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開かれた憲法学習の理論と方法 : ハートの法認識論にもとづく社会科授業開発

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全文

(1)

『社

第19

号 2007

(pp.

9-18)

開かれた憲法学習の理論と方法

−ハー

トの法認識論にもとづく社会科授業開発

A Study on the Theory and Method of Liberal Approach in Constitutional Learning:

The Development of a Social Studies Course on the Basis of the Jurisprudence by H.L.A.Haxt

I 

問題の所在一閉

ざされた憲法学習一

本稿の

目的は

,中学校社会科公民的分野におけ

る憲法学習

(以下

,社会科憲法学習と表記する)

を子どもに

よる多様な法解釈や社会認識を保障

だ開かれた憲法学習”とす

るための理論と方法

(具体

的な授

業プラン)を提示することにある

社会科憲法学習は

,義務教育の最終段階に実施

され

,子

どもたちを主権者である市民と

して育成

するために重要な役割

を担

っている

。しか

し,現

行の社会科憲法学習の代表的な授業プラン1

参照す

ると

,以下の

ような論理か

“閉ざされた

憲法学習”が行われ

ていることが分かる。

・価値観の注入主義

憲法改定に関する議論が巻

き起

こるなか

,教師

の憲法に対する価値観

(あるべき法

)を無批判に

子どもに押

し付ける授業が

多くなっている几そ

の結果

,子

どもか

ら現行の憲法

(ある法)がいか

なる規範や価値観

をなぜ選択

しているのか

を冷静

に分析する機会を奪っている3

・固定的な憲法認識

憲法は固定的で変化

していないという論理か

業が構成され

ている

。そのために条文や原則の

暗記学習になっている几子どもは

,判例によっ

て憲法が解釈

され

,社会状況に応

じて動的に運用

され

てきたことを研究

しない

。その結果,憲法

社会

との関わ

りを認識することを閉

ざしている。

・憲法と道徳の

一元論

憲法は

,子どもたちの道徳規範となるべきであ

るとの論理から授

業が構成され

ている

。そのため

,憲法学習が道徳教育になっている‰特に基

本的人権や

国民の義務に関す

る学習は

,条文を子

ども

自身が修得すべき徳

目の

うに教授

して

いる。

中 

原 

朋 

(川崎

医療

短期

学)

このような状況に対

して先行研究6

では

,①ア

リカ合衆国における憲法学習論を分析

しわが国

の社会科憲法学習改善の方向性

を示す

,ある

いは

汎用

的な法教育の授業プラン

(授業の

一部に憲

法学習を含むもの

)を開発す

,という二つの取

り組みがなされ

てきた

。しか

し前者については

理論研究

を踏ま

え具体的な授業

プランを提示する

までに到っていない

。また後者には

,憲法の独

性を踏まえだ憲法学習と

しての授

業プラン”を

提示

していない問題が

ある。

そこで本稿では,

H.L.A.

トの法認識論7

もとづく

,社会科憲法学習の授業

プランを提示

ていく

。ハー

トの法認識論を授

業開発の

論拠にす

る理

由は

,①す

でにアメ

リカ合衆

国に

おいて

,ハー

トら法実証

主義の影響のもとで社会科憲法学習の

改革が進行

,開かれた憲法学習の具体的な授業

プラン8

が提示され

ていること

,②ハー

トの法認

識論は

,道徳

と法の

区別に重点を置

いてお

り,そ

の理論を応用することで

,道徳教育と異なった社

会認識教育と

しての憲法学習の論理が

明らかにな

と考えるか

らである

H 

開かれ

た憲法学習の理論

−1

次ルール

2次ルールの結

としての法

1 

ハー

トの法認識論

では

,憲法学習の拠

りどころとなるハー

トの法

認識論は

,いかなるものであろうか

。ハー

トは道

徳や規範9

と異なる

“法

”を認識する方法

として

冂次ル

ール

と2次ルールの結合としての法」と

いう実証

的な法

認識論

を提

して

いる

。図

1にハー

トの法認識論

をモデル

したもの

を示した

(2)

① 

(規範)

1次ル

ール

・人に

責務

を踝す規範

・見解の

対立も存在

・自生的で不確

③ 

結 

(契機

となる

事柄)

② 

2次ル

ール

(認定ルール)

・承認のルール

・裁判のルール

・変更のルール

④法

的ル

(法)

・曖

な部

・多様

な解

・開かれ

た構

1 

1次

ルー

2次

ルー

して

の法

(筆

者作

成)

トによると,法はまず①何

らかの社会状況

を背景に匚

∼は

∼をすべきではない」という人に

責務

を課す

1次ル

ール

(規範)と

して自生的に

されは

じめる

。 

しか

し,

1次ルールは言葉の意

味が曖

昧である場合や

,従

う人と従わ

ない人が

るな

ど不確定的なものである

。そこで,②匚

この

社会では

この規範が法である

」と認定するための

2次ル

ール

(認定ルール

)が必要となる

。例

えば,

何かその集団の法的ル

ールであるのか

を確認する

承認のル

ル」

,誰が

どのよ

うに

して裁判を行

のかに関する匚

裁判のル

ール

,誰が

いかなる権

限によってル

ール

を変えるのかに関する匚

変更の

ール」

,などの

2次ルールが必要となる。

2次

ールは何らかの権威や権力を背景に

1次ルー

ルの不確定的で曖昧な性格を補

。そ

して,③

次ル

ール

(規範)が

2次ルー

(認定ルール

)に

よって承認

され

ること

(1次ル

ール

と2次ルー

の結合)によ

り法は成立す

。しか

し,④成立

た法は

,社会的な論争

をすべて解決できる絶対的

なル

ール

というわ

けではなく,規定が曖

昧である

場合やその規

定に反対す

る人々も存在するなど

相対

的なもの

である

。ハー

トはそれ

ら法の曖昧

さ,

相対吐

を匚

開かれた法の構造

」とよび,裁判

官が

2次ル

ール

(裁判のルール

)に従い具体

的な裁判

のなか

で法を解釈

しその曖昧さを補

うという

。つ

り法が成立すると法解釈という新たな

1次ル

ルが

生まれ

,再び①∼④の

プロセス

を繰

り返す

とで新

しい判例

を形成

していくわ

けである。

-2 

ハー

トの法認識論の授

業構成への応用

トの法認識論で最も特徴的なのは,②

2次

(承認のルー

・裁判の

ルー

・変更のルー

ル)という

“法”ど 規範”を区別する基準

導入

している点てある

。つま

り2次ルール

を通過

したものぱ 法”で

あるが

,通過

していないもの

は単に

“規範”にとどまるわ

けである

この

ようなハ

トの法認識

論,特に

2次ルール

(承認のル

ール

・裁判のルール

・変更のルール)

に注

目すると

,理論的に三つの授業モデルが想定

できる

。第凵

「承認のルー

」を応

した匚

法成立研究モデル

。第

2に,

「裁判のルール

」を

応用

した

「判例研

究モ

デル

。第

3に

「変更のルー

」を応用

した

「憲法改定研究モデル

」である。

本稿では

,現行の社会科憲法学習を改善

してくう

えで重要で

あると考える

憲法成立研究モデル

「 ̄

判例研究モデル

」にも

とづく授業

プランにつ

いて考察

して

いく

。なお,

「憲法改定研究モデル

については

,日本国憲法が

1度も改定された

こと

・憲法成立研究モデル

ないことも

り別の機会に論

じる

こととす

本モデル

では

,上述

した①

∼④の

4段階にも

づいて憲法の成立過程

を実証的に研究するように

業を組織

化する

。つま

り,①

ある社会状況が政

府に責務

を課す

1次ル

ール

(規範)を生み

,②

る力を背景に

した2次ル

ール

(承認のルール)に

もとづいて

,③

それが憲法と

して承認O次ルー

2次ル

ールが結合)され

,④

憲法が成立

した

ことを探求する授

業構成

とす

。そうすれば,子

どもは

1次ル

(規範)が

2次ルー

(承

認ルー

)を経て憲法

上の価値観と

して社会的に選択さ

れた

・判例研究モデル

ことを実証的に研究できるわ

けである

本モデルでは授業を

,再び図

1の

4段階にも

づいて判例の

形成過程

を動的に研究す

るよう組織

化する

。つま

り,①

1次ルール

(憲法解釈)を,

②裁判

官が

2次ル

ール

(司法審査

)にも

とづいて,

③具体的な裁判の

なかで裁定

(1次ル

ール

と2次

ール

を結合

)し,④

しい法

的ルール

(判例)

を形成

している

ことを探

求する

。そうすれ

ば,子

どもたちは

る匚

開かれ

,憲法

た構造

を社会のなかで動的に解釈

」をも

っもの

と捉え,

1次ルー

され

10−

(3)

(憲法解釈)が

2次ル

ール

(司法審査)を経て

法的ルール

(判例

)と

して形成

され

ることを動的

に研究できる。

この

二つの授

業モデル

2次ル

(認

定ルー

を可視

,批判

的に吟味す

とこ

ろに特

徴か

おる

この

ように授

を構成すれ

,規範

を規

範の

まま子

どもに注入

し教

化となって

いぐ 閉

ざされ

た憲法学

”を回避

,規範が

2次ルー

(認

定ルール

)を

通過

して憲法

上の価

値観

して社会

的に選

され

ことを探

法学

習”

を可能

求す

る社会

とす

るわ

認識教育

けで

ある

しての

“開かれ

た憲

Ⅲ 

開かれた憲法学習の方法

1 

内容選択基準

一日本国憲法の最大の特徴

を踏ま

える一

上述

したハ

トの所論は法認識の

“形式”に焦

点を合わせたもの

であ

,わが国の憲法学習に実

際に応用す

るには

,日本

国憲法の

特徴

を踏ま

えた

“内容”の選択が必要となる

従来の

憲法学習は

,平和主義

,基本的人権の尊

,国

民主権

を憲法の

三原則と

して固定的に捉え,

それに関す

る憲法の条文

(またはそれ

を言語的に

さしくしたもの

)を子

どもたちに暗記させるよ

うに学習内容

を選択

していた

しか

し,憲法の三

原則といわれるものは明治憲法

と比較

した

日本国

憲法の特色にす

ぎない

。む

しろ,その最大の特徴

「個人の尊厳を基本価値と

し,人権尊重

・国

民主権

・権力分立

・法の支配という立憲主義憲法

の基本原理すべてにコミッ

トして構成されてい

るlO

」点にあるといわれ

る。つま

り,日本国憲法

は基本

的人権

(個

人の尊厳)を亘亟

とする価値体

系11

であり

,基本

的人権

を保障するために権

力分

立や法の支配といった統治機構

を整備

しているわ

けである

。したが

って,子

どもたちの憲法学習も,

まず基本的人権の

学習

を頂

点と

して

,学習内容

選択

していく必要が

ある。

そこで筆者は

“基本的人権”の起源や本質を

子どもたちが十分に探求できることを内容選択の

基準に

,厂

憲法成立研究モデル

」か

ら小単元

「基

的人権尊重の起源

日本国憲法

を生んだ

9日間」

しい人権の爆発」を開発

,匚

判例研究モデル」から小単元

した

。二つの社会科憲

「どうする

法学習の授

業プランは

,憲法が保障する基本的人

権の起源

と現在を探求する

一連の

ものである

2 

憲法

成立研究モデル

小単元

「基本的人権

尊重の起源

日本国憲法

を生んだ9

日間」

では

,憲法成立研究モデルの小単

元の展開はど

ようになるだろうか

。図

2にハー

トの法認識を

応用

,小単元厂

基本的人権尊重の起源一

日本国

憲法

を生んだ9日間

「以下,小単元匚

起源

」と

表記する)で形成

をめ

ざす法認識のモデル

を示

。また,表口こ

教授学習過程を示

した。

(1)

“誰”が

“どの

ような議論”を展開し憲法

が成立

したのか

,その起源を探求す

る授業

日本国憲法の

成立に関する授

業は

,成立過

程のアウ

トライ

ンを網羅的羅列的に教授

してきた

えば

,日本政府の

松本試案は明治

憲法

と変わ

りな

,マッカーサー

民政局に憲法草案を書か

せて

,その

案を

日本

政府案

して発

し,帝国議会

で審議

,可決

した

とい

うよ

うに審議の

“結果報告”

を子

ども

しているだけの授

業となっている

。本授

業では

,従来の授

業の問題点を克服

し,具体

的に

“誰”が

かその起源

“どの

を探

求す

うな議論

る授業

を開発

”を行

した

い憲法

が成立

した

01次ルールの

背景

となる社会状況

・明

治憲法

では

律の

留保

り基

的人権

が侵

され

いた

1次

(規

日本

府は

民の

基本

的人権

を尊

重す

(ポ

ッダム

第10

結 

Oghq民政局による草案

作成における議論

○第90

回帝国議会における

議論

(わ

後の国会)

が国初の完全普通選挙

②2

(認

“民

を改

主的

”す

手続

ぎで

“明

憲法

第73

・明

治憲

を改

合に

皇の

(勅

よっ

帝国

議会

し,両

々総

員の

3分

2以

上の

,出

員の

3分の

2以上

立す

国の

・民

主義

的ル

(法)

日本

第13

・すべて

民は

,個人

して尊重

され

生命,自由及び幸福

追求に対する国

民の

利につ

いては,公

共の福

祉に反

しな

り,立法

その他の

国政の上

で,最大の

(基

必要

とす

論)

多様

開かれ

2 

「日本

国憲法

を生ん

9日間

」で

形成

され

る法

識       

(筆

者作

(4)

表 1  小 単 元 1 「 日 本 国 憲 法 を 生 ん だ 9日 間 − “基 本 的 人 権 の尊 重 ” の 起 源 −」 の授 業 構 成

過程

学 習 テ ー マ と 主 な 発 問 教 授 学 習 活 動 ・ 資 料

子 ど もか ら引 き 出 し たい 知 識

導 入 メ イン・ ク エスション の設 定 日本 国 憲法 に お け る 基 本 的 人 権 ○ 憲 法 は 基 本 的 人 権 を 尊 重 し て い ま すか ? ○ (MQ ) な ぜ, 日 本 国 憲 法 は, “基 本 的 人 権 ” を 尊 重 し て い る の だろ う か ? T: 発 問 す る P 二答 え る (資 料 ①) T: 発 問 す る P: 仮 説 を 立 て る ○ 憲 法 の 第 3 章 ( 国 民 の 権 利 及 び 義 務 ) は,31 の 条 文 か ら 構 成 さ れ, 他 の 章 に 比 べ る と 条 文 の 数 も多 いo 憲 法 全 体 が103 の 条 文 か ら 構 成 さ れ て い る こ と か ら みて も, 基 本 的 人 権 を 尊重 し て い る こ と が 分 か る。 ○ ( 予 測 さ れ る仮 説 ) ・ 国 民 が 幸 せ に な れ る よ う に, た く さ ん の 人 権 を 書 い た ので は ? ・ 憲 法 が 成 立 し た と き に 保 障 さ れ て い た 人 権 を 並 べ た ので は ? ・ 外 国 の憲 法 を 真 似 た ので は ? 展 開1 1次 ル ール と そ れ を 生 ん だ 社 会 状 況 の 分 析 ( 図 2 ①) 日本 国 憲 法 成 立以 前 の 社 会 状 況 ○ 日 本 国 憲 法 が 成 立 す る以 前 の 基 本 的 人 権 を め ぐ る 日 本 の 社 会 状 況 は ど のよ う な も の で し た か ? ○ 日 本 政 府 が1945 年8 月 に受 諾 し た ポ ツ ダ ム宣 言 に は , 基 本 的 人 権 に つ い て ど の よ う な 主 張 が な さ れ て い ま す か ? T: 発 問 す る P: 教 科書 を 参 照 す る (資 料 ②) T: 発 問 す る P: 答 え る ( 資 料 ③) ○ 明 治 憲 法 下 に お い て も, 臣 民 の 権 利 と し て , い くつ か の 自 由 権 は 認 め ら れ て い た。 し か し, 1931 年 か ら は じ ま る 日 中 戦 争 以 降 , 軍 国 主 義 的 傾 向 が 強 ま り , 法 律 の 留 保 に よ り 個 人 の 権 利 は 著 し く制 限 さ れ た。 ま た, 家 制 度 や 制 限 選 挙 な ど 「 不 平 等 な 制 度 」 が 存 在 し た。 特 に女 性 は 民 事 的 な 権 利 や 参 政 権 が なか っ た。 ○ ポ ツ ダ ム宣 言 第10 項 に は 「 日 本 国 政 府 は , 日 本 国 国 民 の 間 に お け る民 主 主 義 的 傾 向 の復 活 強 化 に対 す る 一 切 の 障 害 を 除 去 す べ き。 言 論 , 宗 教 , 及 び 思 想 の 自 由並 び に基 本的 人 権 の 尊 重 は, 確 立 さ れ る べ し。」 と主 張 さ れ て い る。 基 本 的 人 権 の尊 重 と い う 言 葉 の起 源 は こ の 宣言 に あ る。 展 開2 2次 ル ー ル とその背景 にある権威 の分析 ( 図2 ②) 日 本 国 憲 法 成 立 期 の 議 論 の背 景 ○ 日 本 国 憲 法 の基 本 的 人 権 に関 す る 条 文 は ,“ 誰 ” の “ ど の よ う な 議 論 ” を 経 て 成 立 し た の で し ょ う ? ○ 日 本 国 憲 法 を 成 立 さ れ る た め に , ど ん な 原 則( ル ー ル ) と 力 ( 権 力 ・ 権 威 )が 働 い て い た こ と が 分 か り ます か ? T: 発 問 す る P: 答 え る ( 資 料 ④) T: 発 問 す る P: 答 え る ○ 日 本 国 憲 法 草 案 は, GHQ 民 政 局 の25 名 の ス タ ッ フ に よ っ て1946 年 の 2 月 3 日 か ら12 日 ま で の 匚9 日 間 」 で 作 成 さ れ , 若干 の修 正 の 後 , 日 本 政 府 に よ る明 治 憲 法 改 正 案 と し て 3月 6 日 に 発 表 さ れ た。 そ し て, 第90 回 帝 国 議 会 で の審 議を 経 て10 月29 日 に衆 議 院で 可 決 し 成 立 し た。 ○ 憲 法 の 内 容 は, GHQ が 草 案 を 書 い て い る こ と か ら 「 マ ッ カ ー サ ー の意 向 に 沿 う 」 こ と が 原 則 で あ っ た。 し か し, 憲 法 の 成 立 形 式 は, 民 主 的 な手 続 き ( 男 女 平 等 の普 通 選挙 で 成 立 し た 第90回 帝 国 議 会) で, 明 治 憲 法 を 改 正 す る こ と を 原 則 と して い る。 こ の背 景 に は,「 戦 勝 国 の力 」 と 男 女 平 等 選 挙 によ る議 員 で 構 成 さ れ た 国 会 の議 決 と い う 厂民 主 主 義 の力 」 が あ る 。 展 開3 1次 ルー ル と2 次ル ー ル を 結 合 す る 議 論 の 分 析 (図 2 ③) 日 本 国 憲 法 成 立 期 の議 論 ①GHQ民 政 局 の議 論 ○ 当 時22 歳 で あ っ たベ ア テ・ シ ロ タさ ん は, な ぜ , 憲 法づ く り に参 加 し た ので す か ? ・ べ ア テ さ ん らGHQ の 民 政 局 の メ ン バ ーは, ど の よ う な 考 え方 を 持 って いた人 々で す か? ・ ベ ア テ さ ん はど の よ う に し て 憲 法 案 を 作成 し ま し た か ? ・ ベ ア テ さ ん は, ど の よ う な 条 文 案 を 書 き ま し た か ? ・ ゛ ア テ さ ん の主 張 はGHQで 受 け 入 れ ら れ ま し た か ○ ベ ア テ さ んを 含 め, 人 権 に 関 す る 小 委 員 会 は ど の よ う な 草 案 を 書 き ま し たか 。 T: 発 問 す る P: 答 え る (資 料 ⑤) T: 発 問 す る P: 答 え る (資 料 ⑥) T: 発 問 す る P: 答 え る (資 料 ⑦) T: 発問 す る P: 答 え る ( 資 料 ⑧) T: 発問 す る P: 答え る T: 発問 す る P: 答え る ( 資 料 ⑨) ○ ベ ア テ さ ん は, GHQ 民 政 局 の 局 員 で あ っ た。 5歳 か ら15 歳 ま で の10年 間 日 本 に 住 ん で お り , 日 本 に お け る基 本 的 人 権 を め ぐ る 社 会状 況 を 把 握 し て い た。 ま た, 彼 女 は 日 本 語 も 含 め 6 ヶ国 語 を 駆 使 す る こ とが で き た た め に, 憲 法 草 案 づ く り に参 加 し た。 ・ ア メ リカ に 伝 統 的 な ジ ヨ ン・ ロ ッ ク 流 の自 由 民 主 主 義 ( 匚個 人 の 尊 厳 」 を 保 障 し た多 数 決 に よ る 政 治 ) を 支 持 し て い た。 ま た, ル ー ズ ベ ルト 大 統 領 が 進 め る ニ ュ ー デ ィ ール 政 策 ( 政 府 が 積 極 的 に 公 共 投 資 を 行 い , 社 会 福 祉 を 推 進 す る 政 策 ) を 支 持 す る ニ ュ ー デ ィ ラ ーと よ ば れ る人 々 が 多 か っ た。 ・ ペ ア テ さ ん は, ま ず, ジ ープ に 乗 っ て東 京 中 の 図 書 館 へ 行 き世 界 の 憲 法 を 集 め た。 そ し て 母 国 の ア メ リ カ 合 衆 国 憲 法 に 加 え , ド イ ツ の ワ イ マ ー ル 憲 法 , ソ ビ エト 社 会 主 義 共 和 国 連邦 憲 法 な ど 国 家 が 手 厚 い 社 会 福 祉 政 策 を 行 う 憲 法 を 参 照 し た。 ・ ベ ア テ さ ん の 書 い た条 文 は , か な り 詳 し く 女 性 や 子 ど も の 権 利 , 家 族 関 係 につ い て 規 定 して い る。 ・ 憲 法 草 案 づ く り の運 営 委 員 会 は, ほ と ん ど の 条 文 を カ ッ ト し , 現 在 の 日 本 国 憲 法 の 第24 条 【 家 族 に お け る 個 人 の 尊 厳 と両 性 の平 等 】 にあ た る条 文 が 残 っ た。 ○ アメ リ カ社 会 に伝 統 的 な 厂個人 の 尊 厳」 を 守 る 規定 に 加え , ニ ュ ーデ ィ ラ ー な ら で は の 社 会 福 祉 の 視 点 を 加 え た,30 以 上 の 条 文 か ら な る 草 案 を 9 日 間 で 書 き 上 げ た。 特 に 戦 前 の 憲 兵 に よ る 不 当 逮 捕 の歴 史 を 踏 まえ 刑 事 手 続 き に 関 し て は10 以 上 の条 文 を 割 い た。 そ し て , 冂固人 の 尊 厳 」 を 守 る た め に最 低 限 必 要 な 自 由 権 ・平 等 権 ・ 刑 事 手 続 き・ 社 会 権 を 基 本 的 人 権 と して 明 記 し た。 ② 第90 回 帝 国 議 会で の議 論 ○ 第90 回 帝 国 議 会 衆 議 院 の 議 論 で 特徴的 な こ とはあ りま すか ? ・ 第90 回 帝 国 議 会 は、 そ れ ま で の議 会 と 何 か 違 い が あり ま す か ? T: 発 問 す る P: 答 え る T: 発 問 す る P: 答 え る ○ 帝 国 議 会 で は, GHQ 草 案 に も と づ く 日 本 政 府 案 に, 若 干 の 修 正 が 加 え ら れ た。 そ の な か で , 特 徴 的 な の は, 人 権 に 関 す る 条 項 に 「 す べ て 国 民 は , 健 康 で 文 化 的 な 最 低 限 度 の生 活 を 営 む 権 利 を 有 す る」 と い う, 生 存 権 に 関 す る 条 文 が 加 え ら れ たこ とで あ る。 ・ 衆 議 院 は, 1946 年 4 月10 日 に行 わ れ た わ が 国 初 の 男 女 平 等 普 通 選 挙 で 選 ば れ た 議 員 か ら構 成 さ れて い た。 - 12 −

(5)

終  結 法 的 ル ー ル の 確 認 と 開 か れ た 構 造 の 把 握 (図 2 ④) 日 本 国 憲 法 の ジレ ン マ ○ (MA ) な ぜ , 日 本 国 憲 法 は, 基 本 的 人 権 を 尊 重 し て い る の だ ろ う か ? ○ 日 本 国 憲 法 が 成 立 し て 約60 年 た って い ま す が 基 本 的 人 権 に 関 す る条 文 は 機 能 し て い ま す か ? T: 発 問 す る P: 答 え る T: 発 問 す る P: 答 え る ○ 基 本 的 人 権 を 尊 重 す る の は, ① 戦 前 , 政 府 に よ って , 個 人 の 自 由 や 法 の 下 の平 等 な ど の 基 本 的 人 権 ( 個 人 の尊 厳 ) が 著 し く 侵 害 さ れ た 歴 史 か お る か らで あ る 。 特 に男 女 平 等 や 刑 事 手 続 き に 関 し て は, 条 文 で 詳 し く 明 記 し , 政 府 に よ っ て 侵 す こ と ので き な い 基 本 的 人 権 ( 個 人 の 尊 厳 ) を 明 確 に す る 必 要 が あ っ た。 ま た, ② 憲 法 草案 を 作 成 し たGHQ 民 政 局 の メ ンバ ー は, ア メ リ カ 社 会 に 伝統 的 な ジ ョ ン ・ ロ ッ ク 流 の 自 由 民主 主 義 に 加 え , ニ ュ ーデ ィ ラ ーと 呼 ば れ る 社 会 福 祉 を 重 視 す る ひ と が 多 か っ た 。 そ の た め, ア メ リ カ 憲法 に な い 社 会 権 の 規 定 も加 え , 基 本 的 人 権 を 拡 大 し た。 ○ 詳 細 な 規 定 か お り , 様 々 な 問 題 に対 応 し て き た 。 ま た , 憲 法13 条 の幸 福 追 求 権 の よ う に, 幅 広 く 権 利 を 保 障 し て い る条 文 を 解 釈 す る こ と に よ っ て , プ ラ イ バ シ ーな ど新 し い 人 権 も確 立 さ れ て きた 。 し か し ,「 個 人 の 自 由 」 対 「 公共 の 福 祉 」, 匚表 現 の 自 由 」 対 「 プ ラ イ バ シ ー」 と い っ た社 会 的 ジ レ ンマ も存 在 し, 裁 判 と な る ケ ー ス も多 い 。 資 料 ① 佐 藤 幸 治 ほ か 著 『 中 学 校 社 会 公 民 的 分 野 』 大 阪 書 籍, 2006 年 ,pp187-189 匚日 本 国 憲 法 第 3 章 国 民 の 権 利 及 び義 務 」。 ② 同 書 ①> pp 40-42「戦 前 の 人 権 に 関 す る記 述 」。 ③ 鈴 木 昭 典 『 日本 国 憲 法 を 生 ん だ 密 室 の九 日 間 』 創 元 社, 1995 年, pp360-361 「 ポッ ダ ム宣 言 」。 ④ 前 掲 書 ③, pp347-348 厂日本 国 憲 法 制 定 過 程 」。 ⑤ ベ ア テ ・ シロ タ ・ ゴ ード ン  平 岡 磨 紀 子[構 成 ・ 文 ]『1945 年 の ク リ ス マ ス 一 日本 国 憲 法 に 「 男 女 平 等」 を 書 い た女 性 の 自 伝 』キ白書 房1995 年, ppl28-219 「 ベ ア テ さ ん の証 言」。 ⑥ 前 掲 書 ③ 鈴 木, pp30-73 匚GHQ民 政 局 の 憲 法 草 案 メ ン バ ー のプ ロ フ ィ ー ル」。 ⑦ 前 掲 書 ③, pp208-209 「 ベ ア テさ ん が 参 照 し た 各国 の 憲 法 」。 ⑧ 前 掲 書 ③, p206 匚ベ ア テさ ん が 書 い た 草 案」。 ⑨ 前 掲 書 ③, pp372-385 厂日 本 国 憲 法 GHQ草 案 」。

( 2 ) 授業 展 開 − 1 次 ル ー ル と 2 次 ル ー ル の 結 合

と し て の 憲 法 成 立 過 程 の 研 究 一

授 業 は , 図 2 に 示 し た ① ∼ ④ の 順 番 に 研 究 活 動

を 行 う よ う 展 開 さ れ る 。 表 1の 過 程 は ① ∼ ④ の 段

階 に 対 応 し て い る 。

小 単 元 「 起 源 」 は 導 入 「 メ イ ン・ クェ ス シ ョ ン

の 設 定 」, 展 開 I「 1 次 ル ー ル と そ れ を 生 ん だ 社

会 状 況 の 分 析 」, 展 開 2「 2 次 ル ー ル と そ の 背 景

に あ る 権 威 の 分 析 」, 展 開 3 ∩

次 ル ー ル と 2 次

ル ー ル を 結 合 す る 議 論 の 分 析 ], 終 結 匚法 的 ル ー

ル の 確 認 と 開 か れ た構 造 の把 握 」 の 4段 階 で 展 開

さ れ る 。

導 入 で は , 日 本 国 憲 法 が31 も の条 文 に よ っ て 基

本 的 人 権 を 保 障 し て い る こ と を 把 握 し ,「 な ぜ 憲

法 は,“基 本 的人 権 ” を 尊 重 し て い る の だろ うか ?」

と い う , 本 単 元 のMQ ( メ イ ン ・ ク ェ ス シ ョ ン)

を 提 示 す る 。 こ こ で は , 子 ど も に 憲 法 の人 権 規 程

の多 さ を 認 識 さ せ る と と も に,MQ

に 対 し て 仮 説

を 考 え さ せ る 。

展 開 1で は , 厂日 本 国 憲 法 が 成 立 す る以 前 の 基

本 的 人 権 を め ぐ る 日 本 社 会 の 状 況 は ど の よ う な も

ので し た か ?」 と 問 い , 明 治 憲 法 下 , 特 に 日 中 戦

争 以 降 の 日 本 政 府 によ る 基 本 的 人 権 の 侵 害 の 状 況

を 研 究 す る。 こ こ で は, 日 本 政 府 に よ る 国民 へ の

人 権 侵害 が , ポッ ダ ム宣 言 第10 項 の 「 日 本 政 府 は,

基 本 的 人 権 の 尊 重 を 確 立 す べ き」 で あ る と い う,

日 本 政 府 に責 務 を 課 す 1 次 ル ー ル ( 規 範 ) を 生 ん

だ こ と を 把 握 さ せ る12)

展 開 2 で は,「 日 本 国 憲 法 の基 本 的 人 権 に 関 す

る 条 文 は,“誰 ” の “ ど の よ う な 議 論 ” を 経 て 成

立 し た ので し ょ う か ?」 と 問 い, まず 憲 法 が ①マ ッ

カ ー サ ー の 命 令 に よ っ て GHQ民 政 局 が 草 案 を 作

成 し, ②帝 国 議 会 に 日 本 政 府 案 と し て 提 出 さ れ 審

議 , 可 決 さ れ た こ と を 把 握 さ せ る。 そ し て ,[ ̄

本 国 憲 法 を 成 立 さ せ る た め に, ど の よ う な 原 則 と

力 ( 権 力・ 権 威 ) が 働 い て い た こ と が 分 か り ま す

か ?」 と問 い , 憲 法 の 成 立 に は, 民 主 的 な 手 続 き

に よ っ て 明 治 憲 法 を 改 正 す る と い う 2 次 ル ー ル

( 承 認 ル ー ル ) が 存 在 し , そ の背 景 に 戦 勝 国 の 権

力 ( マ ッ カ ー サ ー の意 向 ) と民 主 主 義 の 権 威 ( わ

が 国 初 の男 女 平 等 普 通 選 挙 で 選 出 さ れ た 議 員 に よ

る審 議 ) が あ っ た こ と を 研 究 さ せ る。 子 ど も に,

憲 法 を 成 立 さ せ る 2 次 ル ー ル の 把 握 を 促 し, そ の

背 景 に あ る力 を 批 判 的 に 吟 味 さ せ る わ け で あ る。

展 開 3 は, 本 単 元 の 中 心 と な るパ ート で あ り ,

GHQ民 政 局 に お い て 弱 冠22 歳 で 憲 法 草 案 づ く り

に参 加 し た ベ ア テ ・ シ ロ タ が展 開 し た 議 論 を 中 心

に研 究 し て い く 。 ま ず , ベ ア テ が 東 京 中 の 図 書 館

を ま わ り , 世 界 の 憲 法 を 集 め た こ と や , ア メ リ カ

に 伝 統 的 な 価 値 観 で あ る 厂個 人 の尊 厳 」 を 保 障 す

る 条 文 に加 え , ニ ュ ー デ ィ ラ ー ら し く ワ イ マ ー ル

憲 法 や ソ ビ エ ト 憲 法 な ど 手 厚 い 社 会 福 祉 政 策 を 善

と す る 憲 法 を 参 照 し 条 文 を 作 成 し た 様 子 を ベ ア テ

さ ん の 証 言 か ら 分 析 す る。 そ し て , 彼 女 が 作 成 し

た 条 文 が ど の よ う な 議 論 を 経 て 草 案 と な っ て い っ

た の か, 議 論 の 過 程 を 分 析 す る。 ま た, 第 9 0回

(6)

帝国議会が男女平等普通選挙にもとづく議会であ

,この議会が審議

し明治憲法の改正として

日本

国憲法が成立

したことも把握させる

。この

ような

分析によって

,子どもたちは,

「日本政府は基本

的人権

(個人の尊厳)

を尊重すべ

きである

」とい

1次ル

ール

(規範

)が

,厂

民主的な手続きによっ

て明治憲法を改正する

」という2次ルール

(認定

ール

)を経て,憲法上の価値観と

して承認

され

ことを実証的に研究す

るわ

けである

終結部では

,再び

「なぜ

,日本国憲法は,

“基

本的人権”を尊

して

いるの

だろうか

と問い,

①戦前に

日本政府による人権侵害があったこと

②憲法草案を書いた

Qのメンノ

−は,アメリ

カに伝統的な自由権

・平等権

・刑事手続きの保障

とい

った個

人の

尊厳

を守

るた

めの

規定

に加

,ニ

ュー

ディラ

と呼ばれ

る福祉政策を支持するひ

とが

かったためアメ

リカにない社会権も加

,基本的

人権を拡大

したことを確認する

。さらに,匚

憲法

成立後60

年たっていますが

,基本的人権に関する

条文は機能

していますか

?」

と問い,

“個人の幸

福追求”

“公共の福祉”や

“自由”

“平等”が

レンマとなっていることを把握させる

。ここで

,憲法は

完全でな

くジ

レンマや葛藤もある

“開

かれた構造

”を持

っている

ことを明らかに

,次

の単

元への導入を図る。

3)開かれた憲法成立学習の論理

以上の

ように

,小単元匚

起源

」の授

業は

“誰”

“どの

ような議論”を経て基本的人権に関する

条文

を作

したの

かその起源

を探

求す

る授

業とな

ている

。そ

して,憲法の成立過程を

「1次ルール

と2次ル

ルの結合過程

」と

して研究

させること

,憲法が選択

している価値観

を実証的に認識

ている

。また

,憲法は解釈や議論の余地の

ある

“開かれた構造

”である

ことも認識

させる

。そ

て授

業全体は

,憲法の基本的人権に関する条文を

政府に対する制限規範」と捉え

,子どもたちの

道徳的な規範と

区別

し展開される。

3 

判例研究モデルー

小単

元2

「どうす

!新

い人権の爆発」−

では

「判例研究モデル」の具体的な展開は

ようになるだ

ろうか

。図

3に小単元

「どうす

しい人権の爆発」

「以下,小単元匚

しい人権」

と表

記す

)で

をめ

ざす

法認

識の

デル

を示

した

また

,表

2に

小単

「新

しい人権

」の

教授

学習

過程

を示

した

1次

(起

る社

・憲

後の

に伴

プラ

イバ

自己

環境

,知

ど厂

しい

人権

と意

され

,爆

して

1次

(規

しい

人権

を憲法

上の

人権

して

し。

と消

対立

③結 

○新

しい人権

を認めな

い判例

私立S高校

パー

マ事件

○新

京都府学連事件

しい人権

を認めた

・前科照

判例

会事件

②2

次ルー

(認定ルー

ル)

裁判所は具体的な事件の裁判

をと

して憲法

上の基本的人権の意味

を判断す

日本

国憲法第81

(司法審査権)

日本国憲法第13

(基

↑  

司法の権威

・民主主義

④法的ルール

(判例)

の成立

丿

所は新

しい人権1

ることに慎重で

ある

・最高裁判所は憲法13

を根拠に

,フライ

バシー

(京都府学

連事件)だけは新

い人権と

して認めて

いる

・学校に

おける裁

判で

憲法13

を根拠に

しい人権が認め

れた

ことはない

多様な解

開かれ

釈が可能

た構造

3 

され

単元

る法

「ど

認識      

うす

!新

しい人権

(筆者

の爆

で形

(1)新

しい人権

を巡る議論の研究か

“基本的

人権”

の本質を探求する授

従来

,新

しい人権に関する授

業は,自由権や社

会権と並列に環境権や

プライバシ

を教授

して

きた

。その結果,子

どもたちは憲法に明記された

人権と判例によって認め

られ

つつある権利

(プラ

イバシ

ー権

など)の性質の違いを認識

しない。そ

して

,新

しい人権の

多くが私

人間の権利対立

(例

えば

,プライバシー

を巡る出版社と個人の

対立)

であるにも関わ

らず

,政府への制限規範である自

由権

などと並列に教授

,逆に憲法上の

人権の本

を子

どもたちが認識する

ことを阻んでいる

また

,憲法は静的で新

しい人権に対応できない

との立場か

,憲法

を改訂

し新た

な条文を加える

きだと短絡的な結論で授業をまとめるケ

ースも

ある

。この場合も子どもたちに憲法が動的に解釈

され運用

され

ていることを認識させない

“閉

ざさ

れた憲法学習”となっている。

−14−

(7)

筆者は

,この

ような問題意識か

らハー

トの所論

を応用

,新

しい人権

を巡る議論の分析から基本

的人権

(憲法上の人権

)の本質を探求する授

業を

開発

した

(2)授

業展開

2を参照すると小単元

「新

しい人権

」は

,導

入匚

メイン・

ェスシ

ョンの設定」

,展開

「1次

ールとそれ

を生んだ社会状況の分析」

,展開2

2次ル

ール

とその背景にある権威の分析」

,展開

∩次ルール

と2次ルールを結合す

る議論の分

,終結厂

法的ルールの確認と開かれた構造の

把握

」に

よって構成

され

る。この展

開は,前述

た小単元匚

起源

」と基本的に同

じ展開である。

導入では

「 ̄

あなたは

『新

しい人権』を積極

に憲法

上の

人権と

して認めることに賛成ですか

反対ですか?」と問

,小単元のメイン

・ク

ェス

ョンを提示する。

展開

1では

,新

しい人権が主張

される背景に,

環境破壊

,情報化,ライ

フスタイルの

多様化など

の社会

変化かおることを子

どもたちに気づかせ

1次ル

ール

を生んだ社会状況の認識

を促す

。また,

情報化社会に生きる子

どもたちもよく知っている

プライバシ

権さえも,憲法に明記され

ていない

ことを気づかせる

。そ

して,新

しい人権を憲法

の人権として認めることについては

,匚

憲法は他

人に迷惑

をかけない限

りあらゆる自由を保障す

べきである

」という積極論

(一般的自由説)と

「憲法は人間か生きるために重要な

自由のみ保障

すべ

きである

」という消極論

(人格

的自律説)に

分かれ

1次ルール

(憲法解

釈)がジ

レンマ

となっ

いることも把握させる。

展開2では

,新

しい人権

を憲法上の人権である

と判断する

2次ル

ール

(裁判ルール

)の確認

を子

どもに促す

。憲法81

条の

司法審査権に関する条文

を分析

させ

,裁判所が具体的な事件の裁判をとお

して憲法

上の

人権の意味

を判

断す

るとい

う2次ル

(司法審査権)を把握

させ

。そ

して,これ

での裁判では

,憲法13

条の幸福追求権が包括的な

人権保障の役割

を果

してきたことも把握させる

この

ような2次ル

ール13

が成立する背景に,司法

の権威

(裁判

官の独立)と民主主義の権威

(最高

裁判所裁判官の国民審査

)かおることも批判的に

吟味

させる

。ここでは

,判例

を成立

させるための

2次ル

ール

とその背景にある権威を分析

し,判例

が法的ルール

と認定され

“正当性”をまず

吟味

させるわけである。

展開

3は

,新

しい人権を巡る判例

を研究する本

単元の

中心的なパ

トである。ここでは

,事例

してS

高校パ

マ事件

(最高裁1996

年7月18

日判

)を研究対象とする14

。この判例

を取

り上げる

由は

,新

しい人権に対する最高裁の姿勢を典型

的に示

していること

,高校生が憲法条

文を使用

て提起

した校則

を巡る裁判であ

,子どもだちと

憲法の関わ

りを認識

させやすい事例

だか

らである。

まず

,事件の

当事者である

さんと学校側の

主張

を分析

,①憲法は私人間

(私立学校

と生徒の在

学関係

)にも適用するか

?②パー

マを禁止する校

則は憲法13

条の幸福追求権

を侵害するか?という

2つの争点を把握

させ

。そ

して,子どもだちか

ら2つの争点に関する意見

を引き出

して

いく

。さ

らに

,匚

あなたが裁判官ならどの

ような判決

を下

しますか?

」と問い,子どもたちに判決文を書か

せる

。その後

,最高裁判決の要

旨を確認

し,最高

裁は

,①

憲法は私

人間に直接適

用され

ない,②パー

を禁止す

る校則は合理性があると判断

した

こと

を確認する

。なお,S

高校パーマ事件の東京地裁

判決は

「 ̄

髪型の自由は,公権力から干渉され

い権利として憲法13

条によって保障され

ている

,匚

本件は,私人間の問題であ

り,憲法を直接

適用できない

」と判断

したことも確認する。

終結部では

,小単元のまとめ

を行い,新

しい人

を巡る

1次ル

ールのジ

レンマ

(幸福追求権

を巡

る解釈の対立)が

2次ル

ール

(裁判所による

司法

審査

)によって裁定

され

,法

的ルール

(新

しい人

を憲法上に読み込むことに慎重な判例

)を形成

していることを確認する

。ここでは

“最高裁は

しい人権に対

して消極的な姿勢である”と閉

された認識を形成

し終結するのではな

,さらに

そもそも憲法上の基本的人権とはどのようなも

のか?

」と問い,子

どもたちの認識を開

くように

促す

。子

どもたちは

これまでの学習の振

り返

り,

憲法

上の人権が,①政府によって大規模に侵害

(8)

表 2  小 単 元 2 「 ど う す る ! 新 し い 人 権 の 爆 発 ] の 授 業 構 成

過程

学 習 テ ー マ と 主 な 発 問 教 授 学 習活 動

子 ど も か ら 引 き 出 し た い 知 識 ( 法 解 釈 )

導 入 メイン・ク エスシヨン の 設 定 どう す る! 新 し い人 権 ○(MQ ) あ な た は, 厂新 し い 人 権 」 を 憲 法 上 の 人 権( 基 本 的 人 権 ) と し て 認 め るこ と に 賛 成 で す か,反 対 で す か ? T: 発 問 す る P: 意 見 を 考 え る ○ ( 予 測 さ れる 子 ど も の意 見) ・ 基 本 的 人 権 が た くさ ん あ っ た ほ う が 国民 は幸 せ にな る ので 賛 成。 ・ 基 本 的 人 権 が た くさ ん あり す ぎ る と、 裁 判 も増 え る ので 反 対 。 展 開1 1次 ル ー ル と そ れ を 生 ん だ 社 会 状 況 の 分 析 (図3 戉 D 新 し い 人 権 を 巡 る 意 見 ○ な ぜ, 新 し い 人 権 が主 張 さ れ るよ う に な っ た の で す か ? ○ 新 し い 人 権 は, 憲 法 に 明 確 に 規 定 さ れて い ま す か ? ○ 新 し い 人 権 を 憲 法 上 の人 権 と し て 認 め る こ と を 巡 っ て, ど のよ う な 意 見 が 対 立 し て い ま すか ? T: 発 問 す る P: 教 科 書 を 確 認 す る (資 料 ①) T: 発 問 す る P: 確 認 す る (資 料 ②) T: 説 明 す る ○ 日 本 国 窓 法 成 立 後, 社 会 が 変 化 し た か ら。 例え ば, 経 済 成 長 に よ る 環 境 破 壊 , テ レ ビ や イ ン タ ー ネ ット に よ る 情 報 化 , 趣 味 ・ 結 婚 ・ 病 気 の 治 療 な ど ラ イ フ ス タイ ル の多 様 化 な ど に伴 い, 環 境 権 , プ ライ バ シ ー権 , 自 己 決 定 権 と い っ た「 新 しい 人 権 」 と 意 識 さ れ る も のが , 爆 発 的 に増 加 して い る。 ○ 新 し い 人 権 は, 憲 法 上 に明 確 に 規定 さ れ て い な い 。 ○ 大 き く 2 つ の 意 見 が 対 立 して い る。 ・ 憲 法 は, 厂他 人 に 迷 惑 を か け な い 限 り あ ら ゆ る 自 由 や 権 利 を 保 障 す べ きで あ る 」 と 考 え る 積 極論 。 【 一 般 的 自 由 説 】 ・ 憲 法 は, 厂人 間 が 生 き る た め に 本 当 に重 要 な 自 由 や 権 利 を 保 障 す る べ き だ」 と 考 え る 慎 重 論 。 【人格的 自律説】 展 開 2 2 次 ル ー ル と そ の 背 景 に あ る 権 威 の 分 析 (図3 原 器 新 し い 人 権 を 憲 法 に 読 む 方 法 ○ 新 し い 人 権 を 憲 法 上 の 人 権 と し て 認 め る に は, ど の よ う な 方 法 が あり ま す か ? ・ 新 し い 人 権 を 求 め る市 民 は, 憲 法 の ど の よ う な 条文 を 使 用 して い ま す か ? ○ な ぜ 裁 判 官 は, 憲 法 の 意 味 を 判 断 す る 権 限 を 持 つ こ と が で き る ので す か ? T: 発 問 す る P: 確 認 す る (資 料 ③) T: 発 問 す る P: 答 え る T: 発 問 す る P: 答 え る ○ 具 体 的 な 裁 判 を 提 起 し, 新 し い 人 権 を 認 め る 判 決 を 裁 判 官 に求 め て い く方 法 か お る 。 裁 判 官 は判 決 の な か で , 憲 法 上 の人 権 の意 味 を 判 断 す る とさ れ て い る ( 憲 法81 条 : 司 法審 査 権)。 ・ 憲 法13 条 の幸 福 追 求 権 ( 生 命 , 自 由 及 び 幸 福 追 求 に対 す る 国 民 の 権 利 ) を 使 用 し , プ ラ イ バ シ ー 権 や 自己 決 定 権 な ど を 幸 福 追 求 権 の 一 部 だ と 主 張 し て い るo O 裁 判 官 は , 多 数 決 に も と づ く「 政 治 」 の 力 か ら 独 立 し , 少 数 者 や 個 人 の 人 権 を 守 る た め に, そ の良 心 と憲 法 に 従 っ て 判 決 を 下 す ( 司 法 の力 : 憲 法76 条 ) と さ れ る か ら 。 特 に 最 高 裁 判 所 の 裁 判 官 は 国 民 審 査 を受 け て い る ( 民 主 主 義 の力 : 憲 法79条 ) か ら。 展 開 3 1 次 ル ー ル と 2 次 ル ー ル を 結 合 す る 議 論 の 分 析 (図3(Z 瑙) 新 し い 人 権 を 巡 る 判 例 ○ で は, 高 校生 が 実 際 に 起 こ し たS 高 校 パ ー マ 事 件 を 事 例 に 考 え ま し ょ う 。 事 件 の で きご と は ? ・ 当 事 者 の主 張 は ? ○ あ な た は ,A さ ん と私 立 学 校 と の 関 係 に, 政 府 が 侵 す こ と の で き な い 個 人 の 自 由 を 保 障 し た 憲 法 の規 定 を 適 用 で き る と 考え ま す か ? ○ パ ーマ を か け る 自 由 は, 憲 法 上 の 人 権 だ と 考 え ます か ? ・ あ な たが 裁 判 官 な ら, ど の よ う な 判 決 を 下 し ま すか ? ○ 裁 判 所 は, ど の よ う に判 断 し ま し た か ? ○ で は, 新 し い 人 権 を 認 め た 判 例 も 参 照 し て み ま し ょ う。 T 二発 問 す る P : 資料 を読 む ( 資 料 ④) T : 発 問 す る P : 主張を整する T 二発問 す る P 二 答え る T: 発問 す る P : 答 え る T: 発 問 す る P: 答 え る T 二発 問 す る P: 資料を 確 認 する (資 料 ⑩ T : 発 司 す る P: 参照 す る (資 料 ⑤) ○ 私 立S 高 校 の生 徒 だ っ たA さ ん は, 校 則 で 禁 止 さ れ て い た車 の 免 許 を 3年 生 の 7月 に取 得 し, そ の こ と が 学 校 に 発覚 し 謹 慎 処 分 とな っ た。Aさ ん は 謹 慎 期 間 中 に さ ら に 校 則 で 禁 止 さ れ て い る パ ーマ を か け , 学 校 側 は 度 重 な る 校 則 違 反 を 理 由 にAさ ん に 自主 退 学 を 勧告 し た。 Aさ ん は い っ た ん 退 学 願 い を 出 し 受 理 さ れ た が 納 得 で き ず , 校 則 で パ ー マ を 禁 止 す る こ と は , 憲 法 13 条 の幸 福 追 求 権を 侵 害 す る と主 張 し 裁 判 を 起 し た。 【Aさ ん の主 張 】 ① 憲 法 の人 権 規 定 は, 私 立 高 校 と生 徒 との 関 係 に も 直接 適 用 さ れ る。 ② 校 則 で 車 の 免 許 の取 得 や パ ー マ を 禁 止 す る こ と は , 憲 法13 条 の 幸 福 追 求 権 を 侵 害 す る。 【 学 校 側 の主 張】 ① 憲 法 の人 権 規 定 は, 私 立 高 校 と生 徒 と の関 係 に直 接 適 用 さ れ な い。 ② 校 則 で 車 の 免 許 の取 得 や パ ー マ を 禁 止 す る こ と は , 生 徒 を 指 導 す る た め の 合 理 的 な理 由 か おり 違 法 で は な い 。 ○ 予 測 さ れ る子 ど も の 意 見 ・ で き る と 思 う : 私 立 学 校 と い っ て も 国 が 定 め る 法 律 に よ って 教 育 を 行 っ て い る の だ か ら, そ の 学 校 の 校 則 も憲 法 上 の基 本 的 人 権 は 守 る べ き。 ・ で きな い と 思 う:Aさ ん は 自分 の 意 思で , そ の学 校 に 入 っ た と思 う し, 校則 が 嫌 な ら違 う 学 校 にだ って 入 れる。Aさ ん と私 立学 校 の関 係 に, 憲 法 は関 係 な い。 ○ 予 測 さ れ る子 ど も の 意 見 ・ パ ーマ な ど の 髪 型 は, 自 分 を 表 現 す る 大 切 な も の だ し, 他 の 人 に 迷 惑 を か け る わ け で も な い の で , 憲 法 上 の基 本 的 人 権 と いえ る。 【 一 般 的 自 由 説 】 ・ パ ーマ な ど の 髪 型 は, 信 教 の 自 由 や 言 論 の 自 由 と比 べ る と, 憲 法 で 保 障 す る まで 重 要 な 自 由 と は 思 え な い 。 【人 格 的 自律 説】 ・ 様 々 な 答え ○ 【 東 京 地 裁 判 決 】 髪 型 の 自 由 は, 公 権 力 か ら 干 渉 さ れ る こ と の な い 自 己 決 定 権 と し て 憲 法13 条 に よ り 保 障 さ れて い る 。 し か し, 本 件 は, 私 立 学 校 と 生 徒 の 関 係で あ り, 憲 法 を 直 接 適 用 す る こ と は で き な い 。 【 最 高 裁 判 決 】 憲 法 上 の基 本 的 人 権 の 規 定 は, 私 立 高 校 と生 徒 と の 関 係 に は 直 接 適 用 さ れな い。 パ ー マ を 禁 止 す る こ と は , 生 徒 を 指 導 す る た め の 合 理 的 な 理 由 か お り 違 法 で はな い。 ○ 新 し い人 権 を 認 めた 判 例 ・ 京 都 府 学 連 事 件 ( 最 高 裁1969 年 判 決 ) 最 高 裁 は憲 法13 条 を 根 拠 に は じ めて 具 体的 な 権利 ( 肖 像 権 ) を 認 め た。 ・ 前 科照 会 事 件 ( 最 高 裁1981 年 判 決 ) 最 高 裁 は憲 法13 条 を 根 拠 にプ ラ イ バ シ ー 権 を 認 め た。

−16

表 1  小 単 元 1 「 日 本 国 憲 法 を 生 ん だ 9日 間 − 基 本 的 人 権 の尊 重 の 起 源 −」 の授 業 構 成 過程 学 習 テ ー マ と 主 な 発 問 教 授 学 習 活 動 ・ 資 料 子 ど もか ら引 き 出 し たい 知 識 導 入 メ イン・ ク エスション の設 定 日本 国 憲法 に お け る 基 本 的 人 権 ○ 憲 法 は 基 本 的 人 権 を 尊 重 し てい ま すか ? ○ (MQ ) な ぜ, 日 本 国 憲 法 は, 基 本 的 人

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