Information-technology Promotion Agency, Japan
Software
Engineering
Center
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)
技術本部 ソフトウェア・エンジニアリング・センター (SEC)
SECセミナー
プロセス改善とは
~ 良い成果を得るための変革に向けて ~
研究員 倉持 俊之
2013年 2月20日
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riセッション内容
1.プロセス改善とは?
2.アセスメントの活用
~アセスメントモデル
SPEAK-IPA~
3.現場が主役のプロセス改善
~
SPINA
3
CH自律改善メソッド~
4.プロセス改善の勘所
(参考)プロセス改善に関するSECBOOKSとツール
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
ソフトウェアは社会基盤の一部
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
現状!
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri改善とは?
改善とは?
物事をよい方に改めること。
現状より良い状況にするために、
何かを
変更すること。
プロセス改善ナビゲーションガイド~なぜなに編~ P63より
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riプロセスとは?
プロセス改善ナビゲーションガイド
~なぜなに編~ P3より
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
プロセスに関する標準化動向
ISO/IEC 12207
Systems and software engineering -- Software life cycle processes
ISO/IEC 15288
Systems and software engineering -- System life cycle processes
ISO/IEC 20000-4
Information technology -- Service management -- Part 4: Process reference model
SEC BOOKS 共通フレーム2007 第2版
~経営者,業務部門が参画するシステム開発
および取引のために~
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
プロセスに着目
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riどうして、“プロセス”なのか?
そもそも、ソフトウェアは人が作るもの。
開発者個人の方法や技量だけに頼ってプロジェクトを進めると。。。
役割や責任が不明確なまま作業をすすめてしまう。
→開発分担がきまらないまま、時間だけが経過。
→工程が遅れ、顧客承認を得ないまま設計終了し、プログラミングに着手。
→しかし、テスト工程で設計工程に起因する問題が多発。
→手戻り量が多く、結果的に工期も守れなくなった。
というように、属人的な仕事のやり方では、
● 製品(サービス)の品質(Quality)は、安定しない。
● 納期(Deliver)は、不確実(納期を必ずしも守れない)。
● 結果的に、コスト(Cost)は増大する。
⇒ 組織が、顧客に提供する製品(サービス)品質を維持し、または向上させていくため
には、組織の活動基盤となる“プロセス品質”が重要である。
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
プロセス改善が目指すもの
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
プロセス改善へのアプローチは多々あり!
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
2.アセスメントの活用
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riプロセス改善の国際標準化動向
ISO/IEC JTC1/SC7/WG10が国際標準化を推進
1992年、CMM、SPICEなど、似て非なるプロセス評価モデル
が乱立する中、プロセス能力レベルの統一基準を制定すべく発足
ソフトウェア組織の有するプロセスの能力レベル及び組織の成熟度
レベルを評価するための枠組みの標準化
ISO/IEC 15504ベースのプロセス評価改善のスキームの整備
国際規格準拠の業界モデルAutomotiveSPICE、SPICE for SPACE等の
策定
欧州を中心にアセッサ育成/認定スキームの整備が進展
車載組込みSW分野では、欧州カーメーカが発注要件化
IPA/SECでは、15504準拠のアセスメントモデルSPEAK-IPA
版を策定
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiISO/IEC15504アセスメントモデルの構造
適合したプロセス
アセスメントモデル
プロセス項目(活動)
プロセス参照モデル
・領域及び適用範囲
・プロセス(目的及び成果を含む)
測定の枠組み
・能力水準
・プロセス属性
・評定尺度
能
力
の
尺
度
ISO/IEC12207/AMD.1,AMD.2
(Software life cycle processes)
ISO/IEC15288
(System life cycle processes)
対応付け
対
応
付
け
(連
続
表
現
)
二
次
元
モ
デ
ル
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri水準0
未実施
不完全なプロセス
ISO/IEC 15504で定める能力水準
水準1
実施
実施されたプロセス
・プロセス実施水準2
管理
管理されたプロセス
・実施管理 ・作業生産物管理水準3
確立
確立されたプロセス
•プロセス定義 •プロセス展開水準4
予測可能
予測可能なプロセス
・プロセス測定 ・プロセス制御水準5
最適化
最適化しているプロセス
・プロセス革新 ・プロセス最適化SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riアセスメントの活用(X社事例)
背景・目的・ねらい
X社は、Y社ビジネスに直結するITシステムの一部の保守業
務を
技術支援
業務として長年受託。昨年度までは、技術者が客
先へ常駐し、業務システム保守を客先担当者と共同で実施して
いたが、今年度より顧客からの強い要望から
請負契約
へ変更、
要求分析からソフトウェア結合テスト
までを担当している。
客先での標準プロセスを使用しているが、要求分析(影響範囲
)のもれ、レアケースデータに対しての考慮不足、パフォーマン
スの問題など発生することがある。PJ管理(短工期の)、レビュ
ー、品質保証系プロセスに課題があると思われる。
見積精度を強化したい。最終的には瑕疵コストの削減(但し数
ヶ月後に判明する)半減を目指す。
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riアセスメントの活用(X社事例)
△キックオフ
△推進教育
◆アセスメント実施
△全社成果報告会
◆アセスメント実施
△・・△・・△アセスメント教育
改善活動
◆アセスメント実施
A事業部
B事業部
改善活動
準備
アセスメント対象プロセス
要求事項抽出(P.3.1)
ソフトウェア要求分析(P.3.4)
ソフトウェアテスト(P.3.8)
問題解決(S.8)
(5日間) (5日間) (4日間) 外部アセッサ2名で実施 外部アセッサ2名に加え、 アセスメント教育受けた 社内アセッサ2名がアセ スメントに参加 X社でアセスメント教 育受けた社内アセッサ 3名で実施SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riアセスメントの活用(X社事例)
活動開始時
プロセス改善への取り組みは、事前に顧客も了承。
実施結果から改善すべき点も顧客へ報告し、協力を依頼。
活動から半年後
当初、他人事と受け取っていた顧客だが、改善提案からの効果
を見て、評価しはじめた。
その後
社内でアセスメントできる要員育成にチャレンジ!
他の案件(保守業務)でのプロセス改善活動を開始
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPEAK-IPAの特徴
ISO/IEC 15504に準拠した日本発のモデル
開発の経緯
• 新日鉄ソリューションズ株式会社がSPEAKを開発(第1版:2002年3月) • 社団法人情報サービス産業協会(JISA)がSPINACHを開発(2003年) • 両者をベースに、IPA/SEC プロセス改善研究部会が一般化を行い、2007年9月に公開
多分野でISO/IEC 15504に沿ったアセスメントモデルを作成する場合の参考例
として活用可
アセスメントの厳格さに応じた標準モデルと軽量モデルを提供
アセスメント手順を提供
フリーにダウンロード可能
http://sec.ipa.go.jp/reports/20110328.html
アセスメントモデルとアセスメント手法 標準モデルと軽量モデル フリーで使える
アセスメントモデルの規格
ISO/IEC15504
モデル化 (規格準拠)SPEAK-IPA
アセスメントモデル 日本発SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riアンチパターン
危機感のない現場
問題は認識しているが、現状に甘んじている。(ゆでガエル?)
なぜか他人事。自らは動かない。
過去の失敗経験
前もやったが徒労に終わった。
苦労しても報われない。
経営層の無理解・無関心
レベル達成ありき。
努力して良くしても評価されない。(成果主義?プロセス軽視?)
育ってきた活動推進役が他部署へ異動。
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri
3.現場が主役のプロセス改善
~
SPINA
3
CH自律改善メソッド~
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Riプロセス改善の姿・形
プロセス改善を実際に行うのは・・
プロセスの実際の担い手である現場のメンバーと
プロセス実施の責任者であるプロセスオーナ!
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri「
SPINA
3
CH自律改善メソッド」の特長
1.
日々の業務でおぼえる違和感を見える化し、問題意識として
捉えることができる。
2.
当事者の
問題意識に基づき自主的に改善活動を推進
するた
め、効果を実感でき、継続的な活動の推進につながる。
3.
問題気づきシート、改善検討ワークシートを用いた改善活動
により、対象領域の
課題の因果関係を視覚的に把握
できる。
4.
改善検討ワークシートの課題テーマは、「
成果を得るために
は何をすべきなのか
」という視点で38種類を選定しており、活
動成果をイメージしやすい。
5.
ワークシート裏面にある
改善方法のヒントや事例
を参考に、
課題認識を具体的な改善活動に結びつけることができる。
6.
継続して改善活動を行う環境が整備され、生産性向上、品質
向上等の
効果を実感
できる。
http://sec.ipa.go.jp/reports/20110707.html
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri改善への取り組み
ボトムアップとトップダウン
ボトムアップ
トップダウン
メリット
気付いたところから早期
に改善できる
改善の効果が即体感でき
る
活動にある程度のリソース確保が
期待できる
体系的・網羅的に取り組める
全体最適が目指せる
陥りやすい
問題
目の前の課題に着目する
あまり、やるべき事に網羅
性がない
将来の課題につながる手
当ができにくいため、常に
火消しの状態
推進側(≠現場)が進めてしまい、
現場不在に陥りやすい
現場でのメリットが感じられない、
逆に現場の負担が増える
改善が当たり前の企業文化が成功への鍵?
ムリ、ムダ、ムラの削減 /5S運動 / QCサークル etc.
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH自律改善メソッドの改善サイクル
新しい作業の実行
(変更プロセス実装)
現場の問題洗い出し
問題の分析と絞込み
振り返り
問題の対応計画
(プロセスの見直し)
新しい作業の計画
(プロセス変更プラン)
さらなる改善へ 組織展開 新たな課題に挑戦継続的な
改善サイクル
Start
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH実証実験での事例(被験チーム)
作業方針
メンバーが主体的に進め、PMは状況を確認しながら、適宜、フォロー
する方針とした。
プロセス改善経験が浅いメンバーで構成されたプロジェクトのため、
実験者が本メソッドの使い方について随時ガイドすることにした。
対象の作業内容 組込ソフトウェア開発の統合支援 プロジェクト構成メンバ プロジェクトマネージャー(以下「PM」)1名、メンバ3名 メンバの知識 PMは、本業務に参加し、本メソッドについての基本的な知識を有している。 PMのプロセス改善に関する知識は、ほとんど知らないに近い程度である。また、 現在のプロジェクトでは導入した実績はない。 PMが本メソッドについての簡単な説明を行い、メンバ2名は、作業の概要や流れを 理解した。残り1名は説明を受けず、ガイドブックを参考に本メソッドの概要を把握 した。 その他 残業が認められていないため、本メソッドは業務時間内で実施。 PMはメンバに対し、自分で考え自主的に活動することを期待している。SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri メンバーだけで実施 (STEP1) ・業務多忙により、約1ヶ月中断 ・メンバーだけでは因果関係分析 は進められず、PMがサポート ・深堀せずに先に進める (STEP2) 優先度の高い日々の問題、以前か ら問題視されていた問題に絞込む 「朝礼が長い」 「スケジュールを立てていない」 (STEP3) ・直接該当するワー クシートはなし ・ヒントが得られそう なワークシートを選 択( WS-PMC-01: プロジェクトの進捗 を確認する) (STEP4) ・各自で改善策を 考えてくる ・改善検討ワーク シート[裏面)は一 部ヒントになった (STEP5) 改善作業を3週間実施 (STEP7) 「朝礼が長い」について 4つの改善策 「スケジュールを立てていない」につ いて、3つの改善策を策定 (STEP6) 全員で振り返り (STEP8) 改善効果が期待できるため、 引き続き実施中SPINA
3
CH実証実験での事例(実施ステップ)
プロセス改善活動への 前向きな意識変化 ・改善への意識が芽生えた ・次回は自分達で回せそう ・意識が変わった ・メソッドの有用性を強く感 じる ・改善活動を継続したいSEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH実証実験での事例(分析結果)
朝礼、夕礼の 時間が長い 他人の失敗の経験 を生かせず、同じ 失敗をしてしまう 朝礼の時間が 長く、作業開 始の遅延に繋 がっている ベースライン更新 作業で機種ごとに 細かな手順が異な るため、作業が煩 雑になっている メンバー全員に顧客 の要求が共有されて いないことがある ビルド作業などの ルーチン作業に追わ れ、付加価値の高い 作業ができていない レビューの時間 が取れない ラベルの引き間違い や、構成仕様作成ミ スなど、作業のミス が多い ベースライン更新作 業を俯瞰する適度な 粒度の初心者用ド キュメントがない ベースライン更新 作業用のツールの 不具合を場当たり に対処しているよ うに見える スケジュールを立て ていないので、作業 期限や範囲が曖昧 ビルド作業以外 の溜まっている タスクを把握で きていない ビルド以外の作業 を実施する時間が なかなか取れず、 作業が溜まる 仕様書を読めて いないので、プ ロセスの役割な どが分からないSEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH実証実験での事例(対策)
「朝礼が長い」の改善策
「アジェンダを事前に作成し、朝礼の議題を共有しておく」
「調整が必要だと思う議題は事前にプロジェクトマネージャーに
相談しておく」
「終了時間を決めておく」
「タイムキーパーを立てる」
「スケジュールを立てていない」の改善策
「ビルド以外の作業についてWBSを考える」
「スケジュールを作成し、マイルストンを明確にする」
「スケジュールを使って、進捗を確認する」
それぞれの問題ごとに「改善検討ワークシート」を作成する担当者を決め、作成された
「改善検討ワークシート」を
メンバ全員でレビュー
した。その後、各自が考えてきた改
善策について、「すぐに着手できるもの」、そして、「改善効果が比較的得られやすいと
思われるもの」の観点から、
改善策を絞り込んだ
。
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH実証実験での事例(実施結果と変化)
<朝礼が長い>
実施期間が短いため朝礼時間の大幅な短縮には繋がっていないが、改善のための準
備が整い、各自が意識して行動するようになった。
<スケジュールを立てていない>
成果物に対し必要な作業を整理するようにした。作業経験者に具体的な作業内容を確
認する姿が見受けられた。
概略スケジュールを作成することで、チェックポイントとなるマイルストンを共有すること
が出来た。
朝礼のアジェンダに進捗を確認するよう追記し、スケジュールを立てる習慣をつけた。
実施前後の変化
朝礼での議論の内容の記録が残るようになった。
朝礼の時間は短くなっていない。
作業の負荷分散ができるようになった。
締め切りを意識するようになった。
(メンバの声) ・議題が決まっているので、話題が逸れ難くなった。 ・アジェンダがあるので、議事録がとりやすくなった。 ・時間を守るように意識するようになった。 ・作業詳細を把握していないことに気がついた。 ・スケジュールを作ることで溢れる作業が把握でき、作業を他の人に振ることができた。SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・RiSPINA
3
CH実証実験での事例(活用のヒント)
1.
プロセス改善活動導入のきっかけ作り
プロセス改善経験が浅い実験参加者が殆どだったが、改善活動の全体像を把握した
上で本メソッドのステップを全て実施している。本メソッドが改善活動の基本的な
手順とシート、そして、網羅された問題点リストや改善策検討のためのヒントを提
供することで、改善経験がなくとも参考にしながら改善活動を実施することが出来
たのではないか。プロセス改善経験が浅いプロジェクトが改善活動の一歩を踏み出
すきっかけとして活用できると考える。
2.
コミュニケーションの活性化
このチームは、試行以前では個人で作業をすることが多く、さらに、業務全体に関
わる問題やその要因について深く討論する機会が少なかったが、当メソッドを試行
することで意見交換や問題領域の共有活動を行うことができ、チーム内のコミュニ
ケーションが活性化される効果が得られた。
3.
ポジティブ思考
チームメンバだけでは、因果関係分析を十分に進めることが出来なかった。(経験
・スキルが不足)結果として、マネージャが問題の関連を整理した図を作成したが
、問題の現象に近い部分を問題として特定し、実施することになり、問題を因果関
係で結びつける材料が不足していた(抽出した問題を詳細化する作業の省略など)
ようである。にもかかわらず、一定の効果をメンバが実感し、改善活動を続ける動
機づけの効果があった。改善活動は、トライ&エラーを繰り返すことで、経験・ス
キルが培われることを念頭に前向きな姿勢で取り組むことが大切なのではないだろ
うか。
SEC
Software Engineering for Mo・No・Zu・Ku・Ri