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「キャリ ア教育の理論と実践 事例 」 総合的な学習の時間の一指導事例

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< 論文 (進路指導論・教育方法学)>

「キ ャ リア教 育 の 理論 と実践事例」

総合的な学習の時間の一指導事例

山 岡 昭 吉  要旨

 総合的な学習の時間で行った進路指導の実践を、キャリア教育の理論の視点 から整理することによって、一定のキャリア教育の理論的な裏付けや実践指導 の意義を確認する。高校3年間の進路指導実践の計画を概説するとともに、生 徒たちの意識の変容や能力・態度の育成に効果がある、高校2年生3学期の進 路指導実践の具体的な内容に触れる。

キーワード

 キャリア教育、総合的な学習の時間、進路指導、適応指導、適合指導、アク ティブ・ラーニング

Ⅰ はじめに

 総合的な学習の時間で行った進路指導の実践を、キャリア教育の理論の視点 から具体的に整理をすることは、キャリア教育が急務となっている現在、学校 現場で参考となることもあり、意義があることと考える。

 都立の商業高校で1年生から3年生まで行った進路指導の実践を理論的に整 理したい。当該校は、商業高校のため、就職希望者が多いが、同様に公務員希 望者も多く、また大学や専門学校の進学希望者も多い高校であった。各方面の それぞれの試験に合格し、それぞれの希望の進路に進んでいけた生徒がほとん どであった。その大きな理由は、かなりきめ細かい丁寧な進路指導を行なって いたことと、指導がアクティブ・ラーニングの指導の方法が多く、生徒による 自主的主体的な学習が多かったことがあげられる。その指導を、キャリア教育

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の理論の視点から整理していきたい。

Ⅱ キャリア教育の視点からの進路指導実践の整理の意味と目的  学校現場で3年間、実際に実施した筆者が、主に総合的な学習の時間におい て実践したものを整理したものである。学校現場で行った実践を整理するとと もに、キャリア教育の視点からの点検と整理、そして課題の抽出は、キャリア 教育が求められている教育現場にとって、参考にできる具体的な事例を提示す ることになるとともに、キャリア教育の実行段階における現実的な課題も明確 になることから、重要な意味を持つものと考えている。

Ⅲ 先行研究

 高校3年間の進路指導を実際に実践し、生徒に肉迫して指導した筆者自身が、

キャリア教育の視点で整理した先行研究は、ほとんどないに等しい状況である。

このため、筆者のキャリア教育の視点からの進路指導実践をここに整理する意 義もあると思われる。指導実践の一部でも参考にして活用・実践していただく ために、実践した進路指導の内容を紙面の許す限り、具体的に述べていきたい。

Ⅳ キャリア教育の視点からの実践事例…キャリア教育の理論的位置付け  「キャリア教育」が初めて登場したのは、平成11年12月の中央教育審議会答 申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」であった。この答申等 を参考にしながら、従来の進路指導とキャリア教育との区別と連関を考察し、

高校3年間の進路指導の実践をキャリア教育の視点から理論的に整理したい。

1.キャリア教育の導入と理論的支柱

 平成11年12月の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改 善について」では、「学校種間における接続と、学校教育と職業生活の円滑な接 続を図るため、望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付

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けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力態度を 育てる教育(キャリア教育)を、小学校段階から発達段階に応じて実施する必 要がある」と提言している。

 この答申における基本テーマは、学校種間の接続をいかに改善するかであっ た。それは、それぞれの学校段階での教育と学習が、次の段階とうまく繋がら ないことであり、現実的にそれぞれの学校に多くの学業不振者、不適応者や中 途退学者が存在していたことが考えられる。

 加えて、同答申は、学校教育の最終段階における接続、すなわち、「学校教育 と職業生活との接続」の改善も視野に入れられていた。それは、若者のフリー ター志向の広がりや無業者の増大、高水準で推移する就職後の早期離職等、「学 校から職業への移行」にかかわる課題が深刻なものとなっており、学校教育に おける接続の改善を図るためには、卒業後の職業生活を視野に入れた接続全体 の在り方を検討する必要があったからであろう。

 キャリア教育の導入と推進は、「学校教育と職業生活との接続」の改善、換言 すれば、「学校から職業への移行」にかかわる課題を克服するという観点から要 請されたものと考えられる。

 この中央教育審議会答申を受けて文部科学省は、「キャリア教育の推進に関す る総合的調査協力者会議」(以下、「協力者会議」という)を設置した。2004年1 月、「協力者会議」からの報告書『児童生徒の一人一人の勤労観・職業観を育て るために』(以下、『協力者会議報告書』という)が提出され、キャリア教育の推 進に関するきわめて具体的な提言がなされ、キャリア教育の導入、そしてその 推進にとって大きな力となっている。ここでは主に、中央教育審議会答申と『協 力者会議報告書』に依拠して、進路指導の実践を理論的に整理していきたい。

2.進路指導とキャリア教育との関係

 『協力者会議報告書』では、進路指導とキャリア教育との関係について、次 のように言及している。

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「進路指導の取組は、キャリア教育の中核をなすものである。これまでの進路 指導においては、子どもたちの変容や能力・態度の育成に十分に結びついてい なかったり、『進路決定の指導』や『出口指導』、生徒一人一人の適性と進路や 職業・職種との適合を主眼とする指導が中心となりがちであった。

 キャリア教育においては、キャリア発達を促す指導と進路決定のための指導 とが系統的に展開され、将来、社会人・職業人として自立し、時代の変化に強 くかつ柔軟に対応していけるよう、規範意識やコミュニケーション能力など幅 広い能力の形成を支援することが必要である。」(注1)

 また、これまでの進路指導の取組の課題と、キャリア教育が要請された視点 についても、次のように言及している。

 「これまで、進路指導の取組がその本来あるべき姿で十分展開されてきたと は言い難いことも事実である。特に、一人一人の発達を組織的・体系的に支援 するといった意識や姿勢、指導計画における各活動の関連性や系統性等が希薄 であり、子どもたちの意識の変容や能力・態度の育成に十分結び付いていない といった状況は、あまり改善されていないのが実情であろう。キャリア教育は、

このような進路指導の取組の現状を抜本的に改革していくために要請されたと 言うこともできる。学校における活動全体がキャリア発達への支援という視点 を明確に意識して展開される時、従来の進路指導に比べ、より広範な活動がキャ リア教育の取組として展開できる。」(注2)

3.キャリア教育が目指すところ

 進路指導とキャリア教育の相違点、すなわち、キャリア教育が目指すところ について、『協力者会議報告書』では、次の2点を述べている。(注3)

 ア「進路発達」と「進路決定」にかかる一連の指導の充実、イ適応にかかる 指導の一層の重視の2点である。この2点について、次に述べたい。

 ア 「進路発達」と「進路決定」にかかる一連の指導の充実

 ここでは、キャリア教育では、キャリア発達を促す指導と進路決定のための

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指導とを、一連の流れとして系統的に調和をとって展開することが求められる 点が指摘されている。

 集団を対象とした「進路発達の指導」については、相当幅広く実施されるよ うになってきているが、それを生徒の進路意識の向上や内面の発達に結び付け る指導については、まだまだ不十分であり、学級活動・ホームルーム活動にお ける話し合い、グループや個人での調査研究、まとめ等の活動を充実し、積極 的に展開していくことが求められることを述べている。

 一方、個人を対象とした「進路発達の指導」については、従来、進路希望調 査の際に行われる面談などを除けば、実施されている例は極めて少ない。 キャ リア教育は、究極的には個のキャリア発達を目指すものであることを踏まえ、

今後、この面での指導の充実が強く求められる、と指摘している。

 イ 適応にかかる指導の一層の重視

 キャリア教育では、個人の適性と職業や進路先との適合とともに、将来、自 立した社会人となるために不可欠な、社会や集団への適応にかかわる指導(以 下、これを「適応指導」という)を行う必要性が強調されている。

 個人の適性と職業・進路先との適合という視点に立った取組の重要性は、現 在も変わることはない。しかし、産業・経済の構造的変化や雇用の多様化・流 動化、さらには、子どもたちの生活や意識の変化等が進む現在、子どもたちが 将来、社会人・職業人として自立し、時代の変化に対応していくための資質・

能力を身につけるための指導、つまり適応にかかわる指導がかつてなく重要性 を増している。

 進路指導においても、適合とともに適応に関する指導は重視されるべきであ る。しかし、従来の進路指導の取組においては、個々の生徒の適性と職業や進 路先との適合を主な目的とした指導(以下、これを「適合指導」という)が中 心となり、適応に関する指導はそれほど重視されていない傾向が見られた。そ のため、キャリア教育においては、「生きる力」の育成の視点を踏まえて、適応 に関する指導をこれまで以上に重視していく必要がある。

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V 進路指導の実践的段階的内容と理論的検討

 高校1年生から3年生までの段階的実践内容を述べるとともに、そのキャリ ア教育の視点からの理論的考察を進めていきたい。

 高校3年間のキャリア教育・進路指導の全体計画と実践的段階的内容、とそ の理論的検討を進める前に、理論的考察において重要な視点として、キャリア 発達段階と課題、「総合的な学習の時間」、そして職業観・勤労観の形成に関す る能力について、ここで言及しておきたい。

1.高等学校段階におけるキャリア発達段階と、キャリア発達課題

 『協力者会議報告書』では、次のように述べられている。

 高等学校段階においては、キャリア発達・職業的(進路)発達段階は、「現実 的探索試行と社会的移行準備の時期」と記されている。同じく、高等学校段階 におけるキャリア発達・職業的(進路)発達課題は、次の4点が列挙されてい る。(注4)

 ・自己理解の深化と自己受容

 ・選択基準としての職業観・勤労観の確立  ・将来設計の立案と社会的移行の準備  ・進路の現実吟味と試行的参加

2.学習指導要領におけるキャリア教育関連事項と「総合的な学習の時間」

 『協力者会議報告書』では、学習指導要領に示されているねらい、内容、配 慮事項のうち、キャリア教育にかかわる主な事項が示されているが、そのうち、

高等学校における「総合的な学習の時間」については、次の4点が記されてい る。(注5)

 ・学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造 に取り組む態度を育て、自己の(在り方)生き方を考えること

 ・生徒が興味・関心、進路等に応じて設定した課題について知識や技能の

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深化、総合化を図る学習

 ・自己の在り方生き方や進路について考察する学習

 ・ボランティア活動などの社会体験、見学や調査、発表や討論、ものづくり や生産活動など体験的な学習

 進路指導の実践においては、上記の4点のうち、最後の1点については、十 分な実践ができなかったことが、今後の課題として残っている。本来は、ボラ ンティア活動などの社会体験や生産活動などの具体的な体験的な学習を発表さ せることが目標であったが、時期・時間の設定などの諸般の事情で実践するこ とができなかった。インターネットや書籍などで調査したものを発表させる程 度の実践に留まってしまった。学校主導によるボランティア活動などの実践的 な課題は、学年担任団の範囲を超えた、全校的な共通理解と協力を得なければ 実施は難しい。全校的な取組にしない限り、他学年・全教科の年間スケジュー ル等に多大な影響を与えるからである。全学年・全教科・全分掌にかかわる教 育課程の編成時に、全校的な共通理解を得る必要がある案件であるため、早い 段階で共通のコンセンサス作りに着手すべきであったことが反省点・課題とし てあげられる。

3.キャリア発達課題と職業観・勤労観の形成に関する能力

 キャリア教育の理論的な背景から、進路指導の実践を述べる場合に、重要と なるのは、キャリア発達課題を達成するための必要条件として考えられる、職 業観・勤労観の形成に関連する能力である。

この能力については、国立教育政策研究所生徒指導研究センターが「職業観・

勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」を研究開発し、職業観・勤労観 の形成に関する能力を4つの能力領域に大別し、小学校(低・中・高学年)、中 学校、高等学校のそれぞれの段階において身につけることが期待される能力・

態度を具体的に述べている。(注6)

この4つの能力領域とは、人間関係形成能力、情報活用能力、将来設計能力

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および意思決定能力である。この4つの能力領域には、それぞれに2つの進路 発達にかかわる諸能力が示されている。

 人間関係形成能力には、自他の理解能力とコミュニケーション能力、情報活 用能力には、情報収集・探索能力と職業理解能力、将来設計能力には、役割把 握・認識能力と計画実行能力、意思決定能力には、選択能力と課題解決能力が あることが言及されている。

次に、高校3年間のキャリア教育・進路指導の全体計画と実践内容の概要を 示し、主な学習課題として、指導の中核となる「進路学習」について、職業観・

勤労観の形成に関する4つの能力領域と活用した指導方法を記しておきたい。

4.高校3年間のキャリア教育・進路指導の全体計画と実践内容の概要

 『協力者会議報告書』では、進路指導の取組の現状において、一人一人の発 達を組織的・体系的に支援するといった意識や姿勢、指導計画における各活動 の関連性や系統性等が希薄であり、子どもたちの意識の変容や能力・態度の育 成に十分結び付いていないこと等が課題であることが指摘され、そのために キャリア教育が要請されたことが述べられている。それらの点を考えても、こ の進路指導の全体計画の実践は、各活動の関連性や系統性からも、一定のレベ ルの内容があることが理解できると考える。

4. 1. 高校1年……主としてキャリア教育の適応指導になる。

 4. 1. 1. 指導目標

 ⑴ 高校生活への適応と目的意識を育む。

 ⑵ 自主的・計画的な学習習慣を身につけさせる。

 ⑶ 自己理解を深め、進路選択にのぞむ態度を養う。

 ⑷ 進路の計画を立てる能力を養う。

 4. 1. 2. 進路学習……主な学習課題

 ⑴ 高校生活への適応(意義、目的意識)<将来設計能力、KJ法(G*)>

   *Gはグループ、Pは個人の意味である。

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  ・中学生生活は、どうだったのだろうか(中学生生活への振り返り)

  ・高校生活に何を期待し、どう送っていくか   ・学習への取組

 ⑵ 自分について知ろう<人間関係形成能力、マインドマップ(P)>

  ・自己理解の必要性とその方法   ・自分とは何だろう

 ⑶ 職業について調べてみよう <情報活用能力、ICT、KJ法(P)>

  ・将来の夢・希望   ・働くこと

  ・どんな職業があるだろうか   ・職業と資格

 ⑷ 進路の計画を立ててみよう<将来設計能力、意思決定能力、KJ法(P)>   ・進路希望実現へのプロセス

  ・希望実現に当たっての問題点・課題

 4. 1. 3. 個別指導……高校生活への適応、自分の将来の夢、希望的人生の達        成に必要なこと、希望実現プロセス案、高校3年間の        設計等について、問いかける。

  ・1学期1回目、2学期2回目、3学期は希望者のみ個人面談  4. 1. 4. 進路相談・・1年生は、必要な時に適宜対応する。

  ・主な対象者は、相談希望者、要注意生徒(基本的生活習慣が不安定な生徒)

 4. 1. 5. 情報提供、学習促進

 ⑴ 学習・進路の手引き(小冊子)等の資料を配布、取り扱い方の説明  ⑵ 進路説明会(生徒対象は1学期1回、2学期1回の計2回、保護者対象

は2学期に1回)

 ⑶ 学習の記録への取り組みと説明  4. 1. 6. 実力テスト

  ・4月、9月、1月の計3回、行う。

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 4. 1. 7. 外部模試

  ・1学期1回、2学期1回の計2回  4. 1. 8. 調査・検査……生徒対象

  ・1学期に性格検査、2学期に学習・進路調査、3学期に進路希望調査。

4. 2. 高校2年……主として適応指導だが、公務員希望者は具体的な適合指   導になるが、3学期は全ての進路希望者が、ほぼ適合指導になる。

 4. 2. 1. 指導目標

 ⑴ 2年生としての自分の役割を自覚させる。

 ⑵ 自己の適性を認識させ、職業について考えさせる。

 ⑶ 自己の適性を生かす進路計画を立てる能力を養う。

 4. 2. 2. 進路学習

 ⑴ 2年生になって <人間関係形成能力、将来設計能力、KJ法(G)>

  ・学校生活の中での2年生の役割と自分の抱負   ・学習目標の設定と方法の吟味

 ⑵ 進路と適性 <人間関係形成能力、将来設計能力、マインドマップ(P)>

  ・希望進路と適性(進路適性検査の結果の検討)

  ・希望進路実現のための条件と方策

 ⑶ 先輩の進路はどうだったのか <情報活用能力、KJ法(G)>

  ・上級学校、高卒者の職場   ・先輩からの聞き取り調査   ・どんな準備が必要か

 ⑷ 適性を生かす進路の計画を立ててみる<将来設計能力、マインドマップ(P)>   ・自分の特性を生かす進路の計画

  ・希望進路実現への学習計画を立てる  ⑸ 3学期になって

  ・意識・意欲を高めるために   ・自己分析と企業・業界・社会研究

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 4. 2. 3. 個別指導

     自分の将来・夢、希望的人生の達成に必要なこと、希望実現プロセ ス案、これまでの高校生活の振り返り、好きな仕事、得意な仕事、苦 手な仕事、我慢できる仕事、続けられる仕事、進学した先の生活と希 望、就職した先の生活と希望等について、主に問いかける。

  ・1学期1回目、2学期2回目、3学期は希望者のみ個人面談  4. 2. 4. 進路相談

   ・2年生は、必要な時に適宜対応するが、進路別に行う場合が多くなる。

   ・主な対象者は、相談希望者、要注意生徒(基本的生活習慣が不安定な 生徒)に加えて、高卒者の公務員希望者。

   公務員試験が難しいため、早めの適合指導が必要となる。

 4. 2. 5. 情報提供、学習促進

 ⑴ 学習・進路の手引き(小冊子)等の資料を配布、取り扱い方の説明  ⑵ 進路説明会(生徒対象は1学期1回、2学期1回の計2回、保護者対象

も1学期1回、2学期に1回の計2回)

 ⑶ 学習の記録への取り組みと説明  4. 2. 6. 実力テスト

  ・4月、9月、1月の計3回、行う。

 4. 2. 7. 外部模試

  ・1学期1回、3学期1回の計2回  4. 2. 8. 調査・検査……生徒対象

  ・1学期に性格検査(1年生のものと異なる検査)と進路希望調査、2学 期に学習・進路調査、3学期に進路希望調査。

4. 3. 高校3年……主として適合指導であるが、3学期では、就職先決定者           と進学先決定者を中心に適応指導になる。

 4. 3. 1. 指導目標

 ⑴ 進路学習の成果を生かし進路を決定させる。

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 ⑵ 希望進路実現への努力をさせる。

 ⑶ 進路情報の収集・整理・活用の方法を指導する。

 ⑷ 高校生活をまとめ、将来に対する心構えを養う。

 4. 3. 2. 進路学習

 ⑴ 進路を決定しよう <将来設計能力、K J 法・マインドマップ(P)>

  ・就職か進学か

  ・希望進路実現への意欲と準備

 ⑵ 進路情報の収集と活用 <情報活用能力、マインドマップ(P)>

  ・進路説明会への参加、情報の整理   ・進路の手引きの活用

 ⑶ 進路先への準備、適合指導 <将来設計能力、マインドマップ(P)>

  ・志望の決定

  ・志望先に応じた具体的準備と心構え、段階的指導

  ・就職……求人票の説明、校内選考、入社試験、内定後指導

  ・進学……短大、大学、専門学校、推薦入学、一般受験、合格後指導  ⑷ 卒業後の生活に備えて <将来設計能力、KJ法・マインドマップ(P)>

  ・高校生活を振り返って

  ・卒業後の生活にはどのような心構えが必要か   ・大学生活、社会人生活への準備と心構え

  ・キャリアの積み上げに必要な最低限の知識の習得   ・社会や経済の仕組みについての現実的理解の促進等   ・雇用契約の法的意味、相談機関等に関する情報や知識等   ・多様で幅広い他者との人間関係の構築の重要性と心構え  4. 3. 3. 個別指導

   自分の将来・夢、希望的人生の達成に必要なこと、希望実現プロセ ス案、これまでの高校生活の振り返り、好きな仕事、得意な仕事、苦 手な仕事、我慢できる仕事、続けられる仕事、進学した先の生活と希望、

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就職した先の生活と希望等々を参考点として問いかけ、考えさせる。

  ・必要に応じて随時実施するが、就職希望者には、1学期はかなりの頻度 で個別指導を行うようになる。

 4. 3. 4. 進路相談

  ・3年生は、必要な時に適宜対応するが、進路別に行う場合がほとんどで ある。

  ・主な対象者は、1学期では就職希望者、高卒者の公務員希望者、大学進 学希望者の順の場合が多く、2学期では、大学・短大進学希望者、であ り、2学期の後半から専門学校希望者が増加する場合が多い。

 4. 3. 5. 情報提供、学習促進

 ⑴ 学習・進路の手引き(3年生用の大部の『進路ガイダンス』)等の資料 を配布、取り扱い方の説明

 ⑵ 進路説明会(生徒対象は1学期1回、2学期1回の計2回、保護者対象 も1学期1回、2学期に1回の計2回)

 ⑶ 学習の記録への取り組みと説明  4. 3. 6. 実力テスト

  ・4月、9月の計2回、行う。

 4. 3. 7. 外部模試

  ・1学期1回、2学期1回の計2回  4. 3. 8. 調査・検査……生徒対象

  ・1学期に進路希望調査、3学期に進路結果の整理。

 高校3年間のキャリア教育・進路指導の全体計画と実践内容の概要を上記に 示したので、次に、特に重要な適応指導から適合指導への移行期である、2年 生3学期の指導の実践内容について触れておきたい。生徒のキャリア発達の実 践において、極めて効果があるにもかかわらず、現実的にはあまり実践されて いない移行期の進路指導について、次に具体的に述べていきたい。生徒たちの 意識の変容や能力・態度の育成に効果があった進路指導の事例である。

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5.2年生3学期の、適応指導から適合指導への移行期の進路指導

 進路を最終的に決定するべき3年生を目前に控えた、2年生の3学期におい て、適応指導から適合指導へとキャリア教育・進路指導を移行する場合に極め て重要なことは、生徒たちにより真剣に主体的に具体的に実践的に進路を考え させることである。生徒自らが進路への意識・意欲を高めていくこと、意識の 変容や能力・態度の育成などが第一になる。そのため、試行錯誤しながらも、

可能な限りの実効性ある進路指導を行った。ニート・フリーターが生ずる場合 には、この段階の進路指導を丁寧に行っていないことが大きな理由ではないか と思われる。それほど、効果があったことをここで強調しておきたい。

 スポーツ大会・文化祭等の学校行事や部活動などで豊かな高校生活を送って いる高校生にとって、3年生になって3~4ヶ月で、将来設計能力を具体的に 実践的に育成することは、極めて難しい。しかし、難しいと嘆いているうちに は、日程的に3年生の夏休み前の6・7月頃に就職希望者には、就職先をある 程度、決めておかなければならず、公務員受験者には、夏休み、7・8月頃に は公務員試験を受けなければならない。推薦入試希望の大学・短大希望者には、

夏休みには進学希望先をある程度、決めておく必要が出てくる。

学校行事や部活動などで日々、高校生活を送っている生徒に対して、3年生 の1学期から短期間で意識を切り替えて、しかも自主的主体的に自らの人生に おいて重大な進路決定に取り組ませるには、時間的に不足している。より多く の一定の時間が必要である。そのためには、2年生の3学期から、生徒が自主 的主体的に取り組む、実践的な適合指導を行う必要がある

ここで指導上、重要なことは、適合指導の期間が極めて短いことである。

 大学生は3・4年間かけて、進路先・就職先を決める。高校生は1年以内で、

しかも数ヶ月で決めなければならない時間的制約がある。そのために高校生に は、極めて短期間に集中して、真剣に取り組ませる必要がある。通常の授業で 学んでいる教科書の世界、ある意味の他人事、ではなく、自分のこととして、

自主的に主体的に取り組ませることが求められる。

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進路への意識・意欲を高めるために行ったことは、最初の段階は、形から入 ることによって、「見える化」を図ったことである。

5. 1. 意識・意欲を高めるために

2年生の3学期の前半の総合的な学習の時間では、履歴書の作成、面接指導、

学力テスト、進路ガイダンスの指導等を行った。ここでは、生徒の意識・意欲 を短期で急速に高めるとともに、人間関係形成能力の自他の理解能力とコミュ ニケーション能力の育成を目指した。

 5. 1. 1 履歴書の作成

  生徒自身が、この段階で自らを客観的に見つめるために、履歴書を作成さ せる指導を行った。「志望の動機」等の欄は未記入にして書かせるが、数字の 書き方、字の書き方、空白の使い方、押印の仕方等々の形式には厳しく指導 した。高校卒業してすぐに、経理部で小切手等を扱う者もいるため、特に、

押印の仕方には、特に厳しく指導した。押印の仕方によって、銀行が正式な 小切手と認めずに小切手による決済を拒否する場合があるからである。

  ここでは、「資格等」欄にどれだけの資格が記入できるのか、資格のレベル はどの程度か、「趣味・特技」欄ではその内容、「所属クラブ等」で部活動を続 けているのか、部長等の役割を引き受けているのか、各欄が読み易く書かれ ているか等々について、この段階の自分自身を正確に確認させた。履歴書と いう書面に書くことによって、「見える化」を行い、自分を見つめさせた。

  他のものと異なり、履歴書については、2学期末に冬休みの宿題にし、冬 休み中に書かせておく課題にした。それは、3学期から、実践的な進路指導・

適合指導を行うことへの心構えを求めるためと、履歴書に記入することで、

冷静に今の自分を見つめ、3学期にある、簿記・情報処理等の資格試験や学 力テスト等の学業への準備をすることを求めるためでもある。

  総合的な学習の時間では、その授業時間内(50分)に履歴書を作成から完 成まで書けるようにすることを目標とした。下書きのための線を引くことか ら始めるために、時間内に完成することは難しいが、時間内完成という目標

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を設定することによって、集中力も養成するようにした。入社試験などでは 特に、その場で履歴書に相応する書類を書かせる場合があるので、それなり に丁寧に書けるようにすることも目指した。

 5. 1. 2 面接指導

 意識・意欲を高めることが目的であるため、ここでは、内容よりも姿勢・

動作などの形式に重点をおいた。「見える化」を意識した。生徒の真剣さを増 させるために、生徒同士が相手の面接が見れるように、集団面接指導を行っ た。階段教室で、生徒6人を横一列に並ばせた。最初は、一列目の6人が指 導対象になり、それを他の生徒が階段教室の座席に座って、見学し、一列目 が終われば、次の列の生徒が行う、という手順で指導した。この方法は、意 識・意欲を高めるのにかなりの効果があった。普段、教師の意見を素直に聞 かなそうな生徒も、生徒仲間から見られ、後で笑われるのは避けたいようで、

真剣に指示に従って努力していた。

 ノック、入室、入室後の礼、立ち方、歩き方、指・腕の位置、挨拶の仕方、

丁寧な礼の仕方、座り方、座る時の姿勢、応える時の目線、応え方、退室の 仕方等々と細かく指導した。高校入試やアルバイトの面接程度のものとは次 元が違って厳しいものであることを伝えて、こちらの指導に対して真剣に対 応することを求めた。面接指導は特に、「見える化」の効果が出ていた。礼の 仕方など、努力の結果が自他ともにはっきりわかるため、生徒の意識・意欲 の向上が急速に向上した。

 5. 1. 3 学力テスト

  高校生の進学指導においては、進学希望者も就職希望者も高校推薦が必要 になるため、固定した一種類の学内学力テストで90点を得点しない限りは、

高校推薦が得られないという条件をつけて、真剣に学力テストのための勉強 をさせた。こちらに対しても、生徒は真剣に努力し、意識・意欲を高めるの に効果が認められた。この学力テストは、漢字の読み書きから、四文字熟語、

国際機関の略語、古典作品と作者名、名言と人物等々の35問の設問の一般常

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識テストであり、過去の入社試験などから選んだものである。この学力テス トで90点に満たない場合は、90点以上になるまで何度も同じ設問内容の学力 テストを受けられる仕組みにし、意欲が続くように配慮した。

 出題領域がかなり広いため、漢字が苦手なものなど、生徒の不得手分野が わかるとともに、何度受けても、生徒にとって恥ずかしさを感ずることが少 なくなるようにした。

 5. 1. 4 進路ガイダンスの指導

  1・2年生の進路の手引きは高校で冊子に閉じた小冊子であるが、3年生 の進路の手引きは、大学・短大・専門学校などの進学希望者から公務員希望 者・一般就職希望者などの、進路の適合指導のほとんどの内容を網羅し、そ の詳細を説明した内容で、170頁程度の大部のものである。

 いつも持参することを指示し、総合的な学習の時間では、進路先別の指導 において、生徒各自の希望分野の箇所を参考にしながら、自学自習させる時 に活用した。

5. 2. 自己分析と企業・業界・社会研究  5. 2. 1 自己分析

 上記の履歴書の作成や面接指導は、生徒が自分自身・自己への気づきを促 すことも意図したものであり、引き続いて、次に自己分析の指導を行った。

  この自己分析の指導においては、人間関係形成能力のうちの自他の理解能 力の育成を、コミュニケーション能力を育てることを媒介にして行うように 心掛けた。生徒は2者対話式のグループワークを、複数回、複数相手に対し て行うことを通して、自分が思っている自分と他者が感じている自分、自分 が思っている興味と関心と他者が感じている特徴、長所・短所などを浮き彫 りにし、気づかせていくように指導した。

 5. 2. 2 企業・業界・社会研究

 自己分析を通して、どういう仕事、どういうものに興味と関心があるの か、について、 「興味と関心」を中核としたマインドマップを生徒各自に書

(18)

かせた。(a)どういう仕事、どういうものに興味と関心があるのか、について、

考えさせた後に、実際に、どの仕事、ものに興味と関心があるのか、を3つ 程度に絞ってレポート用紙の上段に書かせ、それを軸にして、仕事、企業、

業界へと関連性があるものを手繰っていくように視野を広げていき、そのプ ロセスをレポート用紙の下段に向かって書き下ろしていく方法を例示し、次 に(b)各自でインターネット等で調べ、その内容に肉付けしていく指導を行っ た。情報活用能力のうちの職業理解能力を育成することを主たる目的としな がら、情報収集・探索能力の育成も目指した。次に(a)(b)の指導の概要 について触れていきたい。

 (a)  視野を広げていく事例……(例)パソコンに興味と関心がある場合   1)プロセス1……「何が好きか」「何に興味があるのか」について、次の

参考項目を参照して、考えて応えるように指導した。

   (参考:1 特定の商品、2 経済・お金、3 経営・サービス、4 情報・メデ ィア、5 農林水産、6 法律、7 文化・国際・外語、8 人間関係、9 自然・

環境、10 福祉・安全、11 子供・教育、12 食べ物・料理、13 医療・健康、

14 科学・化学・生物、15 数学・物理、16 エネルギー、17 機械・乗り 物、18 コンピュータ、19 建築・家具、20 ファッション、21 音楽・芸術、

22 歴史・思想、23 文学・読書、24 レジャー・旅行、25 スポーツ、26 その他の趣味)

   (例)パソコンに興味がある。

    ここでは、18 コンピュータ・パソコンを例示したが、生徒は番号に 丸印をつけるように指示した。この段階では多くの参考事項とともに、

それについての丁寧な説明が必要となる。生徒の意識を誘導し、意識を 高めるには、これらの具体性が重要になる。

  2)プロセス2……イメージできる仕事の基本動作には何があるか、につ いて、プロセス1と同様に関心がある番号に丸印をつけるように指示した。

   (参考:1 作る・加工する、2 売る、3 仕入れる、4 操作する、5 動かす・

(19)

扱う、 6 調査・分析する、7 企画・創造する、8 研究開発する、9 指導・

教える、10 世話・助ける、11 相談にのる、12 人と話をする、 13 紹介・

つなぐ、14 管理する、15 整理する、16 守る、17 調整する、18 書く・

伝える、19 広告する、20 楽しませる、21 運用・増やす、22 直す・修 理する、23 改善・解決する、24 算出する、25 交渉する、26 保証・保 障する、27 貸す、28 運ぶ)

   (例)4 操作する、7 企画・創造する、9 指導・教える

  3)プロセス3……相応する仕事内容には何があるか、について考えさせ るが、ここでは、プロセス2の番号とほぼ対応している仕事内容を同じ 番号で列挙している。同じ番号内でいくつかの仕事内容が含まれている ので、考えさせるためにそのうちの1~2つを選ぶように指導した。

   (参考:1 設計・製造・製作等、2 店頭販売・通信販売・営業等、3 購買・

入荷・貿易業務等、4 データ処理・操縦・演奏・撮影等、5 在庫管理・

運輸・現場監督等、6 取材・検査・マーケティング等、7 企画立案・販 売促進・デザイン等、8 実験・商品開発・新規事業開発等、9 人事研修・

インストラクター等、10 救助・案内・介護・アシスタント等、11 人事・

労務管理・カウンセリング等、12 接客・営業・コールセンター等、13 通訳・受付・職業紹介等、14 労務・総務・顧客管理等、15 編集・在庫 管理・倉庫管理・環境整備等、16 法務・特許・生産管理等、17 役員秘書・

シフト管理・予算管理等、18 書類作成・書記・報道等、19 広報・ 宣伝等、

20 イベント制作・演奏・演出・監督等、21 財務・投資信託・トレーディ ング等、22 メンテナンス・修理・校正等、23 経営企画・クレーム対応等、

24 経理・査定・集計・給与計算等、25 営業・渉外・店舗開発等、26 保 険手続・事故対応等、27 融資・レンタル・不動産賃貸等、28 運搬・配達・

出荷・輸送・引越等)

   (例)4 データ処理・操縦・演奏・撮影等、7 企画立案・販売促進・デ ザイン等、9 人事研修・インストラクター等

(20)

  4)プロセス4……パソコンに関係する商品・モノには何があるか、につ いては、興味と関心を広げるために周辺のものに視野を広げるように指 導した。

   (例)パソコン本体、ハードディスク、プリンタ等周辺機器、電子部品、

パソコンソフト、インターネット回線等

  5)プロセス5……パソコンに関係するサービスには何があるか、につい ては、見えにくいサービスへも視野を広げるために、パソコンなどを支 えているサービスにも着目させた。

   (例)ソフト開発、設計、システム制作、オンラインショッピング、パ ソコン情報誌、セキュリティ、オンライントレード、ブロードバンド、

パソコンスクール、メンテナンス等

  6)プロセス6……パソコンに関係する業界(と企業)には何があるのか、

については、生徒各自がインターネットなどを活用して、業界と企業な どを調べさせる指導を行った。

   (例)コンピュータハードウエア業界(NEC、富士通等)、コンピュー タ周辺機器業界(キャノン、エプソン等)、コンピュータソフト業界(マ イクロソフト、トレンドマイクロ等)、コンピュータゲームソフト業界(任 天堂、ソニーエンターテイメント等)、コンピュータ卸業業界(大塚商会、

エプソン販売等)、コンピュータ販売業界(ヤマダ電機、コジマ等)、半 導体業界(東芝、富士通等)、電子部品業界(京セラ、TDK等)、ソフト・

システム開発業界(CSK、日本オラクル等)、ネット業界(アマゾンジャ パン、ヤフー等)、保守サービス業界(NECモバイリング等)、コンピュー タ金融業界 (ジャパンネット銀行、ソニー銀行等)、コンピュータ教育 業界(アビバ、ナガセ等)

   上記の事例を説明する場合に留意したことは、イメージできる仕事の基 本動作や相応する仕事内容など、枝葉を伸ばしていくように丁寧に思考を 広げていく面白さと、それに相応する業界・企業が現にたくさん存在して

(21)

おり、それらの業界・企業が支え合って経済社会や我々の生活が成り立っ ていることが実感的に理解できるように指導することであった。

 (b) 情報収集した内容に肉付けしていく進路指導……(例)パソコン    次の項目のうちの一つ以上、友人と一緒に実行してみることを勧めた。

  ・パソコンの販売店などで、各社の新製品を操作し体験し、製品の比較を したり、店員に製品や企業の評判や特色、売れ筋商品などを聞き、メモ をする。

  ・製品カタログなどを企業のホームページや販売店の店頭で入手し、各社 の主力商品などの比較し、商品や企業についての気づいた特色などを記 録する。

  ・家族や知人で、パソコンを使用している人がいれば、機能性や使い勝手 などの評判を聞き、メモをする。

  ・アフターサービスなどのサービスについて、企業のホームページや製品 カタログでサービス内容や企業の対応の違いを調べ、その違いから、企 業の印象や特色などについて気づいたことを記録する。

   以上の内容を、レポート用紙に箇条書きにして整理することを指導した。

模範になるものについては、生徒本人で発表させた。

   次に、企業内組織と職務、仕事の種類と内容について、業界の概要が書 かれた資料を基にして説明した。具体的にどのような仕事をするのか、ど のような仕事上の大変さ・苦労と働きがいがあるのか等々について、生徒 各自がインターネット等で調べる課題を出した。ここで指導上留意したこ とは、いきなり好きな仕事を求めていくような、仕事の範囲を狭めないよ うに指導することである。好きな仕事をしていると言っている方がいても、

仕事に就いた当初は特に好きではなく、仕事を続けてきた結果として、好 きな仕事になっている場合が多いこと。本人が好きな仕事といっても、ま だ若く熟達度が低い者に対して、企業は給料をあげることはない、という ことなどを考えさせることは、自立した社会人となるために不可欠な社会

(22)

や集団へのキャリア教育の適応の指導の観点からも重要なことであろう。

実際に、好きな仕事という狭い視野に縛られて、定職に就いていない夢追 い人になっているニート・フリータを見受けることが多い。そのために、

好き・嫌いという視点ではなく、続けていけるかどうかという視点を重視 し、自分の可能性と成長を含めて、仕事を考えるように指導した。

 5. 2. 3 働くということを多角的に考えさせる

 働くということについて、自分のこととして主体的に考えを深めていく指 導を行った。学生と社会人の違い、アルバイトと正社員との雇用保険などの 処遇の違いなどを丁寧に説明し、生徒各自がインターネット等でこの違いに ついてグループワークを通して調べる指導を行った。報酬を得て生計を維持 し一市民として社会に参画し社会を支える充実感、一定の社会的な役割を 担った一人前の社会人として自立した生活を送る成熟感、チームプレーを通 して働きながら職場の仲間と協働しながら、支えられ支えながら人間的に成 長していくこと等々、働く社会人の視点の事例を示しながら説明した。

  また、多角的に考えさせるために、1年生の夏休みの宿題で行った、家族 の意見なども再び参考にして、いろいろな角度から考えるように指導した。

 5. 2. 4 コミュニケーション能力の重要性の強調

 これまでの各種のグループワークや面接指導を通して、コミュニケーショ ン能力の重要性を感じてきている生徒に対して、主に個人プレーを通して学 業を行う学生とチームプレーを通して仕事をする社会人との違いについて説 明を行った。チームプレーを通して日々、仕事を行う社会人にとって、自己 と他者や社会との適切な関係を形成・維持するのに不可欠な能力であり、時 代の変化に対応していくためにも必要な能力であること等、コミュニケー ション能力の重要性を強調した。時代の変化に対応できる自立した社会人の 育成を目指す、キャリア教育として重要な適応指導の観点からも、再度強調 しても強調しすぎることはないであろう。またここでは、コミュニケーショ ン能力の前提となる明朗さについて、身につけていくようにも指導した。

(23)

  上記の「5. 2. 3. 働くということを多角的に考えさせる」と「5. 2. 4. コミュ ニケーション能力の重要性の強調」については、適宜繰り返し指導を行った。

  『協力者会議報告書』で指摘している、「将来、社会人・職業人として自立し、

時代の変化に強くかつ柔軟に対応していけるよう、規範意識やコミュニケー ション能力など幅広い能力の形成を支援すること」(注1)という、キャリア教 育への要請に深くかかわるためである。

Ⅵ おわりに

 総合的な学習の時間で行った進路指導の実践を、キャリア教育の理論の視点 から整理することができたとともに、キャリア教育の理論から一定の理論的な 裏付けや実践指導の意義を得ることができた。同時に課題も明確になった。特 に、より効果的なインターンシップなどの実践のための学校全体のコンセンサ ス作り等の課題のありかと重要性が浮き彫りにされた。今後も引き続き、生徒 たちの意識の変容や能力・態度の育成に結び付いたキャリア教育・進路指導な どの実践的課題について取り組んでいきたい。

注記:

(注1) 「キャリア教育の推進に関する総合的調査協力者会議」『報告書児童生徒の一人一 人の勤労観・職業観を育てるために』平成16年1月28日、14頁

(注2)同上、15頁

(注3)同上、15 ~ 16頁

(注4)同上、9頁

(注5)同上、13頁

(注6)国立教育政策研究所生徒指導研究センター『児童生徒の職業観・勤労観を育む 教育の推進について 調査研究報告書』2002年 47 ~ 48頁

(24)

参考文献

・文部省『中学校・高等学校進路指導の手引ー進路指導主事編』1977年

・文部省『中学校・高等学校進路指導の手引ー進路相談編』1982年

・文部省『中学校・高等学校進路指導の手引ー中学校学級担任編』1982年

・文部省『中学校・高等学校進路指導の手引ー個別指導編』1986年

・文部省『中学校・高等学校進路指導の手引ー高等学校ホームルーム担任編』

1990年

・佐久間勝彦『アクティブ・ラーニングへ ーアクティブ・ティーチングから』

一莖書房 2016年

・仙崎武・野々村新(編著)『最新進路指導概論』福村出版 1979年

・仙崎武・野々村新(編著)『学校進路指導ー理論と実践』福村出版 1984年

・吉田辰雄(編著)『最近の生徒指導と進路指導ーその理論と実践』図書文化 1992年

・武田圭太『生涯キャリア発達ー職業生涯の転機と移行の連鎖』日本労働研究 機構 1993年

・中西信男『ライフ・キャリアの心理学ー自己実現と成人期』ナカニシヤ出版 1995年

・野々村新他(編著)『入門進路指導・相談』福村出版 2000年

・吉田辰雄(編集代表)『21世紀の進路指導事典』ブレーン出版 2001年

・国立教育政策研究所生徒指導研究センター『児童生徒の職業観・勤労観を育 む教育の推進について 調査研究報告書 』国立教育政策研究所 2002年

・キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議『報告書 児童生徒 一人一人の勤労観・職業観を育てるために』文部科学省 2004年

・吉田辰雄(編著)『最新生徒指導・進路指導論』図書文化 2006年

・野々村新他(編著)『生徒指導・教育相談・進路指導』田研出版 2006年

・吉田辰雄・篠翰『進路指導・キャリア教育の理論と実践』日本文化科学社 2007年

(やまおか しょうきち 本学教授)

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