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幼保一体化に対する保育者の意識に関する研究 : 認定こども園に対する全国調査に基づいて

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(1)      平成24(2012)年度 学位論文. 幼保一体化に対する保育者の意識に関する研究  一認定こども園に対する全国調査に基づいて一. 修同 院停 学学 大州 学教 大校 育学. 兵庫教. 士 課 程. 平. 回. M. 年平. コ. 下 里. 里 枝. 1. 0 0. 1. ー ス. 5. F.

(2) 目. 次 問題と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… σ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1.  1.研究の動機  2.三保一体化のシステムをめぐる混乱.  3.幼保一体化の歴史的経緯   (1)幼稚園・保育所のはじまり.   (2)戦後の保育政策と二元化の強化   (3)平成元年の改訂から認定こども園法の成立まで     1)少子化対策     2)少子化に伴う穿下施設の施策  4.幼保一体化の理念と保育者の意識  5.本研究の目的 方法・・・・・・・・・・・・・・・・….・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 14.  1.予備調査.   (1)調査対象者   (2)調査時期   (3)調査手続き   (4)調査内容  2.本調査.   (1)調査対象者   (2)調査時期   (3)調査手続き   (4)調査内容 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 16.  1.本研究の調査対象園について  2.本研究の調査対象者について  3.幼保一体化に対する保育者の意識について    (1)予備調査の結果と項目作成    (2)本調査の項目についての基礎的分析      1)一致型の項目について      2)高同意型の項目について      3)中同意型の項目について      4)同意分散型の項目について      5)低同意型の項目について    (3)項目評定値についての比較分析      1)認定こども園の設置者に着目して:公立と私立の比較      2)保育者の主な職歴に着目して:保育士と幼稚園教諭.      3)保育者の年齢に着目して:40歳以下と40歳以上の比較      4)運営形態に着目して:保育所型・幼稚園型・幼保連携型の比較.

(3) (4)幼保一体化に対する保育者の意識について   1)幼保一体化に対する保育者の意識に関する.     因子分析結果   2)幼保一体化に対する保育者の意識に関する     因子分析結果についての考察 (5)保育者の「職務への認識」について   1)保育者の「職務への認識」に関する因子分析結果   2)保育者の「職務への認識」に関する因子分析結果     についての考察 (6)保育者の「職務への認識」が「幼保一体化に対する意識」.   に与える影響について   1)幼保一体化のメリットについての保育者の意識への影響   2)幼保一体化のデメリットについての保育者の意識への影響   3)小学校等との連携についての保育者の意識への影響   4)職員間の協同性についての保育者の意識への影響 総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 62.  1.話し合い等による保育の質の向上  2.保育者の意識から実践へ  3.「公」の役割について  4.保育者の「職務に対する認識」との関連について.

(4)                  問題と目的 1. 研究の動機.  2008年4月H市で初めて幼保一体化園が開設した。H市幼稚園教育振興計画に基づく一 体化である。筆者は、開設準備と開設から4年間園長職を務めた。認定こども園ではない。. 所管は、幼稚園は教育委員会、保育所は健康福祉局である。ひとつの建物に、幼保の機能 を残し、現行の制度を変えないで一体化の運営をしている。所管の違いから予算処理は別々. で、文書は両方からくる。幼稚園と保育所の枠を超えて就学前教育の充実をめざし、双方 の良さを活かした保育・教育をめざしてスタートした。保育士と幼稚園教諭が、それぞれ の施設の前例や職歴にとらわれることなく、新しい施設のあり方を試行錯誤しながら実践 している。.  一方で、前例のない幼保一体化園という新しい形の就学前施設の開設の中で、当事者と して、所管を残したままの運営には随分苦労した。幼稚園と保育所を物理的に一緒にした だけで上手くいくものではない。いずれも就学前施設でありながら、根拠となる法律が異 なるので、保育所は「児童福祉法に基づく保育」、幼稚園は「学校教育法に基づく教育」を. 提供する施設であるといった紋切り型で実態に即さない運営になっている。運営形態のち ぐはぐさにより、実際保育を行っている職員にも負担をかける場面が少なからずあった。  森上(2005)は、現在抱えている保育園や幼稚園の課題を次のように述べている。「わが国. では、制度的に“保育に欠ける乳幼児”は保育園に、“保育に欠けない幼児”は幼稚園にそ れぞれ入園することが定められています。(中略)しかし、最近の社会状況の大幅な変化に. 伴って、さまざまな問題が生じ、必ずしも制度が有効に機能しなくなってきています。第 一には現在の“保育の実施基準”によって、保育に欠けるか欠けないかを区分することが 困難になってきているということがあります。たとえば、共働き家庭よりも専業主婦の方 が育児不安や育児ノイローゼの割合が高いことなどもあり、就労しているか否かで保育に 欠けるかどうかをきめることはできにくくなってきています。(中略)とくに、働く目的が. 児童福祉法制定の頃と違って、経済的理由によってやむを得ず働くということよりも、生 き甲斐を求めて働く人が増加してきているということがあります。第二には、少子化の進 展に伴って、乳幼児人口が大幅に減少し、地域で幼稚園と保育所をそれぞれ別に設立し、 運営することが困難になってきているという事情もあります。第三にそれぞれの地域には それぞれの異なった保育二・一一・一ズがあり、それぞれの保育園、幼稚園はそれに対応すること. が求められています。しかし、そういった変化にもかかわらず、これまでの保育施設、と.                    1.

(5) くに保育園や公立の幼稚園は選択性をとってこなかったということもあって、すべての子 どもを受け入れて保育をする必要があることから、画一的になっていきているという批判 があります」と今の保育を見直すことを提案している。.  こうした状況を反映して、現下、保育所、幼稚園、4つの種類の認定こども園、筆者の 勤務していた所管が別々のままの幼保一体化園など、就学前施設の運営形態は多様なもの となっている。保育のあり方は、従来とは異なる様相を呈し、混乱の印象もぬぐいされな いが、過渡期の生みの苦しみと捉えれば希望はあるだろう。その職場において、幼稚園教 諭も保育士もやりがいと誇りをもって保育ができることが重要である。しかし、様々な負 担を強いられ、満足感を得られないしんどいことも多々あるのではないだろうか。  当園で、卒園前に子どもに「将来の夢は?」と尋ねたら、「ようちえんのせんせいになり. たい」「ほいくえんのせんせいになりたい」「こどもえんのせんせいになりたい」と3種類 の答えが返ってきて驚いた。子どもの中で違いがどうなのかはわからないが、当園のしく みを象徴していると思った。また在籍の違いはあっても子どもにとって両親や祖父母以外 で、初めて長期間一緒にいた大人が保育者であり、その保育者が子どもの印象に残る憧れ の存在になり、「大きくなったらあんな先生になりたい」と思ってくれたのならとてもうれ. しいことである。職員間の連携も良かったこともあり、子ども達が保育者(保育士、幼稚. 園教諭)と親しみ、当校での生活が楽しく過ごせていたことを感じることができた。一体 化の運営に苦労したけれども、保育者にとって誇りに思う出来事であった。.  ライブドア2011年版「子どもがなりたい職業ランキング」の6位に保育士が選ばれて いた。他のランキングにおいても毎年大抵10位以内に保育士や幼稚園の先生がある。今 後、一体化した施設で幼い頃からの夢を叶え、憧れだった職業に誇りをもって仕事ができ るのだろうか。幼保一体化に先鞭をつけた認定こども園が、保育者にとってやりがいのも てる職場になっているのだろうか。幼歯一体化に対する保育者の意識を探ることがこの研 究の大きな目的である。. 2。幼保一体化のシステムをめぐる混乱  2008年3.月28日に新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針がともに告示された。特に 保育所保育指針は今までの局長通知から大臣による告示となる大きな改定だった。この際、. 特に教育に関わるねらい及び内容はほぼ統一された。保育内容はかなり細かいところまで 重なりがある。これは、これからの幼保の関係を示唆するものであったのだろう。. 2009年に政権交代があった。民主党政権は自民党の政策を引き継ぎ、2010年1,月に「子                    2.

(6) ども・子育てビジョン」を発表、「幼保一体化」を含む保育制度改革の方針を示した。2010. 年4月に「子ども・子育て新システムの基本方向」を公表した。これについて、日本経済. 新聞(2010年4月28日)は、「政府の「子ども・子育て新システム検討会議」は27日初 会合を開き、厚生労働省所管の保育所と文部科学省所管の幼稚園を「こども園」(仮称)と. して統一する方針を打ち出した。実態にそぐわない保育所の利用用件を撤廃し、子育て関 連の補助金や給付金なども一本化する。ただ具体的にはハードルが多く、計画実現にはな お不透明さも残る。(中略)ただ、今回出した方針には理想論を揚げた印象もぬぐえない。. 幼歯の一月前を巡っては厚生労働省と文部科学省がなお対立している。財源確保の具体策. や実施に向けた工程表も明らかになっていない。省庁の縦割りを崩し、国を挙げて取り組 む決意を問われる」とあった。.  幼稚園と保育所の一体化論は、今浮上してきたものではなく、戦前から議論されてきた 古くて新しい課題である。中谷(2008)によれば、「幼保一元化論に連なる主張の最初は、1926. 年の第1回全国児童保護事業大会においてである。この大会の第三部会は、同年に公布さ れた幼稚園令に、幼稚園のなかに託児所をも含むかのような表現があるとし、「同一地区内 に類似の内容を有する幼稚園と託児所又は保育園を対立せしめざること」(中略)つまり、. 幼児教育施設の二元化に反対するとともに、3歳以上の幼児を幼稚園に、3歳以下の乳幼児 のための保育施設については別の法令を制定するというものであった」と述べている。ま た、末光(1972)は、「幼保一元化ということを考える場合、ことの良し悪しは別として、 現実には幼稚園と保育所において、その機能・対象等において、否定しがたい差異がある。. たとえば、幼稚園にはない乳児保育が、保育所ではそのウエイトを増しつつあるという状 況など。こうした現実の差異を考えると、そこで働く専門職者は、そうした個々の状況に 対処すべく、それぞれの専門的知識、技術を体得する必要が生ずる。この場合、現今の幼. 稚園・保育所が、そのままの状態で存する限り、教諭と保母は、それぞれが専門職化すれ ばする程、両者は異質な面を生ぜざるをえない。幼保一元化という面で、専門職者として の保育者の問題を考えた場合、この幼保の性格が本質的に問い直されない限り、保母と教. 諭は、厳密には、似て直なるものとしての域にしか留まれないのではなかろうか」と述べ ている。また、竹内(1981)も「幼児教育の問題の中で、今日最大のものは「幼保一元化」 の問題であるといってよい。(中略)一元化の問題は、歴史的経過の中で生まれたものであ. り、幼稚園、保育所とも現にそれぞれその機能を果たしているものであるので、その一元 化は容易なことではない」と述べている。このように幼保一体化については、長年の議論                     3.

(7) があり、今回の動きは実現に向けた第一歩になったと考えていいのだろうか。.  待機児童の解消などのため、民主党のマニフェストに記載されていた幼保一体化の検討 を2010年9月より内閣府において、幼稚園と保育所の一体化を含めた「子ども・子育て新 システム」の具体的な制度設計について検討が進められた。この制度案要綱に基づき、子. ども・子育て新システム検討会議作業グループの下に3つのワーキングチームが設置され 検討が開始された。研究者や財界人などで構成され、会議の様子はインターネットで公開. された。2011年3月11日の東日本大震災により中断したが、2011年5月に再開した。そ の後、「子ども・子育て新システム検討会議」は様々な立場の方々によるワーキングが32 回も行われた。大きく保育制度が変革していく期待や不安、不満の入り混じった議論の末、. 2012年2月13日に「子ども・子育て新システム」に関する基本制度をとりまとめ、最終 案が提示された。読売新聞(2012年2月7日朝刊)は、政府の「子ども・子育て新システ ム」最終案のポイントは、①幼保一体型の「総合こども園」(仮称)を、2015年度をめど. に創設。②保育所の大半は3年程度で総合こども園に完全移行。幼稚園には移行期限を設 けない。③小規模施設による保育サービスを拡充。④実施財源に消費増税分7000億円程度 を充当と解説している。.  しかし、2012年6月15日の民主党、自民党、公明党の3党合意により、社会保障・税 の一体改革の修正案が国会に提出された。「総合こども園」の創設があっけなく認定こども 園に関する法律の一部改正などにより、「認定こども園」の充実に変わった。認定こども園. 法改正案によると、幼保連携型認定こども園は学校教育・保育及び家庭における養育支援. を一体的に提供する施設とする。認定こども園法により、教育基本法第6条第1項に基づ く学校とすることが盛り込まれることとなる。さらに、児童福祉法及び社会福祉法におけ. る学校教育、児童福祉施設及び第2種社会福祉事業として位置づけられる。このようにな んとも複雑な就学前施設が出現していくようである。所管や保育者の資格、処遇、運営形. 態などたくさんの検討事項が待っている。保育関係者らが子どもの未来について真剣に考 えて議論を重ねてきたにもかかわらず、議論とは違う中味に制度化されていくように思う のは筆者だけであろうか。.  平成24年8月22日に子ども・子育て関連3法(子ども・子育て支援法、認定こども園 法の一部改正法、関係法律の整備法)が公布された。本格施行は平成27年10.月に消費税. が10%に引き上げられる場合、平成27年4月完全施行の予定だそうだ。法が公布された とはいえ現場の混乱はまだまだ続くだろう。.                    4.

(8) 3.幼保一体化の歴史的経緯 (1) 幼稚園・保育所のはじまり.  保育所と幼稚園は同じ就学前の子どもを教育・保育する施設でありながら、機能や役割 の違いから管轄が違いそれぞれに発展してきた。ここで、幼稚園、保育所の歴史的歩みと 東瓦のかかわりの歴史について少し振り返ってみる。.  日本最初の幼稚園は1876(明治9)年に設置された東京女子師範学校(現お茶ノ水女子 大学)付属幼稚園である。これは、学制発布後4年目だった。初代の主任保母であったドイ ツ人松野クララがドイツでフレーベル主義の幼児教育を受けた人だったので、内容的には フレーベル式の幼児教育であったと言われている。フレーベルの教育思想はどちらかとい えば貧しい家庭の子どもを優先的に保障されるべきと考えられていたが、設置場所が東京 湯島という土地で、上層の子弟のための早期幼児教育という性格を色濃く帯びたものであ った。1926(大正15)年に日本で初めて幼稚園に関して独立した法令である「幼稚園令」が. 制定される。吉田(2005)はその内容で特徴的なのは、特別の事情のある場合は、3歳未 満の幼児を入園させることができるということと、保育時間を特に定めなかったことで、 早朝から夕方まで長時間に及んでも差し支えないという記述(同時に出された注意事項に よる)もあり、幼稚園に保育所機能を求めたようである。これを契機として、次第に幼稚 園が全国的に普及していったと述べている。.  一方、保育所は、母親が働かざるをえない貧民の乳幼児を預かり保育する窮民対策施設 として発足した。1890(明治23)年に新潟市で赤沢鐘美・仲子夫妻が創設したのが始まり だと言われている。1900(明治33)年に東京に開設した双葉幼稚園は、地域の貧困層の幼. 児を受け入れるため、7時間から8時間の保育を行い、1911(大正4)年には双葉保育園と 改称した。1919(大正8)年には、最初の公立託児所が大阪に設置された。その後、戦時 託児所や農繁期託児所等が多数設置され、託児所と収容児童の数は増加していった。 (2) 戦後の保育政策と二元化の強化  中谷(2008)は、「幼稚園と保育所の発足経緯とその目的の相違は、戦後になっても解消さ. れず、温存され存続されることとなった」と述べている。中村(2009)によると、1946年の. 第90回帝国議会は、日本国憲法を定める議会であった。その中で乳幼児保育施設について 議論された。内閣総理大臣の諮問機関として設置された教育刷新委員会において、幼稚園 と保育所を一つのシステムとする幼保一元化の要望が出されたが、政府はこれを消極的に 受け止めていた。これに対し保育関係者や女性議員たちは、「乳幼児保育施設の整備拡充に.                    5.

(9) 関する建議」において保育問題は新日本建設の支柱で最も緊急を要する問題とし、幼保二 元制は早急に解決しなければならないと要望した。と当時のことをまとめている。  1947(昭和22)年文部省によって「保育要領」が刊行された。これは、倉橋惣三を委員 長とした幼児教育内容調査委員会が、新しい幼児教育の方向性を目指したものだった。そ の大きな特徴は、保育所や幼稚園の両方を意識したものであった。.  しかし、1947(昭和22)年に学校教育法が制定され、ここから新しい学校制度がスター. トした。幼稚園も同法第1条に規定される正規の学校教育機関に位置づけられ今日の幼稚 園の基礎が築かれた。その目的は「幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達 を助長する」(第77条)ことであるとされた。ただし、2007年に改正された学校教育法の ように幼稚園が始めての学校という表現にはなっていない。これについて、吉田(2005)は、. 「幼児期の教育が小学校以降の教育とは違って、不定型な要素をもっていることを示した もので、学校教育であると同時に、戦前の幼稚園令で見られた保育所的な要素をどこかで ひきずっていたためかも知れない。「教育」という言葉を使わず「保育」としたのは、幼稚. 園における教育が小学校以降の教育とは異なるあり方を示すためと考えられている」と説 明している。.  一方で、戦後の社会的混乱と窮乏状態を背景に、戦災孤児や引揚者などの浮浪児対策を 中心とした児童保護が課題となり、1947(昭和22)年児童福祉法が制定された。この法の 優れたところは、すべての児童の健全育成を念頭に置き、権利主体としての子どもを描い. たものであった。この法により、児童福祉施設の1つとして保育所が規定され、託児所で はなく、「保育所」という名称が確立された。その目的は「日々保護者の委託を受けて、そ. の乳児又は幼児を保育する」(第39条)施設となった。国の所管が厚生省になったのもこ. のときからである。1951年の児童福祉法第39条の改正によって、保育所は「保育に欠け る乳児又は幼児を保育する」施設とされ、この時から、幼稚園と保育所が法規上も行政上 も異なる施設となった。.  中谷(2008)は、「仁保二元制をさらに決定的に確認したのが、各都道府県教育委員会宛 文部省初等中等教育局長、厚生省児童局長通知「幼稚園と保育所との関係について」(昭和. 38年10月28日 文初裏400号 児発第1046号)であった。同通知の主旨は、幼稚園は 幼児に対し、学校教育を施すことを目的とし、保育所は「保育に欠ける児童」の保育を行 うことを、その目的とするもので、両者は明らかに機能を異にするものである。現状にお いては、両者ともその普及の状況は不充分であるから、それぞれその充実整備を図る、と.                    6.

(10) いうものであった。幼保二元制という政府の方針は、これ以後も一貫している」と述べて いる。この通知が出された頃は、高度経済成長期に入り、乳幼児人口も増加し始めた時期 で、保育所、幼稚園ともにその量的整備が迫られていた。幼保のかかわりを希薄にしてい った要因でもある。1953(昭和28)年文部省は学校教育法施行規則を改定し、「保育要領」. から「幼稚園教育要領」へと名称変更を行った。文部省は、あえて「保育」という言葉を 使うことはなく、「幼稚園・教育」と「保育所・保育・福祉」という2つの世界に切り分け てしまった。1956年、我が国で最初の幼稚園教育要領が刊行される。吉田(2005)は、そ の特徴を「①小学校との一貫性を持たせるようにした(6領域が初めて示される)、②幼稚 園教育の目標を具体化して示し、指導計画に役立つようにした、③幼稚園教育における指 導上の留意点を明らかにした。これは幼稚園教育に特化した基準となり、保育所的な要素 と決別することとなった」と述べている。.  幼保一元化をめぐる論議は、1980(昭和55)年あたりまでは、児童、園児の増加が続き、. 財政的にも右肩上がりの時代で、保育所と幼稚園の増設など量的な対応に追われる状況だ ったので大きな変化はなかった。しかし、1980年代後半からの出生率の低下、1989(平成 元)年の合計特殊出生率1.57ショックを迎え、高度経済成長も終わり、バブルの崩壊など で、あらゆる分野での「制度疲労」が見えはじめる。このような変化が幼心の関係に新た な局面をもたらしてきた。. (3) 平成元年の改訂から認定こども如法の成立まで.  高度経済成長期を経て、バブルの崩壊や、少子化の進展や地方分権・規制緩和の推進・ 就労形態の変化・地域社会の希薄化など、今までにない社会状況の出現により、厚労省も 文科省も時代の変化に応じた対応を迫られることになる。認定こども園法の成立までの主 な施策等の流れを、池田(2007)を参考に、1)少子化対策、2)少子化に伴う幼稚園就園. 児の減少や、幼保ともの定員割れ現象などを踏まえた幼保施設の施策の2つに絞って追っ ていく。.  1)少子化対策  1990年合計特殊出生率1.57ショックを反映して、少子化を社会的問題として「健やか に子どもを生み育てる環境づくりに関する関係省庁連絡会議」が設置された。少子化対策 として初めて策定されたのが、1994年文部・厚生・労働・建設の4省合意による「エンゼル. プラン」と、厚生・大蔵・自治3省合意の「緊急保育対策等5ヵ年事業」である。特に保                    7.

(11) 育所の数の増大や定員枠の拡大、低年齢児保育、延長保育の実施などの充実がうたわれた。. 『厚生白書1998年版』は、子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会の実現をテーマ に発行された。1999年少子化対策の具体的実施計画が出され、「新エンゼルプラン」が策 定された。仕事と育児の両立支援を強調し、待機児童解消などを進めた。2002年厚労省「少. 子化対策プラスワン」の策定により少子化対策の拡大をねらった。2003年これまでの保育 政策中心から、労働政策も含めた家族政策へと少子化対策を再編し、次世代育成支援とし てうちだし、「少子化社会対策基:本法」と「次世代育成支援対策推進法」が制定された。2004. 年「子ども・子育て応援プラン(少子化社会対策大綱にもとつく重点施策の具体的実施計 画について)」が少子化対策の効果的な推進を図るために策定された。2006年「これから の少子化対策について(少子化社会対策推進専門委員会報告書)」が出された。この流れの. 中で、乳児保育、延長保育、一時保育事業など保育所機能の拡充とも言える施策が追加さ れていった。2010年「子ども・子育てビジョン」が閣議決定された。この対策は民主党の マニフェストを反映した経済的支援として「子ども手当」が盛り込まれていた。しかし、. これら一連の少子化対策の効果は薄く、2011年の合計特殊出生率は1.39で低迷したまま である。.  2)少子化に伴う幼保施設の施策  私立幼稚園を中心に通常の保育時間(1日4時間)を超えた「預かり保育」の広がりを 受けて、1997年文部省は「預かり保育推進事業実施要綱」を策定し、幼稚園における預か り保育を推進することにした。その後、平成12年から施行された幼稚園教育要領において 初めて位置付けられた。幼稚園教育要領上は、「教育課程に係る教育時間の終了後に希望す る者を対象に行う教育活動」と表現されている。文科省によると、「預かり保育」のニーズ. の背景には、少子化、都市化で子どもが同年代、異年齢の仲間と遊ぶ場・機会が減少して いることや、核家族化や男女共同参画社会の進展によって親からの託児ニーズが増加して いることや、近年は、政府の少子化社会対策の中で、待機児童解消策の一環として推進さ れてきた側面もあったとしている。1998年文部省・厚生省は「幼稚園と保育所の施設の共 用化等に関する指針について」を公表した。幼稚園と保育所の合同を進めることを明確に. した。少子化の過疎地などで実質的な合同に対応したものである。1999年学校教育法26. 条により満3歳になった翌日からの随時入園(実質2歳児入園)できることとなる。2000 年規制緩和により、設置主体制限が撤廃された。これにより学校法人が保育所を設置し、 社会福祉法人が幼稚園を設置することが可能になった。2001年児童福祉法の改正で保育士                     8.

(12) 資格が法定化された。これにより、保育士及び保育所の地位の向上が図られた。文科省は 「幼児教育振興プログラム」策定した。今後5年間の行動計画とし自治体にも同様のプロ グラム策定が求められた。2002年「幼稚園と保育所の連携の事例集」が作成され、インタ ーネットで公開された。.  2003年「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針2003)」が経済財政諮 問会議で閣議決定された。この中で、初めて総合施設(国保の合同施設)構想が打ち出さ れた。これが後の認定こども園の設置につながることとなる。地方分権改革推進会議では 総合施設構想を評価し、地方公共団体の裁量の拡大等をすることで、幼保制度の一元化の 実現への検討のための措置を求めた。こうした動きを受けて、文科省の中央教育審議会幼 児教育部会と厚面省社会保障審議会児童部会が合同検討会議を重ねた。  2005年「幼稚園設置基準」の一部改正が行われ、幼稚園児と保育所演の合同活動並びに. 保育室の共用化が可能となった。総合施設に関する合同検討会議の審議を踏まえ、文科省 と厚労省は全国35ヶ所で総合施設モデル事業を実施した。総合施設モデル事業評価委員会 を設けて、実施状況の検証・評価をして、総合施設の具体的なあり方を検討した。  2006年6月「就学前の子どもに関する教育・保育等の総合的な提供の推進に関する法律」 の法案が成立し、認定こども園が発足した。認定こども園は機能に着目した仕組みであり 幼稚園と保育所の既存制度を前提としている。同年認定こども園に関する事務を一体的に 実施する文科省・厚労省合同の幼保連携推進室が設置された。2008年7,月閣議決定した「教. 育振興基本計画」において、「幼児期における教育の推進」の施策として、早急に5年以内 に2000件の認定件数を目差すとされていたが、制度の運用や財政措置などの課題もあるよ. うで、大幅に下回り、2012年4月1日現在911件である。. 4.直轄一体化の理念と保育者の意識  これまでは幼帝一体化の歴史的経緯を概観してきた。今後幼保一体化の施設が増えてい. くことが想像できる。確かに制度の異なる2つの施設を一緒にしていくには、二元化され ている現行法がある以上とても難しい。しかしながら、システムについての議論が先行し がちで一体化園での保育の理念や保育者の意識についてはあまり言及されていないと筆者 は感じている。実際、山崎ら(2004)は、幼保一元化に関する実質的な研究において、保 育現場の保育者の意識や保育内容そのものを取り上げたものが不足していることを問題医 し、保育者自身が、一元化を通して、保育の質をいかに高めようとしているかの意識を問                     9.

(13) う必要があると主張している。幼保一体化の意義については、教育学や保育学を中心とし た理論に基づいて、あるいは保育行政の中での政策論として語られることが多かった。し かし、そこで働く現場の声が十分に反映されたものであったかと考えると疑問が残る。  松川ら(2009)によると、「認定こども園の幼保連携型の特徴的な課題として、幼稚園教諭. は養護面(保健・安全)への配慮がやや低く、保育士は教育的支援への配慮がやや弱い。 3,4,5歳児は、主活動や行事等を幼稚園担当で運営し、保育所感の保育士は給食から適齢. までを担当するようになってしまう。保育士が主活動や行事などに関われるよう配慮が必 要」と述べている。また、東京都千代田区の幼保一元化施設のいつみこども園(2006)によ. ると、そこでの現状や課題の1つとして、職員配置で、正規の保育士は4,5歳児の担当に 入れないことを挙げている。.  H市でも一体化園は幼稚園教諭がいるので、保育士は5歳児を担当できない園もあった。. しかし、保育所では保育士が5歳児保育を実践している。また、平成21年度より、保育要 録を記入して小学校へ送ることとなった。にもかかわらず小学校入学以前の教育は、幼稚 園教諭が担うべきだという意識が強いかもしれない。幼稚園は「教育」、保育所は「保育」. というよくわからない解釈は、幼保の長い歴史の中で潜在していることを感じた。  実際、池田(2007)は、「かつては、似たような施設だった幼稚園と保育所が、戦後60 年の間に「幼稚園教育=幼児教育」「保育所保育=児童福祉」という図式に固定されてしま. った」と述べている。この図式が世間に流布することで、保育所保育は幼稚園教育よりも 地位が低いとか、保育所は「教育」ではなく「福祉」を行う機関であるといったイメージが、. 今日も社会通念としても定着しているように思われる。.  また、池田(2008)は「教育」と「保育」の用語の使い分けは、2006(平成18)年6月 に制定された「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」. においても同様で、文科省、厚盟主という縦割り行政はそのまま継続され、現場の混乱を 余儀なくしている。仁保一元化には「保育」「教育」という言葉の再定義が必要である」と. 述べている。このような現場の混乱を踏まえつつ無藤(2011)は「保育と呼ぼうと、幼児 教育と呼ぼうと、「養護と教育」は一体的であり、幼児教育は養護の面がしっかりと育って. こそ充実したものになり、保育は教育に結びついてこそ子どもの育ちにつながることを確. 認したいと思います。幼稚園教育要領には養護に相当する情緒の安定について詳しく記述 されています。保育所保育指針には幼稚園と共通する幼児教育の記述を詳細に述べていま す。それらは別々のことではなく、乳幼児期の特質に応じたあり方なのです」と述べてい                     10.

(14) る。養護と教育の一体性を説くこの考え方は心強い。  理念としての「保育」と「教育」の分断、「学校教育」と「保育」という制度の分断、こ. れらが就労形態をも分断している。こうした「保育」と「教育」という概念の分断が保育 者の意識そのものをも分断しているのではないだろうか。「保育」「と「教育」の概念上の. 混乱について、覧(1967)は、次のように述べている。「乳児期、それに引き続いていく 幼児期の子どもの実態がどんなものであるか、ということを明確にとらえた上でこその小 学校教育でなければならないのに(中略)現状の「保育」と「教育」との混乱は義務教育 とのゆがめられた関係をも、その大きな一因になっているのだと考えています。(中略)乳. 児期から幼児期、そしてまた幼年期へかけての「保育」と「教育」の意味を、わたしたち はどのようにとらえたらよいのでしょうか。それはまず、「保育」と「教育」という二つの. すがたが、子どもの世界においては、基本的に全く同じ、ただ一つのものである、という ことだと思います。「保育」と「教育」という二つのコトバが、日本のコトバの意味のゆた. かさの故に、かえって具体的なまちがった解釈をさせてしまったことを、まず考えなおす べきです。(中略)「保育」にも「教育」にも、育てるという文字が使われています。(中略). さてその「育」の上にかぶさっている文字のちがいが日本の幼児教育の世界を、こんなに もゆがめたものにしてしまったのか、と悲しまざるを包ません。(中略)幼稚園と保育所の. 管轄のちがいです。幼稚園は教育をするところだから、学校教育の卵としての文部省管轄 ということでしょうか。そして、保育所は、体の育ちを保てばよいのだから、これは厚生 省の役割だ、ということになるのでしょうか。(中略)「保育」と「教育」という仕事のあ やまった出発のおそろしさが、しみじみと押し寄せてくるような気がしてなりません」。こ. のように、半世紀前から概念上の分断が危惧されていたわけである。それが今も現場を歪 めていると思わざるを得ない。.  では、この分断をどのように埋めればいいのだろうか。少子化が進む一方で、母親の就 労や機能不全家族の増加等様々な理由から、保育所の待機児童は増える一方、幼稚園の就 園率は縮小傾向にある。行政が目指す財政面の効率化等からも運営方法は地域によって 様々であるが、現実的な要請から「教育」と「保育」の分断を埋め、幼保一体化を推進し ていく方向性に変わりはないだろう。しかし、ただ機械的に一体化を進めればよいという ものではない。そこでの保育のあり方を検討し、展望を開くことは、子どもに最善の利益 をもたらすためにも喫緊の課題だと言える。そして、展望を開くに当っては、実際に保育 を行っている現場の声がもっと反映されるべきだと考える。認定こども園など、幼保一体                    11.

(15) 化施設の保育者は、新任の保育者でない限り、幼稚園、保育所という所管の違う施設で保 育を行ってきた幼稚園教諭、保育士である。いきなり新しい考えが生まれるわけではなく、 お互いが保育観をすり合わせながら、子どもに質の高い幼児教育・保育の提供をするという 前向きの共通の目的をもって保育することが求められる。  森上(2003)は,幼保一体化について,制度論が先行していることに警鐘を鳴らし,「保. 育の質」や「子どもの視点」の観点からの検討が必要としている。具体的な検討項目とし て「短時間児と長時間児の生活リズムの違いに配慮した生活デザイン」「短時間児と長時間 児の関係作りを促す保育上の工夫」「保育者同士のチームワーク」などを挙げている。これ らの指摘はもっともだと考える。.  若林・越中(2009)は、こども園では短時間利用児と長時間利用児がいることを考慮し、. 幼稚園の教育課程と保育所の保育課程の双方の性質をもつカリキュラムが必要となるので はと考え、調査を行っている。その結果、保育所経験者は、従来から長時間保育を実施し てきたので、いまさら特別のカリキュラムは必要がないとする意見が多かった。他方、幼 稚園経験者は新たに受け入れることとなった長時間児の心身の負担等を懸念して、カリキ ュラムを区別すべきとする意見が多かった。保育経験や各園の実情による認識の違いが確 認されたとあった。カリキュラムに関しての保育者の意識の統一も今後の課題になるだろ う。多様な保育ニーズを有する子ども、及び家族に対応できるような保育時間・保育期間・. 保育形態を工夫し、同一施設の中で多様性に配慮した保育を実現する必要がある。  加治佐・岡田(2009,2010)は、平成19年8.月現在105の全国の認定こども園を対象に調. 査研究を行っている。研究目的は、先行園の経営実態を明らかにして、認定こども園制度 を拡充するための経営上の条件整備に資する基礎データを得ようとするものであった。加 治佐・岡田(2009)においては、認定こども園の運営の工夫、幼保一体化のメリットとデメ. リットを4つの運営方式の違いでまとめている。メリットとして回答が多かったのは「保 護者の仕事の有無に関係なく、子どもが同じ園に通い続けることができるようになった」 「幼稚園と保育所の機能が合わさったことにより、教育・保育のレベルが向上した」等で あった。一方、デメリットとして回答が多かったのは「幼稚園と保育所の機能や子どもが 一緒になったことにより、園の事務負担が増えた」「保育時間が長くなったため全職員によ る会議や研修が持ちにくくなった」等であった。さらに、加治佐・岡田(2010)においては、. 認定こども園園長の力量や保育者の資質力量向上のための研修の重要性などが述べられて いる。この研究は園運営からの視点であり、そこで働く保育者の意識を具体的に取り上げ                    12.

(16) たものではない。. 5.本研究の目的  ここまで、幼保一体化にかかわる議論をまとめてきた。教育史的、制度論的なアプロー チが主流であって、現場の保育者の意識を取り上げた研究は数少ないことが分かった。  幼保一体化の課題は、「教育」と「保育」という理念、幼稚園と保育所という実践の場等、. 様々な「分断」をいかに埋めていくかに懸かっているように思われる。それは、一気に成 し遂げられるものではなくて、現場にあっては、当面目の前にある「メリット」と「デメ リット」を自覚した上で、メリットを生かしデメリットを緩和するという営みを一歩ずつ でも成し遂げていくことが重要であろうと考える。  幼保一体化のメリットとデメリットについては、加治佐・岡田(2009)で取り上げられて. いる。しかし、研究者サイドで設定したものに対する賛否を、園長に尋ねるかたちで終わ. っている。また、4つの運営方式で回答率の違いを見ているが、どのような差異があるの かを明示しているわけではない。.  そこで、本研究では、以下の四点を目的として研究を進めていく。  まず、予備調査を行い、現場の保育者の意識を反映させるかたちで、幼保一体化のメリ ットとデメリットをまとめていく。さらに、そこでの分類を踏まえて、それらのメリット やデメリットについての項目作成を行うことを第一の目的とする。.  次に、現場の保育者の意識として、今回作成した項目にどの程度同意するのか、より多 くのデータから基本的な分析を行っていく。そうした結果が得られた背景について考察を することを第二の目的とする。.  さらに、白保一体化のメリットやデメリットについての意識は、認定こども園の設置者 (公立か私立か)、運営方式(幼保連携型か幼稚園型か保育所型か)、保育者の主な職歴(主. なキャリアが幼稚園教諭か保育=ヒか)、経験年数等によっても異なってくると考えられる。. これらの相違については、従来、定量的な分析がほとんど行われていないことから、実証 的に検討することを第三の目的とする。.  最後に、冒頭でも述べたように、本研究の動機は、幼保一体化された施設で、保育者が 職務にやりがいと誇りをもって働けるのかという疑問であった。そこで、保育者の職務に 対する認識が、幼保一体化のメリットやデメリットについての意識にどのように影響する のかを探ることを第四の目的とする。.                    13.

(17)  以上、遍身一体化に対する保育者の意識を明るみに出し、その結果を踏まえて、今後の 保育の展望について考察をしていきたい。.                   方 法 1.予備調査  現場の保育者から、二塁一体化のメリットとデメリットについて尋ね、項目作成のため の基礎資料とすることを目的とした。. (1)調査対象者.  H市の幼保一体化園(幼保の所管や機能は残したまま、一体的な運営を行っている施設). に勤務歴のある保育者21名に調査用紙を配布した。このうち16名から協力を得た(回収 率76.191%)。このうち、幼稚園教諭が7名、保育士が9名であった。一体化園での勤務歴 の平均は1.688年(SD=0.704)、全経験年数の平均は20.333年(SD=8.440)であった。. (2)調査時期.  平成23年3,月1日∼3.月31日 (3)調査手続き.  調査対象となる保育者に、依頼書と共に調査用紙を郵送した。回収には、返信用封筒を 用意し、1週間以内の投函を求めた。 (4)調査内容.  まず、①幼保一体化園での役割、勤務歴、②これまでの主な職歴、経験年数を尋ねた。 その上で、幼保一体化のメリットとデメリットについて自由記述を求めた。. 2.本調査  次に全国の認定こども園に勤める保育者を対象に、所属園と勤務歴等の基本情報、童詩 一体化に対する意識(メリット、デメリット)、職務に対する認識を尋ねた。 (1)調査対象者.  全国のすべての認定こども園798園(平成24年5月1日に所在が確認できた園)に勤務 する保育者を対象とした。返送があったのは236園、回収率は29.574%であった。実際に 回答があった保育者652名、このうち回答に著しい不備のない631名を分析の対象とした。 (2)調査時期.  平成24年6月21日∼平成24年10月31日  (3)調査手続き.                     14.

(18)  調査対象となる認定こども園に、依頼書と共に調査用紙を3枚郵送した。3枚以上、協 力をいただける場合は、再度郵送する旨記載した。返信用封筒を用意して、3週間以内の 投函を求めた。. (4)調査内容(巻末資料参照).  調査対象となる園の基本情報として、①設置者、②運営形態、③認定こども園としての. 認定を受けた年A、④定員及びクラス編成、⑤幼保一体化の理由を、園の代表者1名に尋 ねた。.  次に、先行研究の知見と予備調査の結果に基づき、筆者を含む現場の保育者2名と保育 研究者1名で協議を重ね、幼保一体化のメリットとデメリットを表した35項目を独自に作 成した。調査対象者には、メリットやデメリットとして「とてもそう思う(5)」から「全く. そうは思わない(1)」までの5段階評定で、幼保一体化に対する意識を尋ねた。  さらに、調査対象者の基本情報として、①年齢と性別、②認定こども園での立場(園長、 担任など)、③保育所、幼稚園、認定こども園の勤務歴、④幼保一体化に対する考えについ て、回答を求めた。.  最後に、池田・大川(2012)を参考にして、保育者の職務に対する認識を問う10項目を作 成し、「とてもそう思う(5)」から「全くそうは思わない(1)」までの5段階で評定を求めた。. 15.

(19)                  結果と考察 1.本研究の調査対象園について  回答のあった園は236園だった。認定こども園の設置者は、学校法人が半数以上を占め ていた。次に市町村、社会福祉法人となっている。私立が公立の3倍以上である。運営形 態は幼保連携型が最も多い。今まで運営していた幼稚園、または保育所に認定こども園と して一体化した形態が多いと思われる。なお、調査対象者園の設置者及び運営形態の割合 分布は、加治佐・岡田(2009,2010)が調査したものとほとんど同じであった。.            表1 調査対象園の設置者とその割合.            市町村       56 23.729%            学校法人      138 58.475%            社会福祉法人     26  11.017%.            その他・無回答    16  6.780%            表2 調査対象園の運営形態とその割合            幼学連携型     127  53.814%.            幼稚園型      67 28.390%            保育所型      33 13.983%            地方裁量型      4  1・.695%            その他・無回答     5  2.119%.  幼保一体化の理由(複数回答可)で、1番多かったのは、国の施策への対応90園(38.136%). であった。次に地域の過疎化による子どもの減少89園(37.712%)、経営上の理由59園 (25.000%)、待機児童の増加57園(24.153%)、施設の老朽化30園(12.712%)となっている。そ. の他の回答としては、地域や保護者のニーズ、地方自治体の施策、乳幼児期の一貫した保育・教 育・保育の質の向上、保育所や幼稚園の統廃合などであった。. 2.本研究の調査対象者について  有効回答者数は631人であった。性別は、女性が557人、男性が60人、無回答が14人だった。 年齢は平均44.064歳(SDニ12.817)、40歳以下が253人、41歳以上は360人置無回答は18人だ. った。主な勤務歴は、保育所勤務が長い保育者が206名、幼稚園勤務が長い保育者が298名、 認定こども園勤務が長い保育者が72・名、無回答・不明が55名だった。 16.

(20) 3.幼保一体化に対する保育者の意識について (1)予備調査の結果と項目作成.  本研究においては、H市で幼保一体化のメリットとデメリットについて予備調査を実施 し、16名の保育者から回答を得た。自由記述で回答を求めたので、筆者を含む現場の保育. 者2名と保育研究者1名で協議を重ね、カテゴリを設定し分類を行った。具体的には、自 由記述による回答を、①子ども、保育者、保護者のうち、誰にとってのメリットまたはデ メリットなのか、②大別して何に関連するメリットまたはデメリットなのか、③具体的に どのようなメリットまたはデメリットなのかを検討し分類を繰り返した。②からは、「カテ. ゴリ」として、人間関係、保育内容、保育環境、行政の問題等を取り出した。③では、各. カテゴリに含まれる「アイテム」を整理した。以下の表3は幼保一か年のメリット、表4 は幼保一体化のデメリットを示したものである。  回答数の多かったカテゴリ・アイテムを取り上げると、メリットでは「保育内容」の「共. 通の教育が受けられる」ということだった。幼稚園児と保育所児が同じ保育内容を受け、 一緒に就学できるということは、子どもにとっても、保育者にとっても、保護者にとって もメリットであるとの回答だった。幼保一体化の良さがここにあるし、保育者も保護者も 感じていることが読みとれる。  デメリットにおいて回答数の多いカテゴリ・アイテムは、「所管の違い」の「事務の増加・. 相違」であった。双方の所管を残した保育行政そのものが、現場で幼育一体化を進める大 きな壁になっているのではないか。回答内容から、現時点では、保育者はこの壁に直面し て、前向きな取り組みの難しさを感じ、並並一体化の良さを活かしきれていないと考えら れる。施設の統合が先行した運営により、保育者が目指す保育を思うように展開できない もどかしさを現場は抱えているといえる。.  これらの結果を踏まえて、幼保一体化に対する意識を問う35項目を独自に作成した。こ の際、所管の違いや行政の問題等は、制度的な不備に過ぎないことから、カテゴリとして. は外した。人間関係、保育時間、保育内容、保育環境の4つのカテゴリについて、メリッ トとデメリットを表現した文を作成、検討した。. 17.

(21) 表3 幼子一体化のメリット カテゴリ1   アイテム. 回答数. 回答例. 0子どもにとってのメリット 異年齢児間のかかわり(0歳から5歳まで)の中で育ちあい、. 人間関係. 異年齢の関わり. 5. ャさい子への優しい気持ちや年長児へのあこがれの気持ち 育むことができる。. 子ども集団の拡大. 仲間関係 職員との人間関係の多様化. 保育所、幼稚園別々では少人数になるところが多人数にな. 11. 閨A集団教育として望ましい。. 1. 1. 少子化の進んでいる地域では子ども集団の確保ができる。 痰ェいのある子どもにとっては生活を共にした顔なじみの友 Bがより多くいることで就学先でも安心できる。 たくさんの職員(色々な職種)に見守られる環境の中で大切 ノされ、愛情をかけてもらうことができる。 ・幼保の良さを取り入れた保育を受けることができる。・どの子どもにも公平な保育、教育が受けられる。就学前教. 保育内容. 共通の教育. 13. その他. 逑燉eが同じ。幼保で目指す指針が1つなのが良い。 幼稚園児にも給食提供しているので食に関する関心も高まり 7 H育活動も十分に取り組むことができる。 2 兄弟姉妹が今までは幼稚園に行くことで離れてしまっていた. 幼保両方の施設を利用. 1. 保幼小の交流. チしたり、小学校のプールに入ることができたりなど保育所籍 2 フ5歳児が‘小学校’を体験できる機会がもてるようになっ. 毒忌. ェ、一緒に過ごせることで安定している。 2つの施設を活用しているのでゆったりとした広い環境の中 ナのびのびと活動できている。. 小学校との連携がスムーズ・…。小学校との合同行事に参. ス。. 0保育者にとってのメリット 人間関係 小学校との連携. 1. 保幼小中、地域との連携がとりやすくなる。. 保育士と幼稚園教諭が丁寧に話し合った上で保育を実践す 驍ノ当り、保育士と幼稚園教諭の互いの良さが活かされる。 Pつ1つ細やかに話し合うためクオリティが上がる。保育士、. c稚園教諭が交流できる(文化や歴史の違いは出会って話. 保幼職員の連携. 3. オてみないことには分からないことだった。幼稚園と保育所が一緒に研修できる場が増えればもっとお互いに理解し合える. ゥもしれない。⇒姫同教研究大会で保育所の提案の細やか. 保幼職員の交流. 保育内容. 共通の研修. ネ配慮に感動したことを鮮明に覚えている。共に学べる場が ?黷ホ理解が深まり切磋琢磨できると思う)。 3 保見の現状を具体的に知ることができる。 保育園、教諭の職員で研修する中でお互いの教育方法、内 eの良さを理解でき保育に反映できる。・職員数が増加する 2 フで園内研修も含め幅広い知識や保育力を高めることがで ォる(発達の連続性という点では小学校就学を見通した保育 考えることができる)。. 両方の予算 子どもの育ちを知る. 共通の教育. 白保の両方からもらうので子ども達のために必要な備品、教 ゙が購入しやすい。 幼稚園には4,5歳児しかいないので0歳からの成長過程が保 4 轤 通して学ぶことができる この地域では4歳児まで保育所、5歳児は幼稚園へという考 ヲ方が根強くあった。しかし仕事があるから5歳児も保育所に 3 1. cしたいが・・。と悩まれることが多かった。また保育、教育が ヤつ切れになることが多かった。. O保護者にとってのメリット 保育内容. 共通の教育. 2. 人間関係. 校区内のつながり. 1. 保護者が仕事の都合などで幼稚園か保育所か迷わず、同じ ャ学校へ行かせることができる。 同校区内の幼児同士のつながりや親同士のつながりがもて A携しやすい。 18.

(22) 表4 幼保一体化のデメリット カテゴリ 1   アイテム 0子どもにとってのデメリット 保育内容 保育年齢の幼保の違い. 回答例. 回答数. 3 小さい子がいるのでダイナミックな遊びができにくい。. 厚保それぞれに行われている行事がそのまま引き継がれ(小学校、地. 一体化運営のあり方. 2 謔ニのかかわりがあり)子ども達が遊ぶ時間が十分とれない。. 食育. 2 保育所動の子どもはおやつクッキングの機会が減った(施設の関係や幼. 保育時間の相違. 6. 保育期間の相違 保育環境. 保育設備の不備. t園児への遠慮もある)。 保育所児の2時以降の保育がちゅうぶらりん。保育所児は預かり保育に. ネっている。 幼稚園児の遊びの続きを置いておくことができない。. 夏休み、冬休みのあるなしで経験内容が違ってくる(特に夏のプール遊 ムの経験の差は大きい)。 幼稚園と保育所の施設を使用することで子どもは1日の生活の中で‘移 ョ’しなければならず保育が細切れになる(2時以降、保育所籍の子ども 9 ヘ合同保育になったり、担任が変わったりする。1日同じ保育室で生活 1. ナきない)。. 施設の目的 法律の相違 O保育者にとってのデメリット 保育内容. 保育時間の相違. 一体化運営のあり方. クラス運営. 2. 幼保の嘱託医の健診内容が違う。同じ4,5歳児なのに。. 子どもが昼寝をしている時間は日誌を書いたり環境整備等に使える貴重 ネ時間だったが幼稚園児の降園の挨拶、保育も2時までということでそう 2 「う時間がとれない。 幼稚園の親のニーズ(しっかり家庭と園と連携しながら教育する)と保育 2 鰍フ親のニーズ(忙しいため園に養護を求める)が違い双方のニーズを 桙スすことは難しい。. 同じクラスに保育所、幼稚園の子どもがおり、今まで以上に保護者の幅 ェ広くニーズに応えることは大変難しい(幼稚園の保護者は4,5歳の担 2 Cは幼稚園教諭がするべきだと考えるため保育士が担任しているだけ ナ不満のようだ)。. 保育環境. 保育設備の不備. 同じ歳児を保育士と幼稚園教諭が担任するため、何かと比べられる。特 ノ保育士が文章力の弱いところを感じる。 2 施設が離れているので管理がしにくい。. 人間関係. 保幼職員の同僚性. 6 保育士と教諭が互いを知らなさすぎるので何事も共通理解するのに時間. 所管の違い. 事務の増加・相違. その他. 処遇のあり方. 1. ェかかる。 16 事務が一元化していないので、同じような書類を別々に書いたり、伝票 フ様式も違うので面倒な面が多い。. 3 幼稚園職員は時間外勤務ができないので職員会議のもち方や時間も気 使う。. 行政が幼と保が違うため事務面、保育時間、職員の勤務条件等が同一. 一体化運営のあり方. 1 ナないので運営面でも難しい(こども園として独自の方法を考えていくこ. ニが必要)。. 施設の目的. 保育期間の相違 保育時間の相違 保幼文化の相違 その他. 行政の問題. 園長が兼務. 3 2時以降の保育、夏休み中の保育など、結局は保育士が担当しており ロ育君側が譲ることが多いように思う。 保育所児は降園時間がバラバラな為、連絡や子どもの姿を伝えようとす 4 驍ニ時間がかかる。 2 首座の文化の違い、溝を埋めることは努力しても難しい。 1 社会の認識で保育所は教育をしていないという考えも根強い。. 園長先生が幼保の兼務園長なので出張が多く不在のことが多い(日々 フ園内の子どもの様子、保育内容等について園内でゆっくり話し合う機 1 ?ェ少ない。園内研修をする機会も十分とれなくなっている。とにかく忙 オすぎる)。. 位置づけの不安定さ ○保護者にとってのデメリット. 2 十分な基盤の上に成り立っていないので現場の負担が大きい。. 保育内容. クラス運営. 1. 一体化運営のあり方. 5 新しいスタイルをまだまだ理解しにくい保護者がいて苦情もでる。. 担任が幼稚園教諭の場合、保育所児の保護者は担任と直接話をする機 ?ェかなり減る(土量と時間外保育をしている子どもの場合は懇談の時 ュらいということもある)。. 親の戸惑い. 19.

(23) (2)本調査の項目についての基礎的分析  本調査の項目は、カテゴリ「人間関係」7、「保育時間」12、「保育環境」7、「保育内容」 9の計35項目となった。各項目について、「とてもそう思う(5)」「かなりそう思う(4)」「少 しそう思う(3)」「あまりそう思わない(2)」「全くそう思わない(1)」の回答率を算出した。. 回答率の分布から、以下の5っのタイプを設定し項目を分類した(表5)。 表5 回答率の分布による項目の分類 一致型. 「とてもそう思う」の回答が最も多く、保育者の意識として一致していると 考えられるもの. 高同意型. 「かなりそう思う」の回答が最も多く、「とてもそう思う」の回答をあわせる. と60%を超えるもの。幼保一体化のメリット・デメリットとして、保育者間 で高い同意が得られていると考えられるもの 中同意型. 「とてもそう思う」あるいは「かなりそう思う」の回答が最も多いが、両者 の回答をあわせても60%を超えることはないもの。幼保一体化のメリット・ デメリットとして、保育者間である程度の同意が得られていると考えられる もの. 同意分散型. 「少しはそう思う」の回答が最も多く、保育者の判断が分かれていると考え られるもの. 低同意型. 「あまりそう思わない」の回答が最も多く、保育者の意識として幼保一体化 のメリット・デメリットとしてはあまり該当しないと考えられるもの.  上記の分類によると、一致型は5項目、高同意型が8項目、中同意型が4項目、同意分 散型が13項目、低同意型が5項目となった(計35項目)。  各タイプの項目と回答率は次の(表6)に示す。. 20.

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表 5 5「 「保 保育 育学 学生 生が が就 就職 職す する る以 以前 前に に絵 絵本 本に につ つい いて て学 学ん んで でお おく くと と良 良い いこ こと とは は何 何か か」 」の

【考察】 ①子育ての中で感じる感情

それらを促す教師の働きかけや環境構成を示し、幼児期にふさわしい気象や天体 とのかかわりについて論じた。本稿では、青木(2015)で扱った 201X 年 7 月 及び 9