3DCTにて描出された
気管支カルチノイドの一例
山梨医科大学第2内科 成宮賢行 池田フミ 西川圭一 小沢克良 田村康二 同 第2外科 桜井裕幸 鈴木章司 橋本良一 富士吉田市立病院循環器科 鈴木哲男 はじめに 3DCT画像は通常のthin−slice CT画像を三次元立体構築した画像であ り、水平面断画像のみの従来のCT画像に比べ、病巣部の立体的把握・ 解剖学的位置関係の把握が容易であり、質的診断も向上する。今回我々は3DCTにて描出された所見が、手術標本の肉眼所見とほぼ同様であ
った気管支カルチノイドの一例を経験したので報告する。症例
患者:71歳、男性、元大工 主訴:胸部異常陰影精査目的 家族歴:特記すべきことなし既往歴:昭和59年 心筋梗塞
昭和62年脳梗塞
平成 5年 左室内血栓(ワーファリン内服中) 生活歴:機会飲酒、喫煙歴(一) 現病歴:陳旧性心筋梗塞にて近医通院中、平成6年8月の定期検査で の胸部レントゲンで右下肺野に異常陰影を指摘され、精査目的にて当科 紹介となった。自覚症状は認めなかった。 入院時現症:身長160cm、体重49kg、血圧142/80mmHg、脈拍64bpm整。 表在リンパ節触知せず。貧血・黄疸なし。胸部聴診上、心雑音・ラ音な し。 入院時検査成績(表1):異常なし。 胸部単純X線写真(図1):右下肺野に不鮮明なdensityの増強を認めた。 胸部CT像(図2):右肺S9に境界明瞭な径1.5×2.Ocmの円形の腫瘤 像を認め、それより末梢にほぼwater densityの陰影を認めた。縦隔リンパ 一29一節の腫大は認めなかった。 気管支鏡像(図3):B9+10入口部に表面平滑で、光沢のある、気管 支をほぼ閉塞するポリープを認めた。同部よりの生検にてカルチノイド の診断を得た。
3DCT画像(図4):通常のCTでは得にくい体軸方向に走行する
肺血管の連続的なつながりが描出され、A9とAloとの間の気管支に腫瘤 像を認めた。また気管支鏡ではポリー・・・…プより末梢の気管支の情報は得られなかったが、3DCTではB9の気管支は拡張し内腔にはほぼwater
densityの貯留物を認めた。 B loの気管支には貯留物は認めなかった。ま た腫瘤の辺縁は明瞭であり、周囲組織への浸潤はないものと思われた。 カルチノイドはlow malignancyな腫瘍であるが、肺癌に準じて右肺下 葉切除術および縦隔リンパ節郭清術を行なった。 摘出標本の肉眼所見(図5):B9+10に径27×20×13mmの灰白色充実 性の腫瘤を認めた。腫瘤の境界は明瞭で気管支内腔に突出し、内腔をほ ぼ閉塞していた。また末梢の気管支は拡張し、内腔に粘液様の物質を貯留していた。3DCTとほぼ同様の所見であった。
病理組織学的所見:腫瘍は気管支粘膜内に発育し気管支壁外や肺実質 内への浸潤は認めなかった。HE染色では穎粒状の胞体を持つ細胞が充 実性に増殖し、その核は円形で強い異型性は認めなかった(図6)。 Grimerius染色では多数の腫瘍細胞の胞体に黒褐色の陽性像が認められ好 銀性を示し、免疫染色ではchromogranin Aが陽性像を示し、組織学的に カルチノイドと診断された。 考察 最近一回の呼吸停止下にCT寝台をある一定の速さで動かしながらC Tの連続撮影が可能なherical scan法が利用されるようになった。これに より得られたmin sliceCT画像を画像処理することにより三次元立体構 築することが可能となり、水平面断画像のみの従来のCT画像に比べ 病巣部の立体的把握・解剖学的位置関係の把握が容易となった。 3DCTの利点として安藤らは、 (1)体軸方向に走行する血管の連 続的つながりを表示できる。 (2)任意の角度からの画像の再構成が可 能。 (3)画像処理により、血管系のみ、気管支系のみの表示をするこ腔像を得ることができるため、気道病変を客観的に評価したり、気道の 狭窄がある場合の程度や病変末梢の気道を観察することが可能であるこ となどをあげている。
3DCTの問題点として安藤らは、得られる再構成画像は立体表示を
行なうため一部の画像情報が犠牲にされた人工的な疑似画像であり、病 巣表面の性状、関与する気管支や血管などの所見の読影には注意が必要 であると述べている。また山田らは、描出されている肺血管などの辺縁にいわゆる“ぎざぎざ”を認めることや、3DCT画像だけでは肺動
脈と肺静脈の区別がつかないことなどをあげている。その他、画像の処 理に時間と労力を要するのも問題点である。今回我々が経験した3DCT画像では、気管支鏡所見と同様にB9+10
入口部に腫瘤像を認め、気管支鏡では得られなかった腫瘤より末梢の情 報も得られ、腫瘤の立体的把握・解剖学的位置関係の把握が可能であっ た。また腫瘤周囲組織への浸潤は認めず、質的診断にも役立った。これ らの所見は手術標本の肉眼所見と比べ、腫瘤の大きさがやや過小評価さ れていた以外はほぼ同様の所見であった。腫瘤の大きさが過小評価され ていたのはCT画像が腫瘤の中心部でうまく切断されていなかったためと思われ、安藤らがあげていた「3DCT画像は人工的な疑似画像であ
り所見の読影には注意が必要である」という問題点に通ずるものと思わ れる。このように3DCTは画像処理に要する時間と労力を含め解決すべき
問題点もいくつかあるが、病巣部の立体的把握・解剖学的位置関係の把 握・質的診断に有用である。現在山梨県内の呼吸器疾患領域においては3DCTは充分に活用されているとはいえず、肺癌の質的診断、気道の
狭窄性病変・肺血管奇形の診断等に3DCTをもっと活用すべきである
と思われる。 まとめ今回我々は3DCTにて描出された所見が手術標本の肉眼所見とほぼ
同様であった気管支カルチノイドの一例を経験した。3DCTは病巣部
の立体的把握・解剖学的位置関係の把握・質的診断に有用であり、広く 診断に活用すべきであると思われる。 ・ 一31一文献 1)小沢克良、広瀬芳樹ほか:気管支Cafcinoidの臨床的検討.日胸、40:611、 1981. 2)児玉哲郎、松本武夫ほか:肺カルチノイド腫瘍.呼吸、11:182、1992. 3)McCaughan BC.Martini N et a1.:Bronchial carchinoids.Review of 124 casesJ Thorac Cardiovasc Surg 89 :8、 1985. 4)安藤正志、江口研二:ヘリカルCTについて.呼吸、13:784、1994. 5)山田耕三、野村郁男ほか:三次元CTを利用した肺野小型肺癌の画像的解析. 日胸疾会誌、31:959、1993. 6)清水雅史、楢林 勇ほか:肺野末梢腫瘤性病変のヘリカルCTによる三次元 立体表示.日本医放会誌、54:583、1994, 表1 図1 Biochemistry TP AIb Ch−E ZTr