はじめに(研究の目的) 日本の都市住宅は,近代になると南面を開放するという特性をみせる。現代の住宅も,家族が共同 で使う居間や個人の居室を可能な限り南面させ,南面を開放して,太陽光を取り入れるのを当然とし ている。新築マンションのコマーシャルや,中古住宅のチラシでも,南面することが重要な宣伝の要 素として暗黙の了解が形成されているといっても過言ではなかろう。 居間や個人の居室など住居の生活部分を南面させるという意識は,いつごろ形成されたのであろう か。古代の寝殿造や中世の主殿造では,主要な建物を南面させるのが常であったが,退位した天皇の 院の御所では主となる御殿を北面させ,この影響は近世はじめの後陽成院御所や明正院御所にまで及 んでいる。近世の江戸における大名屋敷をみると,御殿の配置は門の位置に関連し,主要な建物を南 面させるという基本的な考えはない。 津軽藩の『御家中屋鋪建家図』(参考文献 1)にみられる住宅,すなわち 1759年(宝暦 9)に作られ た史料に記録されている当時城下町弘前に存在したほとんどの藩士屋敷の主屋平面について,座敷が 道路に面する側に配置されるという特性が認められることは,すでに述べた(参考文献 2)。江戸時代 の武家住宅では,遺構をみると座敷の前に庭が造られ,家屋の庭に面する側が開放的であることは, 庭に面する側の柱間が上下左右共に内法いっぱいを開放し明障子がたてられていて,一見して明ら かである。その他の面は,座敷のようには開放的でないようにみえる。しかし,江戸時代の城下町に 建てられた武家住宅の主屋の各面がどの程度開放的であるかが,定量的に検討されたことはない。 そこで,宝暦 9年の『御家中屋鋪建家図』について,主屋の四方の面が,定量的に,どの程度の開 放性をもっているかを,南西北東面のそれぞれについて,平面上での外壁面の長さに対する建 具長さの合計の比率(この論文では開口率と呼ぶことにする)を検討し,座敷が道路に面する側に配置さ ― 1 ― 学苑近代文化研究所紀要 No.827 1~11(20099)
宝暦 9年(1759)『御家中屋鋪建家図』による
弘前における藩士屋敷主屋の方位別壁面開口率
からみた近世都市住居の特性について
―近代都市住宅の近代性を明らかにする目的でみた近世都市住宅主屋壁面の 方位別開口率―平 井
聖
TheRatiosofWallstoOpeningsforEachWallFacingSouth,West,Northand Eastin100Warriors・MainHousesatHirosakiBasedonTheirPlansDrawnin theNinthYearoftheHorekiPeriod,1759 ToWhatExtentCanWeElicitfrom
theOpeningRatiostheMeaningofModernityinOurModernUrbanHouses?
れることによる特性を検証し,さらにそれ以外にも近世武家住宅のもつ何らかの封建的な特性をみつ けることができないかを検討することとする。 史料『御家中屋鋪建家図』について 弘前は津軽氏の城下町である。弘前では,1695年(元禄 8)の異常気象にはじまった飢饉によって 家臣の召し放ちがおこなわれ,1000人ほどの家臣が城下から他の地域に移り住んだといわれている。 その結果,城下の藩士屋敷の再編がはじまり,1696年(元禄 9)に城内にあった家老等の上級家臣の 屋敷地を城外に移し,その後次々と屋敷替えがおこなわれて,1709年(宝永 6)までに武家地が再編 された(参考文献 3)。また 1753年(宝暦 3)にはじまった宝暦の改革も一因と考えられるが,1755年 (宝暦 5)に城下の藩士の屋敷を改めた『御家中屋敷改台帳』(参考文献 4)がつくられ,さらに 1759年 (宝暦 9)には『御家中屋鋪建家図』が作成された。 この『御家中屋鋪建家図』は,藩士屋敷の一戸一戸を,それぞれの用紙にまず敷地形状を描き,そ の中に平面図を書き込んだ台帳で,町ごと,通りの片側ごとに,順序だてて編纂し,帳簿としている。 その後,この『御家中屋鋪建家図』が藩士に屋敷を割り当てる際に使われたことが,それぞれの用紙 の右下部に張り重ねられている名前を書いた張り紙からわかる。 『御家中屋鋪建家図』に収められている藩士屋敷の総数は 1189件で,『御家中屋敷改台帳』による と 1755年(宝暦 5)の藩士屋敷の総数は 1282戸であったから,城下の藩士屋敷の大半がこの『御家 中屋鋪建家図』に記録されていることになる。 それぞれの屋敷の掲載形式は,まず道路に面する側を原則として右手にとって,用紙いっぱいに敷 地形状を,道路との境界は実線で,隣地との境界は破線で図示し,四囲にそれぞれの長さを間尺単 位で書き込み,道路との境界線上に門の位置を示している。敷地区画の中には,敷地の縮尺とは関係 なく平面図を描く。平面図には,部屋名,部屋の坪数,建具の種類と枚数を記入したものが多いが, 全く書き込みのないものもある。主屋の他に井戸や便所などを書き込んでいる場合もみられる。余白 に主屋の坪数を,板敷の坪数,土間の坪数,庇の坪数を内訳として付記して記入し,さらに戸,障子, 襖,畳の数を建具数として書いている。図の右下部分には,先に触れたように,給与された藩士名が 書き込まれ,その上に藩士名を書いた付箋が重ねられている。 『御家中屋鋪建家図』にみられる家屋の座敷の位置についての既往の検討 この『御家中屋鋪建家図』は,かつて『幕末期の侍屋敷平面にみられる 2つの構成原理間の移行過 程に関する研究』において,資料として検討を加えている。すなわち,『御家中屋鋪建家図』をもと に,1750年代の弘前の藩士屋敷の平面の大多数が,座敷を道路に面する表側に配し,道路に面する 側を開いていたことから,『御家中屋鋪建家図』にみられる弘前における藩士屋敷主屋平面の構成方 式を,道路に面する座敷を基本とする,平面の構成原理と名づけ,近代になって広くみられた,座敷 を南面させる方式を,南面する座敷を基本とする,平面の構成原理と名づけて,道路に面する座敷を 基本とする,平面の構成原理を南面する座敷を基本とする,平面の構成原理に対立する近世武家屋敷 の基本的な構成原理とし,その間の移行過程を明らかにする研究をおこなっている。 その中で,弘前の『御家中屋鋪建家図』にみられる藩士屋敷の特性として,次の結果を得ている。 ― 2 ―
敷地の東側が道路に面している場合 東向(道路に面して)座敷を設ける例 214 合計に対する% 88.4 座敷が南面している例 12 5.0 座敷がその他の方位に開かれている例 16 以上判断できる例の合計 242 (以上には座敷と明記されているもののほかに,一部類似している部屋に部屋名が書き込まれていないも のと居間等と記入されているものを含んでいる。) 敷地の南側が道路に面している場合 南向(道路に面して)座敷を設ける例 155 合計に対する% 94.5 座敷がその他の方位に開かれている例 9 以上判断できる例の合計 164 敷地の西側が道路に面している場合 西向(道路に面して)座敷を設ける例 187 合計に対する% 83.5 座敷が南面している例 14 6.3 座敷がその他の方位に開かれている例 23 以上判断できる例の合計 224 敷地の北側が道路に面している場合 北向(道路に面して)座敷を設ける例 149 合計に対する% 95.0 座敷が南面している例 3 1.9 座敷がその他の方位に開かれている例 5 以上判断できる例の合計 157 道路に面する座敷を設けている例の総計 705 総合計に対する% 89.6 南面する座敷を設けている例の総数 184 23.4 上の四つの合計の総合計 787 敷地の南側が道路に面している場合を除いて 東西北側道路の場合 道路に面する座敷を設けている例の総計 550 総合計に対する% 88.3 南面する座敷を設けている例の総計 29 4.7 東西北側道路の場合の合計の総合計 623 要するに,1759年当時の弘前の藩士屋敷では,道路に面する座敷を設けている例が 89.6% あり, 南側道路の場合を除くと,道路に面する座敷を設けている例が 88.3%,南に面する座敷を設けてい る例が 4.7% で,道路に面する座敷を設ける傾向が極めて高いことが明らかにされている。 検討資料の抽出と凡例 弘前の場合は,東西,南北に道路が通っている場合が多い。したがってほとんどの場合,敷地の 4 辺は東西南北に面する。主屋の各面も敷地の各辺にほとんど正対し,東西南北に面する。そこで,敷 地の道路に面する側が東西南北いずれも 25例になるように『御家中屋鋪建家図』から資料とする例 を抽出している。 次に,開口率を求めるために,主屋の各面の外壁面の平面上での長さを「間(けん)」であらわし, それぞれの面ごとに,壁面の合計間数(表中では,各面の項に示した分数の分母,例えば 2/6.5の場合の 6.5) ― 3 ―
を求め,それに対するそれらの壁面に用い られている建具間口の合計(表中では,各 面の項に示した分数の分子,例えば 2/6.5 の 2)を求めて,その面の全体間数に対する 建具間口の合計間数の割合を百分率であら わして,その面の開口率としている。 外壁面は 1間を単位としていて,通常端 数は半間に限られる。建具間口は,設けら れた柱間に戸 2枚障子 1枚,戸 2枚,ある いは障子 2枚が用いられている場合を柱間 と同じ間数,大戸は 1間,戸 1枚障子 1枚, 戸 1枚,あるいは障子 1枚が用いられてい る場合は間口の 2分の 1とし,窓の場合は 上下の寸法が平面図からはわからないので, すべて一律にそれらの半分(×0.5)として いる。 したがって,柱間に「戸 2障子 1」は 1/1 で 100%,「戸 1障子 1」は 0.5/1で 50%, 「障子 2引通し雨戸」の場合は 1/1で 100%,「大戸」は 1間の間口の場合 100% となる。 なお,平面が凸型あるいは L型の場合,道に近い部分と遠い部分で開口率が異なっていることが 多い。その場合,道に近い方が開口率が高いことが多いので,その傾向を知るために表中に「近道路」 の項を設けて,近い面だけの開口率を求めている。 第 1図は『御家中屋鋪建家図』の中から選んだ 1例(第 1表中の番号 111)の平面図について,記載 状況を示すとともに,開口率の算出例を平面図の四方に記入している。なお,この例は南側が道路に 接する敷地なので,南側に実線を引いてそのことを示し,門の位置をおおよそであるが実線中に描い ている。また,この平面は L型であるので,道路に面する南面は,前後 2つの面の開口の状況を分 けて示し,その後に前後 2つの面の全体の開口状況をまとめて示している。 南西北東それぞれの面の開口率 選んだ 100例について,第 1図に示した算出方法で,それぞれの資料について四方の開口率を算定 して示したのが,第 1表である。表は上部に示したように,左側から,「門の方位」すなわち敷地の どの方角が道路に面しているか,次が方位別の整理「番号」,「座敷の有無と座敷の向き」で,座敷の 有無と座敷の向きの項の「なし」は,座敷をもたない平面であることを示している。「座」は座敷と 記入された部屋があること,「床」は床の間がついている部屋であることを示し,「床」のみの場合は その部屋に「座敷」との書き込みはないが,床の間のついた部屋であることを示している。「道側」 は座敷あるいは床の間のある部屋が,道に面する位置にあることを示している。続いて,「坪数」は 図に註記されている主屋の坪数,「戸」「障子」「蔀」は図中に註記された建具数のうちの戸障子 蔀の数,「南」「西」「北」「東」の項は,主屋のそれぞれの面の開口状況と開口率である。「南」「西」 ― 4 ― 第 1図 資料の記載状況と開口率の算出例
「北」「東」の項に附属する「近道路」の項は,第 1図のような道路に面する面が道路に近い面と遠い 面から構成されている場合の,道路に近い面の開口状況と開口率である。道路に面する面が一つの面 であるときには,この項の記載はない。また,道路に面する面以外は,この項は記入していない。 第 1表中の網をかけた太いゴシック体で示した開口率は,その例の 4面の開口率のうち最も高いも の。同率の場合も同じ表現としている。太い明朝体の場合は,次位の開口率であることを示している。 但し,最高位が 2つあるときは次位の表示はない。「近道路」の項の太字は,この項の開口率の方が その例の道路向きの面全体の開口率より高いことを示している。 次に,第 1表に基づいて考察を進める。 まず,一見して特徴がわかるように図示したのが第 2図で,図中の南,西などは,敷地が道路に面 する方角を示している。それぞれ敷地の道路に面する方角ごとに,道路に面する面の開口率の平均値 を比較したのが第 3図である。 南側が道路に面する敷地の場合 南側道路の場合は,南面の開口率が最も高く,その最高は 81.3%,最低が 0%で,平均値は 43.3% である。南面に次いで開口率が高いのは東面で,その平均値は 22.4% である。これに次いで北面の 開口率が 19.0% であるのに対して,西面は 4.3% で,他の面に比べて最も低い。この状況は第 2図 (南)に示したとおりである。 西側が道路に面する敷地の場合 西側道路の場合は,西面の開口率が最も高く,その最高は 76.9%,最低が 0% で,平均値は 36.6% である。西面に次いで開口率が高いのは南面で,その平均値は 23.3% である。これに次ぐ東面の開 口率が 13.6% であるのに対して,北面は 5.0% で,他の面に比べて最も低い。この状況は第 2図(西) に示したとおりである。 北側が道路に面する敷地の場合 北側道路の場合は,北面の開口率が最も高く,その最高は 64.3%,最低が 0%,平均値は 37.1% である。北面に次いで開口率が高いのは東面で,その平均値は 23.5% である。これに次ぐ南面の開 口率が 9.3%,西面は 6.8% である。この状況は第 2図(北)に示したとおりである。 東側が道路に面する敷地の場合 東側道路の場合は,東面の開口率が最も高く,その最高は 70.0%,最低が 0% で,平均値は 41.0% である。東面に次いで開口率が高いのは南面で,その平均値は 26.1% である。これに次ぐ西面の開 口率が 16.9%,北面は 10.0% である。この状況は第 2図(東)に示したとおりである。 ― 5 ― 第 2図 各道路向敷地の開口率 第 3図各道路向敷地の開口率 平均値の比較 内側の南等は道路に面する方角 太線は主屋壁面の開口率の平均値 外側の細線はそれぞれの向きの開口率の最大値
― 6 ― 第 1 表 開口率一覧表 門の方位 番号 座敷の有無と向き 坪数 戸 障 子 蔀 南 % 近道路 % 西 % 近道路 % 北 % 近道路 % 東 % 近道路 % 南 10 1 なし 6. 501 1 1/ 2. 5 40 .0 0. 5/ 22 5. 00 /30 .00 /2 .50 .00 /30 .0 南 10 2 なし 10 .0 03 2 0. 5/ 3 16 .7 0/ 30 .00 /30 .00 .5 /3 16 .7 南 10 3 なし 12 .0 04 3 1/ 5 20 .0 0/ 20 .00 /50 .00 .5 /2 25 .0 南 10 4 なし 12 .0 03 2 0/ 3. 50 .00 .5 /3 16 .7 0/ 3. 50 .00 .5 /3 .5 14 .3 南 10 5 なし 14 .0 02 1 0. 5/ 3. 5 14 .3 0. 5/ 3 16 .7 0/ 40 .00 /3 .50 .00 .5 /4 12 .5 南 10 6 座道 側 17 .5 07 3 1. 5/ 4 37 .5 1/ 33 3. 30 /50 .00 .5 /4 12 .5 0. 5/ 51 0. 0 南 10 7 座 床道 側 18 .5 01 04 1/ 5 20 .0 0/ 4. 50 .00 .5 /51 0. 01 .5 /4 .5 33 .3 南 10 8 座道 側 20 .0 01 55 2. 5/ 5. 5 45 .5 2/ 3 66 .7 0/ 40 .01 .5 /5 .5 27 .3 0/ 4. 50 .0 南 10 9 座北 向 21 .0 01 04 1. 5/ 7 21 .4 0. 5/ 31 6. 70 /40 .01 /6 .5 15 .4 0/ 40 .0 南 11 0 なし 21 .5 01 05 2/ 5 40 .0 1. 5/ 3. 5 42 .9 0/ 40 .01 .5 /5 30 .0 1/ 4. 52 2. 2 南 11 1 座 床道 側 29 .5 01 12 24 /7 .5 53 .3 3/ 4 75 .0 0. 5/ 68 .31 .5 /6 .52 3. 12 /6 .5 30 .8 南 11 2 座道 側 30 .0 05 102 /5 .5 36 .4 2/ 5 40 .0 0/ 60 .02 .5 /5 .5 45 .5 2/ 72 8. 6 南 11 3 床道 側 31 .0 01 41 03 /7 42 .9 2. 5/ 4. 5 55 .6 0/ 60 .01 .5 /6 25 .0 1/ 6. 51 5. 4 南 11 4 なし 31 .2 51 01 21 /5 20 .0 1/ 3. 5 28 .6 0/ 70 .01 .5 /5 30 .0 1. 25 /71 7. 9 南 11 5 座 床道 側 32 .0 01 46 3. 5/ 7 50 .0 3/ 3. 5 85 .7 0/ 6. 50 .01 .5 /7 21 .4 1/ 71 4. 3 南 11 6 座道 側 34 .5 02 02 14 /6 .5 61 .5 2/ 4. 54 4. 40 /60 .02 /7 28 .6 1. 75 /72 5. 0 南 11 7 座道 側 39 .0 03 41 75 .5 /8 .5 64 .7 5/ 6. 5 76 .9 0/ 70 .00 /70 .02 /7 .5 26 .7 南 11 8 床道 側 41 .5 02 31 64 /6 .5 61 .5 4/ 5. 5 72 .7 0/ 80 .02 .5 /92 7. 83 .5 /9 38 .9 南 11 9 なし 44 .0 01 31 83 /8 .5 35 .3 2/ 5 40 .0 0/ 60 .02 .5 /8 .52 9. 43 /6 50 .0 南 12 0 座 床道 側 45 .0 02 29 5/ 9 55 .6 4/ 6 66 .7 0/ 70 .01 /91 1. 12 .5 /7 .5 33 .3 南 12 1 座道 側 47 .0 02 69 5. 5/ 7 78 .6 5/ 5 10 0. 0 2. 5/ 7. 53 3. 30 /70 .03 .5 /7 .5 46 .7 南 12 2 座道 側 48 .5 03 31 73 .5 /8 .5 41 .2 2. 5/ 6. 53 8. 52 /1 11 8. 23 /7 .5 40 .0 4. 25 /1 13 8. 6 南 12 3 座 床道 側 52 .0 03 61 76 .5 /8 81 .3 6. 5/ 8 81 .3 0/ 7. 50 .04 .5 /8 56 .3 0/ 80 .0 南 12 4 座 床道 側 53 .0 02 51 66 /8 75 .0 3/ 4 75 .0 1. 5/ 7. 52 0. 00 .5 /77 .13 /8 .5 35 .3 南 12 5 座 床道 側 57 .0 02 81 64 .5 /6 .5 69 .2 4. 5/ 6. 5 69 .2 1/ 8. 51 1. 83 /9 33 .3 2/ 8. 52 3. 5 平均 43 .34 .31 9. 02 2. 4 西 20 1 なし 5. 502 0 1/ 3 33 .3 0/ 20 .00 /30 .00 /20 .0 西 20 2 なし 9. 001 0 1/ 3. 5 28 .6 0/ 30 .00 /3 .50 .00 /30 .0 西 20 3 なし 11 .0 03 2 0. 5/ 41 2. 51 .5 /3 50 .0 0/ 40 .00 .5 /3 16 .7 西 20 4 なし 11 .5 03 0 1/ 5. 5 18 .2 0. 5/ 2 25 .0 0/ 5. 50 .00 /20 .0 西 20 5 座道 側 12 .0 01 5 1. 5/ 4. 5 33 .3 1/ 3 33 .3 1/ 2 50 .0 0/ 40 .00 /30 .0 西 20 6 座 床道 側 12 .0 09 4 1/ 4 25 .0 2/ 4 50 .0 0/ 40 .00 .5 /41 2. 5 西 20 7 なし 13 .5 06 3 0. 5/ 3 16 .7 1/ 4 25 .0 0/ 30 .00 /3 .50 .0 西 20 8 なし 14 .0 05 2 0. 5/ 41 2. 51 /3 33 .3 0/ 40 .00 .5 /3 16 .7 西 20 9 なし 14 .7 54 4 0/ 3. 50 .01 /4 25 .0 0/ 3. 50 .00 .5 /4 12 .5 西 21 0 座道 側 15 .5 05 2 0. 5/ 4 12 .5 1/ 4 25 .0 1/ 3 33 .3 0/ 40 .00 /40 .0 西 21 1 なし 16 .0 01 05 0. 5/ 51 0. 01 /3 33 .3 0/ 4. 50 .01 /3 33 .3 西 21 2 座道 側 19 .5 08 4 1. 5/ 5 30 .0 2/ 4 50 .0 2/ 3 66 .7 0/ 50 .00 .5 /41 2. 5 西 21 3 座 床道 側 19 .5 06 4 1/ 5 20 .0 2. 5/ 3. 5 71 .4 0/ 50 .00 .5 /3 .51 4. 3 西 21 4 床道 側 20 .5 08 7 1/ 5. 51 8. 21 .5 /5 30 .0 1/ 3 33 .3 0/ 50 .01 /5 20 .0 西 21 5 座道 側 27 .0 05 5 0/ 4. 50 .01 .5 /6 25 .0 1/ 3 33 .3 0/ 40 .00 .5 /6 8. 3 西 21 6 座 床道 側 28 .5 01 57 1. 25 /5 .52 2. 72 /6 .5 30 .8 2/ 3 66 .7 1. 5/ 5. 52 7. 32 /6 .5 30 .8 西 21 7 座 床道 側 29 .0 01 69 3/ 5. 5 54 .5 2. 5/ 8. 5 29 .4 2/ 4 50 .0 0/ 5. 50 .01 /81 2. 5 西 21 8 座 床道 側 31 .0 01 61 82 /6 33 .3 3/ 5 60 .0 3/ 4. 5 66 .7 0/ 6. 50 .00 /60 .0 西 21 9 座 床道 側 31 .5 01 81 23 /6 50 .0 3/ 8. 5 35 .3 2/ 4. 5 44 .4 2/ 6. 03 3. 32 .5 /83 1. 3 西 22 0 床道 側 32 .0 01 09 1/ 6. 5 15 .4 3. 5/ 7 50 .0 3/ 4 75 .0 0/ 6. 50 .00 .5 /5 .59 .1 西 22 1 座 床道 側 34 .0 02 13 1. 5/ 8 18 .8 2. 5/ 6 41 .7 2/ 4 50 .0 0. 5/ 7. 56 .70 /60 .0 西 22 2 座 床道 側 38 .0 02 81 02 /6 .5 30 .8 1. 5/ 62 5. 01 /4 .52 2. 22 /6 .5 30 .8 0. 5/ 6. 57 .7 西 22 3 座 床道 側 38 .0 02 21 32 .5 /8 .52 9. 44 /7 .5 53 .3 4/ 4. 5 88 .9 1/ 7. 51 3. 32 /6 33 .3 西 22 4 座 床道 側 41 .0 01 51 52 /6 .53 0. 83 /8 .5 35 .3 2/ 5 40 .0 0/ 6. 50 .03 /8 37 .5 西 22 5 座 床道 側 41 .7 52 21 72 /7 .52 6. 75 /6 .5 76 .9 3/ 3. 5 85 .7 1/ 7. 51 3. 32 /6 .5 30 .8 平均 23 .33 6. 65 .01 3. 6
― 7 ― 北 30 1 なし 4. 001 0 0. 5/ 2 25 .0 0/ 20 .00 /20 .00 /20 .0 北 30 2 なし 9. 003 0 0/ 2. 50 .0 0/ 40 .00 .5 /2 .5 20 .0 0/ 40 .0 北 30 3 なし 10 .0 06 4 0. 5/ 41 2. 50 /2 .50 .01 .5 /4 37 .5 1/ 2. 5 40 .0 北 30 4 なし 10 .5 03 2 0. 5/ 3 16 .7 0/ 40 .01 /3 33 .3 0/ 40 .0 北 30 5 なし 11 .5 05 0 0/ 3. 50 .00 /30 .01 /3 33 .3 1/ 3 33 .3 北 30 6 なし 12 .0 03 0 0/ 40 .02 .5 /5 50 .0 1/ 4 25 .0 0/ 30 .0 北 30 7 なし 12 .0 02 7 0/ 3. 50 .00 /4 .50 .01 /3 .5 28 .6 1/ 2 50 .0 1/ 4. 5 22 .2 北 30 8 なし 14 .0 08 4 0/ 4. 50 .00 .5 /3 16 .7 2/ 4 50 .0 0. 5/ 3 16 .7 北 30 9 座道 側 15 .0 03 2 0/ 30 .00 /50 .01 /3 33 .3 0. 5/ 5 10 .0 北 31 0 なし 15 .0 03 8 0/ 3. 50 .00 /40 .01 /3 .5 28 .6 0. 5/ 4 12 .5 北 31 1 座 床道 側 17 .5 06 8 0. 5/ 4. 51 1. 1 0/ 40 .01 .5 /4 .5 33 .3 1/ 3 33 .3 0. 5/ 4 12 .5 北 31 2 座道 側 17 .5 07 4 0. 5/ 41 2. 50 /50 .01 .5 /4 37 .5 1/ 5 20 .0 北 31 3 座 床道 側 20 .5 07 8 0/ 5. 50 .00 /5 .50 .01 .5 /5 .5 27 .3 1. 5/ 6 25 .0 北 31 4 床道 側 21 .0 01 04 0/ 40 .00 /50 .02 /3 .5 57 .1 1. 5/ 5. 5 27 .3 北 31 5 座道 側 22 .0 09 120 /50 .00 /50 .02 .5 /5 50 .0 2/ 3 66 .7 2. 5/ 5 50 .0 北 31 6 なし 24 .0 01 16 0. 5/ 6. 57 .70 /40 .02 /7 28 .6 1. 5/ 5 30 .0 北 31 7 座 床道 側 25 .0 01 08 0. 5/ 5. 59 .10 /50 .02 .5 /5 .5 45 .5 2/ 3. 5 57 .1 1/ 5 20 .0 北 31 8 床道 側 27 .0 06 122 /72 8. 50 .5 /5 .59 .14 .5 /7 64 .3 2/ 5 40 .0 北 31 9 座 床道 側 27 .0 09 110 .5 /51 0. 00 /50 .02 /5 .0 40 .0 1. 5/ 5 30 .0 北 32 0 座道 側 27 .0 01 07 0. 5/ 68 .3 0/ 50 .01 .5 /6 25 .0 2/ 5 40 .0 北 32 1 床道 側 27 .0 01 58 0/ 60 .01 /61 6. 73 /6 50 .0 2/ 4 50 .0 3/ 6. 5 46 .2 北 32 2 座 床道 側 32 .5 02 01 61 /71 4. 31 /61 6. 73 /6 .5 46 .2 3/ 5 60 .0 3. 5/ 7 50 .0 北 32 3 座 床道 側 38 .0 02 18 1. 5/ 7. 52 0. 00 /80 .03 .5 /7 .5 46 .7 3/ 5 60 .0 2/ 7. 5 26 .7 北 32 4 座 床道 側 42 .5 02 41 11 /8 .51 1. 81 /91 1. 13 /8 37 .5 2/ 3 66 .7 2. 5/ 9. 5 26 .3 北 32 5 座道 側 69 .0 04 41 65 /1 14 5. 54 .5 /9 50 .0 6/ 12 50 .0 5/ 6 83 .3 1/ 11 .58 .7 平均 9. 36 .83 7. 12 3. 5 東 40 1 なし 4. 501 1 0/ 20 .00 .5 /2 25 .0 0. 5/ 2 25 .0 0/ 20 .0 東 40 2 なし 10 .0 05 3 0/ 20 .0 0. 5/ 5 10 .0 0/ 20 .01 .5 /5 30 .0 東 40 3 なし 12 .0 04 2 1/ 4 25 .0 0/ 30 .00 /40 .00 .5 /3 16 .7 東 40 4 なし 13 .5 06 4 0/ 4. 50 .00 .5 /3 .5 14 .3 0/ 4. 50 .01 .5 /3 .5 42 .9 東 40 5 なし 14 .0 04 1 0. 5/ 4 12 .5 0/ 50 .00 /40 .01 /5 .0 20 .0 0. 5/ 31 6. 7 東 40 6 座 床道 側 20 .0 08 8 2. 5/ 6. 5 38 .5 0/ 50 .00 .7 5/ 61 2. 52 /4 .5 44 .4 2/ 3 66 .7 東 40 7 座 床道 側 20 .5 08 4 1/ 6. 5 15 .4 0. 5/ 6. 57 .70 /6 .50 .01 .5 /5 .5 27 .3 1/ 3 33 .3 東 40 8 座道 側 21 .0 08 3 0/ 40 .01 .5 /6 25 .0 0/ 40 .02 /6 .0 33 .3 1/ 3 33 .3 東 40 9 座道 側 21 .2 01 27 1. 5/ 5 30 .0 1/ 6 16 .7 0/ 50 .01 /6 .51 5. 41 /3 .5 28 .6 東 41 0 座 床道 側 22 .2 51 78 3. 5/ 7 50 .0 0. 5/ 51 0. 00 /6 .50 .02 /4 50 .0 東 41 1 座道 側 24 .5 02 11 52 /7 .52 6. 7 3/ 83 7. 53 .5 /7 .5 46 .7 3/ 7. 5 40 .0 3/ 5 60 .0 東 41 2 座 床道 側 24 .5 01 38 0. 75 /51 5. 02 /6 33 .3 0/ 40 .03 .5 /7 50 .0 3/ 5 60 .0 東 41 3 座 床道 側 25 .0 01 01 10 /50 .01 /6 16 .7 0/ 50 .01 .5 /6 25 .0 1/ 3 33 .3 東 41 4 座 床道 側 25 .5 01 11 21 .5 /5 .5 27 .3 1. 5/ 6 25 .0 0/ 5. 50 .01 .5 /6 .52 3. 11 /3 .5 28 .6 東 41 5 座 床道 側 27 .0 01 76 2. 5/ 6 41 .7 1/ 5. 51 8. 20 /60 .02 /5 40 .0 東 41 6 座 床道 側 28 .0 02 71 23 /6 50 .0 1/ 61 6. 72 /63 3. 33 .5 /5 70 .0 3/ 3. 5 85 .7 東 41 7 座 床道 側 29 .5 01 81 04 1. 5/ 72 1. 40 .5 /6 .57 .73 /7 42 .9 4/ 7 57 .1 3/ 3. 5 85 .7 東 41 8 座 床道 側 32 .5 02 32 13 /5 .5 54 .5 1. 5/ 72 1. 40 /5 .50 .04 /7 57 .1 3. 5/ 4. 5 77 .8 東 41 9 座 床道 側 36 .0 01 27 3/ 7. 5 40 .0 0. 5/ 51 0. 00 .5 /77 .13 /5 60 .0 東 42 0 座 床道 側 36 .0 02 01 31 .5 /6 .52 3. 1 1. 5/ 6 25 .0 1/ 6. 51 5. 43 /6 50 .0 2. 5/ 4 62 .5 東 42 1 座 床道 側 37 .0 01 48 2. 5/ 7 35 .7 0/ 6. 50 .01 /7 .51 3. 33 .5 /6 58 .3 東 42 2 座 床道 側 45 .0 01 41 42 .5 /8 31 .3 0. 5/ 5. 59 .10 .5 /86 .33 /5 .5 54 .5 3/ 5 60 .0 東 42 3 座道 側 56 .2 05 11 85 .5 /1 34 2. 34 /7 .5 53 .3 2. 5/ 11 .52 1. 74 /7 .5 53 .3 4/ 6 66 .7 東 42 4 床道 側 65 .5 02 32 43 .5 /1 0. 5 33 .3 1. 5/ 91 6. 71 .5 /1 0. 51 4. 33 .5 /8 43 .8 3/ 74 2. 9 東 42 5 座道 側 68 .0 03 81 84 /1 0. 5 38 .1 2/ 92 2. 21 /9 .51 0. 55 /8 62 .5 4. 5/ 4. 5 10 0. 0 平均 26 .11 6. 91 0. 04 1. 0
総体的にみると,道路が南西北東にある敷地の,主屋各面の開口率の平均値は,いずれも道 路に面する面が最も高く,その中で南面の 43.3% が最高である。その数値の順は,南に道路がある 敷地の南向き壁面の場合の 43.3% を筆頭に,第 3図に示したように,南,東 41.0%,北 37.1%,西 36.6% となる。 平均値の場合,いずれの場合にも道路に面する側の開口率が最も高いが,これに続くのは南側道路 の場合には東面の 22.4%,西側道路の場合には南面の 23.3%,北側道路の場合には東面の 23.5%, 東側道路の場合には南面の 26.1% で,2番目に開口率が高いのが最も高い道路側の隣の面になり, 南側道路の場合には東面,北側道路の場合にも東面,西側道路の場合は南面,東側道路の場合にも南 面が続いていて,南向および東向が優位である。 個々の開口率をみると,最も高いのが南側道路の場合の南面の 81.3% で,全ての面の最高開口率 は南側道路の南面に続いて西側道路西面の 76.9%,東側道路東面の 70.0%,北側道路北面の 64.3% と道路に面する面が続いている。なお北側道路北面の 64.3% を超える例に,南側道路南面に 78.6%, 69.2%,64.7% が存在し,西側道路西面にも 71.4% が存在するが,これらもいずれも道路に面する 側の壁面である。 それ以外の面では,最高が南側道路北面の 56.3%,西側道路南面の 54.5%,東側道路西面の 53.3%, 南側道路東面,北側道路東面および西面の 50.0% が続いている。最高開口率の中で最も低いのは, 南側道路西面および西側道路北面の 33.3% である。 これに対して,開口率の低い例を求めると,全く開口のない面がしばしば認められ,南側道路の場 合の西側,西側道路の場合の北側,北側道路の場合の西側と南側,東側道路の場合の北側には,開口 率 0.0% の例が目立っている。これは開口率の最も低い面が,最も高い面の隣,2番目に開口率の高 い面の反対側にあることを示している。 道路に近い面(近道路)の開口率 第 1図で示したように長方形以外の複雑な平面の場合には,道路に近い面と遠い面の開口率が大き く異なることが多い。その原因は道路に近い部分に道路向きの座敷を設けることが多いためである。 そこで,「近道路」と名づけた道路に近い面の開口率を求めて,座敷を置くことが開口率に与える 影響をみることとした。この部分だけの開口率は,第 1表に道路に面する面の後に「近道路」の項を たてて示している。ただし,検討したのはそれぞれ道路に面する方角の場合の,道路に面する面につ いてだけである。「近道路」の項の太字は,道路向きの面全体より「近道路」の面の方が開口率が高 い場合で,ほとんどが太字となり,「近道路」の部分がより開かれていることを示している。 結論 Ⅰ(各面の開口率の平均値)-1『御家中屋鋪建家図』から選んだ資料を根拠に,1759年当時の城 下町弘前の藩士屋敷主屋壁面の開口率を,各面の平均値でみると,道路が南西北東にあるそれ ぞれの敷地において,主屋の南西北東に面する壁面の開口率のうち,道路に面する側の数値が, 方位に関係なく,いずれの敷地の場合も最も高い。 しかし,道路が南にある敷地における南向きの壁面の場合でも,開口率の平均は 43.3% で,この ことは,開口が壁面長さの半分に達していないことを意味する。 ― 8 ―
(「近道路」) 凸型など道路向きの面に,近い面と遠い面があるときに,近い面だけの開口率をみる と,わずかな例外はあるが,その面全体の開口率より高い。道路に近い部分に座敷を置き,遠い部分 に台所などを設けるための影響で,道路向きの壁面全体の開口率が他の向きの壁面より高いのも,道 路向きの部分に座敷を置くためである。 Ⅰ-2 平均値の場合,いずれの場合にも道路に面する壁面の開口率が最も高いが,これに続く開口 率が 2番目に高い壁面は最も高い道路側の隣の面になり,南側道路の場合には東面の 22.4%,西側 道路の場合には南面の 23.3%,北側道路の場合には東面の 23.5%,東側道路の場合には南面の 26.1% で,開口率が 2番目に高い壁面が,最も高い道路側の隣の面となっている。具体的には,南側道路の 場合には東面,北側道路の場合にも東面,西側道路の場合は南面,東側道路の場合にも南面が続いて いて,南面および東面が優位である。 Ⅱ(個々の面の開口率)-1 個々の場合の開口率をみると,最も高いのが南側道路の場合の南面の 81.3% である。全ての面の最高開口率を比較すると,南側道路の南面に続いて,西側道路西面の 76.9%,東側道路東面の 70.0%,北側道路北面の 64.3% となり,いずれも道路に面する面である。 Ⅱ-2 道路に面する面以外の壁面では,最高が南側道路北面で 56.3%,西側道路南面で 54.5%,東 側道路西面で 53.3%,南側道路東面,北側道路東面および西面で 50.0% である。各面の最高開口率 の中で最も低いのは,南側道路西面および西側道路北面の 33.3% である。 Ⅱ-3 開口率の低い例をみると,全く開口のない面がしばしば認められ,南側道路の場合の西側, 西側道路の場合の北側,北側道路の場合の西側と南側,東側道路の場合の北側には,開口率 0.0% の 全く開口のない壁面の存在が目立っている。開口率の最も低い面は,最も高い面の隣で,2番目に開 口率の高い面の反対側にあることを示している。 弘前の事例が弘前だけのものか一般的な傾向なのかをみるには,他の城下町の同じ頃の同様の史料 を求めなければならないが,18世紀の例がなく,弘前よりおよそ 100年後の 19世紀の例を盛岡に求 めることができるだけである。その史料にみられる盛岡における 1806年の藩士屋敷についても先に あげた『幕末期の侍屋敷平面にみられる 2つの構成原理間の移行過程に関する研究』で考察し,道路 側に座敷を置き,道路側を開放する例が弘前より減り,南面する座敷を設け南面を開放する割合が増 えたことを指摘している。 次に,近代の都市住宅と比較してその特色を明らかにする必要があるが,明治に入ってからの都市 住宅,特に明治前半の都市住宅の史料は多くはない。そこで,1例ではあるが,『吾輩は猫である』 の舞台となった,明治 20年代に東京に建てられた森外夏目漱石が住んだ家を参考に,同様な開 口率を求めると, 南面 5.5/8.5(64.7%) 西面 0.75/4.5(16.7%) 北面 4/7.5(53.3%) 東面 3.25/6(54.2%) となる。いずれの面についても弘前の場合の各面の平均値を大きく上回っている。弘前の藩士屋敷の 場合の西面と北面に開口のない例が多くみられたこととあいまって,弘前の藩士屋敷の場合の開口が 近代住宅の常識的な範囲と比べて,大変少ないということも本稿での新しい知見ということができる であろう。 一方,この森外夏目漱石が住んだ家が道路に面するのは東面であるが,開口率が最も高いのは 南面である。これに続くのが道路側の東面で,北面も東面とほとんど変わらない開口率である。この ― 9 ―
状況を,第 4図に示している。これを第 2図と比較すると,開口率の高い面は南面で,敷地が道路に 面する方角ではなく,南面を開放していて,弘前の場合とは明らかに異なっている。 次に,同時代の農家と比較するために資料を求めると,北関東に村内すべての家屋を書き上げた記 録がみられるので,その中の 3つの村について,規模の比較的大きい農家と小さい農家(上金井村で はその中間も)を取り上げる。(参考文献 5) (上戸祭村の百姓(60坪)は,座敷部分を主要部分の東面南部に付け加えた平面であるので,開口率にその影 響がみられる南,北および東の 3面については,座敷部分の開口率を〔 〕内に示している。) 鶴田村(現栃木県 1727年) 百姓(分棟型 18坪+8.75坪) 南面 3/8.5(35.3%),西面 0/4(0%),北面 1/8(12.5%),東面 0/3(0%) 水呑(8坪) 南面 1.5/4(37.5%),西面 0/2(0%),北面 0/4(0%),東面 0/2(0%) 上金井村(現栃木県 1770年) 百姓(40.5坪) 南面 5.5/9(61.1%),西面 0/4.5(0%),北面 0/9(0%),東面 0/4.5(0%) 百姓(21坪) 南面 3.5/7(50%),西面 0/3(0%),北面 0/7(0%),東面 0/3(0%) 百姓(8坪) 南面 2/4(50%),西面 0/2(0%),北面 0/4(0%), 東面 0/2(0%) 上戸祭村(現栃木県 1770年) 百姓(60坪) 南面 9/12(75%)〔4.5/4.5(100%)〕,西面 0/6.5(0%),北面 0.75/12(6.3%)〔0/4.5(0%)〕, 東面 3/6(50%)〔3/3(100%)〕(東側の座敷部分は主屋の東面南寄りに接続されている。) 水呑(18坪) 南面 5/6(83.3%),西面 0/3(0%),北面 0/6(0%),東面 0/3(0%) ― 10― 第 4図 森外夏目漱石が 住んだ家の開口率 第 5図 農家主屋各面の開口率
これらの特色が一見してわかるように示したのが,第 5図である。これらの村では,一村中のすべ ての家屋で同様の傾向がみられる。 以上の数値が示すように,農村では南面の開口率が高く,その他の面は 0% が基本で開口があって も極めて小さいという特徴がある。その点では,道路側の面の開口率が高い武家屋敷とは明らかに異 なる主屋平面の性格をもっている。 町屋は例を挙げないが,道路に面する側とその反対側の開口率が高く,特に道路側の開口率は 100% に近い。道路に面する側の左右は隣家と接していて,接している部分には開口を取ることがで きない。 『御家中屋鋪建家図』からみた 1759年当時の弘前における藩士屋敷の主屋は,第 1表でみられたよ うに,道路に面する側の開口率が最も高いという特色をもっている。この傾向は,先におこなった 『幕末期の侍屋敷平面にみられる 2つの構成原理間の移行過程に関する研究』において指摘した,弘 前における藩士屋敷主屋平面のもつ座敷を道路に面して設けるという性格と対応し,この性格を定量 的に説明したことになる。 道路に面する側を開放する 1759年の弘前の藩士屋敷の特色は,外漱石が住んだ家の例をみる までもなく,道路の方角に関係なく南面を開放する近代の都市住宅の特色と際立って異なり,開口率 において,外漱石が住んだ家だけしか例に挙げていないが,近代の都市住宅の開口率を下回って いると考えられる。 また,農家および町屋の平面とも,その特色を異にする。 『幕末期の侍屋敷平面にみられる 2つの構成原理間の移行過程に関する研究』において指摘したよ うに,道路に面する側を開放する 1759年の弘前の藩士屋敷の特色は,近世における武家屋敷の基本 的な特色と考えられ,幕末に向かう間に,道路の方角に関係なく南面を開放する近代の都市住宅の特 色への移行過程が認められている。 なお,史料『御家中屋鋪建家図』について付言すれば,この史料は藩の公的記録であり,第 1表の 結果をみてもそれぞれの屋敷の主屋の平面が同じ傾向を示していて,扱ったサンプル数でも十分な信 頼性をもっていると考える。しかし,平面図中に書き込まれた建具の数と,余白に記されている建具 の数が,必ずしも一致しない。その差は大きくないが,その差が生じた理由は明らかでない。例えば, 余白に記されている建具の数が藩から与えられた建具の数を示しているのに対して,平面図では住ん でいた藩士が自前で調達した建具を含んでいるといった理由も考えられる。その詳細な対比と検討は, 今後の研究課題である。 参考文献 1.弘前市立図書館蔵 『御家中屋鋪建家図』1759(宝暦 9年) 2.平井聖 『幕末期の侍屋敷平面にみられる 2つの構成原理間の移行過程に関する研究』(平成 56年度科学 研究費補助金(一般研究 C)課題番号 05650606研究代表者平井聖)報告書 1995年 3月 3.長谷川成一 『弘前藩』日本歴史叢書 新装版 吉川弘文館 2004年 3月 4.弘前市立図書館蔵 『御家中屋敷改台帳』1755(宝暦 5年) 5.栃木県教育委員会事務局文化課編 『栃木県の民家民家緊急調査報告書』栃木県教育委員会 1982年 3月 再録 『日本の民家調査報告書集成 第 4巻 関東地方の民家 1 茨城 栃木 群馬』東洋書林 1998年 4月 (ひらい きよし 大学院生活機構研究科特任教授近代文化研究所所員特任教授) ― 11―