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情報・資源と組織 ; 序論的考察

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(1)

情報・資源と組織 ; 序論的考察

その他のタイトル Information, Resources and Organizations ; A Preliminary Study

著者 広田 俊郎

雑誌名 關西大學商學論集

巻 23

号 6

ページ 462‑491

発行年 1979‑02‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00020952

(2)

2 4 ( 4 6 2 )  

情報・資源と組織;序論的考察

広 田

俊 郎

I .

近年,経済社会の構造的および過程的解明にとって,組織の構造と行動の 検討が不可欠であることが自覚されてきた。多くの研究者が,様々な観点,

問題意識主張をもって,組織構造や,組織による資源配分あるいは機能遂 行などの諸側面を明らかにしてきた。

これらの厖大な貢献に対して,本稿は,組織解明のための,考えられうる 理論栂成上の諸次元を明示することに,第一の目標を置いている。具体的に は,原子諭と全体論,あるいは個人主義と集団主義,情報と資源,複数機能 と特定機能, 決定

a g e n d a

の多層性と特定性, などの理論構築上の諸視点 の検討が行われる。ただし,ここではあくまでも,これらの諸次元の析出に 重点が置かれており,特定の立場を鮮明に打ち出す段階には至っていない。

以下,

I I ,

接近上の諸次元, において, 上 で 述べた諸次元の確駆作業を行

* 

本稿の作成に当たり, 新野幸次郎神戸大学教授, 加護野忠男神戸大学助教授,

春日淳ー関西大学助教授,などの方々に,様々な問題点の指摘と示唆を得ました。

記して感謝の意を表したいと思います,なお本研究は文部省の昭和5

3

年度科学 研究費補助金(奨励研究

( A )

)にもとづく研究の一部をなしている。

(3)

また,本稿の第二の目標は種々の組織硯象を理解する際の準拠枠を与える 特定のパラダイムが,これらの諸次元を,どのように特定化し,どこに強調 点を置き,それらの次元の関連性をどのように設定しているか,を述べるこ とである。このための検討が,眉,種々のパラダイムの紹介と検討,におい てなされる。

最後に,本稿の第三の目標は,組織と経済社会をめぐる,種々の問題意識 を持った各理論が,接近上の諸次元をどのように組み込み,どのような準拠 枠を用いて解明しようとしているか,を検討することであり,

1 V ,

組織一環 境諸理論の位置づけ,においてこの課題が果される。

I [ .

接近法上の諸次元

(1)  方法論的個別主義と方法論的集団主義

さて,組織現象の理解に際して,二つの立場が考えられている。一つは個 体の行動様式の説明から,全休の行動を説明しようというもので,これは方 法論的個別主義と呼ばれている。 もう一つは, 全体の特性が, 個体の行動 に,他に見られないような特徴的な行動を刻印するはずであるとし,したが

*1 

って全体的な特性から説明しようとする方法論的全体主義的な立場である。

経済理論において,新古典派経済学は,その方法態度として方法論的個別 主義をとってきた。また社会学や組織論においても,このような接近法がし ばしばとられた。しかし,それに対する反省の上に社会経済硯象を方法論的 個別主義のみならず,相互作用主義の助けを借りて,包括的に説明すること

* 1

村上泰亮,西部邁

( 1 9 7 8 ] p p .  36‑46

参照。この議論については,社会は個人に 環元されるとする原子論,社会はある実体であるとする全体論という,存在論的 なレペルでの対比と,理論構築上,社会硯象を個人行動から説明するという方法 論的個別主義と,ある集計されたレベルからの説明を行おうとする集団主義とい ぅ,方法論上の対比とがある。この二つのレペルの対比は,それぞれ関連してい るであろうが,その関連は完全にパラレルなものではないだろう。

(4)

2 6 ( 4 6 4 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

の必要性が説かれ,そのためのーステップとしてのホーリスティックな観点 の必要性が諸理論において指摘されている。

*2 

前者の場合,ある主体の行動

J

レールは,利潤極大・効用極大のようにアプ リオリに決められることによって,その主体から成る世界の均衡を説明でき る。しかし,後者の場合,行動

J

レールは個人レペルにおいてアプリオリに決 められず,主体がどのような環境に属しているかに応じて異ったものとされ 得る。すなわち,そのような立場においては環境がゲシュタルトとして個人 に影善を及ぼすと考えられるから,ある曝境の中でどのような他者の行動に 反応して, 決定をどのように行うかの議論が必要とされるであろう。つま り,主体の行動

J

レールは, 主体が選択した

domain *3 

の持つ環境特性に応じ た特定のものとならざるを得なくなるという契機が強く作用するであろう。

その場合,環境特性が多様であれば,多様な作用様式の存在が見出されるで あろう。

このように,環境の個に及ぽす影善および,個の持つ環境への主体的な行 動や,反作用の各局面について,代替的なプロセスが考えられるであろう。

すなわち,社会現象を説明する各種のパラダイムは,この点において一つの 差異を形成することになっているのである。つまり,社会現象を見る場合,

ある個体の,何らかの形を持った目的閲数の最大化行動の帰結として,全体 社会の動向が決定されるとする立場をとるか,社会蜆象を社会的システムの 特性に焦点を合わせて理解し,その全体構造は適合性の観点から決定され,

また社会システムにおける個体の行動も,そのメカニズムの一つとして,設 定されたものとして理解するという立場をとるか,という相遣があるのであ

4* 

* 2

村上

[ 1 9 7 4 ]参照 c

* 3   Thompson  J .   D . 〔 1 9 6 7 )p . 2 6

参照。

domainとは組織が設定する,

自己の機能 し得る領域のことである。組織のレベルが,市堀から個人に向っておりてくるに つれて,この変数が議論により重要性を持ってくるであろう。

* 4

村上泰亮〔1

9 7 5 )pp.15‑30

参照。社会学における「役割」の概念に対応するも のとして,個別的動機における説明からの出発を行わないのである。

(5)

(2)  情報空間と資源空間

また,現在,提起された方法論上の問題で評価すべきは,社会現象を情報 空間と資源空間に分けてとらえる, という観点であろう。 このような視点 が,組織の解明の必要条件とされてきた系譜は次のようにたどることができ

よう。

まず

B a r n a r d , Simon

を始めとする行動科学的接近によって,社会現象 を行動ないし行為のシステムとして把握することが可能であるとみなされ た。この立場に立った場合社会硯象を把握する究極的要素として,何を考え るかという問題に出会う。すなわち, 社会現象解明の分析単位として, 動,役割, 意思決定のいずれを選択するか, という分岐点に立つことにな る。そこでたとえば,

B a r n a r d

は協働行為概念をとり,

Simon

等は意思決 定概念をとるというように分化がなされた。このように分析単位の分化が行 われただけでな

<,Barnard

は行動における資源と情報を包括的にとらえ ようとし,

Simon

は行動における情報を抽出しようとしたという分化をも 含んでいた,と思われる。

その点を明示して,行動の実体が情報と資源から成る,と見るとする分化 が次になされるのである。すなわち,吉田〔

1 9 7 4 a J ,

1 9 7 4 *5  b ]

は,行為論の パラダイムを主体による投入ー産出行動と解釈し,投入ー産出としては,工 ネルギーと情報がある,というサイバネティックスの見解を導入する。つま り,投入ー産出には,情報と資源とが存在する,とするのである。そうする ことによって行為論パラダイムも,社会硯象は,情報または,情報処理によっ て資源処理が行われているという関係を媒介として成立している,とする立 場に帰着されるわけである。このような立場は,単に説明概念の方法論的選 択を行うというより,より社会現象の実体的把握に基礎をおいたものである だけに,様々な影響力を持ち得るものと思われる。

たとえば,経済理論において新古典派を主流とする経済学に対して,情報

* 5

吉田民人

( 1 9 7 4 a J 〔 1 9 7 4 b ] 参照。

(6)

2 8 ( 4 6 6 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

空間と資源空間におけるよりリアリスティックな二元的把握という立場を適 用しようとすれば,従来の諸理論はかなりの再展開を必要とされるだろう,

ということが種々の論者によって指摘されている。つまり,新古典派などの モデル分析的手法,均衡分析においては,情報空間の主要内容である資源の 変換パクーン,資源の消費が及ぼすパクーンなどは,それぞれ生産関数,効用 関数として与えられたものとされてきた。すなわちそこでは,情報が完全で あると仮定されたもとでの資源配分の最適解やその属性が解明されてきた。

しかし,現実の社会硯象は,最初に述べた通り,経済理論で仮定されている ような完全情報の世界ではなく,人々の相互作用,相互の情報交換,個々の 主体の世界への働きかけによる学習などを通じて,確定化され,明示化され ていくものなのである。そこで,社会硯象の理解のためには,人々の情報活 動により多く眼を向けることが必要とされるであろう。

また,組織論においても, このような情報空間の重要性が指摘されてい る。すなわち組織は環境の中でその行動と成果を規定されるのであるが,組 織が構造形成・諸行動・諸決定を行うのは組織が環境についての把握を構成 した創造環境

*6  ( e n a c t e de . n v i r o n m e n t )

のあり方に基づいてである。 この

e n a c t e d  e n v i r o n m e n t

をどのようなコミュ;::.ケーション・チャネルを用い ながら,あるいは情報活動を用いて確定していくかが組織行動の理解にとっ て重要である,ということである。そのような理解が現実行動を形づくり,

組織をとりまく現実の環境状況の中で結果が確定されるのである。

また,構造・機能分析において樺造の変革は,実際の社会システムの機能 要件が充足されないことから生じるとされるが,硯実には,マスコミの発達 などを通じて, 人々の意見が行為場の階層構造を通って上向するのではな く,情報空間における情報処理が資源空間の実態を変化させていくという現

*7 

実がでているという例にも見られるように情報空間の規定力が存在するとい

* 6   P f f e f e r  & S a l a n c i k  

(1978] 参照。広田俊郎 (197的 pp.42~44参照

* 7

吉田民人

( 1 9 7 4 a ]

参照。

(7)

うことが言えるであろう。 その他にも, 伝統的な, あるいは文化的な側面 が,ある機能遂行や資源配分の特有のモードを規定していくという側面がし ばしば見られる。

いずれにせよ情報空間は,資源空間をおおうヴェールではなしに,それを 組織化する実休としての場なのであると言えよう。そのことの含意は,現実 は,情報空間と資源空間から成り立っているのだが,情報空間のレペルから の状態規定,変化が重要な意味を持つということである。ただし,この情報 活動自体は,情報空間での一人歩きではなく,社会システムにおける要件不 充足状態に基づく動機づけ・目標決定行動にしたがうという意味で,資源空 間に規定されている。

したがって,現実の不確実性の下での社会現象や,それを担う行動を説明 したり予見したりする上で情報空間と資源空間にまたがる主休の相互作用の プロセスあるいは相互作用が断絶するプロセスについての議論を導入するこ とが,

c r i t i c a l

に重要だと思われる。

(3)  複数の機能

また,社会経済システム把握の方法論上の次の特徴は,社会経済システム が,目標達成,適応,統合,価値パクーンの維持,という多様な機能を担わ

*8 

され,遂行しているという現実に注意を喚起することである。すなわち,社 会経済システムが,その行動を展開する上において,実際上,経済的,情報 的,政治的, 文化的, など多様な活動を行っているが, 種々の議論構成上 は,多くの活動を与件として,ある特定の活動がどう決定されるかの議論が 行われてきたのである。

たとえば,経済理論においては,そこで取り扱われる一例として社会経済 システムとしての企業は,主に適応という機能に重点がおかれたシステムで

* 8   P a r s o n s  & S m e l s e r  (1956

〕参照。以後の議論で目標達成機能

( G o a l a t t a i n ‑

mment) 

G,

.適応機能

( A d a p t a t i o n

A,

統合機能

( I n t e g r a t i o n )

I ,

価値パクーン維持機能

( L a t e n c y )

L

と略記する。

(8)

3 0 ( 4 6 8 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

あると見なされ,その目的関数で示される価値パクーンの維持機能や,分配 率の決定などで示される統合などの機能は,与件として設定された上で,議 論の展開がはかられてきた。 その意味で, 経 営 者 の 目 的 関 数 を 明 示 化 さ せ

Baumol( 1 9 5 9 )

の売上高極大化モデルや,

*9  M a r r i s( 1 9 6 3 )

の成長率極

*10 

大化モデルは,より硯実的な印象を与えることになっていると思われる。

また,青木〔

1 9 7 1 )

は,ハイアラーキーによる資源配分における情報交換

*11 

プロセスを明示的に取り入れることによって,現実の社会経済システムにお ける情報局面の重要性を印象づけている。更に,青木〔

1 9 7 8 )

においては,

企業モデルの提示において,組織内部での交渉を通じて分配率を規定する側 面と企業の成長を決定する側面との二面に分けて論ぜられているのも,統合 機能についての議論を導入しようとしたという意図に基づくものと思われ る。これらの研究を始め,経済理論において,説明プロセスに諸機能の相互 依存性を導入しようとする傾向が見られるように思われるのである。

t

こ,組織論について言えば, 社会システムは構造機能分析の枠組の上 に,各種の機能の相互作用としてのシステムと解される見方が,色々な論者

*12

― 

よって指摘されている。たとえば,

Lawrence=Lorsch

などの提唱するコン ティンジェンジー理論もそれが組織のオープン・システム・モデルに依拠 し,社会システムと有機休とのアナロジーを使用し,環境から課せられた生 存のためのシステムのニーズ(機能)と組織構造の適合性を論じてきたと言 うことで

Bowey( 1 9 7 6 ) *13 

によってコンティンジェンシー構造機能主義と名

* 9   B a u m o l ,   J . ,   ( 1 9 5 9 J  

* 1 0   M a r r i s ,   R . ,   ( 1 9 6 4 〕

* 1 1

青木昌彦〔1

9 7 1 ]そこにおいては,資源配分をめぐる従来の諸理論が,計画プロ

セス論として再定式化されている。

* 1 2   S i l v e r m a n ,  D .   ( 1 9 7 1 ]参照。

* 1 3   B o w e y ,   A . ,

1 9 7 6 ]参照。 また野中郁次郎 ( 1 9 7 8

〕において, この点の指摘が なされた後 「構造機能主義の概念図式を組織レペ

J

レにそのまま適用するので は,現実の組織硯象に対する説明力は一歩も増大しないし,組織現象の統制に意 味のある実践的命題を提示するのが困難」であるという注意が喚起させられてい る。われわれも,このように組織が複数機能を担わされているという事実,そし てそれらが構造を規定するという事実を,理論構成上の欠くべからざる要点とし て受けとめ,そのために有意義であるレペル内で構造・機能主義の概念図式を受 け入れたい。

(9)

づけられる程の近似性をもっているといえよう。

*  1 4  

すなわち, Lawrence~.Lorsch

( 1 9 6 7 ]

は,プラスチック産業・食品産業・

容器産業という,喋境の異なる三つの組織群を想定し,それらについて高い 成果をあげている企業組織のパクーンは,各産業毎に異なるとしている。そ こでは,研究開発・販売・製造という三つの部門が想定され,それらの部門 のマネージャーの時間指向性・対人指向性・目標指向性・構造の公式性,な どの分化がどのようなパターンを見せるかが検討される。

これらの各部門は, その主な機能として, パーソンズの

L.G.A.

機能な どに対応させられるであろうし,分化の程度の議論はパターン変数の議論と 近似的である。このように,分化させられた各機能は相互作用することによ って初めて,システムの均衡を達成しうるのであるから,次にこれらの諸機 能の相互作用が論ぜられなければならない。その点が,コンフリクト解決,

調整などの統合の側面なのである。パーソンズの

I

機能に対応することはい うまでもない。

ところで,組織論の中でコンティンジェンシー理論の重要な特色は,痕境 特性が異なれば,種々の要件の中で特に重要性を持つものが異なってくるの であり,その要件に対応した形で組織楷造としての情報処理構造や権力構造 および組織行動が規定される,ということを主張するのである。つまり,組 織の複数機能側面の議論に加えて,組織の目標。環境に由来する,各機能間 の重点の分散のされ方の議論を行ったものだと言えるのである。

このように,組織の持つ複数機能に焦点を合わせること,また特定の環境 下で特定の機能の重要性が増すであろうということ, という次元への注目 が,理論構成にとって不可欠である,と言いうるだろう。

( 4 )  

決定

agenda

(協議事項)の多層性

また, 社会経済システムは, 複合的機能を達成していく上で, 多様な

* 1 4   L a w r e n c e   &  L o r s c h   C l 9 6 7 J 参照。

(10)

3 2 ( 4 7 0 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

agenda *15 

を課せられ, 決定を行っていかなければならないという面も重要で ある。そして,この面を明示的に考慮した議論が,各分野で見出されるよう に思われる。

たとえば,経済理論において,投資の問題と価格設定,生産量の決定とが 区分されて論じられるというような例があげられる。投資は,長期的な予想 や期待のもとに,その企業の環境である市場,その他にも影響を及しうるよ うな次元の決定である。一方,価格設定•生産量決定等は,より短期的な視 野での

agenda

である,と言える。

たとえば,

E i c h n e r( 1 9 7 6 ) *17 

巨大企業が価格決定に際して,

R&D

出,広告支出,その他巨大企業の長期的な市場地位向上のための支出を,投 資支出の一部と見なし,それらを賄うべく,コーボレート・レヴィとして,

固定費に含めて,計算しようとしている,とした。もとより,このような議 論の意図は, 社会的なインフレーションという結果を説明するには, 企業 が,このような二種類の決定をリンクさせているからだ,と主張せんがため であった,ということを看過できない。しかし,この議論に対して,投資の 需要決定には,寡占企業の相互依存性が入り込むから,一義的な決定は困難 であり,.したがって,それをふまえての価格設定の議論は問題点を持つ,と いう批判が行われている。すなわち,不確実な投資決定問題を,短期的価格' 決定行動に還元するところに問題が残るわけである。このことは,この二つ の種類の

agenda

については,情報の不確実性,フィードバックの時間巾,

決定対象のコントロール可能性,などに関して相遮が存在するというところ

* 1 5   Arrow,  K .   J .   ( 1 9 7 4

〕参照,組織は, ある決定を下す前に, その事項を検討す るであろうと考えられる。このように,検討ないし協議の事項として設定された ものが

a g e n d a

である。ある事について組織行動が展開.されるためには,

まず

その事柄が協議事項の中に入れられなければならないとするのである。

とごろで.組織に対して多様な

a g e n d a

が課せられた場合,それらが階層性を 持てば,それを検討する組織も階層性を持たなければならない,と言えよう。

* 1 6   E i c h n e r ,  A .  S . ,   097

pp.271‑287

参照。

* 1 7   P a r s o n s ,   T . ,  ( 1 9 6 0 ]  p p .  60‑93

参照。

(11)

に,問題点が見出だされるであろう。

また,

Parsons(1960)は,組織における三つの決定領域として,技術

的,管理的,制度的の三つを区分している。ここで,技術的領域とは,当該

*18 

組織が目標達成するための技術に固有な決定領域である。たとえば,教育組 織では,実際の教育のプロセスであり,政府においては,公衆に対する徴税 などの行政的プロセスであり,経営組織においては,製品の生産プロセスが その例としてあげられる。そして,その領域では,できるだけ効率的に目標 を達成するような合理性が要求される。

しかし,このような技術的領域の合理性が及ぶのはそれ程大きくない範囲 においてであって,その規模や多様性を超えて,組織が形成されると,下位 単位の調整を行う領域が必要となる。それが管理的領域である。

また組織は,外部関係として,製品の販売と,組織の機能遂行のために必 要な資源の補充をめぐって,・市場と結ぴついている。このような外部関係の 中には,より優位に立つ組織があり,当該組織はそれらの行動に左右される という意味での不確実性が存在する。その他にも, 組織の目標を規定した り,より上位の立場からの意味や,正当性を与えるような,組織にとって外 的な領域が存在する。このような領域が制度的領域と呼ばれるものである。

Thompson (1967)によれば, Parsonsの用具を用いながら,技術的領域

を特徴づけるものは, 合理性であり, 一方, 制度的領域を特徴づけるもの は,不確実性であるとされる。そして,技術的領域の持つ合理性(技術的コ ア)を,制度的領域が持つ不確実性から,できるだけ切り離して確保すると いうことが必要とされ,そのため両者を調整する領域として,管理的領域が 存在するものと,主張されている。

このような区分は,アンソフの企業戦略論において,決定内容が戦略的決 定・管理的決定・業務的決定と分けられたのとはほぼ対応している。すなわ

*19 

•18 Thompson  J .   D . ,  ( 1 9 6 7

〕 四

10‑12p p .  144‑147

参照。中橋国蔵〔

1 9 7 8

〕参照。

•19 A n s o f f ,  I . ,   0963]

参照。

(12)

3 4 ( 4 7 2 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

ち,業務的意思決定は,その企業の活動力と関心の大半に影響を与えるもの

*20 

で,その目的は,企業の資源の転化のプロセスにおける効率性を最大にする ことである。また,戦略的意志決定は,主として企業の内部問題よりも,外 部問題に関係のあるもので,具体的にいえば製品市場ミックスをどう設定す るか,という問題である。それは

Thompsonの言う domain(活動領域)

設定と同様なものであると言えよう。そして,管理的意思決定は,最大の業 績能力を生み出すように,企業の資源を組織化するという問題に関するもの

.で,他の二者の調整をはかるものと考えられる。これらの三つの意思決定領 域は,相互に関連しあっていることは明白である。ただし,戦略的決定が,

他の二者により大きな影響を与えていることは明白であり,このような意味

.  *21 

から「戦略が組織構造を規定する」と言えるのである。

いずれにせよ, このように異なる階層の

agendaが

組織に課せられて いるという事実,さらにこれらの

agendaが

硯実には相互作用を及して いるという事実,しかしながら,これらはうまく調整され得ないこともある という事実,などは理論化の際に欠かせる論点であろう。

これらの

agendaの多層性と Parsonsの AGIL

図式とを関連させようと すれば,社会的システムの機能的要件としての

AGIL

とではなく,

Parsons

1 9 6 6 ] *22 

による,行為システムが社会的機能要件を,自己のうちにどのよう に階層化しているかを述ぺた議論と関連させるのが適当であろう。すなわ ち,そこでは,行為システムは,物的世界と超越的世界の間に介在して,物 的世界への適応(A)こ欲求の充足(

G

)こ役割にょる統合

( I ) ; :

牙弔為の意味づけ(

L

いう機能を,段階的に遂行するというプロセスについての図式化が行われて•

いる。このような図式化を想定しつつ,行為システムを組織と想定すれば,

これらの議論は, 組織における

agendaの多層性についての議論と接続さ

せられることができるであろう。

* 2 0   A n s o f f ,  I . ,   ( 1 9 6 3 )  p p .  50‑67

参照。

* 2 1   C h a n d e l e r ,  A .   J .   ( 1 9 7 1 )

参照。

* 2 2   P a r s o n s ,   T .   ( 1 9 6 6 ) 訳 p . 4 1

参照。富永健一

0974)

参照。

(13)

以上で述べられた理論構築の際,考慮されるべき諸点が,各種の理論パラ ダイムにおいて,どのように定式化されているかを次に述べよう。

皿 . 諸 パ ラ ダ イ ム の 検 討

(1)  情報ー資源処理パラダイム

吉田〔

1974aJ

1974b

〕は,社会システムを「行動のシステム」ないし

「行為のシステム」と見るパラダイムを一般化して, 「情報ー資源処理パラ

*23 

ダイム」を提出している。すなわち,そこでは,社会経済システムは「二人 以上の人々の情報ならびに情報処理によって制御された資源ならびに資源処 理のシステム」と定義される。このパラダイムは, 「従来の行動システム論 を情報論と資源論でただ補完するというのではなく,それを情報ー資源処理 システム論に解体・包摂・再編成するという立場」のもとに構想されている

*24 

から,われわれの示した理論化の際の主要次元のみならず,多様な編成要素 を含み,多様な発展経路をはらんでいる。しかし,それは,方法論的個別主義 か,方法論的全体主義か,という論点,情報空間と資源空間のいずれに着目 するかという論点,複合的機能に関与しているという論点,多層性を持った

agenda

を取り扱うという論点,などを基本論点として含んでいる, と思わ れる。そのことは,情報ー資源処理システムが, 「試行と選択洵汰を通じて 変動する二人以上の人びとの情報ならびに情報処理によって,その内外の人 的,物的,関係的,情報的な資源ならぴに資源処理を直接・間接また意識的・

無意識的に制御し,みずからの成立・存続•発展のための条件を充足しうる

*25 

ようなシステム」と規定されていることに,暗黙的にであれ含まれていると 言ってよいと思われる。以下,個々の論点毎に議論して行くことにしよう。

* 2 3

吉田民人

( 1 9 7 4a  J 

「社会システム論における情報・資源処理パラダイムの構 想」吉田民人

( 1 9 7 4 b  J 

「社会体系の一般変動理論」

* 2 4

吉田民人

[1974aJ

参照

* 2 5

吉田民人

( 1 9 7 4a  J  p p .  7 

~

9

参照。

(14)

3 6 ( 4 7 4 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

まず,行為論に,情報論と資源論を補強するという点については次の通り である。行為は, ある投入に対する産出(反応)であるが, 投入・産出物 は,それぞれ「資源と情報」というカテゴリーで区分されるものに分化され 得るとされる。 そして, 資源的投入・産出と情報的投入・産出との関係が

「情報の投入ー産出変換による資源の投入ー産出変換の制御」,すなわち「情

*26 

報処理による資源処理の制御」と把握されるのである。

このような定式化の意義の第一の点は, 「社会」システムを把握する際の 従来の観念によって完結させられていた視角だけでなく,資源枯渇や公害,

都市問題,など種々の資源に言及することなしには論じられない問題への資 派論を含んだ視角を提出することである。

また第二の点は,社会システムを,情報ー資源処理システムと把握するこ とによって,社会システムが,外部からの刺激によって一方的にその行動を 規定されるのではなく,外部環境適応のための内部的な能力を持つことを強 調することである。 たとえば同様な見方として

P e n r o s e

は企業を「一つの 管理機構のなかで組織的に利用される資源のプール」として把えたが,この 事は資源がそれ自体としては活性化されるのではなく,情報によってリンク

され管理されることによって活性化されるという事, したがって内部的情報 操作・管理によってこそ資源処理が完了することを主張するのである。しか し,その系として,このような内部的情報処理能力の増加には限界があるの で,全体としての組織の成長も制約されるという事が主張される。

この事は, 従来の新古典派経済理論において, 種々の与件が与えられる と,情報処理による主体的把握なしに,受動的に最適決定が指示されるとい う理論栂成と,基本的な相遮点を形成する,と考えられる。

* 2 6

吉田民人〔1974aJp

.  8 

その他,

Ansoff

は企業が情報投入を情報産出に変換するマネジメント・プロ セスと資源投入を製品産出に変換するロジスティック・プロセスから構成される

K o r n a i

は経済システムをコントロール・スフィアとリアル・スフィアに 二分した。また村上・熊谷・公文は社会システム一般が制御空間と実行空間から 成り立つとしている。

(15)

また次に,われわれが理論化の際の論点の一つとして示した,組織の複合 機能について,情報ー資源処理パラダイムにおいてどのように取り扱われる かを見てみよう。

まず情報処理によって,社会システムの動因喚起と目標設定とが,計画,

組織化,統制というプロセスによって形成されるが,それらの機能は一括し て「制御」機能と名づけられていた。ここで「制御」とは資源処理を情報処 理によって遂行するということであったが, その「情報処理」は, 情報の 貯蔵・移送という,より港在的な機能遂行と,情報の変換という目標達成に

*27 

寄与する機能遂行に区分される。このような一連の処理は,「要件不充足状 態」が,当該システムによって「シグナル情報化またはシンボル情報化」され ることによって達成されるが,それゆえ,動因喚起と目標設定はつねに「未

*28 

情報化」と「誤情報化」の問題を不可避的に伴う,とされる。

このように,情報処理は,不完全ながら,社会システムの複合機能を遂行 しようとするが,資源処理において,どのような内容の活動の把握が意図さ れているか,を次に見ることにしよう。

「資源」は,(

1

)物的資源と

( 2 )

情報的資源を基本として,この両者を生体化 した(3)人的資源,および,これらの資源の操作を可能にする(4)関係的資源と

*29 

いう四つのタイプから成るものとされている。そして,これらの資源を用い ての「資源処理」は,資源の貯蔵・移送という,より浩在的な機舵遂行と,

資源の変換というより顕在的な機能遂行に区分されているのである。前者の 資源の貯蔵・移送は,資源の時間次元・空間次元における変換であって,現 実の経営組織においては, ロジスティック部門によって在庫,輸送という業 務として行われているだろう。また,資源の変換は,用役変換と所有変換に 区分される。 「用役変換」は,主として資源の生産的変換と消費的変換であ

*30 

り,村上・熊谷・公文

( 1 9 7 3 )

の言う代謝と変換に対応しており,現実の経

* 2 7 西部邁 C 1 9 7 6 J

参照。

*28 吉田民人 [1974aJ

参照。

* 2 9 吉田民人 [ 1 9 7 4b  J p p .  198‑200

参照。

* 3 0

村上・熊谷・公文

C 1 9 7 3

〕参照。

(16)

3 8 ( 4 7 6 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

営組織においては,生産部門において営まれるであろう。また「所有変換」

は,資源の交換,売買,貸借,贈与,等にあたり,村上・熊谷・公文の移動 に対応しており,硯実の経営組織においては,販売部門において営まれるで あろう。このように見て来ることによって,吉田氏は,社会システムの持つ 複合機能を表現するためにこそ,情報空間と資源空間にわたって議論を構成 しながら,下位概念を設定してきているのではないか,という推察が明瞭に 浮ぴ上ってくるであろう。

次に,個別主義的理解と全休主義的理解の双方を目指すという姿勢が,社 会システムの変動の議論において明示されていることを述べよう。そのため に,社会システム変化の重要な要素である要件についての議論がまず設定さ れる。

社会システムの成立・存続•発展に必要な各種の情報ー資源処理の量的な らぴに質的なストック水準ないしフロー水準が,社会システムの「要件」と 名づけられ,社会システムの「許容状態」とは社会システムの要件が一定の 計容水準で充足されている状態と定義され,他方,社会システムの「均衡」

とは,その要件充足が一定の与件のもとで最適化されている状態にほかなら

・ない,とされる。そしてこの両者をクロスさせることによって,社会システ ムの情報ー資源処理は,許容均衡,許容不均衡,非許容不均衡,非許容掏衡 という四タイプの「基本状相」を区別しうるとされる。

*31 

その上で,社会システムは「構造的非許容状態」にあるとき,変革にさら されることとなるが,それは,革新動因の喚起や新旧の構造の社会的選択淘 汰,というプロセスを経て実現される,とされる。ここに,方法論的個別主 義と,方法論的全体主義の,双方の包含の意図が見られる,と思われる。す なわち,試行と選択淘汰という二つの契機が明示され, 「仮想的試行と事前 主体選択」ついで「硯実的試行と事後主体選択」, 最後に「現実的試行と自 然選択」という三つの基本段階が示されており, 社会システムの変化は,

「必要性(要件)と主体性(主体選択)と客観的可能性(適合的試行)」の

* 3 1

吉田民人

C1974b 〕匹. 201‑206 参照。

(17)

絡まり合いによって規定されるとするのである。

*32 

最後に,組織に課せられた多層的な

agendaという論点が,吉田の議論の

中で,どのように一般化された形で用いられているかを簡単に検討したい。

すなわち,社会システムの「構造」つまり社会システムの情報ー資源処理

*  33•

パクーンに.三つの基本的な構造領域が抽出される。第一に,社会システム の所有構造ないし意思決定構造であり,第二に,社会システムを構成するそ れぞれの個人的・集団的な主体が営む投入ー産出変換の定型的なパターンと しての社会システムの活動構造がある。そして第三に,社会システムの要件 充足つまり福祉の定型的パクーンがあげられ,それは福祉構造と呼ばれる。

経営組織レベルの社会システムにも,もち論,このような三つの構造領域 は存在すると考えられるのであり,活動構造を外側から決定構造が,内から 福祉構造が支えていると言うこともできよう。いずれにしても,このような 構造領域は,そこにおける数々のレベルの意思決定をはらんでおり,すなわ ち様々の

agenda

が設定されていると言えるのである。 そして活動領域に おける業務的決定と,決定構造領域における戦略的決定とが,福祉構造領域 における管理的決定によって,調整されている,と言えるのである。

(2)  情報プロセッシングパラダイム

情報プロセッシングパラダイムとは組織を情報プロセッシングの機械と見 て,特定の環境の中で.それに適合的な情報プロセッシング構造を持つ組織 が高業績を上げる,とするような見方である。すなわち,それは,情報プロ セッシングの効率如何に組織の成功・失敗がかかっているという見方に基礎 をおくパラダイムである。

たとえば,野中〔

1 9 7 4 ] *34 

において,組織構造ないしその情報プロセッシン

* 3 2

吉田民人〔1974a〕参照。

*33 吉田民人〔1974b 〕匹•222-227参照。

*糾野中郁次郎〔1

9 7 4

〕参照。環境の多様性に応じて,情報プロセッシング構造が有 効に対応するためには,ある一定レベル以上の情報プロセッシング構造の側の多 様性が必要とされる。そのレベルが最小有効多様性である。

(18)

4 0 ( 4 7 8 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

グ構造は特定の異質性・不安定性の環境下で,喋境が要求する最小有効多様 性を達成するよう形成されるとしているのは,このような立場に属する見方 である。

また

G a l b r a i t h0976 *35 

〕は,同じく情報処理が組織に対して持つ重要性を指 摘し,組織の情報処理能力と処理量にギャ'ップが生じることが,組織に様々の 不確実性を課することになるとした。そして,その不確実性を克服するための 方策として,情報処理能力の増大と情報処理量の削減を説いているのである。

(1)  スラック創出

(2)  自己完結的単位

) 

情報処理量の削減

(3)  垂直的情報システム

4)  水平的関係の創出

] 

情報処理能力の増大

このような議論の重要な論点は,前にも述べたように組織は,技術的合理 性のみを追求できず,喋境から課せられるコンティンジェンシーが重要な制 約として課せられ,そのため不確実性を免れられない,という事実の指摘だ ろうと思われる。その不確実性に対処するために,情報処理構造がどのよう であるかが基本的に重要だとされるのである。

Arrow *36 

も,組織を情報プロセッサーだと見なすことができる, と述べて いる。すなわち,彼によれば,組織はその情報処理効率を高めるために,組 織に特有なコードを形成するとしている。ところで,環境が変化すれば,そ のコードは適合的ではなくなるが,一旦形成されたコードは固定性を持ち,

変化に適応できないという。その意味で組織は限界を持つとしているのであ る。この議論は,組織に特有のコードの有効性が環境依存的であるというこ

* 3 5   G a l b r a i t h ,   J .   R .  ( 1 9 7 6 ]ここでの誤論の特色は,ェンジニアリング的に情報処理

を考えることであろう。そこで,コミュニケーション工学的な対策に焦点をおく 余り,硯実の権力をめぐるコンフリクトなどを議論の外においているという批判 がなされることがある。情報プロセ.ッシング論者は,それに対して権力の分布自 体が情報構造に依存して決まるのだという反批判を行う。情報処理量と権力との

トレード・オフを認めないのである。

* 3 6   Arrow [ 1 9 7 4 J  pp.105‑110 参照。

(19)

と,そして環境不適応の事態の発生に対して,現実に組織は,対応力を欠き がちであり,それゆえ実際の対応は「エリートの循環」をもってしか期待し にくいとしていること,という特色を持っている。すなわち,このような議 論は,情報プロセッシング・パラダイムの持つ,環境決定論的理論構成,環 境適合的組織の自然選択

( n a t u r a ls e l e c t i i : m )

的存続, というような理論構 成と同様なものを持っている,と言えよう。

なお,

Arrow

は,組織の情報効率性を, 権威と責任,という正統的な用 語を用いて説明している。そこで,権威とは,組織のコード化を担うもので

*37 

あり,意思決定の集権化を示すものであり,情報の伝達と処理についてのコ ストを節約することに役立つものとされる。ただし,権威が,このような価 値を持つものであっても,達成されるかどうか,は不確定である。結局,権 威が人々の期待を,一様に高めるときに,達成が支えられるだろう,とされ

ところで,このように有意義であるべき権威も,それに課せられた責任が 伴なわれていない場合,不必要な誤りの可能性を高くさせる。その理由は,

権威者の,情報上および意思決定上の容量の過大負担だとされるのである。

そこで,責任を系統的に達成するために,硯代の組織が行ってきたメカニズ ムとして,(1)ハイアラーキーにおける責任,(2)臨時的な権威における責任,

(3)機能的権威への責任,その他が示されている。こここであげられた,ハイ アラ:....キーにおける責任, 機能的権威への責任は,.それぞれ

G a l b r a i t h

垂直的情報システムヘの投資,水平的関係の創出という議論とも関連するで あろう。ただし

G a l b r a i t h

は組織設計の観点から,情報処理を論じたが,

Arrow

組織病理の観点から情報処理を論じよう,とするため,計画と 硯実との差異の統制の手段としての責任の議論を導入するわけである。

以上で示された情報プロセッシング・パラダイムを,われわれの設定した 接近法上の諸次元について位置づけていくならば, 次のようになるであろ

•37 Arrow ( i 9 7 4 J 第四章参照。

(20)

4 2 ( 4 8 0 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

まず,情報プロセッシング・パラダイムは,組織構造が,組織に課せられ た環境の要求および,その環境特性によって,決定されると論理づける,と いう意味で,方法論的全体主義の立場に立つ,と言える。

Arrow

において も,特有の環境下で,権威メカニズムと責任メカニズムの企業独自のコード 形成と,構造設定が,情報処理の成果を決定する,と見ている点では同じよ

うな立場である。

また,情報プロセッシング・パラダイムは,資源空間の事象が情報空間に 写像された形で把握できると見ている点で,情報空間主体の理論構成となっ ている。それ故に,資源への支配から生ずるパワーなどの議論については,

眼を向けないことになっている,と言えよう。

また,情報プロセッシング・パラダイムにおいて組織の

a g e n d a

として,

主に想定されているのは,管理的,業務的レペルのものであって,戦略的決 定レペルのものではない。すなわち,不安定一異質の次元で把えられた環境 から出発し,組織がそれを情報処理できるかどうか,が問われており,それ にうまく対処できない場合,自然選択による淘汰プロセスが主に想定されて いるから, 組織の

a g e n d a

として戦略的決定レペルの議論がとりあげられ ることは,余りないことになる。つまり, 主にタスク環境が取りあげられ ということからも明らかなように, 情報プロ七ッシング・パラダイム は,管理的レペル,業務的レベルの議論を主に扱うことになっている,と言 えるだろう。

(3)  資源依存パラダイム

組織の環境との取引の必要性の観点から,組織の対外環境連関に着目する 議論の立て方は, 資源依存パラダイムと呼ばれる。たとえば,

P f e f f e r =   S a l a n c i k  0978] *38 

によれば,組織の生存を握る鍵は,資源を獲得し,維持し 得る能力だとされる。すなわち,組織は完全に自律的ではないのであって,

組織は他組織を含む環境の中へ埋め込まれており,それらの他組織もまた多

* 3 8   P f e f f e r  & S a l a n c i k  ( 1 9 7 8 )参照。

(21)

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

くの資源をその他の組織に依存している,とする。

すなわち,組織は,政府,同業者団体,顧客ー供給者関係,競争者関係,

およびこれらの関係の全体に影饗を及している社会的法的装置などによっ て,環境とリンクされている。つまり,自己充足的な組織であっても,生存

*39 

のために環境と様々な資源の取引を,円滑に行う事が必要なのである。

ところで,組織が,生存と成功のために,環境に依存し,取引を必要とす るということだけが,資源獲得能力の必要性を高めるのではない。もし,安 定供給が必要資源の源から確保されたり, 組 織 に よ っ て 必 要 と さ れ る 資 源 が,継続的に利用可能であれば,たとえ,資源が彼らのコントロール外にあ ろうとも,資源獲得能力についての必要性はないであろう。

資源獲得能力の必要性についての議論は,組織が現境に依存するというこ とからのみではなく,この環境が,資源の供給関係や,供給主体の数の大小 から生ずるパワーを行使したりするなど,従属的でないから生じるのである とされる。そこで資源の供給の安定を図るためにも,種々の仕方で環境を操 作し,運営する必要が生れる。

このような資源依存パラダイムに立つ論者にとっては,まず第一に,他の 多くの論者は,環境的,技術的要素が組織に圧倒的な制約と必然性を与える という躁境決定論になっているとして批判する。そして第二に,他の多くの 論者は,資源を獲得する問題に関心を示すことは少く,資源を使用する問題

* 3 9   P f e f f e r =  S a l a n c i k  ( 1 9 7 8 )   p p .  2‑3

参照。そこでは次のような例があげられてい る。もっとも自己充足的であろうとした中世の修道院においては,必要は最小限 に切り詰められた。そして食料は,その中で栽培され,数々の道具,衣服は,修 道士の労働によって作られた。すなわち,組織を外部社会からできるだけ,隔離 することが図られた。しかし,修道士自身の供給については,外部にあおがなけ ればならなかったのは当然である。そこで組織に,社会化と教化を精練する必要 にせまられた。

その他,修道院は土地を持っていたが,この土地という資源の保有に社会的レ ジティマシーを付与し,合法的に土地保有を維持し得るためにも,社会化と教化 の投術=痕境マネジメントが必要とされた。

(22)

4 4 ( 4 8 2 )  

情報・資源と組織;序論的考察(広田俊)

*40 

に興味を示しているに過ぎない,とする。たとえば,組織内の個人の行動,

モティベーション,、リーダーシップ,組織設計の問題,などは,いずれも資 源の使用に関するものである。ところで,組織の成果を規定するものは,こ れらの資源の使用に関る諸決定のみではなく,組織の直面する環境のコンテ ィンジェンシーと制約,およびそれに対する対処のし方の結果なのである,

と論ぜられるのである。

要するに,資源依存パラダイムは,組織の環境に対する能動性を強調する とともに,組織内部の調整にとどまらない環境マネジメントが,組織の成果 と生存を規定する,という立場に立つのである。

この資源依存パラダイムを,われわれの接近法の諸次元について,位置づ けて行くことにしよう。

まず資源依存パラダイムは,組織の変化プロセスについて,自然選択より も,組織自身の主体的な適合操作を考える,という意味で,反・方法論的全 体主義的接近法を取る,と言えよう。また,資源依存バラダイムは,組織の 資源依存関係に目を向け,資源の支配をめぐるパワーなどを扱う議論となっ ている。

そして,組織の機能としては,組織の存続に必要な資源の獲得という,ょ り外部的(顕在的)な機能に重点をおいている, と言える。 また,組織の

a g e n d a

について言えば, 組織には,環境から許容された幾つかの戦略七ッ

トが提示されており,その中からある特定の戦略が選択される,というよう に戦略的決定のレベルの議論をとり入れている。そして,資源依存パラダイ ムは,多組織間の機能分業,などに関して,組織境界領域により大きな関心 を持つから,組織内部の効率性にかかわる,業務的決定レペルの議論には,

言及されにくい,と言えるのである。

*  4 0   P f e f f e r   &  S a l a n c i k   0978) p .   3 参照。

(23)

w

.組織一環境諸理論の位置づけ

(1)  諸理論の課題

Emery  & T r i

就〔

1 9 7 1 ) *41 

組織・環境をめぐる諸関係を右の図のよう に整理できるという。ここで,

L

は論理休系として展開され

る関係性を示し,前についた添字が働きかける主休,後につ いた添字が影響を受ける主体とし,

1

は組織,

2

が環境を示

Lu  L 1 2   L 2 1   L 2 2  

すものとする。すなわち,

Ln

は組織内の相互依存諸関係を表わし,

L 2 1

は環 境が組成を規定するような関係を表わす。また

L 1 2

は逆に,組織が環境に影 響を及ぽすような関係を表し,

L 2 2

は環境内の諸部分が相互依存的に関連す

る過程であるとされる。

そのとき,

Emery &  T r i s t

Lu

L 2 2 ,

あるいは

L 2 1

L 1 2

とは,全く 異なった論理を基礎とする議論から成り立っているかも知れない,としてい る。そうだとすれば,このように多面にわたる理論領域を一つ一つ位置づけ て行く必要があるだろう。

そこでまず

Lu

で示される組織内部の相互依存関係としての内部組織の経 済学,そして

L 2 1

で示される,環境が組織を規定するというコンティンジェ

ンシー理論,そして更に

L 2 2

で示される,環境内の諸部分が相互依存的に関 連する過程としての,組織問関係あるいは中間組織の理論,の順に簡単な概 観を行いたい。

そして,これらの諸理論が,それぞれどのようなパラダイムに基礎をおく かを述べることによって,前の議論との接続をはかりたい。

(2)  内部組織の経済学

内部組織の経済学とは,組織内部の資源配分プロセスを説明しようとする

1 Emery  &  T r i 就〔 1 9 7 1

〕匹.

46‑48

参照。

参照

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