小児急性化膿性中耳炎における肺炎球菌血清型に関する疫学調査
1)国立病院機構三重病院,2)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(現 国立成育医療センター)
3)市立札幌病院(現 札幌市立大学)4)国立病院機構東京医療センター,5)千葉市立海浜病院,
6)名古屋市立大学,7)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院,8)市立札幌病院,
9)KKR 札幌医療センター(旧 幌南病院)10)東北労災病院,11)杉田耳鼻咽喉科医院,
12)藤巻耳鼻咽喉科医院,13)小松耳鼻咽喉科クリニック,14)国立保健医療科学院
小児肺炎球菌血清型研究会
神谷 齊
1)加藤 達夫
2)富樫 武弘
3)岩田 敏
4)黒崎 知道
5)馬場 駿吉
6)増田佐和子
1)佐藤 成樹
7)吉村 理
8)藤井 正人
4)嶋田 耿子
5)八木 克憲
9)矢野 寿一
10)杉田 麟也
11)藤巻 豊
12)小松 信行
13)丹後 俊郎
14)(平成 18 年 11 月 10 日受付)
(平成 18 年 12 月 6 日受理)
Key words : Streptococcus pneumoniae, serotype, otitis media, vaccine, child
要 旨
6 歳未満の小児化膿性中耳炎患者より分離された Streptococcus pneumoniae の血清型分布及び 7 価肺炎球菌 コンジュゲートワクチン(7 価ワクチン)の血清型カバー率を検討するとともに penicillin G(PCG)に対す る耐性化を調査するため,北海道,宮城県,千葉県,東京都,神奈川県,三重県の 10 施設において,2005 年 4 月から 2006 年 3 月の 1 年間にわたりプロスペクティブに調査を実施した.
鼓膜切開または鼓膜穿刺により採取した検体数は,856 検体で,菌の発育が確認された 599 検体から 691 株の菌が分離され,このうち 219 株(31.7%)が S. pneumoniae と同定された.さらに,基準に合った 201 株を解析対象とした.201 株の血清型をみると,19F 52 株(25.9%),6B 30 株(14.9%),23F 24 株(11.9%)
の順に多かった.7 価ワクチン血清型カバー率は 62.7% であった.
PCG に 対 す る 感 受 性 は,penicillin susceptible S. pneumoniae(PSSP)40.3%,penicillin intermediate- resistant S. pneumoniae(PISP)42.8%,penicillin resistant S. pneumoniae(PRSP)16.9% であり,PISP と PRSP を合わせると 59.7% であった.これら耐性菌に対する 7 価ワクチンの血清型カバー率は PISP 80.2%,
PRSP 82.4% であった.ペニシリン結合蛋白(penicillin binding protein;PBP)関連遺伝子変異は,175 株
(87.1%)に認められ,genotype PISP(gPISP)70 株(34.8%),gPRSP 105 株(52.2%)であり,マクロラ イド遺伝子変異は 176 株(87.6%)に認められた.
〔感染症誌 81:59〜66,2007〕
はじめに
Streptococcus pneumoniae は,小児科領域感染症の起 炎菌として重要な細菌であり,髄膜炎,菌血症などの 侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal dis- ease:IPD)や肺炎の原因となる.また,急性化膿性 中耳炎は臨床の場で遭遇する機会が多い疾患である.
S. pneumoniae は急性化膿性中耳炎の主要な起因菌で
あり,急性化膿性中耳炎から発展する重篤な感染症の 起因菌ともなっている.近年,PCG 耐性を含む多剤 耐性菌の増加が認められるようになり,薬剤耐性の問 題を超えて有効なワクチンによる予防が期待されてい る.
米国では 2 歳以下の小児を対象に 7 価(4, 6B,9V,
14,18C,19F,23F の血清型)肺炎球菌コンジュゲー トワクチン(7 価ワクチン)の接種が小児のルーチン ワクチンプログラムに導入されており,IPD 発現率の
原 著別刷請求先:(〒514―0125)津市大里窪田町 357
国立病院機構三重病院 神谷 齊
減少
1)だけでなく,直接ワクチンを接種していない者 に対する集団効果も示されている
2).さらに米国ばか りではなく欧州数カ国の調査でワクチンの肺炎
3),急 性中耳炎
4)に対する効果も確認されている.
7 価ワクチンは本邦においても現在臨床開発中であ り今後導入が予想されるが,本邦におけるワクチンの 効果を推定するため,各 種 疾 患 か ら 分 離 さ れ る S.
pneumoniae の血清型について明らかにしておくこと
が必要である.髄膜炎
5)〜8),肺炎
9)から分離された S.
pneumoniae の血清型調査は多く行われているが,急
性化膿性中耳炎から分離された菌の血清型については 広く実施された調査はない.急性化膿性中耳炎では,
鼓膜切開または鼓膜穿刺を行って得られた検体からの 分離菌のみが明確な起炎菌と考えられる.小児におい てこの検体採取を広く行うことは困難であったため,
これまで小児急性化膿性中耳炎の起炎菌の大規模調査 は行われていなかった.そこで 2005 年に小児肺炎球 菌血清型研究会を組織し,小児の急性化膿性中耳炎患 者から分離された S. pneumoniae の血清型分布を調査 し,さらに 7 価ワクチンによる血清型のカバー率を算 出することにした.また,同時に現在海外にて開発途 中の 13 価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(13 価ワ クチン)が導入された場合の血清型カバー率について も併せて検討した.これに加え,S. pneumoniae の各 種抗菌薬に対する感受性を測定するとともに,PCG 耐性と血清型との関連性について検討し,併せてペニ シリン結合蛋白(penicillin binding protein;PBP)関 連遺伝子,マクロライド耐性遺伝子の解析を行った.
対象及び方法
2005 年 4 月から 2006 年 3 月までの 1 年間に,北海 道,宮城県,千葉県,東京都,神奈川県,三重県の 10 医療機関の耳鼻咽喉科を受診した 6 歳未満の小児急性 化膿性中耳炎患者の中耳内貯留液から検出された S.
pneumoniae 201 株を解析対象とした.検体は,鼓膜切
開または鼓膜穿刺により採取し,検体から病院検査室 または常時その施設が提出している検査機関で検出さ れ た S. pneumoniae を,三 菱 化 学 BCL(MBC)に 送 付し,血清型及び感受性の検査を実施した.血清型は,
型別用血清(Statens Serum Institut,Copenhagen)
を用い莢膜膨化試験により決定した.PCG,erythro- mycin( EM ), clarithromycin ( CAM ), cefditoren
(CDTR),ceftriaxone(CTRX),levofloxacin(LVFX)
に対する感受性は,米国臨床検査標準化協会(CLSI)
の標準測定法に従い,微量液体希釈法を用いて測定し た
10).なお,各薬剤の MIC 測定にはフローズンプレー ト栄研を使用した.さらに,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI) ! NCCLS の 判 定 基 準
11)に 従い感性および耐性を判定し,PCG は MIC が 0.06µg!
mL 以 下 を PSSP,0.125〜1.0µg! mL を PISP,2.0µg!
mL 以 上 を PRSP,ま た EM,CAM は 0.25µg! mL 以 下を感性(S),0.5 µ g ! mL を中等度耐性(I),1.0 µ g ! mL 以上を耐性(R)とカテゴリー分類した.PBP 関 連遺伝子(pbp1a,pbp2b,pbp2x),マクロライド耐性 遺 伝 子(mefA,ermB)は ペ ニ シ リ ン 耐 性 肺 炎 球 菌
(PRSP)遺伝子検出試薬(湧永製薬)を用い解析を行っ た.
また,患者の背景として性別,年齢,検体採取日,
検体採取方法,検体採取前 1 週間以内の抗菌薬投与の 有無について調査した.
なお,本調査は疫学研究に関する倫理指針(文部科 学省・厚生労働省;平成 14 年 6 月 17 日)及び疫学研 究におけるインフォームド・コンセントに関するガイ ドライン(疫学研究におけるインフォームド・コンセ ントに関する研究と倫理ガイドライン策定研究班;平 成 12 年 4 月 10 日)に従い,調査開始前に各医療機関 または外部の倫理委員会にて審査され承認を得て実施 した.
成 績
小児急性化膿性中耳炎患者から鼓膜切開または鼓膜 穿刺により採取できた検体は,856 検体であり,この うち 599 検体(細菌分離率 70.0%)から 691 株の菌が 分離された.そのうち S. pneumoniae は 219 株(31.7%)
検 出 さ れ,そ の 他 Haemophilus influenzae 259 株
(37.5%),Staphylococcus aureus と 同 定 さ れ た 38 株
(5.5%)を 含 む Staphylococcus spp. 111 株(16.1%),
Moraxella catarrhalis 47 株(6.8%)が検出された(Fig.
1).このうち複数の菌が分離された検体は 81 検体あ り,うち 2 菌種が 70 検体,3 菌種が 11 検体であった.
検出された 219 株の S. pneumoniae のう ち MBC で
Fig. 1 Distribution of691 strainsisolated from middle-earfluid ofchildren with otitismedia under6 yearsof age.
検査が実施できたものは 211 株で,両耳からの重複株
(4 株),年齢基準抵触(2 株),集中測定時の未発育(4 株)を除いた 201 株を解析対象とした.
201 株の患者背景は,男児 117 例(58.2%),女児 84 例(41.8%)で平均年齢(月齢)は 24.5 カ月であった.
年齢分布は 0 歳から 2 歳が 152 例(75.6%),3 歳から 5 歳が 49 例(24.4%)で 1 歳(81 例)が多かった.検 体採取方法は,鼓膜切開が 199 例(99.0%),鼓膜穿 刺が 2 例(1.0%)であった.また,検体採取前 1 週 間以内の抗菌薬の投与は,投与有りが 58 例(28.9%),
投与無しが 132 例(65.7%),不明 11 例(5.5%)であっ た(Table 1).
血 清 型 の う ち 最 も 多 か っ た の は,19F の 52 株
(25.9%)で,以下 6B が 30 株(14.9%),23F が 24 株
(11.9%)で,これら 3 つの血清型を合わせると 52.7%
を占めた(Fig. 2).また,7 価ワクチン血清型カバー 率は 62.7%,13 価ワクチンとなった場合の血清型カ バー率は 81.1% であった.
血清型を年齢区分別に見た場合,0 歳から 2 歳では 19F(26.3%),6B(18.4%),23F(12.5%)の 順 に 多 く,3 歳から 5 歳では 19F(24.5%),3(18.4%),23F
(10.2%)の順に多かった(Fig. 3).7 価ワクチン血清 型 カ バ ー 率 は 0〜2 歳 68.4% に 対 し,3〜5 歳 44.9%
であり,差と両側 95% 信頼区間は,23.5%(7.76%〜
39.29%)となり,両側有意水準 5% で 0〜2 歳で有意 に高かった.また,13 価ワクチンとなった場合の血
Table 1 Patientprofilesin acute otitismediaFemale Male
Total
84 117
201 Statisticalpopulation
19 28
47 0
Age distribution
(years)
30 51
81 1
10 14
24 2
10 7
17 3
10 11
21 4
5 6
11 5
59 93
152 0 -2years
25 24
49 3 -5years
26.4±18.0 23.0±17.5
24.5±17.8 Mean lunar(Mean±SD months)
82 117
199 Myringotomy
Sampling
2 0
2 Tympanocentesis
21 37
58 Prioruse of Yes
antibioticswithin one week
56 76
132 No
7 4
11 Unknown
Fig. 2 Distribution ofserotypesofS.pneumoniaeisolated from middle earfluid in 201 children with acute otitismedia under6 yearsofage.
清型カバー率は 0〜2 歳 83.6% に対し,3〜5 歳 73.5%
であり,差と両側 95% 信頼区間は,10.1%(−3.6%〜
23.8%)となり,両側 5% 有意水準で有意な差は認め られなかったものの,同様に 0〜2 歳で血清型カバー 率が高い傾向が見られたことは今後の参考となる.
PCG に 対 す る 感 受 性 は,201 株 中 PSSP 81 株
(40.3%),PISP 86 株(42.8%),PRSP 34 株(16.9%)
で あ り,PISP,PRSP を 合 わ せ る と 120 株(59.7%)
であった.年 齢 別 で は,0〜2 歳 で は 152 株 中 PSSP が 36.2%,PISP が 45.4%,PRSP が 18.4% で PISP.
PRSP 合わせて 63.8% であるのに対し,3〜5 歳では,
PSSP が 53.1%,PISP が 34.7%,PRSP が 12.2% で PISP,PRSP 合わせて 46.9% とやや低かった.
また検体採取前 1 週間以内の抗菌薬投与の有無で分 布を見た場合,抗菌薬投与ありでは PSSP が 25.9%,
PISP が 51.7%,PRSP が 22.4% で有 り,投 与 無 し で は PSSP が 45.5%,PISP が 39.4%,PRSP が 15.2%
であった.なお,各種抗菌薬の MIC 分布(Fig. 4)で は,EM,CAM で耐性菌が多く見られ,EM,CAM の耐性菌(I+R)はともに 87.6% であり,病院分離 株及び診療所分離株の MIC 分布も同様であった.
PCG 感受性別の血清型の分布は,PSSP 81 株では 3
Fig. 3 Distribution ofserotypesofS.pneumoniaeisolated from middle earfluid of201 children withacute otitismedia under6 yearsofage at0-2 yearsold and 3-5 yearsold.
Fig. 4 Cumulative curvesofantibioticsusceptibility forS.pneumoniaein 201 strainsisolated from children with acute otitismedia under6 yearsofage.
が最も多 く 16 株(19.8%),6B,14 が そ れ ぞ れ 9 株
(11.1%)と続き,PISP 86株では19F が 28 株(32.6%),
6B が 20 株(23.3%),23F が 18 株(20.9%)で あ り,
PRSP 34 株では 19F が 22 株(64.7%)と最も多く,23 F が 5 株(14.7%),6A が 4 株(11.8%)と続いた.PISP と PRSP を 合 わ せ る と 120 株 中 19F が 50 株
(41.7%),23F が 23 株(19.2%),6B が 21 株(17.5%)
であった(Table 2).
また,PCG 感受性別の 7 価ワクチン血清型カバー 率は,PSSP 35.8%,PISP 80.2%,PRSP 82.4% であ り,13 価ワクチンの場合の血清型カバー率は,PSSP 66.7%,PISP 89.5%,PRSP 94.1% であった.
さらに,7 価ワクチン血清型カバー率に対して,年 齢区分(0〜2 歳,3〜5 歳),ペニシリン感受性区分
(PSSP,PISP,PRSP)を要因としたロジスティック 回帰分析を行った結果,0〜2 歳に対する 3〜5 歳の オッズ比は 0.44(95% 信頼区間:0.21〜0.91)となり,
年齢が低い群で有意にカバー率が高かった.また,
PSSP に対する PISP,PRSP のオッズ比はそれぞれ 6.95(95% 信頼区間:3.49〜14.44),7.86(3.05〜23.25)
とな り,PSSP に 対 し て PISP,PRSP と も 有 意 に カ バー率が高かった.
PBP 関連遺伝子の変異は 175 株に認められ,1〜2 遺伝子の変異(genotype PISP, gPISP)は 70 株,3 遺伝子の変異(gPRSP)は 105 株であった.gPISP の 血清型は 3(21.4%),14(15.7%),6B(14.3%)の順 に 多 く,gPRSP の 血 清 型 は 19F(44.8%),23F
(21.0%),6B(17.1%)の順に多かった.また,7 価 ワクチンカバー率は,gPSSP 34.6%,gPISP 41.4%,
gPRSP 83.8% と耐性株で高かった(Table 2).
PCG 感受性と PBP 関連遺伝子変異との関連をみる と,MIC による分類で PSSP 81 株のうち 26 株には遺 伝子の変異はみられなかったが,55 株には 1〜2 遺伝 子の変異がみられ,また,PISP 86 株のうち 15 株は 1〜2 遺伝子の変異であったが,71 株には 3 遺伝子の
変異がみられた.PRSP 34 株では,全株に 3 遺伝子 の変異がみられた.
マクロライド耐性遺伝子の変異は,176 株に認めら れ,その内訳は mefA 35.8%,ermB 46.8%,mefA+
ermB 5.0% であった.
EM,CAM の感受性との関連を見ると,EM,CAM とも感性株では全株変異はなく,カテゴリー I,R の 耐性株では全株変異が認められた.
考 案
小児科領域において S. pneumoniae は,IPD のほか 肺炎,急性化膿性中耳炎などの起炎菌として重要であ る.本調査においても 856 検体より 691 株の菌が分離 さ れ,こ の う ち S. pneumoniae は 219 株(31.7%)検 出されてお り,H. influenzae 259 株(37.5%)と と も に主要な起炎菌となっていた.この分離状況は,第 3 回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイラン ス結果報告
12)における,急性化膿性中耳炎での主要な 分離菌 H. influenzae(27.4%),S. pneumoniae(24.1%)
と同様な傾向であったが本調査では H. influenzae,S.
pneumoniae の分離頻度がより高かった.
本邦において S. pneumoniae の血清型調査は多く行 われており,髄膜炎については千葉ら
5)が小児及び成 人を対象に調査し,17 歳以下の小児の髄液から分離 さ れ た 189 株 で,6B(25.4%),19F(19.0%),23F
(13.8%),6A(10.1%)の順に分布し,7 価ワクチン 血清型カバー率は 76.7% と報告している.また Ubu- kata ら
6)は,17 歳以下の小児から分離された 138 株で,
6B(25.4%),19F(16.7%),23F(14.5%),6A(10.1%)
の順に分布し,7 価ワクチン血清型カバー率は 76.2%
と報告している.IPD については坂田ら
13)が 9 歳以下 の 小 児 か ら 分 離 さ れ た 46 株 で,6B(39.1%),23F
(17.4%),6A 及 び 19F(8.7%)の 順 に 分 布 し,7 価 ワクチンの血清型カバー率は 73.9―80.4% と報告して いる.肺炎については Chiba ら
9)が小児から分離され た 392 株 で,6B(23.2%),23F(17.6%),19F(17.3%),
Table 2 Serotype distribution by PCG susceptibility pattern classified by MICsand PCR forpbpgenesin S.pneumoniaeisolates
Serotypes
Others 35B 23F* 23A 22F 19F* 19A 18C* 15B 14* 11A 10A 9V* 7F 6B* 6A 5 4* 3 1
22 1
1 2
3 2 1 9 1 2 1 9 6 5 16 PSSP(n=81)
MICs PISP(n=86) 8 20 3 28 1 18 3 5
5 22
2 1
4 PRSP(n=34)
11 1
2 1
1 2
2 5 1 gPSSP(n=26)
Genotyping gPISP(n=70) 15 8 10 1 1 11 1 2 5 2 2 12 4 3 22 47
2 1 18
8 gPRSP(n=105)
*7vPnCV:7-valentpneumococcalconjugate vaccine composition serotypes PSSP:penicillin susceptible S.pneumoniae
PISP:penicillin intermediate-resistantS.pneumoniae PRSP:penicillin resistantS.pneumoniae
14(10.5%)の順に分布し,7 価ワクチン血清型カバー 率は 70.9% と報告している.また,耳鼻科領域では,
生方ら
7)が,耳漏及び鼓膜切開で分離された株それぞ れ 87 株,58 株で,19,6,3,23,14 の順に多いこと を報告している.これらのことより,血清型は髄膜炎,
IPD 及び肺炎の報告では 6B が最も多く,急性化膿性 中耳炎の報告では 19 が多いことがわかるが,どの調 査においても 19F,6B,23F,6A が多く分布してい た.本調査においても,19F(25.9%)が最も多く 6B
(14.9%),23F(11.9%),6A(9.0%)が 順 次 多 く 分 布していた.
これらの報告では各肺炎球菌疾患に対し 7 価ワクチ ンは,70% 以上の血清型カバー率を示していた.小 児急性化膿性中耳炎を対象とした本調査における 7 価 ワクチン血清型カバー率は 62.7% であったが,ワク チンに含まれる 6B に交差反応を示す 6A
14)を加えた血 清型カバー率は 71.6% であり,特に重篤化が問題と なる 2 歳以下でのカバー率はそれぞれ 68.4%,78.3%
となった.
米国では,小児を主体(0〜18 歳 392 例,成人及び 年齢不明 108 例)とした急性中耳炎 500 例を対象に,
1996 年から 1999 年に調査された報告があるが,それ によると血清型は,19F(24%),14(16%),6B(11%),
23F(10%)の順に多く,7 価ワクチンによる血清型 カバー率は 66.7%,交差反応を示すと考えられる血清 型 6A を加えたカバー率は 76.2% であった
15).また,
1978 年から 1994 年の間に 6 歳未満の小児を対象とし た 中 耳 貯 留 液 よ り 分 離 さ れ た S. pneumoniae で は,
19F,14,23F,6B の血清型が多く
16)血清型分布では 14 型の比率が異なっていたが血清型カバー率は本調 査の結果とほぼ同様であった.
近年,PCG をはじめとする各種抗菌薬に対する耐 性菌の増加により,その現状と治療に関する報告を目 にする機会が多い.PCG 感受性分布について,Ubu- kata ら
6)は,小児髄膜炎から分離された 189 株の PBP の遺伝子解析において,gPSSP13.8%,gPISP41.3%,
gPRSP 44.9% と報告している.小児急性中耳炎につ いては宇野ら
17)が,感受性試験による 334 株の検討に おいて PSSP 35.0%,PISP 49.4%,PRSP 15.6% と報 告している.本調査 201 株では,PBP 遺伝子解析で は gPISP が 70 株(34.8%),gPRSP が 105 株(52.2%)
であり,耐性菌(gPISP+gPRSP)は 87.1%,PCG 感 受 性 試 験 で は PSSP 81 株(40.3%),PISP 86 株
(42.8%),PRSP 34 株(16.9%)であり,耐性菌(PISP+
PRSP)は 59.7% と Ubukata ら,宇 野 ら の 報 告 と 同 様,高い耐性率が認められた.耐性度別の 7 価ワクチ ン の 血 清 型 カ バ ー 率 は,PSSP 35.8% 対 し,PISP 80.2%,PRSP 82.4% であり,耐性菌に対して有意に
高いカバー率を示した.7 価ワクチンに交差反応性を 示す 6A を含めたカバー率は,各々 PSSP43.2% に対 し,PISP 89.5%,PRSP 94.1% であり,さらに高いカ バー率が認められ,耐性菌により急性化膿性中耳炎を 発症した場合,重篤化,遷延化が予想されることから も,ワクチンの早期導入の有用性が確認された.
また,年齢別 PISP 及び PRSP の割合は 3〜5 歳 で は 46.9% に対し,0〜2 歳では 63.8% と低年齢で高く,
血清型の分布において,0〜2 歳に 19F の次に 6B 型 が多く見られたことに対し,3〜5 歳では 19F の次に 3 型が多く見られたことが特徴的だった.7 価ワクチ ン血清型カバー率は,3〜5 歳での 44.9% に対し 0〜2 歳では 68.4% と低年齢で有意に高かった.7 価ワクチ ンに交差反応性を示す 6A を含めたカバー率は,3〜5 歳で 51.0%,0〜2 歳で 78.3% と低年齢でさらに高かっ た.
海外では,S. pneumoniae,H. influenzae 感染症の予 防を目的にワクチンが広く使用されており,2 歳未満 の小児を対象とする 7 価ワクチンは,2000 年に米国 で導入されて以来,現在では既に 70 カ国以上の国で 用いられている.また,米国を始め 8 カ国では 7 価ワ クチンの小児への接種がルーチンワクチンプログラム に導入されている.
本邦では 23 価肺炎球菌ワクチンが承認され臨床に 用いられているが,2 歳未満の小児には適応がない.
これは莢膜ポリサッカライド抗原が B-cell を直接刺激 し抗体産生を促す一方,T-cell 非依存抗原であるため メモリー効果がなく抗体産生の増強が行われないため である
18).これに対し,7 価ワクチンは,7 種類の血 清型(4, 6B,9V,14,18C,19F,23F)の莢膜ポリ サッカライドをキャリア蛋白に結合させ T-cell 依存性 抗原になっているので乳幼児においても抗体産生があ り,現在の我国の状況からも採用されるべきワクチン と考える.
Eskola ら
4)は,7 価ワクチン導入後の効果について,
急性中耳炎については,7 価ワクチン接種群と非接種 群の比較において,ワクチン接種群で急性中耳炎全体 の発症率は 6% 減少し,ワクチンに含まれる血清型に よる急性中耳炎の発症は 57% 減少したと報告してい る.重症感染症については 1998 年から 2003 年の米国 CDC の調査で,導入前の 1998 年から 1999 年と導入 後の 2003 年を比較し,IPD の 5 歳未満の発症率はワ クチン血清型で 94%,ワクチン血清型以外を含めて も 75% 減少したと報告している
19).また,Kyaw ら
2)は,1999 年と 2004 年における PCG 耐性肺炎球菌に
よる IPD の発症率について,2 歳未満で 10 万人当た
り 61.5 人から 1.2 人(98%),65 歳以上でも 12.3 人か
ら 2.6 人(79%),全 年 齢 で 5.0 人 か ら 0.7 人(87%)
と大幅な減少を報告し,ワクチン接種者以外への影響 を示唆した.
我々の実施した調査でも小児急性化膿性中耳炎の
S. pneumoniae 血清型の分布は,本邦及び海外におけ
る急性中耳炎及び他の肺炎球菌性疾患と類似してお り,7 価ワクチン及び今後予定されている 13 価ワク チンでも高い血清型カバー率が認められると思われ る.また,今回の調査でも PCG に対する耐性化は進 んでいたが,7 価ワクチンは PCG 感性菌と比較し耐 性菌に対し特に高い血清型カバー率を示し,更に 2 歳 以下ではそのカバー率は高いという結果が得られた.
7 価ワクチンは既に海外で広く臨床使用され,急性 中耳炎及び他の肺炎球菌性疾患の予防効果及び安全性 が確認されている.今回の我々の調査によっても我が 国では耐性菌並びに血清型カバー率の現状からみて,
肺炎球菌感染症の中心となっている急性中耳炎,肺炎 の予防ひいては IPD,敗血症の予防には肺炎球菌コン ジュゲートワクチンの導入が必要であることが明らか となった.
謝辞:本研究に当たりご協力いただいた,市立札幌病院 耳鼻いんこう科山川宗位先生,原田千洋先生,山田和之先 生,大谷文雄先生,KKR 札幌医療センター耳鼻咽喉科千 田英二先生,祢津宏昭先生,KKR 札幌医療センター小児 科高橋豊先生,東北労災病院耳鼻咽喉科馬場保先生,郭冠 宏先生,沖津尚弘先生,入間田美保子先生,聖マリアンナ 医科大学横浜市西部病院耳鼻咽喉科内田登先生,富沢秀雄 先生,田中泰彦先生,千葉市立海浜病院耳鼻咽喉科堅田浩 司先生,原佳奈子先生,吉川直子先生,国立病院機構東京 医療センター耳鼻咽喉科水足邦雄先生,国立病院機構三重 病院耳鼻咽喉科臼井智子先生に深謝いたします.
文 献
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11)Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI)!NCCLS:Performance Standards for An- timicrobial Susceptibility Testing Fourteenth In- formational Supplement M100-S15. Wayne, PA., 2005.
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Epidemiological Survey of Pneumococcus Serotypes in Pediatric Patients with Acute Suppurative Otitis Media
The Research Group on Streptococcus Pneumoniae Serotypes among Children, Hitoshi KAMIYA
1), Tatsuo KATO
2), Takehiro TOGASHI
3), Satoshi IWATA
4), Tomomichi KUROSAKI
5), Shunkichi BABA
6), Sawako MASUDA
1), Shigeki SATO
7),
Osamu YOSHIMURA
8), Masato FUJII
4), Akiko SHIMADA
5), Katsunori YAGI
9), Hisakazu YANO
10), Rinya SUGITA
11), Yutaka FUJIMAKI
12),
Nobuyuki KOMATSU
13)& Toshiro TANGO
14)1)National Hospital Organization Mie Hospital,2)St. Marianna University School of Medicine Yokohama City Seibu Hospital (currently working at National Center for Child Health and Development),
3)Sapporo City General Hospital (currently working at Sapporo City University),
4)National Hospital Organization Tokyo Medical Center,5)Chiba Municipal Kaihin Hospital,
6)Nagoya City University,7)St. Marianna University School of Medicine Yokohama City Seibu Hospital,
8)Sapporo City General Hospital,9)KKR Sapporo Medical Center (Kohnan Hospital),
10)Japan Labour Helth and Welfare Organization Tohoku Rosai Hospital,11)Sugita Otorhinolaryngologic Clinic,
12)Fujimaki ENʼT Clinic,13)Komatsu Otorhinolaryngologic Clinic,14)National Institute of Public Health