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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)

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令和元年度(2019 年度)

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)

総括・分担研究報告書

指定難病患者データベース、小児慢性特定疾病児童等データベースと 他の行政データベースとの連携についての研究

研究代表者 野田 龍也 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座 准教授 研究分担者 和田 隆志 金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授

原 章規 金沢大学 医薬保健研究域医学系 准教授

古澤 嘉彦 武田薬品工業株式会社 ジャパンメディカルオフィス・メディ カルエキスパート

盛一 享德 国立成育医療研究センター 小児慢性特定疾病情報室 室長 秋丸 裕司 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

難治性疾患研究開発・支援センター

難治性疾患治療開発・支援室 研究調整専門員 小松 雅代 奈良県立医科大学 講師

久保 慎一郎 奈良県立医科大学医学部附属病院 技師 研究協力者 今村 知明 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座 教授

佐藤 晃一 金沢大学附属病院 検査部 医員

村井 英継 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター

研究要旨

我が国の保健医療分野のデータベース(DB)は、政府主導で DB 間の連携等が推進されている。

国が有する各種 DB の中でも、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は我が国の保 険診療の悉皆調査であり、世界最大級のヘルスデータである。本研究の目的は、難病施策への 反映を念頭に、NDB や介護保険総合データベース(介護 DB)と難病 DB、小児慢性特定疾病(以下、

小慢という。)DB との連携及び結合に関する利点や課題を整理し、DB 間の連携及び結合に必要 な解決策を具体的に提示するとともに、実際に NDB を利用して指定難病等に係る臨床上、施策 上の集計を行うことである。

今年度は、大きく分けて、DB 結合の論点整理と NDB を用いた疾患定義・集計の 2 つの研究を 実施した。DB 結合の論点整理においては、DB の連携と結合の違いを整理するとともに、DB 同士 の結合を行う際、一意かつ不変の識別子(医療等 ID など)の存在が重要であること、そのよう な識別子が存在しない現状においては、DB の連携と結合にはいくつかの段階があること、DB の 連携及び結合に向けた課題は、医療等 ID(一意かつ不変の ID)の実現前と後で異なると考えら れ、また、法令、行政手続、倫理、技術的課題といった課題の種別ごとの検討が重要であるこ と、これらの課題が解決されて DB が結合された場合のメリット・デメリットは現在の患者・家 族、将来の患者・家族、主治医、行政、研究者、民間の 6 種類のステークホルダー別に検討す る必要があることなどをまとめた。

NDB を用いた疾患定義・集計においては、指定難病のうちの 3 疾患を例とする NDB 疾患定義

(疾患バリデーション)の試行的な構築やステロイドパルス療法を例とした難病患者への治療

の実態の試行的な把握、医療費の集計を行うとともに、対象を全指定難病(現在は 333 疾患)

(2)

2

に広げた患者数集計や医療費分析を本邦で初めて実施し、結果を公表した。

このように本研究の成果は多岐に渡り、難病に関する臨床研究や施策に直接に活用できる成 果も多く含まれる。次年度(最終年度)は、DB の連携及び結合に係る課題をさらに整理し、課 題に対する解決策をまとめるとともに、DB の連携及び結合にともなうユースケースやメリット・

デメリットについて提案する予定である。

A. 研究目的

我が国の保健医療分野のデータベース(DB)

は政府により相互連携が推進されており、医療 等分野における識別(医療等 ID)の導入も決定 された。2020 年現在、厚生労働省「医療・介護 データ等の解析基盤に関する有識者会議」にお いては、 レセプト情報・特定健診等情報データベ ース(NDB) と 介護保険総合データベース( 介護 DB) の連携を主軸とする保健医療分野のデータベ ース連携について検討が進んでいる。連携の検 討対象として難病 DB 及び 小児慢性特定疾病(以 下、小慢という。) DB が明記され、結合解析に 関する技術的課題を整理することとなってい る。難病分野においては、平成 27 年(2015 年)

1 月の難病法施行以降、指定難病患者データベ ース(難病 DB)と小慢児童等データベース(小 慢 DB)につき、臨床個人調査票(臨個票)や医 療意見書を元データとした DB 構築が進んでい る。

本研究は、このような背景の中で、難病施策 への反映を念頭に、難病 DB、小慢 DB と他の行 政データベース(NDB、介護 DB 等)との結合に 関する利点や課題を技術的、法的、倫理的側面 から整理を行うとともに、ADL 等の経年変化に 対する共通した評価方法等の検討を進め、連携 に必要な解決策を具体的に提示することを目 的としている。

それぞれの DB は、異なる根拠法と利用目的 を有するため、相互結合には課題が多く、課題 の整理と解決法の提示が必須である(本研究の 必要性)。

同時に、難病 DB、小慢 DB、NDB、介護 DB とい った保健医療分野の DB に関する 1 億人規模人 口での連携は世界に例がなく、日本発の新たな 研究となる可能性を有する。世界的に類例のな い規模の DB 連携について、難病分野の専門家 と疫学、医療 DB の専門家が協働して利点と課 題、解決策を議論し、提示することが本研究の 目的である。

B.研究方法

B.1 実施体制と実施スケジュール

本研究の期間は令和 2 年度(2020 年度)末ま での 3 年間を予定しており、本報告書は 2 年目 に当たる。

初年度である平成 30 年度(2018 年度;昨年 度)は、専門家が参集した会議体において論点 の整理を行うとともに、NDB を用いた個別の疾 患の実態把握に着手した。

令和元年度(2019 年度;今年度)は、DB 結合 の論点整理を進めるとともに、NDB を用いた疾 患定義と集計を行い、DB 連携の利点・課題の整 理と解決策の検討を含めた総合的なビジョン を提示した。具体的には、難病 DB 及び小慢 DB と NDB・介護 DB との結合・連携に関する論点整 理を行うとともに、NDB 等を用いた個別疾患の 疾患定義確立(バリデーション研究)に着手し、

全指定難病の NDB 集計を試行的に実施した。実 施した研究項目を下記に示す:

DB 結合の論点整理

NDB を用いた疾患定義と集計 3 疾患を例とする NDB 疾患定義

(疾患バリデーション)

ステロイドパルス療法

指定難病患者の医療費分析(3 疾患*)

全指定難病(333 疾患)の患者数集計 全指定難病患者の医療費分析

* 3 疾患とは潰瘍性大腸炎(UC)、多発性硬化 症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)を指す。

なお、NDB で集計されたすべての数値は NDB の公表基準に沿って、たとえば「患者数が 10 未 満(0~9)」の数値はマスキング(消除)を行 っている。

(倫理面への配慮)

B.2 倫理面への配慮

本研究では完全に匿名化された個票を用い、

個人情報や動物愛護に関わる調査・実験は行わ

ない。研究の遂行に当たっては、各種法令や「人

を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を

(3)

3 含めた各種倫理指針等の遵守に努める。また、

厚生労働省保険局を始めとする関係各所の定 めた規定・指針等を遵守し、必要な申請を行う。

また、DB の個票を用いた研究の実施に対して、

奈良県立医科大学医の倫理委員会の承認(受付 番号 2142。2019 年 2 月)を得ている。

C. 研究結果

議論の結果と集計結果を以下に示す。

C.1 DB 結合の論点整理

本研究においては、DB 同士の結合(連結とも 言う。)を、各 DB に含まれる個別の単位(個人、

施設など)を複数 DB 間で紐つけることと定義 した。DB 間の紐付け(名寄せ)に用いる単位(個 人等)は匿名であっても良いが、名寄せ用の識 別子(ID)については、(1) 別単位に同じ値が 割り振られないこと(一意性)、(2) 同一単位 の識別子が変化しないこと(不変性)の 2 つの 条件を高度に満たすことが求められる。つまり、

別人物に同じ ID が振られてはならないし、同 一人物の ID が頻繁に変化することも好ましく ない。これは、名寄せ対象が個人でなく、施設 等でも同様である。一意かつ不変の ID が複数 の DB に共通して付されていれば、その ID(医 療等 ID など)を用いて名寄せすることにより、

結合はおおむね完了する。 一意かつ不変の ID が あるだけでは名寄せには不十分で、DB をまたい で同じ採番ルールでその ID が付されている必 要がある。

ところが、我が国の多くの医療系 DB は、各 DB 内で一意ではあっても DB をまたいだ共通の ID が存在することはほとんどない。本研究が今 年度検討対象とした難病 DB、小慢 DB、NDB は共 通の ID はなく、NDB については、名寄せ用の ID の不変性に課題が残っている。つまり、現状、

DB 結合はきわめて困難な状況にある。NDB につ いては、奈良県立医科大学公衆衛生学講座が中 心となって開発した名寄せ用の ID(ID0)によ り、不変性を高めた名寄せ用 ID が開発された 段階である。

DB の連携と結合にはいくつかの段階がある

(資料1)。DB 間の相互結合を一切おこなわず、

DB の集計結果同士を照合する生態学的研究(地 域相関等の分析)も可能であり、本研究では(結 合ではなく) 「連携」と呼称するものとする(資 料1の最下層)。たとえば、現状では NDB は外 部 DB との結合は許可されていないが、NDB で算 出した都道府県別の集計と既存の都道府県別

集計を照合することは許されている。本研究で も、既存統計との集計値の照合により NDB 集計 値の正確さを検討しており、DB 連携の一例と言 える。

DB の連携ではなく「結合」をめざす場合の重 要な視点として、「結合の感度」と「結合の特 異度」の2つの視点が議論において提示された

(表1)。

結合の感度は A/(A+C)で表され、同一人物を 正しく名寄せする力である。結合の特異度は D/(B+D)で表され、別人物を正しく別人物と判 定できる力である。別人物の名寄せを恐れて保 守的な名寄せを行えば、特異度は上がるが感度 は下がり、同一人物を名寄せし損ねる例が増え る。一方、別人物の名寄せ発生を恐れず積極的 な名寄せを行えば、感度は上がるが特異度は下 がる。

感度と特異度のいずれを優先するかは結合 の目的により異なる。機微な個人情報の開示な どでは別人物への開示は避けられるべきなの で、特異度を大きく上げて感度を下げる措置が とられる(そのため、本人であっても必要書類 が不備であれば「別人物」とされ、情報は開示 されない)。一方、個人への介入を伴わない観 察研究では、研究対象者をなるべく多くとるた めに、感度を上げて特異度を犠牲にする(=

少々の過剰名寄せは許容する)基準を採用する かもしれない。

感度、特異度ともに 100%の完璧な結合は実務 上存在しない。また、同一の結合ロジックにお いては、両者はトレードオフの関係(一方を上 昇させると他方の下がる)にある。しかし、複 数の結合ロジックの性能比較においてはトレ ードオフの関係は発生せず、「別の結合ロジッ クに比べて感度も特異度も高い優れたロジッ ク」が存在し得る。もっとも端的な例としては、

すべての DB に個人番号(マイナンバー)や医療 等 ID が採用された状態を仮定すれば、強固な

「一意かつ不変の ID」となるため、感度も特異 度も非常に高い優れた結合識別子となる。本研 究では、DB の結合を検討するにあたり、現時点

表1.データベースの結合(個⼈名寄せ)における感度・特異度 ある結合⼿法での判定結果 本当に同⼀⼈物 本当は別⼈物

同⼀⼈物と判定 A(正しい) B(過剰名寄せ)

別⼈物と判定 C(名寄せ失敗) D (正しい)

(4)

4 で実現していなくても、仮に実現すれば可能に なるような結合ロジックも概念として提示す ることで、既存の規制や技術に縛られない議論 を目指した。

資料1は、種々の DB 結合において、結合され る対象者の数の違いによる階層を示している。

前述のとおり、最下層は DB 連携であり結合は 行わない。「既存項目の n 情報ハッシュによる 名寄せ」から「既存項目による名寄せ(確率論 的紐づけ)」の 3 階層は、一意かつ不変の ID が 存在しない場合に用いる、DB 内に存在する項目 を用いる名寄せ(結合)である。医療等 ID は、

2020 年時点では未実装であるものの、実現すれ ば名寄せ失敗・過剰名寄せがともに激減するた め、既存項目による名寄せを大きく超える数の 名寄せが可能となる。グローバルデータシェア リングは国境を越えた DB の連携または結合で あり、必ずしも結合を指すものではない。2020 年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行 においては、国境を越えた臨床データの共有と メタ解析が迅速に行われ、グローバルデータシ ェアリングの一つの例となった。

既存項目の n 情報ハッシュによる名寄せは、

DB を相互結合する際に、双方に共通して含まれ る複数個(n個)の項目が完全一致しているこ とを条件とした結合である。たとえば、被保険 者番号、性別、年齢といった特定のn個の項目 をハッシュ関数を用いてハッシュ化し、結合の キー変数とするものである。n個の項目が完全 に一致している場合のみハッシュ値が一致す るため、既存項目を利用する名寄せとしては確 実であり、その代償として結合される対象者数 は少なくなる(名寄せ漏れは増える)。特に、

結合に用いる項目(n項目の構成項目)が経年 的に変化しうる場合(住所など)は、ハッシュ 値が変わるため、名寄せ漏れが大きく増加する 点が留意点である。n 情報ハッシュについては 詳細に検討を行い、その結果を資料 2 にまとめ た。n情報ハッシュにおいて用いるn個の変数 について、難病 DB や小慢 DB、NDB などの各 DB にあるどのような変数が利用可能であるかを 列記し、それぞれの利点と課題についてまとめ たものである。

既存1項目による名寄せは、DB を相互結合す る際に、双方に共通して含まれる 1 つの項目が 完全一致していることを条件とした結合であ る。通常は患者 ID などが用いられ、n情報ハッ シュよりは緩やかな名寄せである(一意性が低 下し、別人が紐ついてしまう可能性は上昇す

る)。既存項目による名寄せ(確率論的紐づけ)

は、双方に共通して含まれる複数個(n個)の 項目を利用するが、完全一致を条件とせず、一 定以上の項目一致で同一人物とみなす名寄せ である。一意性を一定程度犠牲にして結合の感 度を高める手法であり、一意かつ不変の ID が ない段階においては、もっとも多くの人を名寄 せすることができる。

資料1のピラミッド図で上層にある医療等 ID などの一意かつ不変の ID を用いた名寄せは、

感度、特異度ともに高いため、従来の既存項目 を用いる名寄せよりは大きく向上することが 期待される。ただし、現時点では未実装であり、

また、実装前の期間の DB にさかのぼって一意 かつ不変 ID を振りなおすことは技術的に不可 能であることが多い(元の変数がすでにハッシ ュ化されているなど)。実装前の DB を利用する ためには、医療等 ID の実装前も後も既存項目 による名寄せ技術は必要である。

本研究班は、DB の連携及び結合に向けた課題 整理を行うことが最大の目的であり、上記の通 り、まず、DB の連携及び結合を複数の段階に整 理した。その後、「DB の連携及び結合に向けた 課題」と「仮に DB が結合された場合のメリッ ト・デメリット」 の 2 つに分けて議論を行った。

DB の連携及び結合に伴う課題や応用例(ユース ケース)の全体的な要点を資料1にまとめた。

DB の連携及び結合に向けた課題は、 医療等 ID

(一意かつ不変の ID)の実現前と後で大きく異 なるため、この 2 つで分けた。医療等 ID の実 現前は既存項目による結合(資料 1 のピラミッ ド図参照)をめざすこととなる。また、課題の 種別を、法令、行政手続(この 2 つは制度面)、

倫理、技術的課題の 4 つに区分し、それぞれの 論点を整理した。DB の連携及び結合に向けた課 題の一覧を資料 3 に示す。

これらの課題が解決され、DB が結合された場 合のメリット・デメリットについて、現在の患 者・家族、将来の患者・家族、主治医、行政、

研究者、民間の 6 種類の当事者・利用者に分け て検討した。受ける恩恵・デメリットは当事者・

利用者別に異なるため、検討結果は資料 4 に示

した。DB の結合により何らかのメリットが発生

しても、仮に臨床研究の成果として還元される

場合は、現在の患者・家族が直ちに恩恵を受け

ることにはつながらない。実際に情報の結合対

象となるのは現在の患者・家族であり、本研究

班は、現在の患者・家族にどのようなメリット、

(5)

5 デメリットがあるのかという視点を別立てで 議論する必要があると判断した。DB が結合され た場合のメリット・デメリットについては、次 年度においても議論を継続する。

なお、本議論に関連し、国立成育医療研究セ ンター・盛一先生及び国立研究開発法人医薬基 盤・健康・栄養研究所・秋丸先生から論点の提 示があり、資料 5 及び資料 6 に収載した。

C.2 NDB を用いた疾患定義と集計

C.2.1 3 疾患を例とする NDB 疾患定義(疾患バ リデーション)

NDB における疾患名は必ずしも「本当にその 疾患であること」を意味しない。レセプトにお ける検査病名はその代表例である。DB 上の疾患 名やその他の項目を組み合わせ、その疾患を正 確に把握できる真の疾患定義を構築する研究 を「バリデーション研究」と呼ぶ。バリデーシ ョン研究の大まかな流れとしては、その疾患の 患者数に関するなるべく正確な既存統計(参照 基準。ゴールドスタンダードデータソース;

GSDS)を準備し、GSDS に近しい患者数を再現で きるよう、感度特異度を調整しつつ、データベ ース(例:NDB)の複数変数を組み合わせること で行われる。ただ、本来のバリデーション研究 は、全体として患者数が当たれば良いものでは なく、性別や地域別でも患者数が近似している 必要がある。数合わせではなく、診断を DB 上で 再現することが目的であるからである。

本研究では、実際のバリデーション研究の前 段階(予備研究)として、指定難病のうち、潰 瘍性大腸炎(UC)、多発性硬化症(MS)、視神経脊 髄炎(NMO)の 3 疾患について、NDB を用いた予 備的なバリデーションを行った。本来は性別、

地域別でのバリデーションを行うべきところ、

今年度は日本全体の患者数との一致度を指標 とした。GSDS としては、国の衛生行政報告例に おける当該疾患の 2014 年までの医療費受給者 証及び特定疾患登録者証の患者数を採用した。

2015 年の難病法の施行により、医療費受給者証 に紐つく医療費助成は、一定以上の重症度を満 たすなどして病状の程度が認定基準に該当す る患者と、認定基準に該当しないが高額な医療 の継続が必要な患者(軽症高額該当)が対象と なり、軽症かつ医療費が高額でない患者は医療 費助成の対象外となったため(経過措置あり)、

制度変化前の 2014 年の患者数を GSDS として採 用したものである。当該疾患の真の患者数に比

して、誤差をもたらす要因をまとめたものが資 料 7 である。

今回の予備的なバリデーションでは、2014 年 及び 2017 年度における日本のすべての保険診 療(入院・外来)を対象とし、「NDB に収載され た病名」 (疑い病名を含む/含まない)に加え、

対象期間中に難病患者が受診した際の加算(以 下、難病加算)を取っているかどうかを疾患定 義に加えた。具体的には、資料 8 の Z.難病加算 に示した 43 の加算等のいずれかを取得してい ることである。難病の疾患名だけでは、検査を 行うための疑い病名を判別できない。NDB は疑 い病名と確定診断が区別されて格納されてい るが、難病は確定診断がつくまでの期間が長く、

「真にその疾患であるのに疑い病名がついた 状態の患者」や「電子カルテ上で疑い病名を外 し忘れている症例」といったバイアスが存在す る。そのため、疑い病名を除外してしまってよ いか、除外すればバリデーションが完了するか を実際の集計なしに推測することはできない。

さらに、難病加算は、その疾患以外の指定難病 でも算定できることから、「当該難病はあくま で確定前で、別の難病の確定診断者として難病 加算を算定されている」可能性を否定できない ことに留意すべきである(ただし、この 3 疾患 についてはそれほど影響しないと予測してバ リデーションの条件に入れている)。

資料 9 は、UC・MS・MNO の 3 疾患について、

集計条件を変えた場合の推計患者数の違いを、

衛生行政報告例における「患者数」と並べて示 したものである。NDB の集計は資料 9 のイ~ニ に示されており、それぞれの集計条件は以下の 通りである:

イ) 当該疾患を示す病名(疑い病名を含む)が 付された患者数を集計

ロ) 当該疾患を示す病名(疑い病名を除外)が 付された患者数を集計

ハ) 当該疾患を示す病名(疑い病名を含む)が 付され、かつ、難病加算の算定があった患 者数を集計

ニ) 当該疾患を示す病名(疑い病名を除外)が 付され、かつ、難病加算の算定があった患 者数を集計

資料 9 のホとヘは、衛生行政報告例の患者数で

ある。また、GSDS ではない参考値として、チに

2005 年に行われた全国臨床疫学調査の推計患

者数を示した。患者数としては、NDB 集計のハ

(6)

6

(疑い病名含む当該疾患名+集計期間中の難 病加算算定者)が GSDS(ホ)に近い結果となっ た。なお、NDB の集計値の正確性を確認するた めの参照基準(GSDS;衛生行政報告例など)は、

それ自体の正しさ(=その統計値が真に正しい 数値であるか)が証明されているとは限らず、

専門家意見として一定の妥当性が担保されて いるにすぎないことに留意すべきである。今回 は、あくまで衛生行政報告例を正確な GSDS で あると仮定して、集計値の近似を見ている。資 料 9 のトとチは、過去に行われた患者数の推計 調査の結果を参考値として掲載したものであ る(今回は GSDS とはしていないな)。

資料 8 は、3 疾患をさらに条件を変えて集計 した場合の集計結果と、集計に用いた各条件の 詳細な内訳(マスター)を示したものである。

資料 8-1 は、潰瘍性大腸炎の疾患定義条件を、

使用薬剤の種別ごとに細かく分けた場合につ いて、患者数がどう変化するかを集計したもの である。資料 8-2 は、多発性硬化症及び視神経 脊髄炎について同様の詳細な集計を行ったも のである。資料 8-3 は、潰瘍性大腸炎の関連病 名が 1 年間のレセプト中何ヶ月間出現するかの 集計である。資料 8-A~8-Z は、本研究で集計に 用いたマスター(コード)の一覧である。

C.2.2 ステロイドパルス療法

DB 分析による臨床研究のユースケースを整 理する一環として、難病患者への治療の実態把 握を試行することとし、C2.2 の 3 疾患に対する ステロイドパルス療法の実施状況について NDB 集計を行った。ステロイドパルス療法は、当該 3疾病に対して実施されうる比較的特異的な 内科的治療であり、具体的には、2014 年度にお いて、メチルプレドニゾロンを 500mg 以上投与 されている日が 1 日でもある患者の数を集計し、

それらの患者を対象に、その患者がステロイド 製剤を投与されたすべての日について投与量 を集計した。投与量については、臨床の専門家 意見を採用した。

なお、ステロイド製剤の大量投与を行う代表 的な例として、難病の治療以外に以下のケース があるとの専門家意見があった。本来はこれら の影響を除外する必要があるが、「脊損患者」

を定義づけするなどの新たなバリデーション が必要となるため、今回集計では下記の影響を 除外せず、 「NDB 上で当該疾患と定義づけられ、

かつ、メチルプレドニゾロンを 500mg 以上投与 された患者」を集計した。

 脊髄損傷の急性期

 感染性ショック(1 回 1000mg 程度使用す ることがある)

 腎移植(40-1000mg/日使用することがあ る)

 ネフローゼ症候群(500-1000mg/日使用す ることがある)

集計の結果、ステロイドパルス療法を受けた と思われる患者は、多発性硬化症では 2852 人

(2014 年)または 3024 人(2017 年度)であり、

投与量の範囲は、250-11500mg(2014 年)また は 250-2000mg(2017 年度)であった。その他の 疾患を含め、資料 10 に集計結果を示す。

C.2.3 指定難病患者の医療費分析(3 疾患)

2015 年の難病法施行後、軽症の状態にある指 定難病患者の一部で、前述の理由(2015 年の制 度変化)により医療受給者証の新規・継続申請 を行わない事例が見られるようになった(一方、

重症患者や軽症でも医療費が高額な軽症高額 患者では多くが医療受給者証を申請している と思われる)。未申請の軽症・低額の指定難病 患者では、症状が重篤化した際に医療受給者証 を申請することになるが、申請が受理される前 の発症時点前後を含めた医療費の状況は明ら かではない。「指定難病の罹患」、「難病加算 の初めての算定」、 「医療受給者証の申請時期」

を指標として、医療費の推移を把握することが 望ましい。

本研究班では、C2.1 の 3 疾患を対象に、難病 加算が初めて算定された(≒何がしかの難病の 診断を初めて受けた)と推定される全国すべて の患者について、その前後 12 ヶ月間の医療費 を集計した。具体的には、2017 年度に難病加算 が算定された患者のうち、初めて難病加算が算 定された月を 0 か月目とし、その前後 12 ヶ月

(計 24 ヶ月)における医療費(対象するすべて の患者の医療費の平均値)の推移を算出した

(資料 11)。

難病加算が初めて算定されたと思われる患 者を対象とするため、ウォッシュアウト期間と して、過去 2 年間に難病加算が一度も算定され ていない患者を対象とした。今回利用した NDB は 2018 年 3 月までのデータであるため、2017 年 4 月以降に難病加算が算定された患者につい ては、医療費推移の追跡が 2018 年 3 月までと なっている。

資料 11 が示す通り、3 疾患における平均医療

(7)

7 費(全患者)は、いずれも難病加算初回算定の 2~3 か月前にピークがあり、ピークの前は単調 増加、ピークの後は単調減少の傾向がある。

さらに、指定難病における軽症高額患者への 医療費助成(詳細は資料 11 の説明参照)に該当 しない、「軽症高額患者を除外した」集計を行 ったところ、難病加算初回算定の 3 か月前ごろ から徐々に平均医療費が増加し、 算定の 1~2 か 月前にはそのピークに達することが分かった。

上述の「指定難病の罹患」、「難病加算の初 めての算定」、「医療受給者証の申請時期」の 3 指標のうち、NDB による集計から分かるのは

「難病加算の初めての算定」のみであるが、3 疾 患とも、おおむね難病加算の初回算定の数ヶ月 前に医療費のピークが現れている。難病加算の 初回算定後は、算定前に比べ、平均医療費は高 止まりすることも明らかとなった。

なお、医療費の推移とは別に、対象 3 疾患の 2014 年の患者数(この集計では、疑い病名を除 き、難病加算ありの条件とした。)と患者一人 あたりの年間の平均医療費を算出した(資料 12)。資料 12-1 は 3 疾患それぞれの患者数、合 計医療点数(総医療費)、年間医療費(一人あ たりの年間医療費)、資料 12-2 は 3 疾患それ ぞれの一人あたり年間医療費の度数分布、資料 12-3 と資料 12-4 は資料 12-1 の集計を性年齢 階級別に示したもの(2014 年と 2017 年度)、

資料 12-5 は 3 疾患それぞれの一人あたり年間 医療費についてパーセンタイル値(医療費の上 位下位◯%の患者の医療費)を示したものであ る。

C.2.4 全指定難病(333 疾患)の患者数集計 3 疾患での各種集計の応用として、指定難病

(現時点では 333 疾患)について、以下の 3 つ のパターンで NDB 集計を行った。

A:病名のみで集計した場合(疑い病名を含 む。)

B:333 疾患を「病名」(疑い病名を含む。)

かつ「難病加算あり」で集計した場合 C:333 疾患を「病名」(疑い病名を除外。)

かつ「難病加算なし」で集計した場合

333 疾患のいずれかに該当する患者数を資料 13 に示す。また、疾患ごとの患者数を資料 14 に示す(疾患間の重複カウントを許している)。

さらに、333 疾患の病名コードを資料 15 に示 す。

資料 14 は、NDB を用いて、一定の集計要件の

下、指定難病すべて(集計時点は 333 疾患)の 患者数を試算した初の集計である。比較対象と なる GSDS として、医療受給者証(または登録者 証)を交付されている人数を示した(難病法施 行に伴い、2014 年は 1~12 月の暦年集計、それ 以外の年は 4 月~翌 3 月の年度集計となってい ることに注意されたい)。なお、医療受給者証 の人数は年度末時点での集計である。

ただし、資料 14 は初回の試行的な NDB 集計 であり、各疾患を一律の基準で機械的に集計し た場合にどうなるかを示した結果にすぎない。

実際の精緻な集計のためには疾患ごとのバリ デーションを経る必要があることに留意すべ きである。

C.2.5 全指定難病患者の医療費分析

指定難病(333 疾患)すべてについて、C.2.3 と同様の医療費分析を行った(資料 16-1~16- 8)。資料 16-1~16-4 は NDB 上で指定難病と特 定された患者すべてが対象である。資料 16-5~

16-8 は、難病加算の初回算定より前に医療費 3333 点を超えた月が 3 回以上ある患者(軽症高 額該当と思われる患者)を除外した集計である。

資料 16-1、16-5

その疾患に該当する患者の全医療費(月別)

資料 16-2、16-6

その疾患に該当する患者数(月別)

資料 16-3、16-7

その疾患に該当する患者の平均医療費(月別)

資料 16-4、16-8

その疾患に該当する患者の医療費指数(月別)

医療費指数とは、その疾患の 24 ヶ月間全体 の平均医療費(医療費が発生した月に限る)を 1.00 とし、月ごとの平均医療費が何倍あるかを 示したものである。疾患ごとの医療費の多寡の 影響を除外し、難病加算初回算定月(0 月)の 前後における疾患別平均医療費の増減をより 把握しやすくするための標準化である。

C.2.5 の集計にあたっても、C.2.3 と同様、難病 加算の初回算定月から遡って 2 年間をウォッシ ュアウト期間とし、かつウォッシュアウト期間 に追跡できていること(何らかのレセプトが発 生していること)を条件とした。333 疾患の中 には希少疾患もあるため、NDB のルール上、患 者数 10 未満の結果を含む場合は、集計結果を 表示することは許可されなかった。

疾患ごとの違いはあるものの、大まかな傾向

(8)

8 として、難病加算の初回算定の 6,7 ヶ月前まで は平均医療費は落ち着いているが、半年前から 医療費の立ち上がりが始まり、2,3 ヶ月前に平 均医療費のピークを迎え、その後は(算定前よ りも)医療費が高止まりする、という傾向が見 られた。

D.考察

1.DB 結合の論点整理

DB 同士の結合(連結とも言う。)を行う際、

一意かつ不変の識別子(ID)が付されていれば、

その ID(医療等 ID など)を用いて名寄せすれ ばよい。 ところが、我が国の多くの医療系 DB は、

DB をまたいだ共通の ID が存在することはほと んどない。その状況を踏まえ、本研究では、DB の連携と結合にはいくつかの段階があること を示した(資料1)。政府の DB 結合に関する議 論では、DB の相互結合について、氏名・性別・

生年月日・住所の 4 情報ハッシュを用いる案が 一例として出ている(医療等分野情報連携基盤 検討会・平成 30 年 8 月など)。しかし、この場 合、氏名・住所はライフイベントともに変化す るため、DB 結合における名寄せ漏れが多く生じ ることが予想される。このように、DB の結合を めざす場合は、「結合の感度」と「結合の特異 度」の2つの視点に着目して議論する必要があ る。

本研究班は、DB の連携及び結合に向けた課題 整理を行うことが最大の目的である。DB の連携 及び結合に向けた課題は、医療等 ID(一意かつ 不変の ID)の実現前と後で異なると考えられ、

また、法令、行政手続、倫理、技術的課題とい った課題の種別ごとの検討も重要である。これ らの課題が解決され、DB が結合された場合のメ リット・デメリットについて、当事者別に検討 する必要がある。

なお、難病は患者数の少ない希少疾患が多 いため、DB を結合することで、患者の同定可 能性が高まる可能性がある。DB の結合を実現 するに際しては、結合後データの利用目的に 沿って、患者本人の同意取得を行う必要があ る。

これらの議論の詳細は、資料に示したとお りである。今年度の研究では、DB の連携及び 結合にかんする非常に幅広い論点を提示する とともに、一部については解決策を提示し た。次年度は課題に対する解決策をさらに示 すとともに、DB の連携及び結合にともなうユ ースケースやメリット・デメリットについて

詳細に示す予定である。

2.NDB を用いた疾患定義と集計

DB 上の疾患名やその他の項目を組み合わせ、

その疾患を正確に把握できる真の疾患定義を 構築する「バリデーション研究」においては、

その疾患の患者数に関するなるべく正確な既 存統計(参照基準。GSDS)が必要である。現実 には、正確性が実証された GSDS はあまり存在 しない。そのため、GSDS の数値の正確性につい ては、専門家意見を含む何らかの手段で一定の 仮定を置き、その仮定の上に立って集計値の近 似を見ることとなる。将来的には、NDB のよう な悉皆性のあるデータソースが汎用されるに つれ、NDB 集計値が GSDS 化することが予想され るが、どこまでバリデーションをきちんと行っ た上での数値であるかの情報開示は必ず行う 必要がある(単に疾患名で集計したという程度 では GSDS としては適切ではない)。

本研究では、実際のバリデーション研究の前 段階(予備研究)として、指定難病のうち、潰 瘍性大腸炎(UC)、多発性硬化症(MS)、視神経脊 髄炎(NMO)の 3 疾患について、NDB を用いた予 備的なバリデーションを行っている。特に 3 疾 患集計(UC,MS,NMO)において、臨床専門家の意 見を聞いたうえで、多くのパターン(MRI を月 に 1 回使用しているか、特有の薬剤の処方があ るか、など)で衛生行政報告例の数値を GSDS と して検討を行った。最終的には、「当該病名あ り(疑い含む)」と「観察期間中に難病加算を算 定していること」の 2 点を条件とすると、衛生 行政報告例の数値に近いようであることが分 かった。

2014 年と 2017 年度の集計を比較すると、(3 年間の経過措置があるものの)衛生行政報告例 における「患者数」が大きく減少している一方 で、NDB の患者数は増加傾向にあった。2014 年 においては、医療受給者証等を申請しない理由 はあまりないと考えられるため、2014 年におけ る医療受給者証+登録者証の人数は、その疾患 の患者数を一定程度正確に示すものと考えら れる。つまり、その疾患で保険診療を受けてい るが、医療受給者証等を申請していない患者は それほど多くないと推定される。NDB での推計 患者数を医療受給者証と登録者証の和で除し た比は、特に軽症(かつ高額医療費でない)患 者も多く登録されていた 2014 年においては、

各疾患における NDB 集計の正確さをラフに示す

指標となっている(100%に近いほど正確)と本

(9)

9 研究班では考えている。

NDB の患者数が増加したのに対し、衛生行政 報告例における「患者数」が減少した理由は、

社会的な制度変化の影響を示していると考え られる。具体的には、受診をそれほど必要とし ない軽症の患者が医療受給者証の申請を行わ なかった可能性や、医療現場における新制度へ の習熟が十分でなかった可能性、申請後の不認 定の存在などの理由が考えられるが、今年度の 分析からははっきりしない。NDB の患者数と衛 生行政報告例の患者数は今後も乖離すると予 想されるが、その差分が軽症・非高額の患者数 を示している可能性があるとの指摘もあった。

現在、難病施策として軽症患者の把握が重要 な課題である。難病に関する種々の研究班でも、

軽症難病患者の把握が重要とされている。仮に、

NDB の集計により、軽症・非高額の患者数が測 定できれば、これらのニーズに応えることが期 待される。また、軽症者登録制度が導入された 場合に、NDB で算出された軽症患者数を分母と して「登録率」 (施策の達成度)を算出できる。

指定難病の罹患前後の分析指標(「指定難病の 罹患」、「難病加算の初めての算定」、「医療 受給者証の申請時期」の 3 指標)のうち、NDB に よる集計から分かるのは「難病加算の初めての 算定」のみである。しかし、NDB と難病 DB の結 合が行われれば、「指定難病の罹患」、「医療 受給者証の申請時期」と絡めた集計が可能とな るであろう。

難病加算の初回算定前後における医療費の 推移を集計した結果、初回算定の数ヶ月前に医 療費のピークがあることが初めて明らかとな った。この期間における何らかの医療費助成

(事後的な償還)を制度化する場合には、今回 の結果が施策効果の予測に活用できるであろ う。

3.名寄せの議論

DB 内または DB 間の名寄せにおいては、政府 レベルでも技術的な検討が進みつつある。現 在、厚労省で検討されている NDB と各個票の 連携方法としては、個人単位被保険者番号を もととする医療等 ID の実装であり、臨床個人 調査票や小慢の医療意見書への記載が検討さ れている。ただし、これらも保険者が変更に なったタイミングで名寄せが困難になる可能 性がある。

現在、奈良医大で作成した NDB の名寄せ技

術(いわゆる ID0)を利用すれば、NDB 内での 名寄せだけでなく、たとえば小慢から臨個票 に患者が移った際(トランジション)も、NDB をハブとして個人を追跡することが可能とな り、これは医療等 ID が実装されていない時期 のデータにおいても活用できる。

さらに、ADL などの情報については現在各疾 患それぞれで ADL の評価を行っている。臨個 票に最も多くされている評価方法は EQ-5D で あるが、疾患ごとに特異的な評価項目が多い ため、評価指標の統一は難しい現状がある。

今後の検討課題である。

E.結論

本年度の研究により、DB の連携と結合の違い や、結合に複数のステージがあることが明らか となり、結合の感度・特異度の概念が重要であ ることが提示された。さらに、DB の連携及び結 合の実現に向けた課題を法令、行政手続、倫理、

技術的課題の 4 つに区分し、それぞれの論点を 整理するとともに、DB が結合された場合のメリ ット・デメリットについて、現在の患者・家族、

将来の患者・家族、主治医、行政、研究者、民 間の 6 種類の当事者・利用者に分けて検討した。

さらに、NDB を用いた疾患定義(バリデーシ ョン)と集計においては、指定難病の疾患定義 について、疾患名だけでなく難病加算を同時に 用いる手法を提示した。さらに、本邦で初めて、

NDB を用いた指定難病(全 333 疾患)の患者数 を試行的に算出するとともに、各疾患にかかっ ている医療費を平均医療費、医療費の時系列分 析の観点から初めて算出した。

F.健康危険情報 なし

G.研究発表 1. 論文発表 なし

2. 学会発表 なし

H.知的財産権の出願・登録状況 (予定を含む。)

1. 特許取得 なし

2. 実用新案登録 なし

3.その他

なし

(10)

10

Ⅱ.資料一覧 (各資料の目次はファイル冒頭に記載)

資料1 DB 連結で実現できること 資料2 n 情報ハッシュ

資料3 DB 結合・連携における論点整理

資料4 データの結合・連結を行うメリットとデメリット 資料5 連結の論点提案(小慢)

資料6 連結の論点提案(難病) 資料7_難病患者数誤差一覧

資料8-1 UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_UC 集計表 資料8-2 UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_MS・NMO 集計表

資料8-3 UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_UC 集計方法 (C の集計表) 資料8-A UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_A.病名 UC

資料8-B UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_B.病名 UC 部位 資料8-C UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_C.病名 UC 頻度 資料8-D UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_D.5-ASA 資料8-E UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_E.抗 TNF-α 資料8-F UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_F.乳酸菌 資料8-G UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_G.MS 病名 資料8-H UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_H.MRI

資料8-I UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_I.フリッカー 資料8-J UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_J.眼底検査 資料8-K UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_K.アボネックス等 資料8-L UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_L.NMO 病名 資料8-M UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_M.プレドニン等

資料8-N UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_N.メチルプレドニゾロン等 資料8-O UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_O.血漿交換

資料8-P UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_P.静注グロブリン等 資料8-Z UC・MS・MNO 条件別集計結果_補足資料_Z.難病加算

資料9 UC・MS・MNO 条件別集計結果_全体の概略 資料10 ステロイドパルス実施患者数

資料11 UC・MS・MNO の医療費の推移

資料12-1 疾患別医療費(2014 年・難病加算ありかつ疑い病名除く) 資料12-2 医療費別患者数(2014 年)

資料12-3 UC・MS・NMO の性年齢階級別医療費(2014) 資料12-4 UC・MS・NMO の性年齢階級別医療費(2017 年度) 資料12-5 2017 年度年間患者医療費パーセンタイル値(円)

資料13 NDB 集計による難病患者全体数(2017 年度)

資料14 NDB 集計による 333 疾患別難病患者数 資料15 疾患定義に用いた傷病名コード

資料16-1 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの全医療費の推移(333 疾患;2017 年度) 資料16-2 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの患者数の推移(333 疾患;2017 年度) 資料16-3 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの平均医療費の推移(333 疾患;2017 年 度)

資料16-4 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの医療費指数の推移(333 疾患;2017 年 度)

資料16-5 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの平均医療費の推移(2017 年度)・難病加

算算定前の軽症高額患者除外

(11)

11

資料16-6 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの患者数の推移(333 疾患;2017 年度)・

難病加算算定前の軽症高額患者除外

資料16-7 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの平均医療費の推移(333 疾患;2017 年 度)・難病加算算定前の軽症高額患者除外

資料16-8 難病加算初回算定時を 0 ヶ月としたときの医療費指数の推移(333 疾患;2017 年

度)・難病加算算定前の軽症高額患者除外

(12)

0

*治療の質の評価(治療実態の把握) *医療経済評価(医療費最適化の研究) *診療⾏為とアウトカムの関連性の評価 *疾病の全体像・社会的インパクトの 把握 *drug reposit io ni ng (薬剤再定義)の探索研究

*疾患ごとの医療実態 ・集計正確性の確認

*臨個票記載の負担軽減・データ精度向上 *治験のplacebo

controlデータ として の 利⽤、他

*巨⼤な標本サイズに基づ くデー タ分析

*NDBにおける正確な 疾患名の捕捉

*共通の変数を有するDB同⼠のみ結合可 ⇒各DB共通項⽬の新規取得 *時間とともに変化する共通変数への 対応

*紐づけの再同意が必要 *連結の根拠法の改正 *DB間でのフォーマットの統⼀ *NDBにおける最⼩集計単位の 制約

*個⼈単位でのデータの参照を可能とするための 患 者同意の取り⽅・法的および倫理的課題の解決

*病名、薬剤名、処置名等の世界共通マスターが必要 • グローバルデータシェアリング︓ 海外のデータベースと国内データベースの連結。遺伝⼦情報を含む。 • ⼀意かつ不変のIDによる名寄せ 医療等ID(個⼈⼀意ID)等、⽣涯不変(または準不変)の個⼈識別IDの導⼊。 • 既存項⽬による名寄せ︓ 確率論的紐づけ、n 変 数情報ハッシュ、既存1項⽬による 完 全マッチ等、複数DBに共通する 1 〜n個の変数(⽒名、性別等)を利⽤し、 紐 づける。 • データベース連携(⽣態学的研究)︓ DB同⼠の結合は⾏わず、各DBで集計し たデータを地域別等で⽣態学的に⽐較

グローバルデー タシェアリング 医療等ID (⼀意かつ不変の ID) 既存項⽬による名寄せ (確率論的紐づけ) 既存1項⽬による名寄せ(完全 マッチ) 既存項⽬のn情報ハッシュによる 名寄せ(完全マッチ) データベース連 携(⽣態学 的研究)

期待できる分析・利点 実現に向けた課題 結 合 さ れ る 対 象 者 数

(13)

1

単独のDB利⽤の課題 多くの難病・⼩児慢性疾患は経過が⻑く、患者さんを⻑期的にみていかないと⽣命予後や社会的予後はわからない。 ⼀⽅で、多くの、特に治療法がない難病の場合は、途中で通院を断念し、往診医のフォローや施設⼊所になることが少 なくない。研究のレジストリの多くは医療機関から情報を集約する体制になっているため、病院通院をやめてしまった時点 でフォローができなくなってしまい、真の⽣命予後や社会的予後の追跡が極めて難しい。 NDBや介護DB、障害DBと、指定難病DB、⼩児慢性DBが患者個⼈単位で連結することで、医療機関で把 握できる⾃然歴だけでなく、真の⽣命予後や社会的予後に関する情報が⼀元的に把握することができ、難病患者さん 実態の解明につながることが期待できる。 データ(医療機関A) データ(医療機関B)

データ(医療機関C) データ(介護施設D) それぞれの医療・介護機関のデータがバラバラに存在する場合、⻑期の追跡ができず、⽣命予後や社会的予後がわからない

(14)

2

 保険医療の受療者全て  全ての疾患に対する医療⾏為・処⽅  公費を除く医療費

公的なDB同⼠を連結することで可能となること (1)特定の時点で、難病DB・⼩慢DB・NDB・介護DBがつながることにより、以下の研究が可能になる。 ①治診療の質の評価(治療実態の把握)  ガイドライン等で推奨される医療介⼊と実際の診療との ⽐較  症例単位での実際の医療⾏為の分析 ②医療経済評価(医療費最適化の研究)  重症度と医療費の相関分析  複数の難病申請を⾏ってい る患者の医療費の 実態把握  公費負担の状況把握  医療費申請をしない軽症者数の概数把握 ③診療⾏為とアウトカムの関連性の評価  重症度と処⽅薬剤・施術との相関分析  逆説的にある薬剤の適⽤外使⽤の状況から、 新たな適⽤を決めることが できる可能性 NDB Aさん

A病院︓⼩児慢性疾患の治療 B病院︓難病の治療  処⽅の全て  診療⾏為の全て  かかった費⽤

 ⼩児慢性疾患の患者  重症度、⾝体の状況、検査値

⼩慢DB Aさん A病院︓⼩児慢性疾患の治療  受診時の体の状態  受診時の検査結果  指定難病の患者  重症度、⾝体の状況、検査値 Aさん B病院︓難病の治療  受診時の体の状態  受診時の検査結果

難病DB 実態の把握  重症度×医療費  重症度×処⽅薬  難病×診療⾏為

(15)

3

2012 ⼩慢DB 2015 ⼩慢DB

公的なDB同⼠を連結することで可能となること (2)特定の時点で、DB同⼠をつなげ、さらに時間軸で追うことにより、以下の研究が可能になる。 2012 難病DB

20122019 20122015 2015 難病DB

20122012

NDB・介護DB NDB・介護DB NDB・介護DB

④疾病の全体像・社会的インパクトの把握  進⾏性の疾病についての ⾃然歴の把握(⼈⼯呼吸器や透 析導⼊の時期など)  ADLやQOLの経年的把握  介護サービス利⽤を含めた包括的・時系列的な医療・介護 サービス利⽤の把握  介護など、家族や社会に対するインパク ト の定量化  診断に⾄るまでの医療機関受診状況の把握(最初に 受診 する診療科、受診のきっか けの 把握)

①治診療の質の評価(治療実態の把握)  治療法開発前後でのそれぞれの予後の変化  病初期での介⼊時期や介⼊内容が予後に及ぼ す影響分析  良好なアウトカムを⽰してい る症例に対する医療介⼊の分析 ②医療経済評価(医療費最適化の研究)  医療費負担の経時的変化の補⾜ ③診療⾏為とアウトカムの関連性の評価  drug repositioning(薬剤再定義)の 探索研究  逆説的にある薬剤の適⽤外使⽤の状況から、新た な適⽤を決 めることができる可能性 ⻑期の追跡ができることにより、真の⽣命予後や社会的 予後に関する情報を⼀元的に把握することができる。

どちらかのDBで経時的に患者 が 追えれば、⻑期の追跡が可能。

(16)

4

公的DBで⻑期の追跡を⾏うための課題 異なる⽬的で整備されている公的DBを、患者IDで紐づけ、活⽤するための課題は以下である。 法的な課題 ・ 紐付の再同意︓NDBと難病DBにそれぞれ登録された患者への紐付実施の再同意が必要 ・ 連結のための根拠法の改正︓デー タ ベ ー スのそれぞれの根拠法にて連結利⽤を可能とする⾒直しが 必 要 ・ 難病DBのデータ提供範囲の⾒直し︓現⾏の デー タ利活⽤にか か る 患者同意内容を企業にまで広げ るかどうか の議論とそれを可能とする 場合の同意のあり⽅、患者への説明⽅法を検討する必要が ある 技術的な課題 ・ データベース形式の⼀致︓データベ ース連結が可能なように両者の フォー マ ットを揃えるこ とが必要 ・ 精度が良く、かつ個⼈を特定しない安全性の ⾼い紐づ けキ ーの 開発 ・ も しくは、既存の紐づけキ ー項⽬に よる名寄せ精度の 検証 NDB Aさん︖ A病院︓難病の治療  処⽅の全て  診療⾏為の全て  かかった費⽤

難病DB Aさん︖ B病院︓難病の治療  受診時の体の状態  受診時の検査結果

良い紐づけキー(ID)の条件  IDだけでAさんであることが わからないようにすること  別⼈をつながないこと  同⼀⼈のレコードは最⼤限 つなげられること

⼩慢DB Aさん︖ A病院︓⼩児慢性疾患の治療  受診時の体の状態  受診時の検査結果

(17)

資料2 n情報ハッシュについての論点整理 個⼈識別ID 患者紐付 ⼩慢における確率論的紐づけ NDB におけるハッシュ値(ID1) NDB におけるハッ シュ値(ID2) NDB におけるハッ シュ値(ID3)

2情報ハッシュ+医療 機関番号(ハッシュ) 医療等ID 以下の5変数をハッシュ化し て個⼈識別ID を付与す る。その際、i) 〜 iii) の課題検討 が必要。 ・傷病名コード ・性別 ・郵便番号※ ・保険者番号※2 ・医療機関コード(難病DB は医療機関の 電話番号)※2

以下を名寄せ項⽬とし て組み合わせれば⼀ 定の割合で患者紐付は可能。i) 〜 iii) の課題 検討が必要。 ・傷病名コード ・性別 ・郵便番号※ ・診療年⽉(難病DB は臨個票の記載年 ⽉) ・医療機関コード(難病DB は医療機関の 電話番号)※2 ・満年齢⼜は満年齢階層コード

・⽣年⽉⽇ ・性別 ・出⽣時体重 ・出⽣週数 ・出⽣時の住⺠票を登録した 市町村

・保険者番号 ・被保険者記号 ・被保険者番号 ・⽣年⽉⽇ ・性別

・⽒名(漢字) ・⽣年⽉⽇ ・性別

・⽒名(カナ) ・⽣年⽉⽇ ・性別

・⽣年⽉⽇ ・性別 のハッシュ値+ ・受診医療機関(⼩慢 は医療機関コードの付 与が可能)コードの ハッシュ値

マイナンバーをベースとした 医療等IDによる紐づけ

※NDBにデータなし ※2 NDBはハッシュ値(ただし、医療機関の市 町村コードは付与可能)

※NDBにデータなし ※2 NDBはハッシュ値(ただし、医療機関の市 町村コードは付与可能)

i)保険者番号は難病DB の登録項⽬ではな いため、難病DB 側で記載/登録できるよ う臨個票の改変/難病DB システ ム改修と それに係る費⽤を要す る。 ii)保険者番号は⼀定期間に複数の vers io nがあっ て、ど のv ers ionが最新のも のか把握が難しい課題を解決す る必要が ある。 iii )医療機関コードと医療機関電話番号 のマスター化が必要。また、医療機関 コード⼀⼈の患者が、発症す る部位に よっ て複数の医療機関に受診す るため、 複数の医療機関コードを紐付ける必要が ある。

i)傷病名コードと指定難病告⽰病名との 紐づけ レセプ ト傷病名マスター(⼜はMEDIS 標 準病名マスター)と告⽰病名及び告⽰病名 以外の疾病名との不⼀致・不整合を解消す ることが精度の⾼い連携には不可⽋ ii)難病DB の医療機関電話番号と医療機関 コードの連結課題は左記iii)のとおり。 iii )難病DB は⽣年⽉⽇の記載で年齢がな いため、⽣年⽉⽇から満年齢を計算す るロ ジックを組み込めば、NDB のコードと紐 付が可能

⺟⼦⼿帳情報が利⽤可能な⼩ 児の場合は、上記項⽬が正確 に⼊⼒され ていれば、理論上 はほぼ100%紐づけ可能。 ただし、成年においては上記 の情報の⼊⼿が困難。

保険者の変更(就職、転職、離 職、後期⾼齢への移⾏等)によ り、IDが分断される ライフ イ ベント(結 婚、離婚)および医療 機関での漢字⽒名の表 記ゆれにより、IDが分 断される

・ライフ イ ベント (結婚、離婚)によ りIDが分断される。 ・カナ⽒名・性・⽣ 年⽉⽇が同じ場合、 全くの他⼈が同じID を持つ

⽣年⽉⽇・性別・受診 医療機関が同⼀の場合 に絞り込むが、そこか ら先の紐づけについて は⼿作業が必要。

・被保険者番号の履歴管理が 難しい ・⻭抜けの被保険者番号リス トとの対⽐からどうやっ て同 ⼀性を定義す るのか疑問 ・過去分のデ ータの突合はで きないので、今後の解決⼿段 NDB には上記の情報がない

個⼈特定 のキーと なる項⽬ 紐づけに おける課 題 難病DB の紐付精度向上: 難病DB 側でも紐付精度の向上を図らなければ、NDB との紐付デ ータそのものの質の 低下となる。姓名・性別・⽣年⽉⽇のいず れか2項⽬+疾病名での紐付に限界がある ため、年齢や出⽣地(都道府県名)など を紐付必須項⽬にす ることやNDB でも問題に なる姓名の書き⽅を申請ご とに揃えることが検討課題。

・ハッシュ値であるために、確率的な紐づけができない ・ハッシュ⽣成関数がわからないため、DB 間の症例の突合ができない 患者紐付ができない疾病: NDB 側の制約(最⼩集計単位の制約、未コード化傷病名の問題、疑い病名の妥当 性)で紐付デ ータが得られない疾病が存在す る。悉皆性のある調査研究ができないこ との第三者へ事前説明のあり⽅が課題となる。

(18)

資料3 D B 結合へ向けての課題 医療等I D導⼊前 医療等I D導⼊後 法令 連結のための根拠法の改正:デ ータベースのそれぞ れの根拠法にて連結利⽤を可能とす る⾒直しが必要 難病DBのデ ータ提供範囲の⾒直し:現⾏のデ ータ利活⽤にかかる患者同意内容を⼀般の研究者や企業にまで広げ るかど うかの議論とそれを可能とす る場合の同意のあり⽅、患者への説明⽅法を検討す る必要がある。

デ ータベースのそれぞ れの根拠法で医療等I Dの利⽤が認められ ていることを前提とした議論。 難病DBのデ ータ提供範囲の⾒直し: 現⾏のデ ータ利活⽤にかかる患者同意内容を⼀般の研究者や企業にまで広げ るかどうかの議論 とそれを可能とす る場合の同意のあり⽅、患者への説明⽅法を検討す る必要がある。 遡り医療等I Dの付与のあり⽅: 難病DBは患者紐付でデ ータ登録ができる。最新の患者デ ータに医療等I Dを附与した場合、過 去のデ ータに遡っ てI Dを附与可能となる。この遡り附与についての法的及び倫理的課題を解決 す る必要がある。 ⾏政⼿続き

NDB公表ルール:全国、都道府県単位で集計数10未満(⼜は医療機関数3未満)は公表できない。また、市区町村単位 では100未満は公表できないことから、⼊院料や外来診療料にデ ータが限定されるNDB側の制約がある。連携できる疾 病が限定されることは避けられない。 NDBにおける集計数10未満の公表不可であると、連携できる疾患が限定され てしまう。(希少疾患の扱いについての配 慮を) デ ータ提供までの待ち時間

NDB公表ルール:全国、都道府県単位で集計数10未満(⼜は医療機関数3未満)は公表できな い。また、市区町村単位では100未満は公表できないことから、⼊院料や外来診療料にデ ータ が限定されるNDB側の制約がある。連携できる疾病が限定されることは避けられない。 NDBにおける集計数10未満の公表不可であると、連携できる疾患が限定され てしまう。(希 少疾患の扱いについての配慮を) デ ータ提供までの待ち時間 倫理 紐付の再同意:NDBと難病DBにそれぞ れ登録された患者への紐付実施の再同意が必要 連結の再同意:NDBと難病DBにそれぞ れ登録された患者へのデ ータベース連結利⽤に関す る再同意が必要

匿名化されたものが突合されることによっ て個⼈が特定される可能性が⽣じる 紐付の同意書の改定がされる予定であるが、再同意が容易にできる⼿段がない( PHR の仕組み が確⽴すれば可能に) 臨床情報とプライ バシーのす みわけが必要

(19)

医療等I D導⼊前 医療等I D導⼊後 技術

【共通事項】 デ ータベース形式の⼀致:デ ータベース連結が可能なようにNDBと難病DB、NDBと⼩慢DBのフォーマットを揃えるこ とが必要 精度が良く、かつ個⼈を特定しない安全性の⾼い紐づけキーの開発(詳細は、資料A -3 「n 情報ハッシュ」参照) もしくは、既存の紐づけキー項⽬による名寄せ精度の検証 【難病DB<==>NDBのDB連携】 患者⽒名( 漢字、カナ) 、⽣年⽉⽇、性別があるので、NDBのハッシュ化が共有されれば可能(I D2、I D3ベース) (上記が困難な場合) 性別、⽣年⽉⽇のハッシュ値(+場合によっ ては医療機関番号のハッシュ値※)から類推し突合(病名等を参照しなが ら) 【⼩慢DB<==>NDB のDB連携】 (2015年1⽉1⽇以降のデ ータで連結す ることを想定し て) 患者⽒名( 漢字、カナ) 、⽣年⽉⽇、性別があるので、NDBのハッシュ化が共有されれば可能(I D2、I D3ベース) (上記が困難な場合) 性別、⽣年⽉⽇のハッシュ値(+場合によっ ては医療機関番号のハッシュ値※)から類推し突合(病名等を参照しなが ら) ※⼩慢の医療機関名から医療機関番号に変換しNDBの医療機関番号(ハッシュ化)と連結が可能 3情報で突合

【難病DB<==>NDBのDB連携】 臨個票(難病D B側)に医療等ID を登録できるように400種類以上の臨個票(難病D Bシステ ム 改修)の改変作業とその費⽤が必要となる。 デ ータベース形式の⼀致: NDBも難病DBも共にSQL 型のデ ータベースであるが、デ ータベース連結が可能なように両者 のフォーマットを揃える必要がある。 医療等I Dの時間変化の検証(同⼀性の担保) 【⼩慢DB<==>NDB のDB連携】 被保険者番号を⼩慢でもも つようになるのでI D1を作成す ることが可能 NDB側に公費負担番号があったら つながる 家族単位被保険者番号、個⼈単位被保険者の対照表を保持できるように

参照

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