高校保健教育の実態及び保健教育内容の習得状況に関する調査研究 一大学一・二年生を対象として行った質問紙調査結果から一
綱 島 誠*
(1989年9月9日受理)
Actual Conditions of Health Education in High Schoo1
Obtained from Questionnaire to Freshmen and Sophomores
Makoto TsuNAsHIMA
(Received September 9,1989)
は じ め に
高校保健教育の目標は, 「心身の機能,健康と環境,集団の生活における健康について理解を深
めさせ,健康の保持増進をはかり,集団の健康を高めることに寄与する能力と態度を育てる」と学 習指導要領にも記されている。昭和60年度の社会保障給付費のうち医療給付費がおよそ4割も占め ていることを考慮すれば,保健教育の成果は個人の健康で豊かな生活に寄与するだけでなく,社会
全体の経済的発展にも寄与するものといえよう。また,現代社会では特に若年層における人工妊娠中絶,喫煙,薬物乱用,クラミジア感染症その 他の性行為感染症等に関係した健康問題,成人病の予防,個人にできる癌の予防対策等も重要な問 題となっている。こうしたことから,中学,高校における保健教育は,質は違っても大学入試のた
めの教科同様,またはそれ以上の重点教科として位置づけるべきであろう。高校における保健教育は,主として保健体育でなされているが,理科1,生物,家庭一般の中に も保健関係の内容がみられる。家庭一般以外に,特定の高校では,家庭科教育の中で,食物,保育 等の教科書を使用しているところもある。また,性教育,覚醒剤,喫煙教育等に関する教育は,生 活指導または学級指導等の一環としてなされる場合もあり,高校における保健教育は,形式的には
十分になされているようにみえる。しかし,保健教育の実態は,時間割通りに授業が行われず,「雨降り保健」と言われたり,他の教科に使われたりする等,保健教育が十分に行われていないことも
あると言われている。今回,著者は,よりよい保健教育の内容と教育方法を考えるための参考にするため,主に入学直 後の大学生を対象にした質問紙調査により,現在の我が国の高校における保健教育の実態を把握し
ようと試みた。
*茨城大学教育学部教育保健講座.
対 象 と 方法 調査方法は,質問紙調査によるものとした。
質問紙作成にあたっては,現在使用されている保健体育の教科書8冊,生物の教科書4冊,家庭一 般の教科書1冊の内容の検討や,外国の保健教育及び関連教科の教育課程Dと日本の教育課程2)と
の比較などを行い,それらを参考にして質問紙を作成した。1)調査対象
今回調査対象とされたのは,関東地方の二国立大学の一年次学生278名,二年次学生146名(一大
学のみ),計424名であった。2>質問の内容
質問項目は,性別,出身県名,出身高校名,卒業年度,校種,学校規模,生物の選択の有無,授 業時間数,授業実施学年,授業間隔,教科書の出版社,授業形式,先生の性別及び推定年齢,学習 状況(ある事項について高校で学習したかどうか,何の授業で学習したか…24項目),記憶されて いる保健の知識を問う項目(ある事項について正解を選択または自由記述させる…19項目)の94項
目であった。
3)実施方法
できるだけ正確な回答を得るため,講義の時間を利用し,各質問項目について逐次説明しながら
記入してもらった。調査結果及び考察
1)性別
対象者の性別は,男子162名(38.2%),女子261名(61.1%),無回答1名(0.2%)であった。
2)出身県
出身県は日本国内30都道府県,国外1であった。そのうち最も多いのは茨城県の178名(42.0%〉
であり,次いで群馬県115名(27.1%),栃木県23名(5.4%)であり,この上位3県で全体の74.5
%を占めていた。
3)出身高校
出身高校の総数は146校であり,そのうち公立高校出身者が393名(92.7%),私立高校出身者28
名(6.6%),無回答3名(0.7%)であった。高校の種別にみると普通高校出身者が423名(99.8%)で,ほとんどが普通高校出身であった。
共学校・男子校・女子校の別では,共学校出身者188名(44.3%),男子校出身者61名(4.4%),
女子校出身者175名(41.3%)となっていた。
4)高校の理科での生物の選択の有無
生物を選択した者254名(59.9%),生物を選択しない者170名(40.1%)であった。
5)保健の授業の実施学年,時間割との関係などについて
保健の授業が1年生においてのみ行われたものは89名(21.0%),1・2年生において行われた ものは307名(72.4%)であり調査対象者の約7割が1・2年生の時に保健の授業を受けていたこ
とがわかる。保健の授業がきちんと時間割に組み込まれていたかどうかについては,時間割に保健の授業があ った者388名(91.5%),体育の時間に雨が降ったときのみ授業が行われた者8名(1.9%),ある
時期に集中的に授業が行われた者19名(4.5%),保健の授業がほとんど行われなかった者7名(1.7%〉となっていた。この結果からわかるように,9割以上の高校において保健の授業は時間割に組 み込まれ,定期的に行われている。しかし,体育の時間に雨が降ったときのみ保健の授業が行われ
ていた高校や,保健の授業がほとんど行われていなかった高校も3.6%と少数ではあるがあることがわかる。
また,時間割に保健の授業があった者のうち,約80%が毎週保健の授業が行われていたと答えて
いた。
年間の授業数では16〜20回の者128名(30.2%),その他(21回以上)84名(19。8%),無回答 140名(33.3%)などとなっていた。
6)保健の授業の実施形態
保健の授業がほとんど先生による講義であったと答えたもの者380名(89.6%),先生の講義と自
習が半々くらいであった者34名(8.0%)であり,保健の授業の9割近くは講義の形で授業が行わ
れていた。7)保健の教科書の終了状況 9。4 48.1 40.1
教科書の終了状況は図1に示す。教 :::二:二1::二:二1二
科書の内容がすべて終わった,あるい ::::°1::二::
曹...: 二. ・ ・ ■ ■ ● ・ ● ●
はほとんど終わったと答えた者を合わ
せると244名(57.5%)となり,およそ 0 50 100彩
5割の者は教科書の内容のほとんどに
か終らなかったというように,保健に 圏ほとんど終った 口その他 ついては高校ではあまり良く教わらな
図1 教科書の終了状況かった者も4割に達している。
一
8)保健の授業の他教科へ 表1教師の担当学年.性別と年齢
の転用状況 単位:人
保健の時間にはその授業が
行われていた者がほぼ7割を
ち年齢w年・
20〜30歳 31〜40歳41〜50歳 ●
51〜60歳
占めるが,他教科の授業に転 1年・男
55 117 115 24用されたことがある者は合わ 1年・女
7 33 27 27 せて113名(26.6%)もいるこ2年・男
24 105 116 272年・女 8 18 18 3
とがわかった。この中で特に,
3年・男 1 6 5 2
実質的に保健の授業は行われ
3年・女1
20
oなかったという者も6名(1.7
%)と少数ではあるがいると
いうことは注目に値すると思
われる。9)教師の性別・年齢
教師の性別・年齢は,表1に示す通りである。
10)保健内容の学習状況
高校における保健教育は,第一章「心身の機能」,第二章「健康と環境」,第三章「職業と健康」,
第四章「集団の健康」という四つの章から構成されている。これらがどのくらいまんべんなく教え られているかを,各章ごとにその内容に対応する質問項目(24項目)をあげて聞いてみた。その結 果は図2に示した。24の質問項目の8割以上について,かなりの割合の者が学習したと答えており,
保健の内容のほぼ全般について学習していると思われる。この中で割合が低かった項目は,「アル
コールの害」 (45.5%),「シンナー」(29.7%), 「覚醒剤」 (25.9%)であり,特に「シンナー」と「覚醒剤」については大多数の高校では教えられていないことがわかった。
また,その項目を何の教科で学習したかを複数回答で答えてもらったのが,表2である。「肺呼 吸のしくみ」,「心臓のしくみ」,「汚染物質の生物濃縮」,「ホルモンの働き」などは生物でも 教わっている場合が多く,「避妊」や「母子保健」などは家庭科でも一部教わっていることがわか
る。
学習状況を男女別にみてみると,男女ともほぼ同じ様な傾向がみられたが, 「母子保健」に関し
ては,女子は80%以上が学習しているのに対し,男子は20%台であり,かなりの差がみられた。女 子は,家庭科で学習した者も多いので,このような結果になったと思われる。
高校種別では,女子校出身者が他の者よりも全項目にわたって学習率が高く, 「たばこの害」,
「アルコールの害」,「シンナー」,「覚醒剤」の項目以外は,すべて60%以上の学習率であった。
その中でも,特に「公害による健康被害」,「汚染物質の生物濃縮」, 「職業病」,「職場の安全 衛生管理」, 「成人病」の項目は,他の者と比較して10〜20%位高率であった。男子校出身者が他
の者よりも学習率が高かった項目は「たばこの害」,「アルコールの害」,であり,10〜15%高率
であった。逆に「肺呼吸の仕組み」, 「母子保健」は20〜30%低率であった。%P00 90 学
80 習 70 60 率
50
40 30 20 10
0
肺 心
脳 性 ホ適
心 た ア シ 覚公 汚職 職 リ 避 人 性 母 死伝成 保呼 臓 の 器 ル 応 身 ばル ン 醒害 染業 場 ハ妊工病 子 亡染 人 健
吸 の 構 官 モ 機 の こ コ ナ 剤 に 物病 の ビ 妊 保 率病 病 ・ の し 造 ン 制 相 の l i よ 質 安 リ 娠 健 の 医し く の 関害ル る の 全 テ 中 予 療
く み 働 の 健 生 衛 1 絶 防 制 み き 害 康 物 生 シ 、 度被 濃 管 ヨ 害 縮 理 ン
図2 保健教育の内容の各項目について学習した割合
表2 保健教育の内容について学習した教科
単位:人(%)(n=424;複数回答)
教科
?レ 保健 生物
理科1
家庭科 その他 不明肺呼吸のしくみ 157(37.0) 209(49.3) 84(19.8) 4(0.9) 5(1.2) 87(20,5)
心臓のしくみ 179(42.2) 196(46.2) 79(18.6) 0(0.0) 2(0.5) 84(19.8)
脳の造 27464.6>
20247.6)
22(5.2) 2(0.5) 1(0.2) 43(10.1)性器官 383(90.3) 66(15.6) 11(2.6) 22(5.2) 0(0.0> 27(6.4)
ホルモンの働き 258(60.8) 236(55.7) 13(3.D 8(1.9) 2(0.5> 46(10.8)
適応機制 284(67.0)
7818.4)
6(1.4) 5(1.2) 2(0.5) 94(22.2)心身の相関 303(71.5) 21(5.0) 0(0.0)
40(2.4>
OO.0) 107(25.2)たばこの害 229(54.0) 4(0.9) 0(0.0) 29(6.8)
28(6.6
161(38.0)アルコールの害 171(40.3) 8(1.9) 1(0.2) 21(5.0> 7(1.7) 228(53.8)
シンナー 116(27.) 0〈0.0) 1(0.2) 4(0.9) 10(2.4) 295(69.6)
覚醒剤 102(24.1) 1(0.2) 1(0.2) 8(1.9) 8(1.9) 310(73.1)
公害による健康被害 295(69.6) 21(5.0) 8(1.9) 16(3.8) 31(7.3) 96(22.6)
汚 質の生物濃縮
163(38。4) 177(41.7) 70(16.5)21(5.0
9(2.1) 85(20.0)職業病 309(72.9) 3(0.7) 2(0.5) 10(2.4) 18(4.2) 92(21.7)
職場の安全衛生管理 241(56.8) 0(0.0> 0(0.0) 11(2.6) 13(3.1) 165(38.9)
リハビリテーション 236(55.7) 0(0.0) 0(0.0) 2(0.5) 4(0.9) 183(43.2)
避妊 350(87.5) 2(0.5) 0(0.0>
43(10.D
2(0.5) 60(14.2)人工妊中絶 281(66.3) 1(0.2) 0(0.0) 48(11.3) 7(L7)
11727.6)
性病 292(68.9) 5(1.2) 1(0.2) 27(6.4) 11(2.6) 111(26.2)
母子保健 173(40.8) 0(0.0) 0(0.0) 95(22.4) 4(0.9) 187(44.1)
死亡率 302(7L2) 33(7.8) 1(0.2) 18(4.2) 25(5.9) 90(21.2)
伝染病の予防 227(53.5) 2(0.5) 1(0.2) 12(2.8) 6(1.4) 190(44.8)
成人病 278(65.6 1(0.2) 0(0.0) 41(9.7) 2(0.5) 128(30.2)
保健・医療制度 216(50.9) 0(0.0) 0(0.0) 15(3.5) 18(4.2) 190(44.8)
また,教師と学習状況の関係を見てみると,女性及び高年齢教師の場合は,全領域にわたって学 習している割合が高かった。若い教師,男性教師の場合は,保健よりも体育実技の方に力をいれる 傾向があるのではないだろうか。項目ごとにみていくと,「母子保健」については,31〜40歳の女 性教師は80%台であり,他の教師が大体50%台であるのに対し,非常に高い学習率であった。「避 妊法」,「人工妊娠中絶」,ら性病」,「母子保健」については,20〜30歳の男性教師に比べて10
一20%程度学習率が低かった。保健の授業の時間割との関係と学習状況について見ると,時間割に保健の授業があった者とある 時期に集中的に行われた(一時期集中型)者とは,ほとんど同じ傾向であり,学習項目の中で特に
学習率の高い項目は,「脳の構造」, 「性器官」, 「ホルモンの働き」, 「汚染物質の生物濃縮」,「職業病」,「避妊法」,「死亡率」であった。体育の時間に雨が降ったときに行われた者(雨降 り保健)は,「性器官」,「汚染物質の生物濃縮」,「避妊法」,「性病」については,高い学習 率を示していたがその他の項目については,他の者に比べ低い学習率となっていた。特に,教科
「
書の後半部分の項目については,明らかに低率を示していた。このことから,雨降り保健では授業 時間が足りず,教科書の前半と大切だと思われる部分しか学習していないのではないかと思われる。
11)保健内容の習得状況
高校の保健教育内容がどのくらい習得されているか知るために,いくつかの質問に答えてもらっ た。その結果は図3に示す。正解率からみると,高校の保健で教わる内容については,全体的にあ まり記憶されていないと言えるだろう。比較的正解率が高かったのは,高校保健の分野でいえば第
100% , 90
正 80 解 70 率 60 50 40 30 20
10
0
心 脳 運 大 大 成
同
性 性 排 妊出 出
中 中 水イ
四 平 臓 の 動 脳 脳 人 一 周 周 卵 娠 産 生 絶 絶 俣 タ 日 均 の 働 中 辺 辺 の 化 期 期 の の 周 体 の の 病 イ 市 寿 血 き 枢 縁 縁 正 に に 時 時 期 重 知 知 イ 喘 命 液 の 系 系 常 関 関 期 期 識 識 タ 息 循 あ の の 血 す す 1 2 イ 環 る 知 知 圧 る る 病領 識 識 ホ ホ 域 1 2 ル ル
モ モ
Yぢ
図3 保健内容の習得状況
二章「健康と環境」に相当する水俣病・イタイイタイ病・四日市喘息についての質問で,それぞれ,
89.4%,83.0%,63.7%であった。これは,社会科等でも学習する内容であるため正解率が高くな ったものと思われる。その他の分野についてはあまり良くなく,特に,第一章「心身の機能と健康」
に相当する部分は正解率が低くなっており,自分たちの身体に関する知識が身についていないとい うことがいえる。また,出産周期のように,ごく常識的と思われることについても知らないものが
多いという結果が出た。男女別にみると,習得状況に差がみられたのは「性病」と「避妊法」についてであった。「性病」
に関して,梅毒については男女
とも同程度であったが,淋病に表3 高校保健内容の学習状況と習得状況
ついては男子の方が30%位知っ
学習項目 学習した者 学習しない者 ているものの割合が高かった。 ・習得項目
礁 碑
「避妊法」に関しては,荻野式 心臓のしくみ 329人 34人 方法,基礎体温法,コンドーム, ・心臓の血液循環
45.6% 26.5%
・正常血圧
70.5%
441%ペッサリー,子宮内リング,錠
脳の構造 376人 14人
剤,経口避妊薬(ピル)のうち, ・脳の働き
27.6% 21.4%
荻野式方法と基礎体温法につい
・辺縁系の知識34.8% 21.4%
ては,女子の方が10〜25%高い
適応機制 326人 17人・同一化 &9%
5.9%
知識を持っていたが,それ以外
ホルモンの働き 371人 15人
の者については,男子の方が5
・黄体ホルモン 7&2%33.3%
〜20%位高い知識を持っていた。 ・卵胞ホルモン
62.0% 33.3%
高校種別では,男子校出身者
性器官 395人 10人は,共学校・女子校出身者に比
・排卵の時期E妊娠の時期
27.3%
R3.7%
20.6%
T0.5%
べ,「性周期に関するホルモン」, 母子保健 236人 94人
「妊娠しやすい時期」, 「出産 ・出産周期
43.6% 37.2%
周期」,「出生体重」など女性
・出生体重82.6% 74.5%
の性周期や,妊娠・母子保健等 ノ関する知識が10〜20%低かっ
人工妊娠中絶
@・許可
@・流産しやすい
302人
@ 37.1%
@ 84.4%
67人
@45.4%
@71.6%
た。しかし,「避妊法」につい
公害 327人 40人ての知識は,男子校出身者の方
・水俣病90.2% 90.0%
が10〜20%位高く,すべての避
・イタイイタイ病84.7% 82.5%
・四日市喘息
62.7% 62.5%
妊法について半数以上の者が回
死亡率 337人 22人
答していた。 ・1位
61.1% 50.0%
・2位 17.8% 31.8%
12)項目の学習状況と習得状
・3位 1&4%13.6%
況との関係 醐 ・病名 296人
@ 9λ8%
45人
@68.7%
項目ごとの正解率を,その項
性病 309人 52人 目を含む部分を学習したか,し・梅毒 65.0% 40.4%
ないかに分けて示したのが表3 ・淋病 43.0% 27.0
である。ほとんどの項目については,その項目を含む部分を学習した者の正解率の方が,学習して いない者に比べて高率であった。このことは一応高校での保健学習の効果と考えられる。しかし,
正解率自体についてみれば必ずしも良いとは言えず,学習しているにもかかわらず正解率が50%以
下の項目も多く,あまり学習の効果があがっていないとも言えるだろう。生物の選択の有無と記憶している知識との関係を見ると, 「心臓の血液循環」と「性周期に関す
るホルモン」については,生物を選択しているものの方が,正解率が20%位高かった。これは,生 物でも,身体のしくみやホルモンを学習していることによるものと考えられる。このように,生物
など他の教科で学習する項目はそれだけ習得率が高くなることが考えられる。また,「水俣病」,「イタイイタイ病」などのように,他の教科でも学習し,日常的にもその情 報に接する機会の多い項目では特に正解率が高く,なおかつ学習した者としない者との差は見られ
なかった。ま と め
1)保健授業の実施状況
①保健の授業が時間割に組み込まれていた学校は全体の9割以上であり,ほとんどの学校におい
て正規に定められていた。②保健の授業回数は,1・2年生で学習している者が最も多く,年間授業数としては16〜20回行 われた学校が最も多かった。
③教科書の終了状況については,教科書の内容の一部しか学習しなかった者が4割に達していた。
「雨降り保健」と「一時期集中型」は,時間割に正規に組み込まれていた形態に比べて教科書
の終了状況が悪かった。④保健の授業の他の教科への転用状況は,約3割の者が転用されたことがあると答えており,こ の中には,実質的に保健の授業は行われなかった者も少数ながら含まれていた。
2)各分野における学習状況
① 「アルコールの害」,「シンナー」,「覚醒剤」については,学習した者は3割弱しかおらず,
他の項目に比べて特に割合が低くなっていた。
②学習した教科で,「肺呼吸のしくみ」,「心臓のしくみ」,「汚染物質の生物濃縮」の3項目
については,保健より生物で学習している割合が高かった。③ 「母子保健」は,女子の学習した者の割合に対して男子の割合は非常に低かった。逆に避妊法
の知識は,女子よりも男子の方が知識が高くなっていた。④女子校は,「たばこの害」,「アルコールの害」,「シンナー」,「覚醒剤」を除いた項目に
ついては,共学校・男子校に比べて良く学習していた。⑤男子校は,「たばこの害」,「アルコールの害」,「避妊法」の項目の学習率については良い
が, 「肺呼吸のしくみ」と「母子保健」は悪くなっていた。⑥31−40歳台の女性教師は,他の教師よりも「母子保健」について良く教えていた。
⑦20〜30歳台の男性教師は,「避妊法」,「人工妊娠中絶」,「性病」,「母子保健」について
教えている割合が低かった。3)項目の学習状態とその習得状況
① ほとんどの項目において,やはり学習した者の方が,その他の者に比べて保健についての知識
が高かった。②学習したとはいえ,その正解率は,全体的に低いものであった。
③水俣病イタイイタイ病,四日市喘息の原因物質や平均寿命等の一般的な項目については,あ まり差がみられず,共に高い知識を持っていた。
④ 「心臓の血液循環」と「性周期に関するホルモン」は,生物を選択している者の方が選択して
いない者よりも正解率が高かった。注
1)教科書研究センター編『教育課程の国際比較・理科編』(ぎょうせい,1984),教科書研究センター編『教
育課程の国際比較・総論編』 (ぎょうせい,1984).
2)文部省『高等学校学習指導要領解説・保健体育編』(一橋出版,1979),文部省『高等学校学習指導要領解 説・理科編』(実教出版,1979),文部省『高等学校学習指導要領解説・家庭科編』 (実教出版,1979),