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Ⅰ わが国におけるチ ャン ドラー理解の諸類型 ( i ) 経営学的理解

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(1)

A. D. チ ャン ドラーの経営史の方法 ( 下)

榎 本 悟

目 次

Ⅰ 序

Ⅰ わが国におけるチ ャン ドラー理解の諸類型 ( i ) 経営学的理解

( 丑 吉原英樹氏 の見解

② 小沢勝之氏 の見解 ( i i ) 経営史学的理解

( ヨ ビジネス ・ヒス トリー的理解

a 井上忠勝氏の見解‑ ( 以上第 3 2 巻第 3 号 ) b 米川伸一氏の見解

C

前田和利氏の見解

② 企業者史的理解

a 下川浩一氏の見解‑ ( 以上琴3 4 巻第 1号 )

Ⅲ チ ャン ドラーの経営史の方法・ . ・( 以下本号 ) ( i ) 知的背景

( i i ) 経営史 の方法 ( 丑 対象

( む 方法

Ⅳ 結

Ⅱ チ ャン ドラーの経営史の方法

本節では, これまでの我 が国におけるチ ャン ドラー理解 の諸類型 の検討 に基 づ きチ ャン ドラー自身の経営史の方法 について考察 をすすめる。その際の考察 の順序 は以下の通 りである。最初 に歴史家チ ャン ドラーの知的なバ ックグラウ

ン ドにつ いて検討 する。 この場合 しば しば論 じられているように,パーソンズ (Ta l c ot tPa r s ons )の影響 という観点 でそれがなされる。次 にこの影響下で, 具体的なチ ャン ドラーの経営史 の方法 を検討するが, あわせて既存 の経営史学

との関連 や,彼 の経営史 の持つ射程 ( pe r s pe ct i ve) につ いて も考察す ること

〔259 〕

(2)

260 商 学 討 究 第 37巻 第 1 ・2 ・3 号

にしたい。

( i ) 知的背景

チャン ドラ‑の知的 なバ ッググラウン ドについては米川伸一氏の指摘

(84)

に もあるように,社会学者パーソンズの影響 を強 く受 けたと言われている。

事実,チャン ドラー 自らも第 2 次大戦後,ハ‑バー ド大学 に歴史学専攻 の Ph.D.キャンデ イデ‑ 卜と して戻 った時 に, たまたまパーソンズの行 なって いる社会学 を選 び,それが彼の考え方 に非常 に大 きな影響 を及 ぼしたとのべて いる。

(85)

と こ ろ でパー ソ ンズ の社 会 学 は構 造 一機 能 分 析 ( s t r uct ur al ‑ f unct i onal anal ys i s) と呼 ばれているが,その体系 とはどのようなものであろうか。

(86)

い まそれを富永健一氏のパ‑ソンズ解釈 をもとに して叙述すれば以下の ようであ る。

(87)

社会体系 (あるいは社会 )が一つの体系 (システム)として存立 していると いうことは,社会 を構成 している諸部分 (たとえば全体 に対する構成部分 と し ての家族,企業,町村 など)が,一定の相対的に恒常的なむすびつ きを形成 し ているということを意味 している。そ して諸部分 の相対的に恒常的 ( r el a t i vel y i nvar i ant) なむすびつ きを構造 と定義 しうる。 しか し,家族,企業等 の諸部 分 としての集合的な構成単位 も,より微視的分析 の レベルにまでお りていくこ

とによって,最終的には成員個 々人の行為 にまで分解 されることになる。つ ま り社会体系の構成要素 をこの意味での分析単位 と しての相互行為 と考 えること にすると,社会体系が構造 を持 っているということは,それ らの相互行為のパ

原稿提 出 日 1 9 8 6 年 9 月 2 9 日

( 84) 米川伸一 『 経営史学 ‑ 生誕 ・現状 ・展望 ‑ 』東洋経済新報社,昭和 48 年, 1 38 頁。

( 85) Al f r e dD.Cha ndl e r , J r . , " St r uc t ur ea ndSt r a t e gy:Ⅰ nt r oduc t i on' sAr t i c l e , " t ype ‑ s c r i pt ,1 9 81 ,p. 5. ( 以下 " St r uc t ur e " と暗称 )

( 8 6) ここで はパ ‑ ソンズその ものの理論的 7‑ レ‑ム ワークを真正面 か ら問題 にするの で はな く,チ ャン ドラーの考 え方 に影響 を及 ぼ したと考 え られ る範 囲での考察 に とどめる。

( 87) 富永健一稿 「 社会構造 の基礎理論」安田三郎,塩原勉,富永健一,吉田民人編 『 基

礎社会学 第Ⅳ巻 社会構造』東洋経済新報社,昭和56 年参照。

(3)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下) 261

ターンが時間の経過のなかであま り大 きく変化 しない,すなわち相 対的 に恒常 性 をもっている状態 をさす ことになる。

ところで,社会体系の構造 を維持するためには,構造がそれを構成する諸部 分

(88)

に対 して構造維持 のための機能 を諸部分 に要請する。 これ を機能的要件 (f unct i onalr equi s i t e) の充足 と呼ぶが,パーソンズにとって機能 とは体系 (シ ステム)にとっての必要性 を充足するような諸部分の活動 のことをさしたので ある。

以上の説明か ら明 らかなように,パーソンズの構造 一機能分析 はシステムの 構造の安定性,パ ターンの恒常性 (‑均衡 )に重点 を置 き, システムの均衡 を 維 持するための諸構成部分の正の機能 を問題 にしたのである。そのため多 くの パ ⊥ソンズ研究者が,彼の分析方法 はシステムの変動 よりも均衡 に重点 を置 く 静学的で保守的なアプロ‑チであるとして批判 してきたことは ,衆知の ごとく である。

(89)

さて, こうしたパーソンズの構造 ‑機能分析 をチャン ドラーはどのように自 らの経営史の方法 にとり入れたであろうか。

彼 は自らの研究のテーマを制度の歴史的研究 として規定 し,次の ような研究,

●●●●●●●

すなわち 「この種 の歴史 は組織間の行為の規則化 されたパ ターンや組織 と個人 の間の行為の規則化 されたパ ターンの研究 を含むはずである ( 傍点‑榎本 )( 9 0) 」

とする。 これは組織間関係史 ( i nt er or gani zat i onalhi s t or y) の分野の研究 と

( 88) 全体 に対する部分 という場合,分析 の レベルによって部分の把握の仕方 は当然異 なるものになる。

( 89) 例えば新明正道 『 社会学的機能主義』誠信書房,昭和 4 2 年 および塩原勉,松原治 郎,大橋幸編 『 社会学の基礎知識』有斐閣,昭和 4 4 年の構造一機能主義の項 目参

照のこと。

また 1 9 4 0 年代のパ‑ソンズの考え方の静学的性格 は ,1 95 0 年代 に至 り動学的性 格 が付与 されてきたといわれている。( c f . Ed wa r dC. De ve r e ux , J r . , " Pa r s ons ' Soc i ol o gi ca lThe or y, " i nMa xBl a c k( e d. ) ,Th eSo c i alTh e o r i e so fTal c o t tPa r s o n s :A Cr i t i c alExami nat i o n ,Sout he r n I l l i noi sUni v.P r . ,1 96 1. )

( 9 0) A. D. Cha ndl e r , J r . , " Bus i ne s sHi s t or ya sl ns t i t ut i ona lHi s t or y, " i nG. R. Ta yl or

a nd L . F. El l s wor t h( e ds . ) ,Aj 坤r o ac h e st oAme r i c a nEc o no mi cHi s t o r y ,Uni v.Pr .of

Vi r gi ni a ,1 971 ,p.20. ( 以下 " Bus i ne s sHi s t or y" と暗称 )

(4)

262 3 7 巻 第 1・2・3 号

組織 内歴史 ( i nt r a or ga ni z a t i ona lhi s t or y)

(91)

の分野の研究の重要性 を指摘す ると共 に,恒常性のパ ターンを研究することの必要性 を説 いたものである。そ の意味でチャン ドラーは恒常性のパ ターンとしての組織内あるいは組織間の構 造 を問題 にしているというこr tができる。 したがって静態的な均衡モデルを強 調 しているということにもなろう。

しか しなが ら彼の思考の枠組みは静態モデルで終始する訳ではない。それは

パ ーソンズが静学モデルか ら動学モデ) I , への転換 をこころみたように,チャン ドラ‑もまた静態モデルを動態モデルに発展 させ るこころみを行なっている。

制度 はなん らかの圧力が加 わることによって初 めて変更 される

(92)

といい, あるいはより具体的には 「 技術 あるいは人口の変化が既存の制度 に新 しい機能 上の要求 をつ くりだ し,行動のパ ターンを変える

」(93)

と述べていることか らそ れは推察 しうる。

以上の ことを整理すると,次のような図式が描かれる。

今 までの均 衡状 態 新 しい均衡状 態

いま既存の制度のもとでは,その制度 を構成 している諸部分 ( 例 えば企業 と いう制度 においては, トップ, ミドル,ロワーな らびに労働者の関係 には一定 のパ ターンが存在 している)は, この制度 を存続 ・維持 させるためにある一定 の機能 を充足するように要請 され ( 機能要件 ) , この機能が一定 の時間持続 す

( 9 1) 組織間関係史,組織 内歴史 につ いては拙稿 ( 辻原 )「ビック ・ビジネスお よびそ の リーダ‑観 の史的変遷 ‑ チ ャン ドラー学派 の位置付 けをめ ぐって( 下 ) ‑ 」

『 商学討究』第 31 巻第 1 号 ,1 9 8 0 年 6 月 ,81 貢参照。

( 9 2) A. D. Cha n dl e r , J r . ," St r uc t ur e , " p.5 0.

( 9 3) A. D. Cha ndl e r , J r . , " Bus i ne s sI I i s t o r y, " pp. 21‑22.

(5)

A. D. チャンドラーの経営史の方法 ( 下) 26 3

れば,それは構造 とな り,制度の安定化 に役立 ちうる ( 構造の存在 ) 。 しか し

′ なが ら,外的環境の変化 ( 技術 や人口の変化 といった圧力)が生 じて,既存の 制度に対 して新 たな機能上の要求 をつ くりだす ( この意味では不均衡の醸成 ) ことで,今までの諸部分の関係 の恒常性のパ ターンに変更 を迫 り,やがて新 し いパ ター ンが醸成 されて,新たな均衡状態が創造 されるのである。 こうしたい わば均衡 一不均衡 一均衡の過程 の繰 り返 しと して制度の変化 をとらえるチャン ドラ‑の基本的な考え方 は, これまで述べてきたようにパ ーソンズの考 え方 に 大 きく影響 されてきた結果であると考 えることができよう。 この意味でパ‑ソ ンズのチ ャン ドラーへの影響力 というものは非常 に大 きか ったと言わざるを得 ないのである。

ところで容易 に想像 しうることだが,構造 一機能分析 は構造維持 という目的 に寄与す る,諸部分の機能的側面が強調 される

(94)

ため,分析単位 としての人 間の相互行為 も構造の機能的要件 として考え られる傾向を持 っている。そのた め構造の破壊 もしくは構造の存立 を脅かすことになるような人間の逸脱行動 を 極力排除するばか りではな く, より重要なこととしての人間の革新行動 につい てはあま り注 目 しないということになる。

(95)

ハ イアムのいう,「この種 の歴史 (‑組織総合的歴史‑榎本 )は構造 とプロセスほど動機 についてはあま り関心 がない

」(96)

というのはこの意味である。

既 に述べたようにチ ャン ドラ‑もパ ーソンズの影響下にある ため, こうした パ ーソンズ流の傾向を帯びることになったが ,1949 年 にハ ーバ ー ドの企業者史 研究センターの一員 と して参加することでシュンベータ‑の革新的企業者概念 を導入 して,組織革新の担 い手 たる経営者 に着 目 し構造 一機能分析 のもつ限界 を回避 しようと していることにも注 目する必要があるだろう。

以上の検討の結果か らチ ャン ドラーの基本的な′ 考え方 としてパ ーソンズの影 響がかな り大 きいということが明 らかになったものと思われる。 この知的背景

( 9 4) 新明正道,前掲書 ,2 2‑23 頁。

( 9 5) 塩原勉 『 社会学の理論 Ⅰ 』旺文社 ,1 9 83 年 ,1 1 7 頁参照。

( 9 6) J ohnI I i g h a me ta l . ,Hi s t o r y ,Pr e nt i c e ‑ Ha l l ,1 965,p.23 1.

(6)

2 6 4 37巻 1 ・2 ・3

についての検討か ら,次にはより具体的なチ ャン ドラ‑の経営史の方法 につい ての吟味 に移 ることにする。

( i i ) 経営史の方法

① 対象

1 9 6 2 年の 『 経営戦略 と組織』 という書物のなかでチャン ドラ‑は自らの研究 テーマを 「 産業企業 ( i ndus t r i a le nt e r pr i s e) の戦略 と組織の変遷 に関するも の

」(9

7 ) と規定 し 「 製造,販売,資材購入,財務,あるいは管理など,企業の活 動分野 はなんであろうと,同 じ活動 を異 なる企業が遂行するやり方 を検討する

ことは,同一の企業が これ らすべての活動 を,どのように遂行 しているかとい う研究 に劣 らず,値打 ちがあるはずである ( 傍点‑榎本 )

」(98)

と して,新 しい 組織構造 としての分権的事業部制組織

(99)

を1 9 2 0 年代か ら採用 し始 めた先進的

( 9 7 ) A. D. Ch a n d l e r , J r . ,St r at e g ya n dSt r uc t ur e:C h a pt e r si nt h eHi s t o r yo ft h eAme r i c a n I nd us t r i alEnt e r pr i s e 」 , M. I . T.Pr . ,1 9 6 2 , p.1 ,(以下 St r at e g y と略称 ) ,三菱経済研 究所訳 『 経営戦略 と組織 一米国企業の事業部制成立史』実業之 日本社 ,1 9 6 7 年,

1 7 頁。

な声,産業企業 につ いては 「 大規模 な民 間の,利益 を目的 と した企業 で原材料 の調達か ら最終 の顧客 にたいする販売 までの「連 の経済過程 のなかで,一部 もし

くは全部 にわたって,商品 を取扱 っているものを意味する」 として,運輸会社, 公益事業 あるいは純粋 な金融会社 は含 まないが,販売会社 と原材料採取 に関係 し て いる会社 は原材料 を加工,製造 している会社 と並 んで含 まれ ると して いる。

(I b i d . ,p. 8 ,前掲邦訳,25頁.)

( 9 8) I b i d . , p.1 ,前掲邦訳 ,1 7 頁 o

( 9 9 ) と ころで分権 的事業部制組織 をなぜ対象 と して取 り上 げたのか とい う点 に関 し て,チ ャン ドラーの考 え方 は歴史家 と しての歴史意識の素晴 しさを感 じることが で きる。す なわち 「 当時, アメ リカ企業 で最 も論 じられた トピックスの一つ は大 会社 による新 しい分権化 されたタイプの管理の創造 であった。 ラルフ ・ガ‑デ ィ ナー ( Ra l p hGa r d i n e r) が GE 社 につ いて仕上 げていた大規模 の再建 につ いて 多 くことが書かれていた。‑‑明 らかに新 しい分権化構造 は今 までにアメ リカの 企業 によって案出 されたもの よりも, もっと複雑 で より洗練化 されたものであっ た。記録 を調べ, この新 しい組織形態の先駆者 を位置付 け, この先駆者 がいつ, どの ように,そ してなぜそれを開発 し,そ して他 の企業 ではそうする場合 も,そ う しな い場 合 も あった の か と い う こと を調 べ て み よ う」 と考 え たの で あ る

(Ch a n d l e r , " St r u c t u r e , " p p . 9 ‑1 0 ) 。つ ま り,現実 の企業経営 の問題 を十分 に 意識 し, と りわけ重要 なテーマ と しての組織革新 をと りあげ,その組織革新の先 駆者 は一体誰であったのか ということを,比較史的にとりあげようと したのであ

る。

(7)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下 ) 265

な企業 (デュポ ン,ゼネラ) I ,・モータース,スタンダー ド石油 およびシアーズ ・ ローバ ック社の 4 社の事例 )の成長戦略と組織構造の関係 を歴史的に分析する ことを行 なった。( 同 じ活動 を異 なる企業が遂行するや り方の検討の事例 )

しか しなが ら, ここで注意すべきことは,ケースとして取 り上 げられた先進 4 社 は,やみ くもに事例 としてとりあげられたのではな く,十分注意 して取 り 上 げられているということである。すなわち取 り上 げられるまえにアメ リカの 最大 50 社 の産業企業の組織構造の変化が吟味 されてお り,その上でこの 4 社が その先進性 の故 に選択 されているということである。

(100)

っ ま り事例研究の意 義 を高めるということが明確 に意識 されてお り,そのためグラース流の ビジネ

ス ・ヒス トリーを超えるということが念頭 にあったことが判 る

(1

0

1

) 0

さて分権的事業部制組織 を対象 に設定 したチ ャン ドラ‑であったが , 197 7 年 の ‑ 『 経営者の時代』 では先の書物 よりも広 い対象の設定 を行 なっ ている。すな わち 「 現代企業 ( moder nbusi nes sent er pr i s e ,琴代的企業経営 )の発展過程 に研究の焦点 を絞 り ,1 8 世紀以降の合衆国における生産 と流通の過程の変化, そ してまた,そうした過程が企業 によって管理 されてきた方法 を描 き出す

」(102)

こととしている。

あるいはまた,「 本書 の目的 は,合衆国における生産 と流通 がどのように変 化 し,また, どの ような方法 で管理 されて きたか を検討す ることにある

」(103)

と している。

この対象設定では,生産 と流通の過程,いいかえれば原材料の調達か ら最終

( 1 0 0) A .D.Cha ndl e r ,J r . , " Ma na ge me ntDe c e nt r a l i z a t i on:AnHi s t or i ca lAna l ys i s , "

BHR,Vol .30,No.2,June1 956 ,古 川栄 一監 訳 『 ア メ リカ近 代経 営史 』 所収 日本経営出版会 ,1 9 7 2 年。

( 1 01)Cha ndl e r ,St r a t e g y ,p.vi i ,前掲邦訳 ,原著 は しがき 1 頁参照。

( 1 02) A .D.Cha ndl e r ,Jr リ Th eVi s i b l eHa n d:Th eMa na ge r i a lRe v o l ut i o ni nAme r i c a n Bus i ne s s ,Ha r va r dUni v.P r . ,1 977,p.vi i , ( 以下 V2 ' s i b l eHa nd と略称 ) ,鳥羽欽 一郎,小林袈裟治訳 『 経営者 の時代 ( 上 ) 』東洋経済新報社,昭和 5 4 年, vi i 頁。

な お moder nbus i ne s se nt e r pr i s e の訳 は邦訳 では近代企業 とあるが, ここでは現 代企業 と訳 出 した。

( 1 0 3)I b i d . ,p. 1 ,前掲邦訳, 4 頁。

(8)

266 37 巻 第 1 ・2 ・3 号

の顧客 にたいする販売 までの一連の経済過程

(104)

のなかで,先駆的な分権的事 業部制 によって営 まれるようになる 1 9 20 年代以前の,経済 プロセスはどのよう

なものであったのかということで,更に歴史 をさかのぼ り,現代企業 は一体 い つ頃,どのように して,そ してなぜアメ リカ経済のある特定の産業分野 におい て登場 してきたのかという新 たな関心へと向かった。その結果,生産過程 と流 通過程 を一企業内に統合化 ( 内部化 )した大規模製造企業 は 1 880 年代か ら主 と して資本集約的な産業 において登場 し始めることや,現代企業の先駆者 は 1 8 40 年代 ,50 年代 に鉄道企業 において初 めて登場 してきたことが明 らかにされたの である。

また現代企業 の登場 はやがて経営者企業 ( mana ger i ale nt e r pr i s e) を生 み だ し,市場の諸力 ( 見 えざる手 i nvi s i bl eha nd) にかえて,経営者の見 える手 (vi s i bl eha nd) による管理的 な調整 の結果,経営者資本主義 ( mana ger i al ca pi t a l i s m ) を生みだすことになった。

こう して 『 経営戦略 と組織』 の刊行以後, 『 経営者の時代 』 ではアメ リカに おける企業の比較史的考察 に加 え, 新 たに産業別の比較史的考察 も加え られて, 特定産業分野 における現代企業の台頭のメカニズムとその理由や, この企業 を 担 った新 しい管理者の機能 ( 職能 )や管理の方法がとりあげられ,またそれと の対比で伝統的企業 ( t r a di t i onalent er pr i s e ,非現代企業 )の諸特徴 をもとり あげることになったのである。

『 経営者の時代』刊行後のチ ャン ドラ‑の研究の方向 も, これまた当然の成 行 きでもあった。つま り現代企業の台頭のプロセスを主要先進市場経済 に拡大 して,国際比較の分野へと踏み込んでいったのである。 ここでもまた,先進国 経済 において現代企業がいつ, どこで,どのように,そ してなぜ登場 し,成長 し続 けたのか ということを吟味することであった。

(104)

その結果,第 2 次大戦 後 にはこれ らの先進諸国のいずれにおいても経営者資本主義が勝利 を治 めるこ

( 1 0 4)Cha ndl e r ," St r u c t u r e , " p.1 8.

( 1 0 5) A . D. Cha ndl e r , J r . , " TheEme r ge nc eo fMa na ge r i a lCa pi t a l i s m , " BHR ,Vo l .5 8 ,

No. 4,Wi nt e r1 98 4, p.50 3. ( 以下 " Eme r ge nc e " と略称。)

(9)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下) 267

とになった と して いる。

(105)

これまでの議論 か ら明 らか な ように,チ ャ ン ドラーの研究対象 は時の経過 と ともに 3 つ の段階 を経 て きてい るように思 われ る。

この ことを図式 的 に示 す と以下 の ごと くで ある。

出版年 1 9 62 年 1 9 7 7 年 現 在

主たる St r at e gy & St ruct ure Vi s i bl eHand Gl obalEht er pr i se(

106)

要 作 『 経営戦略 と̲ 組織』 『 経営者の時化』

対 象 アメリカにおける アメリガにおける 先進市場経済における 生産と流通の過程の一分 現代企業の台頭のメカニ 現代企業の台頭のメカニ

析対象としての分権的事

業部制組織 ( 1 9 2 0 年代) ズ ム ( 1 8 4 0 年代〜現在) ズ ム

つ ま り 『 経営戦 略 と組織 』 にお ける,先進 4 社 の分権 的事業部制組織 を採用 す る に至 った経過 の企業 別比較 分析 か ら, 『 経 営者 の時代 』 にお いて は,現代 企業 の生成 の プロセス を探 るために,歴史 を遡 るとともに,現代企業 の産業別 の比較分析 を行 な い,現在 で は先進市場経済 にお ける現代企業 の台頭 の国際的 な比較分析 にまで その対象範 囲 を拡大 して きているので ある。

この ことは,従来 か らチ ャン ドラーの行 な って きた対象 の設定 は,大部分企 業 という‑制度 の組織 内歴史 の比較史 的考察 で ある ことが判 る。 と同時 に企業 と政府 の関係 とい った組織 間関係 の比較史 的分析 の方 向 には, チ ャン ドラー 自 身,必 ず しも十分 な展 開 を して いるとはいえ ない とい うことも判 る

。(107)

② 方法

これまで述 べて きた ように, チ ャン ドラーの研究対 象 は時 を経 るにつ れて, 大 き く 3 つ の段 階 を経 て時 間的 ( 歴史 的 ) ,かつ空 間的 ( 世 界 的 ) に拡大 して ( 1 06)Gl oba lEnt e r pr i s e という書物は未だ刊行はされてはいないが,近 く刊行 される 予定 になっている.( c f . A.D.Cha ndl e r , J r . , " Ma na ge r s ,Fa mi l i es ,a ndFi na n‑

c i e r s , "i n Ke s a j iKoba ya s hia nd I I i de mas aMor i ka wa( e ds . ) ,De v e l o pme nto f

Ma na ge r i alEnt e r pr i s e ,Uni v.ofTokyoP r . ,1 986,p.62 の注 3

0 )

(10)

26 8 3 7 1 ・2 ・3

きたことが明 らか にな った。

ここでは対象設定 の拡大 にともなって,それへの接近方法 が どの ように展 開 してきたのか とい うことにつ いて検討 を加 える。

最初 に,チ ャン ドラーが デュポ ンや GM 社 といった分権 的事業部制 組織 を 先駆的 に採用 した企業 の分析 をする際 にとった接近の方法 を取 り上 げてみるこ

とにす る。

この研究 において重要 な ことは, これ らの先駆 的 な 4 社 の事例 が, 「 何 が ゆ えに事業 を拡大 し,何 がゆえに新 しい職能 を採 り入 れ,何 がゆえに新 しい事業 分野 に乗 り出 して行 ったか, そ して これ らの動 きが,何 ゆえに新 しい管理機構 を必要 と したのか

」(108)

とい うことであった。つ ま り企業 の成長 方式 ( 戦 略 ) と企業組織 の改革 との関連 をと りあげていったのであるが,その際 に各社 の経 営者 が どの ように問題 を認識 し,それに対 して どの ように対処 してい ったのか

とい う経営者的観点の強調 を したことが特 に注 目され るべ きで あろう

この ことをチ ャン ドラ‑は次の ように述べている。彼 は,同 じ活動 を異 なる 企業 が遂行す る活動分野 のなかで,比較経営史 の試 みにとって一番役 に立つ と 思 われ る もの は,経 営管理 (admi ni s t r at i on

)(109)

とい う職能分 野 で あ り, な か で も経 営 革 新 ( i nnovat i ?n)で あ る とす る

o

とい うの も経 営 管 理 者

(110)㌔

(admi ni s t r at or)とい うもの は強 い圧力が加 え られないか ぎ り,めったに日常 業務 と権 力の座 をかえ ようとは しないものなのでその運営方式 を研究 す ること

で, その企業 の内外 に生 じた緊急 な必要 ( needs) と機会 ( oppor t u n i t i es) が明 らか になるといい,具体 的 には運営方式 と しての企業 の管理組織 を研究す ( 1 0 7)チャンドラーの研究方向として,組織間関係についての分析が全 くない訳ではな い。例 えば A.D.Cha ndl e r ,J r . ," Go ve r nme ntVe r s usBus i ne s s:AnAme r i c a n Phe nome non, " i nJ.T.Dunl op( e d. ) ,Bu s i ne s sa n dPub l i cPo l i c y ,Ha r va r dUni v.

P r . ,1 980. を参照せよ。またこの分野の研究は彼の仲間達によって積極的にすす められているということができる。例えば Thoma s K . Mc Cr a w( e d. ) ,Re gul a t i o n i nPe r s pe c t i v e. ・ Hi s t o r i c a lEs s a y s ,Ha r va r dUni v.P r . ,1 98 1 .を参照せよ。

( 1 0 8)Cha ndl e r ,St r at e g y ,p.5 ,前掲邦訳,2 1 頁。

( 1 0 9) 経営管理とは , 「 企業の業務を調整 し,評価 し,計画する場合に,また企業の経 営資源を割当てる場合に,経営者がくだす決定および行動と命令を意味 してい

る 。 」(I b i d . ,p. 8 ,前掲邦訳,2 5 貢。)

(11)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下) 269

ること, なかで も事業部制組織 ( mul t i di vi si onalt ypeofor gani zat i on) を研 究 することが重要 であると している。

(

1 1 1 ) そ してその際に彼 は次の ようにのべ

●● ● ●●●●●●●■

る。「こられ 4 社 の経営革新者 たちが,それぞれの事業の拡張の結果生 じた経 営管理上の要請 と問題の変化 に,どのように対処 していったかという経緯 につ いては,それをちょうどこの会社の社史の一章 を書 く場合のように,叙述 して みた。おのおのの事例研究では,自社の運命 を担 っている多忙 な人びとの身に なって書いた。経営者たちが自分 たちだけの,特別な問題案件であると考 えて, 実際に対処 していった経路 をあ りのままに描 いてゆけば,は じめて経営革新 と 改革の意味がはっきりして くる。 このようなや り方 によってのみ,あた らしく かつ極度 に複雑な問題の試練 に困惑 した経営者 を,はっき りと描 き出す ことが できるし,また,改革実現のうえに,経営者の個性 や,会社の伝統 あるいは偶 発的な事件 がどんな影響 を及 ぼ したか ということも, うま く表わせるであろう

( 傍点‑榎本

)(112)

」 と。

以上の ことを図式的に示すとすれば,つ ぎのようになろう。

(113)

企業

( 11 0) 経営管理者 は経営者 ( e xec ut i ve) と同義 に用 い られていると考え られるが,経 営者の行 なう活動 ( 調整,評価,計画活動 )には 2 つの経営管理が含 まれている。

一つ は長期的な企業体質に関係するもので,企業全体のために経営資源 を割 り当 てる活動で戦略的 ( s t r a t egi c )ない しは企業家的 ( e nt r epr e ne ur i a l )意思決定 と呼 ばれている。 またこう した活動 を行 な う人 びとを企業家 ( ent r e pr e ne ur) と呼ぶ。

他方,割 り当て られた経営資源の範囲内で,調整 し,評価 し,計画 を立 ててい る人 びとは管理者 ( ma na ge r) と呼 ばれ, 彼 らの行 なう意思決定 を戦術的 ( t a c t i ca l )ない しは現業的 ( ope r a t i ng )決定 と呼 んでいる.( I b i d . ,p.l l,前掲邦訳, 27 頁。)

( 1 1 1 )I b i d ̲ ,p. 2 ,前掲邦訳 ,1 8 頁O

( 1 1 2 )I b i d "p. 5 ,p. 7 ,前掲邦訳,21,2 4 頁。

( 11 3) 以下の図式 についてはバークホーフ ァーの議論か ら多 くの ことを得 た0( Robe r t F.Be r khof e r , J r . ,ABe h avi o r alAp pr o a c ht oHi s t o r i c alAnal y s i s ,Fr eeP r . ,1969,p.

46 の図 3‑ 1 参照 。)

(12)

27 ( ) 商 学 討 究 第 3 7 巻 第 1・2・3 号

この場 合,研 究者 ( obs er ver)は経 営 者 ( act or)が 当該企 業 に とっての 諸 問題 をどの よ うに理 解 して い たの か ( s ubj ect i vei nt er pr et a t i onofs i t uat i on

) , そ して どの よ うな行為 ( act i on) , す な わ ちいか な る戦 略 を採 用 し, そ し てそれが いか な る管理 問題 をひきお こ して,新 しい組織 の採用 に至 ったのか と い う ことをいわ ば行為者 と しての経営者 の観 点か ら明 らか にす るもの(

114)

で あ り,極 めて ビジネス ・ヒス トリー的 な理解 にチ ャ ン ドラーの方法 が近 い とい う ことが判 る。

企業 の経営革新 ( 事業部制 の創設 )にお いては, これ までの組織 の もつ伝統 ( 慣 習 )に加 えて経営者 の力量 , よ り具体 的 には管理 問題 にたいす る経 営者 の 態度 が組織改革 にお ける力点 の違 い とな って顕 われ るが, それ らを考慮 して 4 社 の事例 を検討 してみ ると以下 の如 き表 が描 ける ことにな るだろ う。

会 社 組 織 改 革 の 力 点 以 前 の 組 織 経営者の管理 に対す る態度 デ ュ ポ ン 事業部創設 集権的職能都制組織 高度 に合理 的

シ ア ー ズ 事業部創設 集権的職能都制組織 やや合理的

G M 総合本社 持株会社 高度 に合理的

スタンダー‑ド 職能間の職責の明確化 一部 :持株会社 直感的 .非合理的

( Ch a n d l e r ,St rat egy

, p.

5 1 ,前掲邦訳 ,6 4 頁参照. )

しか しなが ら,チ ャ ン ドラーの方法 は ビジネス ・ヒス トリー的観点 をそっ く り踏襲 したもので はない。以下 で は, ビジネス ・ヒス トリー的観 点 を超 える こ ころみ と して, 3 つの点 を指摘 してお きたい。

彼 は, これ までの ビジネス ・ヒス トリーのケース ・ス タデ ィは企業制度 の歴 史 につ い て の 広 範 な一 般 化 の た め の 基 本 的 な情 報 を提 供 して は い る もの

( 11 4) 別のいい方をすれば,このアプローチによって,研究者は経営者の動機,代替案, そ してとられた行為の研究を行なうのである。( A. D.Cha ndl e r , J r . , " De c i s i on Ma ki nga ndMode r nI ns t i t ut i ona lCha nge

,

"JEH ,Vol .33,No.1 ,Ma r c h1 973 , p. 3.)

ところで研究者が本当に経営者の動機や意図を理解 しうるかどうかについて

は,ビジネス ・ヒス トリーのいう 「 管理者的観点」と同 じく,問題を残 したまま

である。

(13)

A. D. チ ャン ドラーの経営史 の方法 ( 下 ) 271

の,

(115)

したがってその意味ではケース ・メソ ッ ドの重要性 は認 めつつ も, こ うした記述 的 ( des cr i pt i ve) な歴史 は,ケース ・ス タデ ィと して取 り上 げ ら れた対象 が一体 どの ような意味 をもっていたのか ということが明 らかで はな い,と考 える。すなわち,第 1にケ‑スと しての企業 はより広 い環境 の変化 ( 技 術 や市場の変化 )にどの ように関連 していたのか,そ して第 2 にケ‑スがアメ

リガの過去 を理解 するのに,どれだけの意義 を有 しているのか ということが不 明であると考 える。

(116)

第 1 の点 を解決するためには, 4 社 の成長 の方式がアメ リカ経済全体 の変動 と, とくに当該企業の製品需要 に影響するような変化 とどの ように関連 してい たのかということ,あるいは 4 社の組織再編成 は,それが実施 された時期 のア メ リカでの管理技術 の状態 といかに関連 していたのか といった,アメ リカの経 営経済史

(

1 1 7 ) につ いての幅広 い知識 を必要 と したのである

こうして,チ ャン

ドラーは企業 の経営者が行動 をおこす前提 となっている, よ り広 い環境の変化 を明 らかに しようと したのである。そ してその上で,環境の変化が経営者 とい うフ ィル ターを通 して主観的に解釈 された環境 な らびに行為の連鎖 を明 らかに しようと したのである。 これは, これまでの狭 い視野 で把握 されてきた ビジネ ス ・ヒス トリーの観点 を越 えようと したもの とみることができる。 また, この ことは他方で企業者史研究 セ ンターにおける,環境 との係 わ りで企業行動 を考 察 しようという観点 と符号するのである。

第 2 の点 は,ケース ・メツ ッ ドの意義 を高 めるためには, 4 社 の組織革新の 経験 を,他 の多 くの大企業 のそれ と比較 してみることであった。(

118)

そうする ことによって,先駆的な企業 4 社の意義 は研究の材料 と して,大いに価値 ある もの となる し,同時に制度 と しての企業の歴史 の一般的な法則 を立 てることの できる材料 を引 き出す ことがで きる。 それ はたとえば場当 た り的 ( ad hoc)

( 115) A .D.Cha ndl e r , J r . , " Bus i ne s sHi s t or y:Wha ti si ta bout ? , " Jo ur nalo fCo nt e m‑

po T WyBus i ne S S ,Vol .1 0,No.3,1 981 ;p. 50.

( 1 1 6)I b i d . ,p. 50.

( 117) Cha ndl e r ,St r a t e g y,p. 3 ,前掲邦訳 ,2 0 頁.

( 1 1 8)I b i d , ,p. 3 ,前掲邦訳 ,2 0 頁。

(14)

27 2 商

第 3 7 巻 第 1 ・2 ・3 号

にケースとしての企業 を研究対象 と して選択するよりも,はるかに意義のある 研究ができる し,またアメ リカの経営管理の変遷の歴史 ( 近代的分権制組織の 革新 と,その普及過程 )も明 らかにされることになろう

(119)

0

第 3 は,経営者の経営革新 に対す る着 目という点である。チ ャン ドラーの経 営者の革新へ¢着 目は 「 成功 した大企業ではどこでも,有能な経営者が常に, もっとも重要 な要素 であったということに何 ら異論 はない 」( 1 2 0) と述べた り,

「 企業の現荏の健康 と将来の成長 は,まさにその業務活動 を指導する個人の能 力如何 にかか っている

( 1 2 1) と述べて,一見 したところ ビジネス ・ヒス トリー における経営者の主体的機能への着 目と同 じように考え られるかもしれない。

しか し,チャン ドラーの観点 は,新 しい組織 を創造するという企業内機能の面 でのみ把握 されているのではなくて,経営者の行 なう行為が経済発展 に貢献す るという側面 も強調 されているのである。

彼 は 「アメ リカ (および西 ヨーロ ッパな らびに日本 )では実業家 は経済変動 の中心 にいた ( 傍点‑榎本 )( 1 2 2) 十 といい,更 に 「アメ リカお よび西側諸国の

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

大部分 では,過去 1 世紀の経済変動 は生活の基本的な仕方 を変えるのに役立 っ

●■●●●●●●●●●●●●●●●

た し,それゆえ経済のみならず,政治および社会 を変えるのに役立 った ( 傍点

‑榎本 )

(1

2 3 ) 」 と述べる。

したがってまた 「 企業 はアメリカ経済 を世界で最 も生産的な国にするのに明 らかに重要な役割 を果 してきた

」(124)

のである。

この ことか らチ ャン ドラ‑の考え方 には企業 な らびに経営者の経済発展 ( 1 2 5 )

に対する重要な役割が担わされていることが明 らかになった。 これは彼が企業 ( 1 1 9) I b i d "p. 4 ,前掲邦訳,2 1 頁。

( 120) z b i d . ,p. 282 ,前掲邦訳 ,282 頁。

( 1 2 1)I b i d ,p. 8 ,前掲邦訳 ,25 頁O

( 1 2 2)Cha ndl e r ,̀ ̀ Bus i nes sEi s t or y, " p.1 9.

( 1 23) I b i d "p. 1 9.

( 1 2 4)A.D.Cha ndl e r ,J r . ," TheLa r geI ndus t r i a lCor por a t i ona ndt heMa ki ngoft he Mode r n Ame r i ca n Economy , " i n S.E.Ambr os e ( e d. ) ,I n s t i t ut i o n si nMo d e r n Ame r i c aII n no v at i o n si nSt r u c t ur ea n dPr o c e s s ,TheJohnsHopki nsP r . ,1 9 67 ,p.

1 01 .を初めとしてチャンドラーの論文には,至るところでこの種の表現が登場

す る。

(15)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下)

者史の方法 を継承 していることの証でもある。

以上のことを要約すると次の ような図式 になろう。

企業

環境変化

( 人口 ・技術 ・市場)→ 警芸芸芸嘉観的⇒ 雷雲芸式 ( 戦略) ‑ ■ 器 の 経

27 3

渚発展 いLは 会変動

I

この図式 によると,内部経営者的観点 に立つ ビジネス ・ヒス トリーの志向性 が,客観的な環境変化 との関係 で把握 されることにな り,研究者 は経営者観点 では見過 ごされやすい環境 との係わ りを重視する ( 企業者史的志向)

(126)

また媒介項 を形成する企業経営者の性能の違 いが,企業の栄枯盛衰 にとって 重要 で あると同時 に,経営者 は一 国 の経済発展 や社会 の変動 に対 す る主動

力 (127)

を形成 していることを明 らかにすること ( 企業者史的志向)も研究者の 役割である。

このようにチャン ドラーの経営史の方法にはビジネス ・ヒス トリーの内部経

( 12 5) アベ リッ ト ( Rober tAve r i t t) に依拠 して経済発展 と経済成長 を,次の ように 区別 している。経済成長 とは,国民総生産の短期的拡大の ことを指 し,経済発展 とは,構造変動のプロセスであ り,新 しい技術の採用,新 しい知識の蓄積,新 し い商品の利用,新 しい材料,新 しい市場,新 しい組織形態の創造 といったことを 必要 とする長期的な現象 と定義 している。 ( c f . A. D.Cha ndl e r , J r . , " TheMul t i ‑ Uni tEnt e r pr i s e:A Hi s t or i ca la ndl nt er na t i ona lCompa r a t i veAna l ys i sa nd Summa r y, "i n I.F.Wi l l i a ms on ( e d. ) ,Ev o l ut i o n o f I nt e ma t i o nalMa na ge me nt St r uc t ur e s ,Uni v.ofDe l a war eP r . ,1 975,p.228.

( 1 2 6) 客観的な環境変化,経営者の主観的な環境解釈,戦略,管理問題 な らびに組織構 造 を考慮ノ した表 は吉原英樹氏によって整理 されている。( 吉原英樹稿 「 チ ャン ド

ラーの組織発展理論 と事業部制 ( 1) 」 六 甲台論集』第 1 2 巻第 2 号,昭和 4 0 年,

80 頁参照。)なお吉原氏の表 は拙稿 ( 辻原 )「A.D.チャン ドラーの経営史の方法 ( 上 ) 」 商学討究』第 3 2 巻第 3 ,1 9 8 2 ,5 0 頁 にも掲載 されれ lる。

( 12 7) 企業 ない し経営者の経済発展 に対する役割 は他のいかなるグループよりも大 きい と,チャン ドラーは主張 す る。( c f . A. D.Cha ndl e r , J r . , " TheRol eofBus i nes s i nt heUni t e dSt a t es:A Hi s t or i c alSur ve y, " Da e ddu s ,Vol .98,Wi nt e r1 969,p.

39.

(16)

27 4 3 7 巻 第 1 ・2 ・3 号

営者的観点 と,企業者史の環境 一経営者 一経済発展の観点 とが見事 に融合 され ているといえよう。

これまで企業の比較経営史的研究 の レベルでチ ャン ドラーの方法 を検討 して きたが,次に産業比較 の レベルで彼 の方法 を論 じることにする。

『 経営戦略 と組織』 における企業比較の レベルでは企業経営者の性能の違 い がとりわけ強調 され,そのことが組織改革の力点 にどんな影響 を及 ぼ したのか ということが注 目されてきた。産業比較の レベル (『 経営者の時代』)では,ア メ リカにおける現代企業の台頭 は一体 いつ頃, どの ような産業 においては じ まったのかということで歴史 を遡 って研究 を行 なった。

それによると ,1 8 5 0 年代 に鉄道,電信企業で大規模企業が登場 し,それ らの 運行技術 が完成することによって原材料や財貨の工場への流入及 び流出の末曽 有の流れが可能 になるとともに,技術の進歩が生産過程 における大量生産 を可 能 に したので,現代産業企業 ( mode r ni ndus t r i a le nt e r pr i s e) が登場 した。

この企業 は単一企業内 に大量生産過程 と大量流通過程 を統合 したものである が ,1 8 7 0 年代末 にはまだほとんど存在 していなかった。 しか しその後僅 か 3 0 年 以内に,アメ リカで最 も重要な産業 の多 くを支配するようになった。

(128)

ところで現代産業企業 は, 2 つの異 なる経路で成長 してきた。 1 つ は,既存 の製造企業 が 自社 の全 国的 お よび世界的販売組織 をつ くりあ げ ( 前 方統 合 f or wa r di nt e gr a t i on ) ,続 いて自社 の購買 な らびに原料資源 の獲得 ( 後方統合 ba c kwa r di nt e r gr a t i on )に乗 り出 して大規模化す るものである。 この成長経

第 2 の経路 はまず,同一産業内にある既存の製造企業が合併 し,全国的な企 業 とな り,続 いて前方 お よび後方 に統合化 したものである。 この成長経路 は 1 8 9 0 年代 にとられた方法である。

(130)

第 1 の成長経路 をとろうと,第 2 の成長経路 をとろうと,いずれの場合 にお いても巨大な統合企業 は同一の産業 で生 じたといわれている。

(131)

こう して成長 した現代産 業企業 を要約 して示 す と,以下 の表 の よ うにな

る。

(132)

(17)

A. D. チ ャ ン ドラーの経 営 史 の方法 ( 下 )

財 貨生産 に関係 して いた ア メ リカの大企業 ( 1 9 1 7 年)

3 0 社 鉱 業

7 原油 生産

5 農 業企業

0 建 設 業

製造業

内 訳

1 7 1 社

(72.

5 %

)

S工 C の

2

分類

6

産業 に集 中 3 9

3 4 2 9 24 24 2 1

粗 金 属 食 品

送機器 機 械 石 油 化 学

2 3 社 ( 9. 7%) 2 桁 産 業分類 の 7 7 産 業 に分散

5 4 3 1 0

繊 維

木 材

皮 革

印刷 ・出版

器 具

家 具

A . D. Chand l er ,J r . , "Ri s eandEvo l ut i o nofBi g Bus i nes s , "

i 。Gl e nn Por t er ( e d . ) ,Enc ふcl o pe di ao f Ame ri c a n Eco‑

no mi cHi st or y,Vol . I I ,Char l esScr i bner ′ sSo ns ,1 980,p.

6 3 1 .

27 5

この表 では 1917 年のアメ リカの 278 社の大企業の うち ,236 社が製造業 に分類 され, さらに 171 社 ( 72.5% )が 6 つの 2 桁産業分類 に集 中 している。 それ と は反対 に 23 社 ( 9. 7% )が 7 つの 2 桁産業分類 に分散 しているのが判 る。

これは,統合化 して中間商人 を排除 し,管理的な調整 を行なうことで単位原 価 の低減が可能 となるような産業分野 において現代産業企業 は成長 し, 発展 し,

そうでない産業分野では現代産業企喪 はあま り成長 しないということを示 して

いる, という。 いいか えると,「 大規模産業企業 は,資本集約的でエネルギー

消費的な,そ して連続的 あるいは大量処理的な生産技術 を用 いて大衆市場向け

の生産 を行なうかぎり,繁栄 しっづ けた。 こうした企業が繁栄 したのはまた,

(18)

27 6 3 7 巻 第 1・2・3 号

大量の商品の流れを調整するための複雑 な計画化 や専門貯蔵所 および発送設備 を必要 とするほど市場が大 きく,消費が多量かつ変化 に富んでいる場合,また, その多量の製品 を販売するために,実演宣伝,取付 け,アフター ・サー ビスと 修理,および消費者信用 といった専門サービスを必要 と した場合であった。 こ ㌔ うした企業が繁栄 を持続 しえたのは,管理的調整 によって絶 えず費用 を低減 さ せ,参入障壁 を維持 しつづ けたためであった

(133)

( 傍点‑榎本 ) 」 し,逆 に 「 生

( 1 2 8)Cha ndl e r ,Vi s i b l eHa n d ,p.28 5 ,前掲邦訳 ( 下 ) ,4 9 9 頁 。

( 1 2 9) この第 1 の成長経路 をとった企業 には次の 2 つ の タイプがあった。

第 1の タイプは,新 しい連続工程機械 を採用 し,生産量 を急速 に拡大 した大量 生産者 た ちで, この ような企業家 たちは既存 の販売業者 では,顧客 にたい してス ケ ジュール通 りの調整 が不可能 であると気付 いた. これ にはタバ コ,マ ッチ,製 粉 ,缶詰 ,石鹸 お よび写真 の各産業が含 まれ る。

第 2の タイプは,既存 の販売業者 では提供 で きないような専門的 な流通 お よび マーケテ イングのサー ビスを必要 とす る製造業者 である。 この製造業者 には 2種 類 あ り, 1 つ は,腐敗 しやすい製 品 を全 国に流通 させ る必要 のある製造業者 で, 販 売業者 にとっては投資負担 ( 冷凍船,鉄道貨車 ,倉庫等 )が大 きす ぎる場合 と,

2 つ には, も し大量 に販売 され ることになれば,専 門的 なマーケテ イング ・サー ビス ‑ 実演,据付 け,消費者信用, アフター ・サー ビスと修理 ‑ を必要 と す るような,複雑 で高価 な新式機械 の製造業者が含 まれている。

前者 には精 肉,醸造業 が,後者 には ミシン,農業機械 ,事務機器 (タイプライ ター,金 銭登録機 ,謄写版 印刷機 ,計算機等 )の産業 の企業 が含 まれ るo ( 詳 し くは I b i d . ,c ha p.9 ,前掲邦訳 ( 下 ) ,第 9 章参照.)

( 1 3 0)I b i d . , p.286 ,前掲邦訳 ( 下 ) ,5 0 0 頁 。

( 1 3 1)I b i d . , p.337,p.3 47 ,前掲邦訳 ( 下 ) ,5 8 6 頁 ,6 0 4‑6 0 5 頁 。

( 1 3 2) なお残 ‑ りの 4 2 社 につ いて は,ヰ 記以外 の 7 つの産業 グ) i , ‑プの 4 桁産業分類 に入 る,連続 生産工程 をもつ産業 に含 まれている。

2 桁産業分類 4 桁産業分類

製紙産業 ( 新聞用紙 とクラフ ト紙) 石材 .ガラス .粘土 ( セメ ン ト.板 ガラス)

ゴ ム (タイヤ .は き物)

コ ( 紙巻 タバ コ)

・加工金属 ( 缶)

電気機械 ( 標準機械)

( I b i d. ,pp. 3 4 6‑3 4 7 , 前掲邦訳 ( 下) ,6 0 4 頁よ り作成。 )

( 1 3 3) I b i d . , p.3 47 ,前掲邦訳 ( 下 ) ,6 0 5 頁。

(19)

A. D. チャンドラーの経営史の方法 ( 下) 27 7

産過程が熱やエネルギー,あるいは複雑 な機械 をほとんど必要 としない労働集 約的方法 を採用 している産業では,現代的産業企業の出現 は遅 く,それが栄え

ることもなかった

(134)

( 傍点‑榎本 ) 」 のである。

こうして,管理的調整のメリッ トの得 られる産業分野 において現代産業企業 は登場 し,そうでない分野では登場 しないということになったが,その根本的 な要因は 「 市場 と技術

(135)

」という経済的な必然性 (economi ci mper at i ve

)(136)

であって,決 して企業者性能の質ではないということである。 この ことをチ ャ ン ドラーは次の ように表現する。すなわち, 「この両者 ( 市場 と技術・ ・ ・ 榎本 ) がアメリカ産業 における規模 と集中の決定 に及 ぼ した影響 は, 企業者性能の質, 資本の利用可能性,あるいは公共政策のそれと比べ, はるかに大 きかった。企 業家の能力によっては,巨大企業がなぜある産業 に集中 し,他の産業ではそう

でなかったのかを説明する′ ことは,ほとんどできない」

(137)

とする。

この結果,チャン ドラーの経営史の方法には,企業比較の レベルでの企業者 性能の強調 という観点 と,他方産業比較の レベルにおける市場 と技術 という経 済的な必然性の強調 という観点 とが矛盾 を呈 することになる。

(138)

次 に,国際比較 の レベルにおけるチ ャン ドラーの経営史の方法 についての検 討 に移 ろう。

この局面では,現代企業の台頭のプロセス,とりわけ統合的産業企業の進化 のプロセスを主要 な先進国で比較することである。 この研究の結果 は,アメ リ

カであれ, ヨーロ ッパであれ, 日本であれ これ らの統合的企業 は国 を超 えて共 通性 を持 っていることが明 らかにされた。

第 1 に,同一の産業 に集中 しているということ,すなわち ,1973 年現在,従 業員 2 万人以上 を雇用する世界の大企業 401 社の うち ,263 社 ( 65% )が食品,

( 1 3 4)I b i d . ,p. 347 ,前掲邦訳 ( 下) ,6 0 5 頁。

( 1 3 5)I b i d . ,p. 3 7 3 ,前掲邦訳 ( 下) ,6 43 頁.

( 1 3 6) Cha ndl e r , " Bus i ne s sHi s t or y:Wha ti si ta bout ? , " p. 59.

( 1 3 7) Cha ndl e r ,Vi s i b l eHa n d,p. 373 ,前掲邦訳 ( 下) ,6 43 頁。

( 1 3 8) この点については結の部分でやや詳 しく述べる。

(20)

27 8

第 3 7 巻 第 1 ・2 ・3 号

衣料,木材,家具,皮革,印刷 ・出版,器具及 びその他の産業 には存在 してい ないとうことや,第 2 に,同一の方法でこれ らの企業 は成長 してきたというこ と,すなわち,①前方統合の後,後方統合 して複数職能部制組織 を形成 したこ と,② これ らの企業 は多国籍化 してお り,海外投資の順序 はマーケテ イング組 織の創設の後,製造設備 を設 けたこと,そ して③既存の ビジネスに関連する製 品分野への投資で業務 を拡大 して,事業部制組織 の構造 を創造 したという共通 性 をもっている。

(139)

同時に,先進市場国間には,いくつかの顕著な差異 も存在 していることが明 らかにされた。例 えばそれは,アメ リカでは消費財や生産財の分野のどちらに も統合的産業企業が存在 しているのに,イギ リスではアメリカよりも消費財企 業 に大企業が多いこと,他方 ドイツや日本では,生産財企業の方に大企業が集

中 していることなどが基本的な差異 として挙 げられている。

(140)

この差異 は,「いろいろな国の産業家 ( i ndus t r i al i s t) にとって利用可能 な 技術や市場,企業家的 ・組織的スキル,法律,文化的態度や価値の差異 ( 傍点

‑榎本 )

(14

1 ) 」 を基本的 に反映 した ものであったが,国際比較 の レベルにおい てチャン ドラーの基本的な関心 は,先進経済諸国間に共通 して現れる傾向の把 握が彼の眼目であった。すなわち,経営者企業や経営者資本主義 は主要 な先進 経済諸国における主要 な組織形態であ り,主要なシステムであるが,それ らの 進化 を 「いろいろな経済や比較することによっては じめて,組織化 されなけれ ばな らない必然性が確認 され, これ らの必然性 に影響する文化的態度や価値, イデオロギー,政治 システム,社会構造のインパ ク トが理解 される ( 傍点‑檀 本

)(142)」

のである。

( 1 3 9)Cha ndl e r ," Eme r ge nc e, " p.475.

( 1 4 0)I b i d ・ ,p・ . 479・

( 1 41)I b i d . ,p‑492.

( 1 4 2) A .D.Cha ndl e r , J r . , " TheUni t e dSt a t e s‥Se edbe dofMa na ge r i a lCa pi t a l i s m , "

i nA.D.Cha ndl e r , J r .a ndH.I ) a e ms , ( e ds . ) ,Ma n a ge r i alHi e r a r c h i e s:Co mpa r at i v e

Pe r s pe c t i v e so nt h eRi s eo ft h eMo d b r nI h du s t r i alEnt e r pr i s e ,I I a r va r dUni v.P r . ,

1 980,p.39.

(21)

A・ D. チ ャ ン ドラーの経営史 の方法 ( 下 ) 27 9

言いかえれば, ここでもまた 「 技術 と市場 」 という組織化の必然性

(143)

の要 因が作用 して,国 を超 えて,結果的 に一つの収赦化 ( conver genc e)

(144)

をも たらしたが,その収赦化のプロセスにおいては各種の要因が各国別の差異 を生 み出す働 きをしているのである。

以上の ことをまとめると,次のような図式 が描かれる。

環境変化

( 人口 ・技術 ・市場)

経営者の主観的 環境解釈

( 企業者性能)

成 長方式 ( 戦略 ) 組織 の

⊆ E E

の変更 変更

文化的 ・社会的 ・政治的環境

経済発展 をいLは

国際比較の レベルで付加 された文化的,社会的,政治的環境の側面 は,本来 企業者史 において強調 されてきたものであ り, この点でもチャン ドラーは企業 者史学の影響下 にあるとみなす ことができる。 しか しなが ら上述の ようにチャ

ン ドラーはこうした文化的,社会的,政治的側面の意義 を認めなが ら,組織が そうな らざるを得 ない必然性 を, より強調することで収欽化説の方 に力点 をお いていると考えることができる。

Ⅳ 結

これまでの説明か らチャン ドラ‑の経営史 の方法 は, ビジネス ・ヒス トリー と企業者史の影響が色濃 く存在 しているということがあきちかになった。

本節では,以上の検討 をふまえた上でチャン ドラ‑の経営史の もつい くつか の問題点 と彼の射程 を明 らかた して,本稿 を終 えたい。

第 1 に,彼や彼の学派の方法 は価値判断 を超 えた a mor a la ppr oa c h

(145)

にそ の特徴 を見出す ことができたが,次第 に管理者の見 える手 による経済調整 を資 本 主 義社 会 の 自明 の前 提 と し, そ の優 位 性 を暗 黙 の うちに認 め る mor a l

( 1 43) Cha ndl e r ,V2 ' S i b l eHa n d , p.500 ,前掲邦訳 ( 下) ,8 5 5 頁。

( 1 44) Cha nd l e r ," Eme r ge n c e , " p.5 03.

( 1 45) 拙稿 ( 辻原) 「ビッグ ・ビジネスお よびその リー ダー観 の史的変遷 ( 下 ) 」参照の

こと。

(22)

280

第 3 77 巻 第 1・2 ・3 号

appr oach の危険性 を含 んでいる,

(146)

ということであるo

第 2 に,企業比較の レベルで強調 された企業者性能 は,産業比較 および国際 比較 の レベルに至 ると,経済的な必然性 の方 に強調点が移行 して,企業者性能 の役割 は脇役 の位置 におかれ るようになった ことである。 この意味でブ リンク

リー (A. Br i nkl ey) がチ ャン ドラーの方法 には 「 起 こったこと峠,起 こらざ るをえなかった 」 とい う意味 において 「 不可避性 ( i ne vi t abi l i t y)

(147)

」 が強 調 されている,と述べていることは注 目に値 する.言 いかえると,チ ャン ドラ‑

は, 自 らの アプローチ を,歴史 の進路 は不 可避 的 と考 え る Gener al i zer s の立 場 と歴史 は独特 の個人 を通 して創 られ ると考 える Par t i cul ar i zer s の中間 に位 置 す る,

(148)

と したが少 な くともやや Gener al i z 占r s 寄 りの考 え方 に近 い とい う

ことが判 る。

また,今述べ たことと関連 して,チ ャン ドラーの フ レームワ‑クは企業比較 の レベルにおいては,企業者性能の質 をと りわけ重視する立場 にあ りなが ら, 産業比較 および国際比較 の レベルにおいては経済的必然性 ない しは不可避性 の 方 に重点 を移 している。 この意味において彼 の体系 には論理的な整合性 ( 企業 者性能 vs 経済的必然性 )が欠如 しているともいうことができよう。

第 3 に,既 に述べたように,チ ャン ドラーのフ レームワークは, シュ ンペー ターの革新概念 を利用 してはいるものの,基本的 には人間行動 をあま り重視 し

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ない傾 向 を持 っていた。すなわち , 「そうした制度的な経営史 は,より伝統的な,

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実業家や企業 につ いての歴史的物語 よりも生 き生 きと したものではない し,劇 的 で もない し,人間的で もないだろ う

(149

)( 傍 点 ‑榎 本 ) 」 と, チ ャン ドラ‑

( 1 46) 詳 しくは Loui sGa l a mbos , ̀ く Te c hnol ogy,Pol i t i c a lEc onomy,a ndPr of e s s i ona ‑ 1 i z a t i on:Ce nt r a lThe me soft heOr ga ni z a t i ona lSy nt hes i s , " BHR ,Vol .57,No.

4,Wi nt e r1 983,pp.476‑477. 参照の こと.

( 1 47)Al a nBr i nkl e y , " Wr i t i n gt heHi s t or yo fCont e mpor a r yAme r i c a:Di l e mma sa nd Cha l l e nges , " Da e da l us ,Vol .11 3,No.3,Summe r1 984,p.1 34.

( 1 4 8)A.D.Cha ndl e r , J r . ,a nd L .Ga l a mbos , i ' TheDe ve l opme ntofLa r ge ‑ Sc a leEc o‑

nomi cOr ga ni z a t i oni nMode r nAme r i ca, " JEH ,Vol .30,No.1 ,Ma r c h1 970,pp.

201 ‑202.

( 1 49)Cha ndl e r , " Bus i ne s sHi s t or y=Wha ti si ta bout? , " pp.62163.

(23)

A. D. チャン ドラーの経営史の方法 ( 下 ) 281

は述 べ て い る。これ に対 し て チ ャ ン ドラー の弟 子 の リブゼ イ (H・ Li veSay ) は, こ う した人 間行 動 を軽 視 し て制 度 に焦 点 を あ わせ る経 営 史 は退 屈 な もの に な っ て きて い る と,反 対 の立 場 を 表 明 して い る こ と は興 味深 い こ とで あ る。( 1 5 0 ) チ ャ ン ドラーの立 場 を取 ろ うと, あ るい は リブゼ イの立 場 を取 ろ う と ,歴 史 にお け る人 間 の役 割 につ いて の十 分 な考 察 が必 要 で あ る と い う こ と は,誰 しも異存 は な いで あ ろ う。

以 上 の よ うな問題 点 を持 ち な が らも, チ ャン ドラーの研究の射程 は,組織内 歴 史 に限定 され た もの で はな く ,組 織 間関係史の分析 を含むものであり,制度 史 と して の経 営史 の研 究 は今後 も 多いになされるであろう。

( 完)

( 1 5 0 )c L . Ha r ol d C. Li ve s a y , " Ent r e pr e ne ur i a lPe r s i s t e nc et hr ou g h t heBur e a uc r a t i c

Age , "BHR ,Vol .51 ,No.4,Wi nt e r1 977.

参照

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