ハイブ リッ下 ・エンテ ィテ ィと国際課税問題
栗 原 売 文
Abs t r ac t
Va r i o usbus i ne s se nt i t i e sa r ef o undi nt o da y' sbus i ne s sc o mmuni t y,ho we ve r ,s uc hva r i e t i e so f bus i ne s se nt i t i e so f t e nc a us et a xpr o bl e ms . Whi l ei no nec o unt r y, ahybr i de nt i t yi st a xe da sac o r ‑ po r a t i o n,i ti sde a l ta sat r a ns pa r e nte nt i t yi nwhi c he q ui t yho l de r sa r es ubj e c t e dt ot a xa t i o ni n a no t he rc o unt r y. Thedi f f e r e nc ei nt a xa t i o no fhybr i de nt i t i e sc a nbeus e dt oi nt e r na t i o na l t a xa r bi ‑ t r a ge.
I nt heU. S. ,ma nyr e g ul a t i o nso nt a xp l a nni ngus i nghy br i de nt i t i e sha vebe e ni mpl e me nt e d , s uc ha s ( i )Cr e a t i ngdua lc o ns o l i da t e dl o s s ,( i i )Avo i di ngSubpa r tFr ul ea ppl i c a t i o n , ( i i i )Ta x de f e r r a l o nt r a ns f e r r i ngi nt a ngi bl epr o pe r t i e s , ( i v)Abus i ngf o r e i gnt a xc r e d i tme c ha ni s m,( Ⅴ)Ob‑
t a i ni ngbe ne f i to ft a xt r e a t y
,(vi )Avo i di ngc a pi t a l ga i nt a xa t i o n, ho we ve r , t he s er e gul a t i o nsdono t ne c e s s a r i l yha vee no ughe f f e c t i ve ne s st opr e ve ntt a xa vo i d a nc e.Ast heU. S.e xpe r i e nc ei nt hi s a r e ac a nbeve r yi ns t r uc t i vef o rJ a pa n, t hi sa r t i c l ego e so ve rt heU. S.r e gul a t i o nsc o ns i de r i ngi m
‑pl i c a t i o nsf o rt het a xt r e a t me nto nva r i o use nt i t i e si nJ a pa n. I no r de rt ot a c kl ei nt e r na t i o na lt a xa r
‑bi t r a ges ur r o undi ngt a xa t i o no fhybr i de nt i t i e s , f o r e mo s ti mpo r t a nc ei se a c hc o unt r y' So wne f f o r t . Li ke wi s e,de ve l o pl ngi nt e r na t i o na lc o mmo nunde r s t a ndi ngo nt hi si s s uet hr o ughe f f e c t i vet a x t r e a t i e so rt ho r o ughdi s c us s i o nsi st ho ughtt obee f f e c t i ve. Ami do ngo l nggl o ba l i z a t i o no fe c o no my whe r emo r edi ve r s i f i e dbus i ne s se nt i t i e sc o mei nt oe xi s t e nc e, f a i ra ndpr e d i c t a bl et a xa t i o nba s e d o nt hr o ughi nve s t i ga t i o na r ehi ghl yr e q ui r e d.
Ke ywor ds:Hy br i de nt i t y,I nt e r na t i o na lt a xa r bi t r a ge
目 次
1
は じめに2
損失の二重控除3
サブパー トF
規定4
無形資産の海外移転 に係 る課税繰 り延べ5
外国税額控除6
租税条約の特典利用7
譲渡所得課税8
日本 における論点 と対応の方向性9
おわ りに1
.はじめに事業体が課税主体 と扱 われ るか否 かについ ての各国税法 に よる分類 は, タ ックス ・プラ ンニングの戦略 に大 きな影響 を与 える。 あ る 国では課税主体 と扱 われ法人税 の課税対象 と な り,他の国では課税上透 明 と扱 われ持分所 有者 に対 して課税 され るな ど,国によ り課税 上 の取 り扱 いが異 な るハ イブ リッ ド ・エンテ
ィ テ ィ
( Hybr i d Ent i t y:
以下「HE」)
1は,租1 HE
は,事業体が設立 された国においては課税上 透 明 と扱われ,他方の国では法人 として課税 を受け るレギ ュラー ・ハ イブ リッ ド ・エンテ ィテ ィ( r e g u‑
l a rh y b r i de n t i t y)
と,事業体が設立 された国におい ては法人 として課税 を受けるが,他方の国では課税 上透 明 と扱われ る リバース ・ハ イブ リッド ・エンティテ ィ
( r e v e r s eh y b r i de n t i t y)
とに分類で きる。税裁定 ( TaxAr bi t r age) に利用 され る こ と もあ る。
米 国 にお いて HE の利 用 は ,1 997 年 か ら 導入 された,いわゆ る 「チ ェック ・ザ ・ボ ッ クス」規定 2 に よ り拡大 された。 この規定 は, あ る事業体がそれ 自体法人 ( pers ec or por a‑
t i on)でない限 り,事業体 が課税主体 に該 当 す るか否かを,納税者 が選択 で きる とい うも のであ り , LLC( Li mi t edLi abi l i t yCompany) , パー トナーシ ップ,ジ ョイン トベンチ ャー, 支店 な どの多様 な事業体 について,納税者 が 課税上 の取扱 いを選択 す るこ とが可能 とな る
ものである。
米国議会の租税合 同委員会 は 「チ ェック ・ ザ ・ボ ックス規定 は,現在 のエン テ ィテ ィの 分類 を簡素化 お よび 自由化す るもので,課税 目的上事業体 をパー トナーシ ップ として取 り 扱 うこ とが で きる よ うに拡 大 す る もの で あ る 。 」 3 として い る。 この新 しい規定 に よ り事 業体 の分類 は確 かに簡素化 され , 「投資 のた め に米 国国外 で の HE の利 用 を よ り魅 力的 かつ確 かな もの に してい る 」 4 と言 える。 しか し,その選択 が納税者 に委 ね られた結果 ,栄 国 と他の国 との間で異な る取 り扱 いを受 け る 状況 を創 出す るこ とが容易 とな り,課税上 の 問題 も拡大 した。 HE の活用 に よる租税裁定 は他の もの よ りも範 囲が広 く多様 であ り,特 に外 国所得 に関 しての租税 回避 を容易 に した
との指摘 もあ る
5。HE を利用 した国際的な租税裁定 が,いか な る場合 に租税政策上大 きな問題 とな りえる の で あ ろ う か 。 米 国 上 院 の 財 政 委 員 会
(
U. S.Senat eFi nanceCommi t t ee)は,栄
2
財務 省規則S3 01 . 7 7 01 ‑ 1 ‑3
3 J o i n tCo mmi t t e eo nTa x a t i o n( 1 9 9 7 )p.
1・4 I d. ,a t 1 4 7.
5 Ho l l a n d( 2 0 0 5 )p. 2 6 8.
国 と他 国 との居住者判定 の相違 を利用 して, 両国で居住者 とな るこ とに よ り,損失 を二重 に控除す る二重連結損失 ( DualConsol i daト edLos s)取引 を問題視 している
6。 また,サ ブパー ト F 条項 の回避 ,無形資産 の海外移転 に係 る規制 の回避,外 国税額控除の濫用,租 税条約の療典利用,譲渡所得課税 の回避 な ど にも利用 され得 る。
米 国 においては
,「チ ェック ・ザ ・ボ ック ス」規定 が導 入 された直後 の 1 997 年 に, HE を通 じて行 われた特定 の支払 いについて租税 条約 の特典 を制限す る内国歳 入法 ( Ⅰ nt er nal Re venueCode: 以下 「 I RC」)
894条 ( C) が制 定 され , その後 も HE を利 用 した 国際 的 な 租税 回避 を防止す るための各種の規定 が導入 されてい る。 「チ ェック ・ザ ・ボ ックス」規 定は,税法の簡素化 を 目的 として設 け られた ものであ るが, こうした各種 の規定 が,簡素 化 と逆行 している とい う指摘 もあ る ところで ある
7。多様 な事業体の活用 はビジネスの遂行 に有 効 な面 があ る一方 で, HE が様 々な租税 回避 に用 い られ る可能性 があ るが, HE の濫用 に 対 す る米 国 内国歳 入庁 ( I nt er nalRevenue Ser vi ce: 以下 「I RS」) や財務省 の対応 は必 ず しも十分 に有効な もの とな ってお らず,特 に,サ ブパ ー ト
F条項 の 回避 が顕 著 で あ る
との指摘 もあ る
8。 さ らに,I RSの研 究 にお いて も,米 国の多国籍企業 が ビジネスの多 く を外 国に移転 し,米 国の課税ベースを侵食 し てい る との問題 が提起 され9 ,その移転先 の 多 くは タ ックスヘ イブン国である とい う分析
6 S.Re p. No・9 9 ‑ 3 1 3
7 J a c o bs ,Ne wYo r kSt a t eBa rAs s o c i a t i o n
(以下NYSBA)( 2 0 0 2 )p. 2 3 5 ・
8 Ho l l a nd( 2 0 0 5 )p p. 2 6 7 ‑ 2 6 8.
9 Ma ho n ya ndWe nr i c h( 2 0 0 0 )
3
もあ り10, こうした動 き と 「チ ェック ・ザ ・ ボ ックス」規定 に よる事業体選択 を用 いて国 外所得 に対す る課税 を回避 す る動 き とが同時 に起 こって きてい ることは,偶然 とはいえな い との見方 もあ る11。米 国議会の租税 合 同委 員会 は,「チ ェック ・ザ ・ボ ックス」規定 の 問題点を認識 し,見直 しを示唆 してい る とこ
ろであ る12。
米国においては,
HE
を利用 した租税 回避 を防止す るため,多 くの対応 が図 られて きて いる。 しか しなが ら,その租税 回避 の態様 は 多様 であ り,完全 に租税 回避 を防止す るには 至 っていない。本稿 においては, 日本 におけ る多様 な事業体 に関す る税務上の取 り扱 いを 考 えてい く上 で,HE
を利用 した租税 回避 に 対す る米国の対応策 が有益 な教訓 とな り得 る 声とか ら,米国におけ る具体的な事例 とその 対応策及びその困難性 について考察 を加 え, 日本 におけ る事業体課税 の論点 と対応の方 向 性 を検討 す る。2
損失の二重控除(1)損失の二重控除 とその防止策
米国の法人であ りなが ら,外 国において も 法人の居住地 国 として扱 われ る二重居住法人
( Dua lRe s i de ntCo r po r a t i o n)
が,一 つの損 失 を米 国 と外 国の双方 に おいて二重 に控 除(
「ダブル ・デ ィップ」 と言 われ る) す るこ とがあ りえる。つま り,二重居住法人の損失 を,米国における連結納税 グループ と外国に おけ る連結納税 グループそれぞれに担 、て利 用 し,双方の連結所得 を減少 させ るものである。
1 0 Sul l i v a n( 2 0 0 4 )p p. 1 0 3 5 ‑1 0 4 6.
l l Ho l l a nd( 2 0 0 5 )p. 2 6 8.
1 2 J o i n tCo mmi t t e eo nTa xa t i o n( 2 0 0 5 )p p. 1 8 2 ‑1 8 5.
1 9 8 6
年 の税制改正 によ り,国際的な租税裁 定や,租税利益 を複数の国で享受す る 「ダブ ル ・デ ィップ」に対す る対策の一 つ として,I RC1 5 0 3
条( d)
が追加 された13。 この規定 は, 米国法人が米国で損失 を控除す る とともに, 外国において もその損失 を控除す る二重連結 損失( Dua lCo ns o l i da t e dLo b s )
について, 損失計上の制限 を定 めた ものであ る。I RC1 5 0 3
条( d)
及び財務省規則 §1. 1 5 0 3 ‑ 2
では,米国の法人が,外 国において も居住地 国 として扱 われ る二重居住法人 について,一 つの純事業損失( ne to pe r a t i o nl o s s )
を米国 と外国の双方 において二重 に控除す るこ とは で きない とされてい る。1 9 8 8
年 には,I RC1 5 03
条( d)
の適用範 囲, つま り二重連結損失の控除が制限 され る範 囲 が拡大 された。制限の対象 に,米国法人の外 国支店 が追加 され,その外 国支店 は米国法人 の1 0 0 %
子会社 とみな され,損失 の利用 が制 限 され るこ ととな った。 なお,外 国法人の米 国支店 は この制 限規 定 の対 象 とされて い ない 14。
1 9 9 2
年 には,現行の財務省規則 §1. 1 5 0 3 ‑ 2
が制定 され,二重居住法人は,二重連結損失 について,連結納税額の計算上控除す るこ と がで きない とされた。控除で きない二重連結 損失 の額 は,財務 省規則 §1. 1 5 02‑21
(C)のSRLY ( Se pa r a t eRe t ur nLi mi t a t i o nYe a r )
ルール に基づ き,単体 申告の中で,繰越 しあ るいは繰 り戻 しに よ り控除す るこ とがで きる こ ととされてい る。1 3
二重連結損失 に関す る規定の概要や変遷 について は,Ne wYo r kSt a t eBa rAs s o c i a t i o nTa xSe c t i o n ( 2 0 0 6 ) ,Mi l l s ( 2 0 0 4 )
を参照 した。1 4
これは,欠損金を有する外国法人の米国支店は, 米国の関連法人 と連結することがで きない との理 由 による。( NYSBATa xSe c t i o n( 2 0 0 6 ) p. 3 8 4. )
以下は,二重連結損失を制限する事例であ る。
∴u l 7 J l J
⊥ ・事業体 Ⅹ は,米国においては,課税上透 明 として扱 われ,Y国においては課税上法 人 と扱 われ る事業体であ る。
A, B, C
は事業 体 Ⅹのパー トナーであ り,A及 び Bは米国 法人,C
はY
国法人である。米国において, 各パー トナーは事業体への持分 に応 じて損益 を認識する。Y国においては,連結 申告上,C
の損益は事業体 Ⅹの連結 グループの所得に合算 される。財務省規則 §
1 . 1 5 0 3 ‑ 2 ( C) ( 3 )
及び( 4 )
の規定 によ り,A
及 びB
の持分部分 は,分離 された内国法人( s e p a r a t ed o me s t i c c o r po r a t i o n s )
と扱われ,A
及びB
へ配分 さ れ る Ⅹの損失 は,Ⅹ がA
,B
それぞれ に配 分する利益 に対 してのみ しか相殺することが で きない。直垂司 16
米 国 法 人 が
HE
を Ⅹ 国 に設 立 し,
Ⅹ 国HE
は Ⅹ国内に Ⅹ 国法人 を有 す る とす る。Ⅹ 国
HE
は,米 国では課税上透 明 と扱 われ るが,Ⅹ国では法人 として課税 され,Ⅹ 国(注) 矢 印 の 太 線 は 出 資 関係 を示 す (以 下 同 じ)。
図 1
1 5
財務省規則 §1 . 1 5 0 3 ‑ 2 ( C) ( 1 6 ) Ex a mp l e3.
1 6
本事例は高橋( 2 0 0 6 )9 5
頁 を参照 した。法人 とⅩ国
HE
は連結納税 を選択 している とする。 この場合,HE
に生 じた損失は,逮 結 申告 に よ りⅩ国法人 の所得 か ら控除 され る とともに,米国では Ⅹ 国HE
が課税上透 明のため,米国法人の所得か らも控除される こととなる。I RC1 5 0 3
条( d)
は こうした二重 の損失控除を制限 している。( 2)
二重連結損失の制限規定に係 る問題点( a)
ドメスティック ・リバース ・ハ イブ リッドを用いた
I RC1 5 0 3
条の回避 上述の ようにI RC1 5 0 3
条( d)
は,二重居住 法人について損失の二重取 り込みを制限 して いるが,事業体が設立 された米国においては 法人 として課税を受けるが,他の国 (保有者 の居住地国)では課税上透明 と扱われる内国 事業体である ドメスティック ・リバース ・ハ イブ リッド( Do me s t i cRe ve r s eHy br i d:
以 下「 DRH」)
17を活用す ることに よ り,二重 控除が可能 とな り得 るとい う問題が生 じている。
特 に
,1 9 9 7
年か ら導入された 「チ ェック ・ ザ ・ボ ックス」規定は,二重連結損失の制限 規定の適用 に大 きな影響 を与 えた。「チ ェッ ク ・ザ ・ボ ックス」規定はDRH
の創設 を容 易 に し,外 国法人 が所有す る米 国の事業体DRH
を利用することによ り,米国におけ る 利息費用を二重に控除することが容易 となった 。
次の事例
3
はDRH
を利用 した損失の二重 控除の例である。[裏面二司
Ⅹ国法人 が米国法 に基 づ き米 国 に事業体
1 7 DRH
は財務 省規則 §1 . 8 9 4 ‑1 ( d)( 2 )
(i)において定義 されている。
5
を設立 し,米国内において課税上法人 として 取 り扱 われ る よ う選 択 す る ( Ⅹ 国 で は課税 上透 明扱 い)。 この DRH が米 国の銀行 か ら 借 り入れを行 い,米国で運営 してい る法人の 株式 を取得 す る。 この DRH は米 国では法人 として取 り扱われ るため,銀行へ支払 われ る 利子 は,米国で営業 す る法人 と DRH とか ら なる連結 グルー プの所得 か ら差 し引 くこ とが で きる。米国銀行への利払 いは米国の居住者 に対す る支払 いであ るため,源泉所得税 は生 じない。 また,米 国銀行 への支払利 息は ,Ⅹ 国においては DRH がパ ススルー課税 とされ るた め ,Ⅹ 国法 人 の所 得 か ら差 し引 くこ と がで きる。
国法人
米 国 DRH ̲ ‑ ̲ i ̲ I
I 借 入択 凍 り払 い
米 国法人 米 国銀行 図 2
二重連結損失の控除制限は,米国法人が保 有す る支店等の " s e pa r a t euni t " が対象であ る。財務省規則 § 331. 77 0ト2( a) に よ り,外 国の課税上透 明な事業体 ( hybr i dbr a nc h) やパー トナーシ ップ持分 について も,二重損 失制限規定の適用上 " s e pa r a t euni t ' 'にな り, 制 限の対象 とな って い る。 しか し,事例 3 の
よ うに DRH は 1 503 条 ( d) において,控 除 の 制限の対象 となる " s e pa r a t euni t " に該 当 し て お らず, DRH を活用 した二重損失控除 を 防止す る必要 があ る との指摘 もあ る
18。1 8 NYSBATa xSe c t i o nRe p.No・1 0 0 4,Do c2 0 02 ‑ 1 084,2002WTDl1 ‑26 ( Jam.1 4,2002)
なお,̀ ̀ s e pa r a t euni t "
の定義を整理 した改正規則案 昏1
.1 5 03( d)( 5 )
において も,DRH
については規則の対 象に含まれていない。チ ェック ・ザ ・ボ ックス規定 によ り事業体 の活用 が多様 化 した こ とに対応 して, DRH を含 め,規則の対象範 囲の拡大や取 り扱 いの 明確化が課題 とな ってい る
19。( b)損失の二重不控除の問題
外 国で控除 されなかった損失 については二 重連 結 損 失 に含 まれな い こ と とされ て い る ( I RC1 5 03 条 ( d)( 2 )( B) )が,その例外 として, 外 国での二重損失控除の制限規定 によ り控除 で きなか った場合 には,当該損失は外 国にお いて控除 された もの として取 り扱 うこ ととさ れ て い る ( 財 務 省 規則 § 1. 1 503‑2( C)
(1 5)
( i v): 「ミラールール」呼ばれ る。) 。つま り, 外 国で控除 されない損失 について も,米国に
おいては二重連結損失 に該 当 し,他の所得 と 相殺 で きない ことにな る。 この 「ミラールー ル」 について争 われた事例 として Br i t i s hCa r Åuc t i o nsl nc.Ⅴ.U. S. があ る。
[ Br i t i s hCa rÅuc t i o nsl nc.Ⅴ. U. S. ] 2 0 損失 を有す る米国法人は,英 国において も 居住者 として扱 われていた。英 国には二重連 結損失の制 限規定
21があ るため,その損失 を 控除で きない。 そ こで納税者 は,米国におけ る連結 申告 で,その損失の控除 を求めたが, 認 め られなかったため,提訴 した。裁判所 は, 二重連結損失の制限規定 があ る外 国で控除 さ れなかった損失 については,米国の二重連結 1 9 NYSBATa xSe c t i o n( 2 0 0 6 )
では,2 0 0 5
年5
月に 発出された新 しい財務省規則案についての解説 とと もに対象範囲のさらなる明確化が必要 としている。20 11 6F. 3 d1 497,Doc97‑1 8222,97TNI1 41 ‑31 ( Fe d.Ci r .1 9 9 7 ).
21
英国における二重連結損失を解説 した もの としてMc Go wan ( 2 004)
参照。典型的な二重居住法人 と して,米国デラウェアで設立 され英国において管理 支配 されている会社を例示 している。損失に含まれないこととすると,米国の歳入 が失われることとなる として,当該規定は有 効であ り,合理的な制限である とし,納税者 の主張を退けた。
「ミラールール」は,米国の歳入の犠牲の 下に外国が税収を確保することを防止するこ とが 目的であるが,Br
i t i s hCa rAuc t i o nsl nc.
Ⅴ.
U. S.
の事例の ように,他国で損失を控除 していない場合にも,この規定 により,米国 での損失の取 り込みが制限される懸念が発生 している。「ミラールール」 によ り,双方の 国で損失の取 り込みが制限された場合に,租 税条約に基づ く権限ある当局間における協議 が考 えられるが, これまで行われた事例はな い模様である22。( C )二重連結損失制限規定の一貫性
多様な取引について,二重連結損失を制限 する規定の適用対象 となる範囲を明確にする 必要 があ る。2005 年 5
月に発 出されたI RC 1 503
条( d)
に係 る財務省規則案 は,「チ ェッ ク ・ザ ・ボ ックス」規定によるこれ らの事業 体の拡大 に対応 して,支店,課税上透明な事 業体及びパー トナーシ ップについて,二重損 失控除の制限の対象 となるSe pa r a t euni t
の 範囲を整理す るものである23。 この規則案 に おいては52
の事例が示 され,明確化が図 られ ているが,類似の経済取引について異なる課 税結果が生 じることが懸念されている。例えば次の ような取引である。米国法人が, 外 国で
HE
を設立 し,そのHE
が,非 関連 者か ら資金を調達 し,損失が生 じた場合には,その損失は二重連結損失になる。一方,米国 法人 が非関連者 か ら資金 を調達 し,外 国の
2 2 NYSBATa xSe c t i o n( 2 0 0 6 ) p. 3 8 7.
2 3
ミラールールについては大 きな変更はない.HE
に資金を貸 し付けた場合 には,米国法人 の支払利子は二重損失控除ルールの適用対象 にはな らない24。類似 した
2
つの取引について,異なる結果 が生 じる可能性があ り,二重損失控除の規定 の適用範囲を明確化する必要があるが,可能 性のある取引をすべて網羅することは容易なことではないであろう。
なお,
I RS
は手続面の明確化に努めてお り,2 0 0 6
年2
月に,二重連結損失の制限規定に関 す るNoti ce
を発 出 した25。一定 の要件 を満 たす ものについては,IRC1 5 03
条( d)
に基づ く二重連結損失制限が適用 されない こととさ れている̲が, このNot i ce
は,その場合 に必 要 とされる資料 (他国で損失を控除 しない と い う取極め,反証,その他の情報)を期限内 に提出しなかった場合の救済規定である。以上の ように,二重損失の制限規定である
I RC1 5 03
条 については,その適用対象につい て一貫性を確保 しつつ明確化することは容易 ではない。また,制限を過度に適用する と, 損失を どち らの国で も控除で きない二重課税 の状況 が創 出され る とい う問題 も生 じてい る。3
サブパートF規定 (1)サブパートF
規定の概要米国におけるタックス ・ヘ イブン対策税制 であ るサブパー トF規定 の 目的は,米国居 住者が,低課税国に所在する被支配外国法人 に所得を留保することによる米国での課税繰 り延べを防止することである。サブパー ト
F
規定は,被支配外国法人の受動的投資所得 と2 4 NYSBATa xSe c t i o n( 2 0 0 6 ) p. 3 8 0.
2 5 I n t e r n a lRe v e n ueBul l e t i n:2 0 0 6 ‑ 8 ,Fe b.2
1,2 0 0 6 ,No t i c e2 0 0 6 ‑ 1 3.
7
関連法人 との取引か ら獲得 した所得を対象 と してお り,被支配外国法人の米国株主は,拷 分割合 に応 じてサブパ ー トF所得 を総所得 に算 入 しなければな らない こ ととされてい る。
( 2) HE
を利用 したサ ブパートF
規定 の適 用回避HEを利用 してサブパー トF規定の適用を 回避する例 として,次の ような ものがある。
吊刊l
米国法人が Ⅹ国 (高税率)に子会社
A
を 所有 してい る。 この子会社A
は支配外 国法人
(ControlledForeignCorporation:以下
「cFC」)とな り,サ ブパー トF規定の適用 を受 け,CFCの受動的所得 については,莱 国法人 (株主)への配当の有無に関わ らず米 国法人の所得に含 まれる。一方,事業活動か らの所得 については,米国法人に配当される まで,米国での課税は行われない。 しか し高 税率 の Ⅹ 国で課税 され るため,HEが利用
米国法人
† 一 一 \ ト
子会社
A (
Ⅹ国)国子会社A
借入ー
利 払 い→
l
†借入1利 払 い
レ / ー\ l
される。
図
卜1
において,米国法人が Ⅹ国に子会社A
及び タックスヘ イブン国に子会社B
(いず れ も1 0 0 %
所有)を看す る。Ⅹ 国子会社A
は 能動的事業活動 を行 っている●ためその所得は サブパー トF所得 とされない。Ⅹ国子会社A
が Ⅹ国での租税負担 を減少 させ よう として タ ックスヘ イブン国の子会社
B
か ら借入 れを行い,利息を支払い,所得か ら支払利息 を控 除 した として も,外 国子会社B
が受 け 取 った利息 はサブパー トF所得 として米 国において課税 される。
そ こで,HEを利用 してサブパー トF規定 を回避 しようとす るケースが図
1 ‑ 2
であ る。米 国法人は,事業活動 を行 っている Ⅹ 国子 会社
A
に事業体B
をタ ックスヘ イブン国に 設立 させ る。事業体B
は Ⅹ 国では法人 とし て扱われるが,米国では別個の事業体 とはみ なされない (パススルー課税 を選択)0Ⅹ国 子会社A
は事業体Bか ら借入 を行い,Ⅹ国
子会社A
は支払利息を所得 か ら控除す る。これに よ り,Ⅹ 国での高税率 を受 け る Ⅹ 国 子会社A の所得 が減少す る (Ⅹ国での過少
子会社
B
(タ ック‑イブン国)図 ト1
外国事業体B(タ ックス‑イブン国)
図 1 ‑ 2
資本税制の適用がない もの と仮定)。 この利 息 は事業体
B
の所得 として タ ックスヘ イブ ン国で課税 されるが,低税率国であるため少 額の課税 となる。米国における取 り扱いは, 一般的には,利●子所得は,受動的所得 として サブパー トF規定の適用 を受ける。 しか し,このケースは,事業体Bは米 国では課税上 別個の事業体 とされないため,利払いは内部 取引 として課税関係は生 じない。したがって,
Ⅹ 国におけ る子会社
A
の事業所得 への課税 は減少 し,タックスヘ イブン国において低税 率による課税が行われるとともに米国でのサ ブパ ー トF規定 の適用 は受 けない こととな る26。l事例 2‑
サブパー トFの規定 では,通常 ほ とん ど の配当や利子等の受動的所得の受け取 りは, 外 国人的持株会社所得
( For ei gnPe r s ona l Ho l di ngCo mpa nyl nc o me
27) として,米国 において課税 されることとなるが,同一国内 の関連法人か ら受領する特定の受動的所得 に ついては,サブパー トF
規定 の対象か ら除 かれている( I RC9 5 4
条( C )( 3 )( A) )
。つま り, 同一 国内にあ る関連会社か らCFC
が受領す る利子及び配当については,それがその国で 事業活動を行 ってお り,相当の資産 をその国 に有 してい る場合 には,サブパ ー トF条項 は適用 されない とい うものであ り," Same Count r yExcept i on' '
と呼 ば れ る。 このSa meCo unt r yExc e pt i o n
の規定 とDRH
を 利用 して,サブパ ー トF規定 の適用 を免 れる事例が図
2
である28。2 6
よ り詳細 には以下 を参照。I RS,No t i c e9 8 ‑
ll,1 9 9 8 ‑ 6I RB1 8 ,J a n ua r y1 9 9 8
,本 田( 2 0 0 6 )1 1 0 ‑ 1 1 1 頁 ,Ri n g( 2 0 0 2 )p p. 9 6 ‑ 9 8.
2 7 I RC9 5 3( a ) ( 1 ト( C )
2 8 Ha r v e y ,Bu r kea n dS h a p i r o (( 1 9 9 6 )p. 2 2 1
よ り 引用。図
2
において,米 国法人 は,Ⅹ 国に事業 体A
と子会社B
(事業を遂行 している会社) を有 してい る。Ⅹ国事業体A
は,Li mi t ed Pa r t ne r s hi p
であ り,米国においては,「チ ェック ・ザ ・ボ ックス」規定 により法人 として の課税 を選択 す る。事業遂行上 の理 由か ら
Ⅹ国子会社
Bは Ⅹ 国事業体 A
を必要 として お り,Ⅹ 国子会社Bの ほ とん どの資産 は Ⅹ 国における事業活動 に使用 されているもの と する。Ⅹ 国事業体A
は Ⅹ 国子会社B
に貸 し 付けを行い,利息収入を受け取 る。 この受取 利息は,Sa meCo unt r yExc e pt i o n
の規定29に よ りサブパー トF所得 とな らず,米国での 課税の対象 とはな らない。l米国法刃
二 十 ㌧
l
X
国 事 業 体A
利 払 い→区 国 子 会 社Bi
図 2
L革製j」
次の事例は配当の取 り扱いに関するもので あ る(図
3
)。米 国法人 が,Ⅹ国に子会社A
を有 し,Ⅹ 国子会社A
が Ⅹ 国に事業体Bを
有す る。事業体Bは製造活動 を遂行 してい る。Ⅹ 国事業体B
が法人であ る とす る と,I RC954
条 (C)によ り,事業体B
か ら子会社A
へ支払 う配 当は,子会社A
が製造活動 を 行 っていないため に,サブパー トF
所得 と な り,米国の課税を受けることとなる。 しか し,
「チ ェック ・ザ ・ボ ックス」規定 に基づ2 9
支配外 国法人が,同一の国内か ら受取 る利子,配 当は,一定の要件下 で,サブパー トF
所得 か ら除か れる( I RC9 5 4( C )( 3 ) ) 0
9
き事業体Bを課税上透 明 とす るこ とを選択 す る と,子会社
A
が製造活動 を行 っている ことにな り,子会社A
の所得 は能動的所得 とな るため,サブパー トF所得 か ら除かれ ることになる30。子 会 社 A ( Ⅹ 国 )
l †配 当支 払 い
レ / \ ⊇ 事 業 体 B ( Ⅹ 国) 製 造 活 動 図 3
上記事例 3に関連 して,次の裁判例がある。
[ Br o wnGr o up,I nc. Ⅴ.Co mmi s s i one r ,7 7 F.
3 d21 7( 8
thCi r .1 9 9 5 ) ]
Br ownGr oup
は1 00%内国子会社 であ る I nt e r nat i o na l
社を有 してお り,I nt e r na t i o na l
社がケイマン諸島に10 0 %子会社 Br o wnCa y一 man
社 を有 していた。BrownCa yman
社は ケ イマ ン諸 島のパ ー トナ ー シ ップ で あ るBr i nc o
の88%の出資者であ り,Bri nc o
は,Br ownCayman
社の購入のための業務 を行っていた。
仮 に,Br
i nco
が法 人 であれば ,BrownGr oupに よる支配割合 か ら,Br i nc o
の所得 まで サ ブパ ー トF規 定 の対 象 とな るが ,Br i nco
はパ ー トナ ー シ ップで あ るた め,I RC9 5 4
条( d)( 3 )
に規定する「r e l a t e dpe r s o n」
には該 当せず ,サブパー ト
F
規定 の対象 と な らない とBro wnGr o upは主張 した。
I RS
は,Bri nc o
が「 r e l a t e dpe r s on」に該
当す るか否 かは争 わず,BrownCayman
社 にBr i nc o
の所得が出資割合に応 じて分配 さ れた として,その分配額 をBr ownCa yman 3 0 Pa ul R .Mc Da ni e le t .a l . ( 1 9 9 8 )pp. 9 2 ‑ 9 3.
社は所得に算入すべ きであると主張 した。
巡回裁判所は,1
9 8 7
年以前のI RC9 5 4
条( d) ( 3 )
の規定による「 r e l a t e dpe r s on
」の定義で は,Bri nco
の所得 はサブパー トF条項の対 象 とな らな い とし,パ ー トナ ー シ ップ はI RC952
条の適用上サブパー トF所得 を有せ ず,その性質は子会社にまで維持 されるため (性質決定の問題はパー トナーの段階で判断 され る。),サブパー トF所得 は存在 しない と判示 し,Br o wnGr o upの主張を容認 した。
なお,上記事例 の他 に も,CFCの株式 を 譲渡する直前に,子会社形態か ら支店形態 に 変更する 「チ ェック ・アン ド ・セル取引」に よ りサブパー トF規定 を回避 す るスキーム がある31。
( 3)
対応策事例 1,
2
の ように外 国のHEを利用 し
てサブパー トF規定 を回避 す るこ とを防止 するため,IRS
は19 9 8
年2
月にNo t i c e9 8‑ ll , 1 9 98‑6 Ⅰ . R. B.
を発 出し,子会社 を支店 (パ ススルー課税) として扱 う納税者の選択を覆 す規則の作成を予告 した。 このNo t i c e9 8‑ll
に続 いて,サブパ ー トF所得 の算定上 にお いては,事例 1の ようなHE
は,課税上透 明な もの として取 り扱わない という規則案が 示 された32。しかし,産業界か らの反対や, この規定は 外国の課税ベースの浸食の防止には有効だが 米 国におけ る課税 への効果 が少 ない との指
摘
33もあ り,このNo t i c e9 8 ‑1
1は,Not i c e9 8 ‑ 31
その詳細や対応策 については,本 田( 2 0 06 )1 1 2 ‑
1 1 4
頁参照。3 2 TD8 7 6 7
及びREG‑1 0 4 5 3 7 ‑ 9 7
3 3 NYSBATa xSe c t i o n( 1 9 9 8 )p. 8 8 0.
35
34によ り撤回された。後 に,Not i c e98‑ll
とはば同様 の内容の規則S1. 954‑9
が提案 さ れたが,まだ最終規則 にはなっていない模様 である35。事例
3
の ように,CFC
がその所得 を従属 パー トナーシ ップに移転することにより,サ ブパー トF条項 の適用 を回避 す るケースへ の対応 として,Br o wnGr o upCa s e
の後,皮 濫用規定である財務省規則 §1. 701 ‑2( e)[ A‑
bus eofe nt i t yt r e a t me nt ]
が制定 された。 こ の規定 は,I RS
長官はI RC
の趣 旨に鑑 み適 切 と判 断 した ときにはパ ー トナーシ ップを パー トナーの集合体 として扱 うことがで きる とい うものである。規則では,パー トナーシ ップの活動 は,CFC
に直接 に帰属す ること とされ,パー トナーシ ップの所得 はCFC
の 所得 に合算されることになる36。4
無形資産の海外移転 に係 る課税繰 り延べ(1)無形資産の海外移転 に係 る課税繰 り延 べに係 る防止規定
法人組織再編 により米国居住者が資産を外 国法人へ移転 した場合,一定の条件の下で収 益の認識を行わないこととされているが, こ れの濫 用 を防止 す るため に
,I RC367
条 が1 9 3 2
年 に導入 された。同条及び暫定規則 昏1.367( aト6 T
は,米 国居住者 が含 み益のあ る 無形資産を海外 に移転 した場合の課税繰 り延 べを防止するための規定である。3 4 1 9 9 8 ‑ 2 7Ⅰ . R. B. ,I s s u e dJ u n e 19 ,1 9 9 8.
3 5
撤回の経緯 とその後の詳細 については本 田( 2 0 0 6 ) 1 1 卜1 1 2
頁参照。3 6
この規則 について,出資割合 が僅少のCFC
につ いての取 り扱 いが不 明確であ る とい う指摘 もあ る。( Mc Da n i e l , e t . a l .( 1 9 9 8 )p. 1 0 0. )
( 2 )l RC3 6 7
条の回避37「チ ェック ・ザ ・ボ ックス」規定 による事 業体課税の選択 によ り
,I RC367
条の適用 を 回避 して,米国で課税 されずに無形資産を外 国法人 へ移転 す るこ とにHE
は利用 され得 る。 米 国法人 が海外 にHE
を設立 (出資者 は当該米国法人のみ)す る (図1)。 この外 国HE
は,米 国では課税上透 明 と扱 われ, 外国においては法人 として課税 される。つま り,資産 のHE
への移転 が同一法人 内での 移転 とな り,税務上収益の認識がなされない こととな り,I RC367
条 の適用回避 が可能 と なる。米 国法 人
設4
1資 産 移 転
レ/ ー\ 】外国
HE 図 1
( 3)
考 察上記事例の場合,当該法人のみでな く,他 の法人 が
HE
に出資 してい る場合 ,財務省 規則 §3 01. 7 7 01 ‑ 3
により,外国パー トナーシ ップ とみなされ,収益を認識することとなる 可能性がある。海外 に移転 した資産は,将来,米国の課税 を受けることとなるため,課税繰 り延べの効 果のみ有することとな り,適格の企業組織再 編 と同様の効果をもた らすのみである。ただ し,資産の価格が下落 した後 に第三者 にその 資産を移転 した場合には,米国での課税の機 会が失われる可能性は残 ることとなる。
3 7
本事例 は同上p p. 8 5 ‑ 8 6
を参照 した。ll
5 外国税額控除
( 1) HE
を利用 した外国税額控除の適用HE
の利用 によ り,外国税額控除の適用を 受け,税負担の軽減を図る方法がある。以下 においてい くつかの事例を検討する。「旬刊‥
財務省規則 §1
. 7 01 ‑2
においては,HE
仁 ついて適用可能な事例が掲げ られている。 こ れ らは制度上認 め られてい るHE
の活用 で あ り,次の ような事例がある。直接外国税額控除は,海外で事業活動を行 っている内国法人が適用可能であるが,海外 での事業 を
HE
を通 じて行 う場合 ,米 国 に おいては課税上透明であ り,外国においては 課税上法人 として扱われるため,米国におい て直接外国税額控除の適用を受けることが可 能である38。苗̲ ( ' J u T
パー トナーシ ップへの課税について,それ ぞれのパー トナーに対 して課税 (パススルー 課税)される国に リバース ・ハ イブ リッド ・
エンテ ィテ ィ (米国では法人 として課税)を 設立する。パー トナーである米国居住者は, パー トナーシ ップに係 る所得を算入するとと
もに外国で納付 した税額を直接控除 しようと するが,米国においては,その リバース ・ハ イブ リッド ・エンティティを法人 として扱 う ため,所得 に算入する必要がない。つま り, 外国では リバース ・ハ イブ リッド ・エンティ ティを課税上透明 とみるため,パー トナーが 直接課税 され,米国のパー トナーは外国税額 を控除する。一方,米国では事業体は法人 と 扱われるため,事業体の所得は,配当される
3 8
財務省規則 §1 . 7 01 ‑ 2 ,Exa mp l e 3.
まで米国パー トナーの所得 に加算 されない。
そこで,パー トナーである米国居住者は外国 税額控除を享受する一方で,パー トナーシ ッ プの所得算入を繰 り延べることが可能 となる プランニングが考 えられる39。
[重囲二司
HE
とともに,ハ イブ リッド商品( Hybr i d I ns t r ume nt )
を活用 したプランニングもある。ハ イブ リッド商品は,一方の国では資本
( E‑
qui t y)
として扱 わ れ,他方 の 国で は負債( De bt )
として扱われるものである。例 えば,米国法人が Ⅹ 国に事業体
A
を設 立 し,1 0 0, 0 0 0
ドルを出資する (出資割合1 0 0
%)。事業体
A
は外 国法人 か ら9 00, 00 0
ドル を借 り入れ,年8%
の利息を支払 う。 外国法 人 と事業体 A は非関連法人であ る。次 に, 事業体 A は,Y 国にある B社 の優先株 を1,0 0 0, 0 0 0
ドルで購入 し,B
社は事業体A
に年1 0 %
の配当を支払 う。 この配当には2 0 %
の源 泉課税が行 われると仮定する。Ⅹ 国において,外 国法人 か ら事業体
A
へ の貸付 がEqui t y
投資 とされ,事業体A
は パー トナーシ ップ と扱われるとする。B社か ら事業体A
への配 当に対 して20%
の源泉徴 収が行われた場合,パー トナーである外国法 人は2 0, 0 00
ドル (1, 0 0 0, 0 0 0
ドル×1 0 % ×2 0
%)の外国税額を控除で きることになる。一 方 ,米 国においては,当該貸付 は事業体
A
の債務 として認識 される。また,「チ ェック ・ ザ ・ボ ックス」規定 に よ り,事業体A
が課 税上透明な主体 として扱われるよう選択 した と仮定す る と,事業体A
は米国法上 ,米国 法人の一部 とな り,米国法人がY
国におい て源泉徴収 された外国税額 を控除できること にな る。米 国 とⅩ国 との間で異な る取 り扱3 9 Ha r v e y,Bu r ke & Sha pi r o( 1 9 9 6 )p. 2 2 0
参照 .いによ り,米国法人及び外 国法人の双方が外 国税額 を控除することが可能 となる40。
[ 垂褒二 司
米 国法人
A
が,1 0 0
.ドル を 出資 して Ⅹ 国 に事業体Bを設立 す る。 事業体Bは米 国の 税務上支店 (パススルー課税) として扱われ る。事業体Bは Ⅹ 国の非関連法人 Cか ら年 8%
の利率で9 0 0
ドルの借入 を行 う。 これ ら によ り調達 した資金1 , 0 0 0
ドルを事業体Bは Y国の非関連 法人 の発行 す る年1 0 %
の配 当 利 回 りの優先株式 を購 入す る。配 当はY 国 において2 5 %
の源泉徴収の対象 となる。Ⅹ 国の税務上 ,事業体
B
はパ ー トナー シ ップ と扱われ,C
か らの資金調達 は借入では な くパー トナーシ ップへの出資 とみなされる ため,Cは Ⅹ 国 において,事業体Bが負担
す るY国源泉税 の9 0 %
について外 国税額控 除 を適用 す る。一方 ,米 国税務上 はC
か ら の資金調達 は負債 であ るた め,Y 国源 泉税 の1 0 0 %
について外 国税額控除 を適用 す る。つま り,米国法人A は
,1 0 0
ドルの配当か ら 支払利息7 2
ドルを控除 した2 8
ドル に対 して2 5
ドルの外国税額の負担が生 じ,同額 を外国税 額控除することとなる。 この ように米国法人
A
とCとの双方 が同 じ外 国税額控 除 について控除することになる41。
( 2)
外国税額控除適用の可否に係 る裁判例 等上記′の事例は,現行の外国税額控除の規定
( I RC9 01
条 ) を文言上適用可能 と仮定 した 場合 に成立 し得 るものであ る42。 しか し,過4 0 Doe r nbe r g ( 2 0 0 1 )pp. 4 0 4 ‑ 4 0 6
参照 .41
本庄( 2 0 0 4 )2 85
頁 よ り引用。4 2 Ha r ve y,Bur ke&Sha pi r o ( 1 9 9 6 )p. 2 2 0
参照。去の裁判例 においては,実際に所得 が分配 さ れるまで外国税額控除の適用が認め られない とい う判決 があ る43。 この判決 は,アルゼン チン とコロン ビアに
2
つの リバース ・ハ イブ リッ ド (米国では法人課税 ,外国ではパー ト ナーシ ップ課税)を有す る米国法人の外 国税 額控除が認め られなかった ものである。 した がって,判例法においては,実際 に所得が分 配 され るまで外国税額控除の適用 が認め られ ない こととされ,一応の濫用防止 となってい るとも考 え られる。I RS
は外 国税額控 除 の濫 用 に対応 す るた め,1 9 9 7
年1 2
月 にNo t i c e9 8 ‑ 5
44を発 出 し, 外国税額控除額 に比 し期待 される経済的利益 が僅少な場合に濫用 と見 るな どの基準が示 さ れ 濫用的な取引に関す る事例が掲げ られて いる45。6
租税条約の特典利用( 1 )HE
を通 じた租税条約の特典利用HE
を利用する ことに よ り,租税条約上の 特典を享受す ることが可能 とな り得 る。次q)ような事例があげ られる。
[ 垂
褒∃]条約の特典 を享受する典型的な例 として, 米国議会が早 い段階で懸念 していた もの とし て,
HE
を通 じた イソダイレク ト ・ローンが あげ られ る46。43 AbbotLabor at or i esv.U. S. ,160F.Supp・
31( N. D. I L. 1 95 8),af f ' d267F. 2 d940( 7
thCi r.
1 9 59 )
4 4 1 9 9 8 ‑ 3I RB4 9 ( J a m.2 0,1 9 9 8 )
45 Not i c e98‑5
を詳細 に解説 した もの として, 占部( 2 0 0 1 )3 7 ‑ 40
頁参照。 なお,No t i c e
には財務省規 則制 定の意 向が示 されているが,包括的な防止規定 の制定 には至 っていない模様である。4 6 Buz a ni c h( 2 0 0 4 )p. 7 5
,本 田( 2 0 0 6 )1 0 5
頁 を参照。1 3
まず,カナダ法人が,米国
LLC
を通 じて, 米 国法人へ貸付 を行 う。 米国LLC
は,米 国においては納税主体 とな らず (構成員が課税 され るパ ー トナー シ ップ課税 ), カナ ダにお いて は法 人 として課 税 され る
HE
で あ る。米 国
LLC
はカナ ダ法人 か ら得 た資金 を, カ ナダ法人の米国子会社 へ貸 し付 け,米国子会 社 は米国LLC
に利子 を支払 う。 この利子は, 米 国LLC
か らカナ ダ法 人 に配 当 として分配 され る。米 国 においては,米 国法人 か ら米 国
LLC
への利払 いは,カナダ法人へ直接行 われた も の として,米国法人は利子支払 いを所得 か ら 控 除 で きる47。 米 国LLC
は,課 税 上透 明な 主体であ り課税 されない。カ ナ ダ に お い て は , カ ナ ダ法 人 は 米 国
LLC
か ら配 当を受 け取 るが, カナ ダ と米 国 との 租 税 条 約 上 , 課 税 が 免 除 さ れ て い る(Canada‑U.S.TaxTreaty第24条(2)(b))。
したが って,米 国法人 に よる利子支払 いは, 米 国
LLC
とい うHE
を通 じる こ とに よ り, 加米租税条約 に よる軽減税率1 0 %
の源泉徴収 のみで完結す るこ ととな る。恒 ナ ダ 法 刃
丹:L'J=̲I」、
この事例 は
DRH
を利用 した ものであ る48。47 I RC1 63
条 (j)に よる利子控除の制限の適用 がない と仮定。4 8 REG‑1 071 01 ‑0 0,66Fed.Re g・1 2 445( Fe b・27
,20 0
1),説 明 した もの として本田(2006)1 07‑1 08
頁,Ri ng ( 2 002)pp. 9 9‑1 00
参照。Ⅹ 国法人 が ,米 国 の法 人 を買収 す るた め , 米 国 にパ ー トナー シ ップ を設 立 す る。 米 国 パー トナーシ ップは,チ ェック ・ザ ・ボ ック ス規定 に よ り,米国で法人 として課税 され る よう選択 す る。外 国か らは課税上透 明,米国 では課税主体 と扱 われ る。
Ⅹ 国法人は,米 国
DRH
に対 し,出資 とと もに貸付 け を行 う。 その資 金 に よ り,米 国DRH
は米 国法人 を買収 す る。 米 国法人 か ら 米 国DRH
への配 当は,米国DRH
か らⅩ 国 法人への利払 いに充 当す る(図2
)0区
国法刃
米 国
DRH
出 資
岳 岳 憂 国
図 2
図
2
において ,米 国法 人 ,米 国DRH
,Ⅹ
国法人間でのキ ャッシ ュフローを見 る と,吹 の ようにな る。
① 米 国 において,米 国法人 か ら米 国
DRH
への配 当支払 いは,連結納税 申告書上 ,内 部 取 引 と して 消 去 さ れ る。 他 方 , 米 国
DRH
,Ⅹ 国法 人 への利 子支払 いは,連 結 納 税 申告上 ,控 除可 能 で あ る。 米 国 とⅩ 国 との 問 に租 税 条約 が締 結 されて い る場 合,利子支払 いにかか る源泉徴収税額 は, 軽減 され る。② Ⅹ 国では,米 国法人 か ら米国
DRH
への 配 当支払 いは,直接 Ⅹ 国法 人 へ分配 され た もの として扱 われ る。 当該 配 当 は ,Ⅹ
国法人の課税上 ,米国法人 が米国へ支払 っ た税額 について,一部外 国税額控除で きる 可能性 (あ るいは親子会社間の配当であ り, 免税 とされ る可能性)があ る。③ 結果 として,租税条約上,米国では,醍 当は所得か らの控除可能な利子 として扱わ れ る一方 ,Ⅹ国では軽減 (免税 ) された 配当 として扱われる。
以上 の裁定 は,Ⅹ 国において Ⅹ 国法人の 受け取 りが配当 とされることか ら可能 となる
ものである。
[ 垂直司
次の事例は, リバース ・ハ イブ リッド ・エ ンティテ ィを利用するものである。米国法人 が Ⅹ国 に事 業 体
A
と外 国法 人Bを有 す る
(図3) 0Ⅹ国に設立 された事業体 A
は,栄 国においては課税主体 と扱われ法人課税の対 象 とな る一方 ,Ⅹ 国においては課税上透 明 として扱われる。 この場合の課税上の取 り扱 いは,① 外国法人
B
か ら事業体A
への利払いは, 外国法人2
で損金算入可能 となる。事業体A
の利子の受取 りは,Ⅹ 国で事業体A
を 課税上透明 と扱 うため課税 されないことに なる (米国法人が受け取 った ともの とされ る)。 また,米国 とⅩ国 との租税条約で源 泉課税免除になっている場合,課税 されない 49。
(∋ 米 国においては事業体
A
を課税主体 と して扱 うため,米国法人へは課税 されない。匝国痕人L
事 業 体
A( Ⅹ国)
図 3
4 9
米国 と外国 との条約で,利子の源泉徴収は5%
以 下ではあるが課税 で きる としている と仮定する と, 外 国法人B
か ら米 国への支払 いが利子 であればⅩ
国は課税するこ とが可能であ る。また,同一国内での利払いであるためサブ パー ト
F
所得 とな らない。[ 垂褒∃]
次の事例は
DRH
を利用 した外国税額控除 の利用である (図4)500Ⅹ国法人 が米 国法 に基 づ き米国 に事業体 (米国
DRH)を設立 し,その事業体は米国
国内において課税上法人 として取 り扱われる よう選択 す る一方 ,Ⅹ 国においては課税上 透 明 として扱われる。 このDRH
は米国の銀 行か ら借 り入れを行い,米国法人を設立する。米国