の維持に関する責任の残余の部分を地域. ・的機関が担うと解することが可能で,従ってNATOがその責任を果たすため 武力を行使することは正当化されるとの主張である゜}。. これは,しかしT朝鮮戦争勃発の際に安全保障理事会を欠席中であったソ連 が同理事会に復帰後再び同理事会が機能麻痺に陥ったときに,同理事会の権限 行使を補う目的により総会で平和のための結集決議が採択されたときの論理に. 倣ったものと思われるが総会は,もともと憲章の範囲にあるすべての事項を. 討議し、加盟国及び安全保障理事会に勧告をする権限を有すること(憲章10 条)tまたすべての加盟国によって構成される機関であることに鑑みれば,地 域的機関を総会と同等と見て同機関に推論された権能を適用することにはかな りの無理があると考えられる]°)。. (3) 事そi登承言忍言禽. 安全保障理事会において事後的に行動の合法性を評価し,その結果同理事会 が決議や議長声明において当該行動につき事後承認を行ったと解し得る場合が. あるとする主張。コソボ危機介入事案並びに1990∼1992年のリベリア及び 1998年のシエラレオーネの各内戦におけるECOWASの軍事介入事案について, 学界等でそれぞれ主張された。. コソボ危機介入事案に関しては,作戦停止直後の1999年6月10日に採択さ. れた安保理決議1244の中に,NATO諸国の介入をエンドースする明示的文言 は発見できないものの,1司決議は,ユーゴスラビアに平和をもたらすに至った 手段に対しては疑問を提起することなく,コソボ駐留軍(KFOR)の動員を定め,. コソボの自治を確保するための国連暫定行政機構の設置を定めることなどによ 149.
(6) 横浜国際経済法学第17巻第1号{2008年9月). り,介入の結果を受入れ新たな状況を支持したことになり,これが,安全保障 理事会が黙示的に事後承認を与えたことを示すものであると主張された11〕。し. かし,Gowlland−Debbasは,決議1244が,条約法条約52条に反して,武力に よる威嚇又は武力の行使を通じて得られた合意を承認し,或いはユスコーゲン. スの秩序に反する行動を正当化しようとするものであるならば,安全保障理事 会の責任に関して重大な問題を提起することになると反論した12)。. 一方,コソボ危機介入よりも前,安全保障理事会の明示の許可がないまま. 1990年からのリベリアの内戦及び1997年から1998年にわたるシエラレオー. ネの軍事クーデターに基づく混乱を鎮圧するためtECOWASが軍事介入し た事案においては,一応の停戦が成立した際に,安全保障理事会が議長声明 又は決議をもって,それらの国における平和と安全の回復のために果たした. ECOWASの努力ないし役割を称賛する旨を述べたことにより, ECOWASの 行動に対し明示の事後承認が与えられたと解されている1:S)。しかし,この事. 後承認論に対しても,Gowlland−Debbasは,安全保障理事会が称賛したのは1. ECOWASの外交的努力に対してなのか軍事介入に対Lてなのかが明らかでな いとの理由から,賛同できないと述べているln。. (4)人道的介入論の法規範化説. 或る国で大規模な人権抑圧が行われているなど,人道的危急が迫っており,. これを救う目的のいわゆる人道的介入による武力行使については.安全保障理 事会の権限の枠外のものとして許容され,それに伴い,武力行使禁止原則の解 釈を変更する新たな国際法規範が生成されつつあるとする説。コソボ危機介入. や、1998年12月27日から翌年にかけて行われた,イラク国内飛行禁止空域 遵守義務違反を理由とする米英両軍の対イラク空爆の際に,行動理由の一つと してtこの学説が援用された。. 特にコソボ危機介入に際しては,人道的介入論の規範化が強く主張される. とともにそれに対する反論も多く、学界においては激しい論争となった。 ユ50.
(7) 国連集団安全保陸体制の現状と課題. GOwlland−DebbaSはt憲章・2条(4)の「ユスコーゲンスとしての」規範性を 強調して,コソボ危機介入についての倫理的,政治的観点からの違法性阻却論 を否定し,安全保障理事会の明白な許可がない軍事介入には合法性も正当性も. 認められないとした15)が,学説の多くは,コソボ事案の入道的側面を重視す れば合法性又は正当性を認めることができるという見解を示した。しかし,こ ・の見解の中においても,平和的解決のためのあらゆる努力がなされた後の,コ. ソボの人々を重大な人道的破局から救出するための止むを得ない緊急措置で あったとして,その事案に限り例外的に違法性が阻却されるという主張固と,. コソボのような事案は例外にとどまらず,今後類似の事態が生じたとき同様の 行動が行われる可能性は高く,「国際平和に脅威を与える程重大な人権違反は 速やかに終息させる必要があり,他に代替手段がない状況下では安全保障理事 会の承認がないまま武力への依拠を認める国際法上の一般的ルールが生じつつ ある1?}」とするCasseseに代表される主張とが対立した。この後者の主張がい. わゆる人道的介入論の法規範化説に該当するが,必ずしも多くの支持を受けた とは言い難く,今後「学術的前提として維持されるべきかの疑問」さえ提起さ れているIS)。. (5)集団的意思(Collective Wil1)の執行論. 意味,内容において黙示の承認論と近似する面があるが,黙示の承認論が根 拠とするような安保理決議の内容,目的を一般概念的に定義して,決議の中の 特定の文言や決議全体の趣意に基づいて定まる,具体的状況の下の「人権擁護」. とか「平和の維持」といった共同体(国連)の共通の目標又は利益を「集団的. 意思1到とよび,集団的意思の実現をE的とする執行は,たとえ個別的であっ ても,従来違法とされてきた欠陥の幾つかが排除され正当化され得るZ°}とす. る学説。黙示の承認論が主張されたコソボ危機介入の事例等に関してのみなら. ず,2001年アフガニスタンのタリバーン政権に対する攻撃や2003年3月のい わゆるイラク戦争における対イラク攻撃に関しても,行動国によって示された 151.
(8) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 合法性の主張の一面に着目して,学界の一部から「集団的意思の執行」として 提唱されたものである2%. なお,Gowlland−Debbasは,集団的意思とほぼ同じ概念を「集団的決定」と よび::’),その個別的執行の論理に着目した一人であるが,安全保障理事会の明. 確な授権等がない個別的行動は同理事会の権限纂奪行為になると述べており, むしろ「葉溺のヴェールの陰に隠れることにより,個別的行動に対する制約を. 回避しようとすることを防ぐため,安全保障理事会における集団的行動を制限 する」必要を訴えているZl}。. 3 書藁音法論の示唆する課題 主遠書とおり,冷戦終結後における,安全保障理事会の事前の授権等がない 」慧姜で纒嚢日§に行われた武力行使に関して,行動国は種々の合法論を掲げて行. 褒の套議窪を主張したが多くの事例でt安全保障理事会の常任理事国の一部 を霊妻蓬蓬撫鐙国が行動国の合法性の主張に異議を唱え(もともと安全保障理 事会仁妻導る意見不一致に基づきとられた行動の場合が多いのであるから当然 で繧あろう力弓,異議のなかった例外的ケース:’・Oについても.学説の中でそれ. ぞれ4>会義肇への反論がある。GoWIland−Debbasは,コソボ危機介入事案につ. いて転彗霧撞なくともその事案に限っては合法とは言えなくても倫理的観点 又ほ政治璽籔舞から正当性は認められるとの学説が多かった中で,安全保障理 事会の璃承の詩可のない介入行動については,合法性も正当性も認められない. とし且つ太蓬憩分入論の法規範化を否定したように,他のすべての合法論を 否定している。. Gowlland−Deb麺sの法理論は,同人の論i“ 2s}から判断する限り,国際法体系. は,社会的変化に法を適応させる「開放された体系」と捉えるよりもこれを自. 律的なものと見倣し.ケルゼンが当時の社会秩序の激烈な変化に対抗して法の 厳格な自律性を強調し,政治目拍のための道具となることにより法が崩壊する のを防止しようとした「法の純粋理論」アプローチに従ったものと考えられる。 152.
(9) 国辿集団安全保障体制の現状と課題. その立場から,安全保障理事会の明示の授権等がない武力行使は,「ユスコー. ゲンスとしての」憲章2条(4)の規範に反するとともに「安全保障理事会の 権限の纂奪行為」になり,その結果そのような武力行使を合法化する理論は一 切認められないとの結論に帰着するようである。例えば,「集団的意思の個別 的執行」についても,Gowlland−Debbasは,個別的行動を集団というヴェー一ル. ・の陰で正当化しようとする国家の動きに注意し,集団的意思が形成されること を制限する必要を述べていることについては前述した(2・(5)参照)。しかし、. もしその制限を徹底するならば,憲章規範の違反に対する警告決議も違反国に 対する非難や制裁の決議も行うことができなくなっていわゆるrogue stateの 横行を許すことにもなり,それに対抗して,次には大国が純粋に個別的な行動 をとるおそれが生じ,集団安全保障制度の崩壊につながりかねない。. むしろ,前述のような種々の合法論が現れるのは,安全保障理事会の機能の 現状とそれに基づく国連集団安全保障制度の執行体制の分権化を反映した或る 意味で必然的な現象であり,またそのような状況の中での現実の動的な国際政 治に対応して適切な法解釈のもとにできるだけ適正な解決を得る目的によるも のと見る必要がある。しかし,前述した各合法論には,Gowlland−Debbas等の 指摘によるような問題が含まれていることも事実なので,少なくともどのよう な合法論ならば、行動が必要であるにもかかわらず安全保障埋事会が機能不全 に陥っているときに最も合理的な解決の仕組みを提供し得るか,また,その仕 組みが広く正当性を認められ且つ濫用に陥らないようにするにはどのような条 件が必要となるか等が真剣に検討されなければならない段階に至っていると思 われる2C・)。もしこの検討が放置されるならば,最近における国際政治の力学か. ら,時宜により自衛権の主張も含め,いずれかの合法論が無原則に適用される 恐れがないとは言えず,それもまた国連集団安全保障制度の弱体化につながり かねない。この観点から,各種合法論等を比較すると,安保理決議等に基づき 確定する安全保障理事会の意思にリンクしその意思を実現する目的で行動する 集団的意思の執行論には特に注目する必要があると思われる2㌔そこで次に, 153.
(10) 横ifi:i’国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 一部の学説によって集団的意思の執行と主張された行動事例のうち、コソボ危 機介入及び対タリバーン政権攻撃における主張の状況を概観し,更に一般に武. 力行使の開始に反対が多かったと考えられている2003年のイラク戦争におい てさえ,行動国の行動を集団的意思の執行と捉えたC.Stahnの見解にも相当の 合理性が認められ、且つ今後の実効的な執行体制の構築を示唆している点があ ることを考察する。. 三 「集団的意思の執行」論の展開 1 コソボ危機介入における集団的意思の執行. 1999年3月のコソボ危機介入事案に関しては,「集団的意思の執行」論を最 初に提唱したKr玉schによれば,行動国によってT前述した人道的介入論によ. る正当性の主張の他,当時のFRY当局の人種差別政策による,国際の平和及 び安全に対する脅威となる程の重大な人権侵害を終止せしめ,コソボにおける. 住民の「入権の維持及び回復」をはかるという安全保障理事会の決議によっ て確定している共蓮の目的(利益)を実現するため軍事行動を行った旨の明確 な主張が示されたと見る。すなわちFRYに対する攻撃開始直後の記者会見で,. オルプライト米国務長官が,人道的介入を強調する一方で,NATOの行動は憲. 章7章に基づきFRYに命令的に義務を課した決議1160,1199及び1203等安 全保障理事会の決定の枠組の中で行われたと説明し2S},英国も,国防長官が下. 院で「かかる状況における武力行使は,安全保障理事会で定められた目的を支 援するための例外的措置として正当化され得る」と述べたor・)ことをもって行. 動参加国はその行動を「集団的意思の執行」であると主張したと見るのである :°)。なおこのような行動国の主張に対しては,ロシアを始め憲章53条違反と. して批判する発言も少なくなかったが,ロシア等の提案による非難決議案は安 全保障理事会で3国が賛成したのみで否決された。. 上記のようなKrisch等の見方を除き,介入を正当化する多くの学説は人道 154.
(11) 国連集団安全保障体制の現状と課題. 的介入論を根拠とするものであったが,人道的介入論の規範化の可能性を主張. したCassese等に限らず,規範化に反対するSimma等の主張もコソボ事案に 限っては人道的介入も已むを得なかったとするもので,憲章規範の枠外の行動 を合法に近いと見る点において,憲章規範の枠内に行動の根拠を求める行動国 の「集団的意思の執行」論に比べ問題点が多いと言わざるを得ない。. 2 対アフガニスタン武力行使における集団的意思の執行. 2001年9月11日,米国で発生したいわゆる同時多発テロ行為に対し,米国 は,背後にアフガニスタンに拠点を置く国際テロ組織,アルカイダがあると見 て,その指導者の引渡しとテロリストの訓練キャンプの閉鎖等を同国タリバー. ン政権に要求したが,同政権がこれを拒否したため,10月7日tアフガニス タンにおけるアルカイダの訓練キャンプ及びタリバーンの軍事施設に対し攻撃 を開始するとともに,自衛権に基づき行動を開始した旨安保理議長宛報告した :’1)。国際社会は,この攻撃に参加した英国を始め中国やロシアを含む多くの国. が米国の行動に支持を表明した3% しかし,このような国際社会からの圧倒的な支持があったとはいえ,米国等. の武力行使が憲章2条(4)の禁止原則の拘束を受けない合法的な行動であっ たかについては,学界で相当の議論となった。すなわち,湾岸戦争の際におけ るように同理事会が加盟国に対し武力行使を正式に授権(authorize)するとい. うことは行なわれておらず,また,自衛権行使による攻撃であるとの主張に関 しても,憲章に定める自衛権行使の前提条件として,例えば「国家」による武 力攻撃が実際にあったと認められるかについてのみならず.攻撃の必要性・緊 急性の有無や攻撃結果との閲係からの均衡性についても疑問が示された。従っ て,本件武力行使は憲章2条(4)に違反するのではないかとの見解がヨーロッ パ大陸3tl)や日本:’・:)の学者の間で多く展開されたが,それらの学説も,凶悪な. テロリスト攻撃の根絶を期する対策としての軍事行動に必ずしも反対している. わけではなく、むしろ安全保障理事会が憲章7章の権限を行使して,加盟国に 155.
(12) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年g月). 武力行使の許可(autllorization)を行うなどの方法により国連の集団的措置と して行動することには賛成であった3%. Stahnは,前述のとおり(注33参照)当初米国の行動を自衛権に基づくも のとの見解を示していたが,後に「集団的意思の執行」事案のひとっと見るよ. うになっている。すなわち,安保理決議1368の前文で「テロリスト行動によ り生ずる国際の平和と安全に対する脅威とすべての手段により闘う」旨の決 意が述べられていることが,11月13日の安保理会議におけるベルギー外相の. EU代表としての発言に引用され,「10月7日に始まる軍事作戦は,憲章及び 決議1368に基づくもので正当であり,EUはこれを強く支持する”・ 6)」旨の意. 思が表明されたことに注目している3%この意思表明は,EU諸国が安保理決 議1368等の中に「テロリスト行為の撲滅」による「平和の維持」という集団 的意思を見出していたことを意昧するものだというわけである。この見解に従 えば,米英両国も,上記のとおり行動開始の日に,ともに自衛権発動による行 動である旨を発表したのではあるが,米大統領は同日の国民向けメッセージで,. 多数の国からの支援又は支持があることをもとに「我々は世界の集団的意思に よって支持されているa・・)」旨述べ,英国の立場も,EUの一員として上記ベルギー. 外相の発言による認識をも共有していたと認められるので,「決議の前文に基 づき重大な法的効果を付与することはできない」と主張する論者にとっての反 論はあろうが,本件武力行使を集団的意思の執行と解し,その行動に正当性を 認めることには相応の根拠があると言えよう。. 四 イラク戦争における集団的意思の執行. 1総説 湾岸戦争の停戦条件として主に大量破壊兵器の破棄等イラクの戦後処理義務. を定めた安保理決議687の不遵守を理由とする1998年12月の米英両国軍によ る対イラク空爆に引き続き,安全保障理事会の授権の有無について常任理事国 156.
(13) 国連集団安全保障体制の現状と課題. 問及び関係国間の意見不一一致を残したまま,2003年3月に米国の開戦宣言を もって始まったいわゆるイラク戦争の合法性をめぐっては,欧米の学界等で再 び激しい議論となった。行動国,特に米国は,公式には湾岸戦争の際の授権決 議に基づき行動したと主張したが,その米国の立場を主に自衛権の発動による. 合法なものとして擁護しようとする一部の議論鋤があった他,安全保障理事 会の執行能力の不足を補うために集団的制度の中で個別的行動が許容される場 合があるとの主張40),イラク戦争は,主に米国による単独行動主義の傾向が顕. 著に認められ,今後安全保障理事会を申心とする国連の集団的制度の瓦解を招 くとの見解や危倶を表明するもの4D,個別国家の国益は国連の枠組みの中にお. いて最も成果が得られるとの見解のもとにブッシュドクトリンの変更を促す 主張鋤丁或いは,米国等の行動に一定の正当性を認めるとともに,その行動を. 機に安全保障理事会の中に対立が生じたとしても憲章の中核は揺がず,憲章 はなお国際の平和と安全に対する脅威に対処し得る安定した集団的枠組を提 供し続けるとの主張刷などがそれぞれ展開された。Stahnのイラク戦争に関す る論述4“)も,全体的にはこの最後のカテゴリーに分類されるものと考えられ. るがtその中でT特にGlennonやFranckの主張(注41参照)を強く意識し, 安保理決議144担の武力行使に対する許容性の不足について,また米国が主 張するように安保理決議67S‘tfi)による授権が復活したとしても,その授権範囲. はイラクの政体変更を目的とするものにまでは及んでいないことについては,. Glennon及びFranck両教授他多くの論者と見解を同じくするとしつつ,分析 をその段階で終えてはならないとして対イラク武力行使を「集団的意思の執行」. と捉え,その執行を正当に評価すべきであると主張した。すなわち,武力行使. の根拠として決議1441を補強するため米英スペイン三国が提案したいわゆる 第二二の決議案は採択に至らなかった・7)が対イラク攻撃は,イラクの武装解. 除及び少数民族の人権擁護による平和の確保という安全保障理事会で定められ た共通目標の追求と見られるため,単純に憲章の違反行為ということはできず.. また,安全保障理皐会でそのような集団的意思を執行する権限の解釈を議論し. 157.
(14) 横浜国際経済法学第17巻第1号(20e8年9月). た結果の産物と見倣すことができるからt当該攻撃の決定は憲寧の正式な枠組 の中で行われたと解され、更にrイラク政府による憲章に基づく義務の恒常的 無視と安全保障理事会による「平和に対する脅威」としての状況認定によって・ 当該武力行使は「或る程度」の正当性を得ていた旨主張したのである柑}。. 2 「集団的意思の執行」に対する事後評価と安全保障理事会の機能の強化. Stahnは,またt Krischがコソボ危機介入の事案等を検証して「集団的意思 の個別的執行」権の生成の可能性を論じた一19)のに対し,イラク戦争における. 武力行使を中心に,その他の事例も含めて検証を行い,集団的意思を執行する ための一定の基準に該当する個別国家等の行動は,安全保樟理事会の授権がな い場合でも,事後の評価により,遡及的に合法と認められ或いは武力行使禁止. 違反の制裁を免除される状況が生じつつあるとし,それによって憲章規範が 徐々に改変されて行く可能性を予測した聞)。その結果,集団的意思を執行する. ための加盟国等の行動については,安全保障理事会が事後的にその法適合性を 判定するシステムが生じつつあり,それは安全保障理事会を事実上「武力行使 の授権を司る『行政機閲』から,授権のない行動について,合法か違法かを評. 価し決定する『裁定者』に変える列ものであると見て,安全保障理事会のそ のような変質は,憲章のもとの武力行使や強制行動の分権化を助長する面があ るものの,同理事会の規範的機能を強化することになる鋤との認識を示した。 同時に,この機能強化によって「集団的意思の個別的執行」の合法化が集団安 全保障制度の衰退をもたらす原因になるのではないかとする1(rischの懸念副 を払拭し得るものと考えたのである51}。. 実際に安全保障理事会によって評価裁定された事例としては、例えば、コソ ボ危機介入事案では,前述したとおり(二・2・(3)参照),Stahnらの学説によって、. 黙示的に事後承認が行われたと解されている。また,2001年10月の対アフガ ニスタン武力攻撃の事案では,タリバーン政権軍が首都カブールから撤退した. 日の翌11月14日,アフガニスタン政府樹立を目指し新暫定行政機構を設置す 158.
(15) 国連集団安全保障体制の現状と課題. るアフガン国民を支援することを定めた安保理決議1378の前文において,「国. 連憲章に従い,同時に決議1368及び決議1373を再確認し,テロリズムを根絶 する国際的努力を支持する」旨が述べられたことをもって,黙示的に事後承認 がおこなわれ,集団的意思に基づく米英の個別的執行を執行時に遡って合法と する「裁定」がなされたとStahnは解している・” 5] o ”. 3イラク戦争に対する安全保障理事会の評価 (1)集団的意思の成立. イラク戦争における米英軍等の軍事行動については,前述のとおり(注46 参照),特に米国が公式には,安全保障理事会の決議678に基づく集団的措 置であることを主張した。しかし,決議678に明示の授権があることのみを根 拠にすることは,同決議の主要目的は,イラクをクウェート侵攻以前の状態に 戻すことにあったのであり,「地域における国際の平和及び安全を回復する」 という.目的が含まれていたからとて,これがイラクの政体変更にまで及んでい. たとは考えにくいため、法的観点からの支持を得がたい論理となる。むしろイ. ラク攻撃は実質的には安全保障理事会で成立した集団的意思に基づく執行で あったとするStahnの見解に妥当性が認められ,当事国もその認識を有してい たと考えられる(後記164∼165頁参照)。ではイラク攻撃の根拠となった集 団的意思はどのように形成されていったかについて,その過程をKriscllの定 義及びStahnの論理に従い辿ると次のようになる。. 1998年12月半ばにイラクがUNSCOM及びIAEAの査察団に対し査察制限 を行ったことから,米英両空軍による4日間にわたる対イラク空爆が行われた. が,査察再開には至らず,1999年12月には安保理決議1284により査察体制. 強化のためUNSCOMに代わるUNMOVICの設置が決定されたものの,状況 は変わらなかった。2002年の後半頃からは,ブッシュ大統領の国連総会演説 を含め.イラクの継続的な決議違反に対し武力行使も辞さないとの米英側か らの強い意志が伝わったためか,イラクは査察再開に応じる意向を示すよう 159.
(16) 横浜国際経済法学第17巷第1号(2008年9月}. になった5CT・)が,このとき既に米国側は最後通牒的な安保理決議の成立を考慮. 中57)で,2002年10月22日には,米国からイラクに改めて大量破壊兵器の破 棄等を求める新決議案が提示され剖,続いてフランスとロシアからそれぞれそ れに対する修正案が提示され鋤,安全保障理事会において,イラクの「重大な (materlal)違反」がイラクを武装解除するための武力行使に正当な根拠を与え. るかをめぐつて白熱した論議となった6°)。すなわち,UNMOVIC等の査察権限. を強莚L.4ラクに対し完全で無条件の査察協力を義務づけるとともに,イラ クの嚢鴛纏な安保理決議違反を非難しそれが国際の平和及び安全に与える脅威 1こなると見ることなど多くの点で理事国間の意見は一致したが,米英両国が,. 武力奪褒を必要とする場合に第二の決議を要することなく行動できる決議を求. 毒た甜のに対し,フランスは決議の中に武力行使を可能にする「自動性」を 一書ませることは避け,イラクの更なる決議違反に対する対応は安全保障理事会. 寮塞毒て湊定する機会を確保することを主張したcr)結果、イラクの更なる違 嚢董こつ:SvSて査察団から報告があった場合は直ちに安全保障理事会を招集し.状. 霧を義嚢する(consider)旨の一項が新たに挿入されることとなり,安保理決. 譲匡聾蓑±t2902年11月8目,米英側及び「仏露側」双方がそれぞれの解釈 と慧惑郵を麹いたまま全会一致で採択された6%. こ善鐵議1441の申で,安全保障理事会は,イラクが決議687によ1)定めら れた震菱馨繋義務及びその履行促進を定めた諸決議を恒常的に無視して来た 事実繊舞霧の平和及び安全に対する脅威であることを確認刷した上で,「重 大な(m皐憩ri舖違屋」に該当することを決定し{’6),その違反を解消する「最. 後の機会」をイラクに与えf’7),もし虚偽の申告等や決議の不遵守があり,ま. た決議の実施仁対し十分な協力が行われないならば,それは「更なる重大な (material)違反」を欝成する旨決定し6s),且つそのような義務違反によってイ. ラクは「重大な(serifills)結果」に直面するであろうとの警告を再確認㈲し たのであるが,これらの決定等をもって,イラクの武装解除を確実に実行させ,. 国際の「平和と安全を確保」するという集団的意思が成立したと言うことがで 160.
(17) 国連築団安全保障体制の現状と課題. きよう。これにより,米国が必要な場合には武力を行使し得ると理解したこと. は,上述の米国連大使の発言(注63参照)からも推測され,2003年1月31 日ブレア首相がブッシュ大統領を往訪の上,第二の決議の成立を図りたい旨伝. えた際には,ブッシュ大統領が,第二の決議は歓迎するが,決議1441は既に 米国にイラク攻撃の権限を付与している旨伝えている7°)ことから明らかであ る。. しかし,決議1441の申における,武装解除義務の速やかな履行を確保する 手段に関しては,できるだけ国連の査察体制を通じるという手段と,査察体制 では効果が不十分な場合は武力行使により履行の強制を図るという手段をめぐ り,理事国の間に意見の対立があり7t),また査察体制を通じて履行を確保しよ. うという主張の中でも査察の期間をどの程度にするかで意見が一i致しなかった T2)。このため,米国と同様に,イラクの長期にわたる義務違反を是正するため. には,サダム・フセイン体制に対し、武力行使も辞さない旨強いメッセージが 必要であると考える英国及びスペイン両国は,武力行使の根拠を一層明確にす る第二の安保理決議を得ることが政治的に重要な意味を持つと見て,米国を説. 得の上,2003年2月24日三国共同で「イラクが決議1441で与えられた武装 解除義務を遵守する最後の機会を逸した」ことを決定する決議案を安保理理事 国に回付したn)。. これより前,2002年12月7日イラク政府は,決議1441により30日以内 に提出を求められていた大量破壊兵器開発計画に関する申告書を査察団に提. 出したが,2003年1月27日の第4692回安保理会議において,ブリックス UNMOVIC委員長はs 12,000頁にわたる申告書のほとんどは前回までに提出さ れた書類の複写であり,疑問点を解消ないし消滅させることはできなかったと. 証言し71},また,エルバラダイIAEA事務局長も,申告内容は1991年以前の. イラク核開発に関する我々の理解と一致するが1998年(の査察中断)以降 の未確認の問題,特に武器使用及び遠心分離装置開発に閲し1991年の時点よ り進展しているかについては、新しい情報は何ら示されていない旨証言してい 161.
(18) 横浜国際経済法学第17巻第1』}(2008年9月). る7㌔. 2月14日の第470ア囲安保理会議においては,ブリックス委員長は、「イラ クは、査察受入の場所を工場,兵器庫,研究施設,大学等のみならず大統領府. や個人柱宅等にまで拡大してそれらの場所へのアクセスも容易にし,また査察. 官1人につき5入の監視人をつけていたのを1人にするなと二査察方法に関す る協力の致善は顕著であり,その他にも残存禁止兵器探索を目的とする委員会 と禁止舞巽及び禁止計画の廃棄に関するより多くの文書を収集することを目的. とす基委員会を設置した旨の通知を受け,また生物・化学兵器及び核兵器の輸 入・嚢蓬を禁止することを含む大統領令が当方との折衝の末公布された旨の通 蟻を受謬た」と述べ7G),イラクの協力姿勢に一定の評価を行う一方,武装解除 垂二轟する鍵続的疑惑を解消する証拠を示すなど実質面の協力が不可欠であるこ とをi鐵譲した”〕。すなわち「約1,00⑪トンの化学兵器物質を含む多くの禁止兵. 繋蕊寮霧聾(例えば,炭疽菌,郭経兵器VX,長距離ミサイルなど)について,. そ義ら野薮棄に関する新たな証拠は提出されておらず,輸出入規制の枠外で輸 五さ義たミ号イルエンジンも禁止物質と評価されている」などの実情を説明し 7B」. D窒霧を鍵続する意思を表明した79)。エルバラダイ事務局長も,ブリックス. 委蓑蓑と董葦鍾羅趣旨でイラクの査察協力の改善ぷりを具体的に述べる一方1ウ. ランの董真を麗っていると伝えられる問題,高強度のアルミ管を計画的に取得. した霧嚢t霧石及びその製造能力取得問題及び爆発力の大きいHMX使用問題 を引き綾き藁ii憂Lて行く意思を表明し,特に高強度のアルミ管はウラン濃縮の. ための遠心豪薮毅の製造を目的とするものではないかとの疑いがあるとしてこ れを追求して行ξ必要を強調した’c°)。. 3月7日の第47錘聾安保理会議においては,ブリックス委員長は,イラク の更に積極的な協力ぷ1フについて具体例を挙げSt)説明したが,これは強い外. 部からの圧力によるとも考えられるtと及び依然として問題が多々残っている ことを指摘麟するとともに,1月末頃から急にイラクの積極的な主導による措 置が目立ってきたとの印象を受けるが,それらの措置の価値は,それが多くの 162.
(19) 国iUs団安全保障体制の現状と課題. 残存する問題点をいくつ糺すことに成功したかに照らして冷静に判断されるべ きであり,実はそのことは未だ明らかになっていない旨証言したS3)。. 次いで,エルバラダイ事務局長は,2月14日の会議で調査の必要があると 述べた問題のうち,アルミ管及び磁石等の取得問題並びにウラン輸入計画疑惑 についてその後の調査状況を報告し,アルミ管はロケットの逆噴射エンジン以 外の目的に使用されるという証拠は発見されず,遠心分離機の製造のため醐入 されたとは考えにくい(しかし引き続き精査が必要である)こと,強力永久磁 石等の輸入がウラン濃縮のためだとされる問題については,]LAEAの専門家が イラクの申告による磁石は直接遠心分離機には使用し得なかったことを証言し. ている(しかしイラクは2001年に磁石について輸入から国内生産に切換え, また濃縮に適する強化永久磁石の製造技術知識も蓄積しているので,引き続き ウラン濃縮の目的に使用されないかを監視する必要がある)こと,及びウラン 取得・,特にニジェールから取得しているとの疑いについては,ユ999年2月の イラク高官のニジェール訪問以来生じたものであるが,ニジェール政府の諸機. 関からの通知書類を精査したところ真正なものではないことが判明した(し かし,別の証拠がないか調査を続行する必要がある)ことなどを述べた現〕後,. 核兵器分野では調査が前進しており,少なくとも衛星写真で特定された建物や. 調査済みの場所において禁止された核関連活動の徴候は見られないと言える が,IAEAは当然上記の諸問題を引き続き精査する積もりであるとの意思を表 明したs・}。両人の以上あような説明から,少なくともこの段階において,イラ. クの武装解除に関する決議違反が解消した旨の確たる証言が得られていないこ とは確かであろう。 、. このような状況の中で,上記第二の決議案に対しては,ロシアとフランスが 拒否権を行使する可能性が伝えられua),米英スペイン三国は,3月7日急遽決. 議案の主眼を「イラクに対し,3月17日までに決議1441に基づく武装解除義 務に対する完全にして無条件の直接且つ積極的な協力を表明する最終の機会を. 与える」という内容に修正の上,理事国に再回付した8%当時この決議案に賛 163.
(20) ‡li町i兵国際経亨斉i去学第17巻第1号 (2008‘F 9月). 成の意思が明白であった理事国は,提案三国の他はブルガリアのみであり,ロ シア,フランスの他,中国,ドイツ及びシリアが強く反対の意思を表明しておll T. 他のアンゴラ,カメルーンtチリ,ギニア,メキシコ及びパキスタンは,問題 の主因はイラクの度重なる安保理決議違反にあると見て決議案に一定の理解を 示すものの,できるだけ平和的解・決を図ることが望ましい旨の意見を述べるな. ど,中璃的な「揺れる六力国剛と言われる状態にあった。安全保障理事会の 結束と決議案の成立のため最も熱心に奔走した英国は,この六国の賛成を得る. 遷的で3月12日に至り,「武装解除の意思の証明として,数項目の具体的事項 をイラクが誓約し完全実施することを求める再修正案を提出したが,これはフ ランス代表によって即座に拒絶されたs!’)。結局チリが査察の期限を更に3週間. 棄長する提案をした゜e}ため賛成9ヶ国の確保も微妙な情勢になったことからt. t米藁スペイン三国の首脳はアゾレスに会しT3月17日,第二の決議案の取り 下げとイラクに対しフセイン大統領及びその子息2名に48時間以内に国外出 欝fることを求める最後通牒iを発することを決定したYl)。. このように政治的意味合いを重視して三国が提案した第二の決議案は表決に 裏らなかったが行動国は行動の根拠は既に定まっていると認識していたと認 めら蕗る。例えば,米国は国内で一eま既に2002年10月10日、連邦議会が大統 鍾紅薄L§謬戦の権限を付与しておりma,また,前述したとおり(161頁参照) 実嚢聾{二は決議1441において決定されている集団的意思により武力行使の権 {INを与えられていると認識していたことは確かである。英国もまた,ブレァ首. 相が懸綾翼夜下院において,「函連の危険は消極性にあり,安全保障理事会の 優柔不断繧フセイン体制に誤ったメッセージを送ることになる」とした上で,. 「決議1441を採択しておいて,その履行の強制を拒むのはt国連に致命的な損 傷を加えることになる」と述べ,イラクの決議違反に対し武力による強制が必 要である旨を説「Aしたn)ように,決議1441において確定している集団的意思. の執行を意識していたことが認められる9%このことは,英国連大使の安保理. 議長宛3月20日付書簡において,決議678の復活論には触れることなく,決 164.
(21) 国連集団安全保障体制の現状と課題. 議1441を引用して,既に「同決議において,イラクの大量破壊兵器所持が国 際の平和及び安全に対する脅威を構成すること及びイラクは武装解除義務に明. らかに違反し,1991年の停戦条件の重大な違反を犯していることが再確認さ れている」旨強調した上で,「イラクの決議遵守を確認する手段が他にないこ とが明白になった場合は,軍事行動をとるほかない」旨述べていることからも 裏付けられる95}。なお,行動開始直前の安保理会議において,プリックス委員. 長が「前回の証言後イラクから数通の書面が提出されたが.未解決の問題につ いては極く限られた情報しかなくee}」,結局「現在まで大量破壊兵器もしくは. 他の禁止兵器が存在しないことを示す確証が得られていない剛旨証言した9S} ことは、この段階におけるイラクの武装解除を履行せしめるという集団的意思 の有効性を確認することになったと言うことができよう。. (2)集団的意思の執行の正当性 では,上述のように理事国の中に査察の期聞延長と強化を求める意見があり,. そのため行動国が意図した第二の決議案も成立しなかった状況の中で,武力に よる集団的意思の執行の正当性を、見出し得るであろうか。. Stallnは,決議1441においてイラクの義務違反が国際の平和及び安全に与 える脅威として確認されていること並びに当該義務を定めた安保理決議をイラ ク政府が恒常的に無視し続ける状況が,共同体(国連)の共通利益たる平和に 対する脅威の除去という集団的意思を個別的に執行するための武力行使に「或. る程度の正当性『(sOme Iegitimacy)を与えたと述べるが武力行動に至る 迄の各国の動きを調べると,Stahnの主張をある程度補強できる要素があるよ うに思われる。武力行使も辞さぬ姿勢を安全保障理事会の一致した意思として 明確に示すため,第二の決議を求めた三国のうち,とりわけ英国が決議成立を 圓指して奔走したにもかかわらず,一部常任理事国の強硬な反対により実現し なかったという事情は,「武力行使による強制は,必然的に米国指螂になると いう実情が,安全保障理事会を米国に対抗する手段と心得るフランスの反対論 165.
(22) 横浜国際経済法学第17巻第1号{2008年9月). 者の血脈と志向に火をつけた1°°りことによるものとすれば,正当性の要素と して多少は考慮されて良いかも知れない。フランスの動きに関しては,この他. にも「第二の決議」案が上程される1∼2週前,Le甘itte駐米フランス大使が 米国務省及びホワイトハウスを訪ね,「決議案の上程は,決議1441を全会一致 で採択した安全保障理事会の意思を分裂させることになり,またコソボの際に ,行ったように紳士間の非合意で合意すれば良ぐ,米国等にとって同決議案は必 要でない」との理由を述べ上程を見送るよう説得した1°1)とされるエピソード が伝えられているtce}。 Stromsethは,このような反対派の動きの中に,行動支. 持派縁当初から終始一貫した決議1441の解釈と憲章の目的に従い行動してき たと箆ることができるとして,「第二の決議」に対する合意を得られなかった ことによってその後の軍事行動の法的正当性を奪われることはないと主張して vる・{x3}。. 安全撮障理事会で暗黙裏に行動は承認されていたとの疑問は,この他にも3 蓑欝曇の安保理会議においてイラク代表から提起されている。すなわち,戦 鐘霧絵荊に石油食糧交換計画は停止され,また国連の査察官は引揚げられた 艶安全保障理事会の合意と許可がなければ引揚げ等の指示はできない筈との. 霧藁翻である。実際に,3月19日午前の安保理会議においてtアナン事務総 長謡頁纏食糧交換計画の一時停止の事実と再開のための新たな安保理決議の必. 要控を擾べ,またブリックス委員長はUNMOVIC及びIAEAを含む国連のす べての毅蓑の退去が3月18日中に完了した旨報告している。更に,ロシア代 表は「イラクを取り巻く困難な情勢に鑑み,我々は査察官の安全に対する危険 を考慮し査察官の引揚げを決定した事務総長の処置を理解しておかねばならな い三剛と述べている。. 最後に,武力行使による集団的意思の執行が正当であったと認められるか否. かに関しては,大多数の国が介入に反対であったとされている欄が安全保 障理事会における各国の意見の内容は単純ではない。同理事会は,非同盟諸国. 会議等からの要請もあり醐,2月18∼ユ9日.3月11∼12日及びイラク攻撃 166.
(23) 国遮集団安全保障体制の現状と課題. 開始後の3月26 ・一 27日の3回にわたり意見陳述を希望する非理事国や国際組. 織などの申し出を受け入れ,実質的な公聴会とも言うべき討論会を開催した. が,初回は61ヶ国,1組織T2回目は51ヶ国,2組織,3回目は理事国を含め 80ヶ国,1地域1組織の代表がそれぞれ陳述した。2回目までの討論会では, 確かにできるだけ査察を通じ平和裡にイラクに武装解除義務を履行させるべき であるとの意見が多数を占めたが,イラクが安保理決議を遵守していると認め た意見は皆無であり,平和裡に義務を履行させるべきだとする意見についても,. 初回はその半数以上,2回目はその3分の1が,問題の原因はイラクの決議不 遵守にあるとし,例えば「イラクの遵守を確保するためには確実な力の姿勢 に支えられる必要性」(初回会議におけるトルコlag}),「戦争回避のためにはイ. ラクが求められる協力を迅速に実施することが必要」(初回会議におけるニュー ジーランド囎,ブラジル”°}及び2回目の会議におけるエチオピァ111)),「平和. の希求や査察期間の延長が必要なすべての手段の断念と誤解されてはならな い」(初回会議におけるウルグアイllz}及び2回目の会議におけるフィリピン ユ1帥),「査察報告に基づき,イラク政府が決議を遵守している旨の結論が得られ. ない限り,安全保障理事会はすべての必要な手段の行使を加盟国に授権するべ きである」(2回目の会議におけるカナダ110)というような表現で,査察継続 による平和的執行意見に一定の留保意思を示している。また,イラクの武装解 除を確実に行うためには武力行使も止むを得ないとする意見や,安全保障理事 会は新たな決断をしなければならないとする意見も,1回目の会議で11ヶ国,. 2回目の会議で17ヶ国あり,これを留保意見と合わせれば初回,2回目とも 討論会出席者の多くが,イラクに対し何らかの強硬な措置が必要だと感じてい たと見ることもできる。. 更に,武力攻撃開始後3月26∼27日の3回目の討論会においては,一般 に現実の事態にどのように対応するかで動く国連機関の行動原理による故か, 「非同盟諸国会議及びアラブ諸国の要請により11 「・)」開かれたものであるにもか. かわらず,80ヶ国を超える出席国等の代表の大半は武力攻撃を支持するか或. 167.
(24) 横i兵国際{薩…箭法学第17巻第1号 (2008勾三9jl). いは武力攻撃の正当性を問うことなく戦争の早期終結とイラクの復興に対する. 支援を1呼びかけるかに終始した11%これに対しイラク代表は,同国への武力 攻撃を「植民政策的軍事侵略」としてそれに対する非難決議を強く求めるtl7) とともに,「人道問題が如何に重要であろうとも,戦争と侵略の前に人道問題 ばかり論じられるのは何故か」と反論している11s)が,結局,対イラク攻撃を. 憲章及び国際法違反であると主張するか,少なくとも同行動を非難する発言を 行ったのは,イラク並びに3理事国(ロシア,申国及びシ’リア)を含め21ヶ国,. 1地域(パレスチナ),1国際紐織(アラブ連盟)であった119)のに対し,行動. 国を含め23ヶ国が武力行使を支持し又はイラクの側に責任があると主張した 他,フランス,ドイツを含め残りの36ヶ国は,対イラク武力攻撃に対する正 当性は敢えて問わず,専ら戦闘の早期終結とイラク国民に対する人道的配慮及 び戦後のイラク再建に対する協力の必要性を主張したのである⑳。. このような3回目の会議における討論の状況は行動開始後のものとして参考 に留め,主に初回及び2回目の討論の状況から判断するとしても,国家等の公 式の場の意見表明に基づく当時の「国際世論」は,イラクに対し義務履行を強 制する必要性も認識し,場合によっては武力行使も止むを得ないと受け取って いたと解することも可能で,Stahnの主張する「ある程度の正当性」を裏付け る要素と見ることができよう。. (3)安全保障理事会の評価・裁定. 以上のように,イラク戦争の米英軍等の行動を集団的意思の執行と捉えた場 合,イラクの武装解除義務を確実に励行せしめるという集団的意思は確定して おり,その執行にも或る程度の正当性が認められるものの,実際に安全保障理事. 会ではどのような事後評価が行われたのであろうか。本件の場合Stahnが示し たような評価基準を適用すると否とにかかわらず,同理事会として必ずしも問 題なく合法性を追認できるとは考えにくい状況が常に存在したと言えよう。す なわち,本件行動は大量破壊兵器の除去を主要目的としながら,行動開始以来同 ユ68.
(25) 国連集団安全保障体制の現状と部題. 兵器やその再開発計画の存在が確認されることはなく,そもそも行動は必要な かったのではないかとの疑問である121}。このため,Stahnは,同理事会が大量破. 壊兵器の除去による国際の平和及び安全の確保という集団的意思の執行であっ たにもかかわらず,事後の決議では,そのための国際的努力を「評価する」とか 「支持する」というような表現は勿論,既成の事実が適法に達成されたと受け取. られるような表現は一切避け,また逆に行動が違法であったと受け取られる表 現も行わなかったのだと見るIW)。すなわち行動開始後,最初に全会一致で採択 された石油食糧交換計画の復活を定める3月28日の決議1472においては,対イラ. ク武力行使の適法・違法については一切触れることなく,イラク国民に対する 人道的支援のため専ら国連事務総長への権限付与と国際共同体への協力呼びか けに終始している。また,5月22日の決議1483において,イラクに対する経済制. 裁の原則的解除イラク復興のための加盟国及び国際機閥への協力要請,イラク 国内暫定統治のため統合司令部(当局)のもとで米英軍等が駐留すること等が定 められたが,これらは,違法の疑いを持たれた武力行使と戦闘終了後の合法な米. 英軍等のイラク駐留とのギャップを埋めるための措置であり,そのいずれの決 定事項においても占領軍としての駐留に至るまでの武力行使を暗黙裏に承認す るものと解されるような用語の使用は避けられている榔)。更に、10月16日,イ ラクの安全と安定の維持に貢献するため「統合司令部のもとの多国籍軍」の設置. を承認した安保理決議1511においても,イラク国民の利害をすべての優先事項 とし,武力行使の合法か違法かについては全く言及がない。これら諸決議の状 況から,Stahnはイラク戦争の戦後処理の過程で、当初の米英等の武力行使に対 し安全保障理事会が行った「裁定」は,「武力不行使義務違反が遡及的に合法化. されたともせず,さりとて違法のままに放置したわけでもなく.その武力行使 が,安全保障理事会で定められ国際的に認知された共同体利益すなわち集団的 意思の実現を目的としたものであり,且つ武力行使による新たな現状が一層の 国際摺の共同行動を必要としているが故に.少なくとも法的な不承認及び制裁 は免除するというものであった」と解している削。. 169.
(26) 描浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月}. 五集団的意思の執行論に対する私見 1 総説 以上,冷戦後も憲章2条(4)違反の疑いが持たれる武力行使事件がしばし ば発生し,その都度行動国の主張に基づく種々の合法論が唱えられた中で,. KrischやStahnの主唱した集団的意思の執行論を紹介しつつ,それを基軸と して主にイラク戦争の際の米莱等の行動に関する法的評価の状況を考察してき た。国連築団安全保障制度の執行体{開が分権化する状況の中で安全保障理事会. の決議が得られないため已むを得ず特定の国家又は国家グループによる個別的 軍事行動に依拠せざるを得ない事態は今後避けられないとの観測のもとに,そ のような事態において国連集団安全保障制度を堅持し,憲章の解釈の範囲内で 合法な行動と許容し得る仕組みを提供し得る最も合理的な立論が集団的意思の 執行論であると考えたからである。しかし,この立論にも補足を要する点は少 なくないと思われ,私見として,とりあえず以下二つの観点からその主張を補 いたいと思、う。. 2 集団的意思の定義 KrischやStahnらによって,個別国家等による個別的武力行使に法的正当性 を付与する一要素として主唱されてきた「集団的意思」の概念は,なお抽象的. で範囲が確定しない部分があると思われる。すなわちKrischは,近年論議の 対象となっている国際共同体の利益として,例えば「人権」とか「環境」を「平 和」と並立する概念で捉えようとしており,従ってコソボ危機介入に関しても,. 「入権擁護」という目的自体が集団的意思として成立したと主張しているよう に見受けられる1th1}oまた, St且hnは,・NATOのような地域組織は,問題の性質. と状況によっては安全保障理事会よりも協議の場としてより適切なのではない. かとする主張を引用するなどして集団的意思の決定が,安全保障理事会に代表 されるもの以外の共同体においても行われ得ることを容認しているように見受 170.
(27) 国辿撫団安全保障体制の現状と課題. けられる126)。このような概念のままでは,集団的意思の成立が無制限的に主. 張される恐れがないとは言えず,「集団的意思」は安全保障理事会の決議等に 基づく意思に限定することをより明確にする必要があると思われる。その上で,. 両人に共通する見解を整理することを目的に:筆者において,改めてその定義 を述べるならば,「安全保障理事会の特定の決議又は議長声明によって定めら ’れる,共同体(国連)として実現すべき共通目標ないし共通利益」ということ. ができよう。すなわち,或る国家による恒常的な安保理決議違反が国際の平和 及び安全に対し脅威を及ぼしているとの認識及び当該脅威の解消要求(例えば, イラク戦争に係る決議1441),或る国家による違法又は不当な行動(人権侵害,. 環境破壊等を含む)に対する非難又は警告に基づく当該行動の是正要求(例え. ば,コソボ危機における決議1199)といった共同体としての実現目標が決議 等の中で明確に述べられているならば,それぞれが集団的意思に該当すること になる。なお,集団的意思は,憲章上国際の平和及び安全の維持に主要な責任 を持つ安全保障理事会の決定に基づくものとする以上,例えば,問題が人権侵. 害t環境破壊等に閤するような場合には,それらは,国際の平和及び安全に係 る程大規模且つ重大なものでなければならない。. 3 集団的意思の個別的執行が許容される条件 集団的意思の執行と主張された事案については,これまでに考察したケース やその他のケースを含めそのすべてが安全保障理事会から少なくとも非難決議 など違法性の認定を免れているltn)が,このことは,これらの事例が前例とな. り,今後類似の事態が生じたときに集団的意思の執行として援用される可能性 が十分あることを示している。しかし,「集団的意思の執行としての」イラク 戦争における、最も重要な実現目標であった「大量破壊兵器の破棄」が既に実 施済みであったと認められるような状況にあること等を省みれば.集団的意思 の執行は,正確な情報と極めて慎重な判断に基づいて適用されなければならな いことが改めて強調される。従って,当該執行の適用がいやしくも濫用に陥る 171.
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