NDC 501.223
真空中で使用する高温計
岡 田 正*
(昭和54年4月20日受理)
Pyrometer for Use in a Vacuum
Tadashi OKADA
(Received April 20, 1979)
To evaporate a thin film, it is essential to measure the heater temperature in a vacuum.
rn this paper, the pyrometer suitable for this measurement is reported.
Phototra皿sistor is adopted as a detector, and thus the pyro皿eter is capable of measuring the temperature range of 400 to 10000C.
1.ま え が き
蒸着薄膜の諸特性は,真空度・蒸着速度・下地温度等の 蒸着条件によって大きく変わる1)。なかでも,蒸着速度 は,実験の準備段階では決定することができない要因であ り,測定や制御が困難なものの一つである。
蒸着速度は,質量分析計等を使って蒸気流から直接測定 することもできるが,装置が複雑になり,測定値を較正す る必要がある2)。むしろ,蒸着速度が蒸発源の温度により 決まることから3),ヒータ温度を測定し,これを通して間 接的に蒸着速度を制御するのが効果的であると考えられ
る4)。
本報は,この蒸着速度安定化のための,ヒータ温度測定 用高温計について述べる。真空中で使用でき,応答性,波 長感度等の点で,ホトトランジスタを検出器として採用し ている。これに,対数増幅器等を付加して,約400。Cから 1000。Cの範囲で良好な直線関係を持つ高温計が得られた。
2.使用目的と仕様
真空中で加熱された物質の蒸着速度Glg/cm2・sec〕は,
G=5.833×10r2α1PゾM/T α1:凝結係数
P:飽和蒸気圧〔Torr〕
M:蒸発分子のグラム分子量 T:温度〔。K〕
で与えられる3)。.この中で,温度T(それに対応して飽和 蒸気圧P)以外は,実験の準備条件で決まるので蒸着速度 Gを一定に保つためには,Tを一定に保てばよい。ここで 述べる高温計は,Tすなわちヒータ温度を測定することを
目的としたものである。
したがって,この高温計に要求される仕様をまとめれ ば,次のようになる。
(1)製作条件から,400。Cから1000。C以上の温度が測定 できること。
(2)測定によって,ヒータ温度や蒸着物質の状態が乱さ れないこと。
(3)信号が外部に,気密を保ったまま取り出せること。
(4)応答が早いこと。
(5)制御信号として利用できるよう,出力が後の処理に 便利な範囲にあること。
*電気工学科
3.回 路 構 成
高温が測定できる温度計には種々のものがあるが5),2 で述べた条件を満たすものとしては,非接触方式の部分放 射温度計があげられる。この方式に用いられる検出素子に は,光電管・光電池・ホトトランジスタ等があるが6),波 長感度や形状の点で,ホトトランジスタを採用することに する。
ここで使用したホトトランジスタOS18は,波長感度0・3
〜1.1μmにあり暗電流も小さく,高温まで安定に動作す る7)。 しかし,Fig.1に示すように,高温のヒータ近くで
一51一
津山高専紀要第17号(1979)
使用するので,温度上昇が許容できるかどうかは,確認し ておかなければならない。なお,温度較正用としては,応 答は遅いが,標準的に使用されている熱電対のうち,高温 まで使用可能なPR熱電対8)を使っている。
Heater
PR Ther rn ocoupLe
ノ
「鰐階灘
sn」co 氏@DjolElt]IIIISISi xphototransistor
Fig.1 Structure of detector in bell jar
Fig・2に全体の回路図を示す。ホトトランジスタは,
Fig・1のようにベルジャー内に配置し,気密を保って外部 に端子を取り出す。
IRt
seae
l
sh・一liat
+15V
.
Rd
一15V
測定範囲を決める目的で,コレクターエミッタ間に分流抵 抗Rsを接続してある。したがって,光入力がなくてもRs によりRdに電圧降下が発生するので,差動増幅器を通し て温度に対応した信号のみを取り出している。さらに,差 動増幅器の反転側と非反転側の帰還抵抗を等しくしないこ とにより,出力電圧の零からの変化と必要な増幅度を確保 している。
続いて,演算増幅器と複合トランジスタを使った対数増 幅器を通して,直線関係に変換して最終出力とする。この 最終出力は,将来AD変換器に接続することを考慮して,
0〜10Vが得られるようにする。
41
Rs
2SC1583
741
t
OS18 ! :
Det ec tor Diff e[ 9ptal Lqgari/ t.h mic
Amplifier Amp[ifier
Fig.2 Experimental pyrometer circuit
Fig.3に示すように,ヒータ温度とコレクタ電流の間に は良好な指数関数的関係があるので,これを検出抵抗Rd で検出すればよい。この場合,次段の演算増幅器に許容最 大入力電圧以下の電圧しか印加されないようにし,また,
︹︿︺ 一⊂Φヒ⊃U ﹂〇一〇り一㎝⊂弔おO嗣O工住 ﹄ 4 尋 巧110﹁r一℃﹁﹂1沿﹁1卜10﹁× X− う﹂ 葉 x M3 4− 3 1 し13
mbtOO60080010001ZOLQ
Heater Tempereture 〔。C工
4.測定結果と考察
Fig.3 Relation between phototransistor current and he ater temperature
まず,Fig・4にホトトランジスタの温度上昇の状態を示 す。これは,Fig.1の配置で,ヒータ温度を760。Cとし,
通電後のホトトランジスタの温度を,あらかじめ較正した シリコンダイオードの順方向電圧降下の温度特性を利用し て測ったものである。これによれ ば,60分後においても70。C程度しか
一、@ 上昇していない。ここでは,銀を数
一+J n・tp・t 、。。腿麟着する実験・)に使用す 741
ることを考えているので,60分もの 長時聞実験することはなく,ヒータ 温度が高くなれば実験時間はますま す短くなることを考えれば,使用上 の問題はない。なお,ホトトランジ スタの最大消費電力から計算した許 容周囲温度は,106℃である。
0 0 0 0 07 6 5 4 3
︹り・︺Φ﹂コ拓﹂ΦαE・ト
Heater一. Jerppera ture
=7600C
O 10 20 30 40 50 60
Time (mjn,)
Fig.4 Time charactristic of temperature rise of phototransistor
高温計の最終的な構成を決めるため,分流抵抗Rsによ る測定範囲の変化,しゃへい板の平版による感度の変化に ついての予備実験を行なった。その結果,Rsは220Ωが最 適であり,穴径の変化(5mmφ〜2・5mmφ)によって感度は ほとんど変化しないので,熱的に有利な2・5mmφを最:終値 とした。
Fig.5に,こうして試作した高温計の出力電圧とヒータ
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真空中で使用する高温計 岡 田
10
8
6 4 2
︹﹀︺Φg琶﹀ぢαぢ○ . . .
e.r−
0 400 600 800 1000 1200
Heater Temperature [OC>
Fig.5 Relation between output voltage and heater
temperature
温度の関係を示す。2.で述べた仕様は十分満たしている。
すなわち,約400。Cから1000。 Cまでが,良好な直線関係で OVから10V程度に変換されている。しかし,通常あまり 使われない領域ではあるが,500。C以下の部分では,ホト
トランジスタを流れる電流が少なく,安定度が悪い。これ は,差動増幅器と対数増幅器のドリフトの影響と思われる ので,必要ならこの部分を改善すればよい。また,1050℃
以上の高温についても,分流抵抗Rs等を変更すれば,低 温側を犠牲にしてではあるが,測定可能である。
5.む す び
蒸着速度が,蒸発源の温度により定まることを利用し て,蒸着速度安定化のためヒータ温度を測定する高温計を 試作した。
真空中で使用でき,応答性・波長感度などがヒータ温度
の測定にふさわしいものとして,検出器にホトトランジス タを使用した,非接触部分放射温度計を採用した。
ホトトランジスタのコレクタ電流とヒータ温度との間に は,良好な指数関数的関係がみられた。これに,温度変化 に対応した信号を取り出すための差動増幅器と,直線関係 に変換するための対数増幅器を付け,ヒータ温度を電圧出 力として取り出した。
その結果,400〜1000。Cが約0〜10Vに対応する高温計 が得られた。
こうして,ヒータ温度が測定できfが,蒸着速度を安定 にするには自動制御系を構成し,ヒータ温度の安定化を計 らなければならない。これは,今後の課題である。
謝 辞
本研究をはじめ,御在職中何かと御指導いただいた元本 校教授藤田志郎先生,並びに,本稿を通読下さり有益な御 教示をいただいた本校助教授岸本俊祐先生に深く感謝致し
ます。
また,実験の一部を担当された昭和52年度卒業生,青戸 雅美,吉田清志の両君に謝意を表します。
文 献
1)三宅,薄膜の基礎技術,(昭43),199,朝倉書店.
2)S.シラーほか,真空蒸着,(1977),115,アグネ.
3)沢木,真空蒸着,(昭40),2,日刊工業新聞社.
4)塩山ほか,大阪府立工業技術研究所報告,62(1974),
32.
5)山内,新版電気計測便覧,(昭41),1061,オーム社.
6)栗野,高温・熱技術,(1977),146,東京大学出版会.
7)東芝半導体ハンドブック,(昭45),476,誠文堂新光
社.
8)栗野,高温・熱技術,(1977),56,東京大学出版会.
9)岡田ほか,津山高専紀要,14(1976),83.
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