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豪州における柔道実践者の保護者に対する意識調査

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Academic year: 2021

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(1)

豪州における柔道実践者の保護者に対する意識調査

著者 曽我部 晋哉, 山崎 俊輔

雑誌名 スポーツ・健康科学教育研究センタ−紀要

巻 22

ページ 71‑79

発行年 2020‑03

URL http://doi.org/10.14990/00003572

(2)

豪州における柔道実践者の保護者に対する意識調査

曽我部 晋 哉 * 山 崎 俊 輔 *

A Survey of Child’s Overall Judo Environment in Australia

Akitoshi Sogabe, Shunsuke Yamasaki キーワード:教育 オーストラリア 武道

*甲南大学 スポーツ・健康科学教育研究センター

Ⅰ.諸言  

柔道は , 日本で発祥した近代オリンピック種目の ひとつであり , 現在では欧州を中心に発展している

(Nippon Budokan, 2009)。1899 年 , 柔道の前身である 柔術のクラブ(Bartititsu Club)がイギリスに初めて 設立され , 1948 年にはイギリスが中心となってヨー ロッパ柔道連盟を設立した(Bowen, 2011)。今や世 界の中で最も柔道登録人口の多いフランスの柔道であ るが , フランス国内では柔道よりも先にイギリスから 持ち帰った柔術クラブが設立されていることを鑑みる と , 欧州では柔術や柔道の発展にイギリスのもたらし た影響は大きい。現在のフランスでは , 競技スポーツ としての柔道もさることながら子どもの教育として柔 道が普及している。実際にフランス柔道連盟登録者数 約 63 万5千人のうち , 0歳~ 11 歳までの登録者数が 58.9% を占めている(曽我部ら , 2017a)。1931 年まで イギリス領であったカナダにおける柔道に対するイ メージを調査した報告によると , 「器用」, 「謙虚」, 「清 潔」 「我慢強い」 「真面目」など肯定的に捉えている(曽 我部ら , 2107b)。更に , 柔道を子どもに習わせる理由 として「発育に良い」「護身のため」「体力づくり」「自 己コントロールができるようになる」「礼儀正しくな る」など , 柔道は児童期に身に付けるべき重要な要素 を含んでいる , と報告している(曽我部ら , 2107b)。

また , 柔道は発育・発達のみならず , 国家の移民受け 入れ政策によって生じる教育の不均衡を解消するため

に重要な役割を担っていることも指摘している(曽我 部ら , 2107a)。

そこで本研究では , オセアニアのイギリス連邦の加 盟国であるオーストラリアにおいて , 柔道を行わせて いる保護者は柔道に対してどのようなイメージを持っ ているのかを明らかにすることを目的とした。

Ⅱ.方法  

1.アンケート配布方法

調査方法は 2015 年7月1日~8月 31 日の間 , オー ストラリアのパース周辺の道場に対して , 指導者を通 じ 12 歳以下の柔道実践者の保護者を対象に , 13 項目 の「子どもを取り巻く柔道環境に関するアンケート」

を配布し , 現地もしくは郵送にて回収した。

2.アンケート内容

「子どもを取り巻く柔道に関するアンケート」の内 容は以下の通り。

質問1. How do you think about image(s) of judo and /or judoka? あなたは「柔道」「柔道家」

についてどのようなイメージを持っています か?

質問2. How do you think about other people around you have image(s) of  judo and /or judoka? 世間の方々(あなたの周りの人)は

「柔道」「柔道家」についてどのようなイメー

(3)

ジを持っていると思いますか?

質問3. What do you expect your child to learn (achieve) from judo practice? 柔道を習わせ る理由は何ですか?

質問4. What motivate you to have your child to practice judo? What was the cue? Because

… 柔道を習わせたきっかけは何ですか?

質問5. Have you observed changes your child made after continuing judo practice? 柔道を 習わせたことで子どもに変化がみられました か?

質問6. What do you expect your child’s judo instructor to teach? 柔道の指導に何を期待 しますか?

質問7. How much of judo technical and tactical knowledge do you have? 柔道の技術的な知 識についてどの程度持っていますか?

質問8. How often do you and your child discuss judo techniques and strategies at home? 家 庭内で子どもと柔道の技術的なことについて 話をしますか?

質問9. How much knowledgeable are you in terms of judo history, ethics, and morals? 柔道の歴 史・倫理・道徳に関する知識についてどの程 度持っていますか?

質問 10. How often do you and your child discuss the topics of judo history, ethics, and morals at home? 家庭内で子どもと柔道の歴史・倫

理・道徳に 関することについて話をしま すか?

質問 11. Do you practice judo? 保護者自身は現在柔 道を実施していますか?

質問 12. Do you observe (or listen to) your child wrestling playfully with friends in daily? 子 どもの環境で , 柔道以外に周りの友達とお互 いに組んだり押しあったりする機会は多い ですか?

質問 13. Do you think it is important to wrestle playfully with friends from a young age? 幼 少期に友達同士で組み合ったり押しあった りすることは大事だと思われますか?

 

以上の項目を集計し , 度数分布をグラフ化した。 

Ⅲ.結果

1.対象者の特性について

 回答者数 78 名(男:35 名 女:43 名 , 43.7 ± 6.6 歳)の職業は以下の通り。

(人)

表1.回答者の職業

会社員 ⾃営業 パート 学⽣ 専⾨職 教職 公務員 専業主婦 無職 その他

25 14 9 7 8 4 3 2 1 11

表1.回答者の職業

2.保護者に対する柔道のイメージ

質問1~ 13 の集計結果を以下に示す(図1~図

13)。

(4)

(名)

図1.「柔道」「柔道家」のイメージについて

質問1:あなたは「柔道」「柔道家」についてどのようなイメージを持っていますか?

0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2

6 7

11 12

13 28

33 37

39 40

59 65

0 10 20 30 40 50 60 70

無礼 不潔 不器用 無愛想 愚鈍 格好悪い 横柄 いい加減 怖い 臆病 キレやすい 格好いい 真面目 その他 聡明 優しい 社交的 清潔 我慢強い 勇敢 謙虚 礼儀正しい 器用

(名)

質問2.世間の方々(あなたの周りの人)は「柔道」「柔道家」について どのようなイメージを持っていると思いますか?

図2.世間の「柔道」「柔道家」のイメージについて

0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 2

8 9

13 13 14 14

17 22

26

38

51

0 10 20 30 40 50 60

不潔 無愛想 愚鈍 キレやすい 臆病 いい加減 真面目 無礼 格好いい 横柄 不器用 聡明 その他 優しい 怖い 清潔 我慢強い 社交的 謙虚 勇敢 礼儀正しい 器用

図1.「柔道」「柔道家」のイメージについて

図2.世間の「柔道」「柔道家」のイメージについて

(5)

図3.柔道を習わせる理由

質問3.柔道を習わせる理由は何ですか?

(名)

0 0 0 1

11 13

14 17

21 22

23 25

30 35

43 44

48 50

51 52

55 57

0 10 20 30 40 50 60

進学の手段 将来の幅を広げる 中学校の武道必修化対策 小学校で落ちこぼれないため 子供の夢の実現 頭が良くなる その他 国際選手への可能性 優しくなる リーダーシップの育成 集団生活を学ばせる 日本文化に触れさせたいから 対人競技だから 他のスポーツでの体力つくりのため 忍耐強くなる 自己コントロールができるようになる 礼儀正しくなるから 集中力をつけさせる 発達に良い 姿勢が良くなる 護身のため 体力づくり

図4.柔道を習わせたきっかけ

質問4.柔道を習わせたきっかけは何ですか?

(名)

0 4

5 6 6 7

13 14

15 20

32

0 5 10 15 20 25 30 35

他のスポーツに向いていないから 友達にいじめられていたから 自分が昔からやりたかったから 学校の授業で興味を持ったから 体が大きいから 子どもの友達に誘われたから 親同士の紹介 兄弟がやっていたから 自分が子ども頃にやっていたから その他 子どもが自分から選んだ

図3.柔道を習わせる理由

図4.柔道を習わせたきっかけ

(6)

質問5.柔道を習わせたことで子どもに変化がみられましたか?

図5.柔道を習わせたことによる子どもの変化

(名)

5 6

7 8

11 13

16 18 18 18

21

32 35

42 46

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

自分から大きな声で挨拶ができるようになった その他 特に何も変わらない 学校の成績が上がった 性格が明るくなった 落ち着きがでた 人の話をしっかりと聞けるようになった 礼儀正しくなった 体育授業でマット運動が得意になった 情緒が安定した 年下の面倒をみることができるようになった 集中力が増した 運動神経がよくなった 体力がついた 自信がもてるようになった

質問6.柔道の指導に何を期待しますか?

図6. 柔道指導へ期待すること

2 5

17 22

37 46

60 60

71

0 10 20 30 40 50 60 70 80

その他 脳神経系向上のための指導 安全な指導 柔道の歴史や柔道に関する世界情勢などの知識 道徳的な指導 礼儀の指導 精神力向上のための指導 体力向上のための指導 技術の指導

(名)

図5.柔道を習わせたことによる子どもの変化

図6. 柔道指導へ期待すること

(7)

質問7.柔道の技術的な知識についてどの程度持っていますか?

図7.柔道の技術的な知識の程度

(名)

21 26 20 6

4

0 5 10 15 20 25 30

ほとんど知らない 知らない そこそこ知っている 知っている 指導者レベルまで知っている

質問8.家庭内で子どもと柔道の技術的なことについて話をしますか?

図8.家庭内での子どもとの柔道技術に関する会話の程度

(名)

0 5 10 15 20 25 30 35

日常的に話す 話す 普通 話さない ほとんど話さない

質問9.柔道の歴史・倫理・道徳に関する知識についてどの程度持っていますか?

図9. 家庭内での子どもとの柔道倫理に関する知識の程度

(名)

24 27 17

8 2

0 5 10 15 20 25 30

ほとんど知らない 知らない そこそこ知っている 知っている 指導者レベルまで知っている

図7.柔道の技術的な知識の程度

図8.家庭内での子どもとの柔道技術に関する会話の程度

図9. 家庭内での子どもとの柔道倫理に関する知識の程度

(8)

質問10.家庭内で子どもと柔道の歴史・倫理・道徳に関することについて話をしますか?

図10. 家庭内での子どもとの柔道倫理に関する会話の程度

(名)

0

8

19

25 25

0 5 10 15 20 25 30

日常的に話す 話す 普通 話さない ほとんど話さない

質問11.保護者自身は現在柔道を実施していますか?

図11.保護者自身の現在の柔道実施の有無

(名)

13

65

0 10 20 30 40 50 60 70

実施している 実施していない

質問12.子どもの環境で、柔道以外に周りの友達とお互いに 組んだり押しあったりする機会は多いですか?

図12.柔道以外の組み合う機会の程度

(名)

8

32 20

14 4

0 5 10 15 20 25 30 35

多い やや多いと思う 適度にあると思う やや少ないと思う ほとんどない

図 10. 家庭内での子どもとの柔道倫理に関する会話の程度

図 11.保護者自身の現在の柔道実施の有無

図 12.柔道以外の組み合う機会の程度

(9)

質問13.幼少期に友達同士で組み合ったり押しあったりすること は大事だと思われますか?

図13.組み合うことの重要性について

(名)

65 10

3

0 10 20 30 40 50 60 70

大事である どちらでもない 大事でなはい

Ⅳ.考察  

1.柔道に対する主観的評価と客観的評価

オーストラリアにおける柔道実践者の保護者の「柔 道」や「柔道家」に対する主観的なイメージは , 「器 用」「礼儀正しい」「謙虚」「勇敢」などの肯定的な回 答が多く(図1), 世間からはどのように思われてい るかいう客観的評価についても否定的な回答はほとん どない(図2)。つまり , 主観的評価と客観的評価の 間にギャップが少ないために , 自身の子どもにもまた , 他人の子どもにも推奨できる「習い事」が柔道である と言える。しかし , オーストラリアで柔道を習うきっ かけとして「子どもが自分から選んだ」という回答が 最も多く , 子どもの意思決定権が高いことがうかがえ る(図4)。また , 柔道を習わせる理由として , 「体力 づくり」の他に「護身のため」が上位に回答されてい る(図3)。我が国の同様の調査では , 「礼儀正しくな る」という回答が最も多く「護身のため」という理由 はその半数以下である。実際に , 柔道の指導に期待し ている最も高いものが「技術の指導」であり , 「礼儀 の指導」よりも大きく上回っている。また , 柔道を習 わせたことの変化については , 「自信が持てるように なった」という回答が多く , カナダの調査とも同じ傾

向がみられた(図5)。

2.「柔道」をツールとした子どもと保護者との関わり 保護者自身が柔道を行っている割合が少なく , 全体 の 16.6% である(図 11)。そのため , 柔道に対する技 術的な知識も 53.2% の人が「知らない」「ほとんど知 らない」と回答している。同様に , 柔道の歴史・倫理・

道徳に関す知識についても 66.2% の人が「知らない」

「ほとんど知らない」と回答している。つまり , 保護 者の柔道に対する技術並びに知識提供の場が少ないた めに , 家庭で話すべき内容である柔道の倫理的な部分 についての会話が少なくなってしまうのではないかと 考えられる(図 10)。特に , 外国では技術的な部分以 上に , 武道としての精神的な部分が欠けてしまう可能 性があるために , 何らかの対策を講じる必要がある。

3.子どもの組み合う機会について

2012 年には「幼児期運動指針」が策定され , 特に幼 児期には , 力の加減やタイミングをコントロールする 能力が高まる時期であるとのことから , 基本的な運動 を習得しておく必要性について指摘されている(文部 科学省 , 2012)。その中でも相手と組み合い押し引き をする動作は , 他の球技等では得ることができない。

図 13.組み合うことの重要性について

(10)

我が国で行った調査では , 柔道以外に周りの友達とお 互いに組んだり押し合ったりする機会は , 「やや少な い」「ほとんどない」と回答した人が 64.7%であった のに対し , オーストラリアでは 23.1% にしか過ぎない

(図 12)。つまり , 日本では , 極端に相手と組み合う機 会が乏しい現状が明らかであり , 逆に我が国こそ幼少 期に柔道を通じた相手の力を感じあえる機会を増加さ せていかなければならないのではないかと考えられ る。

Ⅴ.まとめ

本調査は , オーストラリアにおける 12 歳以下の柔 道実践者の保護者に対して , 柔道に対する意識調査を 行った。柔道実践者の保護者も世間も柔道に対しては 肯定的なイメージを持っており , また , 礼儀や精神的 な部分も重視するが , 護身的な観点からも柔道は有用 であるととらえているようである。また , 柔道以外に も , 子ども達が相手と組み合ったりする機会が日本よ りも多いことが明らかになった。

参考文献

Bowen, Richard(2011): 100 Years of Judo in Great Britain, Vol.2, IndePenPress, p.366

文部科学省幼児期運動指針策定委員会(2012):幼児 期運動指針ガイドブック~毎日 , 楽しく体を動かす ために~

Nippon Budokan(2009): Budo; The Martial Ways of Japan, Nippon Budokan Foundation, Tokyo, 123- 260

曽我部晋哉 , 瀧本誠(2017a):ドイツ・フランス柔 道連盟教育普及施策調査報告 . 第 57 回研究調査報 告 . 全国高等学校体育連盟柔道専門部 , 4-22 曽我部晋哉,山崎俊輔(2017b):カナダにおける子

どもを取り巻く柔道環境に関する調査 . スポーツ・

健康科学教育研究センター論集(21), 33-38

(11)

参照

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