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食品成分による侵害受容性シナプス伝達に対する抑制効果

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Academic year: 2021

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(1)

麻布大学雑誌 第28巻 2016 86

【研究背景】

 レスベラトロール(trans-3,4’,5-trihydroxystilbene)

はブドウの種子などの植物や食品に多く含まれるポ リフェノールの一種であり,赤ワインの成分として 知られ,抗酸化作用や神経保護作用などの生理作用 を持つことから若々しさと健康,元気のキーワード として近年注目を浴びている食品成分の一つである

(Pervaiz 2003)。また,最近になり,In vitroの条件下 において,レスベラトロールが中枢および末梢神経系 におけるニューロンの活動電位発現に関わる電位依存 Na,Kチャネルや興奮性シナプス伝達機構への変 調効果も報告されており(Gao et al., 2006; Grannados- Soto et al., 2002; Kim et al., 2005),末梢から中枢へ伝 達される疼痛伝達を修飾する可能性が示唆されてい る。さらに,レスベラトロールは現在までに副作用が 報告されておらず(Russo et al., 2007),補完代替医療

(Complementry alternative medicine)の観点より注目さ れている。

 一方,口腔顔面領域の疼痛情報は三叉神経系を介す る疼痛伝達経路を通り,大脳皮質の体性感覚野へ痛み として伝達され,その際に三叉神経脊髄路核尾側亜核

(Trigeminal spinal nucleus caudalis: SpVc)は重要な中 継核となっている。また,疼痛伝達経路において広作 動域(Wide-dynamic range neurons: WDR)ニューロン は関連痛や異常疼痛などの臨床的な痛みの伝達に重要 な役割を果たしていることが示唆されている(Takeda

et al., 2012)。しかし,現在までに,In vivoの条件下に

おいて,末梢領域から中枢に伝達される疼痛情報に関 わる侵害受容ニューロンの興奮性に対するレスベラト ロールの変調効果について不明である。

 そこで本実験では,まず(1)レスベラトロールの 急性静脈内投与が,非侵害および侵害性機械刺激に 応答する三叉神経脊髄路核尾側亜核広作動域(SpVc

WDR)ニューロンの興奮を抑制するか否か? を細胞

外ユニット記録法を用いて解析を行い,その後(2)

グルタミン酸を介する興奮性シナプス伝達機構へのレ スベラトロールの抑制の有無について三連マルチバレ ル微小電極を用いた電気泳動的投与法を用いて定量的 に解析を行った。

【方法】

▶ ペントバルビタール(45 mg/kg BW, i.p.)麻酔下 ラットの延髄にあるSpVcに刺入したガラス微小記録 電極(2%ポンタミンスカイブルー含有0.5M酢酸Na 水溶液)と交流アンプ(DAM80)に接続したPower Labシステムを用いてvon Frey hairによる顔面皮膚へ の機械刺激(非侵害,侵害刺激)およびピンセットに よる侵害機械刺激に応じる細胞外単一ユニット活動

(活動電位)を導出した。これらの細胞外単一ユニッ ト活動に対する,レスベラトロール(0.5, 1, 2 mg/kg)

の静脈内投与(i.v.)の効果を経時的(0, 5, 10, 20分)

にポストステミュラスヒストグラムを作成することに より解析した。

▶ 次に,レスベラトロールのシナプス伝達機構に対 する抑制効果を調べるため,顔面皮膚機械刺激に応じ

SpVc WDRニューロンについて三連マルチバレ

ル微小電極を用いた電気泳動的に局所投与したL- ルタミン酸(0.2 M, pH = 8.2)に応じるユニット放電 に対するレスベラトロール静脈内投与の効果を経時的 に解析した。

36

回麻布環境科学研究会 一般学術講演

2

食品成分による侵害受容性シナプス伝達に対する抑制効果

○竹鼻 志織1,久保田 喜子2,島津 徳人3,武田  守3

1麻布大学大学院 環境保健学研究科,2ファンケルヘルスサイエンスセンター,

3麻布大学 生命・環境科学部 食品生理学研究室

(2)

36回麻布環境科学研究会講演要旨 87

【結果】

(1) 非 侵 害 刺 激(1‑10 g)か ら侵 害 刺 激(15‑60 g,

Pinch)に応じるSpVc WDRニューロンの平均的

放電頻度はレスベラトロール(2 mg/kg)の静脈 内投与により,濃度依存的(0.5‑2 mg/kg)に有 意に抑制され(p < 0.05),投与後5分後にピーク を示し,その効果は20分後に回復する可逆的効 果であった。

(2) レスベラトロール(i.v.)によるユニット放電頻 度の抑制率は非侵害刺激に対する応答に比較して 侵害刺激に対する応答の方が有意に大きな値を示 した(p < 0.05)。

(3) 顔面皮膚機械刺激に応じるSpVc WDRニューロン において,電気泳動的に局所投与したL-グルタ ミン酸に応じるユニット放電はレスベラトロール

(2 mg/kg)の静脈内投与により,平均的放電頻度 は投与後5分後に有意に抑制され(p < 0.05),そ の効果は20分後に回復する可逆的効果であった。

(4) 侵害刺激に対するSpVc WDRニューロンのレス ベラトロールによる放電頻度の抑制率とL-グル タミン酸に応じるユニット放電抑制率には有意な 差は認められなかった。

(5) L-グルタミン酸により応じる放電頻度のレスベ

ラトロールによる抑制率はNMDA(0.2 M)の電 気泳動的投与による抑制率と同等の値を示した。

【結論】

▶  食品成分であるレスベラトロールが三叉神経支配 領域に与えられた侵害機械刺激に応じる侵害受容

SpVc WDRニューロンの興奮性を,主に三叉

神経脊髄路核尾側亜核におけるグルタミン酸作動 性の興奮性シナプス伝達機構を介して抑制するこ とが判明した。

▶  本実験より,副作用のない食品由来成分のレスベ ラトロールが,鎮痛・鎮静薬の代用となる可能 性,すなわち,薬に頼らず安全性の高い治療「補 完代替医療」に貢献する可能性が示唆された。

【文献】

● Gao and Hu., Brain Res. 2005. 1056; 68-75.

● Grannados-Soto et al., Neuropharmacol. 2002. 43;

917-923

● Kim et al., Brain Res. 2005. 1045; 134-141

● Pervaiz et al., FASEB. 2003. 17; 1975-1985

● Russo et al., Biochem Pharmacol. 2007. 74; 533-544

● Takeda et al., J. Peri. Nerv. Syst. 2012, 17; 169-181

三叉神経系の疼痛伝達経路におけるレスベラトロールの疼痛抑制効果を 発現する作用部位の模式図 

(Rはレスベラトロールを示し,Rの大きさは作用の強さを示す。)

参照

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