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<原著>合理的N 因子診断にむけた原発性非小細胞肺癌転移陽性縦隔リンパ節の形態学的・組織学的および免疫組織化学的検討 利用統計を見る

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合理的 N 因子診断にむけた原発性非小細胞肺癌転移陽性縦隔

リンパ節の形態学的・組織学的および免疫組織化学的検討

高 橋   渉

山梨大学 外科学第 2 要 旨:目的:原発性非小細胞肺癌の転移陽性縦隔リンパ節を詳細に分析し,適切な病期診断,予 後評価,治療成績向上に寄与する因子を探る。 対象・方法:当院で ND2 以上の郭清術を施行し,pN2 と診断した原発性非小細胞肺癌 53 例(扁平 上皮癌 20 例,腺癌 32 例,大細胞癌 1 例)を対象とした。術前 CT 検査による N 因子陽性率を組織 型別に評価し,転移陽性 2 群リンパ節 178 個について対照群と形態学的・組織学的・免疫組織化学 的に比較・分析を行った。 結果: N 因子陽性率は扁平上皮癌で 45.0 %,腺癌で 24.2 %と低値であった。縦隔リンパ節の短径 にのみ,転移陽性群と陰性群に有意差がなかった。転移陽性リンパ節での B cell の増殖性と follic-ular hyperplasia は有意にみられ転移陽性を示唆する所見として有用である。sinus histiocytosis は癌 細胞の曝露をうけた可能性のあるリンパ節として診断に役立つ。 まとめ:現状の短径を基準とした CT 診断には限界がある。しかし縦隔リンパ節の免疫組織化学的 反応の応用により,正確な予後評価ができ,集学的治療に生かされ,長期予後や治療成績の向上に つながる可能性がある。 キーワード pN2 非小細胞肺癌,CT 診断,N 因子,系統的リンパ節郭清,予後評価 はじめに 悪性腫瘍の中でも肺癌による死亡は,1994 年に胃癌による死亡数を越えて日本における癌 死因の第 1 位になり,その後も増加傾向にある 最重要課題の疾患であるが,唯一の根治療法で ある手術の対象となるものは 25 ∼ 30 %にすぎ ない1)。また根治術を施行し得た症例での再発 率も高く,各種治療に抵抗性である。当院で開 院以来治療を行ってきた原発性肺癌手術症例 は,2007 年末まで 483 例であるが,十分な追 跡調査のもとに再評価を繰り返し,治療成績の 向上をめざしてきた。この中で最も手術療法の 質を反映すると考えられている組織学的 2 群リ ンパ節転移陽性(pN2)症例は 53 例あり,3 年 生存率 46.8 %,5 年生存率 33.4 %であった2) この群は従来より予後不良とされており3,4) 我々の結果はこれらに比し良好であるが,決し て満足のいくものではない。その理由として, 生物学的悪性度の高い肺癌の特性に加え,術前 stage と術後 stage の乖離がしばしばみられるこ とが挙げられる。殊に N 因子は治療法を決定 し,予後を反映する重要な因子である。その診 断に日常臨床で最も用いられている CT 検査 は,発展途上の段階では短径 15 mm 以上のリ ンパ節腫大を転移陽性とした5–10)が,解像度の 向上した現在でも短径 10 mm 以上のリンパ節 腫大を転移陽性11–15)とする size criteria の診断 であり,根本的に限界がある検査法である16–18) 〒 409-3898 山梨県中央市下河東 1110 番地 受付: 2008 年 10 月 16 日 受理: 2008 年 11 月 26 日

原  著

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一方侵襲的検査である縦隔鏡によるリンパ節生 検では,著しく高い診断率も報告されている 19–22)が,特に 2 群リンパ節転移には,肉眼的に 認識できない微小転移も含まれ,詳細な組織所 見ではじめて判明する症例が多いのも事実であ る。そこで本研究では,自験例の診断・治療成 績を振り返り,転移陽性リンパ節を形態学的・ 組織学的および免疫組織化学的に評価すること により,治療に反映し予後評価に用い得る条件 を見いだすこととする。 対  象 1983 年 10 月から 2002 年 12 月までに当院で ND2 以上の郭清術を施行し,pN2 と診断した 原発性非小細胞肺癌 53 例を対象とした。 年齢は 48 ∼ 79 歳(平均 65.1 ± 7.7 歳)で, 男性 32 例,女性 21 例である。組織型は扁平上 皮癌 20 例,腺癌 32 例,大細胞癌 1 例で,今回 の分析では,大細胞癌を腺癌に含めて行った。 なおリンパ節の番号(station),TNM ・ stage 分類は日本肺癌学会の肺癌取扱い規約 2003 年 改訂第 6 版23)に準じているが,根治度につい ては同規約 1995 年第 4 版24)に従った。 pN2 非小細胞肺癌の T 因子別背景因子を表 1 に示す。pN2 非小細胞肺癌 53 例全体の 3 年生 存率は 46.8 %,5 年生存率は 33.4 %であった。 T 因 子 別 の 5 年 生 存 率 は , T1 50.0 % , T2 26.0 %,T3 11.1 %であり,有意差は認めなか った。発生葉による 5 年生存率は,右上葉で 27.3 %,右下葉で 26.7 %,左上葉で 40.8 %, 左下葉で 20.0 %であり,いずれの間にも有意 差は認められなかった。右中葉は 1 症例のため 検定からは除外した。 pN2 非小細胞肺癌 53 例中 30 例は癌死,その 他の 23 例中 18 例は健在で,4 例は他病死,1 例は追跡不能である。癌死した 30 例の発生葉 と手術時縦隔(2 群)リンパ節転移分布を表 2–1 に示す。これら 30 例中 6 例に対側縦隔再発 (N3α),6 例に鎖骨上窩再発(N3γ)を認めた。 対側縦隔,鎖骨上窩の双方に再発した症例が 3 例あり,合計 9 症例に 3 群リンパ節での再発を 認めたことになる。この 9 症例中,同時に遠隔 転移を合併したものは 7 例,3 群リンパ節のみ に再発したものは 2 例であった。これら 9 例を 発生葉別に表 2–2 に示す。郭清側縦隔に再発を 認めた症例はなかった。3 群リンパ節のみに再 発した 2 例中 1 例(左上葉原発,#2,5 転移) は上大静脈症候群で,1 例(右下葉原発,#1, 2,3,4 転移)は気管狭窄により致死的となっ 表 1. pN2 非小細胞肺癌の T 因子別背景因子

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た。残る 28 例は主に遠隔転移から死にいたっ ており,3 群リンパ節再発を生じても,遠隔転 移には先行しておらず,そのほとんどが同時多 発の形式であった。 当院では,cN 因子に対し,現在 CT 検査上 の短径・形状に,201Tl シンチグラムの集積を 加味して,内科・放射線科・外科で合議の上, 短径 10 mm 以上を転移陽性としている。CT 上 の短径を最優先し,201Tl 集積単独では有意所 見としなかった。また,扁平上皮癌の cN2 以 上および腺癌の cT2 あるいは N1 以上には前斜 角筋リンパ節生検(SNB)25,26)を行い,病期を 決定し,原則としてⅢ A 期までを手術対象と している。また縦隔郭清は,右側では ND2b を, 左側では ND2a を標準とするが,超音波吸引メ ス(CUSA)を用い,周囲脂肪織にまで,より 鋭的な郭清・吸引4,27)を心がけている。 こうして得られた総郭清リンパ節 1077 個中, 2 群の転移陽性リンパ節 178 個を分析の対象と した。転移形式は,1 群リンパ節転移陽性の連 続群および陰性のスキップ群が,扁平上皮癌 (連続 15 例,スキップ 5 例),腺癌(同 22 例, 10 例)で構成され,大細胞癌はスキップ群の みであった。 比較対照群は,同様の 53 症例の手術で得ら れた転移陰性 2 群リンパ節 207 個とし,悪性腫 瘍と重症感染症以外の剖検例から得られた縦隔 リンパ節 129 個をコントロールとして用いた。 方  法 これらを対象に術前 CT による N 因子陽性率 と術中・術後の肉眼所見による認識率を算出し た。リンパ節は最大割面での HE 標本で,スラ イドグラスからスキャン後 NIH Image28)にて トレースし,長径,短径,断面積,節内の転移 巣占拠率を計測した。 免疫組織化学的には,樹状細胞(Dendritic cell: D cell)の出現と B cell および T cell の増 殖性を評価した。D cell 出現は,ホルマリン固 定パラフィン包埋リンパ節から切片を作製し, DAKO 社製ウサギ抗ウシ S100 抗体にて染色, HE 標本をコントロールとして,生理的に存在 す る D cell を 上 回 っ て 出 現 し た 指 標 と な る S100 蛋白陽性細胞数29–33)を,Furukawa ら29) に準じ,ほとんど認めないものを None,一視野 に 20 細胞以下で Slight, 20 細胞以上を Marked と表現し(図 1),分布は伊藤ら34)に従い胚中 心・ T 細胞領域・腫瘍巣内各々で計測した。 同様にパラフィン包埋リンパ節から作成した切 片 を , 汎 B 細 胞 表 面 マ ー カ ー に 用 い ら れ る CD19,CD20 等から,DAKO 社製 L26(CD20) マウス抗ヒト抗体で B cell を,汎 T 細胞表面マ ー カ ー に 用 い ら れ る C D 3 , C D 4 5 等 か ら , UCHL-1(CD45RO)マウス抗ヒト抗体で T cell を染色し,その染色性により,ほとんど増 殖を認めないものを None,軽度増殖を示すもの を Slight,中等から高度に増殖を示すものを Marked として増殖性の grading を行った。さ らに B cell 全体での反応性には Follicular Hy-perplasia(FH)で,同じく T cell には Paracor-tical Hyperplasia(PH)で,組織球には Sinus 表 2–1. 癌死に至った 30 例の発生葉と手術時縦隔リ

ンパ節転移分布

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Histiocytosis(SH)で判定した。判定基準は, SH は Black ら35)の criteria に準じ 5 段階に, FH と PH については山口の基準25)により,反 応なしを 0,軽度を 1,中等度を 2,高度を 3 と し,4 段階に分けて判定した。なお,転移巣に そのほとんどを占拠されたもの(概ね 60 %以 上)と高度炭粉沈着例は除外した(表 3–1)。 統計処理 各リンパ節群間の統計学的検討は,2 群間の 比較には Mann-Whitney の U 検定,3 群間の比 較には Kruskal-Wallis の検定,Bonferroni/ Dunn 検定を使用し,p < 0.05 を有意差ありと した。相関関係の検定には Spearman 順位相関 係数の検定を用い,p < 0.05 を相関ありとした。 数値は平均値±標準偏差で記した。なお患者背 景における遠隔成績は Kaplan-Meier 法により 算出し,他病死は癌死と同様に死亡例として扱 い,Logrank test で検定を行った。 結  果 1)N 因子陽性率 術前 CT 検査による N 因子陽性率を組織型別 にみると(表 3–2),扁平上皮癌では 45.0 %, 腺癌では 24.2 %と低値を示した。一方,転移 陽性リンパ節 178 個中術中所見ならびに標本整 理時に pN2 を予想し得たのは 88 個で,転移認 識率は 49.4 %であった。T 因子別の N 因子陽 性率は,T1 症例で 27.8 %,T2 症例で 28.0 %, T3 症例で 56.0 %と T 因子の進行により陽性率 図 1. S100 protein-positive cells の判定 リンパ節内の S100 蛋白陽性細胞数を D cell 出現の指標とした。一視野に 20 細胞以下を Slight で,20 細 胞以上を Marked と表現した。

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は高まるが,有意差はみられなかった。 2)リンパ節の形態学的・組織学的分析 転移陽性 2 群リンパ節 178 個,転移陰性 2 群 リンパ節 207 個の HE 標本最大割面にて行っ た。転移巣占拠率は,転移陽性 2 群リンパ節を 組織型別・転移形式別に分類し,比較検討した。 ①長径 転移陽性 2 群リンパ節では,最大値 3.15 cm, 最小値 0.16 cm,平均 0.95 ± 0.56 cm で,転移 陰性 2 群リンパ節では,最大値 2.03 cm,最小 値 0.10 cm,平均 0.68 ± 0.32 cm であった。両群 の分布を図 2–1 に示す。両群間には有意差を認 めた。 ②短径 転移陽性 2 群リンパ節では,最大値 1.53 cm, 最小値 0.11 cm,平均 0.45 ± 0.27 cm で,転移 陰性 2 群リンパ節では,最大値 0.97 cm,最小 値 0.06 cm,平均 0.39 ± 0.20 cm であった。両 群の分布を図 2–2 に示す。両群間に有意差を認 めなかった。なお 1.00 cm 以上は全て転移陽性 例であった。 ③断面積 転移陽性 2 群リンパ節では,最大値 3.76 cm2 最小値 0.02 cm2,平均 0.48 ± 0.61 cm2で,転移 陰性 2 群リンパ節では,最大値 1.19 cm2,最小 値 0.01 cm2,平均 0.20 ± 0.16 cm2であった。両 群の分布を図 2–3 に示す。両群間には有意差を 認めた。 ④転移巣占拠率 組織型別・転移形式別の転移巣占拠率を表 4–1 に示す。 扁平上皮癌では,最大 93.7 %,最小 1.90 %, 平均 52.3 ± 26.0 %,腺癌では,最大 100 %, 最小 1.37 %,平均 59.0 ± 26.8 %で,両群間に 有意差を認めなかった。なお扁平上皮癌では 24.0 %,腺癌では 45.3 %が占拠率 50 %以下で あった。転移形式でみると,連続群では,最大 100 %,最小 1.37 %,平均 57.1 ± 25.7 %,ス キップ群では,最大 88.7 %,最小 1.90 %,平 表 3–1. D cell とリンパ節の免疫反応と Grading 表 3–2. 組織型別 N 因子術前 CT 陽性率

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図 2–2. リンパ節短径の分布

図 2–3. リンパ節断面積の分布

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均 42.8 ± 25.4 %で,両群間には有意差を認め た。なお,組織型と転移形式の組み合わせによ る 4 群の比較では,各群間に有意差を認めなか った。 3)リンパ節の免疫組織化学的分析 ① D cell の出現 D cell の出現を表 4–2 に示す。D cell の出現 により,個々のリンパ節での免疫組織化学的反 応が判定されうるが,予後への関与を検討する ため各症例毎に分析した。D cell の出現は,53 例の転移陽性 2 群リンパ節中,7 症例 13.2 %に 認められた。Marked は 1 例で,T 領域・腫瘍 巣内双方に増殖を認めた。Slight の 6 例は腫瘍 巣内で増殖がみられ,1 例のみ胚中心にも同時 に認められた。これら 7 症例はすべて遠隔転移 で再発し,全例 5 年以内に死亡していた。転移 陰性 2 群リンパ節およびコントロール群リンパ 節での出現は Marked と Slight あわせてそれぞ れ 15 %,25 %に認められたが,リンパ節内局 在も含め転移陽性群との有意差を認めなかった。 ② D cell の出現と B ・ T cell の増殖性 D cell の出現を認めた 7 症例での,B cell 染 色(L26)と T cell 染色(UCHL-1)による増 殖性を図 3–1 に示す。胚中心に D cell を認めた 1 例と D cell の出現が Marked の 1 例では,B cell と T cell 双 方 の 増 殖 を 認 め て い る が , D cell の出現と B cell および T cell の増殖性には

表 4–1. 組織型・転移形式別の転移巣占拠率

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相関はみられなかった。 53 症例すべてにおける転移陽性 2 群リンパ 節での増殖性を図 3–2 に示す。転移陽性リンパ 節では,B cell の増殖の方が T cell の増殖より も有意に認められた。 ③各群での FH ・ PH ・ SH 各群のリンパ節中,癌転移巣占拠率が概ね 60 %を超えたものや,炭粉沈着や石灰化の高 度例を除外し,転移陽性 2 群リンパ節 37 個 (SH のみ 24 個),転移陰性 2 群リンパ節 178 個, コントロール群リンパ節 132 個の FH, PH, SH の反応性の分析を行った。各群の分布を図 4 に 示す。FH は転移陽性群で,転移陰性群および 図 3–1. D cell 出現の 7 症例における B,T cell の増殖性 D cell の出現した転移陽性 2 群リンパ節に対し,B cell を L26 抗体で染色,T cell を UCHL-1 抗体で染色し,その染色性により増殖性の grading を行った。D cell の出現と B cell および T cell の増殖性に相関はみられなかった。

図 3–2. 53 症例の転移陽性リンパ節での B, T cell の増殖性

53 症例の転移陽性 2 群リンパ節に対し,同様の方法にて B cell と T cell の増殖 性の grading を行った。同リンパ節では,B cell の増殖が T cell の増殖より有意 (p = 0.0075)に認められた。

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コントロール群に比し,有意差をもって認めら れ,B cell の増殖と相関があった(p = 0.0032)。 PH は転移陽性群で,転移陰性群に比し有意に 認められたが,コントロール群と有意差なく, 転移陽性群に特異的な反応とは認められなかっ た。SH は転移陽性群,転移陰性群いずれにも コントロール群と有意差をもって認められた。 考  察 1)縦隔リンパ節転移の形態と再発形式からみ た術前 N 因子診断への応用 縦隔リンパ節転移の診断には,胸部 CT 検査 で,短径 10 mm 以上のリンパ節を転移陽性と してきた。しかし,著者らの pN2 症例では, 特に腺癌において sensitivity が 24.2 %と低い。 術中所見ならびに標本整理時にも pN2 を予想 しうる転移認識は,転移陽性リンパ節 178 個中 88 個(49.4 %)にみられるのみである。この ように N 因子診断を困難にしている理由とし て,今回の検討から,転移の有無による短径の 有意差が認められないことがあげられる。さら に リ ン パ 節 内 の 転 移 巣 占 拠 率 に お い て も , 50 %に満たないリンパ節が扁平上皮癌では 24 %,腺癌では 45.3 %であるなど,リンパ節 転移は必ずしもリンパ節腫大という形態をとら ないことが裏付けられた。縦隔リンパ節の size については,胸部 CT 検査と剖検体の対比によ り,短径 10 mm が正常上限36,37)とされており, 今回の検討でも 10 mm 以上例に陰性例はなか 図 4. 各リンパ節群での免疫組織化学的反応分布 転移陽性 2 群リンパ節 37 個(SH のみ 24 個),転移陰性 2 群リンパ節 178 個,コントロール群リンパ節 132 個について FH,PH,SH の反応性を grading し分析を行った。各群間の有意差を P vs.N,P vs.C,N vs.C と して示す。

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ったが,短径 10 mm とする size criteria をさら に厳密(小さく)にすれば,false positive が増 すこととなり38),根治がのぞめる症例に対し て手術適応を狭める可能性が生じうる。これら のジレンマは,Gross ら39)により腫大のないリ ンパ節転移の報告としてなされており,CT 診 断の限界を示している。このことから診断率の 向上にむけて,再び縦隔鏡などの侵襲的検査の 併用21,22,40)が容認される傾向にある。縦隔鏡検 査により 100 %の特異度(specificity)を得ら れる19–22)との報告もあるが,前述のリンパ節 転移形態を考慮すると,術前に縦隔鏡や胸腔鏡 検査を施行しても,リンパ節郭清と同等のサン プリングまで行わなければ,潜在的 pN2 は判 明しない2,41,42)ものと考える。当科の pN2 症例 には,cN0,1 が 36 例と 68 %を占めるが,これ は同時期の cN0,1 全症例の 21 %であり,cN0,1 症例すべてに縦隔鏡を施行すると,Suzuki ら18) と同様に約 80 %の症例に,不要な,しかも高 侵襲の検査を行うことになる。また一方で長径 を基準とする方法もあるが,転移以外の 2 次的 な要因で,15 mm 以上でも sensitivity が 44 % にとどまる38)など現実的ではない。空間分解 能に優れた PET-CT にも期待を寄せたが,その 貢 献 度 も 限 定 的4 3 )で あ る 。 従 っ て , 短 径 10 mm の size criteria には問題があるが,今後 もスクリーニングとしての臨床診断には用いざ るを得ないというのが現状であろう。 ところで著者は,今回標準術式である ND2 郭清を施行して,pN2 と判明した症例から検 討しているが,3 群リンパ節を軽視しているわ けではない。特に N3γ は,診断・治療いずれ にも重視しており,術前の SNB を前述の基準 で行い,転移陽性例は手術適応から除外してい る。小池ら26)は対象群の 20.5 %に転移陽性例 を含み,これらは非切除例と予後に差を認めな かったと報告している。当科の pN2 症例の再 発形式からみると,系統的リンパ節郭清に加え て著者らが行ってきた CUSA を用いた周囲脂 肪織までへの広範囲吸引がなされた縦隔には再 発を生じておらず,播種を招いたと思われる症 例もなかった。遠隔転移を伴わず,対側縦隔単 独 再 発 の 1 例 で は , 気 管 狭 窄 に よ り 著 し く QOL が低下し致死的となったが,他の症例が 3 群リンパ節に再発した際には,そのほとんど で遠隔転移を伴っており,SNB 陽性非手術例 の癌進展も同様の傾向であった。以上の結果か ら,3 群リンパ節,ことに N3γ は,もはや肺の 所属リンパ節としては存在しえず,遠隔転移の 1 経路にすぎないと考えるべきである。著者ら は SNB の概念を,すでに潜在的に全身疾患化 した進行癌を診断する一手段と認識しており, 局所麻酔下に低侵襲で行え,独立した因子であ る N 因子と M 因子の橋渡しになる可能性を有 した,縦隔鏡や胸腔鏡検査に勝るとも劣らない 術前検査であると考える。 2)D cell の出現と免疫組織化学的反応について 癌組織におけるリンパ球浸潤や所属リンパ節 の洞組織球症の程度が,術後生存率と相関する ことが Black ら44)により報告されてから,原 発性肺癌では白日45),Watanabe ら46),山口25) により詳細な分析がなされてきた。さらにリン パ球浸潤が,主に T cell によって構成され,細 胞性免疫反応の形態的表現である47)と考えら れたため,T cell に対し,これを活性化し免疫 応答を誘導する抗原提示細胞である D cell が脚 光を浴び,免疫療法にも応用されている。D cell はその形態から,Langerhans cell, T-zone histiocyte などの呼称を経てきたが,Takahashi ら48),Nakajima ら49)により S100 蛋白染色で 陽性となることが明らかにされ,現在では部位 別の表現型から機能にまでさまざまな解析が進 み,新たな亜群の発見が相次いでいる34)。リ ンパ節内においても,胚中心と T cell 領域に分 布する D cell の機能は異なるとされ34,50),胚中 心の D cell は他部位の D cell に比較して CD40 刺激と IL-2 存在下に B cell の活性化を促進する と示されている50,51)。いずれも強力な T cell 刺 激活性能を有することでは共通である。原発性 肺癌では,原発巣において S100 陽性 D cell は 77.5 %に出現し,著明な症例ほど予後が良好29) で,胃癌30),大腸癌31),食道癌32),甲状腺濾

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胞癌33)でも同様に良好とされる。しかし所属 リンパ節の反応と予後については,明確な結論 が得られていない29,52,53) D cell の出現は,当科の原発性肺癌 53 症例 の転移陽性 2 群リンパ節中,7 例 13.2 %に見ら れている。この 7 症例いずれにも術前化学療法 や免疫療法は行われておらず,全例治療から 5 年以内に死亡している。しかし D cell 出現の頻 度は,転移陰性 2 群リンパ節とコントロール群 と有意差を認めず,予後との関連は見いだせな かった。 一方リンパ節内分布でみると,胚中心に存在 した 1 例で,B cell の増殖も認め,さらには転 移巣占拠率がわずか 10.3 %にとどまっている。 これは転移リンパ節内において,胚中心内 D cell の出現と B cell の増殖が,転移を阻止する 方向に働いたとも推察される。また転移陰性 2 群リンパ節とコントロール群には,胚中心に D cell の出現をみたものはなく,転移前から生理 的な防御機構が働いていると考えるより,癌転 移により 2 次的に生じた免疫反応と考察する方 が自然である。従来から B cell の反応は,腫瘍 の大きさや,腫瘍からの近さに比例して,言い 換えれば腫瘍からの抗原曝露量に比例して生じ ると報告されてきた53)。本研究結果とあわせ ると,所属リンパ節において,T cell は能動的 に,B cell は受動的に腫瘍免疫に関与し,D cell はいずれの cell にも活性能を有する可能性 が高い。従ってこの現象が生検リンパ節にみら れた際には,たとえ転移巣が採取されずとも, 近傍に転移巣の存在を示唆する所見として有用 と思われる。 3)転移の有無によるリンパ節の免疫組織化学 的反応について リンパ節の免疫反応の形態的表現として, FH, PH, SH はそれぞれ B cell 系,T cell 系,組 織球系の反応であると考えられている。SH は, 高度な反応を示した例で良好な予後が得られた との報告が多い25,35,54)が,FH と PH について は一定の結論に達していない25)。しかし SH に おいては,肺癌の所属リンパ節には多少とも炭 粉沈着が見られ,形態学的に免疫応答に関わる 組織球増生の程度の判定が困難であり,研究か ら除外されることも多い25,53)。著者もできるだ け多くの転移陽性 2 群リンパ節から検討を試み たが,結局 178 個中 24 個のみが評価の対象と なるにとどまった。 評価にあたって,FH は B cell の細胞数や染 色性の強さのみでは評価せず,胚中心の増生に 注目した。これは,胚中心でも硝子化を伴う非 活動性の胚中心も存在する53,55)ためである。 PH も同様で,傍皮質領域の拡大がみられるか 否かは評価において重要53)と思われる。 FH, PH, SH を一括して分析してみると,前 述の胚中心に D cell の出現をみた 1 症例では, B cell の増殖に伴い,FH Grade3,PH Grade2, SH Grade2 で,転移巣占拠率も低かったが,B cell 増殖が Marked であっても,FH としては Grade1,PH Grade0,SH Grade0,転移巣占拠 率が 60 %をしめている症例もあるなど,単に B cell の増殖のみが転移阻止に働くものではな いと考えられる。従って FH と PH と SH が相 互に関与していることは推測されても,生検リ ンパ節の客観的評価には,個々の因子毎に分析 した方が良いものと思われる。 原発性肺癌では,リンパ経路が詳細に解析さ れ56,57),他臓器と比較しリンパ流と所属リンパ 節の関連が単純であるため,リンパ節での反応 も明瞭に表れる傾向にある53)が,スキップ転移 が pN2 症例の 30 %と比較的高率にみられる58) 所属リンパ節は,癌細胞の曝露を受けても,必 ずしも転移巣を形成せず,転移巣占拠率の低い リンパ節と,転移陰性リンパ節は同様の免疫反 応である可能性さえ考えられる。特に SH は転 移の有無に関わらず肺癌患者の縦隔リンパ節で 有意に認められるため,転移巣を形成せずとも 癌細胞の曝露を受けるなどして反応が惹起され た可能性のある,注意すべき所見である。いず れにせよ,所属リンパ節はリンパ流路の通過点 にすぎないため,D cell の出現をはじめ,FH, PH, SH などの形態学的な免疫反応は,遠隔転 移を予想し得ても,反応の有無のみで生命予後

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を論じるのには無理がある。しかし転移陽性リ ンパ節の非腫瘍部や転移陰性リンパ節から得ら れた免疫組織化学的反応の所見も加味すると, 正診率向上に寄与し得るものと期待する。 4)N 因子診断と治療成績 原発性肺癌の手術療法は,他臓器の悪性腫瘍 に増して遠隔転移での再発が多いため,繰り返 して行われることは少ない。再発形式の分析で も,郭清側縦隔のリンパ節腫大を来した症例は なかったが,縦隔郭清を全く行わなかった縮小 手術の自然経過で,縦隔リンパ節腫大のみで再 発してくる症例も少ない。Yano ら59)は 231 例 の pN0,pN2 症例を追跡調査し,いずれの再 発症例も 70 %以上は遠隔転移再発であり,有 意差を認めなかったとしている。従って郭清リ ンパ節のうち転移巣占拠率の低いものは,その 自然予後で腫大を来してこない可能性も十分考 えられる。 著者らの pN2 原発性肺癌手術症例の生存率 が良好である最大の理由は,おそらく確実な pN2 診断がなされていることであろう。3 群郭 清を主体とした拡大郭清術を行うことにより, 良好な成績も報告されている60–62)が,当科の 成績は全く遜色ないものである。今回開院以来 の症例での縦隔リンパ節の分析で,転移巣占拠 率が低く,時には周囲リンパ管かと思われるわ ずかの部位に腫瘍細胞を認めたものも数多く見 られ,非常に厳密な診断がなされていることが 判明した。この「質」の高さにより,早期癌は 早期癌として,進行癌は進行癌として,決して 潜在的にならずあるがままに診断,治療された ことが,予想外の再発が少ないなど,良好な生 存率につながったと思われる。 5)外科治療成績向上にむけての N 因子診断の 重要性 原 発 性 肺 癌 根 治 術 に お い て , 1 9 6 0 年 に Cahan63)が肺葉切除に 2 群までのリンパ節郭清 を 加 え た radical lobectomy を 報 告 し て 以 来 , この術式が現在もなお標準術式として用いられ ている。拡大手術により手術成績の向上が望め るかは,前述の如く再発形式からも期待できな い。1995 年に Noguchi ら64)が,小型の肺腺癌 を,組織構築から合理的に分類し,その分類が 予後と極めて良く相関することを発表して以 来,縮小手術については,video assisted tho-racic surgery(VATS)65,66)として普及しつつあ る。肺切除量・切開創・リンパ節郭清の 3 点の 縮小がのぞめるために,CT 検診による早期例 の増加とともに普及したのも当然と言えよう。 従来より術後の肺機能温存のため,肺葉切除を 回避すべき症例には少なからず遭遇し,切除範 囲の軽減を行ったにもかかわらず肺葉切除と同 等の成績が得られることがある67)。また最近 では,Ⅰ A 期非小細胞肺癌の定位放射線治療 により,根治術と遜色ない結果68–70)も得られ ている。 しかし原発性肺癌の治療成績は今なお不良 で,Ⅰ期手術症例の 5 年生存率71)で比較する と,胃癌・大腸癌にくらべて 10~15 %劣ってい る72)にもかかわらず,縮小手術に対して皮肉 にも最もコンセンサスが得られているのは何故 だろうか? VATS による縮小手術は進行癌の排 除された cT1N0M0 症例に対してなされている ので,これらの症例の予後が有意に優れている のであれば理解はできる。しかし従来法のそれ と同等73–75)であるということは,肺葉切除な いしは縦隔リンパ節郭清の意義を暗示している76) ともいえる。従って VATS は治療成績から導か れたコンセンサスではなく,光学機器の発達と 早期例の増加による必然的な結果と考えられ る。それゆえ,改めて治療成績向上にむけての 考察が必要となる。 癌病巣の切除範囲についての縮小とリンパ節 郭清範囲についての縮小の両者については,そ れぞれ個別に論じられるべき77)であろう。リ ンパ節に関しては,郭清操作により致命的な合 併症を生じたり,その後の免疫学上大きなデメ リットを被ることはない25,77)ようである。唯 一の根治療法とされる外科治療は局所制御にす ぎず,肺癌の大多数の治療は,今後も集学的に 行われていかなければならない。外科治療にの ぞめた症例での縦隔リンパ節郭清は,縦隔リン

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パ節に対する免疫組織化学的反応の応用によ り,局所転移の存在のみならず遠隔転移のリン パ流路となったか否かも判定される。これらの 評価が,集学的治療に生かされ,結果的に治療 成績の向上につながると期待できるため,欠か すことのできない合理的かつ最終的な N 因子 診断法として行われるべきであると考えている。 結  論 原発性非小細胞肺癌の予後と,術前 N 因子 診断向上にむけて,縦隔リンパ節を形態学的・ 組織学的および免疫組織化学的に分析し,以下 の結論を得た。 1)size criteria 短径 10 mm 以上を転移陽性と する術前 CT 検査による N 因子診断では,扁平 上 皮 癌 の 陽 性 率 は 45.0 %,腺癌においては 24.2 %と低く,さらに術中および切除標本整理 時の肉眼所見でも 49.4 %にとどまる。 2)郭清リンパ節を分析すると,転移陽性 2 群リンパ節と転移陰性 2 群リンパ節の,長径と 断面積には有意差があるが,短径には有意差が なく,胸部 CT 検査上の短径を基準とする N 因 子診断には限界がある。 3)診断に供されるリンパ節において,転移 巣占拠率の低い潜在的転移などの検出には,B cell の増殖と FH は転移陽性を示唆する所見と して,また SH は癌細胞の曝露を受けた可能性 のあるリンパ節として診断に役立つ。またリン パ節内に,胚中心内 D cell の出現と B cell の増 殖があった場合,さらに有力な陽性所見として とらえるべきである。 謝  辞 稿を終えるに当たり,直接本研究のご指導を 賜りました人体病理学加藤良平教授,第 2 外科 吉井新平助教授(2002 年当時)・鈴木章司講師, 御校閲いただいた第 2 外科多田祐輔教授(2002 年当時)・松本雅彦教授,標本をご提供いただ いた順天堂大学病理学教室須田耕一教授に深甚 なる謝意を表します。 参考文献 1) 坂 英雄,下方 薫:肺非小細胞癌の化学療法. 医学のあゆみ 180(5): 278–282,1997. 2) 高橋 渉,奥脇英人,吉井新平,多田祐輔:自 験例からみた pN2 肺癌手術成績向上にむけての 考察.胸部外科 52 : 906–910,1999. 3) Martini N, Flehinger BJ, Zaman MB,Beattie EJ:

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Morphological Histological and Immunohistochemical Study of the Metastatic Mediastinal Lymph Nodes to Determine the Prognostic Significance of N2 Disease in Primary Non-Small Cell Lung Cancer

Wataru TAKAHASHI

Department of Second Surgery, School of Medicine, University of Yamanashi

Abstract: I reviewed 53 patients with non-small cell lung cancer (NSCLC), 20 squamous cell, 32 adeno and 1 large cell carcinoma, surgically treated and pathologically diagnosed as pN2. The accuracy of the conventional preopera-tive staging, based on the short axis diameter of lymph nodes measured by computed tomography (CT), was evaluat-ed. Then I performed immunohistochemical studies, which consisted of the studies on dendritic cell appearance, B cell proliferation and follicular hyperplasia (FH), T cell proliferation and paracortical hyperplasia and macrophage sinus histiocytosis (SH), on 178 mediastinal nodes with metastasis. The results were compared with 207 nodes without metastasis and also 129 benign nodes obtained by autopsy after non-cancer death.

The sensitivities of the lymph metastasis by CT in squamous cell and adeno carcinoma were only 45.0 and 24.2%, respectively. B cell proliferation and FH were statistically commonly observed in the nodes with metastasis that could be considered as a positive sign in detecting micro-metastasis. SH was observed in NSCLC lymph nodes with or with-out metastasis, that would be useful to detect the nodes previously exposed to cancer cells.

In conclusion, the limitation of the conventional preoperative staging was demonstrated. The immunohistochemi-cal approach as well as histologiimmunohistochemi-cal study should be conducted to manage the postoperative patients with NSCLC properly.

Key words: pN2 non-small cell lung cancer, computed tomographic diagnosis, N factor, systematic lymph node dis-section, prognostic evaluation

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