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スモン患者の療養費用に関する検討

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Academic year: 2021

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(1)

A. 研究目的

近年、 スモン患者の高齢化が問題になっている。 ス モン本来の症状の上に様々な身体随伴症状が加わり、

重症化も進んできている1)。 このため、 老々介護や施 設入所を余儀なくされるスモン患者も増えてきている。

また、 障害福祉サービスの利用から介護保険サービス への移行に際し、 介護保険制度における介護費用応能 負担の問題も指摘されている2)。 スモン患者には、 国 の施策により、 医療費自己負担分の公費負担、 介護保 険法・障害者総合支援法に基づくサービスの利用が認 められている。 しかし、 施設入所や介護保険によるサー ビスの利用等に関わる費用は考慮されてない。 スモン 患者の福祉・介護サービス受給の重要性が増してきて

いる3)なか、 費用に関する実態も検討しておくべき課 題と考えられる。 そこで、 我々は、 スモン患者の療養 に関わる経済的負担を明らかにすることを目的として、

青森県在住のスモン患者における療養費用に関する調 査を試みた (図 1)。

B. 研究方法

平成 29 年度のスモン検診を受診した青森県在住の スモン患者あるいは家族に対して、 療養費用に関する 聞き取り調査を実施した。

(倫理面への配慮)

本研究は、 「ヘルシンキ宣言」 および 「人を対象と する医学系研究に関する倫理指針」 に従って、 実施さ

― 210 ―

スモン患者の療養費用に関する検討

田 博仁 (国立病院機構青森病院神経内科) 大平 香織 (国立病院機構青森病院地域医療連携室)

研究要旨

スモン患者には、 医療費自己負担分の公費負担、 介護保険法・障害者総合支援法に基づく サービスの利用が認められている。 しかし、 施設入所や介護保険によるサービスの利用等に 関わる費用は考慮されてない。 我々は、 スモン患者の療養に関わる経済的負担を明らかにす ることを目的として、 青森県在住のスモン患者における療養費用に関する調査を試みた。 平 成 29 年度のスモン検診を受けた青森県在住のスモン患者は 6 例であり、 4 例が施設入所中、

1 例が福祉サービス等を利用しながらアパートで独居生活、 1 例が自宅で配偶者と同居生活 をしていた。 長期入所中の 3 例における介護保険自己負担額を含んだ月々の施設入所に関わ る費用は平均 92,734 円、 ショートスティ利用中の 1 例の介護保険自己負担額を含む費用は 30,806 円だった。 アパートで独居している例では、 障害年金・特別障害者手当・スモン給付 金等から捻出している月々の生活に関わる費用とサービスの自己負担額が平均 160,000 円程 度であった。 配偶者と同居している例は、 介護保険によるサービスを利用しておらず、 福祉 サービスに関わる費用負担はなかった。 介護保険によるサービス利用負担や施設入所に関わ る費用は、 誰にでも生じ得る経済的問題であるが、 スモン患者では、 薬害の結果として生じ た障害が根本にあり、 高齢化や身体随伴症状の重症化に伴い、 福祉サービスや施設入所によ る介護費用を負担せざるを得なくなった場合が少なくない。 薬害スモンの風化が懸念される 今日、 凄惨な病状のみならず、 経済的負担も抱えなければならないスモン患者の現状を考慮 する必要がある。

(2)

れる。 スモン検診並びに聞き取り調査では、 データ解 析と研究発表に関する同意が得られており、 患者個人 が特定される形で公表されることはない。

C. 研究結果

平成 29 年度に我々が検診を実施できた青森県在住 のスモン患者は 6 例であった。 4 例が施設入所中であ り、 内訳は、 地域密着型特別養護老人ホームおよび介 護老人保健施設長期入所中が 3 例、 ショートスティ利 用期間延長による短期入所中が 1 例だった。 1 例は福 祉サービス等を利用してアパートで独居生活、 1 例が 自宅で配偶者と同居生活をしていた (図 2)。

長期入所者 3 例における介護保険自己負担額を含ん だ月々の施設入所に関わる費用は、 各々、 症例 A が 102,301 円 (入 居 費 用 食 事 込 み ; 85,609 円 、 介 護 保 険 自己負担額上限:16,692 円)、 症例 B が 86,618 円 (居 住費;39,300 円、 食費;19,500 円、 介護保険利用者負 担 額 ; 27,818 円 ) 、 症 例 C が 89,284 円 ( 居 住 費 ; 39,300 円、 食費;19,500 円、 介護保険利用者負担額;

30,484 円) であり、 平均 92,734 円であった。 介護老人 保健施設入所例の症例 C では、 さらにこの他に、 日 用 品 費 10,500 円 と ク リ ー ニ ン グ 代 10,000 円 が 必 要 と されていた。 ショートスティ利用例における費用は、

介護保険自己負担額上限の 30,806 円であった。

アパートで独居している 1 例は、 障害福祉サービス の居宅介護を毎日利用しており、 障害年金・特別障害 者手当・スモン給付金に自己負担額を加えて捻出して いる月々の生活に関わる費用とサービスの自己負担額 は平均 160,000 円程度だった。 残りの配偶者と同居し ている 1 例は、 介護保険によるサービスを利用してお らず、 福祉サービスに関わる費用負担はなかった。

D. 考察

青森県では、 スモン検診受診例 6 例中、 三分の二に 相 当 す る 4 例 が 施 設 を 利 用 し て い た 。 2008 年 に は 施 設入所患者はなく在宅療養患者が 10 例だったので、

この 10 年の間に、 急激に在宅療養患者が減り、 施設 入所患者が増えたことになる。 施設入所者の 4 例は、

何れも高齢ではあるものの、 新聞の見出しが読める程 度の視力は保たれ、 経口摂取可能だった。 1 例が独歩 可能、 3 例が独歩困難であり、 衣類の着脱や排泄行為 に関しては、 ほぼ自力で遂行可能なレベルから全介助 を要するレベルまでばらついていた。 全例に共通して いる随伴症状は認知症であった。 何れの例も、 コミュ ニケーションが取れないほどの高次機能障害は認めら れなかったが、 日常生活に支障を生じる程度の認知機 能障害がみられていた。 認知機能障害が施設入所に関 わる重要な要素の一つであると推測される。 入所前の 生活に関しては、 1 例は独居だったものの、 3 例は家 族と同居していた。 どの例も、 10 年前には独歩可能 で身の回りのことが自分でできていたのに、 経年的な 変化として身体症状や認知症状が悪化して、 日常生活 に支障を生じるようになり、 やむを得ぬ選択として施 設入所を判断したものと思われた。 長期入所例の介護 保険自己負担額を含んだ月々の施設入所に関わる費用 は 10 万円弱にものぼり、 各例における経済的背景か らすると決して軽い負担ではないものと考えられた。

アパートで独居していた例は、 全盲で立位不能・独 歩不能、 日常生活動作がほぼ全介助を要する状態であっ

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図 1

図 2

(3)

たが、 障害福祉サービスの居宅介護利用により、 毎日 12 時 間 ヘ ル パ ー に つ い て も ら え る 生 活 を し て い る (青森市では 1 日のヘルパーサービス利用時間に制限 があり、 ヘルパー不在の時間には緊急用のコールを使 用することになっている。)。 市により認定された利用 可能な時間以上のヘルパーサービスは自己負担で対応 しているため、 経済的にはかなり厳しい状況が続いて いるという。

介護保険によるサービス利用負担や施設入所に関わ る費用は、 スモンの有無に拘らず、 誰にでも生じ得る 経済的な問題であり、 今回の検討で明らかになった施 設入所スモン患者の療養費用は、 青森県における施設 利用時の一般的な負担額と同様である。 しかしながら、

スモン患者では、 薬害の結果として生じた障害が根本 にあって、 高齢化や症状の重症化に伴い、 福祉サービ スや施設入所による介護費用を負担せざるを得なくなっ た場合が少なくない。 薬害スモンの風化が懸念される 今日、 凄惨な病状のみならず、 経済的負担も抱えなけ ればならないスモン患者の現状に目を向ける必要があ るものと考えられる。

E. 結論

スモン患者およびその家族は、 療養生活上、 やむを 得ず、 福祉サービスや施設入所等、 少なからぬ介護費 用を負担している場合がある。 スモンが薬害である以 上、 福祉・介護サービスの利用に際して費用を自己負 担せざるを得ないという現実は、 心に留めておくべき 問題であろう。

G. 研究発表

1 . 論文発表 未定

2 . 学会発表 第 71 回国立病院総合医学会発表

H. 知的財産権の出願・登録状況 特記すべきことなし

I. 文献

1 ) 小 長 谷 正 明 他 : 平 成 28 年 度 検 診 か ら み た ス モ ン患者の現況. 厚生労働科学研究費補助金 (難治性 疾患克服研究事業) スモンに関する調査研究班 平

成 28 年度総括・分担研究報告書. p 27-31, 2017.

2 ) 藤木直人 他:スモン総合対策の介護の役割−加 齢に伴う更なる重症化・低所得者の介護費用応能負 担の重要性を考える−. 厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業) スモンに関する調査研 究 班 平 成 28 年 度 総 括 ・ 分 担 研 究 報 告 書 . p 157- 162, 2017.

3 ) 田中千枝子, 鈴木由美子:スモン患者の福祉・介 護の受給状況−今年度スモン患者検診データから−.

生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業) スモンに関する調査研究班 平成 28 年度総括・分 担研究報告書. p 163-168, 2017.

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参照

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