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本論文の中心概念は、「代理消費者(surrogate consumer)」である

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Academic year: 2021

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申請者:北村真琴

論文題目: 代理消費者起用に関する制度分析

―化粧品産業における美容ジャーナリストの台頭―

審査員 山下裕子 佐藤郁哉 米倉誠一郎

本論文は、化粧品産業において1980年末に出現・台頭した美容ジャーナリストに焦点をあて、彼等が化粧品 のプロモーション活動の重要な要素となったプロセスを、多数の化粧品メーカー、メディア、美容ジャーナリスト の複雑な相互作用として分析することで、当該の業界における規範、ルールの形成パターンを説明している。

本論文の中心概念は、「代理消費者(surrogate consumer)」である。ある製品カテゴリーに精通した「プロの 目利き」として、特定商品についての情報を提供したり、評価を発信する専門家を、代理消費者として捉える、

社会学および消費者行動論の既存研究を踏まえた問題設定である。個人の意思決定過程に注目する消費 者行動論では、消費を、消費者とエージェントとの共同作業として捉えるが、そもそも、エージェントがどのよう な社会的な制度枠組みの中で存在しているのかを射程に入れて説明するものではなかった。しかし、製品の 評価者となるためには、消費者の信頼が必要であり、信頼の源泉は、しばしば、権威付けや評判といった社 会的な制度枠組みに由来する。このような代理人は、社会的な制度枠組みに依拠して存在するために、業界 ごとに異なる生産プロセスがあり、また、国や文化的な背景により、異なった枠組みにより支えられている側 面が強いと考えられる。本論の問題意識は、このような代理消費者が成立する社会的基盤の形成とその持続 の制度的なメカニズムを捉えようというものである。

そのために、本論文が採用したのは、「新制度組織理論」の分析枠組みであり、特に、「組織フィールド」の 考え方に多くを拠って分析を行っている。組織フィールドは、化粧品の製造・情報伝達・販売に従事する化粧 品業界のプレイヤーの集合体の相互作用を、制度の基盤として考えるための道具立てである。黎明期の組織 フィールドにおいて形成された規範が、フィールドが変化を遂げた後でも維持され、”iron cage”として、行為者 の行動を縛っている様が分析されている。

本論文の慧眼は、化粧品のように、効能や品質に対する消費者の関心が極めて高いにも係わらず、その成 果を、客観的な尺度で判断することが極めて難しい製品の消費を、代理消費という概念を用いて説明を試み た点にある。

一方、問題点として、複雑で込み入った現象を対象としているにも係わらず、プレイヤーの行動の説明が一 面的で単純化されすぎており、それらの合理性や非合理性を判断する基準がどのような次元で成立している のか、が必ずしも整理されていない、という点があげられる。分析レベルの整理が尚、精緻に行われる必要が あろう。また、様々な業界を参照することで、なぜこの業界でこのようなフィールドが形成されたのか、その意 味を再検討する視点も有効であろう。

しかしながら、新しい概念を用いて、非常に丹念に現場のデータを収集し、説得力のある分析を行っており、

博士論文として、十分な水準に達していると考えられる。

よって、審査員一同は、所定の試験結果をあわせ考慮して、本論文の筆者が一橋大学学位規則第5条第1 項の規定に準じた取扱により一橋大学博士(商学)の学位を受けるに値するものと判断する。

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