教授学習組織改草の継続における経営的要因に関する一考察
一学校管理職の代替わりにおける「継続j と「意味
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に着目して一
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福 島 正 行 *
FUKUSHIMA Masayuki
本稿の目的は,小学校における教授学習組織改革の継続について,その経'日的要因を考察することである。その際,学 校管理職が認識する実践の「意味J,I
価値jに着目する。研究課題に迫るために,x
県全市町村教育委員会に刻する質問 紙調1f, x県の政策担当者に対するインタビュー詞杏, Y市の政策担当者に刻するインタピ、ユー詞杏, Y市管下の2小学 校に対するインタヒ、ユー調査をおこなった。また,実践の「継続jに関する実態と意味の継承を記述するために, 2小学 校に対するインタビ、ユー調盗は2008年と2011年に行ったO調盗の結果, 1)取り組みが継続される背宗には,管理職によ る実践の「よさ」の認知がある, 2) 特に教授学習組織の柔軟性の高い学校の管理職は,I
よさ」が組織メンバーに共有 されていることに着目していること,実践を評価する視点の多様度が大きいことが明らかになった。 This paper aims to clarify the facts of continuation of instruction -lear百ingorganization improvement and its五actorsin pri -mary school, focusing on meaning and worth of practic巴srecognized by principals. And to atlain my aim, 1 made both ques -tionnaire survey and interviews in Y c町(xprefecture), and interviews with two primary schools were made twice, 2008 and 2011, to describe the fact of continuation of practices and its meaning and worth recognized by principals. From the survey and interviews, 1 point out the situation of the instructionーleamingorganization improvement at each school is different and according to the extent of the variations of the practices. And this paper clarifies the following things;1) The background by which pract日 iscontinued is cognition meaning and worth of the practices by principal. 2) Especially, in the school with a flexible instruction -leaming organization, a principal values that meaning and worth of
its practices is shared, and a principal has various viewpoints which evaluate its practices
キーワード:教授学習組織改革,実践の縦続,怠味,評価視点の多様性
Key words : instruction -leaming organization improvement, continuation of practices, meaning and worth, variation of th巳 evaluation viewpoint of principal
1
.はじめに (1) 問題関心と課題設定 1998年中央教育審議会答申以降,学級編制・教職員配 置を地方や学校が主導する弾力的な制度が目指された。 2000年以降の法制度改正により都道府県・市町村の学級 編制・教職員配置に関する弾力的な運用が制度的に実現 した。現在においては市町村レベルにおいて少人数教育 が実現できるよう制度改正がなされ,実際に施策を展開 している自治体もあるが これまで都道府県主導で少人 数学級編制を導入する自治体が増加してきたl九 こ れ に 伴って学校レベルでは自律性を発揮した教育実践が行わ れることが期待されている。 こ う し た 制 度 動 向 に 対 し 学 校 レ ベ ル , と り わ け 自 律 的学校経営という観点から少人数教育について考察され た研究は,堀内他の研究(堀内他, 2002;堀内他, 2003; *兵庫教育大学教育行政能)J育成カリキユラム開発室 堀内編, 2005),水本の研究(水本, 2004)以外は極め て限定的であるO 他方, トップ・ダウン的に少人数教育 施策が展開される今日において,実践の蓄積があるか否 かにかかわらず,各学校に「自律的な取り組みの展開」 という実践的課題を改めて提起していると捉えられるO 我が国では1960年代後半より, TTを中心に教授学習 組織改善・改造に関する研究が進められてきた(たとえ ば, 日俣, 1966;日俣, 1969;日本ティーム・ティーチ ング研究会, 1969;吉本, 1976)。しかし,いずれの時 代においても全国的にみた場合 各学校において導入が スムーズに進められてきたわけではない。また,取り組 みは散発的・個別的といえ,たとえ導入にこぎつけたと しても,実践が長期間にわたって継続された事例はごく わず、かに限られているという状況があるO これに関して日俣は,教授学習組織改革が行われたと しても, 3年をピークに取り組みは廃棄されるという状 半成24年11月16日受理福 品 止 行 ;兄であることを明らかにしている(日{晃, 1978)0 その 要因としては「研究推進者の転出
J
(たとえば,天笠, 1995),I
実践の意味づけの失敗J
(神山, 1994),I
マン ネリ化J
(丸山, 2004)などが指摘されてきた。近年の 教育イノベーション研究では イノベーションの継続に は「意味j の組織的共有が重要で、あるという指摘がされ ている(横山・清水, 2005)。また,実践の継続におけ る個別学校の実践知の蓄積の重要性を指摘してきた(福 島, 2009)。こうした指摘からは,学級編制標準の引き 下げや,加配などの教員配置の改善は,教授学習組織改 革の継続性を担保するものとは必ずしも言えないと捉え ることができる。上記の先行研究の整理を踏まえれば, 学校組織内における,知(を持つ人)や実践の「意味j や「価値jが,実践の継続にとって重要な機能を果たし ているものと考えられる。 本稿の目的は,上記問題関心を踏まえ,小学校におけ る 少 人 数 教 育 施 策 導 入 に 伴 う 教 授 学 習 組 織 改 革 の 課 題を明らかにすることである。その際,学校における実 践の継続に関して学校管理職が捉える「意味jに着目す る。 なお,本稿における教授学習組織改革とは「習熟度別 指導,ティーム・ティーチング(以下, TTと略記する。), コース別指導などの導入による指導方法の導入状況j に 限定する。また「継続」については暖昧な表現であるが, 実践の継続一廃棄の要因に着目してきた上記先行研究を 踏まえて「指導改善に係る実践が廃棄されずに続けて採 用されている状態j と定義しておく。 (2) 調査課題・事例選定・調査手順 研究課題に迫るため,本稿では次の 2つの調査課題を 設定した。①事例自治体(県レベル・市町村レベル)の 少人数教育施策の実態,②事例学校の教授学習組織改革 の実態,その差異,差異が生じている経営的要因,以上 の2点である。なお,①自治体の少人数施策の実態を調 査の対象とするのは,学校レベルの実践に影響を持つ行 政的インパクトについて明らかにするためである。 本稿では,県レベルで大規模な少人数教育施策を導入 しているX県を事例とすることとした。x
県 を 事 例 対 象とする理由についてであるが,後述のように県・市町 村レベルでそれぞれ独自の施策が確認できたこと,学校 レベルにおいてすでに少人数教育に関する一定の経験を 有すること(調査時現在)が期待できた点,以上の2点 表1 調査概要 調査対象 調査方法 調査日時 主な調査項目 小学校数や指導主事の数などの基本的内容/政策導 <調査1> 質問紙 2007年7-8 月 入プロセスや政策検討機関の有無/管轄する小学校 X県全市町村教育委員会 で実際に行われている指導形態/指導・研修の状況 /効果 <調査2> 2007 年12月10日 教育事務所 インタビュー 少人数教育に関する取り組み/管下の小学校の状況 (県レベル調査) 14:00-15:30 <調査3> 2007 年12月10日 Y市教育委員会 インタビュー 少人数教育に関する取り組み/管下の小学校の状況 (市町村レベル調査) 10:00-11 :30 <調査4> A 小 教職員数,児童数,学級数など学校に関する基本的 Y市内小学校 2008年7月16日 な情報について/実践している指導形態について! 対応者 10:30-12: 00 またこれにかかわる実践上・学校運営上の工夫につ A小は校長 インタビュー B 小 いて/教育委員会の指導内容とその受け止め方につ B小は校長・教頭・教務 いて/他校との研究交流について/少人数教育政策 主任 2008年7月16日 導入以前と現在との比較(相違点,改善点など)/ (学校調査) 13 : 00-15 : 45 今後の少人数教育政策に対する,学校管理職として A IJ、
の期待 <調査5> 2130 : 1115年-141 : 0月3027日 <調査 5>では,前任校長の時期との違いについて Y市内小学校 も尋ねた。 対応者 インタビュー B 小 A小.B小校長 2011 年10月27日 ※B小校長の前職は社会教育施設職員で学校への復 (学校調査) 10:30-12: 45 帰1年目という事情から,教頭・教務主任(ともに B小勤務3年目)にも話を伺った。 [表注] 質問紙調査の概要は以下のとおりであるO ・調査名:市町村教育委員会における少人数教育政策の実態に関する調査 (X県) .調査日時:上記 ・質問紙配布方法:郵送法 -質問紙配布対象:山形県内の全市町村 .質問内容:上記 ・回答件数:20件。うち司本稿で用いたのは17件 (X県少人数教育施策に関する加配がない自治体ゃー回答に不備があった ものを除いた)。がある。 調査の手順についてであるが,まず, 2007年にX県 全体の状況把握のため,
X
県下全市町村に対する質問紙 調査を行った<調査1>
0
2007年から2008年にかけて県 調査<調査2>,市町村調査<調査3>,学校調査<調 査4>
を実施した。また,学校調査については, 2011年 に追跡調査を行った<調査5>
。調査の概要は表l
に示 した。なお,インタビ、ユーについては録音をし,後に丈 字おこしをするかたちで記録した。授業参観中に出され た発言については,その都度メモをとる形で記録した。 本稿では,実践の「継続jをとらえるために,具体的 には2008年・2011年の2定点による調査を行なっているO 本稿で事例としている2小学校で、は,この間校長の代替 わりが起こっている。学校管理職の代替わりは実践の継 続を左右する場面である。本稿では,校長の代替わりに あたり,学校管理職のいかなる判断によって実践が継続 されるのかを調査の視角とした。2
.
X
県 の 少 人 数 教 育 施 策 と 市 町 村 レ ベ ル の 実 態 (1)x
県市町村レベルの実態 それでは,実際に X 県の少人数教育施策の結果,各 市町村管下の学校ではどのような教授学習組織改革の取 り組みが行われているか (2007年)についてみてみる。 各市町村に対して「管下の学校で取り組まれている指導 表 2 X県市町村の指導改善の実施状況 習熟度 少習熟度 コース 少コース 単純分割 6 12 7 12 10T
T
合同学習 教科担任 一部教担/
16 10 15 [表注] ・表中の数値は管下の学校でそれぞれの取り組みを導入していると 回答があった自治体数。複数回答0 ・表中の語句は以下のような意昧で使用している。 ・習熟度:習熟度別指導(同学年の児童を習熟度に応じて 学級数と同数の学習集団に分割し指導) ・少習熟度:少人数習熟度別指導(同学年の児童を習熟度 に応じて学級数を超える学習集団に分割し指導) ・コース:コース別指導(異なる教材を児童の選択に応じ て学級数と総数の学習集団に分割し指導) ・少コース:少人数コース別指導(異なる教材を児童の選 択に応じて学級数を超える学習集団に分割し指導) - 単 純 分 割 (1学級を複数に司または複数の学級をその 数を超える学習集団に分割し指導).
n
:
ティーム・ティーチング(1学級を 2人以上の教員 で指導) -合同学習:多学級合同学習(2学級以上の学習集団を統 合し指導) -教科担任:教科担任制 - 部教担: 部教科担任制( 部の教科について教科担 任制を実施し指導) 形態」について尋ねた。その結果を整理したのが表2で ある。概して,各市町村管下の学校においては多様な取 り組みが行われていると捉えられる。特に多いのがTT と一部教科担任制の取り組みである。また,習熟度別指 導より少人数習熟度別指導,コース別指導より少人数コー ス別指導が多いということも特徴である。 より具体的に示しておこうO 図l叶土<調査1>をも とに作成した,X
県における教授学習組織改革について 市町村別に示した図であるO 各市町村管下の学校におい ては,多様な取り組み実態がみられると捉えられるO し かも,加配校だけでなく非加配校においても多様な実践 に取り組まれており,少なくとも加配教員の有無によっ て各学校の実践のあり様が規定されるわけではないこと が読み取れる。 この中で, Y市に着目することとした。 Y市において は図で示しているように,少人数教育施策が採られて比 較的長い歴史がある X 県内の自治体の中でも,取り組 みが活発に行われている自治体とみることができるO く わえて y市には他市町村と比較して多くの指導主事が 配置されているとし寸特徴を持ち,各学校の実践を加味 した研究交流や情報交換から,より多くの実践知を蓄積 していることが期待された。 (2)x
県の少人数教育施策と Y 市教育委員会の運用 X県の少人数教育施策と Y 市教育委員会の制度運用 について,<調査2
><調査3>
をもとに概観する。 X 県の少人数教育施策の特徴として,第一に,1
学力 の向上J
1
不登校児童数の減少J
1
欠席率の減少j を目標 とした1
0
計画jによる教員配置,人的支援の充実が挙 げられる。x
県の少人数教育施策1
0
計画jは, 2001年 度まで行われていた非常勤講師配置政策I
P
計画jを一 歩進める形で誕生した。1
0
計画jは, 1学級を21-33人 12 非 加1
1
0
配 校 の 取 組 み 状 況 8 64
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Y市 を治合体む4 2t=1 2当
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2 4 6 8 10 12 加配校の取り組み状況(ポイン卜) 図1 加配校と非加配校の取り組み状況福 品 止 行 にするという少人数教育施策で、ある。当初,小学校第 l 学年から第3学年に限定的な政策であったが (2002年度), その後, 2003年 度 に 第5学年まで, 2004年 度 ま で に 小 学 校 全 学 年 へ の 適 用 と な っ て い る 。 ま た , 単 級 学 年 でI学 級33人 を 超 え る 場 合 は , 従 来 の
I
P
計 画jを適用し, TT 指 導 や 小 グ ル ー プ 指 導 に 対 応 で き る よ う 加 配 が な さ れ る など,教員配置もきめ細かい。 以 上 に つ い て , 具 体 的 に は表3のような加配が行われる。 第 二 に , 少 人 数 教 育 の 推 進 を 図 る た め の 指 導 ノ ウ ハ ウ の 提 供 , 知 的 支 援 が あ る 。 こ の 知 的 支 援 は , 以 下 の よ う な 内 容 で あ る 。 そ の ー , 学 校 外 部 か ら 学 校 へ の 指 導 に よ る 知 的 支 援 。 こ れ に は , 教 育 行 政 に よ る 指 導 と 専 門 家 の 指 導 が あ る 。 前 者 は , 主 に 従 来 の 計 画 訪 問 の 場 で 指 導 が なされる。 後 者 は , 市 レ ベ ル で 特 別 支 援 教 育 に 関 し て 専 門 家 に よ る 巡 回 指 導 が 行 わ れ て い る 。 そ の 二 , 実 践 研 究 の 促 進 に 関 す る サ ポ ー ト 。 こ れ に はY市 全 体 に 行 わ れ る 研 究 会 と 県 レ ベ ル の 「 少 人 数 教 育 研 究 会 」 が あ り , 後 者 に つ い て は 全 県 的 な 実 践 交 流 , 情 報 交 換 の 取 り 組 み が 全 国 的 に も 有 名 で あ る 。 前 者 に つ い て は , 研 究 委 嘱 に よ る研究促進が行われている。その三,成功事例の紹介。 こ れ は , 県 レ ベ ル , 市 レ ベ ル 双 方 で 実 施 さ れ て い る も の で , そ れ ぞ れ の 管 内 で 行 わ れ た 少 人 数 教 育 の 教 育 計 画 に ついて紹介する冊子の配布により行われている。 表3 X県少人数教育施策の加配概要 標準的な X県での X県における 学級数 学級数 その他の少人数 教育加配 1学年 22人以下 1 1 1学年 33人以下 1 1学年 非常勤講師1加配日
4-40人 1 (rp計画J) 1学年日
0-66人 2 2 1学年 67-80人 2 3(
3
)
小括 X県 は , 従 来 よ り 少 人 数 教 育 に 取 り 組 ん で い る 自 治 体 で あ り , 施 策 の 内 容 は , 学 校 に 対 す る 人 的 加 配 に く わ え て , 知 的 支 援 を 行 っ て い る 。 知 的 支 援 に つ い て は , 県 に よ る 指 導 に く わ え て , 全 国 規 模 の 研 究 会 の 場 で 実 践 交 流 を 行 い , 自 治 体 と し て 少 人 数 教 育 の あ り 方 に 関 す る 知 の 創造を行っていることが特徴といえる。 3. 2008年 調 査 ・ 2011年 調 査 に お け る 教 授 学 習 組 織改革の実態 以 下 , < 調 査4><
調 査5>
をもとに事例校を検討する。 表4 調査校の概要 (2008年・ 2011年) A小学校 B小学校 12 21 学級数 -普通学級7 -普通学級18 -特別支援学級5 -特別支援学級3 児童数 242 544 23 31 -校長1 -校長1 -教頭1 -教頭1 -教諭・講師21 -教諭・講師28 教員数 ※担任外教員 ※担任外教員 教務主任1 教務主任1 2008年 -養護教諭その他21 副教務主任その他1 1 -養護教諭1 県施策 ※非常勤講師1配置 第4・6学年 適用学 (常勤講師配置) 年 語られ . y市教育委員会の指導 -学力向上フロンナイ た学校 主事を務めた。 アスクールの指定を の特 . y市内で最も歴史があ 受ける。調査時は,指 徴- る学校の1つ。 定が終わった直後。 校長の 特徴 A小学校 B小学校 11 21 学級数 -普通学級7 -普通学級18 -特別支援学級4 -特別支援教育3 児童数 230 516 27 35 -校長1(2年目) -校長1(1年目) -教頭1 -教頭1 -教諭・講師23 -教諭・講師31 ※担任外教員 ※担任外教員 教員数 教務主任1 教務主任1 副担任1 副教務主任1 その他5 その他6 (特別支援への配置が厚 -養護教諭1 2011年 い) -その他2 -養護教諭1 -その他1 県施策 ※非常勤講師1配置 第4学年 (常勤講師配置) 適用学 ※第1学年が国の政策 年 で学級増 . y市教育委員会の指導 -前任はY市内の小学 語られ 主事を務めた。 校校長。 た学校 . y市内で最も歴史があ .2011年校長の次代。 の特 る学校の1つ。 徴・校 .2011年校長の次代。 長の特 -前任校長とは, y市教 徴 育委員会指導主事の元同 僚。 [表注1
・インタビュー及び各学校の2008年度・ 2011年度 「学校要覧Jと インタビュー結果を参照して作成した。 ・表中「教員数」は司休職中の教員を含まない。 「その他」には大学生補助など。 2011年は緊急スクールカウン セラ (震災の影響を受けた児童が8人以上転入してきた学校に 配置)も配置。 (1) 調 査 校 の 概 要 まず, 2008年 の 事 例 対 象 校 の 概 要 に つ い て 触 れ るo A 小と B小 は 特 別 支 援 学 級 を 複 数 持 っ て い る 学 校 で あ り , そ れ に 対 す る 教 員 加 配 は 非 常 に 厚 い 。 そ の 他 両 校 の 特 徴 としては,次のようなものがある。 A小 は y市 内 で 最 も 古 い 伝 統 を 有 し て い る 学 校 で あ る 。 ま た , 校 長 はY 市教育委員会指導主事の経歴を持つ。 B小は, 2004年より丈科省「学力向上フロンティアスクール」の指定を受 けて学力向上の実践を進めてきた学校である。 次に
2
0
1
1
年の事例対象校の概要であるが, 加配の状 況は,2
0
0
8
年と比較して,両校とも大きな変化はない。A
小校長は,2
0
0
8
年校長の次代の校長であり,A
小校長 としては2
年目である。2
0
0
8
年校長と同様 y市教育委 員会指導主事の経歴を持つ。ここで,2
0
0
8
年 A 小校長 とは元同僚の関係で、あった。 B小校長は,2
0
0
8
年校長の 次代の校長であり, B小校長としては l年目である。前 任は Y市の別の小学校の校長であった。 その他,事例対象校の学級数,児童数,教員数等を表4
に整理した。(
2
)
教授学習組織改革の実態 インタビューにあたっては,まず,少人数教育を進め る上での教育実践上の課題について率直に尋ねた。これ に対する回答は,I
多様な子どもへの対応jについてで あり,2
事例校で共通していた。たとえば「多様な子 どもへの対応ですね。 学習障害関係, とし寸か軽度発 達障害ですね。J
(
2
0
0
8
年/A
小)というように,普通学 級における LD児, ADHD児などの軽度発達障害児が所 属している場合の授業実践の困難さが指摘された。この 課題は,事例2校だけではなく,少なくとも Y市の学 校で共有されている課題であるとの認識もあった。この ように,少人数教育施策が浸透するにあたって,児童の 「学力の向上J
I
不登校児童数の減少J
I
欠席率の減少」 という前述の施策のねらいとは別の実践課題が生起して いることを,事例校の管理職は共通して感じている。そ してこのことは,2
0
1
1
年の両校校長に対する調査におい てもよく話題とされる事項であった。 ①2
0
0
8
年における A小・ B小の実態 では,こうした教育実践課題の認識のもと行われる指 導方法の改善は,実態としてどのようになっているのだ ろうか。これに対する回答は, 2校で分かれていると捉 えた。 まず, B小は,回答があっただけでも,習熟度別指導, 少人数習熟度別指導,コース別指導, TTなど多岐にわ たるO また,そうした取り組みは固定的なものではない。 指導方法のよりよい改善が模索できるよう,実験的な要 素を含みながら指導計画を構想、している様子が窺えた。 他方で A小は, B小との比較においては指導方法 の改善に関しては固定的なものになっているO すなわち, A小では,非常勤講師を活用した指導方法の改善は, 「補助員という形にならざるを得ないJ
(
2
0
0
8
年/A
小) という程度にとどまっている。 「能力別(二習熟度別)の学級編成(二学習集団 づくり)を,私は前任校ではやってましたけども, (この学校でそうした集団づくりは)してないで す。JI
そういう子(二教室を飛び出してしまう子) がいなくなれば次のステップに進めますけど,今 の状況では,学校の状況ではなかなかそれはでき ないです。J
I
国語とか算数とか特定の科目に絞っ て, 3年生, 4年生にも広げようという構想は当 初あったんですが,なかなか現実的には難しいと 思います。J
(
2
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0
8
年/A
小) ②2
0
1
1
年におけるA
小'B
小の実態2
0
1
1
年調査においても同様に, A小 'B小で行われて いる指導方法の改善について尋ねた。 B小においては, TTや習熟度別指導,コース別指導, 一部教科担任制など,2
0
0
8
年度調査と同様の回答があっ た。また,学校建築の構造を活かした合同授業も実施さ れていた。 B小の学校建築は特徴的で,学年単位のフリー スペースをもち,教室聞には壁がないというっくりであ り,そうした構造に合わせた実践も行われている(たと えば,フリースペースを活かした学年会の開催など)。 こうした学校建築の構造やその活用,加配教員の活用か ら柔軟な組織を形成していると捉えられた。 A小については, ISU学習」に取り組んでおり,学校 全体で TTを中心とした取り組みが行われている。 ISU 学習jとは, A小が伝統的に取り組んでいるもので,年 に数回,学校全体で主に基礎の反復練習を実施する学習 行事であるO また, A小は Y 市内でも古くから特別支 援学級を複数クラス備えており,これに伴って特別支援 教育に関する研究や,特別支援学級の児童と普通学級の 児童とで交流教育を行ってきたという伝統を持つ。しかし
A小校長によると,原則的には学級担任がI人で担 任学級の指導を行い,加配教員は普通学級の特別支援を 要する子どものサポートにとどめているという状況であ るということであった。(
3
)
小括 以上のように, A 小と B小では,教授学習組織導入 状況・組織の柔軟性という点で差異がみられる。また, 2定点からの時系列的比較からは, A 小と B小では, それぞれの学校で同様の状況が継続されていると捉えら れた。 次章では,教授学習組織の柔軟性を保持したまま実践 をしている A小に着目し,その要因について, 2小 学 校を比較しながら,検討を進めることとする。4
.
2
0
0
8
年 調 査 と2
0
1
1
年 調 査 と の 比 較 か ら み る 教 授 学 習 組 織 改 革 実 態 の 継 続 要 因2
0
1
1
年調査において A小・ B小で共通していたのは,福 島 正 行 学校管理職によって実践の「よさ」が認知されているこ とである。両校で、行われている実践や教授学習組織の柔 軟性には,上記のように差異が生じている。しかし,両 校の実践が継続している背景には,両校の学校管理職と も自校の実践に「よさjを感じているためであると捉え られた。しかし,この「よさ」について直接的に聞いて も, A小 'B小両校長とも言葉に窮することとなり, 「よさjそのものの意味内容には不明瞭さが残った。 この「よさ」について,学校管理職はどのように捉え ているのだろうか。学校管理職の語りからは, A小 'B 小校長で共通点と相違点を見出すことができた。この 「よさ」に関する語りは,学校管理職が考える実践の 「意味・価値」を検討する上で重要であるO この「よさ」は校長のいかなる認識に支えられている について検討する。インタビュー調査結果から学校管理 職の実践の「よさ」を「よいもの」として捉えることに 影響を与えている点として,おおきく 2点を記述する。 ①組織メンバーの知の性質 ②取り組みを評価する準拠 点の多様度,以上の2点である。 (1) 組織メンバーの知への着目 ① 個々の教員の指導力 指導方法改善にあたって管理職の判断材料の第一に挙 がると予想されるのは,子どもに関する教育的課題の内 容と現有スタッフの状況との関係である。特に課題に対 して対応する教員の数的余裕があるか否かは,実践を大 きく方向付ける要因となることが予想される。たしかに, そうした認識は示された。事例に即せば, A小では教 員の数量に関して不充足感を示している。たとえば「職 員室にもっと,フリーハンドの教員がいてくれればいい なとは思いますよね。昨年は(教室の)外に出る子ども がいたりね。となったときに,職員室にだれもいないの で対応が非常に苦しいというのはあります
J
(
2
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0
8
年 / A 小)との回答があったように,突発的な児童の問題行 動に対応できる体制を作ろうとしていることが窺える。 しかし,教員の数的不充足感は,学校管理職が指導方 法改善の判断する際,決定的とは考えづらい面もある。2
0
0
8
年A
小校長からは次のようなコメントもあった。 「昨年は経験のある非常勤講師だ、ったので,そこ はかなり柔軟に,学年の枠を超えて様々ことをやっ ていましたね。J
(
2
0
0
8
年/A
小) A小では,2
0
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年A小校長時に経験豊富な講師を活 用した指導改善を実施していた経緯がある。こうした発 言は,裏を返せば,経験が乏しい教師・講師の活用には 教員配置上,様々な配慮が必要になることを示している と考えることができる。くわえて,常勤講師・非常勤講 師と正規教員との聞には勤務時間の差異があり,多様な 取り組みの実施にあたって必要になる「打ち合わせ」時 間の確保に苦慮している様子L
発言から窺うことがで きた。 それでは,学校管理職は,教員のいかなる力量を判断 材料として学校の実践を規定するのだろうか。 A小につ いて,まず2
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年校長の発言から振り返るOI
X
県の現状として非常に小規模の学校が多いと。 そういう学校が多いから結果として7割が(政策 の)恩恵、を受けない学校になる。(他方で)r
Q
計 画』の恩恵がある学校であろうとない学校であろ うと,教師として求めていかなければならないの は授業の改善なのね。これは,どういう規模の学 校であろうが,そこは違いはないわけ。J
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年/A
小)2
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年のA小校長は,授業の質向上が重要であると いう認識を示している。前述の発言ともかかわって,個々 の教員の授業力や指導力が必要であるとの認識が窺える。 別の発言では,フリースペースを利用した「合同学習j を実践するよう教師たちに促しているが,ここには,経 験豊かな教師と若手教師との交流を盛んにしたいという 校長の認識があるO2
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年の校長は,2
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年校長の語りと類似した発言が 多かった。教授学習組織を柔軟にせず学級担任が原則的 に l人で指導する体制を指す「じっくり指導するJ
I
しっ かり指導する j といった発言である。また教師の授業力 とかかわって次のような発言もあった。 「あとはかつては自主公開というのもやってた時 もあるみたいだけど,それじゃなくて, じっくり 構えていこうや,というように変えていったんで すね。子どもたちに力をつけるのは日々の授業だっ ていうことね。J
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年/A
小) ② 知・価値の共有 他方,2
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年 B小管理職からは「個々の」教員指導 力・授業力に関する発言はなかった。したがって,判断 に戸惑いを感じさせる発言もなかった。ここには管理職 のいかなる認識があるのであろうか。 「算数における TTもしくは習熟度別的な, (そ れと)学級を分けての少人数指導も,学校の方針 として行っています。ですから, (それ以外の) とミの教科を誰が持つかっていうことは,各学年で 決めています。J
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年/B
小教務主任)このように B小では指導に関する学校全体の方針に ついては管理職が判断するが,具体的な指導方法につい ては教員に委ねられている。こうした判断を下す基盤と なっているのが,
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学力向上フロンティアスクールj の 指定を受けていた時期の経験である。 「学級解体なんかは,意外にエネルギーがいるん だと思うんですよね。だから,本校はそういうこ とを『よいしょJ
ってやった時期があって,それ が今(まで=2008年時点まで)つながっているの で,先生方もある程度よさを知ってますので」 (2008年/B小教頭) ここでいう「エネルギー」とは,学級中心の従来型の 指導のあり方から多様な指導方法を導入することに必要 な推進力を指している。発言によれば,学級解体に伴っ て再検討が求められる時間割編成,時数計算,i
集団を つくってその集団の中で学習(指導)していく」こと, 同僚との交流にもとづいた授業づくりには困難さがある。 そうした困難さが認識されている中でも多様な取り組 みが実施できるのは,i
学力向上フロンテイアスクール」 の指定を受けてきた経験が大きいと, 2008年B小管理 職は語っている。i
r
よいしょJ
ってやった時期jとい うのは,i
学力向上フロンテイアスクールj の指定を受 けていた時期を指している。そして,こうした外生的な 刺激が「エネルギー」を創出した,と認識されている。 その後,中期的な取り組みの継続によって学校組織内で 指導方法の改善に関する知を蓄積し,この過程で指導方 法を柔軟にすることの「よさ」が共有されるに至ってい る。 2011年校長においても,組織的に「よさ」が共有され ている状況に着目していることが窺えるコメントがあっ た。 B小における取り組みのキーパーソンとして,国立 大学附属小学校で研究を重ねてきた B小研究主任 (B 小勤務3年目)を挙げて,次のように語っている。i
r
まず自分(=研究主任)が,ぜひ授業を見て ください1
r
僕こういう形で授業やってますので 必要があれば見に来てくださいJ
っていうのが一 番大きいということ。地道なことなんですけど。 言葉だけじゃなくて実際に実践を通して,子ども たちが育ってる。先ほど5年生が落ち着いてきた と言いましたけど, 3年生の時かなり崩れて,学 級崩壊寸前だったそうです。それから 0 0が来て, 上(二行政)から..がおりてきて,そこに前か らいた3人で組んで。J
(2011年/B小) そして,そうした教員どうしの交流ができる基盤がB 小にあるという発言もあった。 <授業交流,職員室,教員同士が交流することに 心地よさを感じる教員が多い。これは B小だか らこそであり,ほかではそうとは限らない。> (2011年/B小・授業参観中の校長発言メモ) 「前(に校長として勤務していた)の学校と比較 しちゃいけないんでしょうけど,その辺の校風っ ていうんでしょうかね。 (B小には)ありますね」 (2011年/B小) そうした成果があり,次のような判断に至っている。 「たとえば,教科担任をするかしないかというこ とを学年に任せているというのは,去年からの流 れです。去年もそうで,特に大きな問題はないと いうことで,今年あえて変える必要はないと思い ました。私も赴任前のこの学校を見ているわけで はないので,先生方の中からそこまで大きな問題 も出てきてなかったものですから,学年経営の中 でいけるだろうなって。いらっしゃったとき(二 2008年調査時)とは教頭,教務主任は替わってる と思うんですが,教頭や教務主任のいろいろな報 告の中で,今いったようなTTとか習熟度別指導 とか,特に問題も出てないので, じゃあ,そのま ま行こうよと,そんな流れで来てると思います。j (2011年/B小) A小(①)と B小(②)とを比較すると,指導方法 改善に関する管理職の判断はスタッフの知や経験に基づ いて行われているという点は共通している。他方で,前 者 (A小)においては個人の知や経験に基づいているの に対l
,後者 (B小)においては学校としての実践知・ 組織としての知, くわえて実践する価値の共有に基づい ているという点で対照的であるとJ
足えることができるO(
2
)
取り組みを評価する視点の多様性 「よさjを「よいものjとして捉える基盤には,実践 に価値や意味を見出す準拠点がある。実践に意味を見出 す評価の準拠点について,両小学校管理職で共通点と差 異を見出すことができた。 2011年 B小校長の, B小の実践を評価する視点は多 様である。 B小校長からは,前任の学校で、行ってきた教 育実践が実践を判断する視点の形成に活かされているこ とがうかがえる例示があった。①学校建築を活かした指 導,②教科担任による指導,以上の2点が挙げられた。 第一に学校建築を活かした指導がある。授業参観の聞 でも,壁のない学校建築を活かした指導が行われていた。福 島 正 行 階段の踊り場が学年聞を区切る「緩街地帯」となり,学 年単位の指導や行事を行いやすい構造となっている。 B 小校長の前任校でも同様に壁のない学級の壁がない学校 建築であったが,学年聞を区切らない構造であり B小 の構造と比較して「使用しにくい
J
(2011年/B小)構 造であったと指摘している。 B小校長は,前任校におい て行ってきた学校建築を活かした教育実践と,B
小の学 校建築の構造とを比較しながら, B小の実践を肯定的に 捉えていた。 「うちの学校に来ていいなあと思うことはありま す。前任校は同じく壁がない造りでしたが,壁が なく 5学級くらいばーっと並ぶような配置でした。 でもこの学校の造りを見ると,学年のしきりがあ る。たとえば,真ん中に仕切りがあって,階段が あって緩衝地帯もある。この学校の造りは非常に いいと思います。J
(2011年/B
小) 第二に教科担任による指導がある。B
小では前述のと おり一部教科担任を実践している。 B小校長は前任校で も一部教科担任制を実践している。具体的には B小に おいては,第4-6
学年において一部教科担任制を取り 入れているわけであるが, B小校長は,この状況につい て不満を隠さなかった。このように B小校長は B小 の実践を判断する準拠点として自らの前任校での実践を 挙げ,それとの比較から肯定的に捉えたり,否定的に捉 えたりしている。 「でも前の学校では(一部教科担任制を) 1年生 からやってたんですよ。小学校 I年生から。国語 と音楽かな。そうすると学年の子どもをみんなで みれるということと,子どもが先生のことを知る ことができるんですよね。意外と担任の先生以外 の先生って子どもって知らないんですよね。それ が教壇に立って授業をするということになると, 子どもの方も先生の顔を覚えられる。両方ありま す。それ(=前任校の実践)はよいと思ってみて ました。この学校では4年からっていうことだ、っ たので,ちょっと進めたいなと思っているところ です。」 他方, 2011年A小校長は y市の近隣自治体の小学 校で学校管理職の経験を持つが,自らの経験に A小の 実践を評価する準拠点を見出すような発言はなかった。 「よさ j を認めるための準拠点はA小の歴史や前校長の 教育実践の中に見出される。そして,それらを踏襲し継 続することが自らの役割であるという認識がある。 「なくしたものとかはない。付け加えていること もほとんどないです。というのは,前任の校長は, わりと大胆に学校を構成しなおしたところがある のね。それが3年間でまずとっかかりをつけたと こなので,夜、は,一つひとつをじっくりと落ち着 かせるというか,変わったところを定着させたり。 あとは,もうちょっとこうするとうまくいくかなっ ていうところを考えているだけで。多分前の代で 結構変わってると思うんですよ。J
(2011年/A
小) ここで改めて, A小 'B小の両小学校校長に対し前校 長の実践と現在の実践との関連について尋ねた際の回答 を整理するO 結果,次のように両校で対照的なコメント が出された。 まず, A小についてである。 2011年校長は,教育実践 のあり方の基盤となる考えについて,A
小が従来行って きた教育実践と, 2008年校長が行った教育実践の「踏襲j 「定着」を挙げている。すなわち「学校が持ってきた伝 統的なよさとか,そういうのは生かしながらも,組織的 にも前校長さんの時代に変わっているし,その時に割と 大きな変化があったと私は思ってるのね。それは決して 悪いことではなくて,それも時代の要請だ、ったと思うしj (2011年/A
小)。 前者についてであるが, A小では,繰り返しになるが, 普通学級と特別支援学級との交流教育を伝統的に行って いる。全校で実施する ISU学習」とよばれる基礎の反 復練習を中心として授業を進める週間を設けている。そ こではTTによって授業が展開されている。後者につい ては, 2008年校長はそれまでの教育方針や校務分掌組 織の見直しを行っているのであるが, 2011年校長は, 2008年校長が行った実践について肯定しつつ,その定着 のために実践を継続しているO また, A小の2008年校長と2011年校長とでは教育実践 に閲する語りが似ているO 前述のとおり,指導組織を柔 軟にせず学級担任が原則的にl人で指導する体制を指す 「しっかり指導するJ
,I
じっくり指導する」という言葉 は, 2008年校長と2011年校長の双方からよく出された言 葉である。くわえて2011年校長は,A
小における従来の 教育実践と2008年校長が行った改革について,I
良い流 れJ
(2011年/A
小)であるとし,積極的に捉えている。 「前任の校長がいい路線をつくってくれたので, ほとんど踏襲ですよ。ただ,前任の校長とはキャ ラクターが違うから,そういうところはちょっと は影響しているかもしれないけど。基本線は踏襲 なんです。J
(2011年/A
小) B小学校についてであるが,前校長の教育実践をそれほど意識していないし B小の実践史との関連で語られ た言葉も少ない。このことはA小校長と比較しでも, 2008年のB小校長と比較しでも対照的である。 B小校 長にとって,前校長の時代に強く意識されていた「学力 向上フロンテイアスクール j の実践は,現在の B小に おける実践ルーツのーっとして捉えられていると考えら れる。 2008年のB小は,学校史的に見た場合,
I
学力向上フ ロンティアスクール」の指定を終えた直後であり,赴任 して間もない2008年 B小校長は,I
学力向上フロンテイ アスクール」の実践を強く意識していたし,指定時にB 小に所属していた当時の教頭と教務主任がそれを支えて いたO 他方で, 2011年 B小校長からは, B小での「学 力向上フロンテイアスクール」の教育実践について"知っ ていた"としつつも,I
報告は受けるがよく知らない」 「だからと言って,特にあの時の,というのは特に話題 になりません。J
(2011年/B
小)という。また,当時と 現在とを比較して,教職員の「代替わり」が起こってお り,これが当時の教育実践を取り出しがたくしていると いう回答もあった。しかしながら B小として前年度の 教育実践を継承していないということではない。 B小で は,I
学力向上フロンテイアスクール」時の教育実践と して行ってきた柔軟な指導組織の編成が現在に至っても 続いていることについて 「よさが定着してきていると いうことなんだと思うんですJ
(2011年/B
小)というO 学校史的見れば,I
学力向上フロンテイアスクールj時 の実践の「よさ」が,組織内で内面化しつつある状況と 捉えることができる。5
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結論と今後の課題 (1) 結論 以上の調査から,冒頭に示した研究課題について次の ような結論が導出できょう。 まず, X県においては独自の少人数教育政策を実施し ている。またX県と Y市においては少人数教育を円滑 に進めることができるよう少人数教育に関する情報提供 を行っている。x
県においては,こうした人的・知的サ ポートを受けながら,市町村ごとに見れば学校で多様な 取り組みが行われている。事例とした Y市においては, 比較的多様度が高いことが認められた。 インタビュー調査では,同一自治体下同一政策下であっ ても,学校の実践に多様性という点で差異があることを 明らかにした。一方では柔軟な教授学習組織が編成され る学校があり,他方では比較的固定的な編成となってい る学校がある。さらに,その後の追跡調査によれば,事 例とした学校では,学校管理職の「代替わり」があって もそれぞれの学校で実践を継続していることが明らかに なった。両校の比較からそれを規定している要因を,本 稿では学校管理職の判断から見出した。実践が継続され る背景には,取り組みを規定する従来の実践の「よさj の認知があるO そしてその「よさ」を捉える管理職の視 点に着目した。特に教授学習組織の柔軟性の高い実践を 継続する学校の管理職は 第一に「よさ jが組織メンバー に共有されていることを認識・着目していること,第二 に管理職が実践を評価する視点の多様度が大きい,実践 を見る視点が幅広いとしミう特徴を持っている。 (2) 今後の課題 本稿では,冒頭の研究課題を明らかにするために,X
県 Y市の制度状況と, Y市管下の 2小学校を事例とし た。一方では, 2小学校という限定的な状況の中での検 討であるという研究の限界がある。上記の結論は,暫定 的な結論にとどまるものである。事例とする学校数を増 やす,他自治体での検証を試みるといった追加の調査が なされなければ,研究知見の一般化に耐え得ない。 他方,教授学習組織改革の「発展的継続j を分析する ために,I
瞬間的j な実践状況を学校史レベルで捉え直 すという研究手続きが必要で、あるO 本稿で指摘してきた ように,学校の実践史は,学校の実践を大きく規定する 要因のひとつといえる。中には,本稿のB小学校のよ うに,数年のスパンで実践やその意味が継承されている 学校もあるoA
小学校のように,前任校長が行った,教 員個々の「授業の改善J
,授業力・指導力を重視した教 授学習組織改革と,分掌組織改革の定着に注力している 学校もあるO しかし学校史的な理解が調査者側に不足 していれば,そうした点は捨象されることとなるO こうした研究上の量的・質的両面のデータ収集・蓄積 は,今後検討される必要がある課題と考えられるO [引用文献] 天笠茂(1995)I
指導組織の改善に関する史的考察-N
小学校におけるケーススタディーを中心にj大塚学校 経営研究会編「学校経営研究j(20,) 49-69頁。 大谷奨 (2005)I
学級編制・教職員配置に関する全国概 要J
(堀内孜編著『学級編制と地方分権・学校の自律 性』多賀出版, 35-57頁)。 神山知子(1994)I
昭和40年代の協力指導組織研究の特 質 ティーム・ティーチングの導入・展開を中心に 」 筑波大学教育学系『筑波大学教育学系論集j18(2), 27-40頁。 竺沙知章・武井敦史 (2005)I
小中学校における加配教 員の配置と活用実態U(
堀内孜編著「学級編制と地方 分権・学校の自律性』多賀出版, 59-84頁)。 日本ティーム・ティーチング研究会編(1969)r
教授・ 指導組織の改造』明治図書出版。福 島 正 行 日俣周二(1966)