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愛知県スモン検診における摂食嚥下機能検査

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Academic year: 2021

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(1)

A. 研究目的

平成 28 年度愛知県三河地区スモン検診で摂食嚥下 機能検査を実施した。 同様の検査を平成 26 年に実施 しており、 経年変化を知る為に比較を行ったので報告 する。

B. 研究方法

三河地区の集団検診参加者 10 名 (男 1 名、 女 9 名) に対しての問診、 他覚的検査として反復唾液検査、 30 ml 水飲み検査を実施した。 問診項目は 1. 食事や飲 み込みに関しての悩み 2. 現在の食事形態 3. 誰が 準備しているか 4. 食事に要する時間である。 自覚 症状の有無と 30 ml 水飲み検査はコップに 30 ml の常 温水を入れ、 いつもと同じように飲んでもらい、 その 様子を観察評価した (表 1)。 反復唾液検査は 30 秒間 で何回の空嚥下を実行できるか計測し 3 回以上可能を 正常とした。 空嚥下は、 口腔内に唾液しかない状態か らの随意的な運動によるものであり、 口腔内の環境に より結果が左右されやすい1) 2)ため、 口渇状態で実施す

ることを避け、 水飲みテスト後に実施した。 対象者に は研究内容について十分説明を行い、 同意を得た。 な お、 本研究は国立病院機構鈴鹿病院倫理審査委員会の 承認を受けて行った。

C. 研究結果

問診項目 1. 食事や飲み込みに関しての悩みが 「な い」 と答えたのは 4 名、 「ある」 は 6 名で 「水分でむ せる」 「喉に引っかかる感じがする」 「食材によって食 べにくい」 という嚥下困難感を訴えた。 項目 2. 食事 形態に関して全員が普通食形態であった。 項目 3. 誰 が準備しているかという問いに 「自分」 と答えた患者 は 4 名、 「配偶者、 嫁などの家族」 は 5 名、 「定期的に

― 202 ―

愛知県スモン検診における摂食嚥下機能検査

久留 聡 (国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)

佐藤 伸 (国立病院機構鈴鹿病院 リハビリテーション科) 近藤 修 (国立病院機構鈴鹿病院 リハビリテーション科) 小長谷正明 (国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)

研究要旨

平成 28 年度愛知県三河地区スモン検診で摂食嚥下機能検査を実施した。 同様の検査を平 成 26 年に実施しており、 比較を行ったので報告する。 集団検診参加者 10 名 (男 1 名、 女 9 名) に対して問診、 反復唾液検査、 30 ml 水飲み検査を実施した。 問診では嚥下困難感を訴 える割合が前回 25%から今回 60%と変化した。 30 ml 水飲み検査は前回と今回共に全員が正 常であった。 前回の反復唾液検査で 「注意が必要」 とされたのは 33.3%で、 今回 20%と減少 した。 前回と今回の検診で、 自覚症状と他覚所見にズレが生じていた。 今後、 加齢や様々な 要因により摂食嚥下機能の変化が予想されることから、 この摂食嚥下機能検査を継続して実 施するによって、 直接自覚症状を聴き、 検査を行うことで、 その人に適したアドバイスを行 うことが可能であり、 QOL の維持に役立てることができると考える。

表 1 水飲み検査判定

判 定

1. 嚥下なし。

2. 嚥下あり、 むせないが呼吸変化あり。

3. 嚥下あり、 むせるか湿性嗄声あり。

4. 嚥下あり、 むせない、 湿性嗄声もなし。

(2)

宅配を利用」 は 1 名であった。 項目 4. 食事に要する 時間はすべて患者が 30 分以内で食べ終わるという回 答であった。 30 ml 水飲み検査で注意が必要である患 者は 1 名であった。 反復唾液検査において規定の 30 秒で 2 回以下の患者は 1 名であった。 嚥下困難感を訴 えた 6 名のうち全員が今回の検査では異常はなかった (表 2)。 自覚症状を訴えた患者や検査で注意が必要と 判定された患者には、 考えられる理由を伝え、 誤嚥の

リスクを少なくするため食事形態や食事時間の調整な ど対応策を伝え、 自宅でできる訓練を提案した。 平成 26 年度検診との比較では問診項目 1 は 12 名中 3 名が 不安や困難感を訴えており、 嚥下困難感を訴える割合 が前回 25%から今回 60%と変化した。 項目 2 の食事 形態、 項目 3 の食事の準備、 項目 4 の食事に要する時 間は前回と今回で変化は見られなかった (表 3, 4)。

30 ml 水飲み検査は前回と今回共に全員が正常であっ

― 203 ― 表 2 検査結果のまとめ

悩みと対策 形態 準備 時間 水飲み検査 反復唾液検査

A (女) 80 歳 硬いものが引っかかる感じ 普通 嫁 30 分以内 異常なし 4

B (女) 72 歳 なし 普通 宅配 20 分程度 異常なし 5

C (女) 76 歳 時々むせる 普通 自分 30 分程度 異常なし 3

D (女) 87 歳 食材によっては食べにくい 普通 嫁 15 分程度 異常なし 4

E (女) 50 歳 唾液が少ないので口腔内に引っかかる 普通 自分 30 分程度 異常なし 4 F (男) 74 歳 よく気管に入る。 喀出すると食べ物が出る 普通 家族 20 分程度 異常なし 5

G (女) 72 歳 水分でむせることが多い 普通 嫁 15 分程度 異常なし 6

H (女) 77 歳 なし 普通 自分 20 分程度 異常なし 3

I (女) 83 歳 なし 普通 自分 30 分程度 異常なし 1

J (女) 88 歳 なし 普通 家族 15 分程度 判定③ 4

表 3 結果の比較①

悩み (前回) 悩み (今回) 形態 (前回) 形態 (今回)

A (女) 80 歳 硬いものが引っかかる感じ 硬いものが引っかかる感じ 普通 普通

B (女) 72 歳 なし なし 普通 普通

C (女) 76 歳 なし 時々むせる 普通 普通

D (女) 87 歳 なし 食材によっては食べにくい 普通 普通

E (女) 50 歳 魚介類がつかえる 唾液が少ないので口腔内に引っかかる 普通 普通

F (男) 74 歳 なし よく気管に入る。 喀出すると食べ物が出る 普通 普通

G (女) 72 歳 なし 水分でむせることが多い 普通 普通

H (女) 77 歳 なし なし 普通 普通

I (女) 83 歳 なし なし 普通 普通

表 4 結果の比較②

準備 (前回) 準備 (今回) 時間 (前回) 時間 (今回)

A (女) 80 歳 嫁 嫁 30 分以内 30 分以内

B (女) 72 歳 宅配 宅配 20 分程度 20 分程度

C (女) 76 歳 自分 自分 30 分程度 30 分程度

D (女) 87 歳 嫁 嫁 15 分程度 15 分程度

E (女) 50 歳 自分 自分 30 分程度 30 分程度

F (男) 74 歳 家族 家族 20 分程度 20 分程度

G (女) 72 歳 嫁 嫁 15 分程度 15 分程度

H (女) 77 歳 自分 自分 20 分程度 20 分程度

I (女) 83 歳 自分 自分 30 分程度 30 分程度

(3)

た。 前回の反復唾液検査で 「注意が必要」 とされたの は 33.3%で、 今回 20%と減少した (表 5)。 前回と今 回の検診で、 自覚症状はあるが他見所見がない例が 6 例、 自覚症状はないが他覚所見がある例が 1 例あり、

自覚症状と他覚所見にズレが生じていた。

D. 考察

自覚症状と他覚所見のズレに関するはっきりした理 由は不明であるが、 自覚症状があるが他覚所見がない 理由として、 検査時にいつもより注意して飲み込むこ とで異常が検知されなかった false negative が考えら れ、 自覚症状がなく他覚的検査で異常が見られた理由 として、 加齢により嚥下機能がゆっくり低下していく ため代償作用が働き、 自覚症状がなかった。 また検査 で 緊 張 し て し ま い 結 果 が 悪 く で た false positive な ど が考えられた。 前回より自覚症状を訴える患者が増え、

スクリーニング検査の結果が良くなった要因は、 自覚 症状に関しては加齢による症状の出現や検診における 嚥下機能検査を通じた啓発で、 日頃から自分の摂食機 能を意識してきたことも考えられる。 スクリーニング 検査の結果に関しては検診時に患者に対し日頃の口腔 衛生保持の意識付けを行ったこと、 齲歯治療や義歯装 着など口腔内健康状態が改善された、 前回の検診時に 指導した自宅でできる摂食嚥下機能訓練を実施したな どが考えられた。 どちらにしても、 これだけで判断し てしまうことは危険であるので、 今後の検診ではさら に細かく患者の状態を聴き、 必要であれば嚥下造影検 査の提案をすることが重要であると考えた。

E. 結論

自覚症状を訴えた患者に関しては、 スクリーニング 検査の結果が正常であっても対応策や自宅でできる訓 練などのアドバイスをおこなったが、 今後も加齢や様々 な要因により摂食嚥下機能の変化が予想されることか ら、 この摂食嚥下機能検査を継続して実施するによっ て、 直接自覚症状を聴き、 検査を行うことで、 その人 に 適 し た ア ド バ イ ス を 行 う こ と が 可 能 で あ り 、 QOL の維持に役立てることができると考える。

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) 西尾正輝:摂食・嚥下障害の評価と治療, 理学療 法科学 16(1):5-16, 2001

2 ) 小口和代, 才藤栄一, 水野雅康, 馬場尊, 奥井美 枝 , 鈴 木 美 保 : 機 能 的 嚥 下 ス ク リ ー ニ ン グ テ ス ト

「反復唾液テスト」 (the Repetitive Saliva Swallow- ing Test: RSST) の 検 討 (1) 正 常 値 の 検 討 , リ ハ ビリテーション医学 2000;37;375-382

― 204 ― 表 5 結果の比較③

水飲み検査 (前回) 水飲み検査 (今回) 反復唾液検査 (前回) 反復唾液検査 (今回)

A (女) 80 歳 異常なし 異常なし 2 4

B (女) 72 歳 異常なし 異常なし 4 5

C (女) 76 歳 異常なし 異常なし 2 3

D (女) 87 歳 異常なし 異常なし 2 4

E (女) 50 歳 異常なし 異常なし 4 4

F (男) 74 歳 異常なし 異常なし 3 5

G (女) 72 歳 異常なし 異常なし 3 6

H (女) 77 歳 異常なし 異常なし 3 3

I (女) 83 歳 異常なし 異常なし 1 1

参照

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