Title
沖縄におけるコンクリート施工の現状とその問題点
Author(s)
具志, 幸昌; 喜納, 政修
Citation
琉球大学農家政工学部学術報告 = The science bulletin of
the Division of Agriculture, Home Economics & Engineering,
University of the Ryukyus(11): 199-204
Issue Date
1964-12
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/19455
沖縄 に
お
け るコ ンク 1
)- ト施 工 の現状 とその問題点
具志辛昌*・喜納政修*
YukimasaGUsHIandSeishyuKINA: Currentpractice
ineonereteworksanditsproblemsinOkinawa.
Ⅰ 更 概 コンク リー ト施工現場を直接調査することによって,現時点における沖縄のコンク リー ト技術の実 状 と問題点を記 し,同時に採取 したコンクリー ト供試体の強度か ら,その変動の大 きい ことを確認 し た。その原因は問題点の所に述べてある事項によるが,計量方法の不備 によるのが主原因であると指 適できる。 また,測定 した強度の変動係数また標準偏差か ら配合設計 の資料 を得 ることができる。 ⅠⅠ 序 盲 沖縄においては, コンク リー トはもっとも大切な建設材料であ り,ほ とん どあらゆる建設工事に使 用 されている。高温多湿の気候のため木材は白蟻 と腐朽に悩まされ,鋼材はさらに塩風の影響を うけ て錆止めがむづか しい。その上此等諸材料は全部輸入 しなければな らない。そのためコンクリー トの 占める地位は,他府県におけるよりははるかに高い。一例 をあげると現在沖縄で建設する橋梁のほ と ん ど全部は鉄筋 コンクリー ト橋であ り,那朝市における建築物の新設数は件数坪数共に鉄筋 コンク リ ー ト道が木造 を しの ぐにいた ってい る。 この重要な コンク リー トについて材料,施工面から検討 してみ ると実に問題点が多いのである。今 回はコンク リー トが製造 されて打込 まれるまでの実状 を記 し,問題点をあげておいた。 またコンクリ ー ト強度の変動の実態 を測定 して,上記問題点の裳づげ とすると共に, コンクリー ト配合のための資 料 を得 ることもこころみた。 さらにコンクリー ト強度の変動係数 または標準偏差はその地域のコンク リー ト施工の水準を表すもの とみ ることができるので, この面か ら沖縄の技術 レベルを推定すること も考えた。 ⅠⅠⅠ 施工 の実状と問題点 今回の調査お よび今迄の経験か ら沖縄におけるコンクリー ト工事の実状 と問題点 と思われる点を列 挙 してみる。 (1) セ メ ン ト バ ラであるいは袋語で輸入 されるが,当然考えられ ることは,高温多湿の気候 か ら風化 し易いことである。現場あるいは販売店で特別な貯蔵方法 を してないか ら,強度が一般的に 低い よ うである。特別な調査 をセメン ト強度のためにや ってないので,断言はできないが,時折,莱 験室で行な う試験で圧縮強度 400kg/em2をこえたものがないことでも明 らかである。離島ではこの 間題はもっと深刻であろ う。 *琉球大学農家政工学部土木工学科
T200 琉球大学戯家政工学部学術報告第11号 (1964) (2)粗 骨 材 大 きな河川がないため,全部砕石 を使 っている。 中南部 では比重 2.4-2.5位1) ・のやや多孔質の石灰岩砕石であ り,北部 の一部では比重2.6-2.7位 の硬い石灰岩を使 っている。中 南部 のものは石 自体 の強度に多小間題があるよ うであるが,現在の所普通 の工事に使用 して差支えな ■い。北部の ものは,強度の点では問題ないが,粒形が極端にわるい。 これは コンクリー ト強度をあま り高 くすると,この影響が現われて くるのではないか と思 うほ どである。粒度はほ とん どのものが, 土木 ・建築両学会の 基 準2,3)に適合 しないが, これは使用する方が厳 しく要求 しない ことに原因の大 ば な らない原因の1つである。 (現在,良質な もので単位セメン ト畳は375kg位 といわれている)0 さらに製造所毎に石質 も違い,粒度 も異なる (同 じ最大寸法のもので)のが現状であ り, コンクリー ト強度の変動 を生ぜ しめ る一因 ともなっている。 (3) 細 骨 材 ほ とん どが海砂であ り,海岸か らあるいは附近の小島か ら供給されている。比重 ・2.5-2.6位1)であるが, この資源の不足は相 当深刻で,基準に合格 しない もの も多いが,使用せざる を得ない とい うのが現状 である。単位セメン ト量 を増大せ しめる一因である。 また海砂に附着する塩 ・分は今の所問題 とされていないが,筆者の測定では,砂の乾燥重量 に対 し0.1770に連するものがあ り,鉄筋 コンク リー ト構造物の耐久性に大 きな問題 を残 してい ることにな る。 (4) 仕 様 書 ま た は 示 方 書 現在沖縄の工事で使用 されている仕様書な どを全部みたわけでは ないが,その最大の難点はコンク リー トの配合 をセメン ト・砂 ・砕石の容積此で1:2:4とか,1:2・.3.5 とか定めてあ り,特定の水 セメン ト此や必要強度 を得 るための配合の しかたを規定 してないことであ る。また重量配合 も基準 として採用 してない。前述のごとく,砕石 ・砂は採取場所毎に晶質特に粒度 が 異なってお り,一定の水 セメン ト此で適 当なウォーカビリチを得 るためには,工事毎に配合をかえ な くてはな らない。それ を容積比 を最初にきめて, 適 当な コンシステンシーを得 るま で 水 を加 える とい うことをするため,時には安全すぎる強度が得 られ,時には非常に危険な構造物 を作 ることにな る。要するに水セメン ト此 を配合 の際あま り気 に してない とい うのが現状である。 (5) 技 術 員 の 知 識 これは別に沖縄だけに限ったことではない と思 うが,直接 コンクリー ト製 造 に当ってい る技術員のコンク リー トに関する知識水準はあま り高 くない.試料採取の際に 「このコ ンク リー トの水 セメン ト比は?」「このコンク リー トの目標強度は?」とい う質問 を してみたが,満足に 答 え られない。硬い粗骨材 を使えば強度が大 き くなるとか,セメン トをた くさん使えば使 うほど良質 な強度の大 きい コンク リー トができるとか (この2つのことはもちろん戎程度 まで正 しいが,そこに 水セメン ト此 とい う要素 を全然考慮 してない) とい う話が筆者 との間に交された。 自分達の作 ってい るコンク リー トが どの程度 の強度 をもってい るか とか, あるいはもたな くてはいけないか とい うこと に自覚ない しは 自信がない ようであ り,少 しうるさい工事では単位 セメン ト量 を大 き くすることによ って逃げて しま うこともある。 これには管理者側にも責任があろ う。 次は施工上の問題に移ろ う。 (6) た め し練 り を しな い こ と 配合は一応容積比で示 されているので,その通 り計量 し, 水は適当 と思われ るだけ加えて混練する。 でき上 った コンク リー トの様子 をみて,水量 その他を加減 す る。 もちろん作 った コンクリー トは全部打ち込んで しま う. したが ってコンク リー ト打ちの最初の 方はスランプ,強度共に変動が烈 しい。 これは今回の調査結果で確認 されてい る。 (7) ス ラ ン プ の 調 整 スランプの調整は配合の変更 とい うことを しないで,ほかの材料をそ の ままに して,水量だけの加減でや って しま うことが多い。 (8) 表面水畳による調整 骨材の表面水量による加水量 の調整はや ってない。 (9) 計 量 法 の 不 備 セメン トは袋で,水はバケツで,骨材は箱状物で容積計量 しているのが普
具志 ・審 納 : 沖縄におけるコンクリー ト施工の現状 とその問題点 20Ⅰ_ 通で,中にはセメン トをわざわざ箱にあげて容積計量することもある。水 をバケツで入れるようでは, 表面水量による加水量の調整な どは無意味であろ う。現在 コンク リー ト強度の変動を生ぜ しめてい る. 原因の最大のものは,水 とセメン トを ミキサーに加えるものが防手に調節 していることではないか。 (10)型 枠 の 不 備 現在使用 されている型枠は単価の関係か らそ うなるのであるといわれている. が,水,ペース トな どが もるものが多い。そのためでき上 った構造物の全体の強度を著 しく悪 くしてー い ることがある。 こ うい う場合,い くら供試体強度が高 くても無意味 となる。 その他問題点 としては,振動機のかけすぎが型枠の不備 と重な りあってお り,材料の分離 を著 しく させてい る。 また,長い斜めシュー トの使用 もコンクリー トの品質をわる くしている.養生方法にも. 問題があるが, この文では打ち込むまでの問題にとどめてお くのでふれないことにする。 ⅠⅤ 現場打ち コンク リー トの強度 とその変動 (1)試 料 の 採 取 各種 コンク リー ト工事現場 より供試体 を6-10個 (18個の所あ り) をとり, 圧縮試験 を行な った。運搬その他の面か ら,あま り遠方か らは採取できなか ったので,今回の調査は 1ヶ所 を除いて全部那覇市内か ら採取 した。土木工事は那覇市か ら遠 く離れた場所に多 く,今度は対一 象が建築工事に限 られて しまった。 コンクリー ト使用量か らいえば建築関係がずっと多 く,個 々の コ ンクリー ト工事の大 きさも土木建築共に同 じ位なので,今回の調査 の結果は沖縄本島のコンクリー ト 工事 (那覇附近は技術水準はほかの地区に比べて高いので,厳密には那顧近郊の とい った方が よいか・ も知れない)の一応の レベルを示すもの と考えられる。1回の試料の数は運搬の面か ら10個まで と した。 試料の とり方は,現場でその 日に打つ量 と所要時間 とをきき,それか ら供試体型枠の数で所要時間・.A を割 り,何 :一分に1回の割で とるかをきめた。例えば 30分に1ペんな ら,30分に1回 とることに. し,ただ しその30分の間の任意の時刻に とることに し,30分置 きに とるとい うことは しなかった。 その他つ とめて,任意な試料 を得 られるように した。 ミキサーまたは一輪車か らバケツに受け,それ. を鉄板上にひろげシ ョベルで簡単にね り,均一に してか らスランプ試験 を行ない,同時に供試体1個 を作 った。土木学会の示方書では同時に3個の供試体 をとることが要求 されてい るが,供試体の総数 が運搬の都合上から制限されてい るので,同時には1回 しか とってない。 その代 り供試体の詰め方, キャッピングは入念に行ない,試験誤差はつ とめて小 さ くなるよ うに してある。試験誤差は当実験者 では 3-4%以内であることが別の資料か ら判 っている。 (2) 供 試 体 の 養 生 現場で養生せず,採取 してす ぐその 日に自動車で大学実験室に運び,翌 日 キャビングを し, さらに翠 日脱型 した。直ちに養生水槽内に浸横 した。養生水槽の温度は寒い季節で あったので14oC-19oCの範囲内にあった。 (3)圧 縮 試 験 28日目に取出 し,表面 をふいた後,高 さ,直径,重量 を測 ってか ら,圧縮試験-を行 った。強度の外に単位体横重畳 を測定 したのは少 し軽い骨材を使 っているので,その方面の-読 料 として利用 したいためである。 (4) 試 験 結 果 スランプの平均値,最大最小値,強度の最大最小値平均値,変動係数,標準鳳 差お よび重量平均値は第1表にかかげてある。 (5)結 果 の 考 察 単位体積重量は大体2.20-2.30で少 し標準 より軽いが, これは骨材が軽い せいであろ う。2.25をこえるものは,重い骨材 を使 ったものと,単位 セメン ト量が特 に多か った もの・ でこれは現場での視察の際確認できた。 強度そのものについては大体沖縄での設計基準強度が 135kg/em2-175kg/em2なので,その点か らすれば多 くのものがはるかに上廻 り申 し分ない。 これはむ しろ配合設計や施工管理 を十分 しないの
202 琉 球大 学戯 家 政 工 学部 学術 報 告第11号 (1964) 第 1 表 第 2 表 変動 係数
(
%)
ll.3 12.2 38.2 13.7 18.3 ll.8 14.7 22.2 ll.9 14.1 20.1 16.2 19.2 備 考 振動機使用せ ず 振動機使用せ ず 重 い砕 石 を一部使用 最 もウォーカ ブ ル で あった セ メン ト量多 い 50以 上 標 準 偏 差 (em)
件 数2
5
以 下 26.-35 5 で,業者管理者共,強度について 自信がないので,単位セメン ト畳 を大 き くした結果だ と思 う。なお 第1表中平均強度の小 さい No.3,No.6,N0.7 の コンクリー トはセメン トが少ないのが視察の際 に観察することができた。No.6,N0.7の単位セメン ト畳は約 325kg とのことであった。 強度の変動を変動係数で表すか,標準偏差で考察するか問題ではあるが,今回の場合,'1回の試料 の数 も少い し,また沖縄の現状 では土木工事 といえ ども,毎 日何 カ月もコンク リー トを打ちつづける ことはないので, さらにその際は骨材の条件 を一定に してお くのもむつか しい ことなので,標準偏差 で考察することに し, もちろん 日内変動 を対象にすることになる。 この意味では土木学会示方書の割 増係数算定の直接の参考にはな らない。先の第1表 を強度の標準偏差にもとづいて分類すると第2表 のようになる。 優良なものか ら劣悪な ものまでいろいろある。25以下の 2つは骨材の計量は容積計量ではあるが 1パ ッチ分1ペんに計 り,計量誤差が少 く,水量計 も一応 そなえていたことによると考察できる。標 準偏差の面か らい うと施工が低水準にあるとみなされ る 35以上のものが約半数 もあるとい うことが 問題になる。その原因については第3節で述べてあるのでここではこれ以上ふれない。全琉に此較 し て上位の施工水準にあると考えられ る那覇市近郊で, こ うい う統計ができたことは大いに反省 しなけ ればならない ことである。 しか し一方可成 り良好な現場 も数多 くあるのは,現在のような容積計量で も注意 して施工すればかな り均質な コンク リー トを製作できることを物語 ってい ることになる。現状 では配合の際用いる標準偏差の推定値 として,35kg/cm2と50kg/cm2とを業者の実績に応 じて用い ればよい と思 う。 第3節でもふれたが,水セメン ト比や単位セメン ト畳が規定 されないでセメン ト砂砕石の容積比が 名 目的に定め られてい る結果,現場では最初混練 りす るとき,水 をバケツで何杯加えたらよいか,は具志 ・喜納 : 沖縄 におけるコンク リー ト施工の現状 とその問題点 203 っき り判 らないので,試行錯誤式でや ることになる。その結果が統計上 より観察 される。すなわち最 初乃至次のサ ンプルの強度が平均値 よ りも著 しく低い現場が3ヶ所,反対 に始めが著 しく高い現場が 1ヶ所ある。 また午後か ら水の投入者 もしくは,混練 り責任者が変 ったためスランプと強度が午前中 と著 しく,変化 した現場が 4ヶ所 ある。 また,終 りの方で強度が非常 に小 さ くな った現場が 3ヶ所あ る。 この方の原軌 ま雨が降 り始めた り,帰 る時刻がおそ くな った りして コンク リー ト打ちをいそいだ ためで,視察 によって確認で きた事項である。以上のような変動を大 き くする原因はまった く人為的 な もので,注意 して施工や管理 をすれば除去できるものである。 統計的解析例 をあげ ると,第1表 のN0.1の現場では,午前中の強度平均x--306kg/cm2標準偏 差5-15.1kg/cm2,牛後か らはx--262kg/cm26--26.8kg/cm21日通算すると第1表 のようになる。 この場合平均値 について統計的検定 を行な うと,午前の部 と牛後の部 の母集団平均が違 うことが結論 され る。 また午前の部 の第 1回 目の供試体 について,棄却検定4)を行なえば, これは午前の部 に属 さ ない とい うことが,危険率
1
%
でいえる。 次にスランプのことにふれ ると,第 3節お よびこの節の前の方でふれた理 由によってスランプの変 一動は烈 しい。 また,今回の調査対象が建築工事で軟練 りであるが,13ヶ所 中11ヶ所 は振動機 を使い打 ち こんでい る。振動機の使用は小工事でも習慣的にな ってお り結構なことであるが,型枠があま りよ くないのに,軟練 りコンク リー トを振動打ち している結果 コンク リー トの分離 を促進 してい る。型枠 か らの水 もれ,ぺ-ス トもれが多い. スランプ平均15cm以上で振動機使用が6例,10cm∼15cmで .5例 もあることは考えさせ られ る。現在傾向 としては,仕様書の規定の有無に関せず,振動打ちをむ やみにや ってい るとい うことがいえるのではないか。 Ⅴ 結 び 以上で コンク リー ト施工の実状 と問題点,変動の調査結果な どを述べてきたが,強度やスランプの 変動の大 きいのはその計量の しかたにあるとい うことができる。 その他いろいろの原因 もあるが,問 題点で指摘 した所 を改善すれば解決できることである。 変動を小 さ くするだけでな く,経済的によい コンク リー トを作 るつま り,所要の品質 をもった単位 セ メン ト量 の最小のコンク リー トを作 るとい うことに努力 しなければな らない。 このためには統計的 な品質管理 を行なわなければな らない ことは周知のことであるが,沖縄ではまだ実行 されていない。 いづれその時期がや って くると思 うが,そのためには製作者,管理者共にコンク リー トに関する知識 をふやす必要がある。 今回の調査の結果得た標準偏差や変動係数の値 は建築工事やあま り長い期間 コンク リー トを打ち続 けない土木工事の配合 目標強度決定のための資料 として使用できる。 終 りに本研究お よび調査 のためにこころよ く協力 して下 さった方がた,特 に琉球政府文教局施設課, 那覇地区教育委員会な らびに各業者の方がたに深 く感謝の意 を表 します。 参考ならびに引用文献 1) 上原方成 1964 沖縄諸島におけ る骨材の調査・琉球大学農家政工学部学術報告,第11号・ 2) 土木学会 : コンクリー ト標準示方書解説・ 3) 日本建築学会 : 建築工事標準仕様書同解説,B・ 4) ウイル クス著,小河原訳 : ウイルクス数理統計学,春 日出版・204
Synopsis
1. The current practice of concrete works in Okinawa and the problems involved were describe and pointed out.
2. The variation of concrete strength sampled has been found fairly large and its causes are due mainly to the bulk measuring method of materials, especially cement and water measuring. 3. Standard deviations or coefficients of variation of concrete strength measured in this study show that the level of concrete work in Okinawa is not high, and they can be used in determination of mixing ratio of concrete materials.