卒業論文
酸性坑廃水中に存在する底生微生物の水質形成作用
2008
年
3月
北九州市立大学 国際環境工学部 環境化学プロセス工学科
小松 健太
目次
1.要旨/Abstract 2.緒言
3.筑豊地方における酸性坑廃水の調査 3-1. サンプル地点及びサンプリング 3-2.分析方法
3-2-1.pH、EC、DO、ORP
3-2-2.全炭素(TC)、全有機炭素(TOC) 3-2-3.全窒素(TN)
3-2-4.全リン(TP) 3-2-5.溶存2価鉄
3-2-6.溶存金属(Fe、Al、Ca、Mn、Si) 3-3.実験結果
4.泉水の酸性坑廃水及び南田川の調査 4-1.サンプル地点及びサンプリング 2 4-2.実験方法 2
4-3.実験結果 2
5.酸性坑廃水中に存在する底生微生物の水質形成作用 5-1.サンプル地点及びサンプリング 2
5-2.実験方法 2 5-3.実験結果 2
6.結言
7.謝辞
8.文献
9.付録
1.要旨
酸性坑廃水とは炭坑などから流出する排水である.他の酸性坑廃水とは異なる福岡県鞍 手郡鞍手町泉水での過去5回の調査で酸性坑廃水が排出されることによってpHや溶存鉄濃 度の変化がみられた.また泉水の酸性坑廃水には底生微生物が存在し、このことが水質形 成作用に大きな影響をあたえる.
水質形成作用における酸性坑廃水(AMD)中の微生物の機能は酸性坑廃水と底生微生物を 培養することによって調査した.底生植物(酸化細菌)がFe(OH)3を生成することによってpH を低下させる働きがあることが確認できた.私たちは炭坑から輩出後の60m 水路内の微生 物による影響を確認することができた.
Abstract
Acid mine drainage (AMD) is water flowing out from mine, and so on. There was change of pH and dissolved iron concentration by flowing out acid mine drainage by the past five investigations with acid mine drainage which exists in Sennsui, Kurate, Fukuoka , unlike other acid mine water.In addition, it turned out that benthic microbes exist in the acid mine drainage in Sensui, and this has major influence on water quality formation.
Function of microbes in acid mine drainage on water quality formation was investigated by cultivating AMD and benthic microbes. It was confirmed that benthic microbes (oxidative bacteria) affect pH decrease by producing Fe(OH)3. We can confirm that benthic microbes affect water quality within 60m ditch after flowing out from mine.
2.緒言
日本では戦前から戦後の工業の発展とともに炭鉱等の鉱山の開発が進んだ.ところが 1960 年代以降、採掘コストの安い外国からの輸入の増加や石炭から石油へ転換によって日 本の鉱山や炭鉱は次々と閉山に追い込まれた.閉山後も操業中の採掘や精錬の過程などで 排出された排水や煙により汚染された周辺の環境はすぐに戻ることは困難であった.また、
閉山後に昔の坑口を埋め戻したが、坑内に地下水が浸透し、坑内の硫化物を撹拌し、坑外 から空気が流入して硫化物の酸化が促進される.硫化物が酸化されると可溶性の硫酸塩と なり、同時に生成する硫酸によって坑廃水のpHが低下し、さらに硫化物の溶解が促進され 酸性化が進み重金属の溶解も進行する.こうして炭坑の坑口から流出する酸性坑廃水は高 濃度の金属、重金属イオンを含んだ強酸性廃水として外へ湧出し、水質を汚染したり、周 辺の土壌を汚染したりしてエコシステムに汚染問題をもたらしている(久保田ほか 1997).
また採掘過程で資源として使えず廃棄する岩石など(俗称ズリ)が特定の場所に集められて 捨てられ、長年にわたり捨て続けているうちに積み上げられてゆき、やがて山ができてく る.こうしてできた山をズリ山といい、ズリ山においても降雨などによって酸性坑廃水を 排出する.
3.筑豊地方における酸性坑廃水の調査 3-1. サンプル地点及びサンプリング
筑豊地方は日本で有数の旧炭鉱地域であり炭鉱によって栄えた地方であり、ピーク時に は炭鉱数は 500 を超えていた.そのため多くの酸性坑廃水が存在する(高江 1898).酸性坑 廃水が周辺生態系にどのような影響を与えているかを調べるために地域住民に聞き込みを 行い、酸性坑廃水の存在を確認し、その中でも特に情報量の多い 7 つの酸性坑廃水に絞り 調査を行った(Fig3-1).
Fig 3-1.筑豊地方の酸性坑廃水サンプポイント
3-2.測定方法
測定項目は pH、EC、DO、ORP 、TC、TOC、TN、TP、Fe2+、SO42-、Cl-、Fe、Al、Ca、
Mn、Siであり、またTPは11月21日、12月12日の2回の測定を行った.溶存金属(Fe、
Al、Ca、Mn、Si)は現地で試料水をHClで0.1Mに調製したものを使用し、ICP-AES法に
よって測定した.またSiは10月17日から測定項目に加えたため4回の測定となっている.
同様の方法で南田川も測定を行った.
3-2-1.pH、EC、DO、ORP
pH、EC、DO、ORPは堀場製作所製pHポータブルメータ(D-52またD-54)に,防水プラ
スチックボディー形電極(形式 9621-10D)を接続したもの、堀場製作所製電気伝導度ポー タブルメータ(ES-51)に,浸漬型導電率電極(形式9382-10D)を接続したもの、堀場製作 所製電気伝導度ポータブルメータ(OM-51)に,防水DO電極(形式 9551-20D)を接続し たもの、堀場製作所製電気伝導度ポータブルメータ(D-54またD-52)に,防水白金複合形 電極(形式9300-10D)を接続したもの、を使用し現地で測定を行った.
3-2-2.TC、TOC
3-2-2-1.測定の測定原理
水中に存在する炭素には全無機体炭素(TIC)と全有機体炭素があり、これらをあわせたも のを全炭素である.今回は燃焼触媒酸化方式を使用する.
キャリアガスが流れ,酸化触媒を充填させた燃焼管を,680°Cに加熱させる.試料を,燃 焼管内に注入すると,試料中のTCが燃焼,分解し二酸化炭素になる.これらのガスを含む キャリアガスを除湿機で冷却,除湿し,ハロゲンスクラバでハロゲンガスを吸収させる.残り のガスに含まれる二酸化炭素を,非分散型赤外線式ガス分析部(NDIR)で検出し,検出信 号から得られるピーク面積から定量を行う.また、装置内のシリンジに試料を取り込み,
pH3以下になるように塩酸を加えると,炭酸塩はすべて二酸化炭素を遊離し,キャリアガス で曝気すると溶存性の二酸化炭素と共にガス中に遊離する.このように TIC を除いた試料 のTCを定量することでTOCを求める.
3-2-2-2.定量方法
今回は島津製全有機炭素計(TOC-VCSN)を用いてTC、NPOC(≒TOC)の測定を行った.
3-2-3.全窒素測定方法 3-2-3-1.測定原理
水中の有機体窒素、無機態窒素などさまざまな形態があるが、これらの状態の窒素をペ ルオキソ二硫酸カリウム水溶液によって酸化させ、NO3-の形にする.これに水酸化ナトリウ ムを加えることによって N に分解し、この形状の窒素を 220nm の波長によって吸光度を測
定し、定量を行う(ペルオキソ二硫酸カリウム・水酸化ナトリウム分解・紫外線吸光光度法
(JIS K0102 45.2)).
3-2-3-2.試薬調製
(1)混合試薬酸化剤:ペルオキソ二硫酸カリウム25g、ホウ酸15g、3.75M水酸化ナトリウム
水溶液50mlを超純水に入れ500mlに調製しガラス瓶に入れ、冷蔵庫にて3度で保存した.
(2)硝酸カリウム標準液:硝酸カリウム7.2182gをイオン交換水に溶かし調製し 1L に希釈し、
ポリエチレン容器に保存した.この溶液は1000mg/Lとなるのでこれをもとに0、2、4、6、
8mg/Lの5つの濃度の水溶液を調製した.
3-2-3-3.定量方法
(1)共栓付き口径18mm の試験管にポリエチレン容器に保存したサンプルと硝酸カリウム
標準液(0ppm,2ppm,4ppm,6ppm,8ppmに調整したもの)をそれぞれ5mlずつとり、それらに 混合試薬を5mlずつ加えた.
(2)これらを密封し、120℃で30分オートクレーブ処理を行った.
(3)次に分光光度計(日本分光UbsetシリーズV-530型)を用いて220nmの波長でまず硝酸
カリウム水溶液の濃度を測り、検量線を作成した
(4)(3)で作成した検量線を元に、各サンプルの濃度の定量を行った.
3-2-4.全リン測定方法 3-2-4-1.試薬調製
(1)ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液:ペルオキソ二硫酸カリウムをイオン交換水に入れ 5%水溶液を調製し、ガラス瓶に入れ冷蔵庫にて 3℃で保存した.
(2)モリブデン酸アンモニウム水溶液:パラモリブデンアンモニウム 3g を超純水に溶かし
100mlに調製し、ガラス容器入れ冷蔵庫にて3℃で保存した.
(3)硫酸:濃硫酸35mlを225mlのイオン交換水に加え調製し、ガラス瓶に保存した.
(4)アスコルビン酸水溶液:L-アスコルビン酸2.7gを50mlのイオン交換水に混ぜ調製した.
測定ごとに調製し、余りは廃棄した.
(5)吐酒石(酒石酸アンチモニルカリウム)水溶液:0.068gの酒石酸アンチモニルカリウム をイオン交換水50mlに溶かし水溶液を調製し、ガラス瓶に入れ、冷蔵庫にて3℃で保存し た.
(6)混合試薬酸化剤:上で調製したモリブデン酸アンモニウム水溶液と硫酸、アスコルビン 酸水溶液、酒石酸アンチモニルカリウム水溶液を2:5:2:1の割合(体積比)で混ぜ調製 した.測定ごとに調製し、余りは廃棄した.
(7)標準リン酸塩溶液:105℃、24 時間乾燥させた 1.433g のリン酸二水素カリウムを水に溶
かし溶解後、1L に希釈しガラス瓶に入れ冷蔵庫にて保存した.この溶液は 1000mg/L となる のでこれをもとに0、0.5、1、2、3mg/Lの濃度の溶液を作成した.
3-2-4-2.定量方法
(1)共栓付き試験管にポリエチレン容器に保存したサンプルと標準リン酸溶液をそれぞれ 10mlずつとり、それらに5%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を1.6mlずつ加えた.
(2)サンプルと5つの濃度の標準リン酸溶液を120℃で30分オートクレーブ処理を行った.
(3)調製した混合試薬を1.16mlオートクレーブ後のサンプルと標準リン酸溶液に1.16mLず つ加えた.加えたら試験管振とう器で直ちに混ぜた.
(4)混合試薬を加えた後2時間以内に885nmの波長で測定した.標準リン酸溶液で検量線を 作成したあとにそれを元にサンプルの濃度を測定した.
3-2-5.溶存2価鉄濃度 3-2-5-1.測定原理
二価鉄が,1,10-フェナントロリンと反応し,濃橙色に呈色する錯体を生成することを利用 する.
3-2-5-2.試薬調製
(1)1,10-フェナントロリン溶液:1,10-フェナントロリン塩酸塩1.2gを水1Lに溶かした.大
変溶解しにくいので振とう器や超音波洗浄機を用いて溶解させた.
(2)酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH4.6):酢酸ナトリウム・三水和物68.0gを約500mlの水に溶
かし,氷酢酸(濃酢酸)28.8mlを加え,全量を1L とした.
(3)二価鉄イオン標準溶液;硫酸鉄(Ⅱ)アンモニウム六水和物7.02gを水に溶かし,6M塩
酸を2ml加え,水で全量を1Lとした.本溶液には,二価鉄イオンを1000mg/Lの濃度で含 んでいる.
3-2-5-3.定量方法
(1)二価鉄は,大気中また試料中の酸素と容易に反応し三価鉄を生成するため,採水後直ち
に1,10-フェナントロリンと反応させなければならない.
20mlポリエチレン製容器に,あらかじめ1,10-フェナントロリン1mlと酢酸ナトリウム緩衝 溶液1mlを加えておき,これに十分に共洗いを行った 1ml プラスチック製シリンジで,試
料0.5mlを採水し直ちに反応させた.
(2)この溶液を実験室に持ち帰り,全量を20mlにして、吸光光度計を用いて,波長510nmで
測定した.また,検量線は,鉄標準溶液を希釈して,0、10、20、100、200mg/Lの5つの検 量液を作成し,検量液0.5mlに対して1,10-フェナントロリン1ml,酢酸ナトリウム緩衝溶液 1mlを加えたものを用いた.
3-2-6.硫酸イオン(SO42-) 3-2-6-1.測定原理
はイオンクロマトグラフ法によって測定した.イオンクロマトグラフ法とは分離カラム(イ オン交換樹脂)による各イオン成分の保持時間の差により分離し、分離したイオン成分の 導電率を検出して濃度を算出する方法である.
3-2-6-2.定量方法
(1)試料を0.2µmメンブランフィルター(ADVANTEC製 25AS020AN)でろ過した.
(2) 電気伝導度(EC)が100µS/cm 未満になるように溶液を希釈し, 1.5mlバイアル瓶に移し た.(3)北九州市立大学計測・分析センターに依頼分析した.装置は,Dionex 製イオンクロ マトグラフ・DX-120を用いた.
3-2-7.溶存金属(Fe、Al、Ca、Mn、Si) 3-2-7-1.測定原理
ICP-AES法とは発光分光分析法の一つの手法である.分析試料にプラズマのエネルギーを
外部から与えると含有されている成分元素が励起される.その励起された原子が低いエネ ルギー準位に戻るときに発光線が(スペクトル線)放出され、光子の波長に相当する発光 線を測定する方法である.発光線の位置から成分元素の種類を判定し、その強度から各元 素の含有量を求める.
3-2-7-1.定量方法
(1)金属の反応が起こりにくくするために、現地で試料水をHClで0.1Mに調製した.
(2)電気伝導度(EC)が100µS/cm未満になるように溶液を希釈し,高周波誘導プラズマ発光分
光分析装置ICP-AES(パーキンエルマー・Optima 4300DV)によって測定した.
3-3.実験結果
以下に実験の結果を示した。
Table 3-3.筑豊地方の各酸性坑廃水のpHとFe濃度 SampleNo, pH EC(ms/m) DO(mg/L) Eh.7(mV)
①泉水 1 3.59 217 1.3 261
②泉水 2 6.20 75.3 2.9 207
③真延 6.31 135 5.1 160
④松芳 5.93 26 3.2 222
⑤鯰田 5.80 118 0.2 229
⑥山野 1 5.89 105 1.3 246
⑦山野 2 6.00 141.0 2.8 159.12
SampleNo, TC(mmol/L) TOC(mmol/L) TN(ppm) TP(ppm)
①泉水 1 4.39 0.0646 3.15 0.29
②泉水 2 4.51 0 1.92 0
③真延 8.51 0.0724 0.69 0.52
④松芳 4.40 0.0433 1.08 0.01
⑤鯰田 2.39 0.0792 3.12 0
⑥山野 1 8.01 0.0749 3.46 0.03
⑦山野 2 1.35 0.207 1.55 0.02
SampleNo, 溶存 2 価鉄濃度(mmol/L) 溶存鉄濃度(mmol/L) 硫酸イオン濃度(mmol/L)
①泉水 1 0.24 1.99 14.5
②泉水 2 0.13 0.13 2.26
③真延 0.25 0.24 4.99
④松芳 0.035 0.10 0.49
⑤鯰田 0.45 0.46 2.58
⑥山野 1 0.68 0.70 4.05
⑦山野 2 0.15 0.16 3.16
Table 3-3.よりSampleNo,1、泉水1のpHとFe濃度が他のサンプル地点と比べて高いこと
がわかる.泉水1は福岡県鞍手町泉水の坑山からで排出している酸性坑廃水である.
福岡県鞍手町泉水の炭鉱ははっきりしないが「福岡県地理全誌」によると少なくとも明治 8年以前から石炭が採掘されている.明治35年に伊藤伝右衛門によって買収され筑豊でも 有数の炭鉱となり、30年間伝右衛門の経営は30年間続いた.その後、多くの人々によって 経営されたが戦後である昭和37年の泉水地区の全ての炭坑で閉山に至った(中川 1993).
泉水地方から排出される酸性坑廃水は約50m3/sの流量で流れ出している.排出された酸 性坑廃水は64m 水路を流れた後に遠賀川水系である南田川と合流し、その後西川と合流す る.
Fig2-1.泉水の酸性坑廃水排出口
4.泉水の酸性坑廃水及び南田川の調査
福岡県鞍手郡鞍手町泉水の酸性坑廃水の距離における水質変化を調べる.
4-1.サンプル地点及びサンプリング2
福岡県鞍手郡鞍手町泉水の酸性坑廃水を下に示したような排出口から間隔 18 地点(0, 0.45, 0.9, 1.8, 2.7, 3.6, 4.5, 5.4, 6.3, 13.6, 21.6, 27.3, 30.3, 34.4, 38.4, 40.2, 53.7, 64.1)で採取し、水 質を測定した.イオン交換水にて洗浄を行った 100mLのポリエチレンボトル容器に入れて その日のうちに研究室の冷蔵庫にて 3℃で保存した.また、調査は、2007年10月3日、10 月17日、11月2日、11月21日、12月12日の計5回行った.30-34m(Fig4-1-1)の斜線部に は掛橋があり、光が当たらないことを示している.
また11月2日、11月21日、12月12日の3回は酸性坑廃水が合流する南田川の水質を
Fig4-1-2の間隔で測定した.Fig4-1-2の①をx軸の0とし、西川合流後までを測定した.
流れの向き
64m サンプル地点 南田川へ
Fig3-1-1.サンプルポイント(酸性坑廃水)
Fig4-1-2.サンプリングポイント(南田川)
4-2.実験方法2
水質の測定方法は筑豊地方の酸性坑廃水の水質方法と同様である.
また泉水の環境として南田川に合流する前で流路の低質のみに緑色の微生物によって形 成されたバイオフィルムが存在する(Fig4-2-1).このバイオフィルムを顕微鏡で観察し、文 献の記載(kudo 1966)を元に同定を行った.
Fig4-2-1.酸性坑廃水に存在するバイオフィルム
4-3.調査結果2
バイオフィルムの観察結果、Fig4-3-1のような微生物が観察された.この微生物は好酸性 で鉄などの金属に対して耐性を持っているEuglena mutabilis Schmitz であることがわかっ た(Olaveson 2000).このバイオフィルムはE.mutabilisのよって構成されている.また掛橋の 下には存在しないことがわかった.
0 0.5 1.0Km
Fig4-3-1.酸性坑廃水に存在するバイオフィルム中の微生物
pH、EC、DO、ORP は以下のFig4-3-2、4-3-3、4-3-4、4-3-5に示した結果となり、DO、
Eh.7が排出後上昇した.これは酸性坑廃水が地下水の影響を受けていることが原因である.
地下水は地下の圧力により酸素があまり溶け込まない状態である.それが地下から排出さ れることにより、圧力が低下し、酸素を取り込むため排出後のDOが上昇した.またこの影 響によりがEh.7が排出後上昇する.pHが低下する傾向にあった.ECは変化がなく、常に 一定の値を示す.また掛橋の掛かっている30-40mはpH、DOが低下し、Eh.7が上昇する傾 向が見られた.これは掛橋の下が暗く、E.mutabilisが存在しないことが影響していることが 考えられる.pHはE.mutabilisが存在する場所はpHが一定であることがわかる.
3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2
0 20 40 60 80
distance (m)
pH (-)
Fig 4-3-2 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とpHの関係
Euglena mutabilis Schmitz 100μm
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
150 170 190 210 230 250
0 20 40 60 80
distance (m)
EC (mS/m)
Fig 4-3-3.泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とECの関係
0 2 4 6 8 10 12
0 20 40 60 80
distance (m)
DO (mg/L)
Fig 4-3-4.泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とDOの関係
300 330 360 390 420 450
0 20 40 60 80
distance (m) Eh.7(mV)
Fig4-3-5.泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とEh.7の関係
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
次にTC、TOC、TN、TPの有機要素についてFig4-3-6、4-3-7、4-3-8、4-3-9に結果を示す.
0 1 2 3 4 5 6
0 20 40 60 80
distance (m)
TC Conc(mmol/L)
Fig 4-3-6 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とTCの関係
0.00 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20
0 20 40 60 80
distance (m)
TOC Conc(mmol/L)
Fig 4-3-7.泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とTOCの関係
0 5 10 15 20 25
0 20 40 60 80
distance (m)
TN Conc(mmol/L)
Fig4-3-7 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とTNの関係
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
0 0.5 1 1.5 2
0 20 40 60 80
distance(m)
TP Conc(mmol/L)
Fig 4-3-8 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とTPの関係
TC は排出後に大きく減少している.これは DO、Eh.7同様に酸性坑廃水が地下水の影響 を受けていることが原因である.地下水は地下水圧によって多くの二酸化炭素が溶け込ん でいる.地下水が酸性坑廃水として排出される際、圧力が低下し、溶けていた二酸化炭素 が空気中に放出される.このことによってTCは排出後に大きく減少する.
またTOC、TN、TPは排出後と南田川合流前と大きな変化はない.またpHの変動要因と
して有機酸による影響が考えられるしかし、実験結果から有機体の存在は確認できるが TOCの変化が見られないためpH変動は別の要因であるとわかる.
また Fig4-3-9 より溶存 2価鉄濃度は減少傾向にあり、掛橋あたりで上昇している.また
排出時から高い値を示していることから地下水中もしくは石炭中に多く存在していること がわかる.南田川合流時にも高濃度の 2 価鉄が存在するため生態系に影響することが懸念 される.
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 20 40 60 80
disrance(m) Fe2+ Conc(mmol/L)
Fig 4-3-9 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離と溶存2価鉄濃度の関係
○: 11月02日、◇: 12月12日 (2007年)
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
Fig4-3-10.にSO42-の結果を示した.
0 5 10 15 20
0 10 20 30 40 50 60 70
distance (m) SO42- Conc(mmol/L)
Fig4-3-10 .泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離とSO42-の関係
SO42-は排出後、南田川合流前と大きな変化はない.多少のばらつきがあるがこれは測定 時の希釈割合が高いための誤差であると考えられる.
IPC-AES法によって測定した溶存金属はFe、Al、Ca、Mn、Siであり、結果として溶存鉄
濃度はFig4-3-11に示したような減少傾向が見られた.また掛橋の下では上昇傾向が見られ
た.この結果から掛橋の掛かっていない場所におけるpH変化と溶存鉄濃度変化が類似して いるため、溶存鉄がpHに影響があると考えられる.このことから酸性坑廃水中の鉄酸化細 菌による影響であると考えられる.鉄酸化細菌は酸化的条件で以下のような変化を示す.
Fe2+ +
4
1O2 +H+ → Fe3+ +
2
1H2O ・・・式1
上記したFe3+は不安定であるため次のような反応を示す.
Fe3+ +3H2O +H+ → Fe(OH)3(s) +3H+ ・・・式2
以上のことによりFeは減少しpHを低下させる作用があることがわかる(Fraser 1972).
しかし 2価鉄濃度と溶存鉄濃度の値が 2 価鉄濃度のほうが高いこれは測定以上の問題で あると考えられる.しかし傾向は類似していることから排出される溶存鉄はほとんど 2 価 鉄であることがわかる.
また他の溶存金属(Al、Ca、Mn、Si)は排出時の値として1mmol/L、10 mmol/L、0.2 mmol/L、
1 mmol/Lを示し、ほとんど変化せず南田川合流する.
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 20 40 60 80
distance(m)
Fe Conc(mmol/L)
Fig4-3-11.泉水1の酸性坑廃水の流出口からの距離と溶存鉄濃度の関係
泉水の酸性坑廃水合流後の南田川の水質変化は以下に示すが傾向、値が大きく変化しなか ったためここでは12月12日の実験結果を示す.
0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
pH(-)
Fig 4-3-12.南田川の距離におけるpH
○:10月03日、◇:10月17日、□:11月02日
△:11月21日、●:12月12日 (2007年)
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
0 50 100 150 200 250
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
EC(mS/m)
Fig 4-3-13.南田川の距離におけるEC
0 2 4 6 8 10 12
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
DO(mg/L)
Fig 4-3-14.南田川の距離におけるDO
0 100 200 300 400 500 600 700
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
Eh.7 (mV)
Fig 4-3-15.南田川の距離における酸化還元電位
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
0 1 2 3 4 5 6
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
TC Conc(mmol/L)
Fig 4-3-16.南田川の距離におけるTC
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
TOC Conc(mmol/L)
Fig 4-3-17.南田川の距離におけるTOC
0 5 10 15 20 25
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
TN Conc(mmol/L)
Fig 4-3-18.南田川の距離におけるTN
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
0 0.5 1 1.5 2
0 500 1000 1500 2000 2500
distance (m)
TP Conc(mmol/L)
Fig 4-3-19.南田川の距離におけるTP
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 500 1000 1500 2000 2500
distance (m) Fe2+ Conc(mmol/L)
Fig 4-3-20.南田川の距離における溶存2価鉄濃度
0 2 4 6 8 10 12 14 16
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m) SO42- Conc(mmol/L)
Fig 4-3-21.南田川の距離における硫酸イオン濃度
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 500 1000 1500 2000 2500
distance(m)
Fe Conc(mmol/L)
Fig 4-3-22.南田川の距離における溶存鉄濃度
これらの距離における南田川の結果は距離における酸性坑廃水の結果と類似する傾向が ある.また鉄酸化細菌による影響により南田川もpHが低下し、溶存鉄濃度は減少している.
最終的にはpHが3.1以下にまで低下している.このことから酸性坑廃水が南田川に与える 影響は大きい.
おける酸性坑廃水の結果と距離における南田川の結果は類似した結果を示したが酸性坑 廃水の結果は64mと短い距離で水質が変化したが、一方、距離における南田川の結果は約 2km と長い距離で水質が変化したと異なる.また、南田川に合流する前の酸性坑廃水には
E.mutabilis が存在するが合流後には E.mutabilis が存在しないこのことが水質変化に大きく
変化すると考えられる.
○:南田川、◇:酸性坑廃水1(泉水1)
□:酸性坑廃水2(泉水2)、◇:西川
5.酸性坑廃水中に存在する底生微生物の水質形成作用
調査1の排出後の64mの間でpH、溶存鉄濃度は流れるにつれて減少傾向にあり、暗い掛 橋の下では E.mutabilis の存在が認められず、坑廃水の水質が大きく変化することから
E.mutabilis の水質への影響が大きいことがわかることをふまえ、酸性坑廃水に対して E.
mutabilis が形成するバイオフィルムと底質がどのような働きを持っているのか明らかにす
ることを目的とし、培養実験を行った.
5-1.サンプル地点及びサンプリング3
調査 1 同様、サンプル地点は福岡県鞍手郡鞍手町泉水であり、泉水の酸性坑廃水流路を 再現するために現場にある酸性坑廃水を使用し、バイオフィルム(E.mutabilis Schmiz)、全底
質であるE.mutabilis+底質、全底質からバイオフィルムを除いた底質を使用した.E.mutabilis
の酸性坑廃水における影響を確認するために試験管(Size Quantity:30m/m×200m/m・25)内 に1.酸性坑廃水(60ml)+ E.mutabilis(約7m2) +底質(6g)、2.酸性坑廃水(60ml)+E.mutabilis(約7m2)、
3.酸性坑廃水(60ml)+底質(6g)、4.酸性坑廃水(60ml)、5.クロロホルムを酸性坑廃水に対して 1%滴下し滅菌した酸性坑廃水(60ml)の処理を行い GLOWTH CHAMBER 内で培養した
(Table5-1).培養条件は20℃で12時間おきに約160μmolの光量子束密度(水中では約100μ
mol)を当て、その後に暗闇にする明暗周期で培養を行った.その際 1 日おきに pH、EC、
ORP(後にEh.7に修正)、溶存鉄濃度を測定した.また、比較として常に約160μmolの光量
子束密度を当て続けるもの(明条件)と常に暗闇であるもの(暗条件)で培養した.
Table5-1.調査2におけるサンプル処理
1:E.mutabilis+底質 2:E.mutabilis 3:底質 4:酸性坑廃水 5:滅菌坑廃水
酸性坑廃水 ○ ○ ○ ○ ○:滅菌
E.mutabilis ○ ○ × × ×
底質 ○ × ○ × ×
○:含む、×:含まない
※ 滅菌坑廃水は酸性坑廃水をクロロホルムによって滅菌したものを使用 サンプル
処理
Fig5-1-1.各処理を行った実験サンプル(写真の上の番号はTable5-1と同一のものである)
5-2.測定方法3
測定方法は筑豊地方の酸性坑廃水調査で示した方法と同様であり、3-2-1、3-2-7に記載し た方法で測定した.
5-3.実験結果3
まず12時間明暗周期のpH、EC、Eh.7、溶存鉄濃度の値を以下のFig5-3-1、5-3-2、5-3-3、
5-3-4に示す.また、Fig5-3-5の帯グラフはE.mutabilis+底質中のバイオフィルムの存在割合
を段階評価で示していて色によってその状態を表し、色が薄くなるにつれて存在割合が低 下していることを示している.
2.7 2.9 3.1 3.3 3.5 3.7
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-1.12時間明暗周期培養のpH
○:E.mutabilis+底質 △:E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
200 210 220 230 240 250
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
EC(mS/m)
Fig 5-3-2.12時間明暗周期培養のEC
350 390 430 470 510 550
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day) Eh.7(mV)
Fig 5-3-3.12時間明暗周期培養のEh.7
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
Fe Conc(mmol/L)
Fig 5-3-4.12時間明暗周期培養の溶存鉄濃度
○:E.mutabilis+底質 △:E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 △:E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 △:E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
Fig 5-3-5.12時間明暗周期培養のE.mutabilis+底質中のバイオフィルムの割合
12時間明暗周期培養では3つのグループに分けることができる.1つ目は○のE.mutabilis+
底質と□の底質を用いた培養は培養日数1日目にpH、溶存鉄濃度は減少し、酸化還元電位 は上昇した.その後一定の値を示し安定した.2つ目は△のE.mutabilisと◇の酸性坑廃水を 用いた培養は12日間かけてpH、溶存鉄濃度が徐々に減少し、酸化還元電位は上昇した.3 つ目は●の滅菌坑廃水はpHが緩やかに減少し、酸化還元電位と溶存鉄濃度は一定のまま変 化しませんでした.滅菌坑廃水以外は酸化還元電位が上昇して酸性条件下であり、溶存鉄 濃度が減少し、pHが低下している.また○のE.mutabilis+底質と□の底質は△のE.mutabilis と◇の酸性坑廃水より早く酸化還元電位が上昇し、溶存鉄濃度が減少し、pHが低下してい る.この結果から酸性坑廃水及び底質中には鉄酸化細菌が存在し、鉄イオンやその鉄化合 物が酸性条件下で酸化されて水に不溶な水酸化鉄(Ⅲ)を生成する反応が進行したと考えら れる.泉水の酸性坑廃水では水面に水酸化鉄(Ⅲ)が浮遊していて(Fig5-3-6)、現場でも鉄酸化 細菌によりpHが低下し、溶存鉄濃度が減少すると考えられる.現場調査と培養実験の結果 からのこの現象について再現できた.またECについては傾向がつかめず債権等の必要があ
る.またE.mutabilis+底質中のバイオフィルムの割合は培養日数2日目から減少傾向にある.
Fig5-3-6.泉水の酸性坑廃水の水面に存在する水酸化鉄(Ⅲ)
次に明条件下で培養した結果を以下のFig5-3-7、5-3-8、5-3-9、5-3-10、5-3-11に示した.
0 2 4 6 8 10 12 培養日数(day)
2.9 3 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-7.明条件培養のpH
190 200 210 220 230
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
EC(mS/m)
Fig 5-3-8.明条件培養のEC
350 400 450 500 550
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day) Eh.7(mV)
Fig 5-3-9.明条件培養のEh.7
○:E.mutabilis+底質 △:E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
Fe Conc(mmol/L)
Fig 5-3-10.明条件培養の溶存鉄濃度
Fig 5-3-11.明条件培養のE.mutabilis+底質中のバイオフィルムの割合
明条件培養は基本的には12時間明暗周期培養に類似している.違う点としてはECが○
のE.mutabilis+底質と□の底質を用いた培養は200付近で一定となり、残りの△のE.mutabilis
と◇の酸性坑廃水と●の滅菌坑廃水は培養日数 4 日目まで上昇してその後安定する傾向が 見られた.また●の滅菌坑廃水はpH が12日間かけて低下した.しかし、△のE.mutabilis と◇の酸性坑廃水と比較すると低下割合が低い.溶存鉄濃度でも装用のことが言える.こ のことから鉄酸化細菌以外の効果として光が当たるとpHが低下し、溶存鉄濃度が低下する ことが考えられる.また酸化還元電位が上昇していないことに関連があることが考えられ
る.また E.mutabilis+底質中のバイオフィルムの割合の 12 時間明暗周期培養と類似して 2
日目から減少しているが12時間明暗周期培養と比較して減少割合が高いことがわかる.
次に暗条件下で培養したpH、EC、Eh.7、溶存鉄濃度の結果を以下のFig5-3-12、5-3-13、
5-3-14、5-3-15、5-3-16に示した.
0 2 4 6 8 10 12 培養日数(day)
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
2.8 3 3.2 3.4 3.6
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-12.暗条件培養のpH
190 200 210 220 230 240
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
EC(mS/m)
Fig 5-3-13.暗条件培養のEC
350 400 450 500 550 600
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day) Eh.7(mV)
Fig 5-3-14.暗条件培養のEh.7
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
0 2 4 6 8 10 12 14
培養日数(day)
Fe Conc(mmol/L)
Fig 5-3-15.暗条件培養の溶存鉄濃度
Fig 5-3-16.暗条件培養のE.mutabilis+底質中のバイオフィルムの割合
暗条件培養は12時間明暗周期培養と明条件培養とは異なり、pH、溶存鉄濃度が◇の酸性 坑廃水と●の滅菌坑廃水以外、培養日数 1 日目に低下し、安定していることがわかる.ま た◇の酸性坑廃水の培養日数3日目から安定していることがわかる.また○のE.mutabilis+
底質と□の底質のEh.7が培養日数3日目から低下している.
また培養日数10日目のE.mutabilisプラス底質のバイオフィルムの色が培養初日と比べ変 化していることがわかった.また10日目からpHは減少し、ECは上昇し、溶存鉄濃度が増 加していることがわかった.このバイオフィルムを顕微鏡によって観察するとFig5-3-17の ように形質が変化し、運動性がないことがわかった.はっきりとした原因はわからないが これらのことが関連していると考えられる.
0 2 4 6 8 10 12 培養日数(day)
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質 ◇:酸性坑廃水 ●:滅菌坑廃水
Fig 5-3-17.暗条件のE.mutabilisプラス底質中のバイオフィルムの変化
また以下に各培養条件のpH変動を示す.
2.8 3 3.2 3.4 3.6
0 1 2 3
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-18.pH変動(12時間明暗周期培養)
3.1 3.3 3.5
0 1 2 3
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-19.pH変動(明条件培養)
培養 0 日目 培養10日後
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質
2.8 3 3.2 3.4 3.6
0 1 2 3
培養日数(day)
pH
Fig 5-3-20.pH変動(暗条件培養)
Fig 5-3-18、5-3-19、5-3-20を見ると12時間明暗周期培養と明条件培養では培養日数1日
目でE.mutabilisプラス底質、底質と比べ E.mutabilis のpH が高くなっているが暗条件では
E.mutabilis プラス底質、E.mutabilis、底質はほぼ同じ値を示している.このことか ら
E.mutabilisは光照射によってpH低下を抑制させる働きがあることがわかる.また、現場の
E.mutabilisのいない掛け橋の下は暗条件と同じような条件であり、pH が低下していると考
えられる.
6.結言
現地調査で酸性坑廃水と底質中には鉄酸化細菌の存在することを示唆し、酸性条件下で 鉄イオンやその化合物を酸化させる事によって水酸化鉄(Ⅲ)を生成する働きによって、溶存 鉄濃度を下げ、結果としてpHが低下する働きがあることがわかった.また、E.mutabilisは 12時間明暗周期培養、明条件培養などの光が当たる条件では光照射によって培養1日目に pHを抑制することがわかった.これらのことが現場である福岡県鞍手郡鞍手町泉水に存在 する酸性坑廃水で起こる現象と考えられる.さらに暗条件下では培養日数 10 日目以降で
E.mutabilis+底質でpHが低下し、溶存鉄濃度を増加させる働きがあることがわかり、さらに
酸性坑廃水中に存在する E.mutabilis が別の水質形成プロセスに関わる可能性があることが 示唆される.このためされに培養条件を変えさらなる検討が必要である.
7.謝辞
本研究を実施するにあたりましてご協力頂きました、原口 昭教授、伊豫部 勉特別研究員、
原口研究室の皆様、計測・分析センターの原田様、長井様、道木様、浜武様、直方市・遠 賀川水辺館の方々に心からお礼を申し上げます.
○:E.mutabilis+底質 E.mutabilis □:底質
8.参考文献
Fraser Walsh・Ralph Mitchell (1972) A pH-Dependent Succession of Iron Bacteria.Environmental Science & Technology,6:809-812
半谷高久・小倉紀雄 (1995) 第3版水質調査法,丸善
久保田正之・福岡直美・西川博孝 (1997) 別子銅山・製錬所周辺および国領川流域の土壌,
河川底質の重金属含有率.人間と環境,23:90-94
Kudo, R.R (1966) Protozoology 5th ed. Charles C Thomas Publisher
M.M. Olaveson・C.Nalewajko (2000) Effects of acidity on the growth of two Euglena species.Hydrobiologia,433:39-56
中川冨士雄 (1993) 鞍手町誌民俗・宗教聞き取り調査報告 鞍手の民俗(第4集) 日本分析化学会北海道支部編 (1994) 水の分析‐第4版‐
日本工業調査会 (1998) 年工場排水試験方法 http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html 高江基太郎 (1898) 筑豊炭鉱誌
9.付録
付録には現地調査及び培養実験において大きく変化もしくは大きな値を示したものを示 した
Table9-1.泉水の酸性坑廃水pH
鞍手泉水 10月3日 10月17日 11月2日 11月21日 12月12日 Sample No, 排出距離 pH pH pH pH pH
AMD1 0.00 3.83 3.88 3.83 3.82 3.77 AMD2 0.45 3.86 3.88 3.84 3.8 3.74 AMD3 0.90 3.84 3.87 3.84 3.82 3.79 AMD4 1.80 3.82 3.86 3.84 3.83 3.79 AMD5 2.70 3.82 3.87 3.85 3.85 3.79 AMD6 3.60 3.81 3.87 3.85 3.85 3.76 AMD7 4.50 3.81 3.87 3.82 3.78 3.80 AMD8 5.40 3.80 3.85 3.83 3.79 3.78 AMD9 6.30 3.80 3.86 3.82 3.77 3.72 AMD10 13.60 3.76 3.84 3.79 3.75 3.73 AMD11 21.60 3.76 3.82 3.77 3.7 3.58 AMD12 27.30 3.73 3.81 3.73 3.68 3.55 AMD13 30.30 3.71 3.78 3.68 3.63 3.48 AMD14 34.40 3.66 3.69 3.57 3.59 3.37 AMD15 38.40 3.61 3.60 3.56 3.52 3.35 AMD16 40.20 3.59 3.58 3.55 3.5 3.38 AMD17 53.70 3.58 3.60 3.53 3.47 3.39 AMD18 64.10 3.53 3.62 3.58 3.49 3.37
Table9-2.泉水の酸性坑廃水EC
鞍手泉水 10月3日 10月17日 11月2日 11月21日 12月12日 Sample No, 排出距離 EC(ms/m) EC(ms/m) EC(ms/m) EC(ms/m) EC(ms/m)
AMD1 0.00 219 218 222 218 206 AMD2 0.45 219 220 224 217 205 AMD3 0.90 220 219 222 217 206 AMD4 1.80 219 218 223 218 205 AMD5 2.70 220 217 221 218 206 AMD6 3.60 220 219 222 220 208 AMD7 4.50 220 215 222 218 208 AMD8 5.40 220 217 222 218 208 AMD9 6.30 220 218 223 219 207 AMD10 13.60 220 215 223 219 210 AMD11 21.60 220 217 223 218 207 AMD12 27.30 220 215 223 218 208 AMD13 30.30 219 215 223 219 207 AMD14 34.40 220 218 224 219 209 AMD15 38.40 221 220 224 220 209 AMD16 40.20 220 219 224 220 208 AMD17 53.70 219 218 224 219 208 AMD18 64.10 215 218 219 215 204
Table9-3.泉水の酸性坑廃水DO
鞍手泉水 10月3日 10月17日 11月2日 11月21日 12月12日 Sample No, 排出距離 DO(mg/L) DO(mg/L) DO(mg/L) DO(mg/L) DO(mg/L)
AMD1 0.00 0.68 0.44 1.01 0.86 1.08 AMD2 0.45 0.73 0.42 1.30 1.27 1.40 AMD3 0.90 2.65 2.46 2.74 3.59 5.26 AMD4 1.80 4.06 3.04 4.60 5.28 5.48 AMD5 2.70 4.99 3.18 4.57 5.87 6.11 AMD6 3.60 5.47 3.98 4.87 5.62 6.30 AMD7 4.50 5.35 4.54 5.58 6.78 7.06 AMD8 5.40 5.49 4.86 5.27 6.98 7.07 AMD9 6.30 5.33 4.74 4.91 6.92 7.09 AMD10 13.60 5.55 5.08 5.46 7.00 7.12 AMD11 21.60 5.60 5.32 5.78 7.13 7.29 AMD12 27.30 5.57 5.48 5.98 6.88 7.31 AMD13 30.30 5.74 5.66 6.11 7.70 7.23 AMD14 34.40 5.65 5.68 5.46 7.29 7.50 AMD15 38.40 5.62 5.46 5.70 7.11 7.71 AMD16 40.20 5.97 6.30 6.53 7.68 8.35 AMD17 53.70 6.07 6.32 6.71 7.68 8.22 AMD18 64.10 6.48 6.74 6.96 7.36 8.98