U本小児循環器学会雑誌 12巻3号 424〜427頁(1996年)
身体活動量と心室性不整脈の発生の検討 携帯型身体活動量測定計による評価法を用いて
(平成8年1月24日受付)
(平成8年3月11日受理)
津田 尚也 安井 清
横浜市立大学医学部小児科学教室
瀧聞 浄宏 岩本 真理 柴田 利満 新村 一郎
key words:心室性不整脈,身体活動量,携帯型身体活動量測定計
山岡 貢二
要 旨
携帯型身体活動量測定計を用いて身体活動量を計測し,ホルター心電図と同時記録することにより,
心室性期外収縮(PVC)の発生と身体活動量との関連を検討した.
対象は基礎心疾患がなくPVCを有する11例(男児4例,女児7例,平均年齢13.5±3.5)で,24時間 の連続ホルター心電図記録を行い,1時間あたりの心拍数とPVC数を計測した.ホルター心電図と同時 記録した身体活動量はGMS社製AC200を用い,患児の腰部に装着した.以上から得られた1時間ごと
の心拍数,PVC数,活動量から直線回帰分析を行った.結果は全例において身体活動量は心拍数と有意な正相関を呈した.PVCの出現頻度と身体活動量との 関係では,正相関群,負相関群,一定の関係がない群の3群に分類された.
以上からAC−200による身体活動量の計測は,不整脈が運動に関連して出現したか否かの客観的評価 に非常に有用であった.
はじめに
心室性不整脈の検討として現在行われている試験の ほとんどは,ホルター心電図や急速運動負荷試験,多 段階運動負荷試験 である.このような運動検査の場 合において運動を表す定量的な指標としては,酸素摂 取量(VO,)あるいはMETSがある.ホルター心電図
においては行動日誌および心拍数が目安になるにすぎ ない.しかし,日常生活においての身体活動と循環器 指標との関連をみるためには,身体活動を定量的に評 価するとともに,経時的な変動も同時にみる必要があ
る.そこで我々は携帯型身体活動量測定計を用いて,
日常生活の身体活動量をホルター心電図と同時記録す ることにより,心室性不整脈の発生と身体活動量との 関係を検討した.
別刷請求先二(〒078)北海道旭川市西神楽4線5号 旭川医科大学小児科学教室 津田 尚也
対象と方法
対象は当科外来通院患者で明らかな基礎心疾患が認 められず,心室性不整脈を有する11例(男児4例,女 児7例,平均年齢13.5±3.5歳)である.方法は患児全 員に24時間の連続ホルター心電図記録を行い,1時間 あたりの心拍数と心室性期外収縮(PVC)数を計測し た.誘導はCh−1にNASA, Ch−2にCC5誘導を用い,解 析をするにあたりPVCのカウントが困難なものは解
析者の目でPVC数を算出した.身体活動量はGMS
社製AC−200(図1)を用いた.AC200は動きを感知するための加速度センサーを 内蔵しており,上下,左右,前後方向の体動を重力(G)
として検出し,0.1秒以上持続する0.05G以上の加速度 をカウントするように設定した.また,本機は患児の 腰部に装着した.
以上より得られた1時間ごとの心拍数,PVC数,活 動量について直線回帰分析を行った.またAC200に
よって得られた身体活動量と行動日誌との比較検討を
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日ノjxtii i、:↓ミ 12 (3), 1996
撫
Total Beats
〔beats/hr[
8000
7000
6000
5000
4000
i
_ rt 、
i
トニ(Il ♪>C−200 (57メt 84.5rnln)
o
蕊
y=0.18x+4652.5 R=0.80 p=0.003
0 5000 10000 15000 20000 25000
Physical ActiVity{counts/hr)
図2 身体活動Iltと心拍数の関係(case lO)例)
行った.
結 果
全例において身体活動呈と心拍数との間に良好な正 の相関関係を認めた(図2).(11例の相関係数の平均 値はR=0.80±O.13)
また,身体活動・IIとPVC数の直線回帰分析では,
1)正相関する群(男児2例,女児3例)(図3)(5 例の相関係数の平均値はR=0.69±0.1)
2)負相関する群(男児1例,女児1例)(図4)(2 例の相関係数の平均値はR=−0.70±0.13)
3)明らかな相関関係がない群(男児1例,女児3例)
(図5)(4例の相関係数の平均値はR=0.23±O.06)
とに分類された.
10歳男児例の身体活動量の測定結果を示した(図 6).歩行時,睡眠時など,行動日誌と活動度との相関 は良好であった.
考 察
不整脈の診療にホルター心電図が用いられるように
425 (35)
PVC
(beats/br)
3000 2500
2000
1500
1000
y=O.10x+1246.1 R=O.70
0 2000 4000 6000 8000 15000
Physical ActiVity(counts/hr)
図3 身体活動量とPVC数の関係(IE相関例)
PVC
↓beats/hr)
700
500
琴
声︒
oo 3
oo 1
y=−0.04x+552.5 R=−0,70 p=0,001
①200e 400060008000 15000
Physical ActiVity〔counts/hr)
図4 身体活動宣とPVC数の関係(負相関例)
PVC
(beats/hr)
2000
1500
1000
S
O8
o o o
y=0,01x+1323.5 R=O.3 p=0.1
︒∞︒♂
0 2000 4000 6000 8000 10000
Physical Activity(counts/hr)
図5 身体活動量とpVC数の関係 (明らかな相関がない例)
なって以来,心室性不整脈は24時間を通じて平均的に 出現するのではなく,その発生時刻または行動様式に
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426− (36) 日本小児循環器学会雑誌 第12巻 第3号
カウント数 600
300
一 1 食事 睡眠 歩行
1 ■
1 lll l■1■
17:45 23:45 5:45 11:45 16:45
図6 Physical Activity Trendgram
より,不整脈の出現頻度にかなりの変動があることが 知られてきた2)3).1日の中で不整脈の出現様式は,そ の発生原因とも密接に関わっていると思われれるが,
その解析方法は心拍数と不整脈との関係4),または行 動日誌に基づき,その時間帯の不整脈を解析すると いった方法である5)6).しかし,日誌による活動記録の 信頼度は患者個人の協力の有無に大きく左右される.
しかも年少児または高齢者では行動内容と時間を正確 に記録するのは困難である.また,従来は日常の様々 な行動内容を10数種類に分類し,それぞれの不整脈に ついて検討するといったような方法しか解析が行われ ず,活動度を定量的に解析することはできなかった.
そこで今回我々はAC−200を用い,一定時間に身体に 生じた加速度をカウントすることにより,活動度を定 量的に評価した.また,ホルター心電図と同時記録す ることにより,心室性不整脈の発生と身体活動量との 関係を検討した.
Gretlerら7}は健常者に対してAC−200とほぼ同様の 機械を用いて活動度と血圧変動に良好な相関関係が あったと報告しており,同時に活動度と口誌の間の相 関も良好であったことを示している.我々の検討にお いても図6で示したように,活動口誌に記載されてい る項目と活動量は良好な相関を認めた.また,心拍数 の変動と身体活動量,あるいは心室性不整脈発生と身 体活動量との関連を観察できた.その結果,身体活動 量は心拍数と良好な正の相関を示した.身体活動量と 不整脈の出現頻度との関係では,正の相関を示す不整 脈,負の相関を示す不整脈,全く身体活動量との関連 なく出現する不整脈とに分類された.この臨床的意義 の検討および運動負荷試験との関連など今後の課題で
ある.
以上より,AC200による身体活動性の検討は,活動 性を客観的にかつ定量的に評価でき,活動性の質的な 解析も可能であった.したがって不整脈疾患だけでな
く虚血性心疾患,例えば狭心症が労作に関連して発現 したか否かの客観的評価にも優れた手法として期待さ れる.さらには年少児などの心不全患者において,日 常生活活動(ADL)の客観的かつ定量的評価が可能と
なり,臨床経過の指標として有用である.
今回我々が用いたAC−200は活動度を客観的にかつ 定量的に評価し得,心室性不整脈が身体活動に関連し て発現したか否かの評価に非常に有用であった.
文 献
1)南沢 亨,永峰 博,新村一郎,斎木和夫,柴田利 満,牧 隆敏,真ド和宏,岩本真理,佐川浩一:若 年者におけるトレッドミル運動負荷試験.呼と循 1991;39:679−−682
2)渡辺雄一郎,石井博之,藤巻信也,井尻 裕,浅川 哲也,小森貞嘉,吉崎哲世,田村康二:心室期外収 縮の時間的発症頻度のリズム計測に基づく評価と その意義.心電図 1991;ll:268−.278
3)田村康二,駒場 明,佐久間昭,白井徹郎,高瀬凡 P,高田英臣,高橋正志,田中悦子,長澤 進,武 士仁彦,松崎志保,矢永尚士,渡辺雄一郎:ホルタ ー心電図装置による心室期外収縮の日差変動の評 価について.心電図 1989;9:385−403 4)中西 正,溝井由美,窪田小弓,三村 徹,西村真 人,木谷恵子,平林正己,大塚邦明,矢永尚士:不 整脈発生要因に関する臨床的研究.第4報.心室性 期外収縮と心拍数の関係.心電図 1986;6:553−
558
5)田辺晃久,兼本成武,友田春夫,笹本 浩:心室性 不整脈と睡眠,ホルター心電計による検討.心臓 1980;12:510−515
6)鈴木与志和,石坂恭一,小林 明,神田 正,林 秀 春,桝村義典,山崎 昇:心室性期外収縮の日内変 動と日差変動:長時間心電図記録と短時間心電図 記録の比較.心臓 1982;14:1359−1362 7)Gretler DD, Carlson GF, Molltallo AV, Murphy MB:Diurnal blood pressure variability and physical activity measured electronically and by diary. AlnJ Hypertens 1993;6:127 133
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平成8年5月1日 427 −(37)
The Relationship between the Incidence of Premature Ventricular Contraction and Physical Activity
−Using a Acceleration Sensor一
Naoya Tsuda1), Kiyohiro Takigiku2), Mari Iwamoto2), Kouj i Yamaoka2),
Kiyoshi Yasui2), Toshimitsu Shibata2)and Ichiro Ni−mura2)
i)Department of Pediatrics、 Asahikawa Medical College
2)Department of Pediatrics, Yokohama City University School of Medicine
Using an acceleration sensor and 24 hour ambulatory electrocardiograms, we studied the relationship between premature ventricular contraction and physical activity.
24hour ambulatory electrocardiograms were recorded in ll subjects. Simultaneously,
physical activities were recorded as the number of count which was measured by an AC−200 aCceleration SenSOr.
The AC−200 unit is designed to count instances of O.05 G or greater acceleration persisting for O.01 sec. We analyzed the relationship between the physical activity expressed as the count number and the heart rate or the number of premature ventricular contractions. We obtained a close correlation between the number of extrasystoles and physical activities per one hour. Three patterns were recognized in the relationships, which were a positive linear correlation, a negative linera correlation, and no correlation.
The evaluation of physical activities using AC−200 is not only objective and quantitative but also suitable to the qualitative analysis of the behavior of patients.