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道路標識の配置特性

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Academic year: 2021

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道路標識の配置特性

 

塩田定俊,吉川  眞,田中一成   

 

Location Analysis of Road Sign

 

   

Sadatoshi SHIOTA,Shin YOSHIKAWA and Kazunari TANAKA

 

Abstract: Recently, transportation system and commercial facilities have increased by the rapid urbanization. Many signs such as road signs, street signs, traffic signs, markers, guides and indicators were located in cities. The city was flooded with signs.

The authors are analyzing the special distribution of the road sign, especially the location guides, based on the location information. Concretely, the administrative boundary is analyzed into three types.

 

Keywords:道路標識(road sign),位置情報(location information), 

境界(boundary)  

         

1.はじめに 

サインは,人間が活動する空間内のありとあらゆる場 所に存在する.近年の高度経済成長に伴い,交通機関 や商業施設が多く建設され,それに伴い案内板や看板 などのサインも数多く設置されたことで,現在のように膨 大な量のサイン情報が無差別に氾濫する都市空間が形 成された.しかしながら,今もサインは人々に,街の地理,

方向,施設の位置などに関した情報を提供してくれる媒 体であり,適切に配置し表示されることによって人々の円 滑な移動を保障する.一口にサインといっても,文字を 用いて行き先を指示するものから絵や色などを用いて表

現するものなど,その種類は多様である.数あるサイン の中でも,地名情報が表記されたサインは, より明確に 現在地や行き先を示す媒体として重要な意味を持っ ている .都市空間内には地名情報を持ったサインは無 数にあるが,その中でも道路線形により視線方向が固定 される道路上では,より大きな意味を持っている.道路上 の地名情報を含んだサインとしては道路標識が挙げら れる.道路標識は安全で能率的な交通の流れにとって 重要な要因の1つである.そのため,効果的なデザイン を発展させるために,読みやすさ,視認性,目立ちやす さなどに関して,多くの人間工学的研究がなされ,情報 を伝達する媒体して他のサインと同様に改善されている.

しかし,道路標識の配置に関しては現在も議論されてお り,検討されるべき問題である. 

塩田:〒535‑8585 大阪市旭区大宮5‑16‑1 

大阪工業大学大学院 工学研究科都市デザイン工学専攻  TEL: 06‑6954‑4109(内線3136) 

e‑mail: [email protected]

(2)

2.研究の目的と方法 

本研究では,サインが表示する地名情報と設置位置 をもとに

GIS

を用いて市域間の境界性について空間 分析を行っている.また,サインが表示する地名情報 から意識上の市域境界を推定することで,人間の意識 とサインとの関係を把握できるのではと考えた. 

具体的には,交通サイン(以下ではサインと呼ぶ)

である道路案内標識の持つ地名情報と設置場所の2つ の位置情報を用いることにした.道路案内標識台帳を 用いて,

GIS

上に設置場所をプロットし,属性として 地名情報を与え,データベースを作成する.その後,

地点案内標識だけをプロットしたものを用いて,市域 境界を実空間上,意味上,意識上という3つの観点か ら

GIS

を用いて分析を行い,意味上と意識上の市域 境界の差を推定している. 

3.対象地の選定 

 本研究では国道 25 線を対象路線とする.国道 25 号 線は三重県四日市市(起点)から大阪府大阪市(終 点)へ至る一般国道である(図−1).途中,三重県 亀山市〜奈良県天理市間は名阪国道として整備されて いる.大阪市内(梅田新道〜元町2丁目間)は御堂筋 と呼ばれ,南行きの一方通行となっている. 

大阪と奈良とを結ぶ国道であり,過去は「奈良街 道」と呼ばれていた路線をほぼ踏襲している.奈良県 天理市〜大阪府大阪市を対象区間とし,名阪国道に関 しては除外した.名阪国道は道路案内標識自体が少な く,実質的には国道というより自動車専用道路であり,

また表示形式が国道とは異なるためである.大阪から

奈良までには多くの市域境界を含んでおり分析する上 で大きな意味があると考える.     

 

4.データ構築及び手順 

  本研究では,情報開示請求により入手した国土交通 省近畿地方整備局大阪国道事務所と奈良国道事務所で 管理されている紙ベースの国道 25 号線の道路標識台 帳を用いた.

GIS

アプリケーションの一つである

SIS

Map Modeller

上に数値地図 2500 を取り込み道路案内

標識の位置をプロットしている.プロットしたデータ には,属性として上下線種別と道路案内標識に表示さ れる地名情報を与え,データベースを作成した.市域 境界の分析を行うために道路案内標識の中から現在地 を表す地点案内標識に属するものだけを,地域ごとに 作成したデータベースより抽出した.地点案内の標識 をポイントデータとして扱い,

Shape

ファイルに変換 して

ArcMapに取り込み,ArcGIS Spatial Analyst

を用 いてカーネル密度推定法による空間分布の把握を上下 線ごとに市域ごとに行った.その結果,道路案内標識 の凝集している空間が抽出された. 

 

5.市域境界の分析 

  サインに表記される地名情報や設置位置を用いて,

市や県などの境界を探り,

GIS

上に展開することで,

市域境界を視覚的に認識できると考えた.  

また本研究では市域境界を,実空間上の境界,意味 上の境界,意識上の境界という3つの概念に分け,分 析を行った.   

 

5.1  実空間上の境界 

 本研究で使用する実空間上の境界とは,数値地図 2500 で定められている市町村または都道府県の境界 を用いている(図−2).一般的に市域境界という場 合,この実空間上の境界のことを指していることが多 い.しかし,自動車で走行するドライバーが地図など のみ表示されている実空間上の境界を認識することは 困難であり,現実の都市空間内でこの境界を視認する ことはできない.そのため,意味上と意識上の境界と いう新たな概念を導入することで,より現実に近い市 域境界を見出すことができると考える. 

図−1  対象地域および対象路線

大阪市 

八尾市 

柏原市 

天理市  生駒郡斑鳩町 

大和郡山市 

北葛城郡王寺町 

:国道25 号線 

(3)

                     

5.2  意味上の境界 

意味上の境界とは,上下別の道路上で市名もしくは 県名などが表記されている地点案内標識が初めて設置 されている地点を指す.(図−3) 

対象地域内の実空間の境界と意味上の境界との差は 最大でも 40m であり,両者の間ではドライバーから すれば差がないと思われる.これは市名もくしは県名 などが表記された地点案内標識が,実空間上の境界付 近に適切に設置されていることを意味する. 

しかし,これはあくまで地点案内標識を使用する対 象がドライバーだけであると仮定した場合である.現 実には道路案内標識を見るのはドライバーだけではな く,歩行者や自転車などで走行している者も方角や行 き先を確認するために道路案内標識を用いることが多 いと考えられる.ドライバーには 40m という差はあ まり大きな意味を持たないが,歩行者等も道路案内標 識を使用することを考慮すると,やはり実空間上の境 界と意味上の境界の差が少ない方が望ましいと考えら れる. 

国道 25 号線が実空間上の境界を通過する地点と誤 差0

m

で設置されていたのは柏原市から八尾市(下 り線)のみで,他の地点は誤差1〜40m の地点に設 置されていた.表−1はその誤差をまとめたもので実 空間上の境界付近で始めて市名・県名等の表示された 地点案内標識が設置されている場所から実空間上の境 界までの距離である.中でも柏原市(大阪府)〜北葛 城郡王寺町(奈良県)の上下線は他の地域よりも多く 誤差が出た.また最大の差があった場所は市域境界で はなく府県境であった.結果として,本研究の対象範 囲内では意味上の境界は府県界になると多少のずれが 発生する可能性があるということが把握できた. 

 

 

5.3  意識上の境界 

標識の検出には心理的要因があることを考えなけれ ばならない.明らかに視認可能な距離に設置されてい る道路標識をドライバーが見逃してしまうことがしば しばある.見落す原因として,①ドライバーの知覚能 力の限界,②ドライバーは道路標識を自分にとって非 常に重要なものと思わないために標識を見つけ,確認 するために必要な注意(視覚サーチ)を払うことを怠 ってしまう,という2つの原因が関係している.その ため自動車で移動していることを考慮した場合,意味 上の境界だけでは,案内標識を見逃した場合は市の境 界を認識することができない.したがって,1点だけ で境界を確定するのではなく,ある程度,連続的に配 置されている場合に認識できると考え,意識上の境界 とは幅を持ったエリアであると推測される.よって,

抽出方法としては市の名称,あるいは市内の地名とい う位置情報をもった道路標識の分布密度でエリアを抽 出し,そのエリアを意識上の境界と考える. 

図−3 意味上の境界 

表−1 実空間上から意味上の境界までの距離  天理市 

国道25 号線 

上り線

 

下り線

  大阪市 

八尾市 

柏原市  生駒群斑鳩町 

北葛城群王寺町  大和郡山市 

実空間上の境界 

図−2 実空間上の境界 

(4)

道路案内標識の中でもその地点を表す地点案内の標 識を使って,意識上の境界を見つけ出す方法とし,本 研究では

ArcGIS Spatial Analyst

による空間解析を行っ

た.まず

SIS Map Modeller

でデータベース化した道路

案内標識の中から地点案内に属するものだけを抽出し た.その後,上下線別に設置位置で分類し大阪市,八 尾市,柏原市,北葛城郡王寺町,生駒郡斑鳩町,大和 郡山市の地名と上下線別に新しいベースデータセット を作成した.そこにデータベースから抽出した地点案 内標識を各市または各県の地名ごとの位置情報を複写 した.また,地点案内標識は現在地を表しているため ポイントデータとして扱う.意識上の境界では,実空 間の境界を通過してすぐに意識上の境界に入っている 場所は八尾市(上り線)のみであった(図−4).実 空間の境界と意識上の境界が重なっていた生駒郡斑鳩 町(上り線),大和郡山市(上り線)の2つを除けば,

他の場所の意識上の境界は 245m〜3,345m と実空間 上の境界から離れていることが把握できた.とくに 3,345m の離れがあった柏原市(下り線)は,ドライ バーが現在地を確認することができない可能性が非常 に高いことから,道路案内標識の設置位置の検討が必 要ではないかと考えられる.(図−5) 

 

7.おわりに 

本研究は,サインがもつ2種類の位置情報をもとに,

市域間の境界といった目には見えない情報について

GIS

を用いて空間分析を行い,把握および分析するこ とが目的であった.道路上のサインについては地点案 内標識を用いて,地点案内標識の密度から意識の境界 を導いた.結果として,道路案内標識は一様に分布し ていないことが明らかになった.しかし,本研究は国 道 25 号線だけを対象にしており,他の道路との接続 といった構造を考慮していない.そのため,今後の課 題として,道路という構造を考慮したネットワーク型 の空間分布について解析を行う必要があると考えてい る.そのためは,国道 25 号線に接続している道路に 付帯する道路案内標識のデータ採取を行う必要がある.

また本研究は人間の意識について,現在の場所を提供 する地点案内標識を通してアプローチしたが,今後は 目的地までの道筋を提供する経路案内標識に着目して 研究を行う. 

 具体的には,経路案内標識に表記されている目的地 などの地名情報を整理し,各地名情報の重要度や認知 度といったパラメータを設定する.そして,その値を 用いて経路案内標識を用いたカルトグラムの作成を検 討している.カルトグラムを作成するため地点案内標 識のようにいくつもの市域に跨っている場所よりも,

1つの市域に限定した方が結果を明確に表現できると 考えられるため,地点案内標識が他市よりも連続的に 設置されていた八尾市を対象地域とし,八尾市内の経 路案内標識の現状の把握および分析を行うことにして いる. 

  謝辞 

 本研究を遂行するにあたり,国土交通省近畿地方整 備局大阪国道事務所ならびに奈良国道事務所には,紙 媒体の道路標識台帳のデータ化および複写に関し多大 な御協力を頂いた.ここに記して謝意を表します. 

  参考文献 

大阪国道事務所・奈良国道事務所(2006)一般国道 25 号に係る道路標識台帳(大阪府および奈良県分) 

望月衛・大山正(1979)環境心理学,226‑ 228,朝倉書店  図−4 意識上の境界(八尾市) 

図−5 意識上の境界(柏原市) 

参照

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