20
学生と図書館(
Good memories of your school days)
京都外国語大学の付属図書館には、およそ58 万冊もの図書が所蔵されています。学生の皆さ んは、人により頻度に差はあれど日々図書館に 足を運び、勉強や趣味の世界を広げることに図 書館の本を役立ててくださっていると思います。
ですが、普段趣味で小説やブックレットを借り ても、それが現代のお話ばかりということはあ りませんか?この58万冊の中には、現代・近世 に関わらず様々な時代・ジャンルの本がたくさ んあります。現代小説に飽きてしまったり、勉 強に疲れてしまったとき、ほんの少しだけ日本 の昔話の世界を覗いてみるのもよいのではない でしょうか。
ですが昔話といっても、きっと数が多すぎて 探すのが大変だと思うので、今回は図書館のデー タベースに含まれる「文明開化期のちりめん本 と浮世絵」の中からご紹介したいと思います。
インターネットで「京都外国語大学付属図書館」
と検索すると、皆さんも見慣れた図書館のホー ムページがヒットするのですが、今回はそこか ら少し下にスクロールして、「本学の主な貴重 書」、「文明開化期のちりめん本」の順にクリッ クしてみてください。皆さんが昔から慣れ親し んできた、たくさんの日本昔話が外国人作家が 英訳し出版されたものとして出てきます。今回 はその中から、私の中でもっとも目を引いた、
デビッド・タムソンの『猿蟹合戦』について書 いてみたいと思います。
このお話のあらすじはこうです。
《蟹のおむすびを猿が柿の種と交換させた。蟹 が柿の種を植えると、柿はすぐに生長して沢山 の実をつけたが、熟した柿を猿が全て自分の物 にし、蟹には青い柿を投げつけ怪我を負わせた。
重傷の蟹の眷け ん ぞ く属は憤り宣戦布告して猿の眷属に 挑んだが、戦力がかなわず、臼たちと一計を案 じた。まず停戦を申し入れて猿の王を招き、炉 端に座らせた猿に火の中から玉子が爆はぜ、蜂が 刺し 、棚から杵き ねが、屋根から臼が体当たりし、
最後に蟹の集団が鋏で猿を切り刻んだ。》
(京都外国語大学付属図書館ホームページより)
まさに「合戦」と称するにふさわしいほどや られてはやり返し、最終的にどちらかが倒れる まで徹底的にやるといったある意味では恐ろし いお話です。現在では「残酷だ」という理由で、
ラストで猿が死なないようになっている絵本も
多いそうです。ですがオリジナルのお話はあく までここに書かれた通りで、猿を完膚なきまで に叩きのめす蟹の眷属の姿が印象的です。
昔話や童話、寓話などにはつきものなのが教 訓ですが、このお話の教訓は何かと考えるとな かなか難しいなと私は思いました。一般的には
「目には目を、歯には歯をという報復の精神が語 られている」だとか、「人にしたことは自分に返っ てくるということ」などと言われています。私 自身は、このお話の伝えたいことは「戦いのや るせなさ」ではないかと思います。猿は確かに 意地悪で、許されないことをしましたが、それ はラストで切り刻まれて殺されなければいけな いほどのことだったのだろうかと疑問に思いま す。いわゆる「倍返し」をやってのけ、蟹とそ の眷属の気持ちは一時晴れたでしょうが、復讐 はさらなる復讐を生むといいます。意地悪な猿 にも強い眷属がいるということは、どこかで猿 を慕っている者がいるということです。このお 話の最後では、悪者が死んで大団円かのように 見えますが、決してそこでは終わらず、戦いは 続くのではないかと想像力をかきたてられます。
このように、ちりめん本ひとつを取ってして もこんなに想像が広がり、豊かな物語の世界に 入っていくことができます。現代の物語ももち ろん興味深く面白いものですが、昔の人が書い た物語にはその時代ならではの教訓やメッセー ジが含まれていたりして、それを考えながら読 むのも楽しいかもしれません。皆さんの大学生 活・読書生活が、「文明開化期のちりめん本」を 通してより一層彩られたものとなることを期待 しています。
やまもと はるか(英米語学科3年次生)
わたしの好きな昔話(29)
山本春夏
(ちりめん本)