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「もうひとりの当事者」が見つめる精神障害者の日常生活 ―8名の家族かのインタビュー調査を通して―

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Academic year: 2021

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『日本福祉大学社会福祉論集』第 142 号 2020 年 3 月  要 旨  本研究では,精神障害者(以下,本人)の障害年金の認定診査において鍵を握る,日 常生活評価の指標としての,①適切な食事,②身辺の清潔保持,③金銭管理と買い物, ④通院と服薬,⑤他人との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安全保持及び危機対応,⑦ 社会性,さらには,⑧就労に着目した.そして,これらの 8 つの事柄を切り口にしなが ら,本人の日常生活に対する精神障害者の家族(以下,家族)の捉え方や思いを分析 し,障害年金受給との関係について探索することを目的にして,8 名の家族から半構造 的インタビューを実施した.  分析の結果,本人が【重圧を受けやすい日常生活実態】におかれていることがわかっ た.また,家族がこれらの事柄を捉えるにあたっては,【常態化によって生きづらさが 潜む】ということと,【強力な社会的支援としての家族】という 2 つの側面を持ってい ることがうかがえた.一方で,障害年金の日常生活評価にあたって,家族は,本人の日 常生活の情報を医師から求められたとしても,必ずしも期待された役割を果たせるとは 限らない.なぜなら,【できない証明とストレングス視点】として,家族は本人に対し て,ストレングス視点で捉えることに馴染んできた結果,日常生活のできない証明をす ることが難しい側面が認められたからである.   キーワード:家族,精神障害者,障害年金,日常生活評価,質的データ分析

 Ⅰ はじめに

 精神障害者(以下,本人)が障害年金を受給するためには,国民年金法による障害基礎年金, あるいは,厚生年金保険法による障害厚生年金共に,診断書を作成する医師(以下,作成医)に 依頼をすることが求められる.次に,作成医が記載した診断書は,市区町村役場や年金事務所を 経由して,東京にある障害年金センターに送られる.そして,障害年金センターには,日本年金

「もうひとりの当事者」が見つめる精神障害者の日常生活

   8 名の家族からのインタビュー調査を通して   

青 木 聖 久 

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機構から委嘱された障害認定診査医員(以下,認定医)がおり,障害年金の認定診査(以下,認 定診査)を実施することになっているのである.ちなみに,障害基礎年金は基本的に 2017 年 3 月まで,各都道府県ごとに診査がなされていた注 1 .  また,2016 年 9 月以降,厚生労働省は「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(以下,ガ イドライン)を作った(厚生労働省 2016a).そのことから,前述のように,認定医が障害年金 の認定診査を実施する前に,日本年金機構の事務職員が,診断書の記載内容を基にして,障害等 級の目安を定めることになる.それは一次判定のような位置づけとなっている.この一次判定の 特徴は,診断書の「日常生活能力の判定」として定められている以下の 7 項目を個々の項目ごと に 4 段階評価をし,その平均値を出すというものである.具体的には,①適切な食事,②身辺の 清潔保持,③金銭管理と買い物,④通院と服薬,⑤他人との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安 全保持及び危機対応,⑦社会性,から構成されている.そして,その平均値を縦軸にし,横軸に は,同じく診断書の「日常生活能力の程度」の 5 段階評価のどこにマークされているかをマト リックス表に当てはめ,仮の等級の目安を決めるのである.そして,認定医は,この等級の目安 を参考にしながら,総合評価をすることになる(青木 2016).その際,重視されているのが, 2011 年 9 月以降の診断書から新たな項目として設けられている「現症時の就労状況」を踏まえ ての⑧就労である(青木ら 2014).  前述の①~⑧が認定診査において重要な位置づけになっていることは,ガイドライン,さらに は,ガイドラインと同じタイミングで厚生労働省が作成した「障害年金の診断書(精神の障害 用)記載要領」(以下,記載要領)からも明らかである(厚生労働省 2016b).診断書の記載にあ たっては,精神障害の場合,機能レベルではなく,日常生活が論点であることは,これらの通 知,さらには,国が認定診査の基準として示している「障害認定基準」(以下,認定基準)から うかがい知ることができる(厚生労働省 2017).  そのようななか,認定診査が面談を実施せず,書面診査のみで実施されていること等に鑑み, 筆者は 2 点の課題を挙げたい.1 点目は,作成医が前述の①~⑧をいかなる判断基準や情報を基 にして,評価しているのか,ということである.精神障害者の日常生活の反映の鍵は,間違いな く作成医が握っていると言える(青木 2018).  とはいえ,である.在宅での全ての様子を作成医は当然把握しているわけではない.そのこと から,2 点目は,本人,あるいは,精神障害者の家族(以下,家族)という当事者の立場にある 者が,日常生活評価の判断の基になるエピソード等を客観的に抽出すると共に,作成医に伝える ことができているのか,ということである.  ちなみに,「当事者」の定義は,絶対的なものが無い.ただし,本稿では,本人と家族を含め て当事者と操作的に定義する.精神障害の有無という点で言えば,家族は精神障害を直接持って いない.しかしながら,精神障害による苦しさや葛藤は,時に本人と同じぐらい,いや,それ以 上の時もあろう.少なくとも,家族は大きな渦の中に位置づいており,「もうひとりの当事者」 と見なすことができよう.なお,ここでいう「もうひとり」とは,単数の家族を意味するもので

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はない.それは,精神障害のある本人以外にも家族という,「もうひとりの立場性」,あるいは, 「もうひとつの立場性」がある,ということを意味する.そのことから,複数人の家族の立場の 者について指す場合もあることを付記しておきたい注 2 .

 Ⅱ 研究目的

 前述の研究課題をふまえ,本稿では家族に焦点をあてる.認定診査において精神障害は,肢体 障害による欠損や可動域のような数値化できる指標を用いないため,障害の可視化が難しいこと になる.そのようななか,家族は長い時間軸の中で,本人の日常生活を見ている経緯がある.ま た,客観性という点で言えば,本人よりも,家族の方がむしろ本人の日常生活を知り得る存在だ と見なすこともできよう.家族は,本人の今と未来を我がこととして捉える重要な社会資源であ り,まさに,もうひとりの当事者である.  以上のことから,本稿では前述の①から⑧の 8 つの事柄を切り口にしながら,本人の日常生活 に対する家族の捉え方や思いを分析し,障害年金受給との関係について探索することを目的とす る.なお,本稿で精神障害者という場合は,障害者基本法等により,発達障害を含めた広義の意 味で用いるものである注 3

 Ⅲ 研究方法

 1.調査方法及び内容  本研究では,質的研究法を採用して,家族を対象にデータの収集を行った.対象は,家族会, 講演,出版等の活動をしている者であり,自身の状況について,一定程度の振り返りができてい る家族の中から選定した.2017 年 12 月から 2018 年 3 月までの間,表 1 に示しているように, 協力を得た 8 名を対象にして半構造化面接を,54 ~ 90 分間個別に実施した.  質問内容は,①適切な食事,②身辺の清潔保持,③金銭管理と買い物,④通院と服薬,⑤他人 との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安全保持及び危機対応,⑦社会性,⑧就労,の 8 項目であ る.ここでは,具体的なエピソードや,そのことに関する思い,そして,家族としての障害年金 についての考えを語ってもらった.また,インタビューにあたっては,研究対象者の了解を得て 録音している.

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表 1 調査協力者一覧 ID 本人の性別 本人の年齢層 家族の年齢層 本人との続柄 A 男 40 代 70 代 母 B 女 40 代 60 代 母 C 女 死亡 70 代 子 D 男 40 代 70 代 父 E 女 40 代 60 代 母 F 男 20 代 50 代 母 G 男 20 代 60 代 母 H 男 10 代 40 代 母  2.分析方法  分析方法は,データから導き出すことができる意味の解釈を探索的に分析することを考えたた め,佐藤郁哉の質的データ分析法を用いた(佐藤郁哉 2008).具体的には,以下の手順により進 めた.  まず,録音したデータを逐語録として文書化した.そのうえで,研究目的及び研究課題に引き 寄せて,精神障害者の日常生活実態や,そのことについての捉え方を表していると考えられるも のを抽出した.  次に,抽出したデータを基にして,オープンコーディングを行った.そして,それらの意味解 釈をすることで,より抽象度の高い上位コードに置き換え,最終的に,概念的カテゴリーを生成 したのである.  なお,分析では,逐語録のデータとコードを往復しながら,研究協力者の語りの意味解釈を繰 り返した.検討するなかで,修正をしながら,後述するように,事例-コード・マトリックス (表 2)の作成に至っている.また,この事例-コード・マトリックスにおけるカテゴリー間の 関係を示したものが図 1 である.  3.倫理的配慮  研究にあたっては,日本福祉大学の倫理審査委員会の許可を得て,調査対象である 8 名の研究 協力者に対して,調査の任意性や匿名性の確保の説明等を行い,書面による同意を得て実施した ものである.

 Ⅳ 結果

 分析の結果,家族が捉える精神障害者の日常生活の実態,及び,障害年金受給と家族との関係 については,【重圧を受けやすい日常生活実態】,【常態化により生きづらさが潜む】,【強力な社 会的支援としての家族】,【できない証明とストレングス視点】の 4 の概念的カテゴリーを生成す ることができた.これは,27 のコード,18 の上位コードから構成されている.

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 以下は,各々の概念的カテゴリーの生成に至るストーリーラインを述べたものである.なお, ストーリーラインにおいて,「」で示しているものはコード,≪ ≫で示しているものは上位コー ドである. 表 2 家族が捉える精神障害者の日常生活評価 【概念的カテゴリー】 ≪上位コード≫ 「コード」 【重圧を受けやすい 日常生活実態】 ≪予期せぬ他者の登場による混乱≫ 「自らの生活場面において他者が不意に 現れることへの苛立ち」 「衣服の着脱時に他者からの声掛けは負担」 「自らのテリトリーに突然現れる来客へ の警戒」 ≪日々の出来事に左右される食事作り≫ 「緊張状態が持続することによって,で きなくなってしまう食事作り」 ≪適度な他者との関係性構築の難しさへ の対峙としての固有の行動≫ 「他人をけなすのはコンプレックスの裏 返し」 「外に出たいものの人から非難されるの が怖くて自宅にこもる」 ≪日常生活の支援は助かる一方でストレ ス要因≫ 「食事や掃除を助けてもらうことは,ス トレスにもつながる」 【常態化により生き づらさが潜む】 ≪ありえないレベルの生きづらさとして の日常生活実態≫ 「歯磨きは数か月に 1 回,入浴は半年に 1 回,下着は汚れて穴が空くまで替え ない」 「流し台の床はびしょ濡れで腐り,ナメ クジが這っている」 ≪ストライクゾーンの狭い食事における できるという範囲≫ 「食事時間に厳格で,7 分遅れるとだめ で,融通がきかない」 「食事は,味が独立しているものを混ぜ る(チャーハン等)のが苦手」 ≪安全な暮らしを脅かす貴重品の紛失≫ 「財布をどこに置いたかについてわから なくなったり,家の鍵も何度もなくす」 ≪病変によって,周囲を驚かせる本人自 身の姿と行動≫ 「状態が悪くなると,入浴をしなくなっ たり,金髪になったりする」 「幻聴が影響して,本人の部屋の壁は貼 り紙だらけになる」 【強力な社会的支援 としての家族】 ≪仲介役としての家族機能≫ 「家族が時折アパートの管理人とコミュ ニケーションを図ることによって,問 題を未然に防いでいる」 ≪直接的な支援者としての家族≫ 「本人のひげを家族がそっている」 ≪本人の状況や思いをくみ取り積極的に 行動する家族≫ 「外で発散できない本人のストレスを家 族が意識的に聞いている」 ≪日常生活を遂行するための家族のかか わり≫ 「会社への行き方を何度も家族が同行す ることで,予測をつけさせている」 「本人が家の鍵を何度も落とすので,親 戚に鍵を渡している」 「本人の職場に,①メモちょうだい,② 声をかけて,③ミスしてもちょっとだ

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け目をつむって,と配慮依頼を家族か らした」 ≪家族の力の大小に影響される本人の日 常生活≫ 「障害への理解や経済力等がある我が家 だからこそ対応できている側面」 【できない証明とス トレングス視点】 ≪相対的評価で捉えるなかで見いだす本 人の長所≫ 「以前と比べると,ずいぶん調子はよく なっている」 ≪本人の強みへの意識化と行動≫ 「家族は本人の強みをほめる等,特性に 応じたかかわりを心掛けている」 ≪日常生活とは別の就労面への着眼≫ 「企業の障害者枠で雇用されて一定年数 がたつ」 ≪大きな視点による本人の長所への着眼≫ 「本人には,人としていいところが多い」 「正義感が強く,嘘がつけないことが生 きづらくさせている」 ≪周囲との関係性の中で生じた本人の生 きづらさへのまなざし≫ 「本人を理解する人がいなかったので, 余計に不安定になっていたのかもしれ ない」  1.重圧を受けやすい日常生活実態  家族は長年の本人との暮らしのなかで,本人が有する生きづらさを体感している.とりわけ, 食事作り,着替え等の日常生活場面では,≪予期せぬ他者の登場による混乱≫を来たしている本 人の動揺する姿を見ている家族は少なくない.それは,食事作りのために,本人が台所に立って いる時,「自らの生活場面において他者が不意に現れることへの苛立ち」というものである.ま た,他の日常生活場面おいても,「衣服の着脱時に他者からの声掛けは負担」というようなこと もある.加えて,これらのことは本人の日常生活の行動範囲において,「自らのテリトリーに突 然現れる来客への警戒」というところまで及ぶことも珍しくない.  ただし本人は,これらの予期せぬ出来事が無かったとしても,子どもの学校の参観日等のライ フイベントが起こることにより,「緊張状態が持続することによって,できなくなってしまう食 事作り」等に至ってしまう.まさに,≪日々の出来事に左右される食事作り≫として捉えること ができる.  一方で,本人は外出先において,他者との交流を願っている気持ちがあるものの,それがうま くできないことが少なくない.そのことが,≪適度な他者との関係性構築の難しさへの対峙とし ての固有の行動≫として現れる.その一つとして,誹謗中傷は,「他人をけなすのはコンプレッ クスの裏返し」であり,引きこもりは,「外に出たいものの人から非難されるのが怖くて自宅に こもる」と捉えることができる.  これらの状況をふまえ,本人は周囲からの支援を受けることが求められる.ところが,本人は 支援を受けることが助かる反面,「食事や掃除を助けてもらうことは,ストレスにもつながる」 という側面があることを家族は知っている.≪日常生活の支援は助かる一方でストレス要因≫に もなるのである.

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 2.常態化により生きづらさが潜む  身辺の清潔保持では,「歯磨きは数か月に 1 回,入浴は半年に 1 回,下着は汚れて穴が空くま で替えない」というようなものがある.また,食事作りで言えば,水回りの管理等の不具合か ら,「流し台の床はびしょ濡れで腐り,ナメクジが這っている」というような事態にまで及んで しまっているものもある.これらは,家族が語らなければ潜んでいる事柄であり,改めて第三者 に語ることによって表面化する≪ありえないレベルの生きづらさとしての日常生活実態≫として 捉えることができる.  なかでも食事は,家族が本人と同居している場合,比較的表面化しやすい.そのなかにおい て,本人は「食事時間に厳格で,7 分遅れるとだめで,融通がきかない」,「食事は,味が独立し ているものを混ぜる(チャーハン等)のが苦手」等,臨機応変な対応の困難さや,固有のこだわ りが認められる.これらのことは,障害年金の日常生活評価の判定における「できる」という捉 え方で言えば,≪ストライクゾーンの狭い食事におけるできるという範囲≫ということになろ う.  また,安全管理面で言うと,「財布をどこに置いたかについてわからなくなったり,家の鍵も 何度もなくす」ということが挙げられ,これらは≪安全な暮らしを脅かす貴重品の紛失≫として 捉えることができる.  加えて,変動に富む本人の日常生活は,前述の重圧等のストレスから,「状態が悪くなると, 入浴をしなくなったり,金髪になったりする」,「幻聴が影響して,本人の部屋の壁は貼り紙だら けになる」というような行為につながることもある.ただし,これらのことは,日常的に本人と 接している家族からすれば,刷り込まれた当たり前の日常という常態化から,当たり前すぎて他 者に語っていない可能性もある.したがって,家族以外の他者は,これらの話を聞くことを通し て≪病変によって,周囲を驚かせる本人自身の姿と行動≫を知り得ることになろう.  3.強力な社会的支援としての家族  家族は本人が単身生活をしている場合,後方支援をすることが少なくない.その一つが,「家 族が時折アパートの管理人とコミュニケーションを図ることによって,問題を未然に防いでい る」というものである.それは,≪仲介役としての家族機能≫として,家族のかかわりによっ て,アパートの管理人の安心感の醸成にもつながっていると言える.  また,整容への介入として,「本人のひげを家族がそっている」ということもある.これは, ≪直接的な支援者としての家族≫としてのかかわりである.  一方で,「外で発散できない本人のストレスを家族が意識的に聞いている」ということがあり, まさしく,≪本人の状況や思いをくみ取り積極的に行動する家族≫としての機能である.  そして,家族は長年の本人とのかかわり等から,≪日常生活を遂行するための家族のかかわ り≫として,専門職さながらのかかわりをすることがある.それが,「会社への行き方を何度も 家族が同行することで,予測をつけさせている」,「本人が家の鍵を何度も落とすので,親戚に鍵

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を渡している」,「本人の職場に,①メモちょうだい,②声をかけて,③ミスしてもちょっとだけ 目をつむって,と配慮依頼を家族からした」というものである.  他方,本人の特性に応じ,家庭教師等をつける,というようなかかわりは,「障害への理解や 経済力等がある我が家だからこそ対応できている側面」ともいえる.このことは,≪家族の力の 大小に影響される本人の日常生活≫としても捉えられよう.  4.できない証明とストレングス視点  障害年金における日常生活評価は,生きづらさを可視化するための「できない証明」としての 家族からの語りが求められる.ところが家族からは,それとは異なる視点により,語られること がある.家族は本人の発症時期をはじめ,症状の重かった時代の本人と暮らしており,そのこと によって家族自身が苦しかったという経過をたどっている者も少なくない.そのことから,「以 前と比べると,ずいぶん調子はよくなっている」というように,≪相対的評価で捉えるなかで見 いだす本人の長所≫へと視点が行く.  また,家族会の学習機能等もあり,「家族は本人の強みをほめる等,特性に応じたかかわりを 心掛けている」等,≪本人の強みへの意識化と行動≫をとる傾向にある.  一方で,家庭での様子とは別に,外界での本人の就労面での長所に目を向け,「企業の障害者 枠で雇用されて一定年数がたつ」というように,≪日常生活とは別の就労面への着眼≫をするこ とがある.  加えて,長所への着眼という点で言えば,「本人には,人としていいところが多い」,「正義感 が強く,嘘がつけないことが生きづらくさせている」というように,≪大きな視点による本人の 長所への着眼≫によって,発想を広げた見方をしようとしていたりする.  さらには,「本人を理解する人がいなかったので,余計に不安定になっていたのかもしれない」 というように,家族は本人のことに思いをめぐらす.これは,本人に問題があるのではなく, ≪周囲との関係性の中で生じた本人の生きづらさへのまなざし≫として捉えることができよう.

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「もうひとりの当事者」が見つめる精神障害者の日常生活

 Ⅴ 考察

 前述の分析結果をもとにして,概念的カテゴリー間の関係について示したものが図 1 である. 図 1 精神障害者の日常生活に対する家族の捉え方や思い 8 ߥ޿ޕߘߩߎߣ߆ࠄޔ䇸એ೨䈫Ყ䈼䉎䈫䇮䈝䈇䈹䉖⺞ሶ䈲䉋䈒䈭䈦䈩䈇䉎䇹ߣ޿߁ࠃ߁ߦޔ㻥⋧ኻ ⊛⹏ଔ䈪ᝒ䈋䉎䈭䈎䈪⷗䈇䈣䈜ᧄੱ䈱㐳ᚲ㻦߳ߣⷞὐ߇ⴕߊޕ  ߹ߚޔኅᣖળߩቇ⠌ᯏ⢻╬߽޽ࠅޔ䇸ኅᣖ䈲ᧄੱ䈱ᒝ䉂䉕䈾䉄䉎╬䇮․ᕈ䈮ᔕ䈛䈢䈎䈎䉒䉍 䉕ᔃដ䈔䈩䈇䉎䇹╬ޔ㻥ᧄੱ䈱ᒝ䉂䈻䈱ᗧ⼂ൻ䈫ⴕേ㻦ࠍߣࠆ௑ะߦ޽ࠆޕ  ৻ᣇߢޔኅᐸߢߩ᭽ሶߣߪ೎ߦޔᄖ⇇ߢߩᧄੱߩዞഭ㕙ߢߩ㐳ᚲߦ⋡ࠍะߌޔ䇸ડᬺ䈱㓚 ኂ⠪ᨒ䈪㓹↪䈘䉏䈩৻ቯᐕᢙ䈏䈢䈧䇹ߣ޿߁ࠃ߁ߦޔ㻥ᣣᏱ↢ᵴ䈫䈲೎䈱ዞഭ㕙䈻䈱⌕⌒㻦ࠍ ߔࠆߎߣ߇޽ࠆޕ  ട߃ߡޔ㐳ᚲ߳ߩ⌕⌒ߣ޿߁ὐߢ⸒߃߫ޔ䇸ᧄੱ䈮䈲䇮ੱ䈫䈚䈩䈇䈇䈫䈖䉐䈏ᄙ䈇䇹ޔ䇸ᱜ⟵ᗵ 䈏ᒝ䈒䇮ཐ䈏䈧䈔䈭䈇䈖䈫䈏↢䈐䈨䉌䈒䈘䈞䈩䈇䉎䇹ߣ޿߁ࠃ߁ߦޔ㻥ᄢ䈐䈭ⷞὐ䈮䉋䉎ᧄੱ䈱㐳 ᚲ䈻䈱⌕⌒㻦ߦࠃߞߡޔ⊒ᗐࠍᐢߍߚ⷗ᣇࠍߒࠃ߁ߣߒߡ޿ߚࠅߔࠆޕ  ߐࠄߦߪޔ䇸ᧄੱ䉕ℂ⸃䈜䉎ੱ䈏䈇䈭䈎䈦䈢䈱䈪䇮૛⸘䈮ਇ቟ቯ䈮䈭䈦䈩䈇䈢䈱䈎䉅䈚䉏䈭䈇䇹 ߣ޿߁ࠃ߁ߦޔኅᣖߪᧄੱߩߎߣߦᕁ޿ࠍ߼ߋࠄߔޕߎࠇߪޔᧄੱߦ໧㗴߇޽ࠆߩߢߪߥ ߊޔ㻥๟࿐䈫䈱㑐ଥᕈ䈱ਛ䈪↢䈛䈢ᧄੱ䈱↢䈐䈨䉌䈘䈻䈱䉁䈭䈙䈚㻦ߣߒߡᝒ߃ࠆߎߣ߇ߢ߈ ࠃ߁ޕ  Χ ⠨ኤ ೨ㅀߩಽᨆ⚿ᨐࠍ߽ߣߦߒߡޔ᭎ᔨ⊛ࠞ࠹ࠧ࡝࡯㑆ߩ㑐ଥߦߟ޿ߡ␜ߒߚ߽ߩ߇࿑  ߢ ޽ࠆޕ                                                   ࿑䋱㩷 ♖␹㓚ኂ䈱䈅䉎ᧄੱ䈱ᣣᏱ↢ᵴ䈮ኻ䈜䉎ኅᣖ䈱ᝒ䈋ᣇ䉇ᕁ䈇㩷  㧝㧚ᣣᏱ↢ᵴࠍ㓚ኂᐕ㊄ߣߩ㑐ଥߢᝒ߃ࠆ ኅᣖߪ࿷ቛ↢ᵴߦ߅޿ߡޔᧄੱߩᄙߊߩ↢߈ߠࠄߐࠍりㄭߦ⷗ߡ޿ࠆޕߘࠇߪޔᤨߦ✕ ᒛᗵࠍ઻߁ߎߣ߽ዋߥߊߥ޿㧔દ⮮2017㧕ޕߚߛߒޔᧄⓂߢὶὐൻߒߡ޿ࠆޔ㓚ኂᐕ㊄ߩᣣ Ᏹ↢ᵴ⹏ଔߩ  㗄⋡ߢ޽ࠆޔԘㆡಾߥ㘩੐ޔԙりㄝߩᷡẖ଻ᜬޔԚ㊄㌛▤ℂߣ⾈޿‛ޔԛ ࿷ቛ↢ᵴ ᧄੱ㩷 ኅᣖ㩷 䋱䋮㊀࿶䉕ฃ䈔䉇䈜 䈇ᣣᏱ↢ᵴታᘒ㩷 䋲䋮Ᏹᘒൻ䈮䉋䉍↢ 䈐䈨䉌䈘䈏ẜ䉃㩷 䋳䋮ᒝജ䈭␠ળ⊛㩷 㩷 ᡰេ䈫䈚䈩䈱ኅᣖ㩷 㓚ኂᐕ㊄䈱⸻ ᢿᦠ䈮᳞䉄䉌 䉏䈩䈇䉎䉅䈱㩷 䋴䋮䈪䈐䈭䈇⸽᣿䈫㩷 䉴䊃䊧䊮䉫䉴ⷞὐ㩷  1.日常生活を障害年金との関係で捉える  家族は在宅生活において,本人の多くの生きづらさを身近に見ている.それは,時に緊張感を 伴うことも少なくない(伊藤 2017).ただし,本稿で焦点化している,障害年金の日常生活評価 の 7 項目である,①適切な食事,②身辺の清潔保持,③金銭管理と買い物,④通院と服薬,⑤他 人との意思伝達及び対人関係,⑥身辺の安全保持及び危機対応,⑦社会性,及び,⑧就労は,何 をもって日常生活の制限と捉えられるかについては,専門家であってもわかりづらい.  このことについては,記載要領において,3 点の着眼すべき論点が認められる.1 点目は,単 身生活を想定して記載する,ということ.2 点目は,診察室の一時点ではなく現症日以前 1 年程 度での障害状態の変動で記載する,ということ.3 点目は,家族や福祉サービスによって生活が できている部分を意識したうえで記載する,ということである.そして,①適切な食事では,4 段階評価のなかで最も自立度が高いとされる「できる」について,次のような例示が記載されて いる.「栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができる.(外食,自炊,家族・施 設からの提供を問わない)」(厚生労働省 2016b).ゆえに,前述の 3 点の論点をもって,この例 示に照合すれば,「できる」と判断し得る者は稀だと考えられよう.  しかし,これらの論理に行きつくには,2 つの事柄が必要となる.1 つ目は,本人が有する, 重圧を受けやすい日常生活実態について,家族からいかに語られ,作成医に伝わっているのか, ということ.そのうえで,2 つ目は,その情報を基にして,作成医は,記載要領に落とし込めて いるのか,ということである.根本的なことを言えば,記載要領という存在を,作成医が知って

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いるか否かが鍵を握る.そのようなことからも,障害年金を専門とする社会保険労務士の台頭が 昨今目立ち,彼らは,通訳役としての機能を発揮し,家族と作成医とをつないでいるとも言える のではあるまいか(高橋裕典ら 2018;白石美佐子ら 2019).そして,その社会保険労務士をも含 めた社会資源の有機的な連携を専門とする精神保健福祉士等の実践が,大いに期待されるのであ る(小島ら 2017).  少なくとも,家族から語られる日常生活の実態をエピソードとしてリアルに抽出し,障害年金 との関係で捉え,作成医に伝わるような仕組みこそが求められると言えよう.  2.家族というフィルターを通した精神障害者の日常生活評価  とはいえ,家族は必ずしも日常生活実態について,客観的に捉えることができない.そこに は,2 つの側面がある.1 つ目は,図 1 の「2.常態化により生きづらさが潜む」ということで ある.佐藤純らは,家族がおかれている立場について,「家族は本人のケアに家族自身の人生の 多くを費やし,孤立し,疲弊し,まさに自分の人生をなげうって『ケアをする家族』として生活 することになる.そしてその影響もあってか,本人と家族の関係は混沌とし,日々,本人も家族 も抜き差しならないような状況を体験している場合もある」と述べている(佐藤純ら 2016).ま た,松田らは,「精神障害者の家族は,当事者の状態変化に合わせた生活を続けており,それに よって先の見えない不安な感情が生じ,不安定な状態にある精神障害者の家族の精神的健康は, 良好に保たれていない.精神的な健康が保たれていない家族は,自分の人生に注目をする力が弱 まっているとも考えられる」と論じているのである(松田ら 2019).  これらの現状をふまえれば,家族は本人の多様な生活実態の情報を持っていることは間違いな い.ところが,家族自身が疲弊していることや,一方で,大変な状況が当たり前の日常になって いる,いわゆる常態化によって,本人の生きづらさが潜むことは少なくないと言える.  一方で,図 1 に示すように,「3.強力な社会的支援としての家族」としての側面を家族は有 する.そこには,佐藤純がいう「何重もの社会からの期待」という部分もあろう.それは,①精 神保健福祉法によって求められている家族等の立場として,②民法上の扶養義務者として,さら には,③道徳上の家族が面倒を見るのは当たり前というような観点からによるものである(佐藤 純 2019).しかし,これらの外在的なものは一つの側面に過ぎない.むしろ家族は,もうひとり の当事者として,表 2 の上位コードである≪本人の状況や思いをくみ取り積極的に行動する家族 ≫に象徴されているように,内在的に湧き出される力が源となり,我がこととして家族の力を主 体的に発揮していると言えるのではないだろうか.その結果,社会資源としての家族の果たす力 が大きければ,前述の⑧就労で言えば,就労継続につながることも少なくないのである.  以上のことから,家族は,「2.常態化により生きづらさが潜む」ことと,「3.強力な社会的 支援としての家族」という 2 つの側面を持ち,それらが相互に影響をしながら,本人の日常生活 を見守りつつ,一喜一憂していると言えよう.

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 3.必要事項の抽出と自身の願いとの折り合い  前述したような側面をもって,家族は障害年金の新規請求や再認定において,本人の日常生活 について,作成医に伝えることになる.その際,障害年金の診断書で求められるのは,あえて端 的に言えば,できないことの証明である.  ところが,当たり前のことであるが,家族は本人の長所に目を向けたくなる.また,とりわけ 近年では,家族にかかわる専門職も,家族に対して,家族自身や本人のストレングスに目を向け るように促すようになっている.ストレングス視点は,例えば精神保健福祉士の養成教育におい てもよく用いられている(佐藤純 2012).かたや,専門職自身も,本人に対して,ストレングス 視点でのかかわりを意識する.古屋はケアマネジャーに対して,事例検討会等を通して,次のよ うなことを説いている.「精神障害に問題を還元するのではなく,本人や家族の生き方や選択を 認め,多様性を尊重し,まず人として対話する姿勢が大切である」(古屋 2019).  このようにして,家族は自身の願い,さらには,支援者から促される本人の捉え方等を通し て,ストレングス視点の大切さへと視点が向く傾向にあると言える.その結果,これらのことが 相乗的に作用する中で,障害年金の診断書において求められている,できない証明から無意識の うちに,離れていってしまうことも少なくないのである.  だが,現実問題として,所得保障という側面から,家族は必死にできない証明をしようとす る.そこには,まさに障害年金における,できない証明としての必要事項の抽出と,一方で,自 身の願いとの折り合いに葛藤する家族の姿があると言えよう.

 Ⅵ 結論

 家族は本人の【重圧を受けやすい日常生活実態】を知る重要な社会資源であることは間違いな い.ただし,【常態化により生きづらさが潜む】ということと,一方で,【強力な社会的支援とし ての家族】という 2 つの側面が認められる.  そのような特徴のある家族が,障害年金の日常生活評価として,情報を求められたとしても, 必ずしも期待された役割を果たせるとは限らない.なぜなら,【できない証明とストレングス視 点】として,家族は本人に対して,ストレングス視点で捉えることに馴染んできた結果,できな い証明をすることに難しい側面が認められるからである.しかしながら,冷静に考えればわか る.そもそも,よくなっている,いい所に目を向けたいと願うのは,家族としての当たり前の気 持ちの表れであると言えるのではあるまいか.  一方で,重要なことは,障害年金の診査は,ある意味,できない証明をすることにある.した がって,多くの情報を持っている家族が,日常のリアルなエピソードを継続的に,どのように伝 えていくかが鍵を握ると言っても過言ではない.  そのようななか,視点を変えれば,本人は障害年金を受給しようとも,生きづらさが無くなる ことはない.生きづらさは,障害年金によって隠れることがあっても,決して無くならないので

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ある.また,もうひとりの当事者としての家族もまた,前述のように,様々な葛藤に苛まれ, 日々の暮らしを営んでいる.社会はこれらの実態や,もうひとりの当事者である家族の思いに慮 ることが大切であると言えよう. *本研究は,2017 年度日本福祉大学公募型研究プロジェクト,2018 ~ 2021 年度 JSPS 科学研究 費(JP18K02173)による,研究成果の一部である.また,本稿は,金城学院大学で行われた 2018 年度日本社会福祉学会第 66 回学術研究集会において発表したものを基にしている.  最後に,本調査において,ご協力いただいた 8 名の研究協力者の方々に感謝申し上げます. 注1  障害基礎年金の新規請求の 2010 ~ 2012 年度における認定診査の採択率の平均について,厚生労働省 が調査をしたところ,最も不支給割合が高かったのは大分県の 24.4%だった.それに対して,最も不支 給割合が低かったのは栃木県の 4%で,両者の間には 6 倍以上の格差が認められた(厚生労働省 2015a).また,2013 年度における障害年金(精神の障害)の再認定時の支給停止(等級非該当)状況が 示されている.それによると,最も支給停止割合が低いのが宮城県で,1,874 名中 3 名というように 0.16%であった.それに比し,最も支給停止割合が高いのが兵庫県で,5,279 名中 450 名というように 8.52%となっている.両者の間には,50 倍以上の格差が認められた(厚生労働省 2015b). 注2  日本精神保健福祉学会の用語に関する調査研究では,当事者について,以下のように定義している. 「当事者という用語における『当事』の語源は,中国の紀元前の春秋時代に使われていた,旧字体の『當 事』だとされている.それは,事に当たることを意味し,事にあたる人が,當事者ということになる. そして,當事者が,日本の法律に初めて採用されたのが,1890(明治 23)年の民事訴訟法である.そこ では,原告と被告を當事者としており,訴訟の勝敗に利害関係の無い者とを区別する意味で用いられて いた.その後,字体が『当事者』に変わり,現在に至っているのである.民事訴訟法をはじめとする民 事法において,当事者という用語は,現在も法律用語として位置づいており,当事者の対語が第三者と なる」(日本精神保健福祉学会 2018:170).  また,藤原は重症障害児の母親について,「障害をもつ,もたないという面において母親は当事者で はないが,母親役割を果たすほど,当事者である子どもと母親との心理的・物理的距離は縮まっていく. 子どもの全面的援助者であり,代弁者であるがゆえに自らの母親役割を強化せざるを得ない母親は,子 ども自身が障害の当事者であることと並び『もう一人の当事者』であると言えるのではないだろうか」 と論じている(藤原 2006:42-44).  伊藤は藤原の論考をふまえ,「本来,本人と家族は相互に影響を与えるものであるが,これまでの精 神障害者家族研究では,専ら本人を主体とし,家族が本人にどのような影響を与えているのかという一 方的な視点でとらえてきたきらいがある」と述べ,家族を当事者として捉えることの重要性を指摘して いる(伊藤 2017)  このように,家族を当事者と捉える考え方は,浸透しつつある.「日本精神障害者リハビリテーショ ン学会」は,2011 年の学会誌において,「当事者としての家族への支援:主人公としての家族」という 特集を組んでいる(白石弘巳 2011;他).その特集のまとめにおいて,栄は「家族を主人公とした支援 が同時に本人の回復へ向けた支援となり,ひいては,家族全体の福祉の向上を図ることができることを 期待する」と論じている(栄 2011). 注 3  発達障害者に関する規定としては,2004 年に成立した「発達障害者支援法」が挙げられる.ただし, 具体の施策に反映するべく,他の制度等に発達障害のことが規定されたのは,2011 年である.まず,

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2011 年の改正障害者基本法第 2 条において,以下のように規定された.「障害者 身体障害,知的障害, 精神障害(発達障害を含む.)その他の心身の機能の障害(以下,「障害」と総称する.)がある者であ つて,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの をいう」.  また,精神障害者保健福祉手帳については,精神保健福祉センターが国の定める判定基準に基づき審 査をすることになっている(厚生省 1995).その判定基準が 2011 年 3 月に改正され,新たに発達障害が 加えられた.そのことによって発達障害のある人は,暮らしの選択肢が増えることになったのである (平野 2014).  同様に,障害年金の認定基準についても,厚生労働省からの通知である「障害認定基準」が 2011 年 に改正され,発達障害が新たに設けられることになった(高橋芳樹 2013:384-399). 文献 青木聖久,他(2014)「精神障害者の就労が障害状態確認届の審査に及ぼす影響 ―実態と支援者が取り 組むべき方途―」『日本福祉大学社会福祉論集』130,pp.89-116 青木聖久(2016)「「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」に至る背景と 今後」『精神保健福祉』47(2),pp.127-130 青木聖久(2018)「精神障害者の所得保障 ―障害年金における日常生活能力と就労能力の評価基準―」 『社会保障研究』2(4),pp.455-468 青木聖久(2019)『追体験 霧晴れる時』ペンコム 伊藤千尋(2017)「精神障害者家族に対するソーシャルワーク ―統合失調症の子をもつ母親の語りに着 目して―」『精神保健福祉』48(3),pp.193-202 大谷尚(2019)『質的研究の考え方』名古屋大学出版会 厚生省(1995)『精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について』1995 年 9 月 12 日健医発第 1133 号 厚生労働省(2015a)『障害基礎年金の不支給割合(平成 22 年度~平成 24 年度平均)』 厚生労働省(2015b)『障害基礎年金の再認定の状況(平成 25 年度 精神・知的障害)』 厚生労働省(2016a)『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』 厚生労働省(2016b)『障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領』 厚生労働省(2017)『障害認定基準 平成 29 年 9 月 1 日改正』 小島寛,他(2017)「「年金権利型」と「ジャッジ型」でジレンマを抱える精神保健福祉士 ―障害年金と 就労との関係性を通して―」『精神保健福祉』48(2),pp.122-129 栄セツコ(2011)「当事者としての家族支援の方向性」『精神障害とリハビリテーション』15(2),pp.52-54 佐藤郁哉(2008)『質的データ分析法』新曜社 佐藤純(2012)「事例による家族調整・支援の検討」日本精神保健福祉士養成校協会編『精神保健福祉の 理論と相談援助の展開Ⅱ』中央法規出版 佐藤純,他(2016)「通所サービス等を利用していない精神障害者をケアする家族が経験する困難とその 対処」『京都ノートルダム女子大学研究紀要』46,pp.43-54 佐藤純(2019)「日本の精神保健福祉領域における家族支援の現状と課題」『精神保健福祉』50(2), pp.136-139 白石弘巳(2011)「精神保健福祉における家族支援の方向性」『精神障害とリハビリテーション』15(2), pp.5-11 白石弘巳(2012)「精神障害者家族とその支援」『精神保健福祉』43(1),pp.4-7 白石美佐子・中川洋子(2019)『あなたの障害年金は診断書で決まる』中央法規出版 高橋裕典,他(2018)『就労にまつわる障害年金』日本法令

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高橋芳樹(2013)「障害認定基準の改正経過」高橋芳樹編『障害年金請求援助・実践マニュアル』中央法 規出版 日本精神保健福祉学会(2018)『精神保健福祉学の重要な概念・用語の表記のあり方に関する調査研究 平 成 29 年度報告書』 平野郁子(2014)「発達障害のある人が障害者手帳をもって生きる体験 ―青年期以降に診断を受けた取 得者へのインタビューから―」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』120,pp.1-22 藤原里佐(2006)『重度障害児家族の生活』明石書店 古屋龍太(2019)「精神障害者の親への支援の現状と課題 ―現行精神保健福祉法制を変革する家族支援 アプローチの可能性―」『社会福祉研究』134,pp.41-49 松田陽子,他(2019)「精神障害者の家族が受けるソーシャルサポートと家族自身の人生に対する肯定的 な認識との関連」『精神障害とリハビリテーション』23(1),pp.56-63 横山恵子(2019)「精神障害者のきょうだいへの支援の現状と課題」『社会福祉研究』134,pp.50-56

表 1 調査協力者一覧 ID 本人の性別 本人の年齢層 家族の年齢層 本人との続柄 A 男 40 代 70 代 母 B 女 40 代 60 代 母 C 女 死亡 70 代 子 D 男 40 代 70 代 父 E 女 40 代 60 代 母 F 男 20 代 50 代 母 G 男 20 代 60 代 母 H 男 10 代 40 代 母  2.分析方法  分析方法は,データから導き出すことができる意味の解釈を探索的に分析することを考えたた め,佐藤郁哉の質的データ分析法を用いた(佐藤郁哉 2008) .具体的に

参照

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