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国家を超えて

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Academic year: 2021

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国家を超えて

著者 孫 占坤

雑誌名 PRIME = プライム

巻 38

ページ 3‑4

発行年 2015‑03‑31

その他のタイトル Beyond the State

URL http://hdl.handle.net/10723/2482

(2)

─3─

 ご覧の通り、今回私達は、「地球市民と平和」

と「東アジアの緊張の原因を考える」の二特集を 組んだ。そこには、二つの考えがあった。一つは、

近年、世界各地で起きている紛争や対立の背景や 展開の方向が、色々と異なるとはいえ、本質的に は主権・国民国家の綻び・限界の露呈であると集 約できることである。このような時代に対応する ための一つの選択として、「国家の相対化」とし ての市民、特にグローバルな問題意識を持つ「地 球市民」の概念をもっと考える必要があるのでは ないかとの思いがあったのだ。「市民」、「地球市 民」を、将来を切り開く一つの可能性として意識 しつつ、アジア地域は近年なぜ対立ばかりが深ま るのか、その背後に何があった(ある)のか、克 服の道がどこにあるのかについて、東アジア地域 を取り上げることで、現実的な「目線」も持とう としたのである。

 今回の特集を組むもう一つの理由は、昨年

(2014年)3月をもって、私達の同僚である勝俣 誠先生が退職されたことである。長年所長などと して、明治学院大学国際平和研究所の平和研究、

平和教育において指導的役割を果たしてきた先生 の退職は残る同僚の私達にとって大変残念なこと である。先生は学部では「アフリカ地域研究」、

「南北問題」など、アフリカ地域を中心とした教 育活動を行われたが、日頃の先生の問題関心は決 してアフリカに留まらず、寧ろ、アフリカを

「ベース」としつつ、そこから照らす国際社会全 体の不条理さや矛盾を分析、解決するため、先生 は常に他の学問分野、他の地域にも知的アンテナ を張ってきた。先生の旺盛な問題関心を表現する には、もとより筆者の能力を超えることだが、失 礼を承知の上一言で表現するならば、「地球市民」

が適切ではなかろうかと思ったのである。従っ て、今回の二つの特集は勝俣誠先生の退職記念の 特集でもある。

 上記問題意識の下、それぞれ異なる専門分野の 方から執筆される論文に現れる障害者、ボラン ティア、「有機農業」といった存在は、一見、国 際社会やグローバルなどとかけ離れているように 見える。しかし、「国家」にとらわれない、地道 に頑張る一人一人の「市民」の活動こそが、現状 の国家の不条理を変えていく「原動力」となりう るのではないかと思うのである。日本に限らず、

韓国や中国など各国に、こういった国家にとらわ れない、または国家を超えるような生き方、問題 意識を持つ「市民」の「層」が成長することは、

東アジア地域の平和は勿論、国際社会全体の平和 を展望する上で大きな意味を持つであろう。

 特集の編集を進めている最中、坂本義和先生ご 逝去のお知らせに接した。国際平和研究所発足以 来の先生のご貢献を讃えると同時に、残る私達へ の励ましの意図も込め、勝俣誠、竹中千春、藤原 修の三先生に特別寄稿をお願いし、坂本先生への 特集共同巻頭言

国家を超えて

孫   占 坤

(PRIME所員)

(3)

特集巻頭言  

─4─

追悼特集も追加させて頂いた。

 ここに記した三先生をはじめ、上記二特集およ び書評にご寄稿下さった各先生方に、厚く御礼申

し上げる。読者の皆様には今回の特集を読まれ、

平和研究について更なる認識が深まることを祈る ばかりである。

参照

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