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①「自己申告制度」の内容

荻原勝によると、「自己申告制度」というのは、社員1人ひとりについて、

定期的に、(a)現在の仕事に対する満足度(b)自分の能力を生かしている程度 についての判断(c)職場の人間関係、上司とのコミュニケーションなどにつ いての評価(d)担当したい仕事の具体的内容(e)今後の能力開発の目標など を申告させ、その申告を能力開発や異動、教育研修などに役立てる制度であ

るとする401。

「自己申告制度」は、若年・中年労働者に多いとされる自我欲求や自己実 現欲求の強い社員や専門的知識・技術を持った社員のモチベーション(労働意 欲)の向上にとって非常に効果的であり、また今後の企業が必要とする人材が

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このような人材であることから、今後ますます活用されるべき制度であると 考えられる。

②「自己申告制度」の事例

く信越化学工業41)>

同社では、従業員の能力開発、人材育成、適正配置などを目的として「自 己申告制度」を実施している。

社員は年一回「自己申告表」(表3)を記入して上司に提出する。主な記 入項目は次に示すとおりである。」

①現在の担当職務

②現在の担当職務についてからの年数

③現在の担当職務についての自己評価

④異動についての希望

⑤自己啓発の状況

⑥現在保有している資格、今後取得したい資格

⑦会社および職務等についての意見・希望・提案(自由記入)

社員は、自己申告表を記入して上司に提出する。そのあと、上司との面談 を行うが、同:社では面談者の心得を次のようにまとめている。

①事前に自己申告表に十分目を通し、相手の立場に立って理解するよう努

める。

②上司に批判的意見が出るかもしれないが出ても感情的になったり、高圧 的な態度になったりして、話しにくい雰囲気にならないよう注意する。

③自己申告表に書かれている巾で、特に本人にとって問題の多い項目(例 えば、適性がないという理由で異動を希望している場合など)について 十分に話し合うこと。

④不満や悩みについては十分話し合い、未消化のままで終ることなく、何 らかの解決策を見出すよう一緒に考える。

⑤異動希望については、できるだけ本人の希望を尊重するが、人員配置計 画、業務計画、能力・適性などから総合的に判断するので、必ずしも実 現するとは限らないことを、部下にもよく伝える。

⑥部下の希塑・意見・不満等に対しては、必ず自分の意見を伝える。

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⑦以上の項目に留意して面談した後、面談者意見欄に必ず所見を記入するこ と。その際、体裁にとらわれることなく、できるだけ具体的に記入すること。

(3)、人事考課制度~

森五郎は、現職務の遂行度、昇進、昇給ないし配置転換の必要性を知ったり、

社員の職務ないし能力開発へのモチベーションを高めたりするには本人の能力、

勤務態度、勤務成績を明らかにしなければならない。これが人事考課、勤務評

定、実績評定であると指摘する42k

これまで'よ、女子労働者が結婚・出産などで勤続年数が短かったり、労働意..1-

欲や職業意識が希薄であったため、企業側が人事考課を積極的に実行しなかっ

た。

しかし、現在は、人的資源の有効活用の点からも、また女子労働者の勤務年 数が長くなっている点からも、女子労働者の人事考課を積極的に行なわなけれ ばならない。

①「人事考課制度」の内容

森五郎は、人事考課という制度を有効なものにするための計画考課者の決

定、考課の統制などを「人事考課の管理」と呼ぶとすれば、この管理を合理

的にするためには、大要つぎのことが必要であると説く43L

⑧人事考課の目的に応じた考課要素の選定

⑪評定方法が、客観的であり、かつ比較可能的であること。

◎評定者の適正性

、評定過程上の心理的偏向を防ぐことに努めること。

②「人事考課制度」の事例

く信越化学工業44)>

同社の人事考課は、

。昇給・昇格用人事考課=過去一年間の成果・実績と保有している能力につ いての評価。将来の可能性の判定とを合わせて、その人物を総合的見地かい ら評定するもの

・賞与用人事考課=当該期間に本人の示した勤務ぶり、仕事の成果などの勤 務実績を中心に評定を行うもの

とに大別される。

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同社は、職能資格制度において社員の資格等級を、社員クラス(四級、三級、

二級、一級)、主事クラス(三級、二級、一級)、副参事(四級、三級、二級、

一級)、参事に区分しているが、このうち、女子社員の大半が所属する社員ク

ラスについて、評定要素と観察内容を示すと次のとおりである。《

双書_L天の葛EKをもって葉務に臨み、雲現可能で効栗 壬の発見・1甚案

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いつ'百l僚の我

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会社の規HIl・卜百M 再Zn・-

」当業務を真面目に陰日

、園H1ホ、

これらの評定要素はそれぞれ等分の重みを持つものではなく、ウェイトが付

けられている。社員クラスについて、評定要素のウェイトを示すと、表4のと おりである。

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観察内容

常に改善工夫の意欲をもって業務に臨み、実現可能で効果 的な方法の発見・提案を行ったか(もしくは、その能力・素 質を有するか)

担当業務を能率的、迅速に遂行し、結果は十分信頼に足る ものであったか。また必要な報告説明を適時的確に行ったか 上司の指示を理解し、担当業務あるいは専門の知識を持ち、

これを活用して成果をあげたか。もしくは、その能力・素質 を有するか。

必要に応じて自分の意見を上司・同僚に伝え、かつ同僚の提 言を素直に聞き、会社の規則・上司の指示・職場の規律を守

-,て、担当業務を真面目に陰日向なく遂行したか。

組織の一員として、上司・同僚との融和を保ち、また必要 な協力を自発的に行ったか。

評定要素

1改善工夫

2.業務処理

3.知識・判断

4.勤務態度

5.協調性

表4.信越化学の人事考課の評定要素と ウェイト

6J塾M

給与給与給 昇賞昇賞昇

、】

r1 L」

表出所:荻原勝264頁、1986

なお、同社では、人事考課が公正に行われるよう、評定に当たる者に対して 次のような一般的注意を与えている。

(1)部下の評定は、人事担当部門から頼まれた臨時の仕事ではなく、管理者とし ての本来の職務であるという認識をもって公正を期して行う。

(2)単に被評定者の学歴・年功・個人的偏見・噂話などでなく、被評定者の行う べき仕事の内容・責任等について、一般的に見て自然に要求し得ると判断さ れる遂行度合を基準として、被評定者がどの程度業績に貢献したか、またど の程度の能力を発揮したかを公正に判定する。

(3)被評定者の常日頃の勤務状況、仕事のできばえを把握し、また関係者の意見 などにより公正な資料を集めておき、特殊な、断片的な一部分の事象によっ て全般的な判断を下すことのないように注意する。

(4)評定はなるべく中休みせずに、一気に行うこと

(5)評定にあたっては、どうしても目立った動きに目を,奪われ、担当業務を黙々

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社員社員社員 1級23級4級 211 211 332 54、3 222

223 233 122 123 101010 101010 (1)改善工夫bP

昇給 賞与 (2)業務処理 昇給 賞与 (3)知識・判断 昇給 賞与 (4)勤務態度 昇給 賞〆与 (5)協調性 昇給 賞与

計 昇給

賞与

と誠実に遂行している者の努力は、地味で目立たないがゆ'えに見落としがち であるが、こうした努力こそ経営にとっては貴重なのであり、評定者はこれ

を軽視することなく、適正に評定する。

(4)職能資格制度

①「職能資格制度」の内容

荻原勝によると、「職能資格制度」とは、職務遂行能力、職務経験年数など

'6、

格等級に格付けして、等級に応じた処遇を行う制度である。経験を積み職務遂 行能力が向上するにつれて、職能資格等級が上っていく。職能資格等級が上が ると、賃金も上昇し、職位も上昇していくことになる45)。

また、「本来、能力主義は異質b異能主義〈i個別主義であり」、これを前提と して、職種・職群別に分けることは分散が広がることであり、これへの統合基 準として職能資格制度が導入されている。~

職能資格制度の今日的意義と役割について、西山美瑳子は、楠田丘の見解を 引用して、③年功・職階に代る新しい処遇基準であり、職能資格制度をベース にした昇格・昇給処遇が展開されること◎1人ひとりの評価・育成の基準に よる個別管理が行なわれること◎生涯を通して、個人の意思と適性に応じて のキャリア形成の促進という多元管理が行なわれ、「職能資格制度に組み込ま れたキャリア形成コースの進路を、個人の意思と適性によって選択し、定年の 日まで仕事と能力を高め続ける」こと、にあると指摘している46)q■

近年、「職能資格制度」を実施する企業が増えているが~女子労働者がしば しばランク付けされる定型的業務や補助的業務に関しては等閑視されがちであ

語?このような業務に従事する女子労働者に対しても、男子労働者同様に、職

能資格制度を適用しなければならない。~~

②「職能資格制度」の事例

く日興証券47)>

日興証券では、次の三つの職系に分けて、社員を採用・処遇している。

①総合職系列

社業全般の総合的な職務領域において、職種・職務の変更ならびに勤務地 の変更により、広範かつ異質の職務経験を経ることが前提とされている職

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