平成 2 0 年度助成研究実施報告書
研 究 題 目 三陸地方 の郷 土食 .行事食 の再発見 と、伝承の担い手育成‑ の提案 研究者 ( 所属 . 職) 菅原 悦子 ( 岩手大学教育学部 .教授)
研 究 者 連 絡 先 電話 :0 1 9 ‑ 6 2 卜66 04 FA X :0 1 9‑ 6 2 1 ‑6604 E メール :ets ukos @i wate ‑u.ac. jp
URL : 研 究 目 的
本研 究 は、三陸地方 に現在 も伝承 されてい る特有 の郷 土食や行事食 に関 して、用い られ る全 材 、調理方法、伝統的な食べ方や行事 とのかかわ りを調査 し、 さらに伝承 の背景 を明 らかにす る○ また、 これ ら郷 土食や行事食 を次世代 に引き継 ぐこ との意義や効果 を考察 し、今後 の昼丞 の仕組みや担い手の育成 について提案す ることを 目的 とす るo
研究結果の概要
1 背景及び課題 .ニーズ等
三陸地域 には、多彩 で独特 な食材や郷土食 .行事食 があるo これ ら食材 は三陸の風土が も た らした 自然 の恵みであ り、その恵みにこの地域 に住む多 く人々の生活 の知恵や工夫が加 え られ、郷土食や行事食 として食べ続 け られてい る と考 える○ しか しなが ら、これ らの食材や 料理 は生産者や調理者 の高齢化や、食生活 の画一化 によってその生産や消費 は先細 りし、料 理 な どが消失 して しま う恐れがある○私たちには これ らの優れた有形無形 の食文化 を次の世 代 に引き継 ぐ責任 がある 02006 年 に、私 が代表 を してい る岩手食文化研究会では 「 岩手 に残 したい食材 30 選」 を編集 したo その編集 の際、本誌 には盛 り込 めない多数 の食材や料理 が 岩手 には存在 してお り、一方 でその伝承 は危機 的な状況 にあることも実感 した○
一方、国や県では食育推進計画 を策定 し、子 どもたちを中心 に、各 ライ フステー ジに応 じ て食 の大切 さの理解 を深 める食青 を推進 しよ うとしてい るo食青 には多様 な内容 が盛 り込ま れてい るが、地域 の食文化 の伝承 に関す る内容 もあるo これ には、地産地消 による経済的な 効果‑の期待 に留ま らない、 「 食 と生命 」 に関す る理解‑ と発展す る可能性 があ り、注 目さ れてい るo
本研究では、第‑ に三陸地方 に現在 も伝承 されてい る特有 の郷土食や行事食 を調査 し、記 録 として残す ことを 目的 とす る○一方、 これ らの食文化 を伝 える担い手 を至急 、育成 しない と伝承 が難 しくなってい くと考 え られ る○ そ こで、第二の 目的 として今後の伝承 の仕組み に ついて考察す ることであるo
2 研究の実施 内容
本調査では、三陸地方 に現在 も伝承 されてい る特有 の郷 土食や行事食 の実施状況 について、
三陸で活躍 してい る 「 食 の匠」や食生活改善推進員 を主な対象 として実施 したo比較 のため に全県 の食生活改善推進員 の支部長等 中心的な役割 を果 た してい る人た ちに も同様 の調査 を 実施 したo調査 内容 は、年 間を通 じて、地域 に伝承 され てい る郷 土食や行事食 について、用 い られ る食材や調理方法、伝統的な食べ方や行事 とのかかわ りについてであ り、郵送 による ア ンケー ト調査 を実施 したo さらに、 これ をもとに、特 に特色 のある郷 土食や行事食 につい て、実際に三陸の久慈、宮古、大船渡、陸前高 田を訪 問 し、地域で活躍す る食 の匠の聞 き取 り調査 を行 ったo また、食 生活改善推進員 を主な対象 とし、同 じア ンケー トで、伝承活動等
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研究成果 は添付 した資料 に示す。
資料 1 :食生活改善推進員 の郷土食 ・行事食 の伝承状況 ( 食生活改善推進員‑のアンケー ト調 査結果)
資料 2: 食 の匠の郷土食 ・行事食 を伴 う年 間行事 の実施状況 ( 食 の匠‑の聞き取 り調査一普代 村 の A さんの郷土食 ・行事食 を伴 う年 間行事 の実施状況)
資料 3 ‑1 :食 の匠の伝 えたい郷土食 ・行事食 と年 間行事 の実施状況一 聞き取 り調査 2 (田老、
B さん)‑ 「くろ昆布 と大豆の煮物」
資料 3 ‑ 2 :食 の匠の伝 えたい郷土食 ・行事食 と年 間行事 の実施状況一 聞き取 り調査 3 ( 山田、
Cさん)‑ 「 けんちん汁、 くるみばっ と」
資料 3 ‑ 3 :食 の匠の伝 えたい郷土食 ・行事食 と年 間行事の実施状況一 聞き取 り調査 3 ( 三陸吉 浜 、D さん)‑ 「どん こののぼ り焼 き 」
資料 4: 食生活改善推進員‑の郷土料理 の伝承活動 の現状 と課題 に関す るア ンケー ト結果及び 三陸地域 の特徴 について
3 考 察 し
( ∋ 岩 手県では、内閣府 の調査で例示 された よ うな一般 的な行事 は頻繁 に行 われ てい ること がわかった。 しか し、『岩手の食事』で示 されてい る行事 は、ほ とん ど実施 されていない。
それ に伴 い、郷土食 ・行事食 も食生活 の中に取 り入れ られ る機会がな くなってい る と考 え られ る。 これ らの行事の実施率には 70 歳代前後 で大 きな差があることが判 明 し、今後 70
‑80 歳代が伝承 してい る行事や行事食 ・郷土食 を早急 に、計画的に調査す ることが、岩手 県 の郷土食 を伝承す る上で重要である と考 え られ る。 また、今 回聞き取 りを実施 できなか った三陸以外 の地域 の調査 も必要である。
② 食生活改善推進員 は、郷土食 の伝承活動 に対 して も向上心が高いので、郷土食 に関す る 学習 の機会増やす とともに、食改員 同士の世代 を超 えた交流や食 の匠 との交流 を進 めるこ とも重要である。 さらに、それ ぞれ の食 改員 が専門的に取 り組む分野や得意 な分野 をもつ ことで、 よ りイ キイ キ と活動できる と考 え られ る。
③ 三陸地域 の 「 食 の匠」‑の聞 き取 り調査 では、ア ンケー ト調査 よ りも詳細 に行事 の由来 や郷土食 の作 り方 を知 ることができ、さらに、伝 えたい郷土料理 も記録す ることができた。
これ ら聞き取 り調査 の経験か ら、郷土食 に対 して、高い見識 と熱い想 い をもった人 との交 流 が、郷 土食 ・行事食 の伝承 には特 に、重要である と実感 した。食 改員や食 の匠 と、郷土 食 ・行事食 の次の担い手 とな る若 い世代や子 どもたちの交流 が伝承意欲 を高 めるために重 要で、今後 のその機会 の増加 が期待 され る。
研究成果の活用可能性 と期待 され る効果
本研 究の主 な 目的は、郷土食 ・行事食 を再発見 し、記録 として残す ことであった。成果 は資 料 2‑3にま とめた。今後、学校や地域での食青の教材 として、実際に活用 できるよ うに再構成 したい と考 えてい る。 また、地域 での郷土食や行事食 を伝 える担い手 としては高校生 の成長 を 期待 してい るので、高校 の家庭科教師で構成 されてい る研 究会‑教材 としての活用 を働 きかけ る。特 に職業学科 を持っ高校‑ は積極的 に働 きかけたい。 また、興味 をもった高校生 には、 こ れ らをベースに し、彼 らのアイデアを生か した特産食 品の開発 な どに挑戦 して も らえるよ うに、
高校生や指導す る教師‑ もア ドバイスを していきたい。
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さらに、調査対象 として、 ご協力 をいただいた食生活改善推進員‑ も普及 させ たい。彼女 ら が この よ うな食育活動 を行 う際の資料不足がアンケー ト結果か らも明 らかになってい る。また、
現在活用 されてい る多 くの資料 は 1 0 年以上 も前の ものであることが、本調査か らも判 明 した。
今 の時代 に合 った内容 にす るこ とによって、活用 しやすい よ うに検討 を重ねたい。 また、観 光 で三陸を訪れた人々に対 して も、再発見 されたおい しい郷 土食 ・行事食 を提供す る と同時に、
その伝承 の背景 も理解 して も らえるよ うな資料 としての整備 を したい。 そのた めに、本成果 に 興味 を持 った飲食店や産直、宿泊施設 な ど、観光産業 にかかわる方 々‑の普及 も今後、考 えて い きたい。産直や、宿泊施設 での新 しい郷 土料理提供 のための資料や、調理実習 を とりいれた 体験型学習の教材 として も活用 できるよ うに したい と考 えてい る。
家庭科 の教 師は、郷 土食 ・行事食 を伝 える意義 を、1 .地域理解 、地域 の生活文化 の理解 、2.
食や命 を大切 に思 う心の育成 ( 食倫理教育) 、3. もったいない と思 う心の育成 ( 環境教育) 、4.
食 の安全 の確保 、5. 地域 の農林水産物 の活用 ( 地産地消) 、6. 栄養 ・健康面の向上、7.共食 、 食 を通 じた コ ミュニケーシ ョンの向上、な ど多様 である と考 えてい る。本調査でま とめ られ た 資料 を用い、郷土食 ・行事食 を伝 える活動 が展 開 され ることによって、伝 える地域 の人たちも、
伝 え られ る子 どもたちも確実 に元気 にな り、地域 が活性化す る。
特 に、地域社会では、地産地消による地域経済の振興や、観光産業‑の波及効果 も期待 され、
三陸地域全体が活性化す る。
また、21 年度以降は、三陸での本調査 の成果 を足掛 か りに、同様 の調査 を岩手県内各地‑ と 拡大 し、岩手県内全体の郷 土食や行事食 の再発見 に発展 させ たい と考 えてい る。上記普及活動 にかかわ る経費 も含 め、岩手大学の学長裁量経費等 にも応募 したい と考 えてい る。
三陸地域への波及効果
三陸地域 には、資料 3に示 した よ うに、まだ一般 的には知 られていない、郷土食や行事食 の あるこ とがわかった。 また、三陸地域では、郷土料理 の捉 え方 において、他 の地域 との違 いが あった。県内他 の多 くの地域 では、「 特定の地域 の文化や気候 、生活習慣 に関連 して伝 わった料 理」 と、捉 えてい る割合が最 も高かったが、三陸地域では 「 地域 の食材 を用いた料理」の選択 率が高かった。 これ は、三陸地域 での海産物等、食材 の豊富 さが関係 してい る と考 え られ る。
沿岸地域 は、 リアス式海岸 で地形 に恵 まれ、 日本 で も有数 の良漁場 として知 られ、わかめこ う に、あわび、牡蛎 な ど、四季折 々の海産物 が存在 し、手 に入 りやすい。 こ うした状況 が三陸地 域 の人 々 と、県内他 の地域 の人 々 との認識 の違 いを生み 出 してい る と推測 され る。従 って、今 一度 「 地域 の食材 を用いた料理」 について、三陸地域 として、見直 しをす る機会 を持っ ことが 重要である と考 え られた。それ によって、地産地消 もさらに進み、地域経済の振興や、観 光産 莱‑の波及効果 も期待 され、三陸地域全体が活性化す る。 また、地域 の本調査でま とめ られ た 資料 を用い、郷土食 ・行事食 を伝 える活動 が展 開 され ることによって、伝 える地域 の人たちも、
伝 え られ る子 どもたちも元気 になる。
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資料 1 食生活改善推進員 の三陸の郷土食 ・行事食 の伝承状況 1 食生活改善推進員‑のア ンケー ト調査
岩手県内の郷土食 ・行事食 の実施状況 は、「日本 の食生活全集③ 聞き書 岩手の食事」の中 で、大正の終わ りか ら昭和 の初 め頃までの年 間の食生活 の様子 を聞き取 り調査 した ものが報告 されてい る。 この調査 は、昭和の初 めに家庭 の食事づ く りに携 わっていた主婦 を中心に、聞き 取 り ・当時の食事 の再現 を して もらう形式で昭和 58 年〜昭和 59 年 に行 われた。 しか し、 これ 以降、岩手県の年 間の食生活 について、その実施状況 は調査 ・報告 されていない。郷土食や行 事食 を伴 う年 間の食生活 は、食文化 の象徴 で もあ り、 , 食青 において も重要視 されてい ることを 踏 まえて、 さらに充実 した伝承活動 を検討す るために も、現状 を詳細 に把握す る必要があると 考 える。そ こで、地域 の食 の事情 を最 もよく把握 し、活動 してい る食生活改善推進員 を対象 に、
郷土食 ・行事食 を伴 う行事、お よびその際に提供 され る食事等 の実施状況 について、岩手県全 体 を調査す ることによって、三陸地方 の特徴 を把握す ることを 目的 とした。
1 )調査概要
・ 1. 調査項 目
年 間の食生活 ・・ ・ 「 A 行事 」 「 B 行事食 ( 晴れ食) 」
「 C 日常食 」 「 煮 しめに用い る具材」
2. 調査対象
1 )母集 団 岩手県の各 自治体食生活改善推進員 団体の会員 2) 標本数 1 05 人
3) 抽 出方法 市町村保健福祉 関係 の担 当者‑委任 3. 調査時期
平成 20 年 9 月下旬 〜 1 0 月上旬 4 . 調査方法
アンケー ト用紙 を個別 に配布 しての書 き込み 2) 調査 内容
1 .地域 区分
岩手県の面積 は広 く、地形や歴史背景、気候 な どの条件 によ り食文化 にお ける地域差が 明確 で大 きい。そのため、今 回のアンケー ト調査 を行 うにあた り県内をい くつかの地域 に 分類す る必要がある と考 えた。
県内の市町村数 は 35 であるが、平成 に入 り市町村合併が相次 ぎ、その数 は激減 した。こ れ に伴い、食生活改善推進員 団体連絡協議会 の各 自治体組織 も統合 され 、 1 2 支部 58 団体 が平成 1 9 年 6 月 よ り 1 1支部 36 団体 に再編 され、合併以前の市町村単位 での調査 は難 しい 状況でにあった。
そ こで、 ごく一部 の地域 でのみ行 われてい る行事や、伝 え られてい る郷土食 ・行事食 も 存在す ることも推測 され るが、今 回は岩手県食改協の平成 1 9 年度定期総会資料 によ り連 絡先が示 された再編後 36 団体 にご協力 していただいき、県内 36 地域か らデー タを収集す るこ ととした。 また、 「 いわての晴れ と索 の食」 を参考 に、県北、県央、県南、三陸沿岸 の 4 つの地域 に分類 し、それぞれ の地域 に該 当す る調査用紙 を作成 した 。 4 地域に区分 し た地図を示す。
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2 . 郷 土食 ・行事食 とそれ を伴 う行事
郷 土食 は 日常的に食べ られ てい る、いわ ゆる 「 泰 の食」 と、特別 な 目に食 べ る 「 晴れ食 」 とに大 き く二分 され る。 晴れ食 は、それ に関わ る行事 とともに食 生活 に取れ入れ られ てい るのではないか と推測 し、行事 の実施状況 について も調査す る必要 がある と考 えた。
そ こで、4 地域別 の調査用紙 を作成す るにあた り、一般 的 な行事 の他 に、大正 の終わ り か ら昭和 の初 め頃に岩 手県で行 われ ていた農 業や 漁業 に関す る行事 、神 々に関す る行事 な どを盛 り込んだ。 そ して、 ここで使用す る暦 は、 当時の農漁村部 の人 々が年 中行事や農作 業 を行 う上で 目安 に していた太 陰暦 を採用 した。 しか し、 この時代 の暦 は、太 陽暦 と太陰 暦 が重層的 に使用 され てお り、地域 での とらえ方の違 い もあ り、 日にちが前後す る行事 が 生 じる可能性 も考 え られ る。 こ うした場合 は、 日付や時期 ではな く 「 行事」 その もの を中 心 と して、回答 していただ くことと した。 また、記載 のない行事 について は、行事名 と実 施状況 、それ に伴 う晴れ食 につ いて、調査用紙 の該 当箇所 に記入 していただいた。
3. 行事食 ( 晴れ食)
岩 手県は食 文化 に差異が見 られ るので 、 4 地域 区分 して調査す ることと したが、その地 域 の 中で も更 に ごく一部 の地域 に伝 わ る晴れ食 も存在す る。例 と して、遠 野の 「 けい らん」
や 、九戸郡 の 旧大野村や 旧山形村 の 「 豆ぶ汁 」、江刺 の 「くるみ豆腐 」 があ る。 一方 、県 内全域 に共通す る行事や晴れ食 が存在す る可能性 もあ る と予測 した。 そ こで、ア ンケー ト 用紙 には、地域性 が見 られ る晴れ食 と、全 県 に共通 した晴れ食 の両方 を示す こ とと した。
一
25 ‑3)調査結果
1.三陸沿岸地域 の食生活
親潮 と黒潮 のぶつか る潮 目に位置 し、複雑 に入 り組 んだ リアス式海岸 をもつため、漁業 に最適 な環境 にある。沿岸地域では海産物 を中心 とした郷土食 ・ 行事食が 目立っ。しか し、
目前の海 と後背 の山 とに囲まれた この地域 は、交通 に恵 まれてお らず、魚 貝や海藻 をす ぐ に出荷す ることができない こともあった。そのため、海産物 を加 工す る技術 が発達 してお
り、海 と山に囲まれ平地が少 ないため田畑 は少 ない。
穀類 は雑穀 が主であ り、沿岸 といって も南北 に長 く、北部 ・中央部 ・南部では収穫でき る種類 が異なる。北部 は県北地域 の九戸一帯 と同様 にそば、ひ え、あわ、中央部 と南部 は 小麦 、大麦 な どである。
これ らを考慮 し、沿岸地域 の調査用縄は 中央部 ・南部 の食事 を基本 として作成 し、北部 沿岸地域‑は県北地域 の調査用紙 も配布す るこ ととした。
また、漁家ばか りでな く、少 し沿岸 か ら離れた地域 では農業 を生業 としてい る農家 もあ り、中には半農 半漁 の世帯 もある。海 の文化 と山の文化 、北 と南の文化 な どが混在す る沿 岸地域 は、 さらに食文化 が細分 され るのではないか と推測 され る。
そ こで、洋野町、久慈市、野 田村 、 田野畑村 、普代村 、宮古市、山田町の方々には沿岸 と県北の調査用紙 を配布 し、両方 も しくは 自分 の食生活 に近い と思 う方 を、選 んで回答 し ていただ くこととした。
沿岸地域 ・県北地域調査用紙 の回収状況
洋野町 久慈市 野 田村 田野畑村 普代村 宮古市 山田町 計
沿岸 2 2 1 2 1 3 1 12
県北 2 3 2 0 1 1 1 10
郷土食 ・行事食 を伴 う 「 行事」の実施状況 について、 「 今 も行 ってい る( ①今 も多 くの家 庭 で行 ってい る) + ( ②今 も行 ってい る家庭 も少 しはある)」 ( 以下、 「 今 も行 ってい る」 と す る)と回答 した割合が 60%以上 と 60%未満 に区分 して、図に示すQ
内閣府 の食育意識調査で も例示 されていた一般 的な年 間行事 1 4 種 は、6 割以上が 「 今 も 行 ってい る」 と回答 し、現在 も頻繁 に行 われてい ることが示 された。 内閣府 の同様 の調査 では 1 4 種 の年 中行事 うち 7 回以上実施 してい る割合 が 46.8%であった ことと比較す ると、
本調査結果 はかな り高率であることが判 明 した。特 に、お正月やお盆 に関連す る行事 は実 施率は 1 00%であった。
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2 6 ‑
年 間 の 食 生 活 ( 沿 岸 ) 「 A 行事 」
「今も行っている( ①+② ) 」が 60% 以上の行事 [ N=23]
■①今も行っている 田②今も少しは行っている 0. 0 % 20. 0 % 40. 0 % 60. 0 % 80. 0 % 1 00. 0 %
正 月
送 り盆
大 晦 日
春 彼 岸 の 中 日
秋 彼 岸 の 中 日
秋 彼 岸 の 入 り
冬 至
節 分
端 午 の節 句
小 正 月
迎 え盆
桃 の 節 句
七 日盆
土用 の丑
7 日の お祝 い
小 正 月( 女 ・子 ども)
二十 日盆
山の 神様 の お年取 り
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年 間の食生活( 沿岸 ) 「 A 行事」
「 今も行っている( ①+② ) 」 が 60%未満の行事 [ N=23 ]
■( 丑今も行っている E E l ②今も少しは行っている 0. 0%
豆名月 大黒さまのお年取り
農神さま( 帰る日) 農神様 ( 来る日) 五 日えびす
お釈迦様 八十八夜 えびす講 二十 日正月 お稲荷様のお年取り
くにちもち 庭仕舞い 奇数 日 二百十 日のお神酒上げ おしらさまのお年取り
むけ節句 馬屋出し( 農始め)
二十三夜さま 八坂神社のお祭り
大師講 最初のうさぎの 日 やさら
八幡さまのお年取り 馬の神様 馬の神様のお年取り
虫送り 金神さまふきじまい
1 0. 0 % 20. 0% 30. 0% 40. 0% 50. 0% 60. 0%
‑
281
一方、大正の終わ りか ら昭和の初 め頃に行 われていた多 くの行事 は、 「 今 も行 ってい る」
と回答 した人が 6 割 を切 った。実施 されな くなった行事 には 「 馬」 に関す るものが多い こ とがわか る.県北地域 は、昭和初期 、馬 の生産頭数 が全 国一であったC農作業 において、
運搬 、農耕 、たい肥生産 な どの中心的作業 を担 って くれ る馬 は、家族 の一員 で もあった。
そのため、馬 に対す る愛着が表現 された文化財や行事が多い。馬の神 である蒼前信仰 か ら 発祥 したチャグチ ャグ馬 っ こや、馬屋 出 し、お年取 り、 曲が り屋 の構造、馬 と蚕 にまつわ るお しらさまの信仰 な どがある。県内 どの地域で も農作業 には馬が欠 かせ ない存在であっ たが、1 955 年以降、耕運機や脱穀機 な どが出回るよ うにな り、農耕馬 としての馬 の需要は 減少 してきた。 こ うした社会的な変化 に伴い、かつては家族 の一員で もあった馬 に関す る 行事 は、人々の記憶 の中か ら忘れ られつつ あるこ とが判 明 した。
2. 三陸沿岸 で も県北 に位置す る地域 の郷 土食 の特徴
同地域 の特徴的な晴れ食 において、「山菜料理」は 「 今 も作 って食べている」の割合が高 く、現在 で もよく食べ られてい ることが示 された。
次 に 「 そばはっ と う」では、同 じそばを使 った郷 土食 で も、そばがきゃそばかっけよ り も手間がかか るこ とか ら、そばはっ と うは最高の晴れ食 とされていた。現在 も、お正月や 大晦 日には食べ られてい ることがわかった。
Lとぎ類 は、「 行事が該 当 しない、わか らない」の割合が高かった。 Lとぎは、主に神 さ ま‑のお供 えもの として作 られ るほか、子 どものおやつや農作業 な どの小昼 として も作 ら れてきた。特 に、1 2月 に多い、様 々な神 さまのお年取 りでは、「 お しとぎ」 と敬称 されて いたが、1 2 月 1 2日の山の神 さまのお年取 りの 日以外 では、30 年以上前 に食べ られ な くな った ことが判 明 した。
送 り盆の際に作 られ る 「 ‑なか当て」 と 「 送 りはっ と う」 は、県内で も県北地域 に特有 の行事食 で ある。仏 さまが帰 る ときの背 もたれ に見立てて作 る。 これ は、 「 ⑤ よくわか ら ない」や 「 ⑥該 当 しない」の割合 が高 く、他 の晴れ食 と異 な り、知 ってい る割合その もの が少 なかった。 よって、 「 ‑なか当て」 と 「 送 りはっ と うは」 この地域で もごく一部 での み伝 え られてきた郷土食 である可能性 が高い と考 え られ る。
3. 年代 による行事 の実施状況 の比較 ( 岩手県全体での結果)
郷土食や行事食 は、「 家庭 の味」として、親 か ら子、子 か ら孫‑ と代 々受 け継 がれてきた ものであるO あるいは、家庭 だけでな く、ノ 地域全体 として行事が行 われ、次世代‑ と伝 え られてきた。そ こで、年代別 に行事 と晴れ食 ・郷土食 の実施状況 を分析 し、ど こで途切れ てい るのかを明 らかにす る必要がある と考 えた。
「日本 の食生活全集③ 聞き書 岩手の食事」で行 われた調査は、昭和 58年か ら昭和 5 9 年 にかけて行 われ、明治 25 年 か ら昭和 4 年生まれ までの、昭和 5 8 年 当時 5 4 歳 か ら 91 歳 までの方 々を対象 に聞き取 りされた。今 回の調査 は、前回の調査 か ら 25年経過 してい
る。 回答者年齢 は、43 歳 か ら 78 歳 である。 ち ょ うど世代がひ とつ入れ替 わってい るもの と考 え られ る。
郷土食 ・行事食 を伴 う行事 の実施状況 の調査 によると、内閣府 の調査で例示 されていた よ うな一般的な行事 1 4種では、1 00%の実施率で、年齢 による差がなかった。一方、『 岩 手の食事』 に記 されてい るよ うな大正終わ りか ら昭和初期 に実施 されていた行事 1 1種類 では、年齢 によって実施状況 に差が見 られた 。70 歳代 は平均 して年 7 回 、60 歳代 は 4 回、
60 歳未満 は 3 回行 ってい ることがわかった。
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そ こで、ひ とつの例 として 旧暦 の 6 月 1 日に行 われ ていた 「 む け節句」の実施状況 を示 した。本行事 は、‑ どの脱皮 を意味 し、季節 の変 わ り目を知 らせ る行事であった。
本行事 は 、7 0 歳代では 、2 4. 0% に人が実施 していた 。6 0 歳代 になる と急激 に実施率が下 が る。また、「 むけ節句」その ものを 「 ③ わか らない」と答 えた割合 は 、7 0 歳代で も 40. 0%
であった。 さらに、地域別 では、県北、沿岸 での実施割合 が高かった。以上 よ り、早急 に 県北、沿岸地域 に在住す る 7 0 歳代以上 に聞き取 り調査 を行 い、記録 に残す必要があると 考 え られた。
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資料 2 食 の 匠 の郷 土食 ・行 事 食 を伴 う年 間行 事 の実施 状 況
1 食 の 匠‑ の 聞 き取 り調 査
「 食 の 匠」 とは郷 土食 等 の優 れ た技術 を有 し、そ の技術 を伝 承 で き る と して 県 か ら認 定 を受 けた人 で あ る。 本 聞 き取 り調 査 の 目的 は 、食 の 匠 が行 って い る年 間 の郷 土食 ・行 事 食 の 実施 状 況 、お よび 地域 に伝 わ る特 色 あ る郷 土食 を再発 見す る こ とに あ る
。対 象 者 の人選 お よび現 地 で の連 絡 は、各 地域 の実情 が よ くわ か って い る農 業 改 良普及 員 ‑お 願 い し、久 慈 地域 、宮 古 地域 、大船 渡 地域 それ ぞれ 3 名 の食 の匠 を訪 問 して 、聞 き取 り調 査 と、
特 色 あ る郷 土食 の再 現 と試 食 を行 った。釜石 地域 で は 、郷 土食研 究会 の発 表 会 に参加 し、「 食 の 匠」 と郷 土食研 究会 の会 長 か ら同様 の 聞 き取 り調 査 を実施 した。
2 普 代村 の A さん の郷 土食 ・行 事食 を伴 う年 間行 事 の実施 状 況
三 陸地域 で の 聞 き取 り調 査 の うち、最 も行 事 の実施 率 が 高 か った の は普代 村 の A さん で、年 に 24回実施 して いた。 そ の度 に郷 土食 ・行 事 食 を作 って い た。
資料 1で述 べ た 「 む け節 句 」も実施 され て い た。それ で も、「うち よ りや って い る ところ もあ る よ。お ば あ さん に聞 い て受 け継 いだ け ど、昔 は もっ とや って い た もの。」 と回答 して い た。ま た 、1 2 月 の様 々 な神 様 のお年 取 りの際 のお膳 を実 際 に作 って い た だ いた。郷 土食 の作 り方や 行 事 の 由来 を資料 よ りも詳 しく聞 くこ とが で きた。
調 査 目 時 平成 20 年 1 0 月 1 0 日( 金 ) 現 住 所 下閉伊 郡 普 代村 萩 牛 久慈市 野田村 苔代書 ナ 王 戸部 寸 A 調 査 場 所 調 査 対象者 宅
調 査 対 象 者 A さん
匹
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k v t巴 . ′齢 . . ′ , 捕 ( Mapi ら on 都 道府 県地 図)よ り 岩帥 下関伊都 E E l 野畑何 ードさ さ http: //www. maPi on.co.̲ i p
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1 シ年 齢 66 歳 「食 の 匠 」認 定 き らず だ んす
◆今 も食 べ てい る 日常 的 な郷 土食 ( 索 の食 ) ◆
日常 的 な郷 土食 ( 索 の食 )
春 ば つけみ そ 、ふ きの と うのみ そ汁 、み ず の とろ ろ、凍み 豆腐 、 凍 み 大根 、 ひ ゆ うず‑ くるみ み そ 、昆布 と身 欠 きに しん の煮 物 夏
秋
冬
凍 み 豆腐
き らず だん ご‑ 水 は入 れ ず 、お か らの水 分 と小 麦 で作 る
季節 を問 わ な い ひ つつ み 、 うちわ もち ( 小 麦)、 か ま焼 き ( ひ ゆ うず )、 の つぺ い汁
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◆昔 は食 べ ていた 日常的 な郷 土食 ( 喪 の食 ) ◆
日常的 な郷 土食 ( 索 の食 ) 春
夏 秩
冬
かす炊 き
季節 を問わない そ ばが き
◆今 も行 ってい る行 事 とそれ に伴 う行 事食 ・晴れ食 ◆
( )は、昔 は食 べ ていた行事食
月 行 事 行 事食 .晴れ食
1 1日 正月 ・くるみ雑煮
・なます
・もち (くるみ 、 ごま、 あん こ)⇒ 米 に あわ を混ぜ る ( い と こもち)
・さけの切 り身
・刺 身
1 5日 小 正月 ・もち
・そ ばは つ と
・長 い昆布巻 きを切 る
・煮 豆 ( 大豆)
1 6日 小 正 月 ( 女 .子 ども) ・精進料理‑ 魚 は食 べ ない 2 3 ・豆 ま きをす る 日 節 分 特別 な食 事 はない
春彼岸 の 中 日 ・赤 飯
・彼 岸 まん じゆ うー 小麦 で作 るo あん こ入 り
3 3日 桃 の節 句 ・赤 飯
・煮 しめ
・き りせ ん しよ
1 6日 農神 さま ( 来 る 目) ・たか きび粉 の浮 き浮 きだん ご
・煮 しめ
・赤 飯
4 特 に行 ってい る行事 はない
5 5日 端 午 の節句 ・煮 しめ ・よもぎ もち
・赤 飯
6 1 日 む け節 句 ・小 豆 ば つ と
・煮 しめ
1 5日 ∴ L 自宅 の神様 r ̲ l i . ヨ 二 匡 ー 丁 軒 F つ 二 . I ・赤飯
・豆 Lとぎー 米 だ と子 どもが食 べ たが らない 神 様 ‑ のお供 えは正 月 の よ うな
3 段 重 ね ( 仏 さまは 2 段)
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