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警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性

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判例研究

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性

︵秋田地大館支判平成一七年七月一九日判タ=八九号三四三頁︶

堀 田 周 吾

      と︑﹁何で金がかかるんだ︒﹂などと難詰した︒Aが繰り返し前竃実の概要︼         記手数料に三て説明しても・被告人は納得せず興奮した様

 X銀行Y支店のATMコーナーにおいて︑自己のキャッシュ  子で大声を発した︒同支店次長のBは︑このやりとりを見かね

カードの暗証番号を変更する手続に失敗した被告人は︑窓口職 戸て︑他一名の職員とともに同支店窓ロ奥の衝立で仕切られた簡

員Aより︑暗証番号を六回誤入力するとキャッシュカードが使  易応接室に被告人を招き入れた︒被告人は︑同所でも前記手数

用不能となるので︑その利用中止手続と新たなキャッシュカー  料の支払に納得がいかないと述べ︑Bらが繰り返し説明しても

ドの発行手続を要し︑その場合︑手数料一〇五〇円が必要であ  取り合わず︑大声でまくし立て︑激昂のあまり︑その発言内容

る旨の説明を受けた︒       も要領を得ない状態であった︒Bは︑大声を出すと他の顧客に

 被告人は︑Aの指示に従い︑キャッシュカードの利用中止届  迷惑が及び︑営業妨害となる旨述べたが︑被告人は一方的に騒

と発行依頼書を提出したが︑Aが前記手数料の支払を請求する  ぎ立てるのみで収拾がつかなかった︒そこで︑Bは警察署に通

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性       ︵都法四十七−二︶ 二七一

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二七二

報し︑顧客が暴れて手に負えないので来てほしい旨申し述べた︒   公務執行妨害罪で起訴された被告人は︑Cらが被告人に任意

 警察官Cらが同支店に到着した際も︑被告人は︑銀行員の態  同行を求めたことが警察官職務執行法︵以下︑﹁警職法﹂とい

度が悪いなどと大声を発している最中であったが︑他の顧客へ  う︶二条二項の要件を満たすものではないとして︑その公務の

の迷惑を慮ったBの依頼で︑Bらと共に応接室へ移動した︒し  適法性を争った︒

かし︑その後も︑銀行の接客態度がなっていない︑キャッシュ

カ|ドの再発行は無料だと聞いていたなどと述べながら大声で ︻判決薯.︼

悪態をつき︑Cに住所︑氏名を尋ねられても︑返答を拒んだ︒  有罪︵確定︶︒

そこで︑Cは︑被告人が同支店の業務妨害等に及ぶ事態を懸念   ﹁本件各証拠によっても︑前記駐車場は人の往来や車両の通

し︑被告人に対し︑警察署に赴き︑詳しい話を聞きたいと述べ︑  行が頻繁な場所であるとは認め難く︑その場で質問することが

とりあえず同支店外へ赴くよう促した︒被告人はこれに難色を  被告人に対して不利であり︑又は交通の妨害になると認められ

示したが︑Cの再三の説得によって渋々これに応ずる態度をみ  る場合︵警職法二条二項︶に当たるとは解し難い︒また︑X巡

せ︑応接室から同支店駐車場に出た︒      査部長は︑それまでの事情聴取等の結果から︑前記支店内での

 Cは︑なお被告人に住所︑氏名を尋ねたが︑被告人は﹁お前  紛争の原因︑状況等を一応は把握し終えていたといえるから︑

らに住所︑氏名を教える必要はない︒﹂と言ってこれを拒み︑  これらにつき更なる質問を行う上で︑被告人を任意同行する必

以前︑銀行員の対応が悪いなどと大声を発していた︒そこで︑  要があったとも言い難い︒もっとも︑警職法二条二項の要件に

Cは︑一層前記︵業務妨害等の事態︶の懸念を強め︑被告人に  該当しない場合に行政警察活動としての任意同行が一切許され

対し﹁詳しい話を聞くから一緒に来てほしい︒﹂と任意同行を  ないと解すべき理由はない︒すなわち︑警察法二条一項は︑警

求めたが︑被告人は興奮した様子で﹁俺は何も悪いことはして  察の責務として︑個人の生命︑身体及び財産の保護︑犯罪の予

いない︒警察に行く必要はない︒﹂と言ってこれを拒み︑同駐  防︑鎮圧を掲げており︑これらの責務を全うするために必要な

車場内の駐輪場付近に赴いたので︑Cらもこれに追随した︒そ  警察の諸活動は︑強制力を伴わない任意手段による限り︑一般

うしたところ︑被告人は︑Cに対してその左顔面を右手拳で一  的に許容されるものと解され︑これらの諸活動の一環として任

回殴打する暴行を加えた︒    ︐      意同行が許容される場合もあり得るというべきである︒そして︑

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前示犯行に至る経緯のように︑被告人がX巡査部長から住所︑  察の責務として定めていることに照らすと︑交通の安全及び交

氏名を質問されても返答せず︑興奮状態のまま前記支店の顧客  通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は︑強制力を伴わない

対応を激しく非難する態度をみせていたことからすれば︑被告  任意手段による限り︑一般的に許容されるべきものである﹂と      ︵1︶入をそのまま同署に放置すれば︑再び同支店内に赴いて従前と  判示した︒

同様の言動に及び︑同支店の業務妨害等の犯罪に発展するおそ   本判決は︑警察官が被告人に対して求めた任意同行が警職法

れなしとしない状況にあったというべきである︒このような場  二条二項の要件を満たさないとしながらも︑強制力を伴わない

合に︑X巡査部長が場所を変えて被告人の話を聞き︑その態度  任意手段による限り︑﹁個人の生命︑身体及び財産の保護︑犯

を沈静化させて事態の収束を図り︑犯罪発生等を未然に防止す  罪の予防︑鎮圧﹂を警察の責務として掲げた警察法二条一項の

ることなどを目的として警察署への任意同行を求めることは︑  趣旨に照らして適法とされうる旨判示している︒これは︑右の

警察法二条一項の趣旨に照らし適法というべきである︒﹂     最判昭和五五年九月二二日と同様の法的構成を採用し︑その趣

       旨を﹁交通の取締﹂以外の責務にも及ぼしたものである︒﹁任︻評釈︼         ︑ 意同行﹂は二行政警察活動としての任立筒行Lと司法警察

      ︵2︶

 一 いわゆる﹁行政警察活動﹂として分類されるものには︑  活動としての任意同行﹂とに区別されるが︑本判決は︑前者に      ︵3︶職務質問や所持品検査︑任意同行︑︵道路交通法違反の予防・  つきその適法性を認めた一例である︒

検挙を目的とする︶自動車検問などがある︒そして︑職務質問   二 警職法二条二項の任意同行は︑同二条一項の職務質問の

および任意同行は警職法二条一項および二項の要件を満たす場  要件を満たしていることを前提に︑その場で職務質問を継続す

合に︑所持品検査は﹁職務質問に付随して︵最判昭和五三年六  ることが本人に対して不利である場合︑または交通の妨害にな

月二〇日刑集三二巻四号六七〇頁︶﹂認められ︑いずれも警職  ると認められる場合に行うことができる︒﹁本人に不利である

法が直接の根拠規定であるとされている︒       場合﹂とは︑天候状況により路上にとどまることが困難である

 これに対して︑自動車検問については︑警職法二条一項説や  場合や︑公衆の面前で質問することが本人の名誉・差恥心を害      ︵4︶憲法説など諸説あるが︑①最判昭和五五年九月二二日︵刑集三  するような場合などを意味する︒深夜の公道で人通りが少な

四巻五号二七二頁︶は﹁警察法二条一項が﹃交通の取締﹄を警  かったときなどには︑この要件を満たさないとされることが多

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性      ︵都法四十七−二︶ 二七三

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二七四

︵5︶

い︒また︑﹁交通の妨害になると認められる場合﹂には︑その  一二号六〇二頁︶は︑強盗事件を捜査中の警察官が︑犯人と思

揚で職務質問を行うこと自体が交通の妨害になる場合だけでな  しき者に対して職務質問をし︑さらに派出所への同行を求めた

く︑これをきっかけに人だかりができるなどすることにより交  という事案で︑﹁当時既に被告人に対する強盗事件の指名手配       ︵6︶通を妨げる結果となる場合も含まれる︒      犯人としての容疑は解消していたことであり︑且つ被告人が指

 本件の職務質問は︑昼過ぎの野外駐車場において行われたも  名を黙秘し︑鞄の内容物を十分に調査させなかつたため︑不審

のであるが︑雨が降っていたなどの事実はなく︑すでに人目に  の念を抱かしめたとはいえ︑これのみでは被告人が何等かの犯

かまわず激昂して怒声を上げていた被告人にとって︑仮に見物  罪を犯し若しくは犯そうとしていると疑うに足る相当の理由が

人がいたとしてもその名誉・差恥心を殊更害されたとは考えに  あると認めるにはやや不充分の感を免れ難く︑しかも︹警職法︺

くい︒また︑駐車場内において︑人・車の往来に対する妨害が  第二条第二項に該当する事情もなかつたこと前段認定の通りで

生じ得たとの事実も見当たらない︒警職法二条二項の任意同行  あるから︑再度の同行要求は失当たるを免れ難いが︑結局にお

の要件を満たさないとした本判決の判断は妥当であろう︒    いて被告人を説得し︑同人が同行を肯んじたのであるから︑同

 三 右以外の場合に任意同行をすることの可否に対しては︑・ 行それ自体必ずしも違法とは断定し難い︒﹂と判示した︒        ︵7︶肯定的な見解が多い︒      また︑④東京高判昭和三一年九月二九日︵高刑集九巻九号一

 この点について消極に解することを明示した判例として︑② 〇六二頁︶は︑竹竿を振り回すなどの暴行を行ったと疑われる

東京高判昭和四九年九月三〇日︵刑月六巻九号九六〇頁︶があ  被告人に対して犯行現場までの任意同行を求めたという事案

る︒職務質問中立ち去ろうとした被告人の手首を掴んで停止さ  で︑﹁深夜犯行のあつた直後でその現場に極めて近いこと︑そ

せ︑派出所へ任意同行を求めた事案で︑職務質問および停止行  の他被告人らの挙動など当時の情況よりして当然一職務執行の

為それ自体は適法としたが︑﹁被告人に対し派出所への同行を  範囲に属﹂するとした︒

求めた行為は︑警察官職務執行法二条二項の任意同行であつて︑   そして︑⑤東京地判平成二年六月二六日︵判タ七四八号一三

その法律上の要件を具備しない点で職務行為としては不適法で  五頁︶は︑革新運動の動向について情報収集を行っていたY巡

あるといわなければならない﹂とした︒       査部長︵被告︶が︑何らかの事情を知っていると思われるX

 これに対して︑③広島高判昭和三一年五月三一日︵裁特三巻  ︵原告︶に対して職務質問をするため近くの派出所へ警職法二

(5)

条二項の任意同行をした後︑さらにA署へ連行したという事案  り︑保護のため警察署等へ同行を求めることは強制力を伴わな

︵国家賠償請求︶で︑﹁原告は既に⁝本件派出所への任意同  い任意なものに限り一般的に許容されるべきものであっ

行を求められ︑これに従っているから︑被同行者の人権に配慮  て︑⁝腕をつかむなど強制力の行使とみるべき所為もなく

して制定された︹警職法二条二項︺の趣旨に照らすと︑Xが同  はないけれども︑逮捕と同一視できる程度の強制力の行使が

規定に基づき︑同人に対し︑再度︑A署へ場所を移動すること  あったとまでは認められず︑本件における警察署までの同行並

を求めることができるか否かについて相当の疑問が存しないわ  びにその後の保護手続は︑警察法二条一項に基づくものとして

けではない︒右趣旨に照らせば︑同項所定の場所へ一旦同行し  適法なものであったと言うべきである﹂とした︒

た以上︑他の場所への再度の同行を求めるためには︑原則とし   ③および⑤の判例は︑警職法二条二項の要件を満たさない任

てこれを必要とする特段の事情を要するものと解するのが相当  意同行について︑相手方が任意に応じていることを重視して︑

である⁝右特段の事情がない場合であっても︑警察官にお  これを適法としている︒また︑⑥も︑警職法二条二項の該当性

いて再度の同行を求めた場合︑被同行者本人が警察官の求めに  が問題となる事案ではないが︑同法三条による保護を行えない

応じ︑その自由な意思に基づいて再度の場所の移動に同意した  場合であっても︑強制力を伴わない任意のものである限り適法

場合にまでこれを禁じる必要性はなく︑再度の同行も許される  であるとしており︑それが警察法二条一項を根拠とするもので

ものと解すべき﹂であると判示している︒         あることを示している︒

 この他に︑⑥東京家裁決昭和六三年五月一〇日︵家月四〇巻   四 任意同行以外の行政警察活動においても︑⑥と同様に警

一〇号八六頁︶も︑覚せい剤使用や窃盗・恐喝などを行ってい  察法二条一項に言及しこれを適法とした判例がある︒

た少女に対して警察署への同行を求め保護した事案で︑﹁警察   まず︑⑦金沢地判昭和四四年九月五日︵判時五六八号二四頁︶

官は︑少年法三条一項三号に規定するいわゆる虞犯少年あるい  は︑警備情報収集活動の一環として労働組合の組合員に金銭を

は家出中の少年を発見し︑少年の年齢や発見時の状態など周囲  渡し日本共産党の情報を得ていた事案で︑﹁警察が警察法二条

の状況に照して保護が必要であると判断した場合には︑警察官  一項に定める職責を全うするためには︑公共の安全︑秩序の維

職務執行法三条に規定する保護手続以外に︑警察法二条一項に  持に対する犯罪の発生を予防し︑あるいは一旦発生した犯罪に

基づいて当該少年を保護することができるものと解すべきであ  よる損害を最少限度にとどめるため︑警備体制を整え︑その対

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性      ︵都法四十七−二︶ 二七五

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二七六

策樹立に資する目的をもって︑一必要な範囲内において各種の情  要とするものであり︑反面右権限行使に当り何らの強制手段に

報の収集や査察行為をなすことはその職責の一つといわなけれ  出ないならば︑そうして本件の場合の情報収集活動も任意的手

ばならない︒それは︑警ら︑巡回連絡︑交通安全運動などとと  段による場合には同法を根拠として行使され得るものと解す

もに︑警察官の事実行為として警察法二条一項の予定するとこ  る︒﹂と述べた︒

うと考えられる﹂とした︒      右判決の控訴審である⑨大阪高判昭和五一年八月三〇日︵判

 また︑⑧大阪地判昭和五〇年二月二五日︵判時七八一号五五  時八五五号一一五頁︶も︑﹁警察法二条は︑警察官の権限行使

頁︶は︑執拗な尾行を行った警察官に対して暴行を行った被告  の一般的根拠を定めたものであり︑右権限行使に当たり︑強制

人が公務執行妨害罪に問われた事案で︑﹁警察法二条一項が  手段に出る場合はその権限を規定した特別の根拠規定を必要と

﹃警察は個人の生命︑身体及び財産の保護に任じ︑犯罪の予防︑  するが︑強制手段に出ないで任意手段による限り特別の根拠規

鎮圧及び捜査︑被疑者の逮捕︑交通の取締その他公共の安全と  定を要せず︑従って︑性質上任意手段に属する尾行行為は特別

秩序の維持に当ることをもってその責務とする︒﹄と規定して  の根拠規定を要しないでこれをなし得るものと解すべき﹂であ

いるところから警察官の職務が公共の安全と秩序の維持にある  るとしている︒

ことは明らかであるが︑その目的を遂げるための犯罪の発生の   続いて︑⑩広島地判昭和六二年六月一二日︵判タ六五五号二

予防および鎮圧に備えて必要な範囲内で各種の情報の収集や監  五二頁︶は︑怪しい者︵A︶が街中を俳徊していると住民から

視行為をなすことも必要欠くことを得ないものでありその職責  通報を受けた警察官が行った職務質問につき︑﹁警察官職務執

の一つといわなければならずそれらの行為は警察官の事実行為  行法二条一項のいわゆる職務質問には該当しないといわざるを

として同条項の予定するところと解する︒﹂とし︑続いて括弧  得ない﹂としながらも︑﹁右質問はAに対し何ら強制力を加え

書きで﹁警察法は組織法であり警察官に具体的権限を付与する  てのものではなく︑付近住民の要請に依拠してのものであり︑

ものではないとの見解が存するが︑当裁判所は同法は警察官の  右要請が全く不当なものと断定し難い以上︑警察法二条一項の

権限行使の一般的根拠を定めたものと解し︑右権限行使に当り  ﹃警察は︑個人の生命身体及び財産の保護に任じ︑犯罪の予防︑

強制手段に出る場合は他の権利︑国民の基本的人権に抵触し︑  鎮圧及び捜査︑被疑者の逮捕︑交通の取締その他公共の安全と

あるいはそのおそれあるにより法律条項によつてその根拠を必  秩序の維持に当ることをもつてその責務とする﹄との規定の趣

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旨に則り︑相手の任意な応答のみを期待してなされた適法な質  性の要件を︑もっぱら警職法二条一項に基づいて判断し︑所論       ︵8︶問であると解するのが相当である﹂と判示している︒      のいうように警察法二条一項を根拠としてその要件をより緩和

 そして︑自動車検問に関する前掲①最判昭和五五年九月二こ  することを考慮しなかった原判決の判断は正当であ﹂るとして︑

日の原々審である⑪宮崎地判昭和五三年三月一七日︵判時九〇  警察法二条一項を根拠に︑とりわけ緩和された要件の下で︑所

三号一〇七頁︶は﹁警察法は組織法であつて同法二条一項は︑  持品検査を行うことを不適法とした︒

個々の警察官の権限を規定したものではなく︑単に警察の所掌   ・このように︑判例は︑警職法の要件を満たさないことをもっ

事務の範囲を定めたに過ぎないとする見解もあるが︑同条項は︑  て警察官の行為をただちに違法とすることはせず︑警察法二条

組織体としての警察の所掌事務の範囲を定めるとともに︑警察   一項を﹁一般的根拠﹂としてこれらの活動を適法とする余地を

がその所定の責務を遂行すべきことも規定したものであつて警  認めている︒

察官にとつて権限行使の一般的な根拠となり得るものと解する   ただし︑それは︑同規定で掲げられた警察の責務を果たす目       ︵9︶を相当とする︒﹂と判示した︒      的において行われ︵判例①⑦⑧⑩参照︶︑相手方が任意に応じ

 以上に対して︑⑫大阪高判平成二年二月六日︵判タ七四一号  る場合であること︵判例⑧⑨⑩⑫参照︶を前提としている︒       ︵10︶二三八頁︶は︑﹁﹃警察官がその責務を遂行するに当たり︑相手  従って︑強制を伴う場合を適法とするものではなく︑また︑任

方の意思に反しない任意手段を用いるについては︑必ずしもそ  意活動としての許容される限界を拡大する趣旨でもない︒

の権限を定めた特別の法律の規定を要せず︑警察の責務の範囲   五 判例が援用する警察法二条一項の法的性質をめぐって

を定めた警察法二条一項の規定を根拠として︑これを行い得る  は︑学説でも従来より議論が交わされてきた︒

場合があるとしても︵最高裁昭和五五年九月二二日第三小法廷   根拠規範説は︑警察法二条一項で定められた責務を遂行する       ︵11︶決定参照︶︑本件で行われた相手方の承諾のない所持品検査の  ために必要な手段は同条を根拠として行うことができるとする︒

ように︑相手方の意思に反して︑国民の権利を制限し︑これに  主に警察実務家によって主張されたこの見解は︑警察による強

義務を課す場合には︑その権限を定めた法律の規定が必要であ  制手段の行使は自然法的に認められるとするものであるが︑同

り︑同法二条一項の規定によってこれを根拠づけることはでき  条項をそのような包括授権規定と解することは法治主義に反す

ないと解せられる︒﹄そうだとすると︑本件所持品検査の適法  るだけでなく︑権利制約の根拠規定としても抽象的すぎると批

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性       ︵都法四十七⊥一︶二七七

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二七八

     ︵12︶

判されている︒       を伴わない任意活動に個別の法的根拠は不要であるとする帰結

 右の批判を回避しつつも︑警察法二条の根拠規範性を肯定す  は︑法律の留保に関する侵害留保説を前提とする限り︑一般的      ︵17︶るのが︑一般的根拠規範説である︒同説によれば︑警察法二条  根拠規範説と組織規範説のいずれとも矛盾するものではない︒

は組織体としての警察が担うべき事務の範囲を明らかにしたも  前掲の諸判例が︑任意活動に法的根拠が不要であると示すこと

のであるが︑しかし単なる組織規範にとどまらず︑警察が合理  以上の意味を警察法二条一項に与えていないことは︑すでに述

的かつ妥当な手段を用いてその任務を遂行すべきことも定めた  べたとおりである︒

ものであり︑警察官が具体的に任務を遂行するためとるべき警   他方で︑組織規範や規制規範を拠り所とする非権力的行政活      ︵13︶察手段の一般的な根拠規定であるとされる︒そして︑強制を伴  動を認めてよいとする指摘もあり︑根拠規範と組織規範の区別       ︵18︶う手段については︑憲法一三条や憲法三一の適正手続の趣旨よ  は曖昧なものとなっている︒       ︵14︶り︑特別の法律の根拠が必要である︒このような説明は︑警察   こうした点からすれば︑警察法二条一項を引用する前掲諸判

法二条一項が警察権限の=般的根拠﹂であるとする前掲の諸  例の当否を検討する際に︑同規定の法的性質を議論することの       ︵19︶判例とも一致するものである︒      意味自体が疑問視されることになる︒任意の警察活動である以

sこれに対して︑組織規範説は︑警察法一条の﹁警察の組織を  上︑比例原則に従って︑その適法性を判断すれば足りるのであ

定めることを目的とする﹂という文言に着目し︑同法二条一項  る︒

は警察組織が掌握する事務の内容および範囲を示したものにす   六 ただし︑法的根拠なく許されるはずの職務質問や任意同

     ︵15︶

ぎないとする︒同説からは︑前掲①最判昭和五五年九月二二日  行について特に定めを置いた警職法の要件を満たす場合と満た

に対して︑自動車検問が警察の責務である﹁交通の取締﹂に含  さない場合とで︑その許容性の範囲に差が生じるか否かは︑別

まれることを確認したものであるという説明が付されることと  途検討を要する問題である︒

 ︵16︶

なる︒       この点︑前掲⑤東京地判平成二年六月二六日が︑警職法二条

 しかしながら︑警職法の規定にない行政警察活動の適法性を  二項に該当しない場合の有形力行使につき︑﹁再度の同行を求

認めた判例は︑相手方の任意の協力があることを前提としてい  めるための説得の手段としては︑警職法二条二項に基づいて最

るものが大半であるところ︑相手方の権利・利益に対する制約  初に同行を求める場合には警察官において強制手段にわたらな

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い限り有形力の行使をも含めて必要かつ相当の手段を行使しう  察活動の場面でも︑警職法二条一項に該当する者に対する職務

るのに対し︑より穏やかな態様のものしか許されないものと解  質問や所持品検査など︑ある程度旦ハ体的・特定的な犯罪を対象

するのが相当である﹂と判示している点が注目される︒     とする場合には︑捜査との連続性が強く認められるため︑右と       ︵26︶ 右の判示からは︑警職法二条が︑確認規定である以上に︑一  同様のファクターを用いることができる︒

定程度の実力を行使する権限を創設したものであると考える姿   他方︑犯罪が未だ発生しておらずこれに対する嫌疑が抽象       ︵20︶勢をみてとることができる︒そうした場合︑警職法の要件を満  的・不特定なものにとどまっている場合には︑警察法二条一項

たさない任意の行政警察活動においては︑有形力の行使は全く  で掲げられた責務との関連性にも留意しながら︑右とは別の考      ︵21︶       ︵27︶許されないか︑少なくともその程度が制限されることとなろう︒  慮が必要となる︒

 これに対して︑一定の有形力を伴う任意手段は侵害留保説の   本件任意同行は﹁犯罪の予防・鎮圧﹂の責務達成を目的とし       ︵28︶下で当然に許容されうるとの理解に立てば︑警職法ご条の規定  ているといえるが︑犯罪未発生の段階におけるそのような行政       ︵29︶は任意手段として許される行政警察活動を例示したものとし  警察活動の一つに︑防犯カメラの設置がある︒      ︵22︶て︑確認的な意味が与えられるにすぎない︒警察法二条一項の   ⑬大阪地判平成六年四月二七日︵判時一五一五号一一六頁・

一般的根拠規範性を肯定する立場からも︑同規定によって有形  判タ八六一号一六〇頁︶は︑街頭に防犯カメラを設置したこと      ︵23︶力を伴う任意手段が許容されることになる︒      の適否が問題となった民事事件において︑﹁本件テレビカメラ

 七 比例原則は︑行政目的を達成するための必要最低限度性  による監視行為は︑主として犯罪の予防を目的とした警ら活動      ︵24︶を要求する法理であるが︑そこから転じて︑捜査を含む任意の  や情報収集の一手段であり︑性質上任意手段に属するから︑本

警察活動一般について︑当該処分を行う必要性および緊急性と  件テレビカメラの設置及びその使用は︑警察法及び警職法が当

それによって生じる法益侵害の程度との権衡の有無を吟味する  然に予定している行為の範鴫に属するものであり︑特別な根拠      ︵25︶判断枠組みが提示されている︒      規定を要することなく行える﹂とした上で︑︵1︶目的の正当

 ここで衡量する﹁必要性﹂﹁緊急性﹂については︑犯罪捜査  性︑︵2︶客観的かつ具体的な必要性︑︵3︶設置状況の妥当性︑

の場面においては︑既に発生した犯罪を基礎として︑犯罪の重  ︵4︶設置及び利用による効果︑︵5︶使用方法の相当性といっ

大性や嫌疑の高低などが考慮されることになる︒また︑行政警  た基準を示している︒このうち︑︵1︶︵2︶︵4︶を基礎づけ

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性      ︵都法四十七−二︶ 二七九

(10)

二八〇

  る事情として︑犯罪発生の高度の蓋然性があることや︑防犯力  となく︑近隣の警察署へ同行を求めること自体は︑被告人に

  メラの設置が犯罪の予防・鎮圧という目的の達成に資するもの  とって著しい不利益となるものでもないから︑右の必要性・緊

      ︵30︶

  であることなどを考慮した︒      急性との権衡も認められるであろう︒

   このように︑犯罪が未だ発生していない状況においては︑具   以上の点を考慮すると︑激昂した被告人を沈静化させるため

  体的な犯罪をめぐる嫌疑の有無やその重大性ではなく︑犯罪の  の本件任意同行を適法とした本判決の結論は妥当なものであっ

  発生を危惧させる事情の存在や︑その犯罪の予防・鎮圧の目的  たというべきである︒

  を達成するために当該活動がどの程度有効かが考慮されなけれ

      ︵31︶

  ばならない︒さらに︑犯罪を予防・鎮圧するための行為にどの  ︑ ︵1︶同判決は警察法二条一項を直接の根拠として自動車検問の適法

  程度の緊急性が認められるかも考慮する必要があろう︒       性を認めたとする理解が一般的である︒白井駿﹁自動車検問﹂百

   八 本件被告人は︑銀行の顧客対応等を非難しながら大声で     選五版二三頁︵一九八六年︶︑田宮裕﹃刑事訴訟法︹新版︺﹄六二

       頁︵一九九六年︶︑三井誠﹃刑事手続法︵一︶︹新版︺﹄一〇六頁  喚くなどの挙動を繰り返しており︑銀行の担当者や警察官らの       ︵一九九七年︶︑平良木登規男﹃捜査法︹二版︺﹄六五頁︵二〇〇︑︑﹂れを宥めようとする試みにも応じず︑警察官の職務質問にも  ︒年︶・胃守一﹃刑事訴訟法︹第四版警版︺﹄六四頁︵一δ︒

  返答しないなど︑収まる様子を見せていない︒本件判決が述べ    六年︶など参照︒

  ているように︑被告人をその場に放置して警察官が立ち去った   ︵2︶犯罪の予防゜鎮圧を目的とする行政警察活動は捜査︵司法警察

  場合︑被告人が再び銀行支店内に取って返した挙句に︑威力業     活動︶との連続性が問題となる場面が多いため︑両者がどこまで

  務妨害等の犯罪行為に至る蓋然性は相当程度あったといえる︒     区別可能であるか︑あるいは区別するべきか︑については議論が

   そして︑被告人を警察署まで同行して現場から離れさせるこ     ある︒河上和雄﹁行政警察権と司法警察権の谷間﹂判タ五二一号

  とには・事態を一端収拾し・被告人を落ち着かせる効果が期待    一三責以下二九八四年︶︑田宮裕﹁捜査のはじまりー行政警察       と司法警察の間1﹂法教七六号五四頁以下︵一九八七年︶︑大國  できる︒従って︑犯罪結果が生じるのを予防する上で︑任意同  仁﹁行政纂活動と犯罪捜査﹂荊事訴訟法の争点︹新版︺﹄四入

  行は有効であり︑被告人の興奮の程度からして︑それを行うべ    頁二九九一年︶・渡辺咲子﹁行政警察権の行使と犯罪捜査﹂河

  き緊急性も肯定できる︒      上和雄編﹃刑事裁判実務体系三一︺1犯罪捜査﹄六一頁以下

   これに対して︑被告人に強制に至るほどの有形力を加えるこ     ︵一九九一年︶︑井上正仁﹃捜査手段としての通信・会話の傍受﹄

(11)

    一四二頁以下︵一九九七年︶︑貴志浩平﹁司法警察・行政警察区     支判昭和三五年一二月二六日下集二巻=ー一二号一五六二頁︑

   分論に関する一考察﹂警論五二巻一号五三頁以下︵一九九九年︶     岡山地倉敷支判昭和四六年四月二日判タニ六五号二九二頁︑東京

   参照︒      高判平成八年一二月二五日東高刑時報四七巻一1=一合併号一

    たしかに︑・犯罪捜査としての性質を帯びる行政警察活動の適法     五〇頁︒

   性について︑通常の捜査とは異なる判断枠組みを用いるべきでは   ︵6︶ 田宮・河上編﹃大コンメンタール警察官職務執行法﹄一九九ー

   ない︒しかし︑他方︑捜査としての適法要件を満たさない程度の     二〇〇頁︹渡辺咲子︺︵一九九三年︶︒交通妨害の要件を認めた事

   低いあるいは不特定・抽象的な嫌疑しか存在しない場合の行政警      例として︑広島地判昭和五〇年一二月九日判タ三四九号二八四頁︑

   察活動︵例えば︑本件のような任意同行や︑交通検問︑防犯カメ     鳥取地判昭和五一年三月二九日判時八三八号九九頁︑東京地判平

    ラの設置などが挙げられる︶については︑固有の行政警察活動の     成三年九月二五日判時一四一六号=○頁︵前掲注︵4︶参照︒

   問題として別途検討を加える必要があろう︒宮城啓子﹁任意捜査     支援者らが車道に出るなどして交通の妨害が生じるおそれがある

   をめぐる諸問題︵一︶﹂現刑二巻九号=四頁︵二〇〇〇年︶︑同     とされた︶︒否定した事例として︑新潟地高田支判昭和四二年九

   ﹁任意捜査をめぐる諸問題︵一︶﹂現刑三巻八号一〇五頁︵二〇〇     月二六日下刑集九巻九号一二〇二頁︒

    一年︶参照︒       ︵7︶ 出射義男﹃警察官職務権限詳論﹄一四六頁︵一九五九年︶︑田

  ︵3︶ 本判決に関する評釈として︑上田信太郎﹁激昂する相手方を沈     宮裕編﹃刑事訴訟法1﹄一〇三頁︵一九七五年︶︑宍戸ほか編

   静化するための任意同行﹂受新六六四号二三頁︵二〇〇六年︶︒      ﹃新版警察官権限法注解︹上︺﹄四七頁︵一九七七年︶︑河上ほか

  ︵4︶ 東京地判昭和五三年九月二一日判タ三七五号九五頁︵雨が降っ     編﹃詳釈警察官職務執行法﹄一一三頁︵一九七八年︶︑星川榮治

/   ており傘を差していなかった相手方に配慮して派出所へ同行した      ﹁任意同行と逮捕の限界﹂捜研三〇巻五号四四頁︵一九八一年︶︑

   ことが適法とされた事例︶︑大阪高判昭和六一年五月三〇日判時     渡辺・前掲注︵6︶一九九ー二〇〇頁︹渡辺咲子︺︵一九九三年︶︑

    一二一五号一四三頁・判タ六二一号二二九頁︵人通りの多い商店     田村正博﹃警察行政法解説︹四訂版︺﹄一九三頁︑︵二〇〇一年︶︑

   街で職務質問を受けることが恥ずかしいと言った相手方を派出所     古谷洋一編﹃注釈警察官職務執行法︹改訂版︺﹄一七八ー一八一

   まで同行したことが適法とされた事例︶︑東京地判平成三年九月   頁︵二〇〇二年︶︑田村正博編﹃現場警察官権限解説︹上︺﹄ゴニ

   ニ五日判時一四一六号一一〇頁・判タ七八七号一六〇頁︵選挙立   r 頁︵二〇〇六年︶︒否定的な見解として︑田中・勝田﹃条解警察

   候補予定者に対する職務質問をその支援者や近隣住民の面前で行     官職務執行法﹄三〇頁︵一九五六年︶︒

   うことが本人に不利である場合にあたるとされた事例︶︒       ︵8︶ なお︑この判決は︑警察官による発砲の適否が問題とされた最

  ︵5︶ 広島地判昭和三〇年九月一三日判時六八号三〇頁︑静岡地沼津     決平成=年二月一七日刑集五三巻二号六四頁の原々審だが︑職

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性      ︵都法四十七ー二︶ 二八一

(12)

二八二

  務質問の適否について検討しているのは原々審めみである︒この     五四年︶︑関根謙一﹁いわゆる警察上の即時強制について﹂警論

  他に︑警職法の要件がなくても相手方が任意に質問に応じている      一七巻一〇号六三頁︵一九六四年︶︑田上穣治﹁行政強制につい

  場合には適法であるとした判例として︑東京高判平成四年六月二     て﹂公法二七号一六五頁三九六五年︶︒

  三日判タ七九九号一五七頁がある︒      ︵12︶ 宍戸基男﹁警察上の即時強制と任意行為ーその法的根拠につい

︵9︶ 原審の福岡高宮崎支判昭和五三年九月一二日判時九二八号一二     て﹂公法二七号二一五頁︵一九六五年︶︑広岡隆﹁行政強制﹂公

  七頁も﹁警察法二条は警察官の権限行使の一般的根拠を定めたも     法二七号二〇四−二〇五頁︵一九六五年︶︑茂田忠良﹁警察活動

  のであ﹂るとしている︒      における強制手段と任意手段﹂警論三五巻二号三一頁︵一九八三

︵10︶ 秋田地判昭和五一年四月五日刑月八巻四ー五号二七五頁は︑条     年︶︑立崎正夫﹁警察法二条一項の法的性格﹂警論四九巻一二号

  例に違反してデモ活動を行っていた者に対する実力規制につき︑     一四七ー一四八頁︵一九九六年︶︒

  ﹁警職法五条後段は︑未だ犯罪が現に実行されていない段階での    ︵13︶出射義夫﹃検察・裁判・弁護﹄一五八1一五九頁︵一九七三年︶︑

  制止の権限を警察官に認めたもめで︑その権限行使に厳格な要件     宍戸・前掲注︵7︶二二六頁︒

  が定められているのは︑それが前犯罪行為を対象とするものであ    ︵14︶ 出射・前掲注︵13︶一五九頁︑宍戸・前掲注︵7︶一三六頁︒

  ることによるものと解されるところ︑現に犯罪が実行されている    ︵15︶ 広岡・前掲注︵12︶二〇五頁︑田上穣治﹃警察法︹新版︺﹄一

  段階では︑警察官は公共の秩序を維持するためにその犯罪を鎮圧     七頁︵一九八三年︶︑立崎・前掲注︵12︶一四八頁︑田村・前掲

  する責務を有し︵警察法二条︶︑その行為者に 対し現行犯逮捕     注︵7︶三〇頁︑酒巻匡﹁行政警察活動と捜査︵一︶﹂法教二八

  という強力な手段に出ることも可能であるから︑右犯罪の行なわ     五号四八頁︵二〇〇四年︶︒

  れている具体的状況に応じ︑その裁量によつてあえて現行犯逮捕    ︵16︶ 酒巻匡﹁検問の法的根拠﹂﹃警察の現在︵法学セミナー増刊︶﹄

  の手段に出ることなく︑当面犯罪の鎮圧を図るためこれより軽度     二四六頁︵一九八七年︶︑酒巻匡﹁行政警察活動と捜査︵二︶﹂法

  の警職法五条後段の制止程度の強制力を行使することも許され︑     教二八六号五七頁︵二〇〇四年︶︒同様の分析をしたものとして︑

  この場合には同法条後段所定の要件を必要としないものと解する     渡部保夫﹁判解﹂昭和五五年度最高裁判例解説一六〇1一六一

  のが相当である︒﹂と判示した︒警職法五条の制止行為としては︑     頁︵一︐九八〇年︶︑茂田・前掲注︵12︶三四−三五頁︒

  任意の警察活動として通常許容されるよりも強度の有形力行使が    ︵17︶ ただし︑一般的根拠規範説は︑侵害留保原則の下で︑任意の活

 適法とされる︒渡辺・前掲注︵6︶三二〇頁以下︑古谷・前掲注     動において法律の根拠は本来不要なはずであると批判されてい

  ︵7︶二七四頁以下参照︒       る︒松井真理﹁警察法二条一項の意味﹂警察公論三八巻二号九〇

︵11︶ 土屋正三﹁警察の任務の基礎﹂警研二五巻一〇号二〇頁︵一九     頁︵一九八三年︶︑立崎・前掲注︵12︶一四七ー一四八頁︒

(13)

︵18︶芝池義一﹃行政法総論講義︹四版︺﹄四九頁以下︵二〇〇三年︶︑     酒巻匡﹁捜査に対する法的規律の構造︵二︶﹂法教二八四号六七

  藤田宙靖﹃行政法1︵総論︶︹第四版︺﹄八六頁︵二〇〇三年︶︒      頁︵二〇〇四年︶︑同・前掲注︵15︶四九ー五〇頁︑田口・前掲

︵19︶ 宮田三郎﹃警察法﹄五八頁︵二〇〇二年︶︑藤田宙靖﹃行政法     注︵1︶四五頁︒この他に︑拙稿﹁任意捜査の相当性判断に関す

  の基礎理論︹上︺﹄三七九ー八〇頁︵二〇〇五年︶参照︒         る一考察﹂都法四七巻一号二四頁︵二〇〇六年︶参照︒

︵20︶ 同様の見解として︑宍戸・前掲注︵7︶三九頁︑頃安健司﹁任    ︵26︶ 大谷直人﹁職務質問における停止の限界﹂新関ほか編﹃増補令

 .意捜査と自由の制限﹂石原ほか編﹃現代刑罰法大系︹第五巻︺﹄     状基本問題︹上︺﹄六九頁︵一九九六年︶︑川出敏裕﹁行政警察活

  一四七ー一四八頁︵一九八三年︶︑堀瀧幸男﹁職務質問・所持品     動と捜査﹂法教二五九号七六頁︵二〇〇二年︶︑酒巻・前掲注

  検査・自動車検問﹂三井編﹃刑事手続︹上︺﹄一二一ー=一二頁     ︵25︶六五頁︒

  ︵一九八八年︶︒      ︵27︶ 例えば︑自動車検問は︑それが﹁交通の取締﹂を目的とするも

︵21︶ 渡辺・前掲注︵6︶二〇〇頁︒   ︑       のであることの裏づけとして︑﹁交通違反の多発する地域等の適

︵22︶ 木藤繁夫﹁職務質問・所持品検査・自動車検問﹂三井編﹃刑事     当な場所において﹂実施することが求められている︒前掲最判昭

  手続︹上︺﹄一二二頁︵一九八八年︶︑松本芳希﹁職務質問・所持      和五五年九月二二日︒

  品検査−裁判の立場から﹂三井ほか編﹃刑事手続1﹄ 一七七頁    ︵28︶本判決は︑本件任意同行が﹁個人の生命︑身体及び財産の保護︑

  ︵二〇〇二年︶︑大澤裕・辻裕教﹁ホテルの客室における職務質問     犯罪の予防︑鎮圧﹂の責務に関わるものであるとしている︒この

  とそれに付随する所持品検査﹂法教三〇八号八四頁︵二〇〇六年︶︒     点に関して︑警察法二条一項にいう﹁個人の生命︑身体及び財産

  警職法による具体的な要件の定めが︑警察官にとっての行為準則     の保護﹂それ自体が独立した責務であると考える見解もある︒田

  となることを指摘するものとして︑田村・前掲注︵7︶二二五頁︑     村・前掲注︵7︶二四頁︑警察制度研究会﹃警察法解説︹全訂版︺﹄

  古谷・前掲注︵7︶一九頁︑田村・前掲注︵7︶九頁︒         五三頁︵二〇〇四年︶︑藤田・前掲注︵19︶四二六頁︒これに対

︵23︶ このように解した場合︑任意捜査において強制に至らない有形      して︑﹁個人の生命︑身体及び財産の保護﹂は﹁公共の安全と秩

  力行使の権限が刑訴法一九七条一項によって与えられていること     序の維持﹂に関する責務の例示であるとするものとして︑宍戸・

  との均衡が図れることとなる︒      前掲注︵7︶二二九頁︑松井・前掲注︵17︶九一頁︒

︵24︶ 須藤陽子﹁比例原則﹂法教二三七号一八頁︵二〇〇〇年︶参︐    しかし︑その具体例には迷い子や家出人等の発見・保護︑遺失

  照︒      a      物の発見・管理︑各種の事故・災害における人名の救助︑交通事

︵25︶ 大野正博﹃現代型捜査とその規制﹄三八頁︵二〇〇一年︶︑川     故等の防止︑警察安全相談などが挙げられるのが一般的であり

  出敏裕﹁行政警察活動と捜査﹂法教二五九号七六頁︵二〇〇二年︶︑     ︵田村・前掲注︵7︶二五頁参照︶︑本件事案における警察官の責

警職法二条二項の要件を満たさない任意同行の適法性      ︵都法四十七−二︶ 二八三

(14)

二八四

 務をこの点に求めるのは困難である︒

︵29︶ 防犯カメラについて扱った近時の文献として︑亀井源太郎﹁防

 ︑犯カメラ設置・使用の法律問題ー刑事法の視点からー﹂都法四三

 巻二号一=頁以下︵二〇〇三年︶︑前田雅英﹁防犯カメラの役

 割と設置の要件﹂﹃河上和雄先生古稀祝賀論文集﹄五〇三頁以下

  ︵二〇〇三年︶︑高橋直哉﹁防犯カメラに関する一考察﹂新報=

  二巻一・二号八一頁以下︵二〇〇五年︶参照︒

︵30︶ 防犯カメラによる監視を捜査の一環としつつも同様の基準を示

 した判例として︑東京高判昭和六三年四月一日判時=一七八号一

 五二頁も参照︒

︵31︶ 犯罪発生の蓋然性の程度によって︑任意の警察活動の許容性の

 限界が異なることは︑前掲大阪高判昭和五一年八月三〇日におい

  ても示されている︒同判決は︑﹁犯罪が具体的に発生していない

 段階にも︑︵イ︶対象者が全く適法な行動に出ている場合︑︵ロ︶

 異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪

 を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合︵警職

 法二条の場合︶︑︵ハ︶犯罪がまさに行われようとしている場合

  ︵同法五条の場合︶等種々の段階があ﹂るとしている︒

参照

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