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男女雇用機会均等法下における女子労働者の人事管理に関する若干の考察: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

男女雇用機会均等法下における女子労働者の人事管理に

関する若干の考察

Author(s)

岩森, 龍夫

Citation

沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 13(2): 55-122

Issue Date

1989-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6783

(2)

男女雇用機会均等法下における女子労

働者の人事管理に関する若干の考察

岩森龍夫 はじめに 男女雇用機会均等法の成立経緯と概要 男女雇用機会均等法施行の影響 女子労働者の今後の活用方針と問題点 女子労働者の人事管理 おわりに IⅡⅢⅣVⅥ Iはしめに 近年、企業を取り囲む法律環境・経済環境・社会環境の変化には童しいもの がある。例えば、①男女雇用機会均等法の施行に伴う雇用の場での男女均等化 ②ME、FMS、CAD/CAM・MAP、CIM、ISDN、LAN、VANなど の生産・情報通信技術の革新③経済のサービス化・ソフト化④グローバリ ゼーション、リストラクチャリング、M&Aなどの「新・日本的経営」による新職業 分野の増大⑤高齢社会における社会福祉的介護サービスの必要性増大⑥未 婚率の上昇と結婚年齢の上昇⑦出生率の低下⑧離婚率の上昇、などが顕著 な変化として挙げられる。 このような経済・社会・法律環境の変化は、女子労働者にも様様なインパク トを与えている。例えば、生産・情報通信技術の革新は、サテライトオフィス の導入、週休3日制・長期休暇制度・フレックスタイム制の導入、職務の軽作 業化、労働者のホワイトカラー化などをもたらし、これが女子労働者の増加を 促進した。また、男女雇用機会均等法が昭和61年4月から施行され、また昭和 63年度から、均等法の趣旨に沿った雇用管理が職場に定着するよう「自主点検 促進事業」がスタートするなど、職場における男女雇用均等化の一層の充実が 55

(3)

なされている。また、経済のサービス化・ソフト化は、企業が多様化した消費者 ニーズをキャッチするため、即ち消費をリードする女性のニーズをキャッチす るため、商品開発に女性の感性を生かすようにせしめたが、これが女子労働者 の適性発揮機会の拡大をもたらした。更に、「新・曰本的経営」は、終身雇用 制、年功型人事管理から能力主義人事管理への力点移動、中途採用の増加を生 ぜしめ、この結果、女性の労働市場への参入を容易にせしめた。 このような経済・社会・法律環境を背景に、女子労働者の労働力率は年々上

昇し、1987年には486%’)となり、また中高年層の就業率も高まっている。

本稿では、企業の法律環境の一つである男女雇用機会均等法に着目し、①均 等法成立の経緯と均等法の概要を簡述し、②均等法施行の影響と③女子労働

者の今後の活用の方針を各関連調査註!)により解析した.また、この解析結果に

基づき、均等法下において企業の取るべき人事管理の在り方について若干の考 察を試みた。 先ず、男女雇用機会均等法とは如何なるものかを理解するため、均等法の成 立経緯と均等法の概要を簡述する。 Ⅱ男女雇用機会均等法の成立経緯と概要 1.均等法の成立経緯

均等法の成立経緯について、高橋久子は以下の如く論評していろり・

わが国の労働市場においては、まず昭和30年代後半からの急速な経済発展に 伴い、主婦中心の女子労働者が多量職場に進出し、女子労働者の労働構造が若

年未婚型から中高年既婚型へと変遷してきた註?また、それと並行して、「雇用

における男女平等」が女子労働問題の最重点課題となった。 昭和50年(1975)の国際婦人年とそれに続く「国連婦人の十年」(1976~ 1985)は、地球的規模において、現代社会における婦人の地位について見直 しが進められ、婦人が男性と平等に社会の発展に参加し、世界の平和に貢献す る方策が模索された時期であった。1979年には国連総会で、「女子に対する あらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、いわゆる女子差別撤廃条約が採択 されたが、わが国も1980年の世界会議においてこの条約に署名したが、署名 56

(4)

にあたり、婦人問題企画推進本部は、「国内行動計画後半期における重点課題 として、批准のため、国内法制等諸条件の整備に努める」旨の申し合わせを行 った。雇用に関し男女に均等な機会を確保するための立法措置は、この条約批 准のための重点課題とされており、この申し合わせを行った時点で、「国連婦 人の十年」の最終年である昭和60年(1985年)までに雇用機会均等法を制定 することが、国内的のみならず、国際的にも政府の重要政策課題として位置づ けられた。 またILOは、国連の'呼びかけに応じて<国際婦人年に「婦人労働の機会及び 待遇の均等を促進するための行動計画」等を採択し、ECは「均等待遇に関す るEC指令」を発し、OECDも「婦人のための機会均等」のレポートを取り まとめるなど国際組織もそれぞれ雇用における男女平等を進める取り組みをし、 これらの動きの中で欧米各国は相次いで雇用における男女平等を法制化した。 このような国際情勢は、経済大国として、国際社会において責任ある行動を 迫られているわが国の雇用機会均等法の制定を促進する上で強い力となったの である。 かかる諸情勢を背景に、昭和53年の労働基準法研究会および昭和57圧の男女 平等問題専門家会議の報告を踏まえて、婦人少年問題審議会が昭和59年3月、 雇用における男女平等を確保するための法的整備について労働大臣に建議を行 い、法案が国会に提案されたが、成立に至るまで厳しい論議が繰り返され、理 想的法律とはいえないが、とにかく「男女雇用機会均等法」(正式名称「雇用 の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に 関する法律」)は、昭和60年5月、第102回国会において可決成立し、昭和61 年4月より施行された。 均等法は、理想形とはいい難いが、この法律制定を機に女子労働は大きく変 化しつつある。すなわち、従来は、現実の女子労働力の変化が均等法をもたらし たが、現在は逆に均等法が女子労働を変貌させる挺子となっていると論ずる゜ 2.均等法の概要 昭和61年4月1日に施行された男女雇用機会均等法の概要を、ま式昭和47年 法律第113号「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労 57

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働者の福祉の増進に関する法律」の第1章総則に法り、①目的②基本的理念 ③関係者の責務④啓発活動⑤女子労働者福祉対策基本方針の順に述べる。 (1)目的 第1条この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇 用の分野における男女の均等な機会及び待遇が確保されることを促進すると ともに、女子労働者について、職業能力の開発及び向上、再就職の援助並び に職業生活と家庭生活との調和を図る等の措置を推進し、もって女子労働者 の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。 (2)基本的理念 第2条女子労働者は経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の 一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることに かんがみ、この法律の規定による女子労働者の福祉の増進は、女子労働者が 母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に 発揮して充実した職業生活を営み、及び職業生活と家庭生活との調和を図る ことができるようにすることをその本旨とする。 第3条女子労働者は、労働に従事する者としての自覚の下に、自ら進んで、 その能力の開発及び向上を図り、これを職業生活において発揮するように努 めなければならない。 (3)関係者の責務 第4条事業主並びに国及び地方公共団体は、前2条に規定する基本的理念に 従って、女子労働者の福祉を増進するように努めなければならない。 (4)啓発活動 第5条国及び地方公共団体は、女子労働者の福祉について国民の関心と理解 を深め、かつ、女子労働者の労働に従事する者としての意識を高めるととも に、特に、女子労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図る ため、必要な啓発活動を行うものとする。 (5)女子労働者福祉対策基本方針 第6条労働大臣は、女子労働者の福祉に関する施策の基本となるべき方針 (以下「女子労働者福祉対策基本方針」という。)を定めるものとする。 2,女子労働者福祉対策基本方針に定める事項は次のとおりとする。 58

(6)

一、女子労働者の職業生活及び家庭生活の動向に関する事項 二、女子労働者の福祉の増進について論じようとする施策の基本となるべき 事項 3,女子労働者福祉対策基本方針は、女子労働者の労働条件、意識及び就業の 実態等を考慮して定めなければならない。 4,労働大臣は、女子労働者福祉対策基本方針を定めるに当たっては、あらか じめ、政令で定める審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求める ものとする。 5,労働大臣は、女子労働者福祉対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、そ の概要を公表するものとする。 6,前2項の規定は、女子労働者福祉対策基本方針の変更について準用する。 次に、事業主の措置に対する法的措置として、昭和61年労働省告示第4号 「事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針」では、適用除外に該 当する場合を除いて、「募集・採用、配置、昇進の均等な機会・取扱につい ては努力規定」とし、昭和47年法律第113号「雇用の分野における男女の均等 な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」では、「教育 訓練、福利厚生、定年・退職及び解雇の差別的取扱いについては禁止規定(罰 則規定なし)」としている。 また、昭和47年法律第113号・第3章「女子労働者の就業に関する援助の措 置等」において、「職業指導、職業能力の開発及び向上の促進、再就職の援助、 再雇用特別措置の普及、育児休業の普及、相談p講習、働く婦人の家、働く婦 人の家指導員」といった就業に関する援助措置がある。 次に、均等法施行の影響を、企業の人事管理制度面と男女労働者の意識・行 動などの実際運営面といった2つの側面から考察することとする。 Ⅲ男女雇用機会均等法施行の影響 1.企業の人事管理制度への影響 (1)募集・採用 均等法第7条及び昭和61年労働省告示第4号「事業主が講ずるように努める 59

(7)

べき措置についての指針」では、募集・採用は努力規定に過ぎないけれども、

各関連調査によると、均等法の影響でかなり改善されていると判断できる。

例えば、労働省の「昭和61年度女子労働者の雇用管理に関する調査」(対象

7,200企業.昭和62年10月実施、以下「A調査」と略す)によれば、大学卒の

公募に関して、「法施行前から、すべての募集・採用区分について女子も公募

していた」ため又は「公募したのは指針の適用除外に該当する場合のみであ

った」ため「変更する必要はなかった」とする企業が58.5%で、「変更した」

企業(21.9%)と合わせると約8割の企業が法の規定に沿っていることにな

る。高校卒、短大卒、専修学校卒及び中途採用者についても、「変更する必要

はなかった」と「変更した」とする企業を合わせると約8割となっている3)し

雇用促進事業団雇用職業総合研究所の「企業における女子の戦力化・活用に

関する調査」(対象企業6,750社、昭和61年9.10月実施、以下「B調査」と

略する)では、「募集・採用」に関して、「従来から均等法の趣旨に沿った雇

用管理(制度)であった」企業が44.1%、「均等法の趣旨に沿うように雇用

管理(制度)の内容を改訂した」企業が372%で、合わせると約8割と見直し

が進んでいる4%

図1.募集・採用について %%%%%%% 0000000 654321 4年制大卒高校卒 ~-----------------イ6.0%----- ̄ ̄--

ljjjiTll三liifji

53.0%b中途採用 一一一一一一一一一一一一一一 一一-‐一

一川蝋

一一』 5.1砿.: ●ロー ̄ 0% 0.5% 事務系技術系 事務系技術系 正社員パート 函男女とも募集□男子のみ募集因女子のみ募集圏募集なし 資料出所:労働省婦人局婦人政策課「女子の雇用管理に係る自主点検表集計 結果について」 図出所:『労働時報』14頁 60

(8)

また、労働省婦人局婦人政策課「女子の雇用管理に係る自主点検表集計結果 について」(対象約14,000事業所、昭和63年度~平成元年度.以下「C調査」 と略す)によると、募集区分ごとの募集状況は図1の通りで、各区分とも「男 女とも募集」が多くなっている。ただ新規学卒・技術系の募集については、「男 子のみ募集」が、4年制大卒で12%、高校卒で17%であり、相当改善する必要

があるとするの。

リクルート・リサーチの「女性雇用と戦力化に関する調査」(対象企業9,017 社、昭和61年7月)、日本リクルートセンターの「男女雇用機会均等法に関す る企業の意見調査」(対象企業Q上場5,212社、昭和60年8月)、労務行政研究 所の「男女雇用機会均等法に対する企業の対応状況調査」(対象企業2.550社、 昭和61年3月)など他の調査をみても、「募集」は一番改善の進んだ項目とな っている。 また、募集・採用の条件として、法施行前、「女子は未婚者に限る」とか 「女子は自宅通勤に限る」など、同一の募集・採用区分の男子と比較して女子 に不利なものもあったが、昭和61年労働省告示第4号は事業主に改善努力を求 めている。この点に関して、A調査によると、大学卒について、「変更した」 企業は27%、「変更する必要はなかった」企業の71.3%を合わせると、約98%

の企業で改善が進んでいる。他の新規学卒、中途採用者についても同様である61

しかしながら、松田保彦によれば、「女性の雇用機会拡大の対価として、従 来の女子労働者に対する雇用管理の緩やかさと裏腹の規制強化が行われつつあ ることもまた事実である。例えば、採用試験のやり方や基準が未確立であるか らか、女性の4年制大卒者に対しては殊更に厳しいものになっている。これは 過渡的措置であろうが、コース別人事制度の導入とも関連して、女性にのみ厳

格な手続や基準を用いることには問題がある,)」とする註!

また、均等法では「男子のみ」の募集・採用を禁止する一方で、「女子のみ」 は認めているが、このことは伝統的な女性向け職種(パートタイマーなど)に 女性を多く配置する結果を招いている。松本惟子は、「労働環境が整備されて いない分、家庭と仕事の両立を図りたいという女性がパートに流れるという現 実がある。しかもパート労働とフルタイム労働には歴然とした賃金格差があり、

それがそのまま男女間格差に結びついている(8)」と主張している。

61

(9)

(2)配置 昭和61年労働省告示第4号は、適用除外に該当する場合を除いて、女子であ ることを理由として、その対象から女子労働者を排除しないような努力を事業 主に要請している。A調査により、均等法施行に伴う配置方針の変更状況につ いてみると、「法施行前から、すべての職務に女子を配置する方針でいたので、 変更する必要がなかった」企業は56.1%、「変更した」企業は8.8%であり、 合わせても64.9%に過ぎない。 また配置転換の方針変更状況に関しては、「事業所内配置転換」、「転居を 伴わない事業所間配置転換」、「仕事の内容が同一の配置転換」及び「仕事の 内容が異なる配置転換」を行っている企業の割合は、各々につき5割前後であ る。これらの配置転換を行っている企業のうち配置転換の方針に関して、「法 施行前から、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はなかった」企 業は各々約7割、「変更した」企業はそれぞれ約1割となっており、合わせる と約8割(全体で約4割)の企業でそれぞれの配置転換が行なわれているだけ である。一方、「転居を伴う事業所間配置転換」行っている企業は、本社以外 に支店、工場等のある企業の3割となっている。そのうち配置転換の方針につ いて、「法施行前から、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はな かった」企業は約3割、「変更した」企業は1割合と合わせても半数だけが男 女均等であるに過ぎない。なお、「まだ検討していない」企業は37.脇と非常

に高いことも注目に値する9。

B調査も同様に、「従来から均等法の趣旨に沿っていた」企業は47.4%、 「趣旨に沿うように改訂した」企業12.2%で、合計約60%の企業のみが均等法

の趣旨に沿っているに過ぎない】PL

C調査によると、配置について、「企画立案、渉外業務など一定の職務に女 子を配置しないとするものが3%、結婚したことや一定の年齢に達したこと等 を理由として女子にのみ不利益な配置転換をするもの、昇進にあたって、女子 であることを理由に対象から外したり、女子についてのみ不利な条件を付ける ものは1%未満であり、均等法が直接要請している部分については概ね法に沿 った雇用管理が行われている。 しかし、均等法が直接要請しているものではないが、改善が望まれる分野の 62

(10)

配置・昇進について 図2 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% ~-----------マー ̄ ̄ ̄ ̄-- ̄--- ̄ ̄ ̄ ̄~ ̄----82.0%.~---~戸一一一一

蕊三i蕊菫j;iijl妻

行っている している -IeI101111している 労働者の職域拡大、職業 能力開発や士気の高揚に 必要な配置転換を男女と もに行っていますか。 (特に初めて女子を配置 するような職場につい て)取引先等の理解を求 める等職場外での受入れ が円滑にいくよう努力を していますか。 (特に初めて女子を配置 するような職場につい て)男子上司や同僚に対 するオリエンテーション を実施していますか。 資料出所:労働省婦人局婦人政策課「女子の雇用管理に係る自主点検表集 計結果について」 図出所:『労働時報』14頁 項目については図2に示すとおり、約8割の事業所で労働者の職域拡大や職業 能力開発のための配置転換を行っているものの、女子を初めて配置す`Uような 場合に女子の受け入れが円滑にいくような配慮をしている事業所は6割程度に

とどまっている'1)」と記す。

全日本民間労働組合協議会の「均等法の施行に伴う企業の対応状況」(対象 1,500組合、昭和61年11月)、全国中小企業団体中央会の「中小企業労働事情 実態調査報告」(対象26,664事業所、昭和61年7月)など他の調査においても、 「時間外労働や休日労働が望めない」とか「女子に配置適任者がいない」とか いった理由で、配置の問題は改善に時間を要するといった意見が大勢を占めて いる。 (3)昇進 昭和61年労働省告示第4号は、事業主に対して、昇進に当って、男子労働者 と比較して女子労働者に不利なものとしないよう努力することを求めている。 63

(11)

図3.昇進の制度・方針の変更状況

昇進の機会、昇進可能な範囲 すべて男女同一にした 一部を男女同一にした 資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号』175頁 図4昇進のために必要な勤続年数、在級年数等の条件 すべて男女同一にした 一部を男女同一にした 資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号』175頁 -64 釘。4% 52.6%

(12)

図5.昇進のための試験の受験資格 、昼 すべてを男女同一にした 一部を男女同一にした 資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号』176頁

A調査'1こ基づき.「昇進の機会、昇進可能な範囲」の変更状況についてみる

と、「法施行前から、男女とも同じ取扱いであったので変更する必要はなかっ た」企業は538%、「変更した」企業は4.8%で、合わせても約6割(58.6%)し かない。一方、「どのように変更するか検討中」の企業は11.5%、「まだ検討 していない」企業は298%で、合わせると4割(41.3%)にも達している。以 上から、「昇進」が他の項目の改善度と比べて相当低いといえるであろう。(図 3参照)また、「昇進のために必要な勤続年数、在級年数、出勤率などの条 件」について変更状況をみると、従来から「制度や方針は特に定めていない」 企業が415%と多く、「法施行前から男女とも同じ取扱いであったので変更す る必要はなかった」企業は35.1%、「変更した」企業は35%と少ない。(図4参 照)また、「昇進のための受験資格」について変更状況をみると、「制度や 方針はとくに定めていない」企業が618%と非常に多く、「法施行前から男女 とも同じ取扱いであったので変更する必要はなかった」企業20.0%、「変更し た」企業1.6%と非常に少ない。(図5参照) B調査においても同様で、「従来から均等法の趣旨に沿っていた」企業51.3%、 「趣旨に沿うように改訂した」企業13.9%で合計でも65.2%と、他の項目と比 65

(13)

くると改善の余地が大きい13{

総合労働研究所の「雇用均等法アンケート」(対象、東京、大阪、福岡地区

企業人事労務担当者、労働組合役員203人、昭和61年2月)、全国中小企業団

体中央会の「昭和61年度中小企業労働事情実態調査報告」(昭和61年7月)な

ど他の調査においても、「昇進」は他の項目と比しても立ち遅れが見られるよ

うである。

以上を総括すると、「昇進」は他の項目と比すると、「配置」とともに改善

が遅れており、また、「配置」と同様に、制度・方針面の改善がなされても、

女子労働者の側に適任者がいないという問題もまた内包する。

(4)教育訓練

均等法第9条は、事業主に対して、労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能

力を付与するためのものとして、労働省令で定める教育訓練について、労働者

が女子であることを理由として、男子と差別的取扱いをするように努めなけれ

ばならないと規定している。 図6教育訓練の変更状況 新入社員研修 Ir

賎:雛:

$n打】団、】暉狙 資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査紗)」 図出所:『季刊労働法147号』176頁 66

(14)

図7.管理職研修 男女同一にした事項(MA.) 6凶 3a3 雌V蕊:ii壬而 29.7

3鍬鶴農騨

22.6 155 --■変更した3.Wb 丑60 32 弓0-. 訓練対象 現場実習 訓練期間 合宿訓練 その他

資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号』177頁 図8業務の遂行に必要な能力を付与する研修 I「 双扱 」2、E日宅

見訓合

臨場縁

凍習問繊 資料出lJT:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号」177頁 67

(15)

14)

次に、A調査により、教育訓練の変更状況について見ていく。まず、新入社

員研修については、全企業の約6割で、男女の差別的取扱いの改善がなされて

いる。「法施行前から、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はな

かった」企業55.7%、「変更した」企業5.筋となっている。(図6参照)管理職

研修については、全企業の約3割で男女均等扱いとなっている。駐施行前か

ら、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はなかった」企業29.7%、

「変更した」企業は3.0%である。(図7参照)業務の遂行に必要な能力を付与

する研修に関しては、全企業の約5割で男女とも同じ取扱いになっている。

「法施行前から、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はなかった」

企業は42.3%、「変更した」企業は47%であった。(図8参照)要約すると、

新入社員研修(約6割)、業務の遂行に必要な能力を付与する研修(約5割)、

管理職研修(約3割)の順に、男女の均等化が進んでいるといえる。 B調査では、教育訓練について、「法の趣旨に沿うように改訂した」企業は 17.0%で、募集・採用(4割近く)に次いで高く、「従来から均等法の趣旨に 沿っていた」企業と合わせると、約75%の企業において男女の差別的取り扱い

の改善が進んでいる'1

図9.教育訓練について 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% ---.84.9%.-----‐‐--‐‐‐‐---‐----~~ ̄  ̄~~~~~~--~-----~~ ̄ ̄ ̄ ̄~~ ̄~ ̄ ̄~ ̄~~73.1% ̄ ̄ ̄~~~--69.1% --=・-里鳥筈2-------‐-66.2%---_鹿ワワワララワワラワ勿---- 里弄羊卓も 圭今肥している

壼菫

い て 寿千仁も 圭余肥している る 新入社員研修管理・監督者研修業務H1勵鰊0.J・T 資料出所:労働省婦人局婦人政策課「女子の雇用管理に係る自主点検表集計 結果について」 図出所:『労働時報』14頁 68

(16)

C調査によると、教育訓練について、「新入社員研修を男女同等に行ってい

る事業所は85%、管理・監督者に対する研修及び業務を遂行するために直接必

要となる能力を付与するための業務別訓練を男女等しく実施している事業所は

7割弱となっている。また均等法の規制の対象ではないが、OJTを男女等し

く実施している事業所73%となっている1611と記述している。(図9参照)

労務行政研究所の「男女雇用機会均等法に対する企業の対応状況調査」(対

象2550社、昭和61年3月)、全国中小企業団体中央会の「昭和61年度中小企

業労働事情実態調査報告」(対象26,644事業所、昭和61年7月)、全日本民

間労働組合協議会の「均等法の施行に伴う企業の対応状況」(対象1,500組合、

昭和61年11月)などの調査では、新入社員教育では、約8割の企業で男女均等

化が進んでいるが、中堅社員教育では約6割であり、依然として男女差がみら

れる。

また、女子社員教育の問題点として.総合労働研究所の「雇用均等法アンケ

ート」では、第1位が「勤続年数が短い」(45.9%)、第2位が「女子自身

の参加意識が乏しい」(32%)となっており、女子には教育の投資効果が期待

できないという意見が多い17{

また、遠藤雄二は、「均等法の施行規則が中味を骨抜きにしている。たとえ

ば、日本の教育訓練の中心を占めるものはOJTであるが、これが9条の教育

訓練の対象から除外されている、!」と主張する。

総じていえることは、A調査の場合、他の調査と比べると対象規模が常用労働

者30人以上と幅が広いことを勘案すると、教育訓練について、法律上の問題や

実践上の問題は若干あるが、相当改善が進んでいる。特に、新入社員の教育に

ついてはほとんど男女の差別的取り扱いは見られない。管理職・中堅社員の教

育とOJTについても、新入社員の教育ほどではないが、相当程度改善がなさ

れているといえるであろう。 (5)福利厚生

均等法第10条、昭和61年労働省令第2号では、事業主に対して、住宅資金、

生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付け、

労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付、労働者の資産形成

69

(17)

のために行われる金銭の給付、住宅の貸与といった福利厚生の措置であって労 働省令で定められるものについて、労働者が女子であることを理由として、男 子と差別的取扱いをしてはならないとしている。 A調査によれば、福利厚生の措置の変更状況について、住宅資金の貸付け、 短期の生活資金の貸付け、教育資金の貸付け及び世帯用住宅の貸与をみると、 いずれの「措置もとっていない」企業が半数を超えているが、「短期の生活資 金の貸付け」については比較的導入が進んでいる。この措置を講じている企業 では、「法施行前から、男女とも同じ取扱いであったので、変更する必要はな

かった」企業が多く、男女の差別的取扱いはほとんどないといえるl9L

B調査では、「従来から均等法の趣旨に沿っていた」企業が8割で、「改訂 した」企業とを合わせた86%の企業において、男女機全均等になっているとい

える2OL

C調査によると、福利厚生について、「ほとんどの事業所が、男女同じ取扱 いとしているが、世帯用住宅への入居基準を男女同一としていないものが2% あった。なお本年4月1曰から独身寮の貸与についても男女同じ取扱いとする

ことが必要となっているので注意が必要である''1,と記している。

曰本有職婦人クラブの「女子労働能力活用状況調査」(対象299社、昭和 62年10月)では、福利厚生に関して、「男女異なる取り扱いはない」企業が 65.5%、「男子だけを対象にした福利厚生(施設、貸付け金)がある」企業は

,3%で、殆んどの企業において男女の差別的取り扱いはみられない22{

総括すると、B調査。C調査・有職婦人クラブの調査と、A調査とを比較す ると、A調査において、福利厚生の進捗が少し遅れているとやや否定的な結果 が出たが、これはA調査の対象規模が、他の3つの調査と比べると、本社の常 用労働者30人以上と幅が広いことに起因すると考えられる。要するに、福利厚 生に関しては、殆んどの企業で男女均等の取り扱いになっているといえる。 (6)定年、退職および解雇 均等法第11条は、事業主に対して、定年について、また女子労働者が婚姻し、 妊娠し、出産し、又は労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項若しく は第2項の規定による休業をしたことを理由としての解雇などについて、また 70

(18)

女子労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定 めを禁止するなど退職について、労働者が女子であることを理由として、男子 と差別的取扱いをしてはならないと規定している。 A調査によると、男女別定年制の改善状況などについて、「法施行前から、 男女別定年はなく、対応する必要はなかった」企業は82.1%であり、法施行後

男女別定年制を「改善し計企業は15%で合わせて971%の企業で男女均等

化がなされているといえる。結婚・妊娠・出産退職制の改善状況等については、 「法施行前から、結婚・妊娠・出産退職制はなく、対応する必要はなかった」 企業は92.7%で、法施行後、結婚・妊娠・出産退職制を「改善した」企業は 23) 3.8%で合わせて、96.5%の企業で差別的取扱いが取られていないことになる。 B調査においても、定年・退職について、「従来から均等法の趣旨に沿って いた」とする企業と「趣旨に沿うよう改訂した」企業とを合計すると約88%の

企業が均等法の趣旨に沿っているといえる24(

図10.定年・退職・解雇について 無回答(08%)定めている(3.6%) 無解答(13%)ある(5.7%) 定めていない(95.6%) ない(93.2%) 資料出所:労働省婦人周婦人政策課「女fの雇用管理に係る自主点検表集計 結果について」 図出所:『労働時報』15頁 71

(19)

C調査によると、定年・退職・解雇について、「男女別定年制を実施してい る事業所が4%(図10参照)あるが、これは、均等法に違反し、就業規則等の 男女別定年制の定めは強行法規に違反するものとして無効と解され、また、男 女別定年による退職又は解雇は、やはり無効と解されるので早急に改善するこ とが必要である。なお、女子が結婚(出産)退職する場合に退職金の取扱いを 優遇する退職上積制度を行っている事業所が6%あり、これは、結婚、出産退 職を促すものとみられ、均等法の趣旨に照らし好ましくない。また、予め支給 条件が就業規則等で明確になっている場合は、労働基準法第4条違反の問題に

もなるので改善が必要である'51,と記述している。

その他、総合労働研究所の「雇用均等法アンケート」(昭和61年2月)、全 曰本民間労働組合協議会の「均等法の施行に伴う企業の対応状況(昭和61年11 月)、全国中小企業団体中央会の「昭和61年度中小企業労働事情実態調査報告」 (昭和61年7月)などの調査によっても、定年・退職の男女差別的取扱いは、 殆んどの企業で解消されていると認識されうる。 これらの結果は、高橋久子によると、昭和41年の住友セメント株式会社の結 婚退職制裁判を初めとする一連の結婚退職制、女子若年定年制、男女別定年制 などの裁判において、公序良俗に反し、民法90条により無効との判決が相次ぎ、 また労働省も昭和52年から「改善年次計画」を立てて強力な行政指導を行っ ていたことから、「法施行前から、差別的制度はなく、対応する必要はなかっ た」企業の割合が高くなっており、また、これらを背景に、法においてもこの

項目について禁止規定註副となっていることに起因しているとすぎ61。

しかしながら、定年、退職及び解雇という項目は、当然女子労働者にとって 非常に重大な問題なので、少数事例といえども深く留意して男女均等化に努め ねばならない。 2.職場状況への影響 (1)女子労働者の職業意識の変化 72

(20)

図11.女性の就労観の年齢別変化 80 000 763 ▲ ̄ -ローノ 20 % 10 Tl ̄( 妬~側歳 印~馳歳 25 1 29 歳 妬~釦歳 釦~必歳 閲~開歳 釦~弘歳 別~幽歳 資料出所:生命保険文化センター調査(87年6月) 図出所:『テラスで読む日本の経営」194頁 ;生命保険文化センターのアンケート調査(昭和62年6月)によると、「結婚 まで」「出産まで」という中途退職を望む答えはいずれも1割台に過ぎなかっ た。結婚観も「あえてする必要はない」が4割近く.20代では半数である。女 性の意識も「腰掛け型」から「キャリアウーマン型」に変わりつつあるようで ある。(図11参照)経済のサービス化・情報化により、性差ない職種が増え ているという事情もあるが、女性の長期間労働意欲は今後も強まっていくよう

である27k

しかしながらd他の調査から、全般的にいうと.均等法は女子労働者の意識 や行動にそれほど大きな影響を与えていない。松田保彦は、この点について、 「30代~40代、高学歴、正社員に均等法にかかわるような問題に対して極めて 高い関心を持つ人が多く、20代もしくは50代以上の人やパートタイム労働者と いった人々は、雇用機会の均等化より、雇用の確保や職場環境の改善に関心が あり、均等法の施行とそれに伴う労基法の改正により、残業が増えたり、生理 休暇など従来の既得権を失ったり、あるいは男子労働者との関係など職場の雰

囲気が悪化することの方を心配する'81,と述べる。また.とくに、配偶者と子

73

(21)

供のある女性は、現実には配偶者や子供の協力がなく、法律や制度面の是正や

男女職員への職場教育だけでなく、幼稚園からの学校教育などを通じてステレ

オタイプの性的分業意識を払拭しなければ真の意味での男女雇用機会均等意識

は確立しないであろう。

以上を立証する証左として、ここでは紙幅の関係上.一例を記述する註。L

以下の記述は、NTTの労働組合である全電通(全国電気通信労働組合)によ

る「『生活と労働』に関する調査」(対象:男子組合員6,659人、女子組合員

2.732人、昭和61年2月実施)と「組合員意識実態調査」(対象者泪男子7,045人

女子2121人、昭和62年1月実施)とに基づいて全電通女子組合員の職業生活

意識を整理した竹内敬子稿「『働き続ける』女性の意識」を要約したものであ

る29)。

竹内敬子は、未婚で働き続ける女性と既婚で働き続ける女性との職業生活上

の意識の相違も考慮に入れて以下の如く論じている。 (a)仕事の満足感、張り合い感

「『生活と労働』に関する調査」では、現在の仕事に満足しているかどうか

を質問している。既婚者の方が「満足」を感じている者が多く、「不満」を感

じている者は未婚者の方が多かった。, また、既婚者の場合、年齢が高くなる程、「満足」の割合が大きくなってい る。鹿内啓子は、この理由として、「結婚や子供も、女性が職業人として1人 前になるための障害と考えるのでなく、家庭生活の充実が、働く女性に職業人 としての幅や深さを増:大させ、仕事の充実感をもたらし、それがまた家庭生活

を生き生きとしたものに蘇らせるといった仕事と家庭の好循環」を示唆する。

「組合員意識実態調査」では、「満:足」と同種の「仕事の張り合い感」に関

して、「張り合いがある」と答えた者は既婚者の方が多く、また、・未婚・既婚 ともに40歳台以降で、「張り合いがある」と答える者の割合が増している。 次に、全電通の女性組合員は如何:なる理由で、仕事に「満足」や「不満」を 感じているのかを見てみることとする。 「『生活と労働』に関する調査」によれば、現在の仕事に「満足」を感じる

理由として最も多かったのは、未婚・既婚を通じ「仕事に適性がある」で未婚

39.0%、既婚45.8%であった。「不満」を感じる理由としても、「仕事に適性 74

(22)

がない」が相等数あり、未婚で39.0%、既婚で144%あった。要するに、「現 在の仕事に適性があると感じられること」が、「仕事に『満足」を感じられる こと」の大きな判定要因となっている。また、仕事に「満足」している理由の 第2位は「職場の人間関係が良い」で未婚18.9%、既婚17.1%であった。この 「職場の人間関係」についても、「不満」の理由としてあげる者がかなりおり、 「職場の人間関係」も仕事の「満足」・「不満」に大きな影響を与えているこ とが分かる。 「組合員意識実態調査」では、「仕事の意味を最も強く感じるのは如何なる 時か」を質問しているが、第1位の回答は、「知識や技能が向上し成長を感じ る時」で未婚41.9%、既婚37.1%となっていた。逆に、現在の仕事に「不満」 である理由として、「能力や創意が発揮できない」が未婚で218%、既婚で 16.2%あった。 2つの調査から、「仕事が自分に向いていない」、「能力や創意が発揮でき ない」、「意味や使命が感じられない」といった仕事そのものへの不満が強く 出ており、その傾向は未婚の方が若干強いように思われる。 次に、昇進の問題について見てみることとする。 「『生活と労働』に関する調査」で、「励めば昇進が期待できる」を「満足」 の理由にあげた者は非常に少なく、未婚0.0%、既婚2.7%、他方「不満」の理由 として「昇進など将来の見通しがない」は未婚3.9%、既婚6.0%であった。これ は、必ずしも昇進の条件が非常に整っている結果ではなく、むしろ昇進の希望 者が少ないことに発因すると考えられる。 最後に性差別の問題を見てみる。仕事に「満足」な理由として「性差別がな い」をあげた人は未婚106%、既婚6.7%、仕事に満足でない理由として「性差 別がある」をあげた人は未婚3.9%、既婚2.3%であった。「仕事についての希望」 の質問では、複数回答であったにもかかわらず、「性差別をなくして欲しい」 が未婚6秘、既婚6.脇であったことから判断して、性差別を感じている人は少 ないといえる.: (b)キャリア志向 NTTで「働き続ける」女子組合員のキャリア志向は如何なるものかを以下 見ていく。「『生活と労働』に関する調査」(以下D調査とする)と「組合員 75

(23)

意識実態調査」(以下E調査とする)において最も回答率が高かったのは「定 年まで勤めあげろ」であった。D調査では、未婚29.0%、既婚30.7%が、E調、 査では未婚47.6%、既婚44.0%がこの項目を選択している。 また、「管理者として会社を運営したい」と「職制として会社の仕事を切り 回したい」の二つについて、D調査では、未婚1.筋、既婚1.0%;未婚3.4%、 既婚3.脇、E調査では、未婚11%、既婚0.4%;未婚48%、既婚4.2%で、管理職 や職制を目指す者は非常に少ない。 図12.「勤めあげ」志向と「退職」志向 000000000 8765432l ㈱ <未婚> <既婚> 夕0 勤めあ吠''、$ 〃 bU OO --‐ ̄ ̄ ̄‐~pmC-‐一つ ̄、、 ロ 、 び り ̄■■ ̄口一二 ● ●ロ ● ̄ ■_ニー _=_一二一つ ̄ 職 20253035404550 1111111 24293439444954 歳歳歳歳歳・歳歳 閲歳未満 253035404550 弱歳以上 琉歳以上 293439 歳歳歳 鰹歳 4954 歳歳 資料出所:全電通「組合員意識調査」 図出所:『季刊労働法147号』131頁 E調査に基づき「勤めあげ志向」と後述する「退職志向」を年齢別に見たも のが図12である。図12からも読み取れるように、既婚者では「勤めあげ」志向 は各年齢層でほぼ一定している。未婚者では大体30歳台で「勤めあげ」志向が 定着する。D調査によると、未婚者の「勤めあげ」志向の定着は、未婚のまま 「働き続ける」という選択が30歳台で行なわれた結果であると考えられるO 他方、既婚者については、両調査とも40歳台から「退職して家事・家業に従 事したい」が増えている。この40歳台以降は出産・育児という「共働き」の1 76

(24)

番苦しい時期を乗り越え、仕事に専念できる時期であるが、仕事に対する不満 ではなく、老親の介護問題を抱えていたり、特に40歳台後半以降、子供の教育

費用なども不要になり労働の経済的必要性がなくなったりするので註?「退職」

志向が表われるという考え方が成立しそうである。 に)転勤 D調査では、「会社である以上当然」は、未婚で26.6%、年齢別では30歳台 以降で高めの数値になっている。既婚では、「会社である以上当然」は15.2% と未婚より約10ポイント低くなっているが、年齢別に見ると50歳台以降で他の 年齢層よりも若干高めの数値になっていた。「止むを得ないと思うが、生活が 犠牲になるので悩んでいる」、「転勤できないので断わる」は当然、既婚者の 方が高い回答率となっている。 役職別には、係長代務、係長・主査で「会社である以上当然」と考える者が 平均より高く、未婚で、係長代務42.9%、係長・主査43.2%と4割台、既婚で は、係長代務26.7%、係長・主査39.7%となっている。 (2)職場の対応 職場の対応について、松田保彦の見解を以下に簡約する。神奈川県立婦人総 合センターの「主婦の再就職調査」(昭和62年3月)では、女子労働者からみ た均等法に対する企業の対応即ち「均等法施行後も職場に何の変化もなかった」 と思っている人が73%いるとされる。一方、企業に対する各種の調査によると、 均等法を契機として、女性の能力活用に積極的である企業が多いとされる。 このギャップは、均等法施行に伴う企業における制度面での変化は示された が、それが未だ実態の面に表われてきていないことによるのであろう。 結局のところ、均等法の職場で現在進行しつつある最も顕著な動きは、すで に働く意欲と能力を備えている女性をより一層自覚させ、そうでない人達は従 来どおり一般職もしくは定型的職務に固定したり、パートタイム労働者に切り 替えられようとしており、潜在的な意欲と能力を持っている人達を掘り起こす ことに必ずしも成功していない。 かくして、わが国のように比較的均質な労働力を持つ社会で、しかも雇用平 等の理念の下においては能力主義管理が決してもたらすはずのない、労働力な

いし労働市場の両極化が起こることになる301。

77

(25)

企業は均等法により制度上多大なインパクトを受けたが、今後も均等法の趣 旨を完全に果すためにも、また女子労働者を有効活用するためにも、女子労働 者の今後の活用方針と問題点を考察しなければならない。 Ⅳ女子労働者の今後の活用方針と問題点 A調査に基づき、企業における女子の活用についての方針、考え方について みると(M、A)、「法施行前から、男女区別なく扱う方針ができており、今 後もその方針でいく」企業が61%で第一位、次に「募集、採用、配置、昇進等 について更に男女の機会均等を進める」企業33%、「女子にはより積極的に教 育訓練や昇進の機会を与えて採用を図っていく」企業20.4%の順に多くなって いる。(図13参照) 図13女子の活用方針(M、A) Cl, 旧0 0 0 0 0 0 0 7 6 5 4 3 2 [] その他

i鱗!

資料出所:労働省婦人局「女子労働者の雇用管理に関する調査(抄)」 図出所:『季刊労働法147号』178頁 78

(26)

また.A調査は、女子活用に際しての問題点として(M,A)、第1位が「女 子の勤続年数が平均的に短い」で51.1%の企業が挙げている。次に「家庭責任 を考慮する必要がある」が34.3%、「一般的には女子は企業が求める職業能力・ 意欲を備えていない」が29.1%、「女子は法制上の制約がある」24.6%、「顧 客や取引先を含め社会一般の理解が不十分である」19.1%、「雇用管理改善の 全般的見直しに時間がかかる」9.4%といった順に女子活用に当っての問題点が

挙げられるとする31k(図'4参照)

図14.女子活用に際しての問題点 完 60 50

熟醗蕩露駕…騒欝蕊誉灘慧.;

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す その他 資料出所:図13と同出所 図出所:図13と同出所 B調査によれば、企業の女子活用方針として、昭和60年度以前(三年程度) では、「男女にこだわらず個人の能力・適性に応じて戦力化・活用を図る(能力 79

(27)

中心型)」が39.6%で第1位となっているが、これは第2位の「女性は、補助的 な業務を中心に戦力化・活用を図る(補助的活用型)」の339%と接近してい

る32とまた、法制定後の昭和61年度以降(3年程度)では、「能力中心型」が

54.8%と大幅増加したのに対し、「補助的活用型」は15.3%と半減した。(表 1参照)しかしながら、;「女子は特定の専門分野(システム・エンジニア、 調査研究部門)を中心に戦力化・活用をはかる(専門的活用型)」は。法施行 の前後で余り変化はない。また、産業別には、サービス業は、女子労働者の能 力中心型活用をしており、製造業は補助的活用型から能力中心型活用へ重点移

動がなされつつあるようである331。

表1女子の活用方針 (単位:社、影) 資料出所:雇用職業総合研究所「企業における女子の戦力化・活用に関する調査 結果報告書」1987年3月、16ページ。 表出所:遠藤雄二稿「日本の女性労働」日本経営学会編 『産業構造の転換と企業経営』千倉書房、239頁、1989 また、有職婦人クラブの「女子労働能力活用状況調査」(昭和62年10月)に よると、今後の女子活用方針(M、A)として、「女子の教育訓練に力を入れ て女子の能力の向上をはかる」企業が約%(第一位)で、「有能な女子を役付 に登用する」企業27%、「これまで女子のいなかった職場にも女子を配置する」、 「女子の採用を増やす」、「男子だけを募集していた職種(区分)を改め女子 にも門戸を開く」、「男女差をなくし、総合職、一般職などの区分によって管 80 昭和60年度以前 (3年程度) 昭和61年度以降(3年程度) 男女にこだわらず,個人の能力・適性に応 じて戦力化・活用をはかる 39.6 54.8 女子は特定の専門分野を中心に戦力化・活 用をはかる 13.7 14.8 女子は補助的な業務を中心に戦力化・活用 を図る 戦力化・活用については検討中である 33.9 5.4 0℃ 15.3 ・11.2

(28)

理する」企業も各々1割前後ある。また、「とくに変えるつもりはない」企業 も約2割あるが、これらの企業の中には、「法施行前から女子の能力を活用し ていた」企業もある。従って、全般的には、男女の差別をなくし、女子の積極

的活用を試みようとする企業が多いといえる34)。

図15.雇用管理全般について %%%%%%%%%%% 00000000000 09876-34321 1

一一一

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努 努め

行 つ 行って Z て して て し て し、 る し1 る 3 女子について配置転換や女子リーダー制やプロジ女子に対する予断や偏見 教育訓練などを計画的にエクトチームなど女子のをなくすよう男子従業員 行っていますか。士気の高揚や活用を図ろや男子管理職の意識啓発 ような取組みをしていまに努めていますか。 すか。 資料出所:労働省婦人局婦人政策課「女子の雇用管理に係る自主点検表采計 結果について」 図出所:『労働時報」15頁 C調査は現在の雇用管理全般について言及しているが、将来の活用方針にと

って示唆が多いと考えられるので以下述べる。それには、「女子について配転

教育訓練などを計画的に行っている事業所及び女子の士気の高揚や活用を図る

取組みを行っている事業所は6割程度、また、女子に対する偏見をなくすため

の男子管理職への意識啓発を行っている事業所は約8割となっている(図15参

照)」と記している。 また、最近、総合職、一般職などのコース別雇用制度によって、男女差をな

くそうとする企業が増えてきている。この点について、大脇雅子は、「一般職、

総合職などのコース別雇用制度は、残業、出張および転勤(転居も含む)の可

否をコース分けの基準としており、また入社時に女子は一般職と筋い分けをす

る企業が多く、しかも入社後のコース転換が困難な状況では、女子労働者の能

81

(29)

力開発の機会が逆に狭められているといえる。すると、現状ではこのコース別

雇用制度は、男女機会均等・男女平等のためではなく、間接的差別のためにあ

るという誇りを免れえない31と指摘する。また、最近、転勤を伴わない「総

合職と一般職との中間職」を、総合職・一般職以外に設置する企業も現われた

が流通業の地域型社員と同じ性格であろう。 いずれにしても、グローパリゼーショメリーストラクチャリングなど新し

い経営環境を迎えている企業が生き残りを図るためには、男女を問わず、能力・

適性のある労働者の活用を実行せざるおえない。また、高橋久子は、「女子の

雇用管理はひとり女子のみの問題ではなく、男子を含めた雇用管理全般の見直

しが必然になると考えられ、その中で、労働時間の短縮を始めとする、長期的

視点に立った活力の維持酒養を考慮した雇用管理を目指していくことが国際的

観点からみても時代の要請であるといえよう躯)し」と問題指摘している。

前章では、「女子労働者の今後の活用方針と問題点」という企業の政策・制 度面の対応に論及したが、次章では、企業の実態面での対応すなわち女子労働者 のニーズおよびウォンツを十分に反映して女子労働者のモチベーション極大化 を図るために企業が取るべき人事管理について考察を試みることとする。 V女子労働者の人事管理 人事管理の体系には、第Ⅲ章「男女雇用機会均等法施行の影響」第1節「企 業の人事管理制度への影響」で扱った①募集・採用②配置③昇進④教育 訓練⑤福利厚生⑥定年、退職および解雇の他、賃金、労働時間・休暇制度、 モチィベーション.モラール、労使関係などがある。ここでは論旨上の問題か ら、Ⅲ章1節で取扱った6項目のうち、男女均等度の進捗状況が遅れている

②配置③昇進④教育訓練⑥定年、退職および解雇註81こついて、如何なる女

子労働者の活性化策があるかを考察するとする。 まず、女子労働者の活」性化策としては、①複数進路選択制度②フレックス タイム制度③産休.育児休暇制度④目標管理システム(MBOシステム)⑤[] 己申告制度⑥グループリーダー制度⑦パーソナルコーチ市l渡⑧ジョブシェアリング 82

(30)

制度⑨小集団活動⑩提案制度⑪人事考課制度⑫職能資格制度⑬再雇 用・再就職制度⑭社内公募制⑮苦情処理機関の活用、などが考えられる。 特に、本章では、現代が、就業形態や生涯設計の多様化を必要としており、 女子労働者も個別のキャリアプランを念頭におき主体的・積極的にライフプラ ンを構築する人が多数である時代であるとの認識から、①複数進路選択制度に 重点をおいて論を進めることとする。 ’・配置 まず、「配置」の男女均等化を進めるためには、①目標管理システム②自 己申告制度③人事考課制度④職能資格制度⑤複数進路選択制度などの女 子労働者活性化策が考えられる。 (1)目標管理システム 厳しい経営環境にある企業が生存を図るためには、男女の差によらず、労働 者個人の能力・適性に基づいた個別管理を導入せねばならない。その個別管理 の代表的なものに目標管理(MBO)システムがある。 ①目標管理システムの内容 「目標管理システム」とは、社員1人ひとりについて、(ア)企業の構成員が企 業の目的と目的達成のための方針の範囲内で向こう6カ月または,年間の業務 目標を明確にたてさせ、(イ)その目標の達成を目指して行動させ、(ウ)半年または 1年を経過した後に、目標の達成状況をチェ、、,クし、(エ)動機づけ、自己啓発、

能力開発、人事考課、昇給、昇格、異動などに役立てるというシステムである373

②目標管理システムの事例 次の「共同石油」の事例は、荻原勝の『男女雇用機会均等法の労務』からの 引用である。

<共同石油38)>

同社では、女子社員も含めた全社員を対象にして、目標管理システムを実施 している。 社員は、上司から示された部・課の部門目標を踏まえて、一人ひとり向こう 六ヶ月間の業務上の目標を「目標カード」に鉛筆で下書きする。具体的には、 自分が担当している主な職務の一つひとつについて、 83

(31)

・なにを(目標) ・どれだけ(達成の基準) .どのように(達成の具体的方法) ・いつまでに(スケジュール)

達成するかを書き、上司に提示し、話し合う。上司はその話し合いを通じて、

・目標が部門または課の方針に沿っているかどうか .取り上げられた目標が、本人の能力、実力、キャリアに見合ったものであ るかどうか .取り上げられた目標以外に、なにか重要な目標を見落としていないかどう か ・抽象的な表現やアイマイな表現を使っていないかどうか ・問題の把握が適切であるかどうか ・原因の追及がなされているかどうか をチェックする。 話し合いを行って、互いに納得したら、部下に「目標カード」を正式に二通 作成させる。(表2参照) 正本は部下が、副本は上司が持つ。 目標カードの提出時期は 上期分(4~9月)3月15日 下期分(10~3月)9月15日 となっている。 社員は半年間、目標カードに記入した目標にチャレンジする。そして、6ケ 月が過ぎてから自己反省をし、「結果報告判定表」を作成する。具体的には、 期初の設定目標のそれぞれについて、達成状況を自己記入し、さらに、「達成 度」「困難度」「努力度」「貢献度」という四つの側面から自己評価をする。 自己評価は、 A…・所期以上であった。 B….ほぼ所期どおりであった。 C・…所期の成果までいかなかった。 84

(32)

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(33)

の三段階評価で行う。そして、上司に提出する。上司も、目標設定の一つひと つについて三段階評価を行ったあと、最後に総合評価を実施する。総合評価は、 A・…期待以上のものがあった B…・期待どおりであった C・…普通であった り….やや期待に欠けるものがあった E…・期待以下であった の五段階で行われる。 評価の結果は、次期の目標設定、部下の指導。育成に生かされる。 なお、個人個人の目標設定にあたっては、各人が課としての目標についてよ く理解しておくことが重要であるという考えから、上下、男女の別なく「課内 会議」をよく開き、コミュニケーションと情報伝達を十分に行うように指導し ている。 (2)自己申告制度 森五郎によると、職場不適合者が現われた場合、独断的・一方的に原因を決 めこむのは非常に危険である。このような危険を予防するために、近年、本人 との人事相談制度、従業員態度調査、感受性訓練などが重視されている。さら に、カウンセリングなど管理者サイドからの適性判定に加えて、従業員の側か ら自分自身の希望を積極的に申告する自己申告制が多くの企業で実施されてい

る39.

①「自己申告制度」の内容 荻原勝によると、「自己申告制度」というのは、社員1人ひとりについて、 定期的に、(a)現在の仕事に対する満足度(b)自分の能力を生かしている程度 についての判断(c)職場の人間関係、上司とのコミュニケーションなどにつ いての評価(d)担当したい仕事の具体的内容(e)今後の能力開発の目標など を申告させ、その申告を能力開発や異動、教育研修などに役立てる制度であ

るとする401。

「自己申告制度」は、若年・中年労働者に多いとされる自我欲求や自己実 現欲求の強い社員や専門的知識・技術を持った社員のモチベーション(労働意 欲)の向上にとって非常に効果的であり、また今後の企業が必要とする人材が 86

(34)

このような人材であることから、今後ますます活用されるべき制度であると 考えられる。 ②「自己申告制度」の事例

く信越化学工業41)>

同社では、従業員の能力開発、人材育成、適正配置などを目的として「自 己申告制度」を実施している。 社員は年一回「自己申告表」(表3)を記入して上司に提出する。主な記 入項目は次に示すとおりである。」 ①現在の担当職務 ②現在の担当職務についてからの年数 ③現在の担当職務についての自己評価 ④異動についての希望 ⑤自己啓発の状況 ⑥現在保有している資格、今後取得したい資格 ⑦会社および職務等についての意見・希望・提案(自由記入) 社員は、自己申告表を記入して上司に提出する。そのあと、上司との面談 を行うが、同:社では面談者の心得を次のようにまとめている。 ①事前に自己申告表に十分目を通し、相手の立場に立って理解するよう努 める。 ②上司に批判的意見が出るかもしれないが出ても感情的になったり、高圧 的な態度になったりして、話しにくい雰囲気にならないよう注意する。 ③自己申告表に書かれている巾で、特に本人にとって問題の多い項目(例 えば、適性がないという理由で異動を希望している場合など)について 十分に話し合うこと。 ④不満や悩みについては十分話し合い、未消化のままで終ることなく、何 らかの解決策を見出すよう一緒に考える。 ⑤異動希望については、できるだけ本人の希望を尊重するが、人員配置計 画、業務計画、能力・適性などから総合的に判断するので、必ずしも実 現するとは限らないことを、部下にもよく伝える。 ⑥部下の希塑・意見・不満等に対しては、必ず自分の意見を伝える。 87

(35)

座騎博く↑幽鯖↑璽迷↑(鋼倒逢)↑(唄詔)↑くぞ(屋)

網加田旧皿e柵H朴逗鋼哩両蝋

①霊[/皿の[国1日函/護唾鴬叩忘彊欄

88

(36)

⑦以上の項目に留意して面談した後、面談者意見欄に必ず所見を記入するこ と。その際、体裁にとらわれることなく、できるだけ具体的に記入すること。 (3)、人事考課制度~ 森五郎は、現職務の遂行度、昇進、昇給ないし配置転換の必要性を知ったり、 社員の職務ないし能力開発へのモチベーションを高めたりするには本人の能力、 勤務態度、勤務成績を明らかにしなければならない。これが人事考課、勤務評

定、実績評定であると指摘する42k

..1- これまで'よ、女子労働者が結婚・出産などで勤続年数が短かったり、労働意 欲や職業意識が希薄であったため、企業側が人事考課を積極的に実行しなかっ た。 しかし、現在は、人的資源の有効活用の点からも、また女子労働者の勤務年 数が長くなっている点からも、女子労働者の人事考課を積極的に行なわなけれ ばならない。 ①「人事考課制度」の内容

森五郎は、人事考課という制度を有効なものにするための計画考課者の決

定、考課の統制などを「人事考課の管理」と呼ぶとすれば、この管理を合理

的にするためには、大要つぎのことが必要であると説く43L

⑧人事考課の目的に応じた考課要素の選定 ⑪評定方法が、客観的であり、かつ比較可能的であること。 ◎評定者の適正性 、評定過程上の心理的偏向を防ぐことに努めること。 ②「人事考課制度」の事例

く信越化学工業44)>

同社の人事考課は、 。昇給・昇格用人事考課=過去一年間の成果・実績と保有している能力につ いての評価。将来の可能性の判定とを合わせて、その人物を総合的見地かい ら評定するもの ・賞与用人事考課=当該期間に本人の示した勤務ぶり、仕事の成果などの勤 務実績を中心に評定を行うもの とに大別される。 89

(37)

同社は、職能資格制度において社員の資格等級を、社員クラス(四級、三級、

二級、一級)、主事クラス(三級、二級、一級)、副参事(四級、三級、二級、

一級)、参事に区分しているが、このうち、女子社員の大半が所属する社員ク

ラスについて、評定要素と観察内容を示すと次のとおりである。《 双書_L天の葛EKをもって葉務に臨み、雲現可能で効栗 壬の発見・1甚案 」当業務を能率的一正H疎 贋目I〔 もので、あった刀 FM同説lU目lをニニH、孫 D指不を理解し、担当業務あるいは専門の知諾 いつ'百l僚の我 」I 会社の規HIl・卜百M 再Zn・- 」当業務を真面目に陰日 、園H1ホ、

これらの評定要素はそれぞれ等分の重みを持つものではなく、ウェイトが付

けられている。社員クラスについて、評定要素のウェイトを示すと、表4のと おりである。 90 観察内容 常に改善工夫の意欲をもって業務に臨み、実現可能で効果 的な方法の発見・提案を行ったか(もしくは、その能力・素 質を有するか) 担当業務を能率的、迅速に遂行し、結果は十分信頼に足る ものであったか。また必要な報告説明を適時的確に行ったか 上司の指示を理解し、担当業務あるいは専門の知識を持ち、 これを活用して成果をあげたか。もしくは、その能力・素質 を有するか。 必要に応じて自分の意見を上司・同僚に伝え、かつ同僚の提 言を素直に聞き、会社の規則・上司の指示・職場の規律を守 -,て、担当業務を真面目に陰日向なく遂行したか。 組織の一員として、上司・同僚との融和を保ち、また必要 な協力を自発的に行ったか。 評定要素 1改善工夫 2.業務処理 3.知識・判断 4.勤務態度 5.協調性

参照

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