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両生類の水分代謝について 自然科学鮪研究室 山 崎 芳 夫

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(1)

両生類の水分代謝について

自然科学鮪研究室 山 崎 芳 夫

緒    言

動物にとって,正常の水分平衡を保つことは,生理的にも,生態的にも,極めて大切な ことであるが,それには水分の摂取,貯蔵および排出という機能が関係してくる。かえる においては,一般に口を通して水を飲みこむことはないと言われている故,水分摂取は食 物の消化によって生じた水が消化管壁を通して拡散するか,直接皮膚を通して拡散するか の二つの方法によるものと考えられる。後者による方法は,殆んど機械的に,寧ろ一定の

(1)

割合をもって行なわれているという。

普通の水分環境においては,体重は比較的一定に保たれているところを見ると,このよ うにして拡敬した水分の量とほぼ等二量の水分が,呼吸器官を通じて,或は皮膚からの蒸敬 により,または腎臓によって尿として排出されているわけである。これらのうち・尿とし て排出される量が最も多いと言われている故皮膚を通しての水分の透過量と・腎臓の機能 ひいてはその重量との問に一定の関係があるものと考えられる。この点を明らかにするた めにこの実験を行なったo

材 料  と 方 法

材料としては,トノサマガエルとヤマアカガエルを用いた。前者の方が水中生活の時間 が長いようなので,この生活状態の差による影響を見るためである。実験期間は昭和36年 7月下旬から全年10月下旬までである。出来る限り条件を一定にするため,野外より採集 して来た個体は,2〜3日間硝子製水槽内で飢餓状態に放置したものを用いた。切除した 腎臓は,乾燥による減量を防ぐため,管瓶に入れて秤量した。皮膚を通しての水分の拡散 量は,排泄腔からの排出を防ぐため,下腹部を糸で強く縛った個体を水中に浸した際,水 分の拡散による体重の増加量をもって推定する方法と,切除した皮膚の一部を硝子管(内 径8.7mm)の先端に取りつけ,算内に生理食塩水(NaCl=0.65%, KCI=0.005%, CaCI2二 0.025%,NaHCO 3=0.02%, PH=7.4〜7.5)を入れ,これを水中に入れたときの管内水 柱の上昇量を測る方法とによった。前者のばあいは,10分間ずっかえるを水中に浸漬して 後秤量し,後者のばあいは10分間毎に測った。最初の測定値は誤差が多いと思われるので 省略し,第2回目からの測定値を採用した。その後6回の測定値を基にして1日の拡散量 を算出した。測定はすべて室温で行ない,室温の変化は15°C−31.5°C,水温は14.5°C一

(2)

30°Cであった。切除した皮膚は主に後肢大腿部のそれであるが,背部および腹部の皮膚も 一部のものに用いた。皮膚の面積は,切除したものを方眼紙上は拡げ,転写して測定した

なお,水分拡散に対する神経の調節作用の有無を調べるため,クロロホルムで麻酔した個 体の測定を行なった。

結    果 得られた結果は第1表に示した通りである。

第1表

蛙番号

性

体 重

i9) 腎 重

i9)

賢重×100体重

体表面積

iCm2)  拡散水量

iC.C/時/Cm2) 気 温

i°c)

水 温

i°c)

備  考

5 ♀

33.13 0.20 0.60 59.63 0,041 31.0 29.0 腹皮使用

一一一一

一一

6 ♀

33.46 0.21 0.63 61.00 0,035 31.0 29.5 全 上

一

7 ♀

24.18 0.15 0.62 48.30 0,030 31.5 29.0

8 ♀

24.33 0.16 0.66 48.50 0,030 31.5 30.0

12

♀

26.38 0.22 0.83 55.29 0,026 31.5 29.0

一一一一一一一

13 ♀

25.48 0.16 0.62 50.90 0,035 29.0 28.0

一

15

♀

31.38 0.15 0.48 56.80 0,020 29.0 28.0 背皮使用

16

♀

31.60 0.15 0.47 57.60 0,020 30.0 28.5 全 上

一

⑳ ♀

46.78 0.30 0.64 84.20 0,008 24.5 23.0

一

⑳ ♀

14.31 0.17 1.05 35.75 0,010 24.0 一

23

♀…

14.30 0.17 1.05 36.00 0,010 24.0 23.0

24

♀

14.50 0.15 1.03 36.25 0,008 一

一

一

25

♀

23.05 0.11 0.48 46.10 0,002 15.0 13.2

一

27

♂

16.95 0.15 0.88 42.38 0,003 19.0 18.5

⑳

♂

18.20 0.15 0.90 42.38 0,003 20.0 19.0

30

♂

20.65 0.16 0.78 43.37 0,003 26.0 25.0 ヤマアカ

一 Kエル

31 ♀

25.50 0.20 0.78 48.50 0,004 24.0 23.5 全 上

註:N(L12までは7月, N(L13−Nα16は8月,Nα20−Nα24は9月,Nα25以下は10月における 測定。なお,N(L16までは切除した皮膚, Nα20以下は下腹部結索,⑳⑳⑰は麻酔個体。

第1表から腎臓の重量と体重との関係を見ると,第1図に示したように相当に,個体に よって偏差が見られるが,体重の増加の割合に腎臓の重量は増加していない。即ち体重の 軽、個体は割合に重い腎臓を持っていることになる。次に体表面積と体重との関係を見る

と,第2図に示したように,体重増加の割合に体表面積は増加していない。即ち腎臓のば

(3)

       あいと同様に,小さい個体程割第 ノ図

030 △   合に広い体表面積を持っている

腎o螂 ことになる。但しこのばあいは

重  020

量 飴       る偏差は少ないQ

写ω5)

@       次に皮膚を通しての拡散水量

0/0

△       と腎臓の重量との関係を見ると

005 第3図に示した如くである。

これを見ると拡散水量は個体

!0 20   30   40   5隔0

@  体重(タ)        によって可なりの差異があり・

90

       予期したような結果は得られな 謔嚼}         △    かった。然し,測定した月によ

δ0

って相当の差があり,7月が最

体

喬7・ 大で,皮膚1cm 2から毎時平均

積  60

。盆・) 50  △   △

「幽       急激に減少して0.003ccとなる。

△  △

40 ず       なお,麻酔個体と非麻酔個体

30 !0

20   30   40   50   との水分拡散量を比較して見る 体重ぐ3)         と,第2表および第4図に示し た如く,両者の間に

第 3 図       明瞭な差は認められ

a30

△

腎025

ない。

重

量卿

ハo!5)

△      △     △       麻酔したばあいと非△   会       △  △会  ム     会    △       麻酔のばあいの比較

4/0 △

をしたのが第3表お

405 よび第5図である。

4・2  46 ∠0  A4  ∠6  Z2  26  ヱ0  ヱ4 3、δ  4。2

拡散・kそ(己c/酵/!oo脚り

(4)

第2表 第4図

蛙番号

 時刻

i10月18日)

体重

i9)

蛙番号

 時 刻

i10月19日)

体重

i9)

農150

、、    非麻酔個体

、

15.16 14.50

i・軌5・

14.31

拡散

\一麟個体

15.26 14.60 1  11.00 13.46

蛮010(

b

15.40 14.68 11.15 14.56 ε

\5、

No. No.

/ 、、

24 15.55 14.70

21

11.30 14.62

時

匝

ao5 、

16.15 14.74 11.45 14.64

\

16.30 14.77 12.00 14.67

 、

@ 、 16.45 14.79

i 12115

14.68

1

1

第3表

 40 50

謔T図 ピ

蛙番

時刻

体 重 時 刻 体 重 〃07

『

号

(10月27日) (9) (10月27日) (9)

006 △1    非麻酔

10.07 16.95 】3.00 18.20

拡散   005

、 輯一一一一麻 酔

k

10。17  17.01 13.15 18.27

沓里

(  004

1 9

10.29 17.04 13.30 18.29 )

マ

/ 、

No.

003 、△

27 10.45  17.04 13.45 18.30

時 、

11.00  17.06 14.00 18.30

002 疑、

11.15  17.07 14.15 18.31

ω!

18.32

、     

11.30  17.08

14.30  ヨ ̲!1

!0  20  30 40  50 60(介 左:非麻酔  右:麻酔

腹部,背部および大腿部の皮膚における水分拡散量の差異は,表1に見られるように,

腹部のそれにおいて多く,背部において少ないようであるが,個体による偏差がが大きい        一一

フにかかわらず,測定した個体数が少ないためはっきりしたいことは言えない。

考    察

蛙の水分摂取については,先ず,食物中に含まれている水分,或は栄養素の代謝によっ て生ずる水分が消化管壁を通して拡散されることが考えられるが,実験期間中の剖見によ ると,食物の生なものはこがねむし類で,その量は一個体あたり2−39程度であった。従 って,この方法による水の補給は,食物が燃焼の結果,比較的多量の水を生ずる脂肪のみ からなっていると仮定しても3.29程度で,Adolphのいう,体重の最少5.0%,最大93・0%

平均31%の代謝量に比べて少ない量である。

(5)

実際に胃壁における観察では,少なくとも溶質の濃度差などによって生ずる化学的活

(2)

動の勾配に原因する移動は可なり少ないようである。従って大部分の水は皮膚を通して 拡散して来るものと考えられる。この方法について,AdolphのRana pipiensについての 研究では,排出については調整が行なわれるが擾取についてはこれが行なわれず,さらに

さらされている皮膚の部分によって変化しない。また,温度10QC上昇する毎に2−3倍

(3)

の量に達するという。他方,Huf, E. Gは蛙の皮膚が活発に水やNaClを表側で摂取し,

chorion側で蓄積することを見出し,その量が61−307micromol/時/cm2にも達するこ

とを確めた。

この際彼はCaを除いた0.4%のRi亘ger液を大腿部の皮膚で作った袋に入れ,この袋を 同じRinger液に沈漬して行なったのであるから,積極的に皮膚が吸収したものと考えら れる。本実験においては,7月,8月においては切除した皮膚における観察であり,9月,

10月においては,個体全体を対象として行なったのである故,一概には言えないにしても 後者のばあい,特に10月において拡散水量が著じるしく減少していることから見て調整が 行なわれていないとは考え難い。

次に,この調整が神経系によって行なわれているものとすると,当然麻酔個体と非麻酔 個体,或は同一個体の麻酔時と非麻酔時に吸水量の差が現われて来るものと期待される。

観察の結果は,第4図,第5図に示すように,あまり差が出て来ない。結極且uf, E.G 達の実験から推察されるように,皮膚そのものに調整作用があるものと考えれるっ

このようにして,体内に入った水分は,…部は皮膚内に貯えられるものと考えられる。

(5)

このことは,Salamanderを乾燥した時の水分喪失の実験から推察できる。従って,切り 取つた皮膚における拡散水量の実測値は実質量より少なくなる筈であるが,本実験におい

ては,使用した皮膚が小片のため確認できなかった。なお,下腹部結索による体重増加か ら尿量を推定するばあいにも,この点を考慮する必要があり,また,この際は,時間と共 に水分の飽和度が増大する故,拡散水量が漸減することも考慮しなりればならない。此等 の点については後日の研究に期したい。

次に,水分の排出については,皮膚からの蒸散呼吸気や糞による喪失もあるが,大部分 は尿として排出されるものと考えられる。このように,腎臓は水分の調節器官として重 要なものであることは古くから知られており,この器官の摘出によって調節不能となり,

(6)

ために腹水個体を生ずることは,この事実を裏書きしている。

表1によると,計算上,一日に体重の8.5−177.1%の水分の拡散があり,これが腎臓に よって排出されるとすると,腎臓の負担は相当大きいものであり,従って機能的に或は形 態的に可なりの発達を示しているものと考えられる。然るに,腎臓の体重に対する比を見

(6)

(7)

ると0.48−1.05%であって,我々人間のばあいの0・3%に比し1・5−3・5倍にすぎない。然 るに,人間の尿量は1日0.9−1.1立位であって体重の0.02%にすぎない。このことは・蛙 においては,排出する尿量から考えて,腎臓が,その機能的発達とこうことを考慮にいれ たにしても,割合に小さ過ぎるということになる。別の表現を借りて言うなら,蛙は一日 中水中にあって,毎時0.002−0.041ccの水分を1cm2の皮膚から吸収しているのでなく・

相当の時間を地上生活に費しているものと考えざるを得ない。

要      約

(1),蛙の皮膚を通しての水分の拡散量と腎臓の重量との関係を調べた。

②,拡散水量は皮膚1cm2あたり,毎時0.002−0.941ccに達し,これは体重の8.5−117.1%に当り

相当に多い。

(3),従って腎臓も割合大きく,体重の0.48−1.05%に達する。

㈲,尿量および腎臓の重量を人間のそれと比較したばあい,腎臓が割合に小さ過ぎることになる。

このことは,蛙は相当の時間地上生活を行なっているものと推察される。

文      献

(1),Adalph;Rogers;Te涛book of comparative physiology1938より引用。

②,Du・bi・, R2。 H・d・y, R, and S・1・m・n, A・K・・W・t・・f1・w th・・㎎h f・・99・・t・i・muc°sa 1955,J. Gen. physio1.39・535・

(3),Huf,E G叩and Wills, J. R, The relationship of sodium uptake・Potassium rej㏄tion and skin potential in isolated frog skins。195a J・Ge】玉physiol・36・473

ω,−and Agrichi, M. R, El㏄trolyte distribution and active solt uptake in frog skin銭1955・

J.Gen. physioL 38.867.

⑤,K。、ukL Y., A・Ep・・im・nt・n th・w・ter b・1an㏄i・S・1・mand・L 193録F・qS・L H・kk・id°

JmrL Uni統SVL 4・

(6),藤原正武;前腎摘出によるヒキガエルの腹水姻斜。1952.動雑.61.225。

(7),森於菟其他;解剖学。

@     .

●

参照

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