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「賢い情報消費者」育成のための授業実践 Class practice for cultivating "smart information consumers"

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Academic year: 2021

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「賢い情報消費者」育成のための授業実践

Class practice for cultivating "smart information consumers"

神谷 良夫 Yoshio Kamiya

(愛知学泉短期大学生活デザイン総合学科)

抄 録

Webデザイン系の授業において、コンテンツデザインだけではインターネットの世界を理解できなくなっ てきている。Web マーケティングやデジタルマーケティングと言った分野が Web デザインと密接に関係し ている時代となった。コンテンツ提供者であるIT企業がどのように私たち消費者にサービスを提供し利益を 得ているのかを理解した上で、賢く情報を消費する学生の育成を目指して授業実践を行った。日常生活の中 でインターネット利用に関する新たなカリキュラム開発が必要となってきている。

キーワード

賢い情報消費者、ネット依存症、プラットフォーマー、アクティブラーニング、行動特性

目 次

1 はじめに 2 方法・実施 3 まとめ 4 今後の課題

1 はじめに

2017 年度に実施されたゼミナールの授業のテー マの1つである Web マーケティングの授業を通し て、「SNSはなぜ無料か」「ネット検索・マップ検索・

ユーザ作成の映像配信はなぜ無料か」といった質問 に答えられる学生は 1 人もいなかった。「そもそも 私たちはスマートフォンをどの様に使っているのか」

という素朴な疑問が学生から湧き上がってきた。ユ ーザの情報利用環境において、多くの解決すべき問 題が積み上がっている。問題は、ユーザが意識をし ないで情報利用環境を拡大することによって、無意 識にネット依存などに陥ってしまっている現状やプ ラットフォーマーと呼ばれる IT 企業に個人情報を 集められているという意識の欠如、フェイクニュー スと呼ばれるものによる世論操作などにも影響を及 ぼしていることにある。この授業実践は、アクティ ブラーニングの手法等を使い、授業実践を通して、

情報社会との関わり方を学生自ら主体的に検討し、

行動特性を提言することによって「賢い情報消費者 とは何か?」「賢く情報を消費していく方法とは?」

といった問題解決を学生が導き出すことを目指すも のである。GAFA GDPR といった問題が沸き起 こっている現状において大手プラットフォーマーや 情報サービス産業に負けない問題意識を持ち賢く情 報社会を渡っていける人を育成することが必要にな っている。

2 方法・実施

まず、学生自身の日常から時間帯、利用状況を洗い 出し、自分たち自身の情報消費行動を意識する。次 に学年・学科の他の学生はどの様に利用しているか 想像させる。その想像させた状況にあっているかど うかを確認させるために、アンケートを作成する。

アンケート項目は、親和図法などを使い、カテゴリ ー別にグルーピングをさせて、質問項目を作成する。

短期大学の同じ学科生に対して、アンケートを実施 し 集 計 は ク ラ ウ ド 上 の グ ル ー プ ウ エ ア

(CybouzuLive)を利用して各自分担して集計をす る。集計結果から、学年別、学科全体の傾向を読み 解き、最初に想像したイメージとの違いをグループ

(2)

ディスカッションを行いながら意見を深めていく。

最後にその傾向から、「賢い情報消費者としての行動 特性」を導き出し、提言を発表する。

以上のような授業実践計画を立てて実施した。

2.1 アンケート実施 1)ゼミ学生の利用実態

文化人類学や社会学、心理学で使われる研究手法 1つであるエスノグラフィー手法を用いて学生の スマートフォンライフを調査した。各学生の起床時 から就寝までのスマートフォンとの関わりを調査し、

その理由までインタビュー形式で行った。図1)

2)SNSを調べる

学生の利用実態を調査すると同時に利用者を虜に し て 利 用 時 間 を 稼 ご う と す る 代 表 的 な 企 業

(Facebook、Twitter、Instagram)のビジネスモデル を「SNS マーケティングの易しい教科書」(エムディ エヌコーポレイション刊)を参考に代表的な SNS に ついて担当者を決め調査・発表を行った。「なぜ若者 は SNS を使うのか、どのように利用しているのか、

どのように使い分けているのか、メリット・デメリ ットは何か」など意識させて調査・発表を行った。

3)アンケート項目の選定

ゼミ学生の利用実態・SNS 調査から本学科の 1・2 年生への「スマホ利用実態調査」を行う上でのアン ケート項目の選定に入った。プロジェクターに投影 され項目にグループディスカッション行いながらグ ルーピングを行った。S さんは「利用状況につて」 Y さんは「健康や生活への影響について」、H さんは

「今後に利用について」といった大項目をもうけて、

中項目・小項目を考えていった。図2)

4)学生アンケートの実施

アンケートのベータ版ができあがったら友だちの 2〜3 人にテスト調査を実施し、改訂版を作成してか らアンケートを実施した。

アンケート項目は以下の 30 項目とした。

■生活習慣・健康について

Q1 スマホをいつから利用していますか

Q2 現在お使いのスマートフォンの OS は何ですか Q3 1ヶ月の利用データ量はどのくらいですか Q4 自宅で Wi-Fi を使用していますか

Q5 1ヶ月の利用料金はいくらですか

Q6 アプリ・ゲームへの課金をしたことがあります

Q7 1 日の使用時間はどのくらいですか Q8 利用の多い時間帯はいつですか

Q9 自身がスマートフォンを丸1日使わずにいられ る自信はありますか

Q10 Q9 で「④ない」と答え方にお伺いします。それ はなぜですか

Q11 利用する際にルールを決めていますか

■情報機器の利用が急速に社会に広まったことによ って、身体や生活への影響について

Q12 スマホの利用目的で最も重要だと思う利用法は 何ですか

Q13 最もよく使うアプリは何ですか

Q14 今後利用したいアプリの分野は何ですか Q15 スマホを利用することによって体験したことの

あるトラブルはありますか

Q16 スマホを利用によることによって健康状態への 影響があったものをお答えください

Q17 スマホ利用によって人間関係の問題を抱える人

図 2 アンケート項目の設定

図 1 ゼミ学生のスマホ利用状況

(3)

が増えてきていると思いますか

Q18 Q17 で①強く思う ②多少思う と答えた人に 伺います。それはなぜですか

Q19 自分はスマートフォンに依存していると思いま すか

Q20 スマホを利用することによって一番良かったこ とは何ですか

Q21 SNS など相手の返信が遅い場合どうしますか

■今後のスマホ利用についてお聞きします Q22 スマホの利用料金を再考しようと思いますか Q23 初めてのスマホ利用開始時にについて不満を感

じた事はありますか

Q24 学校でスマホ利用についての講義や授業は必要 だと思いますか

Q25 今後スマホの利用時間を減らしたいと思います

Q26 Q25 の回答で1と答えた方にお伺いします。

その理由はなぜですか

Q27 スマホの利用時間が減ったら何がしたいですか Q28 スマホの買い替える基準は何ですか

Q29 スマホを利用している際に広告が出てきたらど のような行動をしますか

Q30 スマホやゲーム企業の広告についてどう感じま すか。

5)社会人基礎力学内コンペに向けて

ここで学生と話し合って、社会人基礎力学内コン ペ(10 月 26 日プレゼンテーション)に向けて、ゼ ミナールの日程を考えて予定表を作成した。計画通 りに実施していくことが可能かどうか、スケジュー ルを綿密に話し合った。図3)

6)集計

集計は、後期授業開始後行う計画であった。しかし 事前の計画よりは時間が足らないことが分かり、夏 期休暇中の課題となった。前述のグループウエアを 利用して、各自が割り当てられた集計をアップロー ドして、集計表を作成した。図4)

7)分析

各自のアンケート結果の感想は、グループエアに アップロードしてゼミナール全体で共有した。

(1 年生 117 名 回収率 92.3%、2 年生 156 名 回収率 79.5%、全体 273 名 回収率 85.0%であっ た。)

「利用環境」では、81%は iOS 利用者である。52.

6%は利用データ量が 4GB を超え、61%は 4 時間以 上利用していた。利用料金は 5000 円から 8000 円が 21.1%と 1 番多く、分からないと答える学生が 31.9%であった。(これは、家族割といった特別サー ビスを設けることによって実際の利用料金を見えに くくされた結果だと推察される。)アプリ課金は 50%が利用している。1000 円から 5000 円まで利用 している学生が 13.4%もいた。一番多い利用時間帯 は就寝前で 47.0%となり、睡眠への影響が心配され る。

「健康や生活」では主に SNS が 68.1%と重要視され ていて、最もよく使うアプリは LINE で 53.4%であ った。スマホのトラブルを経験した学生は 32%と想 像していた数値より低かった。ネット依存を意識で きている学生は 12.9%で健康への影響は 41.4%が 睡眠時間と答えた。人間関係に影響しているとした 学生は 56%と大きかった。別項目でスマホに依存し

図 3 アンケート実施計画

図4アンケート集計表

(4)

ているかという問には 76.3%が依存していると回 答しているが、トラブルとは自覚していない。

「今後」については「利用料金を再考したい」と考 えている学生は 44.4%であった。「今後の利用時間 について」は、減らしたいと答えた学生は 22%で、

このままで良い 39.2%、何も考えていない 36.2%、

増やしたい 1.3%であった。「利用時間が減ったら何 がしたいか」と聞いたところ 42%が睡眠と答えた。

以上のように各学生の分析・感想をグループウエ アで集計して親和図法でチャート化し、ディスカッ ションを踏まえて全体の傾向と感想を導き出した。

図5)

8)賢い情報消費者としての行動特性

アンケート結果から学生が考え出した提言は、

・ネット情報を鵜呑みにせず、いくつかを見比べて 検証できる

・情報を得たら、その知識を生かすことができる

・企業の戦略に気づき、流されずに行動できる

・スマホ利用の将来を考えることができる であった。

9)実践課題

社会人基礎力学科内コンペにむけて時間的余裕が なかったためディスカッション不足であった。その ため結果の分析と傾向の創出、行動特性の特定や提 言が甘く曖昧な部分も見受けられた。またルーブリ ックの作成まで手を出すことが出来なかった。

3 まとめ

この授業実践は、スマホの利用実態調査から始ま ったが、現在では、WHO のゲーム依存症の認定や GAFAなどのプラットフォーマーのビジネスモデル、

EUGDPRから個人のデータの取り扱われ方など

課題は大きくなってきている。デジタルマーケティ ングの視点からユーザをプラットフォームに誘い入 れ、多くの時間やサービスを消費させる仕組みやビ ッグデータと個人情報の関係を理解させ、「情報を賢 く利用する」視点を学生が主体的に学んでいく姿勢 をある程度育成することができた。

4 今後の課題

2018 年度に入り情報消費者として考えなくては ならない 3 つの重要なポイントが広く知れ渡った。

1つは広告テクノロジーの進化による個人情報とビ ッグデータの関係である。

あるサイトのトップページを開いた瞬間、IPアド レスやクッキーなどアクセスした人の個人データが、

複数の別の会社に流出している。R社のトップペー ジから 86 ものサービスが紐付いていた。(広告 43 社、データ収集22社、アクセス解析、その他14社)

1)スマートフォンやアプリが記録する位置情報から、

通勤経路や余暇の行動のパターンを解析する。また、

検索履歴などと組み合わせて性別や年代、趣味とい った人物像を推測し、心に響きそうな広告を打ち出 す。心理学や統計学とも融合し、よりピンポイント で狙い撃つ技術の発達が進んでいる。ユーザのブラ ウザやアプリを起動すると瞬時に広告枠の競売シス テムが作動して、最高額を示した広告案件を選び出 される。この間0.1秒でやり取りはほぼリアルタイ ムである。利用者が広告をクリックする確率も2 になる。どの地域にどんな人が住んでいるか、デー タ蓄積が進んで数十メートル四方までに絞り込める ようになった。2)英調査会社のWRCによると、グ ーグルとフェイスブックのネット広告の世界シェア 17年に合計で60%を突破した。12年と比較する 12 ポイント上昇した。プラットフォーマーは勝 者総取りの論理で拡大を続けている。

あと2つは健康障害についてである。WHOは、オ ンラインゲームなどに没頭し、生活や健康に深刻な 支障が出る「ゲーム障害」(ゲーム依存症)が国際疾 病分野の改訂で精神疾患と位置づけた。221月に 発行される見通しだ。依存症とは、人間関係や健康 に問題が生じても制御が効かず、日常生活に支障を きたす状態である。主な診断基準は、

・ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールで きない

・日常生活でゲームをほかの何よりも優先させる

・生活に問題が生じてもゲームを続け、エスカレー

図 4 クラウド上で集計されたアンケート集計表

図 5 グルーウエア上でのディスカッション

(5)

トさせる

・これらの状態が1年以上繰り返し続く とされている3)

厚生労働省の研究班は、交流サイト(SNS)やオン ラインゲームに没頭する「インターネット依存」の 疑いがある中高生が2017年度、全国で推計約93 人に上ることが分かったと発表した。12年度の調査 から倍増した。また軽度の予備軍(不適応使用)は 推計で161万人に上るとした。以下のアンケート項 目で5項目以上該当する人を「ネット依存の疑いが ある」と定義された。

・自身が夢中になっていると感じている

・満足するために使用時間を長くしなければいけな いと感じる

・使用時間を減らそうとしたときなどにたびたびう まくいかなかった

・使用時間を減らそうとしたときに不快感や落ち込 みを感じた

・予定より長い時間接続してしまう

・人間関係や学校などのことを台無しにしたり、し そうになった

・熱中を隠すために家族などにうそをついたことが ある

・問題逃避や不安感などから逃れるために使う ネットの使いすぎにより経験した問題は「成績低 下」が各学年で4〜5割、「居眠り」は2〜5割で学 年が高くなるごとに高くなる傾向があり、「友だちと のトラブル」は各学年で1割が経験した。4)

テクノロジーの進展やグローバル競争が激化する 中、私たち情報消費者は、その犠牲者になりかねな い。デジタルマーケティング等賢い情報消費者を育 成するプログラムが必要となっている。

引用文献

1) 週刊ダイヤモンド 2018/06/02 「GDPRの脅威」P52~55 2) 日本経済新聞 2018/09/03「狙う広告」1兆円突破

3) 日本経済新聞 2018/06/24 ゲームは病 治療進展へ一

4) 読売新聞 2018/06/20 ゲーム依存 困難な治療

参考文献

R.K.ソーヤー編(大島純ら監訳)、『学習科学ハンドブック第

二版 第 2 巻 効果的な学びを促進する実践/共に学 ぶ』、北大路書房、2016

R.K.ソーヤー編(秋田喜代美ら監訳)、『学習科学ハンドブッ

ク第二版 第3巻 領域専門知識を学ぶ/学習科学研究 を教室に持ち込む』、北大路書房、2017

三宅なほみ 東京大学CoREF 河合塾編、『協調学習とは − 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業

―』、北大路書房、2016

加藤 浩・望俊男編、『教育工学選書Ⅱ第 4 巻 協調学習と CSCL』、ミネルバ書房、2016

大島 純・益川弘如 編、『教育工学選書Ⅱ第5巻 学びのデ ザイン:学習科学』、2016

L・B・ニルソン(美馬のゆり 伊藤崇達監訳)、『学生を自己

調整学習者に育てる−アクティブラーニングのその先へ ー』、北大路書房、2017

株式会社グローバルリンクジャパン/清水将之、『SNS マー ケティングのやさしい教科書。Facebook・Twitter・

Instagram−つながりでビジネスを加速する技術』、エム ディーエムコーポレーション、2016

C・ファデル M・ビアリック B・トリリング(岸 学監訳)

『21世紀の学習者と教育の4つの次元 知識,スキル,

そしてメタ認知』、北大路書房、2016

中井俊樹 編、『シリーズ大学の教授法3 アクティブラーニ ング』、玉川大学出版部、2015

永田敬/林一正 編、『アクティブラーニングのデザイン 東 京大学の新しい教養教育』、東京大学出版会、2016 川島隆太、『スマホが学力を破壊する』、集英社、2018 アレックス・モザト ニコラス・L・ジョンソン(藤原朝子

訳)、『プラットフォーム革命 経済を支配するビジネス モデルはどう機能し、どう作られるか』、英治出版、2018 田中道昭、『アマゾンが描く2022年の世界 すべての世界を

震撼させる「ゼゾスの大戦略」、PHP研究所、2017 スコット・ギャロウェイ、『the four GAFA 四騎士が創り変え

た世界』、東洋経済新報社、2018

(原稿受理年月日20181011日)

参照

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