秋 田大学工学資源学部研究報告,第
2 4
号,2 0 0 3
年1 0
月た た ら製 鉄 と卸 鉄 法 に よ る玉鋼 の 製 造
一創 造 工房 実 習 よ り得 られ た二 三 の 知見 一
小松 芳成 *・後藤正治 *・麻生節 夫*
AnExpe r i me nt a lS t ud yo nTa ma ha ga ne 一 ma ki ngBa s e donCombi nedUs eof t heTa t a r a ‑ bukiI r o nma ki ngPr oc es sa ndt heOr os hi ga nePr oc es s
IAFe wFi ndi ngsObt a i ne df T r om Cr ' e a t i veTe c hno‑ Cr a f t‑
% s h i na r iKoma t s u* ,Sh o j iGo t o * a n dSe t s uoAs o *
Abs t r ac t
Sma l l ‑ s i z e d" Ta t a r a ‑ buki "f uma c ea nd" Or os hi ga ne "f uma c ewe r ema def o rl a bo r a t o r ywo r ki ng.I r o ns a nd mi ne df ro m Muka i ha mabe a c hi nt hec i t yOfAki t awa sa ppl i e dt o" Ta ma ha g a ne "ma ki ngba s e do nc o mbi ne dus e oft heTa t a r a ‑ bukipr o c e s sa ndt heOr os hi g a nepr oc e s s .Af t e rwa s hi ngl nWa t e ra ndma g ne t i cd r e s s l ng,t hei r o n s a ndwa ss me l t e dbyme a nsoft he" Ta t a ra ‑ buki "pr oc e s sa ndKe r a( i r o nbe a r )Wi t hl o we rphos pho r o usa nds ur f ur c o nt e nt swa sma dei nr e p r o duc i bi l i t yo f20% y i e l d.Thec a r bo nc o nt e ntoft heKe r awa s2. 43‑3. 04ma s s % whi c h wa ss i g ni f i c a nt l yl o we rt ha nt ha ti nbl a s tf ur na c epr o c e s s .Ne xt ,t heKe r awa sr e f i ne dbyt heOr os hi g a nepr oc e s s t oma keTa ma ha g a newhi c hwa sahi g hqua l i t yi r o nc o nt a i nl ng0. 63 ma s s %C,0. 0 4ma s s %Si ,0. 048 ma s s %Sa nd 0. 075 ma s s %P.Themi c r os t r uc t ur eoft heKe r aa ndt heTa ma ha ga newa swe l lunde r s t o o df T r o mt hec a r bo nc o nt e nt s . As e r i e so rt hee xpe r i me nt sme nt i o ne da bov ewa sc onduc t e da sa na ppr o pr l a t epr a c t i c eo na ne duc a t i o npr o g r a m
" Cr e a t i veTe c hno ‑ Cr a f t "f o rt heunde r g r a dua t ec o ur s ei nt heDe pa r t me ntofMa t e r ia l sSc i e nc ea ndEngl ne e r l ng
,Aki t aUni v e r s l t y .
1 . は じめに
砂鉄 と木炭 を原料 とす るたた ら製鉄 は, 日本古来 の唯一の製鉄法であ る.たた ら製鉄法は高炉製鉄 法 に比べ操業温度が約 200K ほ ど低 い低温製鉄法であ るため,それによって造 られ る鋼や銑鉄 は Si や pな どの不純物濃度が低 い といわれてい る( I ) .
一方,卸鉄 は使い古 された和鉄 を火床 (ほ ど)の 中で溶か し,目的にあった炭素量の地鉄 を作 り出す 日本で古 くか ら行われている鉄 の リサイクル技術 で ある .C 量の少ない鉄素材 を卸す場合 は,火床 の雰 囲気 を還元雰囲気に保 って吸炭 を促進 す るように し, C 量が多い銑鉄 な どを卸 す場合 は脱炭 を促進 するた めに,火床 の中を酸化雰 囲気 に保持 して C 量 を調整 する方法である. したが って ,たた ら製鉄 と卸鉄法 を併用すれば高純度 の玉鋼が製造で きるもの と期待 され る.
2003
年7
月22日受理
*秋 田 大 学 工 学 資 源 学 部 材 料 工 学 科 .De
pa r t me nto r Ma t e r i a l sSc i e nc ea ndEngi ne e r l ng,Fa c ul t yorEngi ne e r l ng a ndRe s o ur c eSc i e nc e , Aki t aUni v e r s l t y ・
1 9
本実験 では,初 めに身近で手 に入 る向浜砂鉄 ( 秋 田市)を原材料 に して ,前報
(2)で実験 に供 した小型 たた ら製鉄炉 に一部改良 を加 えた実験炉 を新 たに作 製 したた ら製鉄操業 を実施 した.操業 は同一の手順 で
2度行 い ,本実験 方法 によるたた ら製鉄 の再現性 を確認す ることと した.
さ らに,たた ら製鉄 によって得 られた鉄 (ケラ) を原材料 に してそれに卸鉄法 を適用 することによ り C量の調整 を施 し,玉鋼 ( C: 0. 5‑1 . 5%) の製造 を行
った.卸鉄 には ,先に用いたたた ら製鉄炉の炉体 を 再利用す ることによ り卸鉄炉 を作製 して用いた.以 上の ことをもとに卸鉄法の有効性 について検討 した.
本研究では上述のたた ら製鉄 と卸鉄法 を創造工房
実習の課題 と して取 り上 げ,学生 たちの創意工夫 と
研究スタ ッフらの知識 と経験 の融合 を図 りなが ら,
向浜砂鉄 か ら純度 の高 い鉄 ( 玉鋼 )を作 り出す作業
を共 同で行 った ( 3) .学生た ち自身の手 によって 日本
古来か らのたた ら製鉄 や卸鉄 を再現 することによ り,
既存の講義や実験 だけでは得 ることが難 しい冶金学
の知識 を,体験 的かつ実践 的に学習 させ ることも本
Ta bl ei Chemi calcompos i t i onoft heMukai hamaI r on‑ s and.
Chemi calcompos i t i on( mas s %)
T .Fe FeO Si O二 Ca Al
PS Cu Ti Mg Bef or emagnet i caldr es s i ng 33. 7 5̲ 9 33. 0 1 . 8 1. 6 <0. 1 <0. 1 <0. 1 6. 0 4. 5
実験 の主な 目的の一つであ る.
2. 原 材 料 2. 巧 砂 鉄
たた ら製鉄 に用 いた砂鉄は ,前報
(2)と同様 に秋 田 市の向浜海岸か ら採取 したものを使 用 した 。その分 析値 を Table lに示 した .砂浜の表面お よびそ こか らご く浅い部分の範 囲にかけて, 目視 や磁石 に よっ て砂鉄が多 く存在 す る位置 を特定 し採取 したものの 分析値 が Tabie lの上段 の値 であ る.その砂鉄 に水 洗い と磁 力選鉱 を施 した後 の結果が下段 の分析値で あ る.前報
(2)にお いて も報告 してい るが ,一連 の水 洗いや磁 力選鉱 を行 うことで SiO :分 を約 8 0 r o 減 少さ せ るとともに,Feの含有量 を約 60%増加 させ ること がで きた.これ をたた ら製鉄用の砂鉄原料 として用 いた.
2。 2 貝殻 および莱炭
不純物 の少ない良質のケラを得 るためには ,低融 点の ノロを如何 に上手 に形成 させ るかが重要なポイ ン トのひ とつになる.たた ら製鉄 のプロセスでは砂 鉄 に含 まれ る Si 0 2と Ca を結合 させ ,ノロ (主成分 : CaO‑SiO 2) を作 り,砂鉄 に含 まれ る SiO Z を除去 し ている ( 4 ) , ( 5 ) 。これには消石灰 (CaO) が必要 となるが , 本研究では可能 なか ぎ り不純物成分 をお さえるため に,その代替 と して向浜海岸で採取 した貝殻 を細 か
く砕 いて用いた.
木炭は燃料 と して熱源 となるほかに,燃焼 の過程 で生 じる CO ガスが酸化鉄 を還 元す るための還元
剤の役割 も果 た してい る
(4), ( 5 ) 。本実験 では レジャー用 と して市販 されてい る,外 国産の比較 的安価 な木炭 を選定 し供 した 。2 0‑3 0 mm角程度 になるようにナタ な どで大 きさを調整 したが ,その際 に生 じる 2 0 mm
よ り細 かい木炭片は ,たた ら製鉄炉 や卸鉄炉 の底部 を築造 す るための材料 な どと して無駄 な く利用 した。
以上の ように,身近な ところで比較 的簡単 に準備で きる材料 を,無駄 な く使周 することで操業 コス トを 削減 することも実験 の一つの 目的 と した.
b ・ ons andO r o no r e ) Cha r coa l
L i mes t one( Sh e I l )
Up p erf ur na ce‑ . 一 一 か
M i d d l ef ur na ce‑づゝ Lowerf uma ce Bur ni ngr ea ct i on
C+02 =CO2 C+CO2=2CO
T T l er mO COuP I e( No. 2)
Addi ti on
of汀 協t er i al s
Ol i v i nes a nd 句十一 一 Oi lca n
Red uct i on
ofi r ons a nd ( Remov i ngox yg en) 3Fe2
03 +CO
=2Fe3 Fe3 04 04 +CO2 +CO
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F
eO+CO
2 日♂βKF
eO+CO
=F
e
十CO2 1500K
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7 7 ( 〉 βK
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Fi g・ 1 Schemat i c i l l us t r at i on of t he s mal l ‑ s i zed
̀ ̀ Tat ar a‑ buki "免l maCe.
たた ら製鉄 と卸鉄法 による玉鋼の製造 一創造工房実習 よ り得 られた二三の知見‑
Fi g.2 Se t t i ngo ft hel owe rf uma c ei nTa t a r a buki .
3 . 実 験 3.1 たた ら製鉄 炉 の作製
Fi g. 1 は たた ら製鉄炉 の構 造 とその製鉄過程 の概 念図 を示 した ものであ る.本実験 にお いて も前報
(2)の場 合 と同様 に炉体 の 外 枠 に は外 径 3 0 0 mm ,高 さ 3 6 0 m mのオ イル缶 ( 2 0 L) を転 用 した .オイル缶 の底 部 の 中心部 に直径 21 0 mm の穴 をあ け ,そ こに外 径 21 0 mm の塩 ビ管 をオイル缶 と同心 円状 にな るよ うに セ ッ トした .オ イル缶 の 内側 と塩 ビ缶 の外側 に挟 ま れた間隙 に , 5 0 / .の水 ガ ラス を添加 し混練 したオ リ ビンサ ン ドを均 一 に充填 した .その後 ,静 か に塩 ビ 缶 をオイル缶 か ら引 き抜 き,内側 か ら水 ガ ラス を含 んだオ リビンサ ン ドに C O 2 ガス を吹 き付 け固化 させ た ( 6) .これ に よって外径 3 0 0 m m,内径 21 0 m m,高 さ 3 6 0 m 皿の 円筒状 の炉体 を 3 個作 製 した .さ らに下段 炉 とな る一 一つの炉体 には羽 口 とな る炉 心管 を挿 入 す るために底 部 か ら 1 0 0 mmの位 置 に径 5 0 m mの穴 を 2 個 あけた
(7).3. 2 炉体 の設置
Fi g. 2 には下段 炉 を設置 し終 えた後 の状 態 を示 し た .最下部 にコ ンク リー トブロ ックを配置 し,その 上 に厚 さ 6 m の鋼 板 を載 せ , さ らに 耐 火 レ ン ガ ( S K‑ 3 2) を敷 詰 めた .その上 に下段炉体 を収 め るた めの囲い を作 る 目的で ,内枠 が 3 0 0 mmx3 0 0 m mにな る よ うに耐火 レンガを配置 した .その 内枠 の 中に木 炭 割 りの際 に生 じた木 炭 の 小片 を 2 0‑30 m m 厚 さに敷 いた .その上 に厚 さ 3 mmの鋼板 を置 き下段 炉体 を据 え付 けた .下段炉体 の底 部 は木 炭 の小片 を 20‑3 0 mm 厚 さに敷詰 め 5 % の水 ガ ラス を含 んだオ リビンサ ン
ドを用 いて 凹面状 に成形 L C O 2 ガス を吹 き付 けて 固 化 した
(6). ここが湯溜 ま りにな る部分 であ る.
羽 口は 2 箇所 に設 け ,お互 いに対面 にな るよ うに
21
配置 した .Fi g. 1 か らもわか るよ うに炉体底部 か ら 高 さ 1 00 mmの位 置 にお いて ,挿 入角度 250 で炉心管
を差 し込 んだ .前報
(2)では羽 口を 1 箇所 か ら 2 箇所 に増 設 した こ とに よって ,操 業 開始 当初 は比較 的高 い炉 内温度 を得 る こ とがで きた もの の ,高 い炉 内温 度 を操 業終 了時 まで安定 的 に維持 す る こ とは困難 で あ った .その解 決策 と して羽 口を設置 す る際 ,送風 が炉 内の 中心部で衝 突 す るよ うに ,挿 入角度 ととも にその向 きについて も十分 に注意 を払 わ なければ な らない と述べ てい る. しか し,羽 口か らの送風 が炉 内 の 中心 部 で 均 等 に衝 突 させ る こ とは ,操 業 中 に 刻 々変化 す る炉体 内の木 炭分 布 の状 況 にも左右 され るこ とか ら非 常 に難 しい と考 え られ る.そ こで本実 験 では発想 を転換 して ,前報 の よ うな対面 す る 2 箇 所 の羽 口を一直線状 に配置 す るこ とをやめ , Fi g. 1 に示す よ うに羽 口の径 の分 だけお互 い にず ら して配 置 す るこ とに した . 2 箇所 の羽 口か らの送風 が正 面 で衝 突 す るこ とを避 けて ,各 々の羽 口が炉 内燃焼 の おお よそ半分 ずつ担 うよ うにさせ た . これ に よ り中 心部 にお いては 2 箇所 の羽 口か ら送風 が相乗 的に作 用 して ,よ り安定 した炉 内温度 の確 保 が期待 で きる.
なお 羽 口の挿 入 角度 につ い て は従 来 どお り 2 50 と した .
3 . 3 卸 鉄
卸鉄 (お ろ しがね )は古釘 ,古 い鉄 瓶 ,折 れ刀 な どの様 々な和鉄 を火床 (ほ ど)で溶 か し,炭素量 を
Addi t i onofma t er i al s
Fi g.3 Sc he ma t i c i l l l l S t r a t i on oft he s mal l ‑ s i z e d
" Or os hi ga ne "f ur na c e.
調 整 して用途 に あ った地鉄 を作 り出 す技 術 で あ る。
古 くか ら,刀鍛 冶 が卸 鉄 を行 う場 合 ,鍛 錬 に使 用 す る火床 の 中の羽 口の前後 に粉 炭 を積 み上 げ ,卸鉄 に 使 う木 炭 の入 る部分 が筒状 にな る よ うに して使 用 し て きた .現在 で は多 くの場合 ,専用 の卸鉄 用 の炉 を 作 って使 用 され て い る こ とが 多 い 。本実験 で は た た ら製鉄 に よ って得 られ た鉄 (ケ ラ) に , この卸鉄 法 を適周 して炭素 量 の調 整 を行 う こ と と した . 3 . 卑 卸鉄 炉 の作 製
卸鉄 炉 は ,本 実験 で た た ら製鉄 に用 いて きた下段 炉 の 中で 比較 的損 傷 の 少 ない もの を選 び再 利 用 す る こ とに した 。 Fi g。3 に卸鉄 炉体 の構 造 図 を示 す 。炉 体 を設 置 す る基 礎 部 分 の構 造 は たた ら製鉄 の場 合 と 全 く同 じよ うに した 。その上 に炉体 をセ ッ トし,炉 底 部 か ら 6‑7 c m の高 さ まで Ⅴ字型 に木 炭粉 を敷 詰 め 硬 く叩 き締 め た .羽 口は す り鉢状 の炉底 部 に送風 が 直接 吹 き付 け られな い よ うに
,炉体 底 部 か ら 1 0 0 m m の位 置 に挿 入 角 1 50 で取 り付 けた ( 3) . Fi g。4 は 羽 口 の取 り付 け作 業 を示 した もので あ る.
Fi g. 4 S e t t i ngo ft h eTu ye r ei nTa t a r a b u kif ur n a c e .
4. 実験 結 果 お よび考 察 4 . 頂 たた ら製鉄 操 業の 立 ち上 げ
炉体 基 礎 の上 に設 置 した下段 炉 に火 を起 こ した種 火 とな る木 炭 を少量挿 入 した .その後 弱 い送風 を始 め徐 々 に木 炭 を積 み ま して い った .木 炭 が下段 炉 上 面に達 した ら,シール とな る粘 土 を下段 炉 の炉体 上 面 に リング状 に敷 き,中段 炉 を重 ね 上 げ た 。木 炭 の 装 入 を繰 り返 しつつ 中段 炉 の上 面 に達 した ら,先 ほ どと同様 に シ‑ル材 の粘 土 を 中段 炉 上 面 に敷 き,上 段炉 を重 ね上 げ た .さ らに木 炭 の装 入 を繰 り返 し上 段 炉 上 面 まで木 炭 を積 み上 げ た 。そ の後 ,安定 した 木 炭 の燃 焼 が得 られ る まで規則 的 に木 炭 の装 入 を練
り返 し行 い ,ス トックライ ン (炉 頂 部 にお け る木 炭 の表 面位 置 )が 3 0 0 S間で炉 口か ら 1 0 0‑1 5 0 m m 程度 燃焼 降下 す るよ うに風 量 を調 整 した 。 この際重 要 な こ とは
,炉体 が十分 に予熱 され る こ とと,炉体 内に お いて 安定 した木 炭 の燃 焼 が維持 され てい る こ とで あ る。 これが十分 で な けれ ば ,砂 鉄 の装 入 開始後 に 炉体 内 にお いて急激 な温度 の低 下 を招 き,羽 口か ら の送風 量 の調 整 な どに よって再 び炉 内温度 を回復 さ せ る こ とは非 常 に困難 で あ る。 したが って ,立 ち上 げは安定 した製鉄 操 業 を行 う上 で重要 な こ との一つ で あ る 。
4. 2 た た ら製鉄 操 業
立 ち上 げ開始 か ら 1 0. 8 ks 後 に , 炉体 内の羽 口 レベ ル の温度 が 1 4 0 6 K に達 し,安定 したス トックライ ン の定 常 的 な降下 が維 持 され たので ,砂 鉄 と貝殻 粉 お よび木 炭 の装 入 を始 め ,製鉄操 業 を行 った 。1 回 当 りの装 入量 は ,砂鉄 2 0 0 g ,貝殻粉 2 0 g ,木 炭 は 1 k g で あ る 。 この一連 の作 業 を約 3 6 0 S間隔 で 3 0 回繰 り 返 し行 った 。その後 ,砂鉄 と貝殻 粉 お よび木 炭 の装 入 を中止 し,ス トックライ ンが 中段 炉体 の上 面 まで 降下 したの ちに送風 を 中止 した .十分 に炉体 が冷却 す るの を待 って 中段 炉 を取 り外 し下段 炉 の底 部 にあ るケ ラ を取 り出 した .そ の ケ ラの全 体 像 を Fi g。5 に示 した 。砂 鉄 6 k g ,貝殻 粉 6 0 0 g ,木 炭 29. 9 k g を装 入 して , 1 21 7. 6 g のケ ラが得 られ ,その収 率 は 20。 3%
で あ った 。
Fi g . 5 0 v e r vi e wo faKe r ao b t a i n e di nt hi se x p e r ime n t ・
さ らに損傷 の激 しい下段 炉 を新 し く作 り直 して 2
回 目の製鉄操 業 を行 った .操業 手順 は 1 回 目と同様
で あ る .砂 鉄 の総 装 入量 6 k g に対 して , 1 2 0 8. 4 g の
ケ ラが得 られ収 率 は 2 0. 1 % で あ った 。 この結 果 は 1
回 目の操 業 結 果 とほ ぼ 同 じで あ り,本実験 に よ り再
たたら製鉄 と卸鉄法による玉鋼の製造 一創造工房実習 より得 られた二三の知見‑
Ta bl e 2 Che mi c a lc ompos i t i onoft heo bt ai ne dKe r a( i r onbe ar ) . Che mi c a lc ompos i t i on( mas s %)
C Si Mn
PS Mg. . Cu Ni Sn Cr Ti Fe Fi r s t 3. 04 0. 05 0. 01 0. 1 08 0. 085
0.
0000. 006 0. 021
0.00 0 0. 051 0 . 001 Ba l . Se c ond 2 . 43 0. 03 0. 01 0. 1 41 0. 094
0. 0
000. 008 0. 022 0. 000 0. 027 0 . 001 Ba l .
Fi g・6 0pt i c a lpho t omi c r ogr a ph s ho wl ng mi c r o‑
s t mc t ur eo ft heKe r ao bt a i ne d.
現性 のある操業方法 を確 立で きた とい うことがで き る.
4.3ケラの分析 および組織観察
Ta bl e2は 2回実施 した,たた ら製鉄操業 によっ て得 られたケラの分析値 をまとめて表わ したもので ある.C量 を見 ると 1 回 目の操業で得 られたケラの 場合は 3. 04%で ,2回 目では 2. 43% とな っている.
その他の主要元素であ る S i ,P , S 量 を比較 すると, 1回 目 2回 目とも極 めて小さい値 で ,いずれの場合 も高炉製鉄法では得 ることので きない P や S が少な い良質の鉄 が得 られた ことになる.またそれ以外 の 元素について見てみ る と, 1 回 目のケ ラ と 2 回 目の ケラ とでは大 きな差異が見受け られず,かつ値 も極 めて小さい ことがわか る.この ことは C 量 をさ らに 少ないものにで きれば ,本実験 の方法 によるたた ら 製鉄法によって ,不純物が少ない非常に純度 の高 い 鉄が安定的に得 られ ることを示唆 している.
Fi g.6 は 2 回の製鉄操業 によって得 られたケラの 光学顕微鏡 による組織観察結果の一例である.ケ ラ を組織観察で きる大 きさに数個所切 断 し研磨 を行 い, 4%ピク リン酸 アル コール液 を用いて腐食 した. 図 中 で腐食 されずに 白色にな っている部分がセメンタイ
2 3
ト相 ( Fe 3 C)であ る.縞状 ,あ るいは層状 を呈 して いる組織 は フェライ ト相 (αFe) とセメンタイ ト相 ( Fe3 C)が同時 に現れたパー ライ ト相 (αFe+Fe 3 C) となってい る
(8).一般 にあ る一定 の冷却速度 のも と において ,C量が 1 . 7‑4. 3%の範 囲以内でかつ Si 量が 2. 0%以下の場合 は ,その凝固組織 が 白鋳鉄 に なることが Ma urer の組織 図 ( 9) か ら知 られてい る.上 述の分析結果か ら 1 回 目と 2 回 目,両方のケラの分 析値 は , C 量 , Si 量いずれ ともこの範 囲以内にある.
すなわち,組織観察の結果は分析結果 とよ く対応 し てい るとい うことがで きる.
4. 4卸鉄の操業
卸鉄 の立ち上 げは ,たた ら製鉄 の場合 と同 じ手順 で行 い,種火の木炭 を炉の底部に装入 して送風 を開 始 した.その後 ,送風量 を調節 し木炭の燃焼 の度合 いを確認 しなが ら,木炭 を順次積み増 して炉体上面 まで装入 した.卸鉄 においては,たた ら製鉄用 とし て木炭 を 20‑30 mmに割 った際に発生 した, 20 mmよ
りも小さい木炭 を使用 した.
火入れか ら約 3. 6ks 後 , 炉体 中央部の温度が 1 430K に達 しので , あ らか じめ 1 5 mm程度 に切断 して大 きさ を調整 しておいたケラを約 1. 2kg 装入 した. Fi g.7
Fi g・7 Cha r gl ngO ft heKe r ai nOr os hi ga nepr oc e s s .
Ta bl e3 Che mi c alc ompos i t i onoft heo bt ai ne dTa ma ha ga ne.
Che mi c a lc ompos i t i on( ma s s %)
C Si Mn P S Mg Cu Ni Sn Cr Ti Fe
0. 63 0. 04 0. 00 0. 075 0. 048 0 . 000 0. 009 0. 033 0. 001 0. 027 0. 002 Ba l .
Fi g.8 0 v e r v ie w o fa Tb ma h a g a ne o b t a ine
d int he Or o s
hig a nep r o c e s s .
にはケ ラの装 入作業 の様 子 を示 した .その後 ,木 炭 が燃焼 す ることに よってス トックライ ンが降下 して 行 くので ,適宜木 炭 を積 み増 して操 業 を続 けた 。最 初 のケ ラの装入か ら約 1. 8 ks 後残 りのケ ラ約 1。 O k g を装 入 して ,さ らに木 炭 を炉体 上面 まで積 み増 した . この ままの状態 で約 4。 2 ks 間送風 を行 い ,ス トック ライ ンが炉体高 さの約半分程度 にな った時点 で送風 を停 止 して操業 を終 了 した .炉体 を十分 に冷却 した の ち炉体底部 にあ る鉄 を取 り出 した 。
Fi g. 8 は炉体底部 よ り取 り出 した鉄 (玉鋼 )の全 体像 をで あ る.その総 重量 は 20 0 1 . 2 g で あ った .卸 鉄作業で装 入 したケ ラの総重量 は 2 度 のたた ら製鉄 によって得 られたケ ラの総 重量 か ら組織観察お よび 分析 に使 用 した 2 0 0 g を差 し引いた 2 2 4 6。 O g であ る。
したが って卸鉄 に よって約 2 5 0 g の損失が発生 した ことにな るが ,これはケ ラの大部分 を占め る Fe の酸 化 が主な原 因 と推察 され る.
乳5 玉鋼 の分析 および組織観察
卸鉄 に よって得 られ た鉄 の分析結 果 を Ta bl e 3 に 表わ した .一般 に玉鋼 の C 量は 0. 5 ‑1 . 5% といわれ てお り
,本実験 で得 られた鉄 の C 量 は 0。 6 3% であ る ことか ら
,卸鉄 に よってケ ラが脱 炭 されて玉鋼 が作 られ た こ とにな る。また C 以外 の元素 について も,
Fi g.9 0pt i c a lpho t omi c r ogr a phS ho wl ngmi c r o
‑s t r uc t ur eo ft heTa ma ha ga neo bt a i ne d・
Ta bl e 2 の下段 に示 した卸鉄前の分析値 と卸鉄後 の 分析値 を比べ る と,ほ とん ど変化 がな くまた極 めて 小さな値 で良好 な結果が得 られた 。すなわ ち本実験 にお いて ,卸鉄 の炉 内 (火床 )が還元雰囲気ではな く酸化雰 囲気 に維持 され ,脱炭が促進 されたこ とを 示 すものであ る。この ことは ,上述 した卸鉄 による ケ ラの重量損失 の主 な原 因が ,Fe の酸化 であ る とい
うことを裏付 ける結 果にもな ってい る。
玉鋼 の光学顕微鏡組織写真 を Fi g 。9 に示 した 。腐 食 にはケ ラの場合 と同様 に 4% ピク リン酸 アル コ‑
ル液 を使 用 した 。結 晶粒界 が若干腐食 されてい るも の ,ほ とん ど腐食 されずに 白色 にな ってい る部分が フェライ ト相 (αFe)であ る。フェライ ト相 (αFe) の結晶粒界 の所 々に腐食 され黒 く観察 され る組織 が フェライ ト相 (αFe) とセ メ ンタ イ ト相 ( Fe 3 C ) の 混合組 織 であ るパ ー ライ ト相 (αFe+Fe ] C) にな っ てい る。Fi g 。6 に示 したようにたた ら製鉄 によって 得 られ たケ ラの組織 は ,セ メ ンタイ ト相 ( Fe〕 C)が 組織 の大半 を占めていたのに対 し,卸鉄 を施 して得 られ た玉鋼 の場合 は C量が極 めて少ない フェライ ト 相 (αFe)が大部分 の組織 に変化 してい ることを示
してい る. したが って組織観察の結果か らも,本実
験 の卸鉄 に よって C量が少ない良質の玉鋼 を得 るこ
たたら製鉄 と卸鉄法 による玉鋼の製造 ‑創造工房実習 より得 られた二三の知見‑
とがで きた ことがわか る.
5 . ま と め
身近 に手 に入 る砂鉄 (向浜砂鉄 ) と木炭 を原料 に たた ら製鉄実験 を 2 度実施 した .さ らに,たた ら製 鉄炉 を再利用 した炉 を用 いて ,得 られた鉄 (ケ ラ) について卸鉄法 による 2 次精錬 を行 った .以上の こ とか ら次の ことが明 らか とな った .
1. たた ら製鉄 では対面 す る 2 箇所 の羽 口を,お互 い に羽 口の径 に相 当す る分 だけず らして配置 す るこ とによって ,よ り安定 した製鉄操 業 が可能 となった .
2. たた ら製鉄操業 を同一の操業手順 で 2 度行 い ,1
回 目の操業では装入砂鉄 6 k g に対 し 1 2 1 7 . 6 g の ケ ラが得 られ ,同 じ く 2 回 目では砂鉄 6 k g に対 してケ ラが 1 2 0 8 . 4 g 得 られた .その収率はそれ ぞれ 1 回 目が 2 0. 3 % , 2 回 目が 2 0. 1 % で ,再現 性 のあ る製鉄操業 方法 を確 立で きた といえる.
3. ケラの C 量は ,1 回 目が 3. 0 4 %, 2 回 目が 2. 4 3 %
であ った∴またそれ以外 の主要元素であ る S i , P, S 量 は高炉製鉄 法で は得 る こ とが困難 な小 さ い値 とな り,極 めて 良質の鉄 が得 られ た .さ ら にケ ラの分析値 は組織観 察 の結果 と非 常 によ く 対応 した .
4. たた ら製鉄 炉体 を再 利用 した卸鉄 用の炉 を作製 し,ケ ラに卸鉄法 を適用 した .その結果 , Fe が 一部酸化 され た ことでケ ラに約 2 5 0g の損失 が 生 じた ものの , C 量 を 0. 6 3 % まで低下 させ るこ とがで きた .そ して , C以外 の主要元素 S i ,P, S
な どの値 をほ とん ど変動 させ るこ とな く良質 の 玉鋼 を製造す ることがで きた .
謝 辞
本研究 を進 め るにあた り材料工学科 ,伊藤信雄技 官 ,三浦敏秋技官 ,田中春美技官 な らび に事務 部工
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