179
和光大学現代人間学部紀要 第2号(2009年3月)
企画趣旨の説明とパネリストの紹介
司会・太田素子
こんにちは、保育思想史を専攻しております、太田と申します。今日 は、あいにくのお天気の中をようこそお越しくださいました。いま学 科長から話がありましたように、私たちは幼稚園教諭と保育士の養成 を行おうと準備を進めております。和光大学は、保育の資格課程が無 い今でも保育の仕事にすすむことを希望する学生が多い大学です。そ の志望を励ましたいと模索しております。そこで、これからどのよう に保育者の養成を行えばよいか、対話の場をたくさん作りたいと思い まして、今日はこのような学びの機会を作らせていただきました。ど うぞよろしくお願いいたします。
今日のシンポジウムの企画に関して考えたことが2つあります。1つ は、保育改革が急ピッチで進んでいる昨今の状況です。2006年末に教育 基本法が改訂され、第11条、第12条に家庭教育、幼児教育の条項が入り ました。人格形成の基礎として、幼児教育に注目せざるを得ない社会 的な背景があるのだと思います。学校教育法の改定からも同じ方向が うかがわれます。今回、幼稚園教育要領は小幅の改定にとどまりまし たが、あわせて改定された保育所保育指針は大綱化されて法律となり ました。幼児教育は現在、質的にも量的にも注目され、大切な局面に たたされているのだといえましょう。
少子化と長寿化が女性のライフサイクルを大きく変え、女性も男性も 子育てと社会的な自己実現を共に追求する時代に入りました。自然環 境,地域社会の変容や少子化に伴う子育て文化伝承の困難など、子育 ては親と保育の専門家との何らかの連携なくしては不可能な時代に入 ったのではないかと思います。そのような歴史的な変化が、今日の保 育改革には反映しているのでしょう。ただし改革は自治体や国の行財 政危機の中で進められています。客観的には質の高い保育が要求され ながら、子ども問題にお金をかけようという社会的合意が未形成のま ま、市場主義的な改革が進められかねない怖さがあります。
もう1つ考えていましたのは、そういった政策に振り回されてはいけ ないということです。むしろ現場が今、子どもたちを受け入れ現代の 家庭と付き合う中で、今日の子育て問題をどう受け止めているのか。
自分たちの目の前の子どもとの関係で自主的に解釈していくのか。そ
のようなボトムアップの形で保育のあり方を考えていくことが、保育 改革を考える前提となりましょうし、社会的な合意形成の王道でもあ るのでしょう。
保育者の養成をするならば、この地域社会の中で、先生方の実践に学 びながら、学生と一緒に保育をつくりあげていくような養成を行いた いという気持ちが、私たちには強くあります。そこで今日は、現場の 保育に寄り添って研究を進めてこられた先生をパネリストとしてお招 きしました。その問題提起を受けながら、私たちも勉強していきたい と思っています。
パネリストをご紹介いたします。
まず、汐見稔幸先生。東京大学教育学部教授を経て、現在白梅学園大 学の学長をなさっています。ことばのプログラムの問題や、父親の育 児参加と男性保育者の問題を提起され、今は乳児保育の研究を中心に しておられます。先生は大変忙しい身でありながら、現場の先生と臨 床的な研究を積み重ねて、保育の中でその時々に大事な問題に取り組 むという、理論家として非常に尊敬すべき仕事をしていらっしゃいま す。今日は日本の教育改革全体の中で、幼児教育の改革問題を討論い ただきたいと思っております。
次に加藤繁美先生、名古屋大学の大学院を経て山梨大学に着任され、
現在まで教鞭を取っておられます。著書がたくさんおありで、人間学 的な視野を持った保育論を提起されていますが、今日は先生が最近出 版された『対話的保育カリキュラム』というご本からヒントを得て、
対話的保育とは何かということで問題提起を頂きます。
それから、大瀧三雄先生です。和光幼稚園の園長でいらっしゃいます が、1979年に和光幼稚園に勤務されて以来、ずっと和光幼稚園でお仕事 をしてこられました。『和光学園実践シリーズ 生きる力を育む』とい う著書を発表されています。先の保育学会では、「共同的な遊びとは何 か」というシンポジウムでレッジョ・エミリアの幼児教育と並んで和 光幼稚園の実践がとりあげられ、報告者を務められました。ホットな お話を聞けると思います。
それではどうぞ、先生方よろしくお願いいたします。
[和光大学現代人間学部心理教育学科教授]
180
公開シンポジウム◎少子社会日本の保育