評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について
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(2) 152. 岡田守弘・渡田典子. 要. 約. 児童が抱く不適応感は,児童の自分自身や環境に対する認知の仕方と関係が深いものと 考えられる。そこで,自己強化基準の認知として「自己制御感+と,自己と環境の関係の 認知として「(他者からの)評価に対する懸念+を設定し,この両面から不適応感をとら えた。 Watson&Friend. (1969)の否定的評価懸念尺度を基に評価懸念尺度と独自に考案した. 自己制御感尺度を作成した。評価懸念尺度では,大学生への調査の結果から因子構造を確 認した後に,児童用の評価懸念測定調査用紙を作成した。小学5, た結果から,. 6年生を対象に調査し 2因子からなる評価懸念尺度が構成された。自己制御感尺度は学校生活の. 18場面からなり,回答選択肢は自己制御の強い順に3ないし5個用意されてある。自己 制御感測定調査用紙では投影法的手法を用い,想像のAちゃんの行動を回答として求めた。 小学校5,. 6年生に実施した結果に基づいて,林の数量化3類により自己制御感の強い順. に回答選択肢が並ぶことを確認できた。評価懸念尺度,自己制御感尺度,及び社会的望ま しさ測定尺度(桜井,. 1984),. YG性格検査の一部を同時に小学校5. ・. 6年生に実施して,. これらの尺度得点の関係を検討した。 評価懸念尺度,自己制御感尺度において両極の高得点あるいは低得点である場合には不 適応感が示されるという仮説は,評価懸念尺度で支持され,自己制御感尺度でも一部支持 された。. 本研究で提示した二つの尺度は,学級担任にとらえにくい児童の適応感の理解を援助す. るために作成を試みたものでもあるので,学級担任が把握している児童の様相や認知像と 比較する方法を今後に開発する必要がある。 1. 問. 題. 児童の一人ひとりが学級集団の中で適応感を持って生活しているかどうかを見分けるこ とば,学級担任にとって容易なことではない。児童の学校不適応として近年増加している 不登校ないし登校拒否は,当該の児童が学校や家庭など彼らにとって身近で親しいはずの 環境の中においてさえ, 「何かしっくりしない,自分がのびのび出せない+という不適応 感を抱いているといわれる。こうした不適応感を自分自身や自分を取り巻く環境に対する 児童自身の認知の仕方と関連するものと捉えるとすれば,不適応状態を顧現している児童 だけが抱くものではないと見なせよう。十分に適応しているかのよう.に観える児童にも何 らかの不適応感があるであろうし,それが高じた場合には不適応状憲に陥ったり,自己実 現を果たせなかったりすることもあろう。 登校拒否指導実践例の多くが指摘するように,登校拒否の現れ方や形成過程は単一なも のではない(文部省, 1990, 1992)。その観方も諸説さまざまである中で,近年になって 登校拒否児の自己認知・他者認知の不適切さや身体愁訴の多いことが指摘されている(星 加, 1988,杉山,. 1988)O靖水,鈴木(1985)は,十代前半に発現した登校拒否児には十. 代後半になって発現した者よりも身体愁訴が多い,と報告している。そして,発現年齢が.
(3) 153. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. 低ければ低いほど,精神症状の代替としての身体・行動病像と表現されるのが登校拒否発 現の妥当な機制であり,不登校の現れそのものが彼らの適応困難状態を一括するかのよう な「くずかご+として機能していると見なすことが登校拒否児理解の基本である,と述べ DSM-. ている。また,星野・熊代(1986)は,登校拒否児の発症前の適応状況について, ⅡのAxis-. Ⅴにある「発症前1年の適応機能の最高レベル+に依拠して,学校や友人関. 係における適応状態を基に判定している。その結果,適応機能が良好から可とされる者が 全体の′84%を占め,不良以下は少なかったことが見い出され,発症前の適応機能水準に は少なくとも表面的な問題がないことが示されている。さらに,学校や家庭でのストレス をDSM-. ⅡのAxis-Ⅵの「発症前の心理的社会的ストレスの強さ+で判定したととろ,. ストレスが軽度から中等度であった者が全体の82%と多く占め,重度以上のストレスを 有する者が少なかったことを見い出している。これらのことから,星野らは,登校拒否児 は, ①生来,神経質,消極的, 'L、配性,内向的な性格を有し, ②ストレスに対する耐性が 弱いため,客観的に見れば些細なストレスであっても心理的圧力を感じ易い,と述べてい る(坂野,. 1990も同様の指摘をしている)。しかし,発達の前進過程のさなかにある児童. 期では,その不適応を生来のストレス耐性の弱さによる√ものと捉えるよりも,それまでの 環境の中でストレス耐性が育たなかったために,ストレスに敏感な状態にあると捉える方 が適切であろう。さらには,環境と自己との関係付けに対する児童自身の捉え方(認知) が,ストレス耐性と関係しているものと考えられる。 さて,登校拒否児の日頃の行動を子細に観察すると,完全を求める傾向や,ちょっとし た失敗をとても気にするところが見受けられる(小泉, くやり通すだけの粘り強さを示さず,逆に,. 1973)。完全にできるまで辛抱強. 「完全にできないのなら,やらない+といっ. たような行動につながりやすいためであろうか,自信や意欲を失い,自己を否定的に捉え るためにますます自尊感情が低下していくようである。こうした傾向を示す背後には, Bandura, A. (1977)の指摘するように,自己強化基準(self - reinforcement criterion) の不適切さが自己制御(selfcontrol)の機能不全を引き起こすために負の自己概念を形 成するという過程が関与してると考えられる。 いっぽう,これまでの登校拒否指導実践研究では,単なる自信の喪失だけでなく,登校 拒否児の対人関係の未熟さも指摘されている。すなわち,彼らは対象や他者との心理的距 離感がうまくとれず,必要以上に他者の評価を気にしたり他者との関係を気づかったりす るため,他者との相互作用が困難になってしまうのである。登校拒否児は未経験の事象に 対して強い抵抗を示すことがあり,課題遂行に十分な能力があると教師が評価していても, その課題になかなか取りかかれず,たとえ絶対に失敗しないと思われるところから始めた 「あま. としても,初期の些細なつまずきや失敗で全くやる気を失ってしまう。あるいは, り本気ではない+というような態度で取り組み始める。少しの失敗に対しても,. 「本気で. はなかった,わざといい加減にやった+という印象を与えよう(自己提示self-presentation)としているかのように,あるいは,自分自身にそう言い聞かせ納得させるかのよ うに(自尊心の維持)振るまい,見ている他者にもそのように解釈できる態度を示したり することがある。これらは,自信や自尊感情の低下とともに,他者からの評価を過剰に懸.
(4) 154. 岡田守弘・渡田典子. 念した行動そのものを示す例であろう。 不適応行動に対する社会心理学からの視点について,大坊,安藤,池田(1989)は次の ような指摘をしている。すなわち,. 「社会的行動は,他の人びとも含めて周囲の環境を私. たちがどのように理解しているのか,またその環境との関わりにおいて自分自身をどのよ うに捉えているかということに大きな影響をうけている(p.80)+と述べ,行為者の認知 過程にアプローチすることこそが不適応行動の発現とその治療のメカニズムの同定に有効 な視点を提供できるものであるとしている。これらの視点を受けて,ここでは,登校拒否 児に限らず児童期に生ずる学校不適応とは,自己及び他の人々を含めた環境に対する認知 が不適切なことと深く関わっており,認知のこの不適切さば不適応行動の発現よりずっと 前から行われしかも訂正されず,不適切な自己評価と円環的な関係を持って不適応行動へ と導いていく結果であると仮定することができよう。そこで,本研究では,児童の抱く不 適応感(主として学校場面での)杏,. ①自己と環境との間の関係の認知としての「評価懸. 忠+, ②自己強化基準認知としての「自己制御感+との2側面から捉えることを目的とし. て以下の2つの仮説を設定した。 〔坂説1〕自己制御が著しく高い場合には自己に対して 厳しすぎる制御を求める傾向を示し,自己制御が著しく低い場合には自己を制御すること に無力感を抱く傾向を示すであろう。すなわち,自己制御が強すぎる場合も弱すぎる場合 ち,不適応感を抱きやすいというU字型の関係があるであろう。 〔仮説2〕評価懸念の著 しく強い者は,自己の達成基準を自分の能力や自己実現の方向によって設定するのではな く,他者の基準を準拠枠として,それによる影響を受けやすい傾向や,自分に対する他者 の態度に安心感・信頼感を抱けず心理的不安定傾向を示すであろう。いっぽう,評価懸念 の著しく弱い者は,他者からの評価に対して,その評価の本質に関わらず一方的にあきら めを感じ抱き,無力感に陥る傾向を示すであろう。すなわち,評価懸念の高すぎる場合も 低すぎる場合も不適応感を抱きやすいというU字型の関係があるであろう。 この2つの仮説を基底として,ここでは,児童(小学校高学年)用の評価懸念尺度と自 己制御感尺度の作成について報告する。 2. 評価懸念尺度の作成 他者から注目されたりカメラを向けられたりすると多くの人は落ち着かなくなり,不快. 感を味わい,不安が高まり,逃避的になるといった妨害的効果に着目したBuss,A.H. (1980)は,他者の存在そのもののマイナス面を強調している。そして,他者がそばにい ることで味わう不快感を社会的不安(sosialanxiety)とよび,これは他者の存在により 我々の公的自己についての意識が強まることから生じるものとしている。また,他者との 相互作用を行うことに不安を感じ,行動的困難が生じることを社会的不安の状態にあると 指摘しているLeary,M.氏.. (1983)らは,. 「(社会的不安とは)現実の,あるいは想像上. の対人場面において,他者からの評価に直面したり,もしくはそれを予測したりすること から生じる不安状態(1983,p.4)+であると定義している。すなわち,社会的不安は他者 からの評価が大きな意味を持つために,他の多くの不安と異なる特徴をもっのであって, 目の前に他者がいなくても社会的不安は起こり得るのであり,まだ始まっていない対人関.
(5) 155. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. 係を想像するだけで生ずる不安をも含むものである。 (1968)は,他者から注目されているのが気にか いっぽう, Henchy,T.&Glass,D.C. かるのは,その他者から自分が評価されているのではないかと心配することを意味し,こ れを評価懸念(evaluation. apprehension)と規定している。この評価懸念が,自己提示欲 求と関連して社会的促進として機能するのか,あるいは,社会的不安となって回避抑制行 動を引き起こすのかは,. ①評価をうける内容が慣れたことなのか,不慣れなことなのか, ③評価 ②評価する他者がどういう人であると思うかなどの認知と関連しており,さらに, されているかどうかが明らかでない場面では,評価されていると感じるか否かの認知と, 評価を受ける内容に対する自己評価(認知)が重要な意味を持っのである。 (1969)は,社会的不安の構成概念を特定するために「否定. watson,D.&Friend,R.. 的評価懸念尺度(FNE 皮(SAD. ;. Social. ;. Fear. of Negative. Avoidanceand. Evaluation. Distress). scale)+と「社会的回避と苦悩尺. +を作成している。否定的評価懸念とは,. 他者からの評価に対する一般的懸念,他者からの否定的評価への苦悩,評価が予期される 場面からの回避や否定的に評価されることへの懸念であり,社会的是認を受けることが少 ないことにも懸念するというのである。ここでは,現実の肯定的評価を望むあるいは予期 SADは,社会的回避尺度と社会 するということまでは含められてはいない。いっぽう、 的苦悩尺度との2つのサブスケールからなっている。社会的回避とは,他者と一緒にいる ことや語り合うことを回避し,他者から逃げる.ことを意味し,実際の回避と回避願望とが 1. 含ま叫ている.社会的苦悩とは,現実の社会的相互作用において,気持が動転する,悩む, 緊張する,不安になるといった否定的感情を経験したことを意味している。大学生を対象 Taylor (.01)であり,また, (N-205,p とした調査では,この2尺度間の相関は0.51 の顕在性不安尺度(MÅs)との相関は,. FNEとでは0.60,SADとでは0.54. (N-. 171)で. Social. Anxiety. あった。 さて,. LaGreca,A.Mら(1988)は,児童用社会的不安尺度(SASC;. scaleforChildren)の開発を行っている。これは, ので,. FNEからの6項目,. Reynolds&Richmond. Watson&Friendの定義に基づくも. SADからの4項目からなるものである。併存妥当性のため,. (1978)の改訂版児童用顕在性不安尺度(RCMAS. ;. Revised. RCMASとの children'sManifestAnxiety)とソシオメトリーを同時に実施している。 SADでは,男児において高い 比較では, FENにおいては全般に高い相関が得られたが,. 相関が,女児ではやや低い相関が得られたのみであった。 先に述べた登校拒否児の課題遂行への取り組み例に示されているように,他者や自己へ の認知が関与している上述の評価懸念を指標にすることができれば,その児童の社会的不 安の程度や不適応感の如何を測ることができるであろうとの観点から児童用の評価懸念尺 度の作成を試みた。まず成人を対象とした既存の評価懸念尺度の因子的構造を調べ,つい で児童用評価懸念尺度を作成した。 2-. 1評価懸念予備尺度の作成 (1969)の否定的評価懸念尺度(FNE)をその文脈を維持しつつ日常. watson&Friend.
(6) 156. 岡田守弘・渡田典子. 的に使われる適切な表現となるように日本語に訳した。. FNEは,他者からの否定的評価 が予期される諸場面に関して個人が抱く懸念の程度を測るための30個の質問文から成っ ているoいっぽう,. Henchy&Glass. (1968)は,傍らに他者がいるとその他者から自分. が評価されているのではないかと心配することを評価懸念とし,評価場面が明確でないの に評価されているのでないかと気になってしまうことをも含めている。これによると,杏 定的な評価への懸念ばかりでなく,たまたまうまくできたことを実力だと認められ期待さ れることや,努力や実績を本人の自己評価以上に高く評価されることなど,過度に肯定的 な評価を受ける事態に対する懸念も含まれると考えられる。そこで,傍らの他者から評価 されているのではないかという懸念(評価場面の意識あるいは懸念)と肯定的評価への懸 念あるいは回避の2側面に関する44項目を新たに作成した。 先のFNEでは,懸念の有無のみを問う真偽法であったが,因子的構造を確認するため に,そして,児童用として意味の明確な項目を選択するために,時間的程度量を表す形容 詞を質問文から省きかつ頻度表現を用いた6件法に改め,合計74項目を評価懸念予備尺 度とした(資料1)。 ①調査対象者 国立大学学生130名(男性69名,女性61名) ②調査期日 1990年7月5日 ③調査手続き 授業時間に評価懸念予備尺度を配票し,一斉に調査した。 ④結. 果. 回答分布に著しい偏りのある項目や回答分布から見て意味が多義的であったと思われる 項目を削除した後に,主成分分析を行った(欠損値のある者を除いたので,. 125名が分析 対象者となった)。第4成分まで(固有値1.5′以上)のところで成分負荷量の低い項目を 削除しつつ,主成分分析を繰り返した。次いで,最終的に採用された30項目について因 子分析を行?た(主因子解,バリマックス回転)。初期因子解の固有値が1.5以上(累積 寄与率53・5%)で4因子が抽出された。因子負荷量の高い項目の内容に従って,第1因 子は「否定的評価の懸念・回避+,第2因子は「評価場面の意識・懸念+,第3因子は「肯 定的な評価への懸念+,第4因子は「評価場面の意識と肯定的な評価の期待+と命名され た。各因子において,因子負荷量0.35以上の項目を単純合成して(反転項目は値を逆転 してある),各因子の得点(尺度得点)とした。表1に示すように,各尺度におけるα係 数は高く,内部一貫性が認められたので,この30項目を基に,次に述べる方法で児童用 評価懸念尺度を作成した。.
(7) 157. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について 表1評価懸念予備尺度で採用された30項目の因子負荷量 (*は反転項目,因子負荷量は4因子指定,バリマックス回転後) (6件法,大学生,. 因子1否定的評価へめ懸念・回避. N-125). 一因子 1. 2. 3. .789. .263. -.1白8. ,756. .241. -.066. .730. .134. ,691. .321. .686. .005. .672. .295. .670. 4. 共通性. 25*人が私のことをどう患おうが,気になら ない。. 5*私のことで人が言っていることに,思い 悩むことばない。. .197. ・.092. ∴746. .643. 16自分のことについて友達から言われたこ とをくよくよと考えてしまうo. .200. .598. ,191. .622. .076. .476. I.084. .055. .548. .257. -,114. .111. .609. .310. -.062. .019. .471. .570. .271. -.087. ,356. .543. .423. .062. -.357. .254. 26*私は人に気にいられなくても,それが気 になるわけではない。. .088. -.076. 11*人に非難されても,私はまどわされるこ とがない.. .018. 9*人が私によくない印象を抱いているとわ かっても,私は気にならない。 31*人が私についてどういう意見を持とうと, 気にすることはない.. I.540. 3*私が人にどんな印象を与えているのか, 気にしていない。 1たいしたことではないとわかっていても, 人が私のことをどう恩■ぅか気になる. 19*私の本当の力を人に認めてもらえなくて もかまわない。. .因子2評価場面についての意識 (否定的評価の予期). ..374. 因子 1. 2■. .241-. .760. .076. .687. .31ナ. .682. .246. .654. 3. 4. 共通性. 27目上の人が私をどう考えているか,とて も気になる。. -.q25. .025. .638. .o56. .246. .541. .126. .124.. .597.. .068. .498. 20・目上の人が私の方を見ていると,評価さ れているように.思える。 21私は人から「役に立たない+と思われは しないかと気になる。. 32・私は目上の人から評価されていると思う と,緊張し,神経過敏になる.. -.069.
(8) 158. 24. 13. 岡田守弘・渡田典子 私は人から好意的に思われないかもしれ ないと,. 'L、配している。 自分の服装を人がどう思うか,気になる. .257. ことがある。. .158. .. 599. .355. .155. .088. .456. .013. .261. .220. 因子. 因子3肯定的評価への懸念 1. 2. 3. 4. .129. .078. .601. .084. .391. .091. .599. ,030. .371. 共通性. 29たとえ私に十分な実力があっても,人か ら高く評価されると落ちT3かない. 33自分の力を100%認められるより,80% ぐらいの方が安心できる。.. -.052. 10自分では長所だと自負していることでも, 人には認められない方がむしろ安心だ。. -.394. -.102. -.251. -.100. .593. -.111. .529. 34私は人から「まじめにやっていないlと 思われていた方が気が菓だ. .556. .101. .392. .518. ー.364. .404. .476. -.076. .271. .403. -.127. .220. 30*人は私にいい印象を持っだろうと思って -.003. いる。. +058. 2私は人から「頼りにならない人だ+と恩 われている方が気が楽だ. -.194. -.029. 14人が私を実力以上に高く評価していたら, かえって心配になるo. ,156. .131. 因子. ・因子4評価場面についての意識 (肯定的評価の予期). 1. 2. 3. 4. .140. .149. .117. .646. .475. .261. .085. ー.233. .567. .451. ・3?1. .219. .001. .545. .454. -I,434. .526. .466. I.390. .495. .419. .426. .312. 共通性. 7誰かが私を見ているような気がして、ま わりを見ることがある. 4人が私の方を向いていると,私を見てい るように感じられる。. 18知らない人か私の方を見ていると,気に なる. 8人から評価されるとき,私はきっと良く 評価されるだろうと思う。.. I.002. -.026. 23たぶん私は人から有能だ.と思われている と思う。. -.138. .040. 12何かに夢中になっているとき,自分は人 からどう見えるのかと,ふと気になるこ ■とがあるo. .235. .271. -.041.
(9) 159. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について 17人が私のことを良く評価してくれること .299. を期待しすぎるところがある。-. 8.145. バリマックス回転前の固有値. 2.909. 1・790. 1.196. 36.8. 42.5. 46.5. 40.96. 20.34. 22.84. 23.15. SD. 8.67. 4.91. 5.29. 4.89. a係数. 0.911. 0.831. 0.740. 0.751.. 単純合成得点平均. .285. .380. 27.1. 累積寄与率(%). 2-2. -.000. .225. 児童用評価懸念尺度の作成. 上述の手続きで選択された30項目を小学校高学年児童が理解しやすい言葉に若干手直 しして, FNEと同様に真偽法に改めて児童用評価懸念尺度とした(中性的な内容の4項. 目をダミー項目として加えたので合計34項目である)0. (資料2). どのような行動や感情や態度をとることが,社会的是認を得るかについての一致した判 断(Fordyce,. 1956)と定義される社会的望ましさは,質問紙法パーソナリティ検査など. の施行時に同時に測定されるのは、この社会的望ましさによる回答歪曲の影響を取り除こ うとするためである。ここで作成される評価懸念尺度に社会的望ましさがいかなる影響を 与えてるか否かを調べるために,桜井(1984)の児童用社会的望ましさ尺度を同時に実施 した。. ①調査対象者 横浜市立の3小学校5,. 6年生(6年男児37名,. 6年女児38名,. 5年男児36名,. 5年女児31名,計142名) ②調査期日 1990年7月11から18日,. 9月7日. ③調査手続き 授業時間に児童用評価懸念尺度と児童用社会的望ましさ測定尺度(桜井,. 1984)とを. 綴じ込んだ冊子を配布した。学級担任が教示し,質問項目を読みあげ,児童が一斉に回答 した。. ④結果と考察 内部一貫性が必ずしも高くないので,この尺度の因子構造の確認のために,再度因子分 析をすることにした。回答分布に著しい偏りがなかったので,. 30項目(ダミー4項目を. 除く)全てについて因子分析を行なった(主因子解,バリマックス回転)。その結果, 因子が抽出されたが,表2に示されているように大学生を対象として作成した評価懸念予 備尺度と多少異なる構造であった。従って,因子構造を改めて探り,小学生にとって意味 が明確に理解できるように項目を精選して,短縮版尺度を作成することとした。. 4.
(10) 160. 岡田守弘・渡田典子 表2. 評価懸念予備尺度で採用された30項目の因子負荷量. (*は反転項目,因子負荷量は4因子指定,バリマックス回転後) (真偽法,小学生,. (N-140). 因..千. 因子1否定的評価への懸念・回避 1. 2. 3. 4. .共通性. 31*人がわたしのことでどういう考えを持っ ていても,気にならない(1). .672. .160. -.007. .058. .480. .594. ・.100. -.044. .111. .376. .566. .209. -.105. .067. .380. .488. .077. .227. .300. .485. .403. -.044. .446. .258. -.004. +150. .288. -・0甲. .149. .270. 11*だれかがわたしめやり方にもんくをいっ ても,気にならない(1) 25*人がわたしのことをどう思おうと,気に ならない(I). 26*わたしは人に気にいられなくても,気に ならない(1). .063. 5*わたしのことで人が言っていることに, なやんだりしない(1). -.112. .413. 21わたしは「役に立た.ない+と思われない か,と気になる(2) 9*人から「感じがわるい+と思われても,■ 気にならない(1). .437. -.224. 34「まじめにやっていない+と思われるほ うが気が楽だ(3). -.388. .008. -.094. ⊥.359. .202. -.149. -.081. .112. -.204. -.225. .288. 3*わたしが人にどんな感じをあたえている か,気にならない(1). .341. ・I86. 2人から「たよりにならない+と思われて. いるほうが気が楽だ(3). -.249. .167. 因子. 因子2? 1. 2. .073. ・?77. .355. .575. 3. 4. L.095. -.094. 共通性. 7だれかがわたしを見ているような気がし て,まわりを見ることがある(4). .,356. 16・わた■しのことで友だちから言われたこ.i. をくよくよと考えてしまう(1). .104. -.100. .477. 一.190. .442. 33わたしの力を100%知られるより,80% ぐらいのはうが安心できる(3). -.242. .509. -.297. .478. -.044. 20日上の人がわたしの方を見ていると,ど う恩?ているのカiと気になる(2). .140. .298. .339.
(11) 161. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について 18. 知らない人がわたしの方を見ていると,気 .. 080. .450. になる(4) 12. 039. .. ,. 049. .212. 何かにむちゅうになっているとき,わたし. は人からどう見えるのかと気になる(4). .247. .446. -.044. .219. .310. 1ちょっとしたことでも,人がわたしをどう .. 302. .446. 思うか,気になる(1) 27. .263. .421. -.034. .322. .420. -.028. .126. .299. .027. .186. 人がわたしの方を向いていると,わたしを 見ているように感じる(4). 14. .373. .315. .347. 私は目上の人から点をつけられていると思 うと,きんちょうしてしまう(2). 4. -.120. 日上の人がわたしをどう考えているのか,. 気になる(2) 32. .261. 039. .. -.014. .281. -.014. .107. わたしは実力以上によく思われたら,かえっ て心配になる(3). .111. .079. 由子. 園子3評価場面についての意識 (肯定的評価の予期). -.176. 共通性. 1. 2.. 3. 4. .018. .109. .724. .117. .550. .088. .665. .090. .461. 30人はわたしを「感じがよい+と思っている だろう(3) 17人がわたしのこをよく思うだろう(4). -.052. 23■だぶんわたしは人から「よくできる+と恩 われているだろう(4). -.034. -.013. .648. -.008. .421. 8どんなことでも「よく.できた+と人から言 われると患う(4). .021. .035. .584. .111. .354. 困・子 因子4■?. 1. 3. 4. .088. .479. .2. 共通性. 13わたしの服そうを人がどう思うか,気にな る(2). ,059. .472. ,464. 10わたしの長所(尽いとこ.ろ)でも,人から I.193. .044. I.156. -.445. .261. -+432. .407. .そう見られないほうが安心だ■(3). 19わ七しの本当め力をわかってもらえなくて もかまわない(1). -.414. 丁・024. ⊥.220. 24わたしは「いい人だ+と・思われないかと, 心配になる(2)・. .253. .307. T1.031. ・.035′. .061. -.049. .416. .333. 29たとえわたしに十分な実力があっても,人 からすごくほめられるとおちつかない(3). -.248. .069.
(12) 162. 岡田守弘・渡田典子 バリマックス回転前の固有値 累積寄与率(%) 単純合成得点平均. (注)項目の後の(. 5.107. 17.0. 2.245 24.5. 1.+547 29.7. 0.893 32.6. 7.33. 6.03. 0:73. 2.66. SD_. 2.49. 2.82. 1.16. 1.44. a係数. 0.774. 0.747. 0.757. ■0.547. )内の数字は,評価懸念予備尺度での因子番号である(大学生対象)0. 30項目について主成分分析を繰り返し,固有値1.5以上の成分で成分負荷量の低い項目 を除き, 16項目が選択された。この16項目についての因子分析では,初期解の固有値が 1.5以上で2因子が抽出された。 因子1は「否定的な評価の懸念・回避+で8項目,因子2は「評価場面の意識・懸念+ 「肯定的な評価への で同じく8項目である。大学生で得られた「肯定的な評価への懸念+ 期待+については,この2つをまとめた因子として抽出可能であったが,項目が少なく, 因子1,. 2と異質であるため除外することとした。肯定的評価の懸念は,評価懸念として. 否定的評価懸念が前面に出た質問紙では表れにくいものであると考えられる。各因子の単 純合成得点の平均,標準偏差, 4.10,. 2.47,. 2.22, 0.773であり,因子2が α係数は,因子1が5.66, 0.778であり,因子1および因子2各々の内部一貫性が認められるので,真偽. 法のこの評価懸念尺度は2因子構造と見なせる(なお,両因子の単純合成得点の相関は 0.522と比較的高い)。上記の手続きで採用された16項目からなる「児童用評価懸念尺度+ が作成された。 男女差を検討するためにt検定を行なったところ,因子1では, 子2では,. t -3.7(p. t-4.50(p (.01),因 (.01)で,女子の得点の方が有意に高かった。学年差はなかったが,. この尺度を使用して行う今後の研究では,男女を分けて分析する方がよいと考えられる。 また,社会的望ましさ尺度(25項目,平均10.78,標準偏差4.49,. α係数0.766)との間に r-0.ll,因子2でrニー0.ll)。社会的望ましさ 尺度は,社会的望ましさによって回答を歪める傾向を淵定するとともに,社会的望ましさ は有意な相関はなかった(因子1で,. を自己の行動の基準としているか否かを測定する意味を持っものである。従って,評価懸 念は,社会的望ましさの影響は弱く,社会的望ま・しさへの準拠の程度とも関係が弱いこと が見いだされた。. 2 -3. 児童用評価懸念尺度の検討. さらに,小学生用評価懸念尺度を大学生(171名)に実施し,因子分析を行った結果4 因子が抽出され, 「否定的評価の懸念・回避(因子1)+ 4)+が小学生の因子1. 「否定的評価の懸念・回避+に,. 価の予期・懸念(因子3)+が小学生の因子2. 「肯定的評価を期待しない(因子 「評価場面の意識(因子2)+. 「評価場面の意識・懸念+に相当すること. が見い出された。この結果から,大学生はどには分化していないものの,小学生も大学生 と似た構造の評価懸念を持っものと考えられた。. 「評.
(13) 163. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について 表3. 評価懸念尺度で採用された30項目の因子負荷量. (*は反転項目,因子負荷量は4因子指定,バリマックス回転後) (真偽法,大学生,. N-165). 因子 因子1否定的評価への懸念・回避. 1. 09*人から「感じがわるい+と思われても, 気にならない(1) .25*人がわたしのことをどう思おうと,気に ならない(1). .700. 2. 056. 3. 4. I.116. -.064. .510. --,016. .476. .639. -,212. -.148. .625. -.055. -.171. 共通性. 3*わたしが人にどんな感じをあたえている か,気にならない(1). .018. .423. ,137. .456. .021. .449. 1ちょっとしたことでも,人がわたしをど う思うか,気になる・(1). I.596. .251. .137. 26*わたしは人に気にいられなくても,気 にならない(1). .581. -.254. -.214. .578. -.272. -.022. -.041. .410. .534. -.173. -.259. I.035. .384. -.047. .251. 5*わたしのことで人が言っていることに, なやんだりしない(1). 31*人がわたしのことでどういう考えを持っ ていても,■気にならない(1) 13わたしの服そうを人がどう思うか,気に なる(2). -..458. .175. -.091. -.438. .118. I.018. -.436. .394. 4人がわたしの方を向いていると,わたし を見ているように感じる(4). .170. .235. 18知らない人がわたしの方を見ていると, 気になる(4). .034. -.033. .348. -..337. -.152. .346. 11*だれかがわたしのやり方にもんくをいっ ・ても,気にならない(1). .427. I.165. 因子. 因子2評価場面についての意識 (否定的評価の予期). 1. 2. 3. 4. .153. .802. -.140. .101. .696. .169. .726. -.133. .115. .587. .225. .584. I.141. 共通性. 27日上の人がわたしをどう考えているのか, 気になる(?) 20目上の人がわたしの方を見ていると,ど う思っているのかと気になる(2) 21わたしは「役に立たない+と思われない か,と気になる(2). -,080. .418.
(14) 164. 16. 岡田守弘・渡田典子 わたしのことで友だちから言われたこと をくよくよと考えてしまう(1). 32. .432. .078. ,010. .338. .398. .422. .002. .012. .337. .311. .325. ,119. -.034. .218. .169. .256. .237. -.198. .190. .197. .253. .122. -.005. .117. わたしは実力以上によく思われたら,か えって心配になる(3). 7. .381. .360. 何かにむちゅうになっているとき,わたし は人からどう見えるのかと気になる(4). 14. .142. わたしは「いい人だ+と思われないかと, 心配になる(2). 12. ,449. 私は目上の人から点をっけられていると 思うと,きんちょうしてしまう(2). 24. -.004. .371. だれかがわたしを見ているような気がし て,まわりを見ることがある(4). 因子3肯定的評価への懸念. 因子 1. 2. -.167. -.098. .651. -.080. -.011. ..508. -.210. -.112. -.179. -.340. 3. 4. 共通性. 10わたしの長所(良いところ)でも,人か らそう見られないはうが安心だ(3). -.161. .487. 34「まじめにやっていない+と思われる方 が気が楽だ(3) 2人から「たよりにならない+.と思われて いるはうが気が楽だ(3). 456. .131. .282. -.117. ,278. ,445. -.224.. .396. 19わたしの本当の力をわか,,てもらえなく てもかまわない(1). 33わたしの力を100%知られるより,80% ぐらいの右手うが安心できる(3). -..029. .172. .404. -.090. .202. .195. .107. ・.283. -.198. .168. 1. 2. 3. .065. I.174. -.114. .750. ・.609. .016. -.056. -.277. .579. .416. -.032. .525. .297. .464. .224. 29たとえわたしに十分な実力があっても, 人からすごくはめられるとおちっかない(3). 因子4評価場面についてゐ意識. (肯定的評価の予期) 17人がわたしのことをよく思うだろう(4). 因子 4. 共通性. 30人はわたしを「感じがよい+と思ってい るだろう(3). 23たぶんわたしは人から「よくできる+と 思われているだろう(4). .056. .131. .001. .078. 8どんなことでも「よくできた+と人から いわれると思う(4). .042.
(15) 165. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について 6.244. バリマッークス.回転前の固有値. 20.8. 累積寄与率(%). 8.08. 単純合成得点平均. 2.97. SD. 0.846. ・a係数 (注)項目の後の( 表4. 2.221. 1.121. 1.声20. 28.2. 32.6. 14.72. ・写・61 0.784. 36.4. 2.52. 0,87. 1.67. 1.16. 0.639. 0.675. )内の数字は,評価懸念予備尺度での因子番号である。. 児童用評価懸念尺度(16項目の短縮版)で小学生と大学生の因子構造の比較 (*は反転項目,因子負荷量は2因子指定,バリマックス回転後). 小学生(N. -. 大学生(N. 140). 1. 2. 項目. 共通性. 31*人がわたしのことでどういう考えを. 25*. .612. -.264. .444. .608. -.149. .392. ,576. -.257. ■.397. .527. I.061. 11*だれかがわたしのやり方にもんくを いっても,気にならない 25*人がわたしのことをどう思おうと,. 気にならない. 26*わたしは人に気にいられなくても, .気にならない・ o9*人から「感じがわるい+と思われて. .■.491 I.168. .2革1. .265. ・.442. -.058. .199. -.341. .259. 34*「まじめ■にやっていない+と思われ. 11*. 1. 21わたしは「役に立たない+と思われ: .378. 31*. 26*. -.213. る方が気が楽だ. 5*. .269. I.468. ち,気に専らない. 1. 34*. 2. 共通性、. .694. -.227. .533. .673. -.131. .471. ,621. -.284. .466. .585. -.212. .387. .568. I.306. .416. .470. -.202. .262. .460. -.315. .311. .183. -.042. .035. 9*. 19わたしの本当の力をわかってもらえ なくてもかまわない. 165). 因子1否定的評価への懸念. 因子1・否定的評価への懸念・回避. 持っていても,気にならない. -. ・.ないか,と気になる. 因子2評価場面についての. 因子2評価場面についての. 意識・懸念(否定的評価の予期). ・意識・懸念. 16わたしのことで友だちから言われた I.197. ことをくよくよと考えてしまう. .683. .505. .605. ...368. o7だれかがわたしを見ているような気 がして,まわりを見ることがある ̄。. .041. 27. -.120. .837. .716. 20. -.147. .747. .580.
(16) 166. 岡田守弘・渡田典子. 01ちょっとしたことでも,人がわた. しをどう思うか,気になる. -.102. ・5.69. .334. I.213. .510. .306. -.339. ・.501. -.317. .430. .286. -.297. .420. .264. I.271. .351. .196. 21. -.215. .595. .400. -.300. .463. .304. -.323. .431. .290. -.229. .367. .187. .313. .167.. .267. .083. 32私は目上の人から点をっけられて いると思うと,きんちょうしてしまう. 16. 05*わたしのことで人が言っているこ とに,なやんだりしない. .366. 32. 27日上の人がわたしをどう考えてい るか,とても気になる. 19*. 12何かにむち■ゆうーになっているとき,. わたしは人からギう見え■るのかと. 12. -I,262. 気になる 20目上の人がわたしの方を見ている と,どう患っているのかと気になる バリマックス回転前の固有値 累積寄与率(%). 25.9. 単純合成得点平均. 3. 4.138. .993 32.1. 7. I.109 4.585 28.7. 1.023 35.1. 5.66. 4.10. 6.08. 4.22・. SD. 2.22. 2.47. 2.14. 2.40. α係数. 0.773. 0.777. 0.785. ■0.768. 児童用自己制御感尺度の作成 自己概念とは, 「自分は-である+というように,対象化された自己に関するさまざま. な下位概念が有機的に上位概念に統合され,それゆえに行動の内的基準として機能するも のであると定義される(蘭, 問題が生じやすく(松田,. 1989)。自己概念の形成過程をみると,発達段階の移行期に 1985),そのつまづきの特徴を滝沢(1989)は次のようにまと. めている。すなわち,児童期から青年期にかけては①他者と関わりあう経験を通して,他 者との間に類似や差異があることを認知して自己概念を明確にするようになるが,. ②物事. をうまくやり遂げられない経験を繰り返すと不全感を劣等感として発達させてしまうので ある。この点について,児童期の自己概念形成における節目は小学校4年生頃との指摘 (井上,. 1986,. 1987)もある。小学校中高学年の自己概念形成に関わる社会的機能につい. て,松山(1979)は自己概念および自尊感情と学級への適応について調べ,スクー・ル・モ ラール得点の高い(学校適応の良いと見なす)児童は自分自身の行動特性を高く望ましい ものと認知していること,教師や級友からの自分の性格についての評価も望ましいものだ と認知していること,を報告している。 登校拒否児の自己意識と対人意識について辻(1988)は,彼らの認知的単純性,硬直性 を指摘するとともに,理想自己と現実自己の間に義務自己の概念を導入して学校不適応に 伴う感情反応過程を次のように説明している。すなわち,義務自己(Higgins,E.T.etal., 1987)とは個人が義務や責任として最低限備えているベき自己であり,登校拒否児は義務 自己と理想自己が密着・一体化している。例えば,成績優秀ということは単なる理想にと.
(17) 167. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. どまらず義務として達成されなければならないこととなる。当然で普通のことである事柄 に対しても義務として認知されるため,達成できないとすると無価値な自己に責任を帰し 許すことができなくなるのである。従って,登校拒否児は,学校や勉強のことを思い出さ せられるたびに,理想自己と密着した義務自己が現実自己とずれていることを意識させら れ,強い感情反応を現すのである。 義務自己によってもたらされる感情反応に関連すると思われる事について,中川,宗像 (1989)は,ストレス反応(症状)を持ちやすい者に,いわゆる「よい子+がいる,と述 べている。すなわち,よい子とは,自分の感情や気持ちを抑えてでも(自己抑制型行動特 性を持つ)まわりの期待に添うように努力するのである。そのため,不快感,不安,不満 などを持ちやすいだけでなく,そのような自分自身に対し嫌悪感や無力感や自分らしさの 喪失感を抱き,ストレス状態を増強してしまう。これは,まわりの人(とりわけ自分にとっ て重要であるとみなす人)に気に入られたい,認められたいという依存欲求が強い(本人 の内的要請)ため,この依存欲求以外の欲求を犠牲にしてでもまわりの人の外的要請に応 えようとする。このように依存欲求にこだわるのは,生活上の様々な要請に自律的に対処 することへの不安が掛、ことに起因しているのであり,また,外的要請に応じるのも自ら の依存欲求を満たすためにだけ対処しようとするのであって,真剣に対処しようとしてい るわけではない。 「つじつまあわせの,体裁だけのポーズ+になりがちで,まわりからの 信頼も失いやすいし,また,率直な自分を出せないためまわりの人たちと心からの結び付 きが持てないのである。 さて,人は自己の行動について自ら評価するときの基準が自己の能力にふさわしく,過 切なものであれば正しい(安定した)と自ら認めることのできる評価がなされるものであ る。しかし,理想や他者の評価基準のみを取り込み,自己の能力を考慮しない基準を設定 した場合,自己評価が低くなり,自尊心の低下や不適応感をもたらすものと考えられる。 この点ついて, Banduraは自己強化基準に関連させて次のように説明している。すなわ ち,自らが設定した基準を達成したとき,自らコントロールできる報酬を自らに与え,そ れによってその行動を促進し維持する過程を自己強化といい,自己の行動に対する評価お よび自己反応結果によって行動を調整する過程を自己制御(self-. control)あるいは自. 己調整(sel卜regulation)と定義している。そして,自己強化基準が不適切に設定され た場合,自己制御は機能不全となり,負の自己概念が形成されるものと考えられている。 負の自己概念は自分を低く評価する傾向であり,正の自己概念は自分を好意的に評価する. 傾向として捉えられる(柘宗,原野,相木,春木1985)0 そこで,ここでは,自己強化基準及び自己制御の認知を自己制御に関わる態度や意見の 表明あるいは受け取り方と規定して,この自己制御感は,先に述べた評価懸念と関連して, 社会的不安の程度や不適応感の如何を測る指標となるであろうと仮定して児童用自己制御 感尺度の作成を試みた。 3-. 1. 自己制御感予備尺度の作成. 自己制御感は社会的望ましさとの関わりが強く,その影響が強く作用するものと予想さ.
(18) 168. 岡田守弘・渡田典子. れるため,児童の学校生活で普通に見られる行動について自己の実際の行動ではなく仮想 の人物に投影させる手法で測定することとし,次に述べる方法で児童用自己制御感尺度を 作成した。 小学校の学校生活に関わる18の場面(課題達成5場面,規則遵守2場面,対人関係2 場面,健康管理2場面,生活管理7場面)のそれぞれについて,. 「想像のB先生+が一般 的に望ましいとされる小学生の態度や行動に関する意見を述べる状況を設定した。そして, 回答する小学生が想像した「友だちAちゃん+は,. B先生の意見を聞いて,. Aちゃん自身 の行動をどの程度制御しようとするのか否かについて問うこととした。回答は,自己制御 が最も強いと思われるAちゃんの行動や態度から最も弱いあるいは先生の意見に従わない 行動や態度というように自己制御の強い順に提示されている回答選択肢(3から5個)の 中から, Aちゃんに最も当てはまる行動を1つ選んで○印をっける形式とした。 (例)先生の言葉「宿題以外にも,時間を決めて家で勉強しましょう。+ 回答選択肢1自分で時間を決めて,必ず勉強する。 〝. 2. 決めた時間は,たいてい勉強する。. 〝. 3. 決めた時間どおりではないが,勉強する。. 〝. 4. やる気がしないときは,勉強しない。. こうして作成した場面と回答選択肢,そして投影法的調査方法が小学生に理解できるもの であるか,選択肢が学校場面でしばしば見られる児童の行動を網羅しているか,自己制御 感の強さの順序性が保たれているか否かを小学校教師10名と学校教育専攻の大学院生10 名が個別に検討した。また,この投影的手法では教示の与え方の如何が回答を左右するの で教示文の検討も同時に行なった。回答選択肢を取捨選択して最終的に18場面からなる 自己制御感予備尺度(資料3)が作成され,次の手続きでこの尺度の一貫性を調らべた。 3-2. 自己制御感尺度の作成. ①調査対象者 槙浜市立の1小学校5,. 6年生(5年男児′39名,. 5年女児35名,. 6年男児50名,. 年女児32名,計156名) ②調査期日 1990年7月16日 ③調査用紙 自己制御感尺度および社会的望ましさ測定尺度 ④調査手続き 学級ごとに,報告者および大学院生が行った(統一した教示ができるように,読み方や 音調などについて事前に訓練した)。自己制御感尺度を配布して調査者が教示した後,各 場面について児童自身が読み回答した。全員が回答し終ったことを確認してから,社会的 望ましさ尺度を配布し,調査者が質問項目を読みあげ一斉に回答させた。. 6.
(19) 169. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. ⑤結果と考察 10,. 18場面のうち,分布に著しい偏りのある場面9,. 18の3場面を削除した(試みに,. 15場面について因子分析を行なったところ,第1因子で全分散の61.1%が説明され,こ の尺度は全体として自己制御について測っているものと判断された)。 回答を林の数量化3類により繰り返し分析した結果,自己制御の最も弱い回答選択肢で ある4と5を比較的弱いと見なされる回答選択肢3と統合して変換処理した場合,自己制 御の強さの順に第一次元解のカテゴリー数量が算出されるようになった(表5)。さらに, 回答選択肢の1を2点,. 2を1点,. 3から5を0点として単純加算した合計得点と,数量. 化3類の分析手続きで計算される重み付けのされたケース得点との相関係数を求めたとこ ろr-.981であった。従って,この15項目を自己制御感尺度とし,制御の度合を上記の 合計得点(自己制御感得点)で示すことにした。 表5 (項目9, 項目. 自己制御感尺度の数量化3頬の結果 10,. 18を除く,小学5,. 6年生156人). 選択肢 項目内容. カテゴリー数量. 度数 番号. 番号. 1次元. 8.. 夏休みを計画的に. 1. 17. 1.. 宿題以外の勉強する. 1. 27. 5.. 忘れ物しない. 1. 28. -・1.929. 4.. 学校のきまりを守る. 1. 19. -1.883. 16.. 最後までがんばる. 36 .1. -2.431 -1.949. ll.872. 2次元・ 2.683 2.390 0.971 1.641o 1.195. 算数テスト前復習する. 1. 24-. 17.. 身の回りを整理. 1. 28. -1.743. 0.901. 13.. ・宿題を忘れない. 1. 28. -1.703. 0.867. 工作をていねいに. 1. 44. -1.494. 0.612. 14.. 自分の事は自分でやる. 1. 22. 12.. 手を洗い清潔に. 1. 32■. ll.■. 友達の気持ちを考える. 1. 22. ■一1.407. 15.. 任された事はしっかり. 1. 45. -1.375. 7.. 食物の好き嫌いしない. 1■. 31. 3.. みんな協力して. 1. 58. 7.. 食物の好き嫌いしない. 2. 63. -0.517. -0.611. 宿題を忘れない. 2. 65. -0.466. -1.096. 友達の気持ちを考える. 2. 77. -0.461. -0.837. 宿題以外の勉強する. 2. 48. -0.349. -1.644. 2. 96. -0.320. -1.046. 2. 62. -0.264. -1.047. 6.. 2.. 13. ll. 1. 14.. ・自分の事は自分で 4.学校のきまり守る. -1.792. -1.492 ll.428. -1.003 -0.910. 2.008. 1.998 1.490 1.117 0.442 0.803 0.244.
(20) 170. 岡田守弘・渡田典子 身の回りを整理. 2. 82. 6.. 算数テス.ト前復習する. 2. 55. 8.. 夏休みを計画的に. 2. 83. 2.. 工作をていねいに. 2.. 58. 0.006. 15.. 任された事はしっかり. 2. 80. 0.073. 12.. 手を洗い清潔に. 2. 106. 0.082. 忘れ物しない. 2. 90. 0.087. 最後までがんばる. 2. 91. 0.115. 3.. みんな協力して. 2. 80. 0・.312. 6.. 算数テスト前復習する. 3,4. 77. 0.676. 4.. 学校のきまり守る. 3,4,5. 74. 0.692. 0.458. 8.. 夏休みを計画的に. 3,4,5. 56. 0.825. 0.524. 1.. 宿題以外ゐ勉強する. 3,4. 81. 0.858. 0.179. 7.. 食物の好き嫌いしない. 3,4,5. 62. 1.029. 0.221. ll.. 友達の気持ちを考える. 3,4. 57. 1.168. 0.700. 2.. 工作をていねいに. 3,4. 54. 1.213. 0.057. 5.. 忘れ物しない. 3,4. 38. 1.217. 0.693. 13.. 宿題を忘れない. 3,4. 63. 1.240. 0.747. 17.. 身の回りの整理. 3,4. 46. 1.516. 1.284. 3.. みんな協力して. 3,4. 18. -1.552. 1,206. 14.. 自分の事は自分で. 3,4. 38. 1.674. 1.489. 15.. 任された事はしっかり. 3,4. 31. 1.810. 1.831. 17.. 5. 16.. 1β・ 最後までがんばる 1■2.. 手を洗い清潔に. -3,4 3,4. 29 17. -0.255. -1,028. -0.162. 10.794. -0.058. -0.902. -0,516 10..957 10.827 10.594 -1.071 -0.447. -0,057. b.880. ll.966 2.113.. 2.265. 固有値. 0.286. 0.167. 相関係数. 0.535. 0.408. 計■45項目. 説明率(%). ・14.3. 22.6. (荏)選択肢番号1は,自己制御感が最も強い回答選択肢である。. 自己制御感得点に男女差,学年差は認められなかった。投影したと思われる「友達Aちゃ ん+を異性にした者は,男子の10%,女子の15%であった。この場合,同性に投影した 者よりもやや高い尺度得点を示す傾向があったが,有意な差ではなかった。本尺度と社会 的望ましさ尺度とは, 0.39の相関(男子0.35,女子0.48)があり,今後,社会的望ましさ の尺度得点の高い児童のデータを除いて分析したり,自己制御感得点と社会的望ましさ得 点との比較から自己制御の様相を解釈する■ことも必要になると思われる。.
(21) 171. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. 自己制御感尺度および評価懸念尺度の妥当性の検討. 4. ここでは,評価懸念尺度および自己制御感尺度の妥当性を調べるとともに,この2尺度 が児童の不適応感をどのように捉えているのかの検討を行った。 4. 1ニつの尺度得点と担任教師による行動観察との一致度. -. (1). 評価懸念尺度の検討. 先の調査を実施した4学級のうち5. ・. 6年それぞれ1学級について,評価懸念尺度得点. と社会的望ましさ得点を個人別に算出して,得点間の関係から見て特徴があると思われる 児童を抽出した。そして,これらの児童を担任教師に示した上で,日常の行動観察から得 ているそれぞれの児童の様子を自由に回答記入してもらった。 まず,評価懸念尺度得点の著しく高いあるいは低い児童について,担任教師の観察を基 に納得できる結果であるかどうかを,. 「納得できる+, 「納得できない+,. 「どちらともいえ. ない+の3件法で聞いたところ,評価懸念高得点児童5名(男子2名,女子3名)につい て納得できるとされた者は3名(男子2名,女子1名),どちらでもないとされたのは2 名(女子2名)であった。評価懸念低得点児童17名(男子9名,女子8名)については、 納得できるとされたのは11名(男子8名,女子3名),納得できないとされたのは2名 (いずれも女子2名),どちらともいえないとの回答は4名(男子1名,女子3名)であっ た。この結果について担任教師の一人は,この尺度が測っているのは児童の願望や欲求を 含んでいるので,教師からみた児童の様子と一致しないのではないかと述べている。 また,評価懸念得点と社会的望ましさ得点とをクロスさせて,得点の布置の特徴を極端 a群(評価懸念得点が低く, に持つ児童に対する担任の印象を自由に記述してもらった。 社会的望ましさ得点が高い)については,自己主張ができない,感情表現が素直でないと 担任教師は一致して記述している。. b群(評価懸念得点が高く,社会的望ましさ得点が低. い)については,行動と感情のアンバランスや表情の乏しさなどが指摘されている。 (評価懸念得点が低く,社会的望ましさ得点も低い)では他人から批判を受けやすい,. C群 d. 群(評価懸念得点が高く,社会的望ましさ得点も高い)では甘えん坊であり感情のコント ロールがうまくできない等が記述されている。教師の印象と目からみて評価懸念と社会的 望ましさとの得点布置が児童の実態と一致しない部分もあるようだが,それぞれ教師から 見て気になる児童が特徴的な結果を出してきているといえよう。しかし、児童全体の結果 を示すと,'r評価場面についての意識・懸念+尺度については2教師とも納得のできると. 1人の教師は納 ころがあると答えている。 「否定的評価への懸念・回避+尺度に対して, 得できる結果であると答えているが,もう一方の教師はどちらともいえないとしていて, 必ずしも一貫したものでないことが示されている。 (2)自己制御感尺度の検討 日頃の児童の行動と自己制御感尺度との関係を調べるために,担任教師から見て自己制 御がよくできていると思われる児童(教師観察による自己制御高群;観察高群)と,よく できていないと思われる児童(教師観察による自己制御低群;観察低群)を各学級からそ.
(22) 172. 岡田守弘・渡田典子. れぞれ約10人ずっ選んでもらい,両群の自己制御感尺度得点を比較した。 両群の尺度得点の平均値についてのt検定では有意な差は見られなかった。しかし,観 察高群は自己制御感得点高群(上位23.7%)に多く,観察低群には少ない傾向であった。 同様に観察低群は自己制御感得点低群(下位19.9%)に多く,観察高群には少ない傾向 にあった。. 自己制御感得点と社会的望ましさ得点との相関が高いため,当然の事であるが教師観察 によって把握される児童の自己制御の様相は,社会的望ましさ得点との相関関係にも見ら れるdすなわち,観察高群に社会的望ましさ得点の高いものが多く,観察低群に得点の低 いものが多いという傾向がみられた。教師から「自己制御がよくできている+として選定 された児童は,日頃,教師が自分のことを自己制御がよくできている児童と認めているこ とを感じとるであろう。そこで「先生から自己制御がよくできていると認められている自 分+という自己概念が形成され,社会的に望ましい方向へ自己制御している(制御できる) 自己を意識することになる。こうした意識が社会的望ましさ得点に表われたものと考えら れる。. 以上の結果から考えると,自己制御感尺度は実際の自己の行動記述というよりも,. 「自. 分にとって適切だと思われる基準+を示しているものと思われる。つまり,. 「自己制御が 強く,さらに厳しく自己を制御しようとする児童+あるいは「自己制御が弱いが,厳しく 自己制御しなくてはいけないと感じている児童+は自己制御感尺度で高得点を示し,. 「自. 己制御が強いが,もっと緩やかでありたいと感じている児童+や「自己制御が弱く,この ような自分と同様の仲間がはしい児童+は低得点を取るなど,自己制御の強さと自己認知 との関係がこの自己制御感に表れたものと考えられる。 4 -2. Y-G性格検査との関連からみた妥当性の検討. 評価懸念尺度と自己制御感尺度を用いた場合,児童の抱く不適応感がどのように捉えら れるのを調べるためにY-G性格検査の一部(社会的外向・のんきさ・神経質)を同時に 実施し,検討することにした。. Y-G性格検査の一部分のみを用いることば検査としての. まとまりを欠き,好ましくないことであるが,あえて3尺度のみ用いることにしたのは, 小学生が集中して質問に答えられる時間,また教育現場で調査のために割くことのできる 時間的制約から,全項目実施することが困難なためである。 登校拒否児の性格特性についての先行研究で対人関係の問題,融通のきかない生真面目 さや神経質であること等が指摘されているため(甲村,. 1990,坂野,1990),このような特 徴を測定できる尺度として,社会的外向,神経質,のんきさ(辻岡, 1982)を選択したの である。. ①調査対象者 横浜市立の2小学校5,. 6年生(6年男児125名,. 名, 5年生女児113名,計447名) ②調査日時. 6年生女児111名,. 5年生男児98.
(23) 173. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. 1990年10月24,26日 ③調査用紙 自己制御感尺度(場面9,. 10,18を除く). ,評価懸念尺度,社会的望ましさ尺度(短縮 版), Y-G性格検査短縮版(社会的外向,神経質,のんきさの3尺度)の4種類 ④調査手続き 学級ごとに,報告者および大学院生が行った(統一した教示ができるように,読み方や 音調などについて事前に訓練した)。まず,自己制御感尺度を配布して調査者が教示した 級,各場面について児童自身が読み回答した。全員が回答し終ったことを確認してから, 評価懸念尺度,社会的望ましさ尺度,. Y-G短縮版を一冊に綴じた調査用紙を配布し,潤. 査者が質問項目を読みあげ一斉に回答させた。 ⑤結果と考察 尺度の性質を再度確認するために,. 15場面の自. 16項目の評価懸念尺度では因子分析,. 己制御感尺度では林の数量化3頬を行なった.評価懸念尺度は先と同様の因子が抽出でき た(否定的評価懸念8項目,評価場面への意識・懸念8項目,各々α係数は0,71,0.77)。 しかし,自己制御感尺度では場面7の選択肢の順序が不明確であったので場面7を除いて 繰り返し分析したところ,自己制御の強さの順に第1次元解カテゴリー数量が算出された (以後の分析では場面7を除いた)。表6に示してあるように,回答選択肢を統合して重み 付けを行なうこととした(14場面による自己制御得点のα係数は0.73)0 表6. 自己制御感尺度の場面ごとの選択肢への重み付け. 重み付け得点 場面の番号 1,4 2,3,5,12. 13点 1,2 1. 2点. 1点. 3. 4,5. 2. 3,4. 13,15,16. 逮. 択 肢 香 F:∃. 7ぎ. 1,2. 6,8,ll,14,17. (荏)この重み付による合成得点のα係数は,. ■3,4,5. 0.73である。. 全測定尺度について,男女差,男子・女子それぞれの学年差について調べた結果,学年 差はないものの男女差は有意であったので,以後の分析では男女別に行うこととした(義 7)0.
(24) 174. 岡田守弘・渡田典子. 表7. 各尺度の男女別平均尺度得点と標準偏差(SD). 男子N-219. 自己制御感尺度. 23.89. (14場面). 1(4.20). 評価懸念尺度(16項目). 7.95. (4.15). 否定的評価への懸念・回避. 4.66. (8項目). (2.20). 評価場面についての意識・懸念. 3.27. (8項目). (2.39). 社会的望ましさ尺度. 3.94. (12項目). (2.60). 女子N-198. 25.30. a係数 0.73. (4.21). 10.98. 0.84. (冒.59) 6.06. 0.71. (1.78). 4.92. 0.77. (2.32). 4.49. 0.69. (2.12). YG性格検査. 社会的外向性尺度. 4.88. (1.95). 5.96. のんきさ尺度. (1.66). 神■軽質. 2.98. (1.60). (注). 5.34. 0.65. (1.89). 5.76. 0.52. (1,61). 3.98. 0.54. (1.8ら). 上段一平均値,下段-SD. 自己制御感尺度,評価懸念尺度および各尺度閉め相関係数を算出した。自己制御感尺度 と社会的望ましさ尺度との間に5年女子で.62,. 6年女子で.50という比較的高い相関が 見られたので,社会的望ましさ尺度得点の高いものを除いて以後の分析をすることとした。 そこで社会的望ましさ尺度得点が平均値+1.5SD以上を基準として削除対象者を抽出し た。女子では,. 5年生9人,. 6年生16人の計25人が抽出され,この者を削除した後の相.
(25) 175. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. 関係数が5年生女子で.52,. 6年生女子で.42と低くなった。男子についても同様の手続. きを行ったが,相関係数に変化がなかったので,男子については削除せずに分析すること にした(表8)0 表8 (男. 各尺度問の相関係数(小学5,. 6年生). 子). 自己制御感. 社会的. 否定的. 評価場面. 評価懸念. 望ましさ. 評価懸念. への意識. 尺度全体. .16*. .19**. .20**. (N-200). (N-200). (N-199). .43***. (N-203). 社会的. .10. .14*. (N-202). 望ましさ 否定的.. (N-203) .64***. (N-208). 評価懸念 評価場面. .・13*. (N-202) .90***. (N-208) .91***. (N-208). への意識. YG社会 .的外向 ,25***. (N-203) .21**. (N-211) .ll. (N-202) .01. (N宇203). 評価懸念. 力6. 尺度全体. (N-202). (女. YG のんきさ I.ll. YG. 神経質 .08. (N-204). (N-204). -.40***. -.ll. (N-212). (N-210). -.01. (N-203) .07. .40***. (N-202) ,60***. (N-204). (NJ-203). .03. .55*** (N-202). I(N-203). 子) 社会的 ・望ましさ. 自己制御感. 否定的. 評価場面. 評価懸念. 評価懸念. への意識. 尺度全体. .48***. (N-190). 社会甲 望ましさ. .ll. .03. (N-189) .10. (N-189). 否定的. .15*. -.22**. (N-i90). .17*. .18*. .15*. (N-193). 評価場面. (N-189) .84***. (N-193) .91***. (N-193). -の意識 評価懸念. (N-193) .07■、. (N-189) .05. (N-189) .07. (N-189). 尺度全体. (注)有意水準は,. のんきさ. (N-189). (N-1g9). ***が0.1. %,. ある者を除いたからである・。. **が1%,. YG. 的外向. (N-189). .53***. 評価懸念. ..09. YG社会. YG 1神経質 .02. (N-192)・. (N-192). -.34***. -.03. (N-194). (N-194). .01. (N-191). .23**. (N〒191). -.08. (N-191). .51***. (N-191). -.04. (N-191). .45***. (N-191). *が5%である。人数が異なるのは,欠損値の.
(26) 176. 岡田守弘・渡田典子. (1) Y-G性格検査と評価懸念尺度および自己制御感尺度との関係. 評価懸念尺度および自己制御感尺度とその他の尺度との間の相関では,男女ともに自己 制御感尺度と社会的望ましさ尺度との間に,そして,評価場面への意識と神経質傾向との 間で0.4あるいは0.5を超える相関係数が見られる。男子のみだが否定的評価懸念と神経 質傾向との間で0.4の相関がある。 不適応感の指標として,. Y-G性格検査の下位3尺度から得られる社会的内向傾向,の. んきでない傾向,神経質傾向を加算して不適応感得点を算出した。一方,自己制御感得点 と評価懸念得点の各々で得点の低い方から約25%を目安として4群を構成して,それぞ れにおいて不適応感得点との関連を調べた。全般に,評価懸念得点の高い群はど不適応感 得点が高い傾向であった。自己制御感得点とでは,女子では学年に関わらず不適応感得点 の高い群で自己制御感得点が高い傾向が示されている。一方, 6年生男子で自己制御感得 点の高い群と低い群とで不適応感得点が高く,中間群で低くなるU字型傾向が見られ, 5 年生男子では自己制御感得点の低い群に不適応感得点が高くなる傾向が見られた。 5年生の段階では,親や教師などおとなが示す基準をそのまま受け入れ,自己制御がよ くできることを望ましいこととして認められ,高い自己制御感をもつ者はど周囲からの評 価も好ましく,たとえ行動を制御できていないとしても'L、的には安定していよう。一方, 自己制御感得点の低いものは,注意を受けることを予期して行動を制御せざるを得ない場 面が多かったり,周囲から実際に注意を受けることが多いために不適応感を持ちやすくな るのであろう。このため現実の自己制御が低くても評価懸念が低い場合には,周囲の反応 や注意などを気にしないために不適応得点が低くなると考えられる。 ところが6年生の段階になると,おとなの基準と異なる仲間の基準への価値付けが相対 的に強くなり,自己制御がよくできることがおとなの基準への迎合のようにとらえられた り,厳しく自己制御する者はおとなの評価と仲間の評価との間の違いによって不適応感を 抱きやすくなると思われる。評価懸念得点の低い群では全体に不適応得点が低いのである が,それらにあって自己制御感得点の高い群では高い不適応得点を示している。すなわち, 高い自己制御感をもつ児童が不適応感を抱くとともに他者からの評価を予期しているもの の,. 「他者からの評価を気にしない+と自身を納得させ,問題と対面する事を避けたり,. 葛藤を回避しようとしていると解釈できよう。 (2)評価懸念尺度および自己制御感尺度の問題点 評価懸念得点の低さば,自己強化基準が確立していて他者からの評価に動じないことと みることもできる。しかし,周囲に対する観察力や注意力の鈍さあるいは他者からの評価 に耳を貸さない拒否的状態など,周囲との不必要な摩擦を招きやすい状態もしくは無気力 様状態を示すこともあろうと考えられる。これとは逆に,評価懸念得点の高さは,周囲の 様子に気を配りながら,周囲にほど良く合わせることができる適応の柔軟性を有している と思われる。. ところで,自己制御感尺度の測定に際してAちゃんに投影される心的機制には,自己制 御に関する児童自身の認知をはじめ,規範,社会的望ましさ,願望などが複合しているで.
(27) 177. 評価懸念および自己制御感から観た児童の学校不適応感の測定について. あろうから,回答結果を一義的に解釈することの難しさがある.自己制御感尺度の妥当性 ・検討において示唆されているように,自己制御に対する児童自身の評価と比較した上で, 自己制御感尺度の結果を読み取る必要もあろう。しかし,自己制御感尺度,評価懸念尺度 の二つの尺度得点分布上で両得点を交差した上で社会的望ましさの程度を組み合せると, 得点パターンが多様となり不適応感にも様々なタイプのあること,_、、類似のタイプであって も不適応感をもたらす認知の仕方が複雑であることが明らかとなるのである。これらの尺 度を用いるとともに,学級担任による共感的観察の確度を高め,複眼的に児童を捉える姿 勢が,一人ひとりの児童の抱く適応感に関する理解を進めることになろう(Strass,C.C. ら,. 1987) 。特に,表面には現われにくい,社会的内向型の不適応感に迫れると期待でき. よう。. 本研究で提示した二つの尺度は,学級担任にとらえにくい児童の適応感の理解を援助す るために作成を試みたものでもあるので,学級担任が現に把握している児童の様相や認知 像と比較する方法を今後に開発する必要がある。 HALBAUを用いた。. なお,データ解析には統計解析パッケージSPSS,. 引用・参考文献 蘭. 上越教育大学研究紀要,. 千尋(1989)子供の自己概念と自尊感情に関する研究. 8(1), 17-. 34 Bandura, Buss,. A.. Henchy,. (1977). A.. `Social. learning. (1980) Selトconsciousness. H.. Glass,. T. &. dominant. and. D.. C.. ( 1968). subordinate. 1979,. theory.'(原野広太郎監訳, and. social. Evaluation. response.. anxiety.. Francisco,. Sam. Freeman.. the socialfacilitation. apprehensionand. Jounal. 「社会的学習+金子書房). and. ofpersonality. social. psychology,. of 10,. 446-454. 29(3), 219-. 星加明徳(1988)小児科における不登校児一初期症状について一小児の精神と神経, 225. 社会精神医学,. 星野仁彦・熊代. 永(1986)登校拒否と家庭・学校. 井上信子(1986). 児童の自尊JL、と失敗課題の対処との関連. 井上信子(1987). 小・中学生における優越・劣等意識 「個と集団の社会心理学+ナカニシヤ出版. 柏木圭子(1983). 「子どもの自己の発達+東京大学出版会. 梶田叡-. 「自己意識の発達心理学+金子書房. 小泉英二(1973) 甲村和三(1990) La. 「登校拒否. 教育心理学研究,. 不登校児にみる自己意識評価の特色. Clinical. Anxiety Psyuchology,. for. 10-19. その心理と治療+学事出版 児童心理,. 558,. Greca,A.M.,Dandes.S.K.,Wick.P.,Show.K.&Stone.W.L. of Social. 34,. 相談学研究, 19(2), 108-113. 狩野素朗(1985). (1989). 9(1), 15-19. Children. 17(1), 84-91. :. Reliability. and. Concurrent. 77-81. (1988). Development. Validity.. Journal. of.
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