一平成以降の中学校国語教科書における短歌教材について(2) 一 はじめに 平成二十年三月、小中学校の学習指導要領が十年ぶりに改訂された。
同年一月の中央教育審議会の答申によれば、今回の国語科の改訂は、「小
学校、中学校及び高等学校を通じて言語の教育としての立場を一層重視
し、国語に対する関心を高め、国語を尊重する態度を育てるとともに、
実生活で生きてはたらき、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を
身に付けること、我が国の言語文化を享受し継承 44444444444444・発展させる態度を育 444444444
てること 4444に重点を置」いて内容の改善を図ったものである。傍点を施し
た箇所から明らかなように、今回の改訂では「伝統的な言語文化に関す
る指導の重視」が大きな特色の一つとなっているが、中学校の国語科に
おいて伝統的な言語文化はこれまでどのように指導されてきたのであろ
うか。また、今後どのように指導していけばよいのであろうか。
本稿は、そうした日本の伝統的な言語文化の指導の在り方について考
察するための基礎資料として、平成以降に出版された三省堂と教育出版
の中学校国語教科書に収載された短歌教材をまとめて提示したもので、
東京書籍と学校図書の二社の教科書を取り上げた前稿(「平成以降の中
学校国語教科書における短歌教材について(1)」『教育諸学研究』第 二四巻)に続くものである。
二 短歌教材の掲出方法 前稿でも述べたように、現行の中学校国語教科書は五社ともに二年生
で近・現代の短歌教材、三年生で古典の和歌教材を取り上げているが、
短歌や掲出の仕方は出版社によって一様ではない。いったいどのような
短歌がどのような形でどれくらい国語教科書に収載されているのか、本
稿ではそうした短歌教材収載の実態が把握できるよう、以下に示すよう
に前稿と全く同じ要領でその内容を示すことにした。
※ 短歌教材は、各出版社別に平成十八年度に出版された教科書から
年代を遡る形で掲出した。
※ 短歌はできるだけ教科書に収載する形で掲出するようにしたが、
紙幅の都合で改行するなど一部変更を加えたものもある。
※ 近・現代の短歌を取り上げた単元と古典の和歌を取り上げた単元
では、収載歌数がわかるよう通し番号を付した。
※ 作者名は原則として当該歌の一行前に掲出した。
※ 作者名や短歌中の漢字、歴史的仮名遣いの部分などに施されたル 資料
平 成 以 降 の 中 学 校 国 語 教 科 書 に お け る 短 歌 教 材 に つ い て ( 2 )
入 江 昌 明
教育諸学研究 第二五巻 一-二二
二入江昌明
ビは、すべて教科書通りとした。
※ 随筆やコラム欄などに短歌が取り上げられている場合は、その旨
を記して短歌だけを掲出した。
三 三省堂の短歌教材
〔平成十八年度版 国語教科書〕
『現代の国語1』 ○資料編「カルタの世界」(一五〇頁~一五一頁)に、光琳かるたから
次の一首の写真を収載する。
(柿 かきのもとの本人 ひと麻 ま呂 ろ)
○ あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝 ねむ
『現代の国語2』 ○「短歌の世界」(一四頁~一八頁)に、短歌に関する簡単な解説と三
首の短歌の鑑賞文、続けて以下の十首を収載する。
正 まさ岡 おか子 し規 き
○ いちはつの花咲 さきいでて我 わが目 めには今年ばかりの春ゆかんとす
寺 てら山 やま修 しう司 じ修 ゅ ○ 列車にて遠く見ている向 ひまはり日葵は少年のふる帽子のごとし 向ヒマワリ 日葵 栗 くり木 き京 きう子 こ京 ょ ○ 観覧車回れよ回れ想 おもひイ 出は君には一 ひと日 ひ我には一 ひと生 よ
島 しま木 ぎ赤 あか彦 ひこ
① みづズ うみの氷は解けてなほオ 寒し三日月の影 かげ波にうつろふウ 与 よ謝 さ野 の晶 あき子 こ
② 海恋し潮 しほの遠鳴りかぞへエ ては少 をとめ女となりし父 ちち母 ははの家 潮シオ 少オトメ 女 斎 さい藤 とう茂 も吉 きち
③ みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただにいそげる
北 きた原 はら白 はく秋 しう秋 ゅ
④ 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外 との面 もの草に日の入る夕 ゆふべ 夕
ユウベ若 わか山 やま牧 ぼく水 すい
⑤ 白 しら鳥 とりは哀 かなしからずや空の青海のあをオ にも染まずただよふウ石 いし川 かわ啄 たく木 ぼく
⑥ やはワ らかに柳あをオ める 北 きた上 かみの岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに
近 こん藤 どう芳 よし美 み
⑦ 白き虚 こ空 くうとどまり白き原子雲 ぐもそのまぼろしにつづく死の町
馬 ば場 ばあき子 こ
⑧ つばくらめ空飛びわれは水泳ぐ一つ夕焼けの色に染 そまりて
李 イ正 チン子 ジャ正 ョ ⑨ 〈生まれたらそこがふるさと〉うつくしき語 ご彙 いにくるしみ閉じゆく
絵本
俵 たわら万 ま智 ち
⑩ 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
三平成以降の中学校国語教科書における短歌教材について(2) 『現代の国語3』○「和歌の世界
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-万葉集・古今和歌集・新古今和歌集」(五〇頁~ まんようしゅうこきんわかしゅうしんこきんわかしゅう
五五頁)に、以下の十六首を収載する。
「万葉集」(五〇頁~五二頁)
持 じ統 とう天 てん皇 のう
① 春過ぎて夏来たるらし白たへの衣 ころも干したり天 あめの香 か具 ぐ山 やま
柿 かきの本 もとの人 ひと麻 ま呂 ろ
② 東 ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月傾 かたぶきぬ
山 やまの上 うえの憶 おく良 ら
③ 銀 しろかねも金 くがねも玉も何せむにまされる宝子にしかめやも
大 おお伴 ともの家 やか持 もち
④ 我が屋 や戸 どのいささ群 むら竹 たけ吹く風の音のかそけきこの夕べかも
山 やま部 べの赤 あか人 ひと
⑤ 天 あめ地 つちの分かれし時ゆ 神 かむさびて高く貴き 駿 する河 がなる富 ふ士 じの高 たか嶺 ねを 天 あまの原 はら振りさけ見れば 渡る日の影 かげも隠 かくらひ 照る月の光も見えず 白雲もい行 ゆきはばかり 時じくそ雪は降りける 語り継 つぎ言ひ継ぎ行かむ 富士の高嶺は 反歌
⑥ 田 た子 ごの浦 うらゆうち出 いでて見れば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける
大 おお津 つの皇 み子 こ
⑦ あしひきの山のしづくに妹 いも待つと我 あれ立ち濡 ぬれぬ山のしづくに 石 いし川 かわの郎 いら女 つめ
⑧ 我 あを待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを
(東 あずま歌 うた)
⑨ 多 た摩 ま川 がはにさらす手作りさらさらに何 なにそこの児 このここだ愛 かなしき
(防 さき人 もりの歌 うた)
⑩ 父 ちち母 ははが頭 かしらかきなで幸 さくあれて言ひし言 けと葉 ばぜ忘れかねつる
「古今和歌集」(五三頁)
紀 きの貫 つら之 ゆき
⑪ 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香 かににほひける
小 お野 のの小 こ町 まち
⑫ 花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
藤 ふじ原 わらの敏 とし行 ゆき
⑬ 秋来 きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
「新古今和歌集」(五四頁)
西 さい行 ぎょう法 ほう師 し
⑭ 道の辺 べに清 し水 みづ流るる柳 やなぎ陰 かげしばしとてこそ立ちどまりつれ
藤 ふじ原 わらの定 さだ家 いえ
⑮ 駒 こまとめて袖 そでうちはらふ陰 かげもなし佐 さ野 ののわたりの雪の夕暮れ
式 しょく子 し内 ない親 しん王 のう
⑯ 玉の緒 をよ絶えなば絶えね永らへば忍ぶることの弱りもぞする
四入江昌明
○ コラム「和歌の技 ぎ巧 こう」(五五頁)に、例歌として次の二首が取り上
げられている。
(紀 きの友 とも則 のり・古今和歌集)
○ ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
(源 みなもとの宗 むね于 ゆき・古今和歌集)
○ 山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
〔平成十四年度版 国語教科書〕
『現代の国語1』
○資料編「3 百人一首の世界」(六頁~七頁)に、「貝覆」や「昔の百
人一首」等の写真を収載する。
『現代の国語2』
○「短歌の世界」(二〇頁~二七頁)に、短歌に関する解説文(三首の
鑑賞文を含む)と以下の十二首を収載する。
正 まさ岡 おか子 し規 き
○ いちはつの花咲きいでて我 わが目 めには今年ばかりの春ゆかんとす
寺 てら山 やま修 しう司 じ修 ゅ ○ 列車にて遠く見ている向 ひまはり日葵は少年のふる帽子のごとし 栗 くり木 き京 きょう子 こ
○ 観覧車回れよ回れ想 おもひ出は君には一 ひと日 ひ我には一 ひと生 よ
島 しま木 ぎ赤 あか彦 ひこ
① みづうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ 与 よ謝 さ野 の晶 あき子 こ
② 海恋し潮 しほの遠鳴りかぞへては少 をとめ女となりし父 ちち母 ははの家
斎 さい藤 とう茂 も吉 きち
③ みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただにいそげる
北 きた原 はら白 はく秋 しう秋 ゅ
④ 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外 との面 もの草に日の入る夕 ゆふべ
若 わか山 やま牧 ぼく水 すい
⑤ 白 しら鳥 とりは哀 かなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
石 いし川 かわ啄 たく木 ぼく
⑥ やはらかに柳 やなぎあをめる 北 きた上 かみの岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに
宮 みや柊 しう二 じ柊 ゅ ⑦ あたらしく冬きたりけり鞭 むちのごと幹ひびき合ひ竹 たか群 むらはあり 近 こん藤 どう芳 よし美 み
⑧ 白き虚 こ空 くうとどまり白き原子雲そのまぼろしにつづく死の町
馬 ば場 ばあき子 こ
⑨ つばくらめ空飛びわれは水泳ぐ一つ夕焼けの色に染 そまりて
河 かわ野 の裕 ゆう子 こ
⑩ 逆立ちしておまへがおれを眺めてた たつた一度きりのあの夏のこと
李 イ正 チン子 ジャ正 ョ ⑪ 〈生まれたらそこがふるさと〉うつくしき語 ご彙 いにくるしみ閉じゆく
絵本