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西村由実子

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Academic year: 2021

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(1)

平成

27-29

年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)

薬物乱用・依存者、性感染症患者の

HIV

感染状況及び内外の

HIV

流行等の動向に関する研究

海外及び国内の

HIV/性感染症の流行とリスク情報の収集分析に関する研究(1)

先進諸国の

HIV/AIDS

及び性感染症の動向に関する研究

西村由実子1、木原雅子2、木原正博2

1関西看護医療大学看護学部

2京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野

研究要旨

目的 先進諸国の

HIV/AIDS

及び性感染症の動向に関する既存の情報を収集・分析し、わが国のエイズ・

性感染症対策の効果的・効率的な発展に資する。

方法 先進国の

HIV/AIDS

疫学情報データベースおよび性感染症疫学情報データベースに

2016

年分データ を追加し流行の動向を把握する。

HIV/AIDS

については、米国、カナダ、オーストラリア、英国、フ ランス、ドイツの

6

カ国、性感染症については、米国、カナダ、オーストラリア、英国の

4

カ国を 対象とする。また、先進国の情報として

OECD

AIDS

関連指標を

2015

年まで更新する。

結果 近年の傾向を踏襲する結果といくつかの変化が認められた。すなわち、①

AIDS

報告数はすべての国 で前年比減少した、②

HIV

感染報告数は、米、豪、英、仏、独において減少か横ばいだったのに対 し、加では増加した。各国

MSM

における新規感染が高い状態で維持されている。③性感染症報告数 は、全体的に増加が顕著である。英でクラミジアと淋病が減少したが、他の

3

か国では増加、梅毒は

4

か国すべて大幅に増加した。

MSM

における性感染症と

HIV

の重感染が課題となっている。英にお ける

MSM

HIV

新規感染および淋病の減少は、複合的予防対策の成果であり注目される。

結論 日本と交流の盛んな先進国における

HIV/AIDS

および性感染症流行の動向について主に

2016

年分の データが追加されデータベースが一層充実した。

HIV/AIDS

と性感染症の経年変化を継続してモニタ リングすると同時によりよいサーベイランス体制のあり方も検討していく必要がある。

A.

目的

わ が 国 と 交 流 の 多 い 主 な 先 進 国 に お け る

HIV

感染症及び性感染症流行の動向に関する 情報を収集・分析し、モニタリングすることを 目的とする。

B.

対象・方法

HIV/AIDS

は、米国、カナダ、オーストラリ

ア、英国、フランス、ドイツを対象とし、性感 染症は、米国、カナダ、オーストラリア、英国 を対象として、各国の公的機関から公表されて

いる

HIV/AIDS

及び性感染症に関する疫学情

報を、主にインターネットによって収集した。

以下が参照した機関一覧である。

HIV/AIDS

疫学情報参照機関>

1.

米国

疾病予防センター(

Centers for Disease Control and Prevention: CDC

2.

カナダ

カ ナ ダ 公 衆 衛 生 局 (

Public Health Agency of Canada: PHAC

3.

オーストラリア

• Kirby

研究所(

The Kirby Institute for

infection and immunity in society;

National Centre in HIV Epidemiology and Clinical Research

2011

4

月 より改名)

4.

英国

英国政府公衆衛生局(

GOV.UK Public Health England

Health Protection Agency

2013

4

月より

Public Health England

の下部組織となる)

5.

フランス

国立公衆衛生監視研究所(

Institut de Veille Sanitaire: InVS

6.

ドイツ

ロ ベ ル ト ・ コ ッ ホ 研 究 所 (

Robert Koch Institut: RKI

)および連邦健康モ ニタリング・システム(

Federal Health Monitoring

7.

ヨーロッパ全体

• WHO

ヨ ー ロ ッ パ 地 域 事 務 所

Centralized information system for infectious diseases

CISID

• European Centre for Disease

Prevention and Control

ECDC

2008

年より欧州共同体の

HIV/AIDS

サーベ

(2)

イランス担当)

<性感染症疫学情報参照機関>

1.

米国

疾病予防センター(

Centers for Disease Control and Prevention: CDC

2.

カナダ

カ ナ ダ 公 衆 衛 生 局 (

Public Health Agency of Canada

PHAC

3.

オーストラリア

保 健 ・ 高 齢 者 担 当 省 (

Australian Goverment, Department of Health and Ageing

4.

英国

英国政府公衆衛生局(

GOV.UK Public Health England

Health Protection Agency

2013

4

月より

Public Health England

の下部組織となる)

5.

ヨーロッパ全体

欧 州 共 同 体性 感 染 症サー ベ イ ラ ンス

European Surveillance of Sexually Transmitted Infections

ESSTI

• WHO

ヨ ー ロ ッ パ 地 域 事 務 所

Centralized information system for infectious diseases

CISID

C.

結果

HIV/AIDS

1.

全般的な動向

対象としている先進国のうち、豪以外の

5

か国の

2016

年末現在の新規

AIDS

報告数を確 認した。すべての国において、前年比で減少し ており全体として減少し続けている(図

1

)。 各国における

HIV

感染者に対する積極的な治 療の成果が出ていると考えられる。

次に、

6

カ国すべて

HIV

感染者新規報告数 の

2016

年データを確認した。前年比で、加は 増加、豪、仏は横ばい、米、英、独では減少し た(図

2

)。特に英における前年比

18%

の減少 と、

4

5

年増加していた独が減少に転じた点 が注目される。英の減少の主要因は

MSM

にお ける新規感染の減少であり、先進国における

HIV

感染の抑制には

MSM

に対する対策が鍵 を握っているといえる。(図

2

)。

AIDS

HIV

報告数について、人口

10

万人 あたりの経年変化も図示した(図

3,4

)。米、

英、仏の感染レベルが比較的高いことがわかる。

また、

OECD

データを主に

2015

年分まで更 新した(表

6,7

)。

AIDS

発生率(

10

万対)が

1.0

を超えているのは

8

カ国、

2.0

以上は、

3

カ国だった。

1.

エイズ患者新規報告数国別年次推移 米国報苔孜

1 2QOOO 

AIDS 報告件数

lOQ OOO 

8 0,000 

6 0,000 

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米国以外報筈汝

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一 英国

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ドイツ

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(3)

2. HIV

感染者新規報告数国別年次推移

3.

人口

10

万あたりエイズ患者新規報告数国別年次推移 米国報筈数

60 , 000 

H I V 報告件数

5 0 , 000 

40 , 000 

3 0 , 000 

2 0 , 000 

1 0 , 000 

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米国

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米国報告数

人口

10

万人当たりの

AIDS 報告件数

米国以外報告数

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(4)

2.

米国

米国の

HIV/AIDS

サーベイランス情報は

CDC

から毎年発表される

HIV Surveillance Report

に集約されている。

2016

年の暫定デー タを含む報告書は

2017

6

月に発表された

[1]

。 こ の 報 告 書 に お い て

diagnosis of HIV infection

は、ステージに関係なく

HIV

感染と 診 断 さ れ た 人 す べ て と 定 義 さ れ て い る 。

Stage3(AIDS)

は、その年に

stage3(AIDS)

と区 分 さ れ た 人 ( 診 断 ) ま た は そ れ ま で に

stage3(AIDS)

と区分された人(有病例および 死亡例)と定義されている。この区分は

2013

年以降のサーベイランスに適応されている。

HIV

診断は

12

か月、有病例と死亡例について は

18

か月の報告遅延を考慮する必要があるた め、最新のデータは、あくまでも暫定値とし、

経年変化や傾向を見るには適さない点に注意 が必要である。しかし、

2,3

年で変動は補正さ れる。

これらの限界を考慮した上で、同報告書から わかる

2011

2015

年の経年変化と

2016

年末 現在の米国の

HIV

流行の状況は次のとおりで ある。

2011

2015

年の年間

HIV

発生率は減少し た。

2016

年の

10

万人あたりの

HIV

発生率は

12.3

である。同期間に

HIV

発生率が増加した 年齢層は

25

29

歳代で、

2016

年に発生率が 最も高かったのも

25

29

歳(

34.8/10

万対)、 それに続いたのが

20

24

歳(

30.3/10

万対)

だった。エスニックグループ別では、

2016

年 の発生率が最も高いのはアフリカ系アメリカ 人(

43.6/10

万対)で、ヒスパニック

/

ラテン系 アメリカ人(

17.0/10

万対)がそれにつづいた。

性別では、

5

年の間に男女ともに発生率が減少 した。

2016

年の

HIV

感染の約

81

%は男性で、

発生率

24.3

10

万対)だったのに対し、女性 は

5.4

10

万対)だった。感染経路別の

5

年間 の変化は、

MSM

における感染が横ばいだった のに対し、薬物使用や異性間性行為による感染 は減少した。

2015

年の成人および若者の男女 の感染の

70

%が同性間、

24

%が異性間と、全 体の

94

%を性行為による感染が占めた。

2011

2015

年の

5

年間の

Stage3(AIDS)

の 年間発生数および発生率は減少し、

2016

年の 発生率は

5.6

10

万対)だった。年齢層別の発 生率はすべての層で減少した(

2014

年の

AIDS

定義修正以降

13

歳未満は調査されていない)。

2016

年値では、

35

39

歳(

11.1/10

万対)が 最も高く、それに続くのは

30

34

歳(

10.9/10

万対)だった。エスニックグループ別では、

4.

人口

10

万あたり

HIV

感染者新規報告数国別年次推移

゜ "'  .,  "' 

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10 

12  14  16  18 

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1990  1991  1992  199 3  1994  1995  1996  1997  1998  1999  2000  2001  2002  200 3  2004  2005  2006  2007  2008  2009  2010  2011  2012  201 3  2014  2015  2016 

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(5)

2016

年に最も高かったのはアフリカ系アメリ カ人(

21.1/10

万)で、二番目は多人種の人々

9.7/10

万)だった。性別について、

2011

15

年の

5

年間で男女共に

Stage3

AIDS

)の 発生率は減少した。

2016

年の

Stage3(AIDS)

診断の

76

%を男性が占めており、男性におけ

る発生率は

10.5

10

万対)であるのに対し、

女 性 の 発 生 率 は

3.1

10

万 対 ) だ っ た 。

Stage3(AIDS

診断の感染経路別の

5

年間の変 化は、すべての感染経路においいて、男女とも 報告数が減少した。

3.

カナダ

カナダの

HIV/AIDS

状況については、

2014

年分までは

HIV and AIDS in Canada

という 年次報告書、

2015

年分は表となった要約値が

Public Health Agency Canada

のホームペー ジで発表されていた。

2016

年分は、

CCDR

Canada Communicable Disease Report

の一 部として、

HIV

AIDS

のサーベイランスの

5. HIV

感染経路別 年次推移

同性間の性的接触 異性間の性的接触 静注薬物使用

米 国 英 国

30,000  25,000  20,000 

15,000  10,000  5,000 

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(6)

記述的な報告が論文として出版されると同時 に、

Web

上に補完的な表が公開された。今後、

この形式が続けば系統的かつ包括的に流行を モニタリングすることが可能になる

[4

6]

その発表によると

2016

年の

HIV

報告数は

2,344

人だった。

1985

年の最初のケースから の累計は

84,409

人となる。国レベルでの

HIV

発生率(10万対)は、

2015

年の

5.8

から

2016

年は

6.4

に上昇した。地域別では、サスカチュ ワン州の発生率が

15.1(10

万対

)

と最も高い。

性別では、

2016

年の

HIV

報告の

76.6

%が男 性である。年齢区分としては、

30

39

歳層が 全体の

28.7

%を占めた。年齢分布に性別によ る大きな違いはないが、過去

5

年の間に

50

歳 以上の割合が増加した点は特筆すべきである。

感染経路別では、

2016

年の

15

歳以上の

HIV

報告全体の

44.1%

MSM

が占めた。それに次 ぐのが異性間性感染の

32.3

%

3

番目は

IDU

15.1

%だった。人種としては、白人が

40.4

%、

黒人が

21.9

%、先住民

21.2

%という割合だっ た。

2016

年のカナダにおける

AIDS

報告数は

114

人だった。

1979

年の最初のケースからの 累計は

24,179

人である。年間報告数は

1993

年から一貫して減少している。地域別では、オ ンタリオ州、サスカチュワン州、アルバータ州 からの報告が多い。性別では男性が

72.8%を

占め、年齢区分では

50

歳以上が

36.0

%を占め る。

AIDS

の年齢分布にも男女による大きな違 いはないが、女性の場合

30

歳以下が多いとい う特徴がある。

AIDS

関連死の数は

1995

年か ら減少しており、

2013

年に

241

人と

1995

年 比で

86.2

%減少した。

4.

オーストラリア

オーストラリアの

HIV

流行状況は、毎年発 表される

HIV, viral hepatitis and sexually transmissible infections in Australia

報告書 から知ることができる

[8]

2016

年の

HIV

新規感染報告数は

1,013

人で、

2012

年(

1,066

人)から約

5

年間ほぼ横ばい 傾向だった。

2015

年の

HIV

新規感染報告のうち

70

(712

)

は男性同性間の性感染である。それに 続くのが異性間の性感染

21

(209

)

、男性同 性間性感染と薬物使用

5

(51

)

、そして薬物 使用のみ

1

(14

)

である。異性間感染のうち

79

%は

UNAIDS

の基準で広汎流行国から来た 人であり、

17

%はそのパートナーであった。

さらに、

2016

年の

HIV

感染報告のうち、

33

% は

HIV

診 断 が 遅 か っ た ケ ー ス (

CD4

350cells/

μ

L

未満、感染後少なくとも

4

年間は 検査をせずにいた)であり、その中には中央ア メリカ出身者(

45

%)とサブ・サハラアフリ カ出身者(

43

%)、東南アジア出身者(

43

%)

が多かった。

2016

年にアボリジニとトレス諸島からの

HIV

報告は

46

人であった。

10

万人あたりの 発生率では、オーストラリアは減少しているの に対し、アボリジニとトレス諸島では

2012

年 の

4.8

から

2016

年は

6.4

に増加している。こ れらの感染の経路は異性間性行為

20

%、薬物 使用

14

%となっている。

オーストラリアの

HIV

新規報告については、

Kirby Institute

から

Australian HIV Public Access Dataset

で基データを入手できるが、

2016

年分はまだ更新されておらず、感染経路 別割合や年齢区分などの詳細を追加すること はできなかった

[9]

2011

年版報告書(

2010

年分)より、

AIDS

Registry

に関するデータおよび記述がなくな

ったため、

AIDS

報告数についてモニターする ことが難しくなった。

5.

英国

英国では

Public Health England(PHE)

より

HIV in the UK

として報告書が毎年発表され るが、

2017

年は、

Toward elimination of HIV transmission, AIDS and HIV-related deaths in the UK

というタイトルで、新規感染の減少 を背景とする対策と疫学状況を記す報告書が 出た

[10 ]

2016

年の新規

HIV

感染者数は

5,164

人であ り前年の

6,286

人から

18

%減少した。この大 幅な減少の主要因は、ロンドンのゲイ・バイセ クシュアル男性における急激な減少と、外国生 まれの男女の異性間における感染の緩やかな 減少による。ゲイ・バイセクシュアルにおける 新規

HIV

感染の減少は、

HIV

流行開始

30

年 来初めてのことである。アフリカ系の人々にお ける新規

HIV

感染の減少は、広汎流行国から の入国者数の減少の影響を受けている。また、

早期発見・早期治療を推進した結果、

CD4

350

以下の末期状態で

HIV

診断される数もこ れらのグループで減少した。

2016

年の

AIDS

報告数は

278

人で、

2015

年の

372

から

25

%減少した。ロンドンでは、

初めて

UNAIDS

90

90

90

目標が達成さ れた。すなわち、

HIV

感染者の

90

%が感染の 診断を受け、診断を受けた者の

97

%が治療を 受け、治療を受けた者の

97

%がウィルス検出 限界以下になったのである。イングランド全体

(7)

のこれらの数値は

88

%、

96

%、

97

%と少し低 くなるが目標達成に近い。これに伴い、

HIV

に感染しているが診断されていない者の数は

2015

年の

13,300

から

2016

年は

10,400

人に 減ったと見積もられている。また、

HIV

診断 後

90

日以内に

ART

治療を始める人の割合は、

2007

年の

33

%から

2016

年は

76

%にまで増え ている。90‐90‐90目標達成に向けての施策 の結果が数値として表れ始めているといえる。

複合的予防策(コンドーム使用、

HIV

検査 拡大、

ART

即時開始、そして曝露前予防策

[pre-exposure prophylaxis=PrEP]

)を強化し 推し進めることによって、英国における

HIV

感染や

AIDS

関連死亡をなくすことは可能だ ろうという公衆衛生上の見方が出始めている。

PHE

HIV

予防対策における新しい試みとし て、曝露前予防策の臨床試験がある。

HIV PrEP Impact Trial

という臨床試験が、

2017

年の

10

月から始まっており

3

年間で

10,000

人の参加者を得て、曝露前予防策に係る様々な 課題・疑問に対処する予定である。

6.

フランス

フランスの

HIV

および

AIDS

報告数は

Institut de Veille Sanitaire

のウェブサイト 上のデータベースから入手可能である

[17]

2016

年、フランスでは

4,836

人の新規

HIV

437

人の

AIDS

が報告されている。これは 暫定値であり、報告漏れのケースが加わるので、

確定値はこれより多い。この暫定

HIV

報告数 のうち、

MSM

1,097

人で

22.7%

であるのに 対し、異性間性行為による感染は

1,239

人で

25.6

%を占めている。ただし、最も割合が高い のは、感染経路不明(

2,4301

50.2

%)である。

確定値が出た

2014

年の値をみると、全

HIV

新規感染数

5,008

人に対し、

MSM

29.3

%、

異性間性行為は

37.5

%、感染経路不明

31.1

% となっている。確定値においても感染経路不明 の割合が非常に高いため、正確な流行形態の把 握は難しいが、主流は性感染である。

7.

ドイツ

ドイツの

HIV

感染および

AIDS

患者報告数 は、

Federal Health Monitoring

のウェブサイ

ト上の

HIV/AIDS

データベースから入手可能

である

[21]

。今年度は

2015

年末までのデータ が更新されて以来、

2016

年分は更新されてい ない。今回、

ECDC

European Centre for Diseases prevention and control

) の

HIV/AIDS surveillance in Europe

に報告され ているデータを参照した。

2016

年にドイツ国内で報告された

HIV

感染 者の数は

3,419

人(男性

2,704

人、女性

710

人)であり、

2011

年以降の連続の増加から、

ようやく減少に転じた。

HIV

感染経路別で詳 しくみると、割合として多いのは

50.4

%の

MSM

であるが、どの経路も前年比で減少して いる。一方で、

2014

年の

AIDS

報告数は

120

人であり、

2009

年以降減少の一途をたどって いる。

<性感染症データ収集状況>

1.

米国

性感染症のうち、性器クラミジア、梅毒、淋 菌感染症、軟性下疳について、全数報告サーベ イラスが実施されている。データは各種性感染 症対策プログラムと

50

州およびワシントン

DC

、主要都市、海外領土の保健当局から

CDC

内 の

NCHHSTP

National Center for HIV/AIDS, Viral Hepatitis, STD and TB Prevention

) の

DSTDP (Division of STD Prevention)

に送付された報告書から収集され、

編集されている。各疾患について、性別ごとの 年齢階級別報告数および人口

10

万人あたりの 発生率の表がある

[32]

2.

カナダ

1997

年から

2007

年の性感染症サーベイラ ンスデータは、①州や特別地域から

Public Health Agency of Canada

PHAC

)に報告さ れたすべての性器クラミジア感染症、淋菌感染 症、感染性梅毒のケース、②

PHAC

と州や特 別 地 域 の 臨 床 検 査 機 関 と の 協 働 に よ る

Canadian Gonococcal Surveillance

、という

2

つのデータソースから成っている。これらはケ ースごとの報告ではなく、合計数の報告である。

上記、カナダ公衆衛生局(

PHAC

)のホーム ページではクラミジアについては、

1991

年か ら、淋病については

1980

年から、梅毒につい ては

1993

年からのデータが随時アプデートさ れている。

2017

5

月に

Report on sexually transmitted infections in Canada:2013

2014

という報告書が発行され、今回

2013

年 と

2014

年分のデータを追加することができた。

3.

オーストラリア

2007

年現在、オーストラリアにおいて全数 把 握 対 象 疾 患 サ ー ベ イ ラ ン ス シ ス テ ム

(National notifiable diseases surveillance

system: NNDSS)で報告されている性感染症

は、性器クラミジア感染症、鼠径リンパ肉芽種 症、淋菌感染症、梅毒である。

(8)

NNDSS

1990

年に創設された

50

以上の 感染症のサーベイランスシステムである。この スキームのもと、それぞれの管轄区域の公衆衛 生法令に基づいて、医師と臨床検査機関から州 や特別地域の保健当局に報告される。これらの 報告は個人が特定できないような形にされて オーストラリア政府の保健・高齢者担当省に送 付される。

2004

年成人の梅毒でカテゴリー変更があり、

「感染から

2

年未満の感染性(第

1

期、第

2

期、前期潜伏期)」および「感染から

2

年以上 または期間不明」という

2

つのカテゴリーに分 けられた。

NNDSS

以外では淋菌感染症に関す る サ ー ベ イ ラ ン ス で あ る

Australian Gonococcal Surveillance Programme

1981

年開始)がある

[36,37]

4.

英国

英 国 で は 泌 尿 性 器 科 ク リ ニ ッ ク

genitourinary medicine clinics: GUM

)か らデータ収集がされてきた。

2009

年から、よ り質の高い

STI

サーベイランスデータが入手 可能になった。これは、近年、イングランドで 導入された泌尿器科クリニックアクティビテ ィ デ ー タ セ ッ ト (

Genitourinary Medicine Clinic Activity Dataset: GUMCAD

)を利用 するものである。また、

GUM

だけでなくコミ ュニティベースのデータも収集されるように なった

(GUMCADv2)

2008

年以降、クラミジ ア、梅毒、淋病の3疾患について、

GUM

とコ ミュニティベースを合わせたデータが示され、

より充実した報告になっている

[38]

本報告書では、表及びグラフでは英国の値を 引用したが、本文ではイングランドに言及した。

<性器クラミジア感染症>

1.

米国

2016

年、

1,598,354

件のクラミジア感染症 が全米から

CDC

に報告された。人口

10

万人 あたりでは

497.3

件で、前年比

4.7

%の増加で ある。

2015

2016

の間に、米国のすべての地 域のクラミジア発生率は増加した。

クラミジアの発生率が高いのは、定期的なス クリーニングが行われている若い女性層で、検 査を受けた者のうち、

15

19

歳では

8.0

%、

20

24

歳では

8.0

%が陽性だった。尿による 検査が可能になり、男性における検査可能性が 拡がるにつれ、

MSM

を含む男性での報告数増 加となっている。

2016

年の発生率を比べると、

エスニックグループ別では黒人やアメリカ ン・インディアン、アラスカ・ネイティブの間

での感染が高いが、

5

年の変化をみると黒人と ネイティブアメリカンでは減り、白人、アジア 人、ネイティブハワイアン、その他の太平洋州 出身者では増えている。

2.

カナダ

クラミジアは、カナダにおいて最も報告数が 多い性感染症である。

2014

年の新規報告数は

109,263

件で、

2005

年から

2014

年の経年変化 では、人口

10

万人あたり

206.0

件から

307.4

件へと

49.3

%増加した。同変化を男女別でみ ると、男性は人口

10

万人あたり

140.0

から

230.5

64.6

%増加、女性は

2702.5

から

382.5

41.4

%増加した。

2014

年の発生率は、全体 としては女性が男性の

1.7

倍だが、

15

19

歳 では女性が男性の

3.8

倍、

20

24

歳では約

2

倍、

40

歳以上では男性の方が多く、年齢層に よって違いがある。

2014

年の新規感染報告の

80

%は

15

29

歳層であり、若い人々の間で感 染が多いことが特徴である。

3.

オーストラリア

クラミジアはオーストラリアで最も多く報 告される全数把握の疾患で、

2016

年は

77,751

件の報告があった。この

2016

年の値には、ヴ ィクトリアからの報告(通常国内の

23

%を占 める)が含まれていない。

2016

年の報告のう ち

75

%が

15-29

歳の若年層である。クラミジ ア感染報告は、

2012

年から

2015

年は安定し ていたが、

2015

年から

2016

年は、人口

10

万 人あたり

378

から

409

へと

8

%増加した。

2016

年の報告数は、男性(

364/10

万人)より女性

458/10

万人)の方が多いが、増加率は男性

14

%)の方が女性(

4

%)より高い。

年齢層別では、

2016

年報告で最も多いのは

20-24

歳層(

1970/10

万人)で、

15-19

歳層

1285/10

万人)、

25-29

歳層(

1116

/10

万 人)が続く。過去

5

年をみると

15-19

歳層で は、

15

%の減少を記録している。アボリジニ ーやトレス海峡諸島におけるクラミジア感染 報告(1194/10万人)は、オーストラリア本土

419

/10

万人)の約

2.8

倍であった。

クラミジアと

HIV

の重感染が報告されてい る。

2016

年、

HIV

陽性のゲイ・バイセクシュ アル男性におけるクラミジア罹患率は

38/100

人年であり、

HIV

陰性のゲイ・バイセクシュ アルのクラミジア罹患率

20

/100

人年)に比 べ

1.9

倍であった。また、この値は

2012

年に 比べて、

HIV

陽性者では

17

%増加、

HIV

陰性 者では

6

%増加していて、

HIV

陽性者における クラミジア感染の増加が浮き彫りになってい

(9)

る。

4.

英国

2016

年にイングランドで報告された新規の

性感染症は

417,584

件だが、そのうちクラミ

ジアは

202,546

件であり、性感染症報告全体

49%

を占めた。

国家クラミジアスクリーニングプログラム

National Chlamydia Screening Programme(NCSP)

は、

15

24

歳の性的に活

発な若者を対象としており、

2016

年は

140

万 人を対象に検査が実施された。一人

1

回検査を 受けたと仮定すると、この年齢の若い女性の

30%

、男性の

12%

が検査を受けたことになる。

この結果、

128,098

のクラミジア感染が確認さ れ、

10

万人あたり

1,882

件の発見率だった。

2015

年と比べると、検査数は

9%

、診断数は

2%

減少した。

<淋菌感染症>

1.

米国

淋病報告数は、

2009

年に人口

10

万人あた り

98.1

という最低を記録したのち、少しずつ 増加し、

2016

年は

468,514

件、人口

10

万人

あたり

145.8

の報告があった。これは、前年比

18.5

%の大幅な増加である。この増加の勢いは、

男性(

22.2

%増)の方が女性(

13.8

%増)より 大きい。男性における増加の背景には、感染自 体が増加したことと、より多くの

MSM

に対す る感染確認が実施されたことの両方によると 考えられる。

エスニシティでは、黒人(

481.2/10

万人)

が高く、

2012

2016

の変化をみると、すべて のエスニックグループで増加した。また、抗菌 耐性が多く発生していることは、引き続き淋菌 感染症治療における重要課題となっている。

2.

カナダ

淋病は、カナダで

2

番目に報告数が多い性感 染症である。

2005

年から

2014

年の人口

10

万 人あたりの淋病報告数は

28.4

から

45.8

61.2

%増加した。同期間の増加は、女性が

55.9

%であるのに対して男性は

64.2

%の増加 だった。

2014

年の人口

10

万人あたり報告数 は、男性が

58.8

に対し女性が

32.9

で男性の方 が多い。発生率が最も高い年齢層は女性は

15

24

歳、男性は

20

24

歳である。

3.

オーストラリア

2016

年に報告された淋病の件数は

23,887

件で、全体の

73

%を男性が占めた。

10

万人あ たりの発生率を

2012

から

2016

年で比べると、

全体では

62

から

101

63

%増加、男性は

72

%、

女性は

43

%増加した。

2016

年の人口

10

万人

6.

性器クラミジア感染症 年次推移

(人口

10

万人あたりの報告件数)

回撒

1 ,(‑m4klk̲

̲

5 l q

※̲

1

回米

̲

(10)

あたりの報告数は、男性が

146

に対し女性は

56

で男性の方が多い。

年齢層別では、

2015

年の値では、男性は

25-29

歳層(

438/10

万人)が最も高く、続い て

20-24

歳層(

383/10

万人)が多い。女性は

20

24

歳層(

199/10

万人)が最も多く、

15-20

歳層(

177/10

万人)がそれに続く。

2016

年のアボリジニーとトレス海峡諸島に おける淋病の報告は、他の地域の

6.8

倍だった。

ただし、

2012-2016

年の経時変化をみると、こ の地域では淋病感染報告は

17

%減少した。男 女比や年齢層についても、他のオーストラリア 地域と異なる流行状況である。

淋病と

HIV

の重感染も確認されている。

2016

年、

HIV

陽性のゲイ・バイセクシュアル 男性における淋病罹患率は

34

100

人年)で、

HIV

陰性のゲイ・バイセクシュアル男性の淋 病罹患率

23

/100

人年)の

1.5

倍であった。

2012

2016

年の期間に、

HIV

感染に関係なく 淋病罹患率は増加してきたが

2015

年~

2016

年に区切ると安定化傾向である。

4.

英国

2016

年のイングランドにおける淋病の報告

数は

36,244

件で、前年の

41,262

件から

12%

減少した。

2008

年から

2015

年まで

14,985

から

41,262

件へと急増した後の初めての減少

である。この減少の主要因は

MSM

において

22%

の淋病報告の減少(

22,419

件から

17,584

件へ)による部分が大きい。この

2015

年から

2016

年の

MSM

における淋病報告の減少は、

MSM

における

HIV

新規感染の

23

%の減少

2046

から

1570

)と同時に起きている。

HIV

検 査 、

ART

の 開 始 時 期 、 そ し て

HIV Pre-exposure prophylaxis

へのアクセスが影 響していると考えられる。

<梅毒>

1.

米国

米国では梅毒は第

1

期と第

2

期という最も 感染しやすいステージが報告対象となってい る。

1990

年代は一貫して減少し続け、

2000

年 には人口

10

万人あたり発生率

2.1

という史上 最低を記録した。しかし、その後ほぼ毎年増加 を続け

2016

年には、

27,814

件の第

1

期およ び第

2

期梅毒の報告があり、同発生率は

8.7

った。これは前年比

17.6

%の増加である。

年齢層では

20

29

歳、エスニックグループ では黒人(

23.3/10

万人)とネイティブ・ハワ イアン

/

太平洋諸国出身者(

13.9/10

万人)であ るが、どのグループも増加している。その増加 の主要因は

MSM

における増加である。

2016

年の梅毒報告のうち

90

%が男性であり、その 性パートナーの性別がわかる人の

80.6

%が

MSM

であった。これら梅毒感染の多くは

HIV

7.

淋菌感染症 年次推移

(人口

10

万人あたりの報告件数)

3000  250.0  2 0 0 . 0   150.0 

100.0 

50.0 

0 . 0  

□ ― □ 

\ ー , ロ , , D‑D‑0‑‑"‑o 、 D‑D‑ 。 D‑"‑o

‑ □ 

米国

~

カナダ

ォーストラリア

ナ 英国

只/

1 ‑ □ ‑ 0 ‑ 0 / 

令令忍唸疇慇、唸窪遺舜溌矮葛轟、寧義総添~ ヽ答苓轟や

(11)

にも感染していることが特徴である。梅毒感染 と、性パートナーと、

HIV

感染の情報がわか るデータをみると、梅毒に感染している

MSM

47.0

%が

HIV

にも感染している。

さらに、梅毒の母子感染増加が危惧されてい る。

2016

年に

492

件の梅毒母子感染が報告さ れた。

2014

年の

461

件に比べて

6.0

%の増加 である。母子感染は黒人で最も多く(43.1/10 万出生)、ついでアメリカンインディアン

/

アラ スカネイティブで多い。

2.

カナダ

全体として、梅毒の報告数は極めて少なく、

2001

年までは人口

10

万あたり1より少なか った。しかし、その後、特に男性において増加 し始め

2005

年から

2014

年の人口

10

万人あた りの梅毒報告数は

3.4

から

6.6

95.1

%増加し た。この間、男性は

115.5

%増加したのに対し、

女性

18.2

%減少している。男性の報告数が女 性に比べて圧倒的に多く、

2014

年の全体報告 の

93

%は男性であり、人口

10

万人あたりで、

男性は

12.5

に対し女性は

0.9

であった。年齢 層では、男性は

25

29

歳層で、女性は

20

24

歳層で最も多かった。

3.

オーストラリア

2016

年に報告された感染性梅毒(感染後

2

年以内)の数は

3,367

件であり、そのうち

87

% は男性だった。

2012

年から

2016

年の

5

年間 で、人口

10

万人あたりの梅毒報告数は

6.9

か ら

14.3

へと

107

%増加した。この増加は男女 共におきている。

2016

年の人口

10

万人あた りの報告数は、男性

25.0

に対し女性

3.6

だっ た。

年齢階層別では、

25

29

歳層(

34/10

万人)

で最も多く、

30-39

歳層(

29/10

万人)、

20-24

歳層(

25/10

万人)が続く。

地域別では、都市部よりも地方での感染報告 が多い。

2016

年のアボリジニ・トレス諸島に おける梅毒報告(

67/10

万人)は、他の地域

12/10

万人)に比べて

5.4

倍だった。

2012

から

2016

年の増加率で比べても、アボリジ ニ・トレス諸島の増加率(

193%

10

万人あた り

23

から

67

へ)は、他の地域の増加率

100%

6.2

から

12.4

へ)より大きかった。

2007

年から

2016

年におきた

43

の母子感染の うち、約半数の

24

件がアボリジニ・トレス諸 島におけるものであった。

梅毒の

HIV

との重感染については、性感染 症クリニックをおとずれた

HIV

陽性のゲイ・

バイ セクシュア ル男性の梅 毒罹患率 は

5.6

/100

人年)であり、

HIV

陰性のゲイ・バイ セクシャルにおける罹患率

2.5

/100

人年)の

2.2

倍だった。

2012

年から

2016

年の経年変化 では、

HIV

陽性者・陰性者両方において、梅 毒感染は増加している。

4.

英国

英国では基本的に第

1

期、第

2

期が感染性 梅毒として扱われている。

イングランドにおける

2016

年の梅毒報告数 は、

5,920

件であり、これは前年の

5,281

から

12%

増加した。これは

1949

年以来最も多い数 である。この増加は

2012

年以来の急増(

97%

増)を踏襲したものであり、

MSM

における増 加と関連が深い。

MSM

においては、

2015

年 から

2016

年の間に梅毒が

4,185

件から

4,788

件へと

14%

の増加を示している。これは相手 の

HIV

感染の有無に合わせた性行動

HIV seroadaptive behaviours

(例:共に

HIV

感染 者の場合にはコンドームを用いない)が関係す るのではないかと考えられている。

8.

加~ ~

1 8  0 

ーカナダ

150  ・ ・  ・ 一ーオ

1 4  0 

英国

1 2  0 

¥ 

100  80  60  40  20 

0.

、忍疇、心唸鸞轟摯餃絹訊耀硲諮轟沿浴悩苓轟や

*注:オーストラリアの2004年以降は、第 1,2期、前期潜伏期のみ

(12)

.

まとめと考察

HIV/AIDS

の動向>

日本の

HIV

流行に影響を与えると考えられ る、米国、カナダ、オーストラリア、英国、フ ランス、ドイツの

HIV

および

AIDS

報告に関 する疫学データの

2016

年分を追加した。

2016

年の年間

AIDS

報告数は、すべての国 で減少し、

HAART

の導入以降の

AIDS

報告の 減少という最近の傾向を踏襲した。各国とも、

報告書において、

UNAIDS

2014

年に提唱 した「

90-90-90

治療目標」に言及し、達成度 と課題点をまとめている。

2015

年の

WHO

の 治療ガイドラインに基づいた早期発見、早期治 療の推進により、今後さらに各国からの

AIDS

報告数は減ることが予想される。

新規の

HIV

感染報告は、カナダで増加、オ ーストラリアとフランスで横ばい、米国、英国、

ドイツで減少が認められた。英国における前年 比

18%

の減少は特筆すべきである。その主因 が

MSM

における新規感染の大幅な減少にあ るからである。英国は、この成果は、コンドー ム使用による感染予防、

HIV

検査機会の拡大、

感染者の

ART

即時開始、さらに曝露前予防策 を組み合わせた複合的予防策の結果であると している。

MSM

における新規感染の増加また は高止まりに状態である先進各国にとって、英 国から学ぶべき施策は多くありそうである。

米国において補正済値の報告がなくなった 点や、各国で報告数だけでなく推計値が算出さ れている点など、各国の

HIV

流行をモニター するサーベイランス方法は、強化・改善されて いる。本研究では報告数のみを比較してきたが、

今後は推計値の比較も可能になるだろう。さら に、

UNAIDS

90-90-90

目標や

ART

の治療 ガイドラインの改訂に基づき、先進各国では、

HIV

の早期発見、早期治療を具体的にモニタ ーしつつ推進する動きが加速しつつある。これ らの情報にも注目し、今後もより正確な経年変 化と国比較をする必要があるだろう。

STD

の動向>

日本の

HIV

流行に影響を与えると考えられ る主要な先進国のうち、性器クラミジア、淋菌 感染症、感染性梅毒のデータが揃う

4

カ国の

STD

疫学情報を収集し

2016

年データ(カナダ は

2014

年まで)を追加した。全体として、各 国で

STD

報告数および発生率は増加傾向だっ た中で、英国のクラミジア感染と淋病感染に、

減少が認められた。特に、淋病感染の減少は

MSM

を中心であり、

HIV

感染の減少と連動し て起きていると考えられる。英国が進める

HIV

複合的予防策の

STD

予防に対する効果は 非常に興味深い。

性器クラミジアは、各国において最も感染報 告が多い

STD

であり、女性や若者層での感染 率が高いことが特徴である。

2016

年は、米国 は前年比

4.7

%、オーストラリアは

8.0%

の増 加だったのに対し、英国では横ばい傾向だった。

スクリーニング検査の導入により、より多くの 人々が検査するようになったことも、新規感染 報告の増加の背景にはある。

淋菌感染症は、女性より男性における感染が 多いのが特徴である。

2016

年の米国、オース トラリアおよび

2014

年のカナダは顕著に増加 したのに対し、英国では前年比

18%

の減少を 認めた。

MSM

における感染の増加が各国共通 の課題である。

梅毒は症例の定義が各国で異なるため、直接 比較することは難しいが、男性における発生率 が女性より大幅に高いことが特徴である。

2016

年(カナダは

2014

年)、

4

か国すべてに おいて、前年比大幅な増加が認められた。

MSM

における増加が顕著である点が各国に共通の 課題である。

STD

報告の近年の増加は、検査の拡大やよ り簡便でかつ感度の高い検査方法の導入、性行 動の変化などの複合要因であると考えられて いる。また、どの

STD

においても、

MSM

に おける

HIV

との重感染が注目されている。

HIV

感染が早期発見と早期

ART

導入よりウィ ルス量を抑えることができつつある一方で、他 の

STD

罹患の増加は、無防備な性行動が蔓延 していることを示唆するものである。今後も、

STD

HIV

と併せて複眼的に監視していく必 要がある。

さらに、各国の

HIV

および

STD

の疫学情報 のみならず、よりよいサーベイランスの手法に ついて学び比較検討していくことも進めるべ き で あ る 。 そ れ ら は 、 我 が 国 に お け る

HIV/AIDS

流行をモニタリングしていく上で、

有用な示唆を与えてくれるだろう。

[

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[論文] .

なし

[学会発表]

1) 西村由実子(2017)徹底的に 5

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同大会(第

32

回 日本国際保健医療学会 学術大会),11月

25

日, 東京,p.56.

表 2.人口 10 万人あたりの HIV/AIDS 発生率  年次推移(1)  1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 日本 HIV 男性 女性 不明 合計 0.22 0.24 0.22 0.30 0.31 0.33 0.42 0.36 0.49 0.48 0.50 0.61 AIDS 男性 女性 不明 合計 0.07 0.11 0.13 0.19 0.20 0.18 0.24 0.26 0.26 0.24 0.26 0.30
表 2.人口 10 万人あたりの HIV/AIDS 発生率  年次推移(3)  *出典   日本 ●H IV 人口データは、政府統計 長期時系列データより ●A ID S https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&amp;toukei=00200524&amp;tstat=000000090001 HIVおよびAIDS報告数は、厚生労働省エイズ動向委員会報告より http://api-net.jfap.or.jp/status/
表 3.HIV 感染経路別報告数  年次推移(1)  性別  感染経路 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 男性 異性間の性的接触 667 687 645 574 680 1040 1236 1231 1466 1825 2009 2014 同性間の性的接触 4822 5239 4442 4053 3985 5163 5763 6302 7674 10991 10466 11601 薬物使用 2106 2628 1750 1
表 3.HIV 感染経路別報告数  年次推移(2)  性別  感染経路 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 男性 異性間の性的接触 1895 3143 3381 3624 3219 4224 3894 3598 3439 3334 3274 3138 同性間の性的接触 12730 16191 20868 21873 21518 26629 26332 26556 26009 26962 26753 26844 薬物使用 26
+7

参照

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