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フラックス法によるSrTiO_3単結晶の育成 利用統計を見る

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フラックス法によるSrTiO3単結晶の育成

児島弘直

河内明彦

(昭和43年9月12日受理)

Growth of SrTiO3 on a Seed from a Molten Salt Solution

HironaoKOJIMA AkihikoKOCHI Synopsis  Single crystals of strontium titanate have been grown on a seed from molten KF. The temperature gradient method was used.  The solubility of strontium titanate in KF obeys the van’t Hoff equation with a heat of solubility of 18.8kcal per mole.  The crystals grown were brown colored. Infra・red absorption spectra was observed. 1. ま え が き  チタン酸ストロンチウム(SrTio3)はペロブスカイ ト型結晶に属している等軸晶系の結晶であり,屈折率も 2.4と大きく,宝石または光学材料として用いられる可 能性がある。またSchooley1)らによれぽ超電導性も見 い出されている。  チタン酸ストロンチウムの融点は約2050°Cと高いの で,単結晶は主にベルヌーイ法により作成されている。 この方法では炉の問題,原料紛末が化学量論的であるか などという問題などがあり,それほど簡単ではない。そ れに反してフラックス法を用いて行なえぽ割合簡単に小 さな単結晶をうることができるので,小さな試料でいろ いろな測定を行なう場合に適している。フラックス法に よるチタン酸ストロンチウム単結晶の育成についての試 みはKFをフラックスに用いての沢口2), KF−LiF系 を用いての菅井3)らの研究がある。しかし,いずれの場 合も徐冷法による試みであり,種子結晶を用いての育成 の試みは行なわれていない。この研究においてはSrTi O3のKFに対する溶解度を測定し,種子結晶を用いて 温度こう配法による育成を試みたので報告する。 2.実 験 方 法 2.1試薬ならびに原料  フラックスとして用いたKFは森田化学製の特級品で ある。原料として用いたSrTiO3はTiO2とSr(NO3)2 とを等モルに混合し,700°Cで3時間焼成し,焼成物を 紛砕混合したのちさらに,1000°Cで3時間焼成したも のを用いた。用いたSr(NO3)2は市販の特級品であり, TiO2は滝4)らの方法でTiC14よりえたものである。 なお,生成したSrTio3は紛末X線回折装置で確認し た。  溶解度の測定に用いたSrTio3単結晶は中住クリスタ ル製のベルヌーイ法により育成されたものである。  2.2 溶解度の測定

 約5mm大で1.0∼1.5g程度のSrTiO3単結晶と10g

のKFをしっかりとブタのできる白金ルツボに入れ,一一 定温度で一定時間保持したのちにルツボを電気炉より取 り出し急冷させ,温水でフラックス,KF,を溶解し去 ったのち溶解しないで残っているSrTio3単結晶の重量 を測定し,その重量減より溶解度を求めた。  また,KFは実験期間中で約3%程度の蒸発損失が認 められたので,溶解度は急冷後のKFの重量で計算して 求めた。  2.3 結晶の育成  結晶育成に用いた電気炉は加熱体としてカンタルA− 1線を用いたものであり,主ヒータと補助ヒータとから なり,補助ヒータは上・下2段にわかれている。主ヒー

一123一

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昭和43年12月 山梨大学工学部研究報告 第19号 タは常に一定の電流が流されており,温度を一定に保 ち,上・下の補助ヒータはおのおの調節器により所定の 温度に制御されている。

 用いたルツボは直径3cm,深さ11cmで容量80m1

の長円筒形の白金ルツボである。  予備実験および3.1に示す溶解度の測定結果からKF

を100gおよびsrTio3紛末を15∼25%(重量パーセ

ント)よく混合して白金ルツボに入れる。過剰の出発原 料,SrTio3紛末,は比重が大きいのでルツボ底に沈 む。白金ルッボは3∼4時間かかって1000°C前後の 温度まで加熱され,その後12時間この温度で保持する。 一定時間保持したのち白金線につるした種子結晶を白金 ルツボ中に投入する。育成期間は2日間から7日間の間 である。期間終了後は電源を切り,室温まで放冷した。  また,育成された結晶は茶褐色に着色されていたの で,その原因を調べる目的で不活性雰囲気,Arガスを 用いての育成をも行なった。  2.4炎光分析  フラックスのカリウムイオンが育成結晶中に混入して いることが考えられるので,炎光分析によるカリウムイ オンの定量を行なった。育成結晶を紛砕し,0.1gを採 取し,(NH4)2SO4および濃H2SO4で加熱分解し,純水 で希釈して試料溶液とした。炎光分光分析装置は島津製 のものを用いた。  2.5赤外吸収スペクトル  育成結晶を微紛砕し,KBr錠剤法で赤外吸収スペク トルを測定した。用いた装置は日立製のEP1−G形回 折格子赤外吸収装置である。

3.実 験結 果

 3.1溶解度の測定結果  測定結果を図一1に示す。保持時間が8時間以上であれ ば完全に飽和していることを確かめたのちに,18時間一 定温度に保持した結果が図一1である。また,これらの値 を1/Tに対し対数目盛でプロットするとほとんど直線  (g)      となる。この直線の  』6       こう配より SrTio3  巳       る。計算して求めた  の  b3       溶解熱はLs=18.8

…2   k・a1・m・le−’ 一(E・あ

      Temperature(℃)  溶解度測定後の試 図一1SrTio3のKFへの溶解度曲線 料の表面を観察すると,表面は滑らかであり,溶解がス ムースに行なわれたことを示している。また,表面はい く分薄茶色の着色が認められた。  3.2育成結果  温度こう配法を用いての育成結晶の一例を図一2に示 す。この場合の育成条件として,上・下の温度差は60℃ であり,育成温度は1,010°Cである。保持期間は5日間 で,用いた種子結晶は0.6g∼1g大のものである。図一2 より明らかなように生成結晶の大きさが異なっている。 これは種子結晶の融液中での位置が異なるために大きさ の異なる結晶が育成されたのである。ルツボのふちから 下に4.Ocmおよび5. Ocmの場所での種子結晶上への 成長量は種子結晶の重量に対して,それぞれ約90%お よび20%の重量増加がみとめられる。これはルツボの 上部に近づくほど,すなわち融液表面に近づくほど,表 面からのフラックスの蒸発のため,または温度こう配の ため割合大きな温度差があることを示している。またフ ラックスの蒸発により温度を下げることだけではなく溶 質濃度が高くなっていることも考えられる。  成長速度を種子結晶の重量増加から算出してみると,  1)融液の表面に近いところで,0.6g/日  2)1)の位置より0.5cm下の所で,0,35g/日 であった。  3.3 生成結晶の観察  育成した結晶は不透明で黒色であった。着色の原因と して考えられることは,  1)ルツボ材の白金が高温のため空気中で酸化され白   金の酸化物となってフラックスに溶解し,結晶中   に含まれるため,  2)フラックスからのカリウムイオンあるいはフッ素   イオンのため,  3)酸素欠陥のため, などである。  原因を明らかにするために,Arガス雰囲気中で育成 を行なったところ茶色に着色していた。また,酸素欠陥 を除去するため育成結晶を空気中,700°Cでアニールを 行なってみたが全然色の変化はみられなかった。  育成結晶中のカリウムイオソを定量したところ,0.3 %含有されていることが明らかになった。  育成結晶の成長面には,はっきりとした結晶面が認め られ,肉眼では非常に滑らかな面である。この面を顕微 鏡で観察すると図一3に示すような葉脈状模様がみられ る。(100)面をHF+2HNO3+2H20のエッチャントで 2分間エッチを行なった結果を図一4に示す。写真より 明らかなように正方形のエッチピットがみられる。

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フラックス法によるSrTiO3単結晶の育成

bO

蹴灘

s 》 w 彩 影騰 懸難 ’㌶彩ン彩 彩r ノ診 義 罵 tf  が fうノr 簿繊鶴 へ翻i彩 、r彩辮 》 影難灘 鍵義彩 購繕 難彩総 彩/rtt 繊,灘  聯診  1影 鰯 図一2 育成結晶(]目盛1mm) 図一3 育成結晶の成長面の模様      L      ぽLゴ 灘灘’蟻難鑛灘灘’

図一4 (100)面のエッチピット(×70) 一一@125一

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フラックス法によるSrTio3単結晶の育成 100 蓮 §60 § § § e ’20       1200     1000     800      600     400cmづ1       Wave Number      図一5 SrTio3の赤外吸収スペクトル  赤外吸収スペクトルを図一5に示す。1200cm−1∼4000 cm−1の間には吸収はほとんどみられず,740cm−1およ び570cm−1の付近にブロードな吸収がみられる。

4.考

察  着色の原因については3.3の項で述べたように,白金 ルツボからの白金,または酸素欠陥によるものではない と推定できる。しかしながら生成結晶中にフラックスが 予想していたよりも多量に含まれていること,また,菅 井3)らもK2LiF2をフラックスとして用いた実験におい て薄褐色に着色していると述べていることから着色の原 因はフラックスによるものであろうと推定している。  菅井3)らはLiF−KF系フラックスでその成分比がい ずれかに偏するとSrTiO3の晶出はなく,TiO2の生成 がみられると報告しているが,われわれの実験ではKF 単独の場合にはそのようなことは認められず,SrTio3 の生成が認められた。なお,木村5)の研究によると, B203およびLi2MoO4のフラックスでは, TiO2の晶 出が認められているが,KFでは, SrTio3が晶出して いると述べている。 また,沢口2)もKFでSrTiO3が 生成されることを示している。 5. む  す  び

 ユ)SrTio3のKFへの溶解度を測定し,溶解熱を

18.8kca1/moleとえた。  2)溶解度測定結果をもとにして,温度こう配法での   育成を行ない,育成温度ユ,010°C,温度差60°C で0.6g/日の成長速度で育成可能なことを明らかにし た。  3)着色の原因はフラックスが生成結晶中に入りこん   でいるためではないかと推定した。  終りに,赤外吸収装置を使用させていただきました応 用化学科ならびにSrTiO3単結晶を提出してくださいま した中体クリスタル株式会社に感謝いたします。また, 予備実験に協力いただいた本学卒業生木村文隆君に感謝 いたします。 文 献 1)J.F. Schooley, W.R. Hosler, M.L. Cohen:Phys.  Rev. Letters.12,474(1964) 2)日本物理学会:単結晶作成法,p.241朝倉(昭41) 3)菅井,長谷川,大原:第11回人工鉱物討論会講演要旨集, p.21 (1966) 4)滝,国富:工化誌,57,534(1954) 5)木村:山梨大学工学部卒業論文(昭41年度)

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参照

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