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はじめに

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1 はじめに

1 研究の背景

内閣府の『高齢社会白書』(2019 年版)によると,わが国は長寿化の進展により,2018 年 10 月現在, 高齢化率 28.1%

1

の超高齢社会を迎えているが, 2065年には高齢化率は 38.4%

に達し, 2.6 人に 1 人が前期高齢者(65 歳以上)に, 75 歳以上の高齢化率は 25.5%となり,

3.9 人に 1 人が後期高齢者になると予測されている.

65 歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計(2017 年版高齢社会白書)につい てみると,2012 年には認知症患者数は 462 万人と 65 歳以上の高齢者の 7 人に 1 人(有病 率 15.0%)の割合であったが,2025 年には約 700 万人,5 人に 1 人になると見込まれてい る.

医学の発展により,何らかの疾患を抱えつつも長く生き続けることが可能になった現在,

誰もが要介護状態・介護者になる可能性があり,リスクマネジメントとして対応すること が求められている.このリスクを必要以上に恐れないですむためには,要介護状態になっ たとしても利用できるサービスが充実しており,介護を担ったとしても社会で活躍の場を 失うことなく,尊厳を保ちながら生きることができる環境が整っていることが前提となる だろう.大切な人を気遣いながらも,日々生じる様々な困難を乗り越え人間的な成長を遂 げることができた,と語る者は決して少なくない.つまり,要介護者のみならず,介護す る側に対しても公的な支援を提供することが必要になる(湯原 2014).

今や誰もが介護者となりうることを思えば,高齢期における介護問題は,高齢者本人だ けでなく,その家族や地域といった広範囲にわたる問題であり,いずれは高齢者となる国 民全体の自らの問題でもある.かつては,居宅での介護は家族によって担われることがあ たりまえとされ,家族は介護資源とみなされ,日本社会の含み資産とされてきた.しかし,

次第に女性の就業率の増加,家族形態の多様化により,老親の介護を家族だけで担うには 介護する側の高齢化はもちろんのこと,介護のスキル(知識)のばらつき,介護と仕事の 両立の困難といった現状が浮き彫りになり,新たな社会システムの必要性が叫ばれ,介護 保険制度創設へと繋がっていったのである.

前記『高齢社会白書』(2019 年版)によると,要介護者等からみた主介護者の続柄は,

1 わが国の総人口は2018 年10

1

日現在

1

2,644

万人で,65 歳以上の高齢者人口は

3,558

万人,前期高齢者(65~74 歳)は

1,760

万人で総人口に占める割合は

13.9%,後期高齢者(75

歳以上)は

1,798

万人で総人口に占める割合は

14.2%となっている.また,

「団塊の世代」が

75

歳以上となる

2025

年には,3,677 万人に達すると予測されている.

(2)

2

58.7%が同居している家族となっている.主介護者の内訳は,配偶者 25.2%,子 21.8%,

子の配偶者 9.7%となっている.性別では,男性 34.0%,女性 66.0%と,圧倒的に女性が 多くなっている.要介護者等と同居している主介護者の年齢においては,男性 70.1%,女

性 69.9%が 60 歳以上であり,いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在している.

このような状況において,老親の介護や看護を機に離職・転職せざるを得ない者は, 2016 年 10 月から 2017 年 9 月の 1 年間で 9.9 万人となった.とりわけ,女性の離職者数は 7.5 万人で,全体の 75.8%と最も多い. 『高齢社会白書』 (2018 年版)によれば, 「仕事と手助け・

介護の両立が難しい職場だったため」が 1 番目に多く(男性 62.1%,女性 62.7%),次いで

「自分の心身の健康状態が悪化したため」(男性 25.3%,女性 32.8%)となっている.さ らに, 「自分の希望として『手助け・介護』に専念したかたったため」(男性 20.2%,女性

22.8%)が続き, 「施設へ入所できず『手助け・介護』の負担が増えたため」 (男性 16.6%,

女性 8.5%)となっている.

介護や看護を機に離職・転職した者の離職時の就業継続については,男性では 56.0%が,

女性では 55.7%が「続けたかった」との意向を示している.果たして,これで社会保険と

しての介護保険制度が適切に機能していると言えるのであろうか.また,高齢期における 不安要因である介護問題を社会全体で支えるシステムに転換し,家族介護の負担軽減等を はかるといった「介護の社会化」を実現する政策として成功していると言えるのであろう か.

しかも,介護現場を取り巻く状況は悪化の一途にある.介護職員の絶対数不足と,全体 的な介護職員の介護技術の低下である.さらに, 「主たる家族介護者」が在宅で支援し続け ようと努力しても,在宅福祉サービスの縮小が企図されており,自助努力の増加が期待さ れている.このままでは,適切な介護サービスを受けることが困難になり,家族介護者の 援助疲れによる虐待も増加しかねない状況にある.もともと, 「主たる家族介護者」が疲弊 することなく,介護破綻をきたさないためには,家族役割の再組織化が重要になる.その 時に重要な要因となるのが,介護者と要介護者,主介護者と従介護者の関係性である.

本研究はこのような関係性に注目しながら, 「介護の社会化」の拡充と家族介護者が過度

のストレスを負うことなく在宅介護が実践できる方策の検討を行い,介護保険制度が適切

に機能していくために制度設計を見直し,これまでと異なる新たな家族介護のシステム化

を意図するものである.

(3)

3 2 研究の目的と意義

介護保険制度が制定されて以来,わが国では要介護者の在宅介護を促進する方向に進め られており,その介護負担は家族介護者に重くのしかかっている(唐沢 2009) .また,介 護職員の絶対数が不足する中,職員確保のために適性等を考慮する余裕もなく職員を採用 し,結果として介護職員の全体的な介護技術が低下している中で,適切に地域包括ケアが 実践できるためには,社会保障制度における介護保険制度を現状に即して適切に設計し直 す必要がある.

しかし,増え続ける社会保障費に対する抑制策として,わが国ではサービス利用料の原 則 1 割負担が 2 割負担へ,そして,3 割負担へと国民負担増への対策が取られている.さ らには,サービス利用に関しても,要支援者の介護予防訪問介護,介護予防通所介護が地 域支援事業へと移行されるなど,創設時の理念から乖離する状況にある.

無論, 「介護の社会化」が適切になされ,家族介護の負担が軽減され,要介護者が住み慣 れた自宅で・地域社会で生活が可能になるはずである.だが, 「介護の社会化」を目指す政 策実現において家族介護に重きをおいている.それにしても,家族介護の家族は誰を指す のか. 「子ども,配偶者,孫,子どもの配偶者,親,祖父母,配偶者の親,きょうだい,き ょうだいの配偶者,別居の離婚した親,再婚した親の配偶者,同性愛のパートナー,同棲 しているパートナー」等,誰を家族とみなすかは多様である.家族をはっきりと定義する ことは,家族だと思っている人々を「家族」から排除することになる.すなわち,家族の 多様性を否定し,差別につながりかねないと長津(2014)がいうように,定義の難しい「家 族」ではあるが,家族介護者となると,特定できる.実際に要介護者と関わっている人だ からである.

ここで言う家族介護システムとは,実際に要介護者と関わっている家族(その人)と,

その他の家族の関わりを介護という支援にどのように結びつけるかということである.こ れを踏まえ,本論文では在宅介護における家族介護者自身の在り様と,家族介護者・要介 護者の関係性が介護にどのような影響を与えているのかをアンケートより分析し,併せて 在宅介護の継続を可能ならしめるための制度の在り方とサービス(ニーズ)の関係を考究 することで,新たな家族介護システム(家族の再組織化)を創造することを研究の目的と している.

量的・質的調査結果からみえてくる,家族介護者による介護疲れ,介護サービスのミス

マッチ等が高齢者虐待に移行してしまう環境因子を詳細に分析することで,虐待に至る境

(4)

4

界線(ボーダーライン)について一般化する基準を作成する.その基準化されたものをも とに, 専門職としてどのような介入方法があるのか, どのような介入が妥当かを検討する.

現行の制度におけるサービスが家族介護者にもたらす介護継続促進要因,介護阻害要因 となりえる根拠を示すことで,家族が必要とする支援のあり方を検討することができる.

また,多様化する家族介護の形態別(老老介護,遠距離介護など)への介護支援の方法を 示唆することで, 「介護離職ゼロ」の実現に寄与し得る.

そのためには,現行の制度,サービスにおいて,介護支援専門員が家族におこなう支援 過程の方法,考え方の根拠を明確にすることが重要である.介護計画の中で,各専門職が どのようなことに注意して家族支援をおこなっているかを明確にすることで,専門職別に おける支援過程の連携がどのように成り立つのか検討することができるようになる.その ことで個別ケアにおける介護サービス提供の一般化(標準化)ができ,汎用性を高めるこ とに繋がる.ここに本研究の意義がある.

3 研究課題と研究方法

家族の介護などを理由とした離職・転職者が年間 10 万人にも及んでいる今日,状況を改 善するためには, 「介護職員の離職ゼロ」 「介護従事者の増加」 「介護専門職員の質的向上」

が,前提条件であることは言うまでもない.

親族のなかで一旦「主たる家族介護者」が決定されると,他の親族はそれに手を出さな

い傾向がある(上野 2013) .これらの先行研究を踏まえ,家族と介護に関し概念整理をす

るとともに,家族介護者が否定的ストレスに陥らないための方策に就いて,藤崎(1990) ,

関根(2007) ,畑(2010) ,柴崎(2016)等を参考にしながら, 「家族介護システムの再構築

化」に資する「介護ストレスに対する家族役割の再組織化に向けてのコーピング・ソーシ

ャルワーク的支援の段階図」の作成を試み,次のような課題を設定した.すなわち,第一

に家族介護者の側からみた在宅介護の継続促進要因を確認し,在宅介護の継続促進要因と

阻害要因を抽出すること,第二に福祉機関従事者から見た在宅介護の継続促進要因と阻害

要因の抽出であり,第三は以上の課題を検討・考察したうえで,家族介護者が否定的スト

レスに陥らないための方策の検討である.加えて,重篤な虐待が起こる要因の 1 つに,わ

が国の文化・慣習に根づく,介護の主体は家族であるという家族介護者の介護の意識性(生

真面目さ)が家族危機に陥るのではないかという点や,積極的な施設入所を選択するとい

うネグレクト(介護放棄)ではあるが,重大な事故には繋がらない虐待というものがある

(5)

5

のではないかという点,また,在宅介護の限界の中でクライシスに陥ることなく,家族で 看取りまで迎えることができるために家族の再組織化が必要であるのではないかという点,

等々も考量したい.

これらの課題を検証するため,在宅介護における家族介護者と介護支援専門員の作成し た介護計画に込められた在宅介護の限界の要因を明らかにし,新たな家族介護システムの 創造を試みる.そのために質的・量的調査を実施し検討する.具体的には,家族介護者自身 の在宅での介護経験に関して,在宅介護を継続中の家族,看取りを終えた家族,施設入所 に至った家族,各 2 名に質的調査を実施する.さらに,指定介護老人福祉施設(特別養護 老人ホーム) ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ・通所介護(デイサービス)

事業所の福祉機関従事者に対して量的調査を実施する.

4 倫理的配慮

在宅介護の継続要因に関する質的・量的調査を実施する際には, 調査の目的および方法,

個人が特定できないよう統計処理を行う旨を説明した上で同意書を得ている.また,個人 情報の保護,研究データの取り扱いおよび管理方法の遵守を説明し,得られた研究データ に関しては,研究者が責任を持って管理することを約束した.なお,本調査研究における 倫理的配慮に関しては,鹿児島国際大学の研究教育倫理審査委員会の承認を得て実施した.

5 本論文の構成

本論文は, 「はじめに」で研究の背景・目的・意義,研究課題と調査方法,倫理的配慮,

本論文の構成について述べ,第 1 章では家族と介護をとりあげ,家族や介護の概念を述べ, 家族介護,在宅介護等について論じている.

第 2 章では介護保険制度は社会保障の中の一形態であることを論じながら, 「介護の社会 化」について,福祉ミックスと日本型福祉社会等の文献を踏まえ論じ,第 3 章では介護保 険制度における家族介護者の現状を述べるとともに,家族介護の評価や家族介護者の価値 と関係性・再組織化の課題などについて,第 4 章では介護保険制度における保険者の機能 強化の取り組みの一環として提起された新たな「地域包括ケアシステム」について,厚生 労働省等の提示している事業内容・機能,目的などについて全体像を提起するとともに,

介護保険制度の抜本的な対策とはなり得ていないことを論じている.

第 5 章では在宅介護を継続中の家族,在宅で看取りを終えた家族,在宅での介護支援を

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6

していたが,施設入所に至った家族に対して,各 2 名(6 事例)を対象に質的調査を行い,

その中で在宅介護の促進要因と阻害要因をもとに,家族介護システムの持続可能性を探る.

第 6 章では指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) ・認知症対応型共同生活介護(グ ループホーム) ・通所介護(デイサービス)事業所の職員に対して量的調査を実施して要因 分析を行い,家族介護の継続促進要因と在宅介護を継続するための家族介護者への支援の 持続可能性を探る.

第 7 章では第 5 章・第 6 章の結果を受け,家族介護者が否定的ストレスに陥らないで終

末までケアを継続することができることを目指して, 「家族介護システムの再構築化」に資

する「介護ストレスに対する家族役割の再組織化に向けてのコーピング・ソーシャルワー

ク的支援の段階図」の作成を試みる. 「おわりに」では, 「ソーシャルワーク的支援に向け

て」と題して,家族介護の困難性,看取りの現状,関係性の構築,課題と展望について論

じている.

(7)

7 第1章 家族と介護

第 1 節 家族の概念 1 家族とは

家族を定義することは一筋縄ではいかないのが現実である. 何故なら, 「子ども, 配偶者,

孫,子どもの配偶者,親,祖父母,配偶者の親,きょうだい,きょうだいの配偶者,別居 の離婚した親,再婚した親の配偶者,同性愛のパートナー,同棲しているパートナー」,誰 を家族とみなすか多様であるからである.つまり,家族をはっきりと定義することは,家 族だと思っている人々を「家族」から排除することになる.すなわち,家族の多様性を否 定し,差別につながりかねない(長津 2014:1) .

このように, 「家族」の定義が崩壊して久しい今日, 世帯について考えることはできても,

家族について考えることはすこぶる難しい(上野 2013).その中で,誰が介護を担うのか,

多種多様な介護のあり方を定式化することは困難である.

介護研究では,親族のなかで一旦「主たる家族介護者」が決定されると,他の親族はそ れに手を出さない傾向があるということが分かっている.また,要介護状態の変化は軽度 から重度へのゆっくりした移行であり,在宅から施設への移行がある場合にも,そのプロ セスに在宅介護(同居・別居を問わず)の段階があり,それが行き詰まったと「主たる家 族介護者」が判断したときに,施設への移行が起きると考えられる. 「主たる家族介護者」

は,在宅であれ施設であれ,介護の場や手段を決定するキーパーソンである.その「主た る家族介護者」には,同居・別居の別,親族姻族の別,性別,世代別等を超えた多様性が ある(上野 2013).

しかし,育児の場合には親権者は両親に限定されており,また,その祖父母の範囲も確 定できる.ところが,介護についてはまず介護に関与すべきアクターの範囲が決定できな い.親権者と違って,介護には複数の担い手があり,そのあいだの優先順位も揺れ動いて いる(上野 2013).

2 家族の要件と類型

日本国憲法の規定による「家族」とは,憲法第 24 条 2 項に「配偶者の選択,財産権,相

続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個

人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と示されている.つ

まり,わが国の各法律において「家族」を規定するには, 「個人の尊厳」と「両性の本質的

(8)

8

平等」に基づいていなければならない.また,憲法第 24 条 1 項において「婚姻は,両性の 合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力によ り,維持されなければならない」と定められている.遵って,わが国の「家族」において は,両性の合意における婚姻,同等の権利を有する夫婦,それらを維持する相互の協力が,

日本国憲法の指し示す「家族」の基本的な成立要件であるといえる(廣井 2005) . 家族とは,婚姻によって成立した夫婦を中核にしてその近親の血縁者が住居と家計をと もにし,人格的結合と感情的融合のもとに生活している小集団である(ブリタニカ国際大 百科事典) .家族は主に 2 つの機能を担っている.経済・保護・護憲・愛情など家族成員の ニーズを満たすことと,家族が属している社会のニーズを満たすことである(岡崎 2000) . 前者を対内的機能といい,後者を対外的機能という(庄司 2007) .

家族は原始的群居の状態から次第に血縁的秩序の分化を経て今日の小家族へと段階的変 化をとげてきた.現在の家族をその構成から分類すると,夫婦と未婚の子女による核家族

2

, 各世代 1 組ずつの夫婦関係の接合による直系家族

3

,同一世代に複数の夫婦関係を含む接合 による複合家族

4

となる(ブリタニカ国際大百科事典) .

図1は,近代の家族累計のモデル図である.

図1 家族 3 類型

2

夫婦家族制のことで,結婚から始まった家族が,子供を産み育て,子供は成長すると全員親 元を離れ独立し,親は老後を夫婦二人だけで暮らし,残された片方が亡くなった時点で家族の サイクルは終焉する(岩上

2007)

3 一人の子供が親元に残留し,跡取りとして配偶者を迎え,跡取りを介して複数世代が縦に結

合して家族を形成するが,他の子どもはしかるべき時期に親元から離脱することになる(岩上

2007)

4

男の子が全員親元にとどまり,それぞれ妻を迎えて親夫婦を中心に一つの家族を形成する制 度である(岩上

2007)

複合家族 直系家族

核家族

長男

嫁 孫

嫁 嫁

次男 三男

(9)

9

家族という小集団は,個人のウェルビーイング追及の集団であるとともに,イルビーイ ング発生の機関,つまり,病原機関でもある.子ども虐待や高齢者虐待などの背後には人 間関係の歪みがあり,私的・社会的不適応現象の究極的原因が家族に存するのではないか という発想も顕著になってきている(高橋 2007) .

これらの近代家族に内在する光と影の部分は,家族が共同体から切り離されたことによ り,家族の内部が崩壊の危機に瀕するほどの困難を抱えようとも,個人主義的な家族観・

結婚観が重要な要素である以上外界に知られることなく,私生活のトリデとして自助原則 が求められる孤立無援の状況になるのである(庄司 2007) .

このような家族に,ケアを必要とするストレスが襲い掛かってきたとき,様々な問題を 発生させることになる.

イギリスやアメリカ,カナダ等の国々では,家族崩壊を防ぐために,ファミリーサービ ス(個人の,家族のウェルビーイングを促進するプログラムの総称)制度が発達している.

具体的には,カウンセリング,グループ・カウンセリング,家族療法,親性を高めるため のプログラム,アドボカシー活動,社会資源の開発,より良い家庭生活を過ごすためのソ ーシャルスキルの学習などである(高橋 2007) .

家族崩壊を防ぐ手立てとしての家族再構築にファミリーサービスプログラム(ソーシャ ルワーカー的視点)が重要であるが,この点については,第7章の第 2 節で詳述する.

戸田(1982:48)は家族の特質について, 「家族は夫婦,親子ならびにその近親者の愛情 にもとづく人格的結合であり,かかる感情的融合を根拠として成立する従属関係,共産的 共同」であるとしている.また,森岡(1997:4)は,戦後の家族の変化を考慮し「家族と は,夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な成員とし,成員相互の深い感情的 かかわりあいで結ばれた,幸福(well-being)追求の集団」と定義している.さらに,岩 上(2007)は, 「家族の具体的な形態や機能,および当該社会の『家族』概念は,歴史的に 異なる.それは家族制度の違いとして現れる.家族制度とは,特定の社会において発達し た家族に関連する理念,行為,規範,法の体系のことで<中略>夫婦家族性,直系家族性,

複合家族性である」と述べている.

このように,同じ「家族」という言葉でも,その時代の社会的背景,政策,文化などに

より,家族の捉え方や言葉の示す実態は大きく異なる.したがって,家族はその時代に適

合した形態に変化しながら定義づけなければ,今日的な「家族」という意味合いから程遠

いものになりかねない.そこで,家族をシステムという概念で捉えると,要介護者の家族

(10)

10

全体に起こる現象を包括的に捉えることが可能になる.この点について,岡崎(2000)は 次のように述べている.

「家族システムのプロセスは,要介護高齢者の痴呆の程度,介護者の負担感,家族外部 からのソーシャルサポート等,家族システムの健康を規定する要因から,その一部が明ら かにされている.しかし,要介護高齢者の介護家族システムの健康がどのような状況で,

どのように変化していくのかを量的に検証していくことには限界がある.今後は質的研究 方法を用いた探索的・発見的な研究が必要であろう.」

3 家族の変遷

わが国の戦前の家族は,明治政府の推しすすめた家父長制度いわゆる「家」制度を中心 として形づくられていた.これは,江戸時代の武家社会の家父長制度を参考にしている.

家制度は直系家族によって構成され,家系の永続が最大の目的とされたのである.家制度 は,その家の統率者であり家族に対して絶対的な権限と責任を持つ「戸主」と,家族によ って構成され,戦後民法が大幅な改正をされる 1947 年まで続いていた.

戦後になると,わが国の家族制度は大きく変革され,夫婦と未婚の子女からなる核家族 である新たな家族形態が誕生した(藤 2010) .

経済力を持つ夫と,家庭内の再生産役割を担う妻,子供によって構成された近代の核家 族は,親子の親密性により支えられている.しかし, 「家族の機能としての経済機能,教育 機能,保健・医療機能,宗教機能などは,職場と家庭の分離,学校や病院など専門的制度・

組織の成立といった専門化,制度化がすすめられ,家族に残された機能はなくなるのでは ないかという危機感さえ生まれた時期もあったが,今日では職場や学校,地域などにおけ る個人の社会的評価がばらばらでなく,トータルの存在として評価されるのは家族におい てのみであるという,個人の社会的居場所としての家族の多様性」が主張されるようにな ってきている(目黒 2009) .

一方,近年フェミニズム思想の影響を受け,家族を巡る議論において新しい展開が見ら れるようになってきた.一つ目が家族的関係の変容,家族的絆の弱体化という家族の持つ 機能や意味の喪失に関する問題提起であり,二つ目が固定的性別役割分業を基礎とする家 父長制イデオロギーが女性を家族に縛り付け,女性の自己実現を阻んでいるという問題提 起である.

しかし,私たちが他者の理解を学び,自分が誰であり,いつ,どこで,どのようにして

(11)

11

生きていくのかという確信を得るのは,親子,夫婦,兄弟姉妹,祖父母・孫といった相互 的眼差しの交換と蓄積によってであり,この相互的眼差しは身体的能力,精神的能力,経 済的能力,性別,年齢などとは無関係に相補的,対照的なものである.家族関係ほどこの ような相補的,対照的眼差しの交換と蓄積を可能にする存在はないのである(平野 2011) .

とはいえ,核家族化,単独世帯の増加が著しく進行している今日的な状況として,家族 における家庭内扶養機能がその規模において低下し続けているのも確かである.

ところで,家族形態の有り様は,理念の変化からも見て取れる.理念は,価値,目的と 結びついている.家族と社会福祉のかかわりを広く家族福祉と名付けると,家族福祉の理 念は家族の理念,社会福祉の理念,家族と社会福祉の関係の理念から構成されている(鶴 野 2003:3) .

社会保障という点から家族政策を見ると,フランスでは, 「家族への直接的な援助」と「子 どもを持つことで得られる間接的利益」に大別される.具体的には,①家族給付,②サー ビスに対する資金的負担,③税制上の優遇,④年金上の優遇措置,⑤関連援助などである が,わが国の政策は政府による明示的な家族政策が展開された経緯はなく,政策の範疇は 限定的なものに過ぎない.

1973 年の「福祉元年」には, 「家族は福祉の含み資産」とする日本型福祉社会構想が提

起されたが, 1980 年代半ばになると,家族を自立・自助の精神を持つ個人による相互扶助 の精神に基づき援助するものとして位置づけた(湯澤 2007) .

第2節 介護の概念整理 1 介護とは

大辞林では,介護とは「病人などを介抱し世話をすること」とある.しかし,介護を広 い意味での世話(ケア)と捉えると,対象者は必ずしも病人とは限らない.子項目に介護 福祉士として「日常生活を営むのに支障がある心身障害者の介護並びに介護者への指導を 行う専門家」と記されている.つまり,介護には一般的な意味での世話(ケア)と,専門 的技術・知識を持った有資格者の実践する介護(ケア)の二種類があるという事である.

専門的技術・知識を持った有資格者の実践する介護に関しては,様々な定義がなされて いる.

「介護とは,老齢や心身の障害による,日常生活を営む上で困難な状態にある個人を対

象とする.専門的な対人援助を基盤に,身体的,精神的,社会的に健康な生活の確保と成

(12)

12

長,発達を目指し,利用者が満足できる生活の自立を図ることを目的としている」 (一番ケ 瀬 1994:6) .

「介護とは,介護という『関係』のうえに成り立つ援助の行為表現をいう.健康や障害 の程度を問わず,医・食・住の便宜さに関心を向け,その人が普通に獲得してきた生活の 技法に注目し,もし身の回りを整えるうえで支障があれば, 『介護する』という独自の方法 でそれを補うという形式をもって支援する活動である」 (中島 2000:33) .

「介護とは,障害が潜在的であると顕在的であるとにかかわらず,日常の生活を送る上 で何らかの援助を必要とする人々に対して行われる補完的活動のすべてをいう.つまり,

介護とは要援助者の ADL を高めるための援助(介助技術)と, QOL を高めるための援助(援 助技術)の総称である(代用・補完論) 」 (田中 2005:23) .

「介護とは,日常生活に支障があり,またはそのおそれがある高齢者や障害者・児の尊 厳や自立,自己実現などを支えるために,本人のニーズと心身の状況に応じた身体的・精 神的・社会的・文化的・予防的援助により,その人らしい生活を支援することである」 (嶌 末 2019) .

専門的な技術・知識を持った有資格者が実践する介護の定義に関する見解をみると,共 通点として援助対象者,援助目的,援助方法によって構成されていることがわかる.そし て,援助を受ける主体は要援助者となっている.

(1)非専門的介護

人は生まれ落ちた瞬間から死後に至るまで何らかの世話,第三者による支援を必要とし ている.出産であり授乳であり,看取りであり埋葬であり,広義の意味でのケアである.

これらは,これまで主に家族・親族によって担われてきた.アン・ペイドワーク,いわゆ る, 「血のつながり」である.しかし,このような家族制度も,近代化の流れの中で大きく 変容し,わが国においては「家」制度の弱体化と相まって,家族介護では対応困難なケー スが増加してきた.家族介護者が介護福祉士等国家資格を有していたとしても,提供され るサービスが業として行われていないとき,提供されるサービスは非専門家の行う介護と して捉えることにする.なぜなら,このサービスはあくまでもボランティア的サービスで あり,必要即応で持続可能なサービスとはなり得ない.

そこで, 「介護の社会化」が叫ばれることになる. 「介護の社会化」に関しては第 2 章第

2 節で詳述する.

(13)

13

(2)専門的介護

名称独占の介護の世界において,業務として行われるケアに対して専門家(第三者)の 行う援助(ここでは,必ずしも有資格者としての介護福祉士を指しているわけではない)

と呼ぶことにする.

家族介護ではなく,歴史的に明確に業務としての専門家(第三者)の行った世話(ケア)

は,悲田院であろう.

聖徳太子が四天王寺を建てられるにあたって, 「四箇院の制」をとられたことが『四 天王寺縁起』に示されている.四箇院とは,敬田院(きょうでんいん),施薬院(せ やくいん),療病院(りょうびょういん),悲田院(ひでんいん)の

4 つのことで,

敬田院は寺院そのものであり,施薬院と療病院は薬局・病院にあたり,悲田院は病 者や身寄りのない老人などのための社会福祉施設にあたる(四天王寺) .

私的ケアから介護の社会化がなされるためには,業務として行われる専門家の援助が必 須である.介護が名称として規定されたのは,以下のような法制度の下である.

身体障害者福祉法(1949 年)第 9 条に, 「この法律に定める身体障害者又はその介護を 行う者に対する援護は,<後略>」と規定されている.

老 人 福 祉 法 (1963 年)第 11 条 第 2 項 に ,「 65 歳以上の者であつて,身体上又は精 神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ,居宅においてこれを受けるこ とが困難なものが,<中略>,その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所 させ,又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託する」と 規 定 さ れ て い る .

ま た , 老 人 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 運 営 要 領 ( 1982 年 ) に お い て は ,「 老 衰 , 心 身 の 障 害 , 傷 病 等 の 理 由 に よ り 臥 床 し て い る な ど 日 常 生 活 を 営 む の に 支 障 が あ る お お む ね 65 歳 以 上 の 者 の い る 家 庭 で あ つ て ,家 族 が 老 人 の 介 護 を 行 え な い よ う な 状 況 に あ る 場 合 」 と 明 記 さ れ て い る .

上 記 の 規 定 か ら , 老 人 福 祉 法 に お い て は , 心 身 上 の ハ ン デ ィ キ ャ ッ プ に 注 目

し な が ら も , 実 質 的 に は 「 居宅において常時介護を受けることが困難なもの」と制限

がされている.つまり,特別養護老人ホームは,家族の代替および補完的機能を担わされ

ていることになる.また,老 人 家 庭 奉 仕 員 派 遣 事 業 に お い て も ,家 族 の 事 情 が 要 件

(14)

14

と な っ て い た こ と か ら , 同 様 に 家族の代替および補完的役割を果たしてきたといえる

(萩原 2000:60-61).

1987 年に成立した, 「社会福祉士及び介護福祉士法」第 2 条第 2 項には「この法律にお

いて『介護福祉士』とは,第 42 条第 1 項の登録を受け,介護福祉士の名称を用いて,専門 的知識及び技術をもって,身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに 支障がある者につき入浴,排せつ,食事その他の介護を行い,並びにその者及びその介護 者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という.)を業とするものをいう」

と規定された.いわゆる国家資格としての介護福祉士が誕生し,業務として行われていた 専門家の中の専門家(プロ)集団が誕生することになる.

さらに,2007 年の「社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律

5

」において,

下線部分(筆者加筆)が「心身の状況に応じた介護」に変更された.この定義から見えて きた専門性とは,専門的知識及び技術があり,日常生活を営むのに支障があるものに対し て,その人の心身の状況に応じた介護が実践できることであり,その者及びその介護者に 対して介護に関する指導を行うことができることである(田中 2016:26) .

2016 年には心身の状況に応じた介護以下に, (喀痰 吸引その他のその者が日常生活を営 むのに必要な行為であつて,医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるもの に限る.以下「喀痰吸引等」という. )を含む. )を行い,並びにその者及びその介護者に 対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という. )を追加した改正が行われ,

専門家(プロ)集団の資質向上に向けての対策,いわゆる,スペシャリスト養成が取られ ることになる.

家族のみで行われる介護と業務として提供される介護,さらには,専門家(プロ)集団 の実践する介護については, 「第3章 家族介護者の現状と評価・価値」で詳述する.

2 家族介護

家族介護はこれまで在宅介護と同義だった.なぜなら,同居家族の存在抜きには在宅介 護が可能でなかったからであ.しかし,今日では独居高齢者世帯に,別居家族が通ってく る通勤介護もあれば,介護を完全に外注する独居世帯もある.同居家族がいるかいないか

5

社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律では, 「定義規定の見直し」以外にも「義

務規定の見直し」が行われ, 「個人の尊厳の保持」, 「自立支援」 , 「認知症等の心身の状況に応じ

た介護」 ,「他のサービス関係者との連携」,「資格取得後の自己研鑽」等が新たに規定された.

(15)

15

は,在宅介護の必要条件ではなくなった.また,施設介護は「主たる介護者」が事業者に 移転しているために,これを「家族介護」とは呼ばない.この場合でも,意思決定のキー パーソンとしての「主たる家族介護者」は決まるが,彼らは介護をしておらず,また外注 先の介護は有償である(上野 2013) .

上野(2013)は家族介護を次のように定義している. 「第一に『主たる介護者』が要介護 者と親族関係にある個人であること,第二にその介護が無償であること,第三に在宅介護 であること.以上の定義は有償の在宅介護の利用を妨げない. 」

前述したように,家族とは婚姻によって成立した夫婦を中核にして,その近親の血縁者 が住居と家計をともにし,人格的結合と感情的融合のもとに生活している小集団であり,

経済・保護・護憲・愛情など家族成員のニーズを満たす対内的機能と,家族が属している 社会のニーズを満たす対外的機能の 2 つの機能を持っていると言われている.

それゆえに, 「保育や介護にかかわる福祉政策(以下,ケア政策)も,家族の自助原則を 前提に,ケアサービスは主として,家族からケアが受けられない場合を対象に展開されて きた」と下夷(2015)が論じるように,家族ケアを排除した中での公的介入としての「介 護の社会化」は,家族機能の弱体化につながりかねないのである.さらに,家族の持つ宿 命的な機能を否定し, 「介護の社会化」を達成しようとしても,家族による介護がすべて消 失することはないという事である.誤解されないように強調しておかなければならないの は,ここでいう家族介護は, 「儒教思想を背景<中略>として奨励されていた<中略>『日 本型福祉社会論』に見られる『福祉の含み資産』としての家族介護を重視するという文脈 においてのそれではないということである」 (阿部 2003) .

だからこそ,ケアサービスと家族ケアを政策的にどのように調整するかという制度的な 支援が求められるのである.適切な支援が準備されなければ,特定の家族メンバーが介護 を担い続けることになり, 家族介護者がクライシスに陥ることになる. 英国では 1997 年に,

「介護者に新たな支援を行う.介護者は,要介護者をケアするが,我々は,介護者をケア する必要がある」として,介護者自身をターゲットとする政策を提言している.

そのために,介護者の生活の質の向上を目指して,次の 7 点を挙げて保証することが目

差されている.

(16)

16

【介護者の生活の質の保証】

①介護者自身の生活を持つ自由

②自分のための時間

③希望により仕事を継続する機会

④生活及び必要とする援助の管理

⑤より良き健康状態及び福祉

⑥コミュニティへの統合

⑦心の平穏

これらの提言を実施するための政策の骨子(3 部門,9 項目)は以下のようになる.

1)社会福祉分野の援助サービス

①介護者のニーズに焦点を当てた地方自治体のサービスに関する新たな法律の制定 *介護者への直接給付の支給,又はクレジットの導入などの規定.→介護者にサ

ービスの選択権を与える.

②介護者が介護を中断し,休暇を取りやすくするための特別補助金の交付

*地方自治体へ,特別補助金(3 年に総額 1 億 4000 万ポンド(イングランド) ) の交付.

③介護センターを含む近隣サービスのための支援の拡大 2)雇用政策

④勤労者である介護者が,家族の緊急時に対応するための休暇の導入

⑤パートタイム,フレックスタイム等,介護者のための柔軟な雇用政策

⑥介護者の再就労を援助する政策の検討 3)社会保障給付他

⑦障害者介護手当を含め介護者のための経済政策が,最もそのニーズに見合うよう 検討を継続する

⑧長期介護者に,第 2 年金の受給資格を付与することを検討する

⑨障害者及びその介護者に対し地方税を軽減する.これらの提言は, 「介護者及び障

害児法(2000 年) 」等に具現化されるとしている(岩間 2003) .

(17)

17

政策レベルで「家族支援」を強調することは,意図すると否とにかかわらず,ケア機能 が本来的には家族の役割であることを再確認させる効果をもっていることに留意しなけれ ばならない.つまり,家族支援のための特別な施策を考えることではなく,むしろ個人単 位の施策の充実をはかることが,要介護者やその家族の多様な生活事情に応じた選択肢を 増やす最も効果的な方法である(藤崎 2000b) .福祉を標榜するとき,高福祉高負担を選 択するのか,中福祉中負担を選択するのかで,家族支援に対する施策も変化することにな る.

3 在宅介護と施設介護

ここでいう在宅介護は,要介護者を介護する場所のことである.介護サービスを受ける 場が在宅という意味であり,サ-ビス提供者は家族とは限らない.いわゆる, 「施設サービ スから在宅サービスへ」というスローガンでいうところの要介護者のサービス利用場所で ある.措置から契約へと制度変更の途上で,在宅サービスの重要性が叫ばれ,在宅福祉の 三本柱として, 「通所介護(デイサービス) 」 「訪問介護(ホームヘルプサービス) 」 「短期入 所生活介護(ショートステイ) 」の充実が推し進められてきた.

しかし,後述するように介護保険制度下,在宅サービスは居宅サービスへと変貌し,在 宅的位置づけの中に,グループホームや特定施設入居者生活介護(ケアハウス,介護対応 型有料老人ホーム等)などの入所系サービスが組み込まれることになった.そして,つい には在宅サービスの中の 2 本の柱は介護保険制度から取り除かれようとしているのである.

在宅介護同様に,要介護者を介護する場という意味での施設である.入所系サービスと しては居宅サービスの位置付けにあるグループホーム・特定施設入居者生活介護(ケアハ ウス,介護対応型有料老人ホーム等)などと変わりはない.人員基準,独自サービス提供 のみという程度の差異があるだけである.介護保険制度が持続可能になるためには,仕組 を変える必要があるとして,田中(2017)は,次のように論じている.

「現在の介護保険制度において,都道府県知事が指定・監督を行う介護給付サービスは,

大きく分けて施設サービスと居宅サービスに分けられている」が「サービスの類型は施設

サービスと在宅サービスに分け,施設サービスを施設サービスと入所系居宅サービスに分

けることで,制度の持続化が可能になるのである」 (表 1) .

(18)

18

表 1 介護給付を行うサービスにおける新たなサービス区分

出典:田中(2017)一部改変

施設サービス 都道府県知事が指定・監

督を行う

市町村長が指定・監督を 行う

都道府県知事が指定・監 督を行う

市町村長が指定・監督を 行う

都道府県知事が指定・監 督を行う

訪問サービス 地域密着型サービス 施設サービス

・訪問介護 ・定期巡回・随時対応型 特定施設入居者生活 ・認知症対応型共同生 ・介護老人福祉施設(*)

・訪問入浴介護  訪問介護看護 介護(*)  活介護(*) ・介護老人保健施設(*)

・訪問看護 ・夜間対応型訪問介護 ・地域密着型特定施設 ・介護療養型医療施設(*)

・訪問リハビリテーション ・地域密着型通所介護  入居者生活介護(*) ・介護医療院

・居宅療養管理指導 ・認知症対応型通所介護 ・地域密着型介護老人

通所サービス ・小規模多機能型居宅  福祉施設入居者生活

・通所介護  介護(*)  介護(*)

・通所リハビリテーション ・看護小規模多機能型 短期入所サービス  居宅介護(*)

・短期入所生活介護

・短期入所療養介護

特定福祉用具販売 有料老人ホーム(**)

福祉用具貸与

注:(*)は、定額給付、その他は区分支給限度額

注:(**)は、市町村長の認可とし、上限を設けた区分支給限度額

居宅サービス

在宅サービス 施設サービス

(19)

19 第2章 社会保障と介護の社会化

第1節 社会保障と社会保険 1 社会保障の機能と体系

日本国憲法第 25 条において,生存権,国の保障義務が規定された. 「すべて国民は,健 康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」 「国は,すべての生活部面について,社 会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とするものであ る.

憲法第 25 条を受け,1950 年の社会保障審議会の勧告では, 「社会保障制度とは,疾病,

負傷,分娩,廃疾,死亡,老齢,失業,多子その他困窮の原因に対し,保険的方法又は直 接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によ って最低限度の生活を保障するとともに,<後略>」と定義している.したがって,社会 保障は個人の責めに帰せられないリスクやニーズが発生したときに,国または地方公共団 体が,所得保障,医療保障,社会福祉サービスなどの給付を行う制度である.

このような生活保障の責任は国家にある.国家はこれに対する総合的企画を立て,これ を政府および公共団体を通じて民主的効率的に実施しなければならない.他方,国民もま たこれに応じ,社会連帯の精神に立って,それぞれの能力に応じてこの制度の維持と運用 に必要な社会的義務を果たさなければならないとする考え方を基本としている.その機能 は,主として,①生活安定・向上機能,②所得再配分機能,③経済安定機能の 3 つがあげ られる.

2 社会保険の制度化

社会保障には社会保険,社会福祉,公的扶助,公衆衛生・医療,そして老人保健などが 並列的に含まれる.一般に社会保障や社会福祉の歴史的展開の中で,貧困に対する対応方 策は救貧法に代表される救貧と相互扶助,ツンフト・ギルドに起源をもつ相互扶助や金庫 制度などによる防貧に類別されるが,社会保険はまさに防貧への対応であり,社会福祉は 救貧への対応となる(栃本 2007) .

社会保険は,疾病,老齢,失業,介護等,一定類型の保険事故に対して,保険料の拠出 という保険方式を用いて,画一的給付を行う仕組みである.世界で最初の労働者保険は,

1883 年にドイツでビスマルクによって制定された疾病保険法である.しかし,この保険で

は受給者は労働者本人に限られており,家族は対象外であった. 1922 年に制定, 1927 年に

(20)

20

実施されたわが国の健康保険法も,当時は労働者本人のみが対象であり, 1942 年になって ようやく家族に拡大された.

通常,社会保険は保険事故の発生をもって給付が行われるが,近年は,保険財政や被保 険者のより適切な生活の保持の観点から,予防サービスや支援が重視されつつある.保険 事故の発生後も,リハビリテーション等により状態の改善を図ることも求められ,その際 にも社会福祉的観点からの支援が必要となる(栃本 2007).

3 社会保険の類型

わが国の介護保険制度は, 2000 年にスタートした社会保険制度である.利用者が「権利」

としてサービスを利用する意識の定着を目指し,全額税負担とするのではなく,半分を保 険料の徴収とする社会保険という形にした(涌井 2018) .介護保険制度を含め,社会保険 制度の概要をみると,表 2 のようになる.

表 2 社会保険制度の概要

第2節 介護保険制度と日本型福祉社会 1 介護保険制度の政策理念

2000 年に発足した介護保険制度は,市町村に住所を有する 65 歳以上の第 1 号被保険者

と,市町村に住所を有し,医療保険に加入している 40 歳以上 65 歳未満の第 2 号被保険者 の(特定疾病を原因とする者に限られる)保険事故を対象に,サービス利用が認められて いる制度である.

・20歳~60歳までの全ての居住者が国民年金に加入

・原則、65歳から老齢給付を支給

・障害給付、遺族給付についても支給

・すべての居住者が加入

・現物給付が原則。一部現金給付あり

・原則、全ての被用者が加入

・失業した場合、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付等を給付

・給付日数は、年齢、被保険者期間、倒産・解雇等の離職理由を考慮

・原則、労働者を使用するすべての事業が加入

・労働災害が発生した場合に、労働者等に対して給付。

 (現物給付、現金給付)

・65歳以上で市町村に住所を有する者(第1号被保険者)

・40歳以上65歳未満で、市町村に住所を有し、医療保険加入者  (第2号被保険者)

介護保険 年金保険

医療保険

雇用保険

労災保険

(21)

21

政策としては,これまでの施設入所(病院入院)から「在宅での自立的な生活」を送る ことを意図して創設された.保険方式を導入することにより,介護サービスも医療保険に おける医療同様に権利性が明確になり,利用者が自ら医療機関を選択するように自ら介護 サービス提供者と契約を結んで対等な立場でサービスを利用できるようにするという狙い である(秋元 2007) .

2 福祉ミックスと日本型福祉社会

はじめて「福祉ミックス論」という政策論が行われたのは,1980 年代のヨーロッパであ る.政策にはポリシー(policy) ,すなわち,一般的に政府が行う施策であるという公式的 な定義と,生活上の一般的な方策や手段という意味もある.つまり,生活のなかで人びと が生活を「経営」する部分が政策的に存在する.また,生活について自らマネジメントを して,政策を自分たちの生活のなかで作っていくという意味での政策も存在する.つまり は,生活のミックス状況が現実に存在するということである.

近代化という変動が生じるにしたがって,生活の変化がどのように起こってくるのかと いう問題意識に応じて,生活モデルが「公式-非公式」軸, 「営利-非営利」軸,そして,

「公-私」軸が対応して出てきている.これらの軸の組み合わせによって構成されるモデ ルはミックス状況を記述しているモデルの典型例と考えられるために,そこに公私分担あ るいは公私ミックスに関する一つの基礎論のようなものが見られるのである(坂井 2001) .

わが国の「福祉ミックス論」(福祉の多元化)の背景は,上田征三・金政玉(2019)が 1990年代から2000年代にかけての「社会福祉基礎構造改革」のもとで,「サービス利用者 の意向の尊重とサービス提供者との対等性の確保」等を理念の柱とするところにあるとい うように,「サービス供給における政府部門,民間非営利部門,インフォーマル部門のウ ェイトをどのようなものにするか,あるいはそれらの部門の関係をどのようなものにする かという点に関する政策選択」に対して福祉ミックスという(平岡2007) .

後述するように,営利性を構造的に内包する民営化の促進を最大の柱としている「福祉 ミックス論」の枠組みにおいてもっとも欠落しているのは,「利用者本位のサービス提供」

を具体化する仕組みの不在である.サービスの質を客観的に評価できる合議体やサービス の苦情申し立てを含む権利擁護の仕組みの必要性はいわれているが,それを集約し法制化 する取り組みにまではいたっていない.

今後の課題としては,「福祉ミックス論」の枠組みにおいて「サービスの請求権」が確

(22)

22

保されることにより,緊縮財政に左右されることのない,真に利用者本位の「福祉の多元 化」を具体化する仕組みが構築されることにあると考える(上田征三・金政玉 2019).

介護問題への社会的な対応の在り方を, 「介護の社会化」を軸としてモデル(論)的に整 理すると, 「介護の社会化」には,①全公的介護保障型と,②これとは反対の極にある家族 介護型と,③その中間に位置する家族介護支援型の介護保障システムがスペクトル的に多 様な姿をもって位置づけられる.介護保険制度(公的介護保障システム)が家族介護型で ないことは少なくとも明らかである.では,全公的介護保障型か家族介護支援型のいずれ かであるのだろうか. 「介護の社会化」をどう理解するのかという点で,共通了解が存在す るのか否かについて,わが国では未だ曖昧なままにあるといわざるを得ない(阿部 2003) .

家族介護支援型のモデルを志向しようとする場合でも,どのような要介護状態の時,ど の程度の割合の家族介護を前提としている(家族介護を含めた自助努力に依存する)のか も,未だ残された重要な検討課題となっている.このように,介護保険制度の中心的な政 策理念となっている「介護の社会化」の理解をめぐって,共通了解(合意)が存在してい るわけでは決してないのである.

しかし,家族がその機能の一つとして持ち続けてはいるものの,他方では縮小化してき ている介護力を社会的に補強しなければならないとする「介護の社会化」という理念の中 に,家族介護を評価する何らかの政策・制度的メッセージが積極的に織り込まれることが 求められているのも事実であると阿部(2003)がいうように,家族介護の評価という点で は,日本型福祉社会について論じた上でなければ明確なメッセージを表明することは適わ ない.

3 日本型福祉社会と家族介護

「日本型福祉社会論」は,家族や地域社会,職場などを中心とする人間関係の絆に注目 して,日本独自の福祉社会を指向する必要性が強調されていた. 「 『日本型福祉社会論』に おいては,生活問題の解決主体として『家族か福祉か』の択一的状況が想定されており,

両者はトレードオフ関係にあるものとみなされている.そして,このような捉え方はとき として,福祉サービスの利用が『家族による自助の失敗』を意味すると解されるがゆえに,

強いスティグマをともなうものであった」(藤崎 2000) .

家族介護の意義という点で論じるときに注意しなければならないのは, 「日本型福祉社会

論」にみられる「福祉の含み資産」としての家族介護を重視するという文脈においての,

(23)

23

それではないということを再確認しておく必要がある(阿部 2003) .

介護は育児と同様な関わりをもつインフォーマルな支援の一つである.家族というミク ロな単位での関わりを根底においたうえで発生する援助内容である.この点に関して,畑

(2010)は次のように論じている. 「 『支援の論理』から家族介護者支援を志向していくこ とは,高齢者介護を『社会か家族か』といったトレードオフの関係の中でとらえて議論す るのではなく,基本的には社会によって介護が保障されており,その上で家族が自身の意 思によって,介護を担うのかどうかを選択できる社会の有り方を提示するものであると考 えられる. 」

「夜泣き・授乳・育児」に関し個別的対応がなされるように,高齢者介護においても西 洋・北欧の家族観であろうと,日本的・東洋的家族観であろうと,個別的対応という視点 にかわりはない.関わり方の濃淡に関して,国民性や個人的特性によって,差異が生じる のである.

社会保険の枠組みの中で捉えるべき家族介護の本質は,育児であろうと高齢者介護であ ろうと,援助のすべてを第三者に委ねるものでもなく,すべてを当事者(保護者・親族・

家族・夫婦等)のみで関わるものでもない.必要に応じて第三者の援助を求めながら,従 前に近い家族の生活を維持することが可能になるという視点での関わりが大切である.介 護の社会化とは,家族介護のすべてを社会が担うという事ではない.百人百様のインフォ ーマルケアに対して,家族介護者が生活の破綻をきたさないで過せるような,フォーマル 支援の多様性に対して名づけられるものでなければならない.つまり,家族に介護を必要 とする者等が出現した時,家族介護者にとって従前の生活様式(ライフスタイル)の継続 が可能な範囲で,介護に関わることが可能となる多様な介護サービス(現金給付も含む)

の展開を模索することにおいて,日本型福祉社会は成立するのである.

第3節 介護の社会化論と家族介護者支援

介護の社会化については, 介護保険制度が始まる前後から多くの論議が提案されている.

1 文献にみる「介護の社会化」

牧里(1992)は, 「要介護者の残存自立能力を開発し,自己実現を可能とするために,か

つ要介護者家族の介護力を高めるために,その介護を家族にのみ過重に依存するのではな

く,家族外体系の社会資源を積極的に活用しながら,家族と社会の間での共同的介護もし

くは協働的介護が行われるプロセスおよび取り組みをいう.そのプロセスは,私事的にお

(24)

24

こなわれる介護から,地域社会で取り組まれる共同的介護へ,さらに制度としてシステム 化される社会的介護に発展していくものと仮定される.また,その側面レベルは,介護意 識の社会化,介護行動の社会化,介護環境の社会化に区分し得るが,これらの各レベルの 社会化が統合的に達成されて初めて完成する」と暫定的に定義している.

高齢者介護・自立支援システム研究会(1994)では,介護の必要な高齢者が,1994 年の 約 200 万人から 2025 には 520 万に増加すると予測される中で, 「普遍的なリスクである介 護問題を社会的に解決していくためには,個人の自立と尊厳を基本にしながら,社会全体 で介護リスクを支え合うという『リスクの共同化』の視点が必要である」と論じている.

また,中野(1995)は,高齢者介護の社会化の必要性について「国民すべてに高齢者介護 問題が確実に起こりうることを前提に,高齢者介護の社会化の方向を進めようとするもの である」として, 「高齢者介護の社会化は,介護を必要とするものの側からは要介護者の生 活の質(QOL)を高め,介護者の側からは過重な負担を減らし,かつ,介護の質を高める(介 護の生産性を高める)ことを目指すもので」, 「そのためには,高齢者介護を社会全体の問 題としてとらえるという,国民的なコンセンサスの形成が不可欠である」としている.こ れらの見解から明確に「介護の社会化」という文言は出てこないが, 「介護の社会化」に関 する概念の萌芽が見て取れる.

笹谷(2005)は, 「介護の『社会化』は大きく分けて 2 つの道筋がある.第 1 は,家族介 護者の介護労働が家族以外の社会的労働へ転換する道筋であり,第 2 は,家族介護者のア ンペイド・ワークの社会的評価の道筋である」としながら, 「介護の『社会化』とは,家族 の側から見れば,従来,家族介護者が家庭内で行ってきたアンペイドな介護労働の家族外 の専門的領域への移行である」と論じている.

三富(2011)は, 「介護の社会化論は,介護者のいかにも重い負担から解き明かし,負担 の軽減のためには長らく要介護者の家族や友人あるいは隣人が担い続けてきた日常生活上 の援助を社会サービスによって軽減すること」と主張している.しかし,問題は介護者を 直接の対象にするサービスへの言及であり,いかなるサービスが必要であると理解するか であるとしている.

中野(2011)は, 「介護の社会化」の先行文献を研究する中で, 「これらの研究論文,研 究会報告等に共通するものとしては, 『家族介護の限界を認識』し, 『社会で介護を支える』

という考え方がある. しかし, 社会で支えるというときの私的介護の位置付けについては,

必ずしも共通化,明確化されたものはない」として, 「このような不確実なところで,介護

(25)

25

負担の多くを担ってきた女性たちは,介護保険制度による『社会化』によって家族介護の 負担は軽減されるものと期待し,進まない実態に苛立ちを感じている」と述べながら,在 宅介護の担い手の家族形態が多様化している中で「介護の社会化は,その時代の社会ニー ズに応じて,その意味合いと実質的な内容を変えながら今後も発展していくであろう」と 論じている.

石井(岡) (2012)は, 「『介護の社会化論』の研究」の中で,介護の社会化論に至るまで の流れを紐解き,その後に「介護の社会化」に関する論文がどのように提示されてきたか を詳細に分析した後,次のように論じている.

必要なサービスや制度の提起においては三富氏に首肯

6

することができる.しかし,

介護者支援の見地から検証しているとはいえ,その対象規定において,要介護者と家 族介護支援者だけでは,介護の社会化は完遂しない.家族以外の担い手,とくに介護 労働者も対象規定に加え,必要なサービスや制度を整備して支援する必要があると考 える.具体的には,処遇改善と社会的評価の向上,労働環境の整備,相談援助(研修,

カウンセリング,ネットワ-キング等)といった,経済的,肉体的,精神的支援であ る.要介護者,家族介護者,介護労働者各々に必要なサービスや制度を網羅した上で,

優先順位をつけて整備していくことが求められるのである.

「介護の社会化」が達成できるためには,石井(岡)のいうような様々なサービスや制 度等に論及しなければならないが,社会化の意味は他の論文に述べられている(本人も同 様に述べている)ように,大家族から核家族へ変化してきたなかで,家族形態の変化に伴 う家族介護力の低下に対する補填を意図しているのにかわりはない.家族介護力の補填を 可能にするために求められるのが「施設の社会化」であろう.

2 施設の社会化

「施設の社会化」が公式に使用されたのは, 1949 年の全国社会事業大会, 1951 年の全国 社会福祉事業大会, 1953 年の全国社会福祉事業大会であった. 1971 年を初年度とする「社

6

三富紀敬(2011) 「介護の社会化論と介護の歴史認識再考」『立命館経済学』第

59

巻第

6

号,

986-996.

表 37  在宅介護を継続するために求められる家族介護者への支援の因子分析結果
図 13  家族介護の継続促進要因と家族介護者への支援の現状と望ましい支援体系
図 14  ABCX モデル 出典:Hill,R.(1958)  この ABCX モデルは,同ーのストレッサー(A 要因)を経験した家族のすべてが同様の危機 状態に陥るわけではなく,家族がその問題に対処するために用いることのできる資源(B 要 因),および家族の事態にたいする認知や意味づけのあり方(C 要因)により,危機の程度(X 要因)も変わってくるという考えにもとづくものである(藤崎 1990) .

参照

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