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レボフロキサシン耐性肺炎球菌の疫学調査 1)

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(1)

レボフロキサシン耐性肺炎球菌の疫学調査

1)前橋赤十字病院検査部細菌検査室,2)群馬大学医学部保健学科

相馬真恵美

1)

横澤 郁代

1)

金子 心学

1)

佐竹 幸子

2)

(平成 20 年 4 月 11 日受付)

(平成 20 年 12 月 26 日受理)

Key words : Streptococcus pneumoniae, fluoroquinolone, drug resistance, epidemiology, WHONET

世界保健機関が無償提供している微生物検査結果解析ソフト WHONET を使用して 5 施設で抗菌薬感受 性結果の解析を行った.2003 年から 2005 年の 3 年間に前橋赤十字病院で分離されたStreptococcus pneumo- niaeの levofloxacin(LVFX)耐性率 3.8%(26!684 株)は,他の 4 施設の耐性率 0.5%(8!1717 株)に比べ て有意に高かった(p<0.001).特別な介入を実施しなかったが,2006 年に当院での本耐性率は 0.9%(2!221 株)となり,他の 4 施設の耐性率 1.3%(9!717 株)と有意差はなくなった(p=0.574).本耐性菌の 86%(24!

28 株)は 68 歳以上の患者から分離されており,71%(20!28 株)は外来受診時,入院当日,入院翌日に提 出された検体から分離されていた.本耐性菌が分離された患者の居住する地域や分離された時期に偏りは認 められなかった.1 つの菌株が同時に耐性を獲得している薬剤の種類(耐性プロファイル)を解析すると,

同じ月に同じ耐性プロファイルを持った LVFX 耐性S. pneumoniaeは分離されていなかった.これらのこと から,同一菌株による市中でのアウトブレイクの可能性は低いと考えられた.当院で 2003 年から 2005 年に 本耐性率が高かった原因と 2006 年に耐性率が低下した原因を明らかにすることはできなかったが,まだ稀 である耐性菌を多施設で解析することにより,耐性菌の増加に対して注意を喚起できた.また,耐性プロファ イルを迅速に解析できる WHONET は耐性菌の疫学調査ツールとして有効であることも確認された.

〔感染症誌 83:113〜119,2009〕

Streptococcus pneumoniaeは肺炎,菌血症,髄膜炎,

中耳炎,副鼻腔炎などの原因菌として重要な病原菌で

ある1)〜3).S. pneumoniae感染症の治療薬として使用さ

れるペニシリン系抗菌薬に耐性を獲得したペニシリン 耐性S. pneumoniae(penicillin resistantS. pneumoniae, PRSP)が世界中で分離されるようになり,S. pneumo- niaeのペニシリン耐性率は 2004 年にアメリカ,ヨー ロッパ,中南米で行われた SENTRY 薬剤感受性調査 で 18.6%4),2001 年から 2002 年にかけて日本で行わ れ た PROTEKT(prospective resistant organism tracking and epidemiology for the ketolide telithro- mycin)調査で 35.9% であった5).PRSP 感染症にも 有効な治療薬としてフルオロキノロン系薬剤が使用さ れるようになると6)7),その使用量の増加に伴ってフル オロキノロン系薬剤である levofloxacin(LVFX)に 耐性を獲得したS. pneumoniaeが出現するようになっ

た.S. pneumoniaeの LVFX 耐性率 は 2004 年 の SEN- TRY 薬剤感受性調査で 1.3%,日本における 1999 年 か ら 2002 年 ま で の PROTEKT 調 査 で 1.1% か ら 1.3% であった5).これらの報告の他にもS. pneumoniae に対するフルオロキノロン系薬剤の耐性報告はある が,いずれも耐性率は 2% 未満の低い状況が維持され ている8)9)

病院によって院内感染原因菌の菌種,その分離頻度,

各種抗菌薬に対する感受性率は異なる.しかし,市中 感染原因菌の感受性率は同じ地域内にある病院間で大 きな違いはないと一般的に考えられている.2003 年 より群馬県内の 5 施設で,院内感染および市中感染原 因菌の代表的な菌の抗菌薬感受性調査を行った結果,

前橋赤十字病院で分離されたS. pneumoniaeの LVFX 耐性率が他の 4 病院に比べて有意に高いことが解っ た.S. pneumoniaeは市中感染原因菌であるので,当 院の診療圏内の老人福祉施設や保育園等で LVFX 耐

S. pneumoniaeのアウトブレイクの可能性を考え,当

院で分離された LVFX 耐性S. pneumoniaeの疫学的検

別刷請求先:(〒371―0014)群馬県前橋市朝日町 3―21―36

前橋赤十字病院検査部 相馬真恵美

(2)

Table 1 Percentage resistance ofS.pneumoniaeisolatesto antimicrobialagents Percentage resistance (%)

Antimicrobial

agent 2003 2004 2005 2006

Others MRCH

Others MRCH

Others MRCH

Othersb MRCHa

15.1 17.2

17.6 21.9

18.0 22.4

15.1 20.0

Penicillin G

1.5 2.7

1.1 2.2

1.5 3.1

3.1 2.4

Cefotaxime

2.1 6.8

2.6 4.3

1.5 9.2

5.3 6.7

Meropenem

1.3 0.9

0.5 3.2

0.5 4.6

0.4 3.8

Levofloxacin

81.4 70.6

80.5 71.0

77.5 68.4

73.4 67.6

Erythromycin

43.8 45.7

38.2 41.2

37.1 37.2

30.9 41.4

Clindamycin

717 221

642 279

583 195

492 210

No.ofisolates

a:MaebashiRed CrossHospital

b:Fourotherhospitals

討を行った.

対象と方法 1.対象

世界保健機関(WHO)と米国疾病予防管理センター

(Centers for Disease Control and Prevention, CDC)

が主催している抗菌薬感受性検査の外部精度管理に よってデータの質が保証されている施設の中で,WHO が 無 償 提 供 し て い る 微 生 物 検 査 結 果 解 析 ソ フ ト

(WHONET)を使用し,S. pneumoniaeの抗菌薬感受 性検査に MICro FAST3J パネル(DADE BEHRING 社)を使用している群馬県下の一般総合病院 5 施設を 対象とした.各病院の病床数は 320 床から 592 床であ る.2003 年から 2006 年までの 4 年間に各種臨床材料 から分離されたS. pneumoniaを抗菌薬感受性の調査 対象とし,常在菌の混入がある材料から分離された本 菌の感染症起因性については評価しなかった.しかし,

同一患者から繰り返してS. pneumoniaeが分離されて いた場合は,最初に耐性菌が分離された株を解析対象 とした.前橋赤十字病院において LVFX 耐性S. pneu-

moniaeが分離された患者の情報を診療記録より検索

して疫学的解析を行った.

2.抗菌薬感受性試験

CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)

で標準化されている微量液体希釈法に従って調製され た MICro FAST3J パネル(DADE BEHRING 社)を 使用して,臨床材料からS. pneumoniaeを分離した施 設において penicillin G(PCG),cefotaxime(CTX),

meropenem(MEPM),erythromycin(EM),clinda- mycin(CLDM),tetracycline(TC),trimethoprim!

sulfamethoxazole(ST),LVFX に対する最小発育阻 止濃度(Minimum inhibitory concentration, MIC)を 測定した10).また,当院で分離された LVFX 耐性S.

pneumoniae 5 株と他施設で分離された LVFX 耐性S.

pneumoniae 2 株に対して,試験管液体希釈法を用いて

LVFX の MIC を群馬大学で測定した10)

3.抗菌薬感受性試験結果の解析

5 施設で分離されたS. pneumoniaeの抗菌薬感受性 検査結果を WHONET で解析して耐性率を求めた.当 院の結果 と 他 の 4 施 設 の 結 果 を Fisher のχ2検 定 し た.1 つの菌株が同時にどのような薬剤に耐性を獲得 しているかを観察するために,8 薬剤(PCG,CTX,

MEPM,EM,CLDM,TC,ST,LVFX)の 耐 性 プ ロファイル解析を実施した.耐性プロファイルは R(耐 性)または I(中間)を示した薬剤をアルファベット 1 文 字 で 表 記 し(PCG は P,CTX は C,MEPM は M,EM は E,CLDM は N,TC は T , ST は R , LVFX は L),感受性であれば何も書かずにブランク とし,検査を実施していない場合はマイナスの記号で 示した.

4.前向きサーベイランスの実施

分離された菌の抗菌薬感受性検査結果をデータベー スに追加する際,その菌株がデータベースと比較して 珍しい感受性結果である場合に警告を出すソフト

(BacTrack)が WHONET に搭載 さ れ て い る.こ の 機能を使用して 2005 年から前向きサーベイランスを 実施した.

1.S. pneumoniaeの LVFX 耐性率

2003 年 に 分 離 さ れ たS. pneumoniaeの LVFX 耐 性 率は,当院以外の 4 施設では 0.4%(2!492 株)であっ たが,当院では 3.8%(8!210 株)であった(Table 1).

Fisher のχ2検定を行った結果,当院におけるS. pneu-

moniaeの LVFX 耐性率が他の 4 施設よりも有意に高

い結果が得られた(p=0.001).同様に 2004 年に分離 されたS. pneumoniaeの LVFX 耐性率は,当院以外の 4 施 設 で 0.5%(3!583 株),当 院 で 4.6%(9!195 株)

であり(p<0.001),2005 年に分離されたS. pneumoniae の LVFX 耐性率は当院以外の 4 施設で 0.5%(3!642 株),当院 で 3.2%(9!279 株)で あ っ た(p=0.002).

この様に 2003 年から 2005 年までの 3 年間連続して,

(3)

Fig. 1 Geographicaldistribution ofpatientresidencesand chronologicalorderofLVFX re sistantisolatescollected.

The numbersin circlesare in chronologicalorderand circlesshading denotesthe yearin which isolateswere obtained.

当院ではS. pneumoniaeの LVFX 耐性率が他の 4 施設 よりも有意に高かった.ところが 2006 年になると,S.

pneumoniaeの LVFX 耐 性 率 は 当 院 で 0.9%(2!221 株),当院以外の 4 施設で 1.3%(9!717 株)と な り,

有意差は認められなくなった(p=1.000).

2.LVFX 耐性S. pneumoniaeの MIC

2003 年と 2004 年に分離された LVFX 耐性S. pneu- moniaeのうち,MIC が>8µg!mL の株が当院では 88%

(15!17 株),他施設では 40%(2!5 株)であった.し かし,2005 年と 2006 年には>8µg!mL の LVFX 耐性 S. pneumoniaeは当院で は 55%(6!11 株),他 施 設 で は 50%(6!12 株)となった.微量液体希釈法で LVFX 耐性と判定されたS. pneumoniae 7 株は全て試験管希 釈法でも LVFX 耐性となった.

3.当院における LVFX 耐性S. pneumoniaeの疫学 調査

1)LVFX 耐性S. pneumoniaeが分離された 患 者 の 年齢分布

当 院 に お い て,LVFX 耐 性S. pneumoniaeは 2003 年には 73 歳以上の高年齢者からのみ分離されていた が,2004 年には 64 歳以上の高齢者の他に 13 歳の患 者 1 名と 1 歳の患者 3 名からも分離されていた.しか

し,2005 年と 2006 年には,LVFX 耐性S. pneumoniae は再びそれぞれ 68 歳以上,71 歳以上の高年齢者から のみ分離されていた.

2)LVFX 耐性S. pneumoniaeが分離された 日 と 入 院日との関係

当院において LVFX 耐性S. pneumoniaeが分離され た患者 28 名中 11 名は外来を受診した当日,4 名は入 院当日,6 名は入院翌日(1 日後),2 名は入院翌々日

(2 日後)に分離された.残りの 5 名はそれぞれ入院 より 3 日後,7 日後,15 日後,20 日後,36 日後に分 離されていた.

3)LVFX 耐性S. pneumoniaeが分離された 日 と 患 者の住所との関係

当院において LVFX 耐性S. pneumoniaeが分離され た日付順に番号を付けて,患者の住所を診療記録より 検索して,地図にプロットした(Fig. 1).LVFX 耐

S. pneumoniaeの発生に時間的および地域的な偏り

は観察されなかった.

4.薬剤耐性プロファイル

8 薬剤中 ST にのみ感受性を示す耐性プロファイル PCMENTL を示した株は,2004 年 6 月から 12 月の 7 カ月間に 1 歳の小児 3 名から分離された(Table 2).

(4)

Table 2 Resistance profilesoflevofloxacin-resistantS.pneumoniaeisolated from 2003 through 2006

No.ofstrains

Profilea 2003b 2004 2005 2006

total

12 10 9 7 3 1 11 10 9 8 7 3 1 12 11 10 9 8 6 4 1 10 9 8 6 3 2c

1 1 2

L

1+1 2

PL

1 1

TL

1 1

ERL

1 1

ETL

1 1

PEL

1 1

PCL

1 1

PC-L

1 1

1 1

4 ENTL

1 1

CETL

1 1

1 PETL

1 1

PET-L

1 1

PENL

1 1

P-TRL

1 1

P-NTL

1 1

1 1

4 PETRL

1 1

2 PENTL

1 1

2 PMETL

1 1 1 1

4 PENTRL

1 1

PMENTL

1 1

PCMETL

1 1

PMETRL

1 1

PMENTRL

1 1 PCENTRL

1 1

2 PCMETRL

1 1 1

3 PCMENTL

1 1

2 PCMENTRL

aResistance to :penicillin G ;P,cefotaxime ;C,meropenem ;M,erythromycin ;E,clindamycin ;N,

tetracycline ;T,trimethoprim/sulfamethoxazole ;R,levofloxacin ;L.Susceptthe drug ;blank.No drug test;-.

bYear

cMonth

Fourotherhospitals

当院で 4 年間に耐性プロファイル ENTL を示す株が 3 名から,PETRL,PENTL,PCMETRL を示す株が それぞれ 2 名から分離されたが,同じ耐性プロファイ ルの菌株が分離された時期は 3 カ月以上離れていた.

2003 年と 2004 年に当院で分離された LVFX 耐性 S. pneumoniae の 35% ( 6!17 株 ) が meropenem

(MEPM)にも耐性を獲得していた.他の 4 施設では,

MEPM と LVFX に耐性のS. pneumoniaeは 2006 年に なって初めて 2 株分離された.(Table 2).

CLSI の LVFX 耐性判定基準 MIC≧8µg!mL を使用 して LVFX 耐性と判定し たS. pneumoniaeの 64% は LVFX の MIC が≧16µg!mL で あ り,MIC 測 定 の 際 に生じる±1 管の誤差を考慮しても耐性のカテゴリー に入る株であった.残りの 36% は LVFX の MIC が 8µg!mL の株であり,測定誤差を考慮すると中間(I)

のカテゴリーに入る可能性もあるが,感受性(S)と

判定される可能性は低いと考えられる株であった.

LVFX 耐性と判定したS. pneumoniae45 株のうち複数 の施設で分離された 7 株について,同一施設において 試験管液体希釈法で LVFX の MIC を測定した結果,

全ての菌株が LVFX 耐性であった.これらのことか ら,日常検査で実施しているS. pneumoniaeの LVFX の MIC 測定精度に大きな問題は無いと考える.

全国 103 の医療施設における 2003 年と 2004 年の S. pneumoniaeの LVFX 耐 性 率 は そ れ ぞ れ 1.1% と 1.0% である11).これと同じ 2003 年と 2004 年に当院 以外の 4 施設から分離されたS. pneumoniaeの LVFX 耐性率は,全国規模の調査結果より低い耐性率である のに対し,当院で分離されたS. pneumoniaeの LVFX 耐性率は全国規模の調査結果と比較しても高い耐性率 であることが明らかとなった.しかし,当院で分離さ れた LVFX 耐性S. pneumoniaeの発生に地域的,時間 的な偏りは認められず,また,同じ月に同じ耐性プロ

(5)

ファイルの株が分離された患者はいなかったので,同 一菌株による市中でのアウトブレイクの可能性は低い と考えられる.しかし,当院において,8 薬剤中 ST にのみ感受性を示す 7 剤耐性の株が 2004 年 6 月から 12 月の 7 カ月間に 3 名の患者から分離されており,こ の 3 名の患者は全て 1 歳の小児であった.交差感染に よるフルオロキノロン耐性S. pneumoniaeの小児への 伝播12)や多剤耐性S. pneumoniaeの家族内感染13)が疑わ れる報告があるので,保育園でこの多剤耐性肺炎球菌 の蔓延が危惧されたが,患児や患児の兄弟が通園して いる保育園や幼稚園を診療記録から特定することは困 難であった.母親の職場に近い保育園に通園する小児 がいるので,今後実施する前向きサーベイランスの際 には,小児患者の住所だけでなく,通園している保育 園等についても調査する必要があると考える.

LVFX 耐性S. pneumoniaeが入院より 3 日以上経過 して分離された患者 5 名うち,1 人目の患者は入院 3 日前に提出された喀痰培養検査で LVFX 感受性のS.

pneumoniaeが検出されていたが,入院 13 日後に本耐

性菌が分離されるまでの 7 日間 pazufloxacin(PZFX)

が使用されていたので,フルオロキノロン耐性のS.

pneumoniaeが選択された可能性が高いと考えられる.

2 人目の患者は入院 9 日前から入院 5 日後まで LVFX が処方されており,入院 3 日後の喀痰培養検査ではS.

pneumoniaeは検出されず,入院 15 日後に LVFX 耐性 S. pneumoniaeが分離された.入院 3 日後と 15 日後の 喀痰はともに Geckler の喀痰品質評価でグループ 5 と 良質な検体であり,入院 3 日後の喀痰グラム染色でグ ラム陽性の双球菌は観察されなかった.この患者は院 内で LVFX 耐性S. pneumoniaeに感染したか,あるい は LVFX が処方された こ と に よ り LVFX 感 受 性S.

pneumoniaeが検出されない時期があったが LVFX に

よって耐性菌が選択された可能性が考えられる.3 人 目の患者は入院 9 日前の喀痰培養検査で LVFX 感受

性のS. pneumoniaeが検出されていた.その後,抗菌

薬は投与されていなかったが,入院 3 日後に本耐性菌 が分離された.入院 9 日前から入院 3 日後までの間に 本耐性菌が市中もしくは院内で感染したと考えられ る.4 人目の患者は入院 3 日前の喀痰培養検査ではS.

pneumoniaeが検出されておらず,入院 6 日後より 16

日間 ampicillin(ABPC)が投与された.その後,抗 菌薬は使用されていなかったが,入院 36 日後に本耐 性菌が分離された.これらのことからこの患者は入院 中に本耐性菌が定着した可能性が考えられる.5 人目 の患者には抗菌薬は投与されておらず,入院 7 日後に 本耐性菌が分離され,この時が初回の喀痰培養検査で あった.したがって,本耐性菌の感染時期についての 考察は困難である.

当院は LVFX のみならず MEPM の耐性率も他の施 設と比べて高い状況が続いており(Table 1),2004 年の MEPM 耐性率が有意に高かった(p<0.001).当 院で分離さ れ る LVFX 耐 性S. pneumoniaeは MEPM 耐性も同時に持つ耐性プロファイルの菌が多いので,

これが LVFX 耐性率と MEPM 耐性率の高い原因であ ると考えられる.また,当院で 2003 年と 2004 年に分 離 さ れ た LVFX 耐 性S. pneumoniaeの LVFX の MIC は≧16µg!mL の比較的高い MIC を示す株が多い特徴 もあった.当院は地域医療連携病院であると同時に救 急指定病院となっているので,地域の医療施設で治療 した後に紹介されて来る高年齢で基礎疾患を有する呼 吸器疾患患者や救急車で自宅や病院から搬送されてく る重症呼吸器疾患患者が多いことが,当院で LVFX および MEPM 耐性のS. pneumoniaeの分離率が高い 要因の 1 つとして考えられた.しかし,重症呼吸器疾 患患者が多い状況が変化していないにも関わらず,

2006 年 に LVFX 耐 性S. pneumoniaeの 分 離 率 が 低 下 したので,本院で本耐性菌の分離率が高かった原因と 急激に低下した原因は解明できなかった.しかし,世 界各国でS. pneumoniaeの LVFX 耐性率の上昇が報告 されているので14),前向きサーベイランスで本耐性菌 を早期に発見し,これらの情報を臨床に提供すると同 時に患者情報を収集し,市中及び病院内での拡がりを 防止する為に臨床との連携を密にして監視を続けてい く必要があると考える.日常業務として前向きサーベ イランスを実施することにより,LVFX 耐性S. pneu-

moniaeを再度検査して確認し,菌株の保存を確実に

行うことができる様になった.

臨床微生物検査室では,パルスフィールドゲル電気 泳動法15)によるゲノムタイピングを日常検査として実 施することは困難であるので,耐性プロファイルを迅 速に解析できる WHONET は多剤耐性菌による院内 あるいは市中でのアウトブレイクを早期に発見するた めの疫学調査ツールとして有効であると考える.

謝辞:本研究は桐生厚生総合病院,社会保険群馬中央総 合病院,公立藤岡総合病院,済生会前橋病院の協力により 実施された.各病院の細菌検査室の皆様に深謝いたします.

文 献

1)宮本仁志,井上千春,村上 忍,村瀬光春:臨

床材料より分離されたStreptococcus pneumoniae の 遺 伝 子 解 析 と 薬 剤 感 受 性.日 臨 微 生 物 誌 2001;11:24―31.

2)杉田香代子,上遠野保裕,内田 博,小林芳夫:

肺炎球菌の対する各種抗菌薬の抗菌力.日化療 会誌 2003;51:13―7.

3)矢野寿一,小林俊光:ペニシリン耐性肺炎球菌.

総合臨 2001;50:516―9.

4)Felder KA, Biedenbach DJ, Jones RN:Asses-

(6)

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5)Inoue M, Kaneko K, Akizawa K, Fujita S, Kaku M, Igari J,et al.:Antimicrobial susceptibility of respiratory tract pathogens in Japan during PROTEKT years 1-3 (1999-2002). J Infect Che- mother 2006;12:9―21.

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428―34.

9)榊原外江,五味淵英之,打田孝枝,飯野昌則,五 内川里子:レボフロキサシン耐性肺炎球菌の 1 例.埼臨技会誌 2004;54:238―40.

10)Clinical and Laboratory Standards Institute:

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11)長沢光章,佐藤智明,郡 美夫,犬塚和久,朝 山 均,小﨑繁昭:臨床分離株の薬剤感受性成 績調査および薬剤感受性検査の変動因子と精度 管理に関する研究.医学検査 2005;54:1431―

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13)杉田麟也:ペニシリン耐性肺炎球菌感染症に対 する実地医療の現状.日化療会誌 2003;51:

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(7)

Epidemiological Study of Levofloxacin-resistantStreptococcus pneumoniaeIsolated from 2003 Through 2006 in Japan

Maemi SOHMA1), Ikuyo YOKOZAWA1), Shingaku KANEKO1)& Sachiko SATAKE2)

1)Division of Clinical Microbiology, Department of Clinical Laboratory, Maebashi Red Cross Hospital,

2)School of Health Sciences, Gunma University

We evaluated the usefulness of WHONET, free software from the World Health Organization (WHO), in a laboratory-based survey analyzing infectious disease, i.e.,Streptococcus pneumoniae, and its antimicrobial sus- ceptibility, i.e., to levofloxacin (LVFX), between 2003 and 2006 at 5 hospitals. The percentage of resistant strains (MIC"8µg!mL) isolated by the Maebashi Red Cross Hospital Laboratory between 2003 and 2005 was 3.8% (26!684=number of resistant isolates!number of all isolates), significantly higher (p<0.001, Fisherʼs exact test) than the 0.5% (8!1717) recorded at 4 other hospital laboratories. In 2006 the Maebashi Red Cross Hospital Laboratory percentage of resistant strains was 0.9% (2!221) in the absence of interven- tion to reduce the percentage of resistant isolates, while that at 4 other hospital laboratories was 1.3% (9! 717)- a difference not statistically significant (p=0.574). Of resistant strains, 86% (24!28) came from patients older than 67 years and 71% (20!28) from outpatients or those newly hospitalized 1 or 2 days.

Where and when pathogens are isolated are the two priority factors in epidemiological analysis. Super- imposing plot of patient residences and isolated times of LVFX-resistantS. pneumoniaestrains for each inci- dences showed no unusual trends in pathogen distribution. Analysis of possible multiple drug resistance for all LVFX-resistant S. pneumoniae isolates, i.e., resistance profile determination, indicated that no strain iso- lated in any one-month period shared an identical resistance profile, suggesting that the probability of a community outbreak of one specificS. pneumoniae strain is minimal. We did not find possible causes for the high resistance percentage of isolates recorded by the Maebashi Red Cross Hospital Laboratory during 2003-2005, or for the low resistance percentage for strains isolated during 2006.

Analysis of our survey indicated that LVFX-resistantS. pneumoniaeisolates are still rare in the commu- nities tested, but ongoing surveys have keenly aroused public interest in potential risk and the conse- quences of the increase in antibiotic-resistant pathogens. This study showed WHONET to be indispensable as an epidemiological investigation tool.

Tabl e 1 Per c ent age  r es i s t anc e  of S. pne umo ni a e i s ol at es t o  ant i mi c r obi al agent s Per c ent age  r es i s t anc e  ( %)
Tabl e 2 Res i s t anc e  pr of i l es of l evof l oxac i n- r es i s t ant S. pne umo ni a e i s ol at ed  f r om  2003  t hr ough  2006 No

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