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IRUCAA@TDC : 麻酔科業務の拡大と歯科口腔外科との関わり

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

麻酔科業務の拡大と歯科口腔外科との関わり

Author(s)

小板橋, 俊哉

Journal

歯科学報, 109(5): 454-455

URL

http://hdl.handle.net/10130/1622

(2)

1.麻酔科医が関与する業務 麻酔科医は,手術室における全身麻酔を中心とし た患者管理・手術室運営に留まらず,集中治療・救 急などの急性期医療や,ペインクリニック・緩和ケ アなどの慢性期医療にも活躍の場を広げている。市 川総合病院麻酔科では日本麻酔科学会指導医資格を 有するスタッフ3名が手術室業務に加えて集中治療 と緩和ケア業務に関わっている。また,日本歯科麻 酔学会専門医資格を有するスタッフを中心に歯科・ 口腔外科手術の全身麻酔,及び静脈内鎮静法を施行 している。 集中治療室では開設以来,集中治療室長を麻酔科 医が兼務しており,昨年度の実績として4個室に 488名の患者を収容し,病床稼働率は約90%であっ た。緩和ケアでは,緩和ケアチームリーダーを麻酔 科部長が兼任している。チームへの依頼件数の約 80%ががん性疼痛や嘔気などの身体的症状の緩和目 的であり,これに対して麻酔科医3名がチームを組 んで診療にあたっている。昨年度は年間47名の診療 を行ったが,今年度は半年で35名と依頼件数は増加 している。手術室における麻酔科管理症例数は増加 の一途を辿っており,筆者が部長に就任した2002年 度に1600件位であったものが昨年度は2533件と1.5 倍以上に増加した。この内,歯科・口腔外科手術の 全身麻酔件数は年間300件ほどで横ばいであるが, 静脈内鎮静法の件数は昨年度63件であったものが今 年度は半年で50件と倍増している。 2.全身麻酔の最前線 1937年に Guedel がエーテル麻酔時の深度を患者 の臨床徴候から4つに分類して以来,麻酔深度と言 う言葉が定着した。これによると,深麻酔状態では 生体に侵襲が加わっても血圧・心拍数などのバイタ ルサインや,瞳孔の大きさなどに変化が見られない ことから,この時期を手術期と呼び適切な麻酔深度 であると定義した。しかし近年,揮発性麻酔薬と筋 弛緩薬だけを用いたこのような麻酔では,執刀前後 のバイタルサインに大きな変化が生じない場合でも ストレスホルモンである血中カテコラミン濃度など は上昇していることから,揮発性麻酔薬単独では侵 害入力を遮断できないことが明らかにされた1)2) 。そ こで,揮発性麻酔薬に鎮痛薬を併用することの重要 性が認識されてきた。 全身麻酔を構成する3つの要素は鎮痛・鎮静・筋 弛緩であり,それぞれの要素を複数の薬物や方法を 用いて最適なレベルに調節するバランス麻酔が現在 では主流になっている。すでに述べたように揮発性 麻酔薬を単独で用いる鎮静重視の全身麻酔では鎮痛 が十分ではないことから,バランス麻酔では鎮痛に 最も重点が置かれている。したがって,“麻酔深 度”の一言で術中の麻酔状態を表現することは現代 では適切でなく,3つの全身麻酔構成要素のそれぞ れのレベルを把握することが重要となっている。現 在,鎮痛の程度(どれくらいの疼痛を全身麻酔下の 患者が感じているのか)は,血圧や心拍数などのバ イタルサインから類推する以外にはないが,鎮静度 は脳波を処理して0から100の指標で表す Bispec-tral Index(BIS)モニター用いて概ね把握可能と なった。また,筋弛緩の程度も種々の筋弛緩モニ ターにより測定が可能となっている。 鎮痛を得るための手法として神経ブロックと薬物 がある。神経ブロックでは硬膜外鎮痛法が広く普及 している。これは,術中の疼痛のみならず術後痛も 軽減可能であることから,術後,喀痰の排出が促さ れ呼吸器系合併症を低下させることに貢献してい る。また,近年,肺血栓塞栓症の原因として注目さ れている深部静脈血栓症予防のために,抗凝固療法 が適応される患者が増加している。このような患者 に硬膜外麻酔は施行禁忌であることから,超音波エ コーで末梢神経を同定し末梢神経ブロックを行うこ とも普及してきている。末梢神経ブロックの利点と して,硬膜外麻酔と異なり施行後の血圧低下などの 循環抑制がほとんどないことが挙げられる。一方,

麻酔科業務の拡大と歯科口腔外科との関わり

小板橋 俊 哉

市川総合病院麻酔科 454 ― 2 ―

(3)

薬物としては麻薬が汎用されている。特に超短時間 作用型のレミフェンタニルは半減期が3分程度であ るため持続靜注を必要とするが,薬物の効果消失も 速やかであるため,これまでの麻薬以上に高い血中 濃度に維持することが可能となった。これによっ て,手術侵襲にともなうストレス反応を抑制可能で あるとの報告も増加している。 3.歯科・口腔外科と麻酔 歯科・口腔外科の手術では術野がエアウェイ上に 存在するため,術中の気管挿管チューブトラブルだ けではなく,術後出血や浮腫に伴う気道閉塞などの リスクが通常手術以上に高い。このため,術後速や かに全覚醒状態に回復させることが必要となる。こ れには,鎮痛薬を術中・術後に必要十分に投与する ことにより術中の鎮静薬の必要量を減じる,近年の 鎮痛重視の全身麻酔が貢献している。しかし,術後 浮腫などによる気道閉塞の危険を有する手術に際し ては,市川総合病院では総合病院の利点を活かし て,術後積極的に集中治療室に患者を入室させトラ ブルの早期発見・治療が行えるよう配慮している。 さらに,術後気道閉塞の危険性が高い手術において は,手術終了前に麻酔科医の指導の下に口腔外科医 が経皮気管切開キットを用いて気管切開を行ってい る。本法ではガイドワイヤーを気管内に留置し,ダ イレーターで切開口を拡張後に気管切開カニューラ を挿入するセルジンガー法を用いている。本法は従 来の気管切開術と比して,手技が容易であることに 加え,皮下組織の剥離を伴わないため出血傾向のあ る患者 に 対 し て も 適 応 に な る こ と や,気 管 切 開 チューブ抜去後の治癒が良好であるなどの有用性が 認められている。本法を歯科医が経験し習熟するこ とは,急変時の対応が迅速に行える点で有用である と考える。 歯科・口腔外科手術時の鎮痛方法としては,硬膜 外麻酔などの脊髄鎮痛法が適応にならないことから 薬物による鎮痛法が主体となる。術中の鎮痛には前 述のレミフェンタニルが最もよく用いられている が,術後痛対策としては多くの施設で NSAIDs が 用いられている。しかし,骨を移動させる下顎枝矢 状分割術(SSRO)などでは,術前に疼痛がないこと もあり術後痛は許容できないほど辛いものとなって いる。このため,当院では患者が疼痛を感じた時に 自己投与可能な patient controlled analgesia システ ムを用いて,麻薬性 鎮 痛 薬 を 静 注 し て い る(IV­ PCA)。鎮痛薬が静注される際には静注故に血中濃 度の上昇が速やかであることから,短時間に過量の 鎮痛薬が投与されないように1度投与されてから次 に投与可能になるまでの時間を設定可能である。こ のように設定しても過量となり血中濃度が上昇する 懸念があるが,そのような場合には,患者が次の投 与ボタンを押せないことが一種の安全弁になってい る。IV−PCA の利点は,疼痛時,あるいは疼痛を 伴う処置前にタイムラグなしに投与可能である点 と,自身で鎮痛薬を投与可能であることから患者満 足度が高い点である。 最近の話題として,臨床使用濃度では呼吸抑制の ない鎮痛・鎮静薬であるデクスメデトミジンの鎮痛 作用を,SSRO 術後早期の許容できない疼痛管理に 応用する試みも開始した。その結果,術後の IV­ PCA によって自己投与される麻薬性鎮痛薬の用量 は有意に低下した3) 。しかし,デクスメデトミジン の保険適応は集中治療室における人工呼吸中・後の 鎮静であることから,市川総合病院のように集中治 療室を備えている施設以外では適応しにくい。この ような観点から,当院が当該研究をリードしていく 責務があると考えている。 4.全身麻酔研究の最前線 周術期のβ 遮断薬の使用が手術2年後の生存率 を向上させると報告されて以来,良質な麻酔管理に よって患者の長期予後が改善することが注目され, 現在も研究が進められている。一方,短期予後とし て,術中に低体温を呈した患者では術後の創部感染 率や心血管系イベント率が上昇し,入院期間が延長 することが知られている。このため,術中の体温保 持の重要性が認識されており,輸液を加温する機器 や強制温風式ブランケットなどの進歩が著しい。当 院麻酔科では現在,種々のブランケットを各種手術 中に適応し保温効果を検討する研究を主要研究テー マの一つとして遂行中である。 文 献

1)Segawa H, Mori K, Murakawa M, et al : Isoflurane and sevoflurane augment norepinephrine responses to surgi-cal noxious stimulation in humans. Anesthesiology 1998; 89:1407−1413

2)Segawa H, Mori K, Kasai K, et al : The role of the phrenic nerves in stress response in upper abdominal surgery. Anesth Analg 1996;82:1215−1224

3)Agata H, Yumura J, Takano E, et al : Dexmedetomidine modulates postoperative pain probably caused by re-mifentanil­induced hyperalgesia. Anesthesiology 2009; 111:A1095

歯科学報 Vol.109,No.5(2009) 455

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