反応速度論
物質量の時間変化に注目して化学反応を理解する方法
(既出)
・物質量の時間変化はどのように測定するのか?
・得られた時間変化のデータをどのように解析するのか?
→「一次反応」を例として
・一次反応の特徴
物質量の時間変化の測定
時間
(分)
濃度 (10‒3 mol/L)
0 0.0
10 3.8
20 6.2
30 7.7
40 8.5
時間(分)
生成物の濃度 (10–3 mol/L)
反応速度の測定例 (1):滴定法
1
2
3
ガスビュレット
(気体の量を測定する)
流量計
(気体の流量=
発生速度を測定する)
反応速度の測定例 (2):気体の発生
時間
吸光度
光源
試料溶液 参照溶液
検出器
検出器
反応速度の測定例 (3):可視紫外分光法
Time (mi n)
δ (ppm)
O
OH O
OH
2.10 2.05 2.00 1.95
300 250 200 150 100 50 0
600 OH
OH
O
O
反応速度の測定例 (4):NMR 分光法
4
5
6
時間変化データの解析:
一次反応を例として
物質量の時間変化を式で表す
A → B
※ 右辺は [A] のみの関数と仮定する
(=A のみを「反応物」として想定する)
反応物
d[A]
dt = − f ([A])
普通は d[A]/dt < 0 なので マイナスをつけてある
生成物
(微分速度式)
※ f はどんな関数なのか?
※ [A] は A の濃度(溶液反応の場合)
または圧力(気体反応の場合)
一次反応
d[A]
dt = −k[A]
最も単純なケースでは、f は [A] の一次関数。
一次反応
一次反応とはどんな反応か?
︎
単位時間に反応する量が、反応物の量に比例する︎
反応物一分子が単位時間に反応する確率が常に一定一分子が単位時間に 反応する確率がp(一定)
N 分子中、単位時間に
反応する数(期待値)= p N = N に比例
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※ 反応速度定数は必ず小文字のイタリック体(手書きの時は筆記体)
一次反応の微分速度式 d[A]
dt = −k[A]
・右辺は [A] の一次関数○
ローマン体との区別が困難 大文字とも区別しにくい
○ これでも良い(筆記体として正しくはないが、
ローマン体や大文字とは区別できる)
・定数項はゼロ
(「[A] = 0 ならば反応は起きない」)
・
k
を「一次反応速度定数」と呼ぶ(「反応速度定数」、「速度定数」とも言う)
微分速度式を解く
d[A]
dt = −k[A]
・[A] は時間 t の関数である(時間とともに反応物の物質量は変化するから)
・微分速度式は、[A] に関する微分方程式。
これを解くと、[A] の時間変化がわかる。
式を見やすくするため [A] = y と置く。
€
dy dt = −ky
€
1
y dy = −kdt
【解き方】
(左辺は y だけ、右辺は t だけの関数:
変数分離型)
微分速度式を解く(つづき)
両辺を t = 0 から t まで積分する。左辺の積分範囲は [A]0 から [A] まで。
€
1 y dy
[A]0
∫
[A]= −k
0dt
∫
t€
ln y
[ ]
[A][A]0= −k t [ ]
0 t€
ln[A] − ln[A]
0= −kt
€
ln [A]
[A]
0= −kt
€
[A]
[A]
0= exp(−kt)
€
[A] = [A]
0exp(−kt) 積分速度式
(ln は自然対数)
一次反応では、反応物の物質量は指数関数的に減少する
10
11
12
時間
(分)
反応物 (10‒3 mol/L)
0 10.0
10 6.1
20 3.8
30 2.2
40 1.5
反応物(生成物でもよい)の物質量変化が どのような式で表されるかを検討する
実測のデータをどのように取り扱うか
→ 妥当そうな積分速度式を予想し、当てはめてみる
時間(分)
濃度 (10‒3 mol/L)
反応物 生成物
一次反応と仮定して解析する
時間(分)
濃度 (10‒3 mol/L)
反応物
時間
(分)
反応物 (10‒3 mol/L)
0 10.0
10 6.1
20 3.8
30 2.2
40 1.5
一次反応と仮定した時の近似曲線
[A] = 9.8826 × exp(−0.048t) k = 0.048 min
–1(R
2= 0.9978)
・よく合っている(ように見える)
・本当にこれでいいのか?→別の可能性は考えなくてよいのか?
(次回に議論する)
一次反応の解析:直線化する
€
[A]
[A]
0= exp(−kt)
€
[A] = [A]
0exp(−kt)
−ln ([A]/[A]
0) を t に対してプロットすると
原点を通る直線になる。その傾きがk
€
− ln [A]
[A]
0= kt
時間(分)
–ln([A]/[A]0) 時間
(分)
[A]
(10‒3 mol/L)
0 10.0
10 6.1
20 3.8
30 2.2
40 1.5
‒ln([A]/[A]0) 0 0.49 0.97 1.51 1.90
y = 0.049x, k =0.049 min
–1(R
2= 0.998)
(積分速度式)
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一次反応の特徴
一次反応の特徴
ある反応が一次反応であることがわかったとする。
(=反応速度が一次反応の速度式に従う)
→ 反応物一分子が単位時間に反応する確率が常に一定
→ 反応する確率が他の物質の量に影響されない
典型的な一次反応
放射性元素の壊変
一定の確率
(他の物質は完全に無関係)
見かけの一分子反応
ある分子が周囲の物質(溶媒 など)からエネルギーをもら って、その後自発的に反応
(反応は溶媒分子に依存するが、
溶媒は反応が進行しても量が 変わらないため、速度式には 現れてこない)
反応が進行しても、一分子が反応 する確率は変動しない
溶媒など
反応物
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一次反応速度定数 d[A]
dt = −k[A] k :「一次反応速度定数」
【一次反応速度定数の単位】
(左辺)=物質量/時間、(右辺)= k 物質量
→ k の単位は「1/時間」
「反応速度」と「反応速度定数」を混同しないように!
反応速度(時間とともに変動する)
反応速度定数(時間がたっても変動しない)
d[A]
dt = −k[A]
一次反応の半減期
「半減期」:反応物の物質量が半分になるまでの時間
時間
濃度
半減期 反応物
一次反応の半減期は一定。
1/2
1/2 1/2
一次反応の半減期と速度定数 d[A]
dt = −k[A]
€
[A] = [A]
0exp(−kt)
時間が t から t + τになったとき、[A] が [A]/2 になったとする。
[A]
2 = [A]
0exp(−k(t + τ))
€
[A] = [A]
0exp(−kt)
,[A]
0exp(−kt)
2 = [A]
0exp(−k(t + τ )) exp(−kt)• exp(k(t + τ )) = 2
exp(k τ ) = 2 ∴τ = ln 2 k
※「公式」として覚えるのではなく、
導き方を理解しておくこと