HOU(Hands On Universe)を用いた教育と卒業研究
西 村 治 中 条 里 美 西 洋 若 尾
Education and Graduation resarch using HOU (Hands On Universe)
Osamu NISHIMURA Satomi NAKAJYOU Wakao and NISHIZAWA
キーワー ド:卒業研究,理科教育,天文教育
1. ま え が さ ( 1 ) Ha nds ‑ OnUni ve r s e のあらまし
過去 5 年間,全 米 科 学財 団 ( Na t i o na lSc i e nc e Fo unda t i o n ) ,米国国防省 ( US De pa r t me n t o f De f e n s e ) ,米国エネルギー省 ( USDe pa r t me nto f Ene r gy ) の支援の もと ,Hand s ‑OnUni ve r s e ( 略 称 HOU) では,高等学校 の生徒を対象 とした教育 プログラムを開発,指導 してきました. このプログ ラムは,参加生徒が専門の研究機関に観測を依頼 で きること,教室の コンピュータに CCD 画像 をダ ウ ソロー ドした り ,HOU 独 自の効率的な画像処理 ソ フ トを用いてデータの表示や分析ができることが特 長です. HOU は総合的なカ リキ ュラムも提供 して いますが, これは自然科学 と数学に関す る国の教育 目標 に沿 った多 くの課題や技能を幅広い天文調査研 究 に取 り込 んだ内容 になっています. HOU は現在, 中等学校 と学校以外の教育施設向けの学習活動計画 と教材を開発すると同時に,国防省附属学校 を含め て,世界各地の高等学校のつなが りの中に HOU を 広めていこうとしています.
( 2) HOU のカ リキュラム
HOU のカ リキ ュラムは数学や 自然科学,工業技 術 を心惹かれる天文学的な探求の中に取 り入れた も の で す. HOU は 全 米 数 学 教 員 協 会 ( Na t i ona l Co un c i lofTe a c he r so fMa t he ma t i c s ) と全米学術 会議 ( Nat i o na lRe s e a r c hCo unc i l )がかかげる数 学 ・自然科学 に関す る教育 目標の多 くに取 り組 んで います.太陽系や銀河,変光星,超新星 の調査を通 じて,生徒たちが問題 を解決す る技術や物事を筋道
'屯子情報工学科助手
= 電子情報工学科卒研生 原稿受付 1 9 9 9
年9 月 3 0 日
立てて考 える力を伸ばしてい くこと,それによって 代数や幾何, さまざまなデータ表示方法 と解析方琴^
をはじめ,力 と運動,エネルギーの変換,光 の特性 といった物理学の基本原理の必要性に気づ くこと, これが HOU のカ リキュラムの目標です.教室の コ ソピュークは,画像処理 ソフ トと遠隔通信 とともに, 生徒が研究をすすめるための研究器材 と位置づけ ら れています.
( 3 ) HOU の望遠鏡
当初 ,HOU 参加生徒 は, カ リフォル ニア大学 バ ーク リー校天文学部 の ロイシュナ‑天文台 ( Le us ‑ c hne r Obs e Ⅳat o r y) にあ る口径 3 0 イ ソチ ( 約 7 6 c m) の自動望遠鏡 に画像の撮影依頼 を していま し た.現在では, p‑レソスバーク リー国立研究所 の 近傍超新星探査 ( La wr e n c e Be r ke l e y Na t i o na l La bo r a t o r yNe a r bySupe r no vaSe a r c h) チームが 所有す る,やは り口径 3 0 インチの望遠鏡を利用 して います. これはまもな くカ リフォルニア州 モソ トレ ー近郊のチ ュ‑ズ リッジ ( Ch e w' sRi dge ) とい う, 空が非常 に暗 くなる所 に移転す ることになっていま す.
画像撮影依頼 の増加 にともなって ,HOU は望遠 鏡を所有 している協力機関を募 り,‑ ワイ州, イ リ
ノイ州, カ リフォルニア州, ワシソ トン州,それか らスウェーデンとオース トラ リアで教育用 自動望遠 鏡のネ ットワーク作 りに共同で取 り組 んでいます.
生徒か らの依頼 はこのネ ッ トワークを通 じて実行 さ
れます.その際には天候,地理的条件, 日程や設備
を考慮の上,その依頼 に最適 なのはどこの望遠鏡か
が決定 されます. このネ ットワークが動 き出せば,
参加生徒の依頼 にすばや く応 じることがで きるよ う
になるで しょう. また,望遠鏡がさまざまな標準時
間帯に分布 しているので,場合によっては リアルタ
1 0 6 西村 治 ・中条里美 ・西洋若尾 イムの観測 も可能 にな ります.
( 4 ) HOU の画像処理 ソフ ト
最新 の HOU 画像処理 ソフ トとデータ解析 ソフ ト ( HOU‑ I P) は ,Wi ndo ws 9 5 で作動 します. HOU
‑1 P の 旧バ ージ ョンは 4 8 6 以 上 の Wi n3. 1 , また は Ma c i nt o s h I I以上 のシ リーズで作動 します. この ソフ トは HOU 研修会 ( HOU pr o f e s s i o na ld e ve l ‑ op me ntwo r ks ho p ) に参加す るすべ ての教 師 に提 供 され ます.
画像処理 ソフ トの機能 は次 の通 りです : l o g ス ケール ,mi n/ ma x 調整,サ イズ変更, カ ラーパ レ ッ ト一式,回転 ・反転 ・移動 などの画像操作,演算 処 理 ( 画像 同士 を足 す,引 く,掛 け合 わ せ る,割 る).チ‑タ解析 につ いては,各 ピクセルにつ いて カウン トが表示 され, スライス ・プロッ トとヒス ト グラムは輝度分布 を表わ します.測光操作では半値 全幅 と背景補正 の計算作業 を行 います.
( 5 ) HOU の成功例
HOU は,外部 の査定機関か ら,その効 果 を把握 す るための調査 を受 けています. これは生徒 の内容 理解 と自然科学‑の姿勢 の両面 か ら見た成果, また HOU が教員 に与 える影響,教育 に技術的 な手法 を 用 いることの影響が対象 とな ります.調査 の結果, 生徒たちは自然科学 と数学のいろいろな概念 を学 び, 身 につ けよ うとす る意欲 が高い ことがわか りま した.
これは,彼 らがその よ うな題材が どのよ うに応用 さ れているのか,直接体験 しているか らです. さらに, 参加生徒 は楽 しんで コンピュータを使 っていて, こ れ はワープロよ り使 い道がある, と実感 しています.
自然科学 にはあま り興味がない, と思 っていた生徒 の多 くは ,HOU に参加 した ことで研究者 が行 って い ることについての理解が深 ま り, また, 自分 も科 学分野 の職業 に就 けるのではないか,科学 の仕事 を す るの も面 白そ うだ, と考 えるよ うにな りました.
専門的な望遠鏡を利用で きる機会があれ ば,驚 く べ き発見や価値 ある研究 を高校生がなしとげて しま うこ と も ,1 9 9 4 年 春 に オ イル シ テ ィー高 校 ( Oi l Ci t yHi g hSc hoo l ) の 2 人 の生徒 によって実証 され ま した. メロデ ィ ・スペ ンス ( Me l o d ySpe n c e ) と ヘザ ー ・クータラ ( He a t he rTa r t a r a ) の 2 人 は, 渦巻銀河 の研 究 を して い る ときに M5 1 ( 子持 ち銀 河)の観測を依頼 しました.数 日後 ,2 人 は電話連 絡 を受け,彼女たちが撮 った画像が 1 9 9 4 年 に発見 さ れた 9 番 目の超新星 SN1 9 9 4 Ⅰの最初 の光 を とらえ ていた ことを知 らされたのです. ス
ペソスさん とク ー タラさんは ,SN1 9 9 4 Ⅰの測光 に関す る論 文 に共 著者 として登場 します.
( 6 ) HOU の今後 の展望
高等学校 向 け プ ログ ラムの普及活動 の はかに, HOU は現在全米科学財団か らの助成金を受 けて, 博物館,科学キ ャンプ,公民館 ( c o mmu ni t y c e n‑
t e r ) 等の学校外科学教育 ( i nf o r ma ls c i e nc ee d uc a‑
t i o n 略称 I SE) 施設向けの教材を開発中です. これ らの教材 は天文学 とさまざまな教養を結び付 けるこ とに目的をおき, また,いろいろな学習歴や幅広 い 年齢層の要望 に応 えられ るよ う作成 されてい ます.
I SE 教材 は学校外教育施設や公開実験室で実施 して いる講習会が対象です. さらに, ボス トン科学博物 鰭 ( t heBo s t o nMu s e u m o fSc i e nc e ) は ,HOU と 共同開発 した展示 を導入 しています. この展示は, 世界 中の博物館や プラネタ リウムが企画す る展示 の
モデル となるで しょう.
HOU は中等学校 向け学習活動 のモデル開発 に も 乗 り出 しました.本格的な中等学校 向けカ リキ ュラ
ム開発 のための基金を探 しています.
2. 高専における実践例
小惑星探 しや超新星探 しはコンピューターを使 っ て,簡単 な操作でできて しま うため,やる気 のあ る 学生 であれ ば,多少 プログラ ミングが得意で ない学 生であって も,熱心に研究 を進めることがで きた.
内容 は各 自の興味 に合わせて, 自分か ら学 んでいけ るよ うになっている. こち らか ら教 えるものではな く, 自ら学 び取 るよ うになってお り,学ぶ ことの喜 びと研究 し発見す ることの楽 しさを味わ えるよ うに なっている. また,小惑星探 しはホームページか ら 行 うよ うになってお り,英語で書かれているため, 英語 の勉強 にもなる.
今 の学生 をみていて,なかなか自分からいろいろ なことを調べ よ うとしない学生 が増 えている中で, HOU を使 った小惑星探 しは,比較的 とっつ きやす く,楽 しみ なが ら勉強 と研究を進め ことがで きる.
また,大学 と違 って通常の授業 の中に卒研が組み込 まれている高専 において,短時間に勉強で きて,成 果の上がる HOU のカ リキ ュラムは,ち ょうど良い 教材 となった.
3. カリキュラム
まず,学生 は以下の ような内容を ワーク
ブックに 従 って自習 した.
●画像処理入門
ここでは画像 を表示 させた りす る基本的な使 いか
たを学習す る. 日食 を探 ろ うとい う題が与 えられ,
表示 した画像 か ら,太陽のプ ロミネンス ( 太陽表
面から噴出している高温のガスの流れ)の解析 を す ることができる.
●宇宙をのぞいて銀河の特徴を調べ る
ここでは楕円銀河や,渦巻銀河の画像を見 て, そ れぞれにある固有な特徴や形態をつかむ.多 くの 銀河は渦巻のように見 えるので渦巻銀河 と呼ばれ ている. この銀河にはた くさんの塵や ガスがあ り, 恒星が生 まれ る要素 となっている. また,楕円銀 河 と呼 ばれるものには, ガスや塵がほとんどない ため,新 しい恒星 は生成 されていない.その他 に も不規則銀河 と呼ばれるものがあ り,渦巻でも楕 円でもない部類である.
このよ うに,銀河にはいろいろと個性があ り,時 には銀河が互 いに衝突 し,壊れた り合体 した りす るとて も興味深いものであることがわかる.
●超新星 をみつける
本研究のテーマにもなっているが,同 じ空の 2 枚 の画像を移動 した り,引 き算をす ることによって, 超新星 をみつけることがで きる.
超新星 は,銀河系全体 よりも明るくなることもあ るほどのとても明るい天体である.一般的にとて も明るい天体 には,銀河系や,かな り遠 い銀河 と 同 じ視線方向にある銀河系内にある前景 の星の場 合があるが,銀河系や近傍の星 は一定の明 るさを 保 ち続 ける.
その一方で,超新星 は,時間がたつにつれて明 る さが変化す る.はじめに明 る く輝 き,その後はゆ っくりと暗 くなって背景 と区別できな くなってい く.可視光で見 ると,超新星が現われてから完全 に見 えな くなるまで数週間から数 ヶ月かかると言 われている. したがって超新星を発見す るには, 違 う時刻に撮 られた画像 どうLを比較す ることが 必要 となって くる.
超新星 は,爆発時に一番強い光 りを放出 した後, 徐々に光が弱まってい く. この時間的変化を利用 して,一枚 目の画像にはな く二枚 目の画像にはあ る光を探す,または一枚 目にはあったが二枚 目に はない ( 弱 まった)光を探す ことで見つ けること ができる.
●大 きさを測 る
HO U にある機能を使 い,画像か ら様々な情報を 読み取 る.
●月のクレーターの高 さ
月にはた くさんのクレーターがあ り,そのどれも が違 った特徴を持 っている. このクレーターの明 るさを求めることで,高 さを調べるこができる.
●光年
物の単位 には様々なものがあ り,私達の普段の生 活 には関係のないような大 きなものがある. しか し,天文学で扱 う単位 はとても大 きなものがほ と んどである.そ こで,大 きな単位が どの よ うなも のかを実感す るために,私達の普段 の生活の中に あるものを使 って,その概念を理解す る.
●画像か ら大 きさを測 る
画像の 1 ピクセルが何秒角 に相 当す るかを考 えて, そ こか ら天体の大 きさを計算す る方法を学ぶ.
●月面の地形の大 きさを測 る
̀ ̀ 画像か ら大 きさを測 る" と同 じや り方で,月面 の大 きさを測 ることができる. ここで,月は恒星 などに比べ地球 に近 いことから,角度 も大 き くな る.そ こで,月面のクレーターの大 きさなどの部 分的な大 きさも計算す ることができる.
●木星の質量
木星 とその衛星の画像解析 によって,木星の軌道 半径 と,木星が軌道を一周す るのにかか る時間を 求めることができる. また, この二つの値をある 式 にあてはめ ることで,木星の質量を求めること ができる.
4.小 惑 星
火星 と木星の軌道の間 ( 火星の軌道の外側で太陽 から地球 までの岸 巨難の約 3 倍の ところ)に,いあ る ゆるボーデの法則が予言す る地点に無数の小天体が 存在 す る.半径5 0 0 km 以下 の天体, これ を一般 的 に小惑星 ( as t er oi d) と呼ぶ.
小惑星 にはメインベル トと呼ばれるもの とカイパ ーベル トと呼ばれるものがある.
●メインベル ト
火星 と木星の軌道の間にあ り岩のカケラのよ うな ものでできている主小惑星帯のことである.
●カイパーベル ト
海王星の軌道 を過 ぎたあた りに存在 した くさんの 氷 の塊でできている小惑星帯のことである.
5. メインベル ト 5‑ 1 小惑星の大 きさと質量
小惑星 は惑星 といっても,その名の とお り大 きさ
は小 さい.望遠鏡でのぞいて直径が測れるのは何個
もな く,ほとん ど全部の小惑星の直径 は明 るさか ら
計算 されたものであ り,それは大 きいほど明 る く光
るだろ うとい う観点か らである. また,質量 も小 さ
い.小 さいといっても,それは天文学的にいって小
さいのであって,私達 の日常生活の経験か らいえば
大 きなものではある.最大の大 きさを持つ ケレスで
1 0 8 西村 治 ・中条里美 ・西洋若尾
図 1 四大小惑星 と月の大きさの比較
図 2 小惑星の軌道の位置
も半径数百キ pメー トルで,質量を見てみてもケレ ス, ヴェス タはそれぞれ 月の質量 の約 8 0 分 の 1 , 2 5 0 分の 1 である.わか りやす く言 えば , 「月を壊せ ば最大のケレス程度の小惑星が 8 0 個作れ る」 とい う わ けであ る.直径 1 0km の小惑星 な ら 6 00 万個 も作 れ ることにな り, こんな小 さいものであるので,小 惑星を全部集めても,その重 さは月の 3 7 分 の 1しか ないとい うことか ら, ごく小 さいものと考 えること ができる.また,地球 と比較す るととても小 さ く感 じる月であるが,月 と小惑星を比較す ると図 1 のよ うにこれだけの大 きさの違 いがある.
5‑ 2 軌道から考えられる起源
起源を考 える上で,重要なことは小惑星群の軌道 要素である.大部分 は火星 より遠 く,木星 よ り近 く
にあって,太陽のまわ りをまわ っているが,中には 木星 より遠 くなるものもあ り,地球や金星 よ りも太 陽に近づ くものもある.
多 くの小惑星は,ほかの惑星 に比べ離心率が大 き
図 3 いろいろな小惑星の軌道
く,惑星の軌道を円としてみると,図 3 のよ うにか な りゆがんだ楕円軌道を運動 している. さらに,軌 道を綿密に調べてみると,小惑星は軌道運動学的 に い くつかのグループに分類できることもわかってき た.最近 はもっと重要なことも明 らかになってきて いる.小惑星個々の太陽光反射能を調べてみ ると, 軌道で分類 される同一 グループの小惑星は同 じよ う
な反射能を持つのである.砕 ける前の天体を母天体 と呼ぶが,母天体の表層付近 にあった物質 と中心付 近 にあった物質は異なるはずである.そのため,同 じ小惑星 とはいっても,反射能 はい くつかのグルー プに別れるに至 ったのだろ うと考 えられている. こ の ことほとりも直 さず,その科学組成が同 じである ことを意味 している.
大 きさか らいっても, また軌道がかな りゆがんだ 楕円であることや科学組成が似ていることなどか ら, 小惑星の起源は次のよ うに考 えられ る.すなわち, 太陽系の歴史のある時期 に,月はどの大 きさを持つ 2 つの天体が互いに衝突 し,粉々に砕 けたのが小惑 星の星々であろ う. また衝突によって砕けた破片が あちこちに飛び散 りかな り幅広い軌道要素を持つ よ うになったのではないかと考 えられている. このこ とについては,爆発 した と考 えるとうまく説明でき る現象が発見 されていることからもいえる.
6 .カイパーベル ト
カイパーベル トとい うのは,海王星や冥王星 の軌
道付近か ら外側に広がった円盤状の領域のことであ
る . ここには撃星の起源になるような小天体が多数
存在 しているのではないか, とい う説が以前提唱 さ れていた.
そ して 1 99 0 年代 に入 ってから海王星軌道付近に多 数の小天体が発見 され,中には冥王星軌道 よりも外 側 をめ く ●るものも発見 され,その存在が明 らかにな った.現在 までに 6 0 ‑7 0 個 ほど観測 されているが, その直径 は数十 km 〜数百 km 位であ り丁度撃星 と 惑星の中間的 な大 きさを してい る.直径 10 0 km 以 上のカイパーベル トの天体 は少 な くとも 3 5, 0 0 0 個の あると推測 され,その数は,主小惑星帯の同 じサイ ズの天体の数の数百倍 になる. これ らは,太陽系を 形成 した星雲の名残であ り,構成 している物質 とそ の分布 は,初期の太陽系の進化のモデルを考 える う えで重要な決め手 となっている.
6‑ 1 小惑星の発見
実際に画像をダウソp‑ ドし,画像処理を行 って み ると ,1 0 枚に 1 つ くらいは小惑星を発見す ること ができた.ただ, これはすべてが新 しい小惑星 とい う訳ではな く, ほとんどが既に発見 されているもの であ り,本当に新 しい小惑星の発見はかな り多 くの 画像の処理をおこなわない と難 しいであろ う.ただ, アメ リカでは海王星の軌道を過 ぎたあた りに存在す るカイパーベル ト天体を見つけた例 もあ り,がんば って画像処理を行 うことで大発見につなが る可能性 があることがわかる.
6‑ 2 小惑星の発見後
小惑星の発見後は,単に見つけて終わ るだけでな く,軌道を特定 し,その小惑星がまだ発見 されてい ないものであるかを確認す ることが大切である.た だ し,軌道を決定す るためには,同一 日の同じ視野 の画像が最低 2 枚必要であ り, なかなかいいデータ がないことが難点であった.
6‑ 3 同一の小惑星であるか どうかの判断 同 じ赤経赤緑で撮影 日が異なる 2 つの画像に写 っ ている小惑星は,小惑星帯 の小惑星 なら ( 移動量が 1 0 分露出で 1 0 ‑2 0 ピクセル程度 のもの) ,全 く別物 の小惑星 と考 えてよい. もし,小惑星帯にあるあ り ふれた小惑星なら ,7 0" /h く ・らいのスピー ドである.
1 枚の画像サイズは 8' ×8' なので , 8×60 / 7 0 ‑約 7 時間で端から端へ動いて しま う.
一方 ,EKBOs (カイパ ーベル ト天体)では 8×
60 /3‑1 6 0 時間‑約 7 日間なので,数 日間のインタ ーバルで撮影 された同一視野の画像に,写 っている 可能性がある.でも,同 じ日に 2 枚撮 っていない と,
これが EKBOs であるとなかなか決めることができ ない (さまざまなまがいものがあ り得 る・ ‑‑コズ ミ ック レイや CCD 表面 の ゴ ミや欠損 e t c ) であろ う
East
RA +
Sou th DEC
‑( 1123,112
Scale0. 43 ‑ ■ / p
( 0′0)
North DEC
+図 4 画像のサイズ
し ,1 0 分露出で 1 ピクセル前後の動 きなので,動 い ている方向までは特定で きないでだろ う.そのため, 同一 日の同 じ視野の画像が どうしても最低 2 枚必要
となる.
次に,小惑星帯の小惑星でも,同 じ日に 2 枚以上 の同一視野の画像があれば,サブ トラク トした画像 上に,白と黒のペアのバーができるので,動 く方向 と速度 ( 角度/時間)を求めることがで きる.前 日 または翌 日の位置はその動 きを外捜 (2 点 な ら比例 配分 , 3 点以上 ならベ ッセル補間等) して計算 し, 写 っているであろ う赤経赤緒の画像を探す ことにな る. これがなかなかほしい画像が撮 られていないの で悔しい思いをす ることが多い. もし , 2 日以上 に わたって同定で きた小惑星が見つかった ら,暫定的 に円軌道を計算 し,位置推算 してみる 3 日以上 の位 置データが取れれば,それから楕円軌道を求めるこ
ともで きる.
6‑ 4 小惑星の確認
HOU の ソフ トで求めた データは ,HOU の ソフ トに依存 しているので実際のデータではない.そ こ で ,HOU のデータを使 って実際のデータを求め る 必要がある.実際のデータを元 に,今 まで見つかっ た小惑星であるか調べる.ス ミソニアンの小惑星 チ ェッカーとい う We b のページで, この小惑星候補 が今 までに見つかった ものか どうかを調べ る.
7.HOU を用いて卒業研究 を行 った利点
HOU の ワークブ ックは,与 える教育 ではな く,
自らが学びとるものになっている. 自分で考 え自分
の発想でいろいろなことを学べ るようになっている
ことが,卒業研究で行 うのに適 していた.本来 は通
常の授業でもこうい う形式のものをどんどん取 り入
れてそれぞれの生徒が自分の興味 に沿 って,何 かを
学んでいける形 にできることが理想であろ う. 日本
110
西村 治 ・中条里美 ・西洋若尾 の教育機関では,なかなかこうい う自由な発想ので
きる教育が取 り入れ られていないのが現状であるが, 生徒 自身が積極的に学ぶ ことができるカ リキ ュラム を どんどん取 り入れて行 くことが重要であると思わ れ るし,高専ではそ うい う教育を高校 レベルか ら取
り入れやすい環境 にあると思われる.
ワ‑クブックは 7 章に分れてお り,今回は 4 章 ま でを勉強 し,その後,小惑星探 しの方法を学 んで, 小惑星 を探す研究を行 った.内容 としては,標準的 な授業でおこなわれているよ うな抽象的なものでは な く,豊富な例を用いて,生徒が自然科学に親 しみ やすいものに工夫 されているため,卒研 の学生 も興 味 を持 って課題 に取 り組 んでいた.
また,小惑星探 しも何段階かの画像処理をほどこ す ことによ り,専門的な知識が無 くても小惑星 を探 せ るため高専生の レベルであれば,問題 な く取 り組 めるものであった.高専の卒業研究では,本格的な 研究だ となかなかついていけない学生 も多 く,や る 気 はあっても挫折す ることもあったが,今回の よ う に工夫 されたカ リキュラムと少 しがんばれば到達で きる内容であれは,学生 も積極的に卒業研究 をお こ ない,いい成果が得 られた と感 じられた.
さらに, アメ リカの高校 と共同研究 とい う形 を と り,電子 メールによって,お互 いの研究経過や文化 の交流を行 うことにより,研究の仕方や英語 による コ ミュニケーシ ョンを学 びとることがで きた.英語 は大切であ り,勉強 しなければいけない言語である が,それは実際にアメ リカ人 などと交流をしてみな い と,実感で きないものである.そ うい う点で英語 を勉強す る動機付けとしてもとても有効 な方法であ
り,英語教育 としてもいい教材であった と思われ る.
表 1 方角 1 0 5 3 ‑ 0 3 3 3
日付 時間 小惑星の座標
( X,Y)
(
1) ( 2 ) ( 3 ) 9 8 0 3 2 30 1 5 6C 7 2. 7 8 ,8 5 5. 6 15 3 7. 1 4 ,8 5 5. 8 55 8 9. 3 0 ,3 3 4. 9 5
0 2 5 6C 1 8 4. 4 7 ,9 2 0. 0 66 6 8. 3 8 ,9 51. 2 46 8 1. 2 7 ,3 8 8. 8 3
8. 今後の課題
ただ,小惑星を見つけるだけでほとんど終わ って しまい,その軌道や小惑星の物理的特徴を調べ ると ころまではなかなかできなかった.今回の卒研 は比 較的熱心 な学生であったが,物理的な調査 となると,
なかなか頭がっいていかないようで,そこまで本を 調べ るなどしてやろ うとはしない傾向があ り,その あた りを どの ように導いてい くかが今後の課題 とな った.
9. 卒業研究で確認 された小惑星のデータ
最後に昨年の卒業研究 において発見 した小惑星の 座標を表 1‑ 6 に示 してお く.それぞれの表題 は, 望遠鏡で画像を撮影 した時の方角を表わ している.
例 を挙 げ て説 明す る と,表 1 の題 は,方 角 1 0 5 3 ‑ 0 3 3 3 である. 1 0 5 3 の部分は図 4 の RA を示 している.
0 3 3 3 の部分は図 4 の DEC を示 している. この表 は, 画像の撮 られた 日付 と時間,その画像から発見 した 小惑星の座標 を示 している. また,一つの画像で複 数の小惑星を発見 した場合は,小惑星の座標 の下 に 番号を付 けた.
さ らに表 1‑ 6 の中 で,例 として 「 1 0 5 5 ‑ 0 2 4 5 ‑ 9 8 0 3 2 4 」 について,前章で述べた小惑星の確認 を行
なった時のデータを示す.表 7 は ,HO U ソフ トの データか ら実際のデータを求めたものである.表 8 は,表 7 のデータを持つ小惑星が,今までに発見 さ れた ことがあるかを調べた結果,表示 された もので ある. これにより, この小惑星は今 までに発見 され た ことがあるものだ とい うことが分 った.
表 2 方角 1 0 5 5 ‑ 0 2 4 5
日付 時間 小惑星の座標 ( Ⅹ ,Y) 9 8 0 3 2 3 0 1 4 4b 2 0 9. 9 1 , 8 0. 2 1
0 2 4 4b 3 3 2. 0 4 ,1 2 4. 0 8
9 8 0 3 2 3 0 1 4 4C 6 9 7. 6 7 ,2 9 8. 2 7
0 2 4 4C 8 2 5. 0 6 ,3 4 8. 3 7
0 4 0 6C 8 6 2. 6 3 ,3 1 7. 6 2
9 8 0 3 2 4 0 1 2 5a 7 5 7. 5 9 ,7 6 0. 1 9
表 3 方角 1 0 5 5 ‑ 0 3 0 5
日付 時間 小惑星の座標