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アルコール依存症者の否認と家族関係の捉え方に関する研究ー動的家族画による検討ー [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)アルコール依存症者の否認と家族関係の捉え方に関する研究 −動的家族画による検討− キーワード:アルコール依存症者,否認,家族関係,動的家族画 人間共生システム専攻 篠原 光代 問題と目的. 効果的だと述べている。DRS では主に否認している内容. アルコール依存症者は,飲酒欲求の抑制障害を持ち続. を段階として提示しているが,回復している面を支持し. けるため治癒することはないが,生涯断酒を続けさえす. 促進するという援助の可能性について検討するために. れば,回復状態を維持することができる。回復状態を維. 「気づき(awareness) 」の視点を重視する必要があると. 持するためには自助グループが大きな役割を担っている. 思われる。本研究では「気づき」を, 「自らの抱えている. が,専門家の援助が相補的になされることが望ましいと. 現実や問題性を認識し自覚している状態および,否認し. される(斎藤,1985) 。しかし,彼らの多くは否認(denial). ていたものに気づく態度」とする。. が強く, 心理的援助の必要性を認めず拒否的であるため,. また米田(1999)は,アルコール依存症者が断酒を決. 現在広く行われている教育的プログラムが効果的ではな. 意するのは家族関係を内省し,責任を自覚することによ. く,退院後も自助グループにつながらない者もいる。. ってであるとし,それらを持ち続けることで断酒の継続. Blume(1978)は,アルコール依存症者の否認を「飲酒. が可能になると述べている。しかし,否認の強いアルコ. 問題の存在そのものに対する否認(第一の否認)と自分. ール依存症者が家族関係を振り返り,自発的に修復を試. の対人関係障害や不適応の総てを飲酒問題に起因するも. みることは難しい。そこで,本研究ではその援助のひと. のと考え, 断酒の達成で総てが解決したとみなす態度 (第. つとして,描画を取り上げる。描画は自己洞察の手懸か. 二の否認) 」としている。この第一,第二の否認は周囲の. りをもたらすことや,自身の問題意識や気づきが言語化. 人や援助者,特に家族に怒りや無力感などを抱かせ,回. されやすくなると言われている(村瀬,1996) 。またその. 復への協力体制が築きにくい一因となる。. 中でも,動的家族画は描画の中に動きが導入されたこと. そこで,否認を和らげ,自身がアルコール依存症であ. で家族力動が投影されてくるとされる(加藤,1986) 。そ. ることや対人関係上の問題に気づいていけるような援助. のため,動的家族画の描画の特徴と動的家族画を通して. が必要である。その際,Wallace(1985)がクライエン. 言語化された家族関係について検討することでアルコー. トの問題にセラピストが早い段階で直面化させ,防衛を. ル依存症者の家族関係の捉え方を理解していくこととす. 剥ぎ取ってしまうことの危険性を指摘しているように,. る。なお,否認により,動的家族画における表現と現実. 援助者は現在の否認の状態を的確に見立て,直面化のペ. の家族関係とのずれが予想されるため,個別事例を通し. ースを考えながら関わっていく必要がある。. て総合的に理解していく必要があるだろう。. 否認のアセスメント法で代表的なものには,Denial. 以上から本研究では,アルコール依存症の否認の段階. Rating Scale(DRS:Goldsmith et al,1988)がある。. 評定表を作成し,否認の段階による家族関係の捉え方の. これは,否認が強く,気づきが少ない段階から,否認が. 違いを動的家族画を通して検討することを目的とする。. 弱く,気づきが多い段階までの8段階を,臨床家の面接 により評定するものである。猪野ら(2001)は,DRS の信頼性,妥当性が高いものだとしながらも,一方で,. 研究1: アルコール依存症者の否認の段階評定表の作成 目的. 実際評定を行う際,評定の対象となる患者の具体的言動. アルコール依存症者の否認の段階を捉えるため,DRS. や考え方の評定基準が不明確であるとしている。DRS で. を改訂し, 援助的に有効な否認の段階評定表を作成する。. 不十分な点を先行研究の視点で補いつつ,否認があらわ れる領域(場面・対象など)にそって把握し援助的に展 開できる指標が求められている。また,Berg et al(1992). 方法 DRS を翻訳した文章を文節単位に区切り,臨床心理学. はアルコール依存症者への援助において, 「飲まない」と. を学ぶ大学院生 2 名と筆者で KJ 法を行い,領域に分類. いった問題の不在を援助目標にするよりも,何か他のこ. した。その後,Denial Awareness Scale(猪野ら,2001) ,. との存在を目標とし,できていることに目を向ける方が. 斎藤(1985) ,福田(2003)から家族関係に関する項目.

(2) や具体的言動を抽出し,レベル,領域ともに評定者間一. 難しい。レベル5∼8では自己内省の仕方や援助者との. 致率が 75%以上のものを評定表に追加した。アルコール. 距離のとり方が移行する。断酒することが目標になって. 依存症者への援助に 5 年以上携わる臨床心理士 3 名によ. いた状態(レベル5,6)から現実的対応の工夫ができ. り,作成された評定表についての内容的妥当性が確認さ. (レベル7) ,自然に自己内省できるようになる(レベル. れた。. 8) 。 4.本評定表から見られた援助的示唆. 結果と考察 1.否認の領域の分類 DRS は,①自己への向き合い方,②家族や周囲の人と の関係, ③援助者との関係の3カテゴリーに分類された。 2.否認の段階評定表の命名. 本評定表ではレベル5から断酒の必要性を受け入れ ている。断酒の必要性を認めることができているかとい う視点は,第一の否認を切り抜けているか,協力的援助 目標が立てられるかという意味で非常に重要である。 本評定表は言動が具体的になったことに加え,気づき. それぞれの段階ごとに何を「否認」していて,何に「気. の視点を重視したため,現実生活での関係,援助関係を. づき」を得ているのかを丁寧に追っていくことは,否認. 見直せるものであり,アルコール依存症者への援助にお. の評定表の援助的活用のために大切であると思われたた. いて大切な「根気よく良心的な対応」(猪野,1996)を. め,両視点から段階名を新たに命名した(表 1 参照) 。. 実践していく際に重要な手がかりとなると思われる。. 3.領域ごとの段階の移行について(表1参照) 1)自己への向き合い方 自己への向き合い方の領域においては,飲酒問題を抱 えていることに気づき,アルコール依存症である自分に 向き合っていく。問題は全くないとするレベル1から, レベル2∼4では自身の飲酒問題に徐々に気づいていく。 しかし,ここまでは,アルコール依存症であると認めて いない第一の否認の状態である。その後,対人関係問題 も含めたアルコール依存症の理解(レベル4∼6)が深 まり,レベル7と8ではソブラエティ(しらふで生きて いく新しい人生)が実践されていく。. 段階. 表1 否認の段階評定表の一部と段階についての解釈  各否認の領域の否認のあらわれ方 自己への向き合い方 家族や周囲の人との関係 援助者との関係. 否認/気づき.       家   レベル 飲酒関連性の否 族 飲 2 認 へ 酒 の 問 迷 題 惑 の の 気 飲酒によって づ お酒は自分も 気 起きてきた問 き 悪かったが, づ 飲酒に 題が あること き 家族や周囲 レベル 飲酒問題の重 よる問題 は認めるが, の人も悪い点 3 大性の否認 性の気 そ の 問 題 は がいっぱい づき 自分 でどうに あったと考え か できると る 思っている 飲酒 以外 の問 題性 の気 づき. 2)家族や周囲の人との関係 家族や周囲の人との関係の領域においては,家族への 迷惑をどう捉えるか,家族への償いや具体的取り組みの. 飲酒問題の. レベル 自己帰属性 4. の否認. 飲酒に関する 問題は否定 するが,健康 上の問題につ いては話す. 飲酒に大きな 飲酒問題 問題があるこ の重要性 と,過去 に飲 の気づき 酒量を調節で きなか ったこ とを認める. 意識についての気づきが進む。レベル1では家族には迷 惑をかけたことは一度もないと否定するが,だんだん家 族成員について話し始め(レベル2∼),家族への迷惑. 飲酒による家 族への影響 はない 子どもについ ての心配をす る。家族や周 囲の人が自 分には問題 はないのに酒 をやめさせよ うとしたと考え る. レベル 問題そのものの全面的な 自分には何も 1 否認 問題がない. 飲酒問題 レベル の自己責 5 任性の否 認. の気づきの程度が変化する(レベル2∼5)。そして,. お酒をやめら れ ないこと, 断酒の必要 飲酒のために 性の気づき 生活ができな くなることを認 めている.     ア ル コ ー ル 依 存 症 の 理 解. 関係をつくりなおす努力を積極的には行わない(レベル 6)状態から具体的な工夫を行い,感謝する気持ちがで てくる(レベル7,8)というように,家族に対する意. 具体的 取り組み. ただ飲酒をし ないことが ア. 性の否 認. 症の回復だと 思っている. しらふで生きる レベル の必要 ルコール依存 6 重要性の気づき. 識の深まりが見られる。 3)援助者との関係 援助者との関係の領域においては,援助者とのやりと りの中で課題となるものが移行する。断酒の必要性を認 めていないレベル1∼4では,拒否的態度があらわれる 内容が異なる。お酒(レベル1) ,アルコール依存(レベ ル2) ,病気としてのアルコール依存症(レベル3)を話 題にしようとすると防衛的,拒否的になり,レベル4で は自身をアルコール依存症だと結び付けて捉えることが. お酒を飲まず 自己 にしらふ で生 内省 きていくことに 社会生活での難し 必死に取り組 レベル の重 7 要性 さと工夫の気づき むが,過去や の否 現在を深 く内 認 省することは まだできない 飲酒について の無力さを認 めた上で,お レベル 過去-現在-未来の自分 酒のない新し 8 への気づき い生活に成功 し,意 味 を見 出している.   ソ ブ ラ エ テ ィ. 家族や周囲 の人に迷惑を かけたことを 話すこともあ るが,その程 度を軽んじて いる. お酒の話に拒 否的になる. アルコール依 存を話題にす ると拒否的に なる. アルコール依 存症を話題に すると防衛的 になる.     拒 否 的 態 度 が あ ら わ れ る 内 容 の 変 遷. 家族や周囲 の人 に感謝 し,自 分 も力 になりたいと 思っている. 否認. アルコール依 存症を話題に するといった んは受け止め たかのように 見えるが,他 人事のように 扱う 自分だけでは 手に負えない と感 じている が,援助者に ゆだね ,自 ら 具 体 的 に対 応するわけで はない。.     現 実 的 対 応 や   自   生活をたてな 家 お酒に直接関 己 おすための努 族 連する問題以 内 力を最小限し に 外 の 内 省 は 省 か行わない 対 深まらない。 の 深 す ま る り 意 お酒で迷惑を 識 断酒の継続 の かけたの で, や,生活上の 家族や周囲 深 問題を解決す の人に償いを ま ること,社 会 り しなければな 的スキルには らないと思 っ 焦点があたる ている 飲酒による家 族への迷惑を 考える. 断酒の 必要性. 自然に自己 内省が始まる. 受容.

(3) 研究2:否認の段階による動的家族画を通した. に分類されたが,未来は1名と少なく,大過去か現在に近. 家族関係の捉え方の検討. いかを分類することが入院中,通院中の対象者に適当と. 目的. 思われたため,大過去と近過去・現在の2水準に分類し. 否認の段階によるアルコール依存症者の家族関係の. た。断酒の必要性を認めているかによる直接確率計算を. 捉え方の違いを,動的家族画の「描画の特徴」と「言語. 行ったところ,〔時期:大過去,近過去・現在〕におい. 化された家族関係の特徴」から検討する。また,各否認. ,否認群は大過 て,人数の偏りは有意であり(p=.004). 段階に代表的な事例を抽出し,動的家族画から得られた. 去を描くことが多いことがうかがえた(表2参照) 。. 家族関係の捉え方と,現実での家族関係のあり方との適 合について,事例の個別性に則し詳細に検討する。. また,結果は有意でなかったが,動的家族画の教示は 理解したものの,家族を描けず自分のみ描画した者が否 認群に3名いた(以下の分析では,この3名を除いた28. 方法. 名を対象とする)。しかし, 〔家族間相互作用:有,無〕 ,. 1.調査対象. 〔自分と家族の大きさの違い:小さい,特徴的でない〕 ,. 精神科に外来通院または入院中のアルコール依存症 者31 名(男性23名・女性8名)。平均年齢52.7歳 (SD=12.9)。 2.調査内容 1)動的家族画(Kinetic Family Drawing) <あなたも含めて,あなたの家族の人たちが何かをし ているところの絵>を描くよう教示した。描画後,何を しているところか場面の説明を求め,①時期,②登場人. 〔自分の向き:正面,横顔,背面〕については有意な人 数の偏りは見られなかった。 表2 断酒の必要性を認めているかによる描画時期の人数. n 16 14 30. 断酒の必要性 否 認 受 容 合 計. 大過去. 近過去・現在. 11 2 13. 5 12 17. 2.否認による言語化された家族関係の特徴の検討. 物は「自分」に対してどう思っているか,③「自分」は. 描画中に描かれた家族が<あなたに対してどう思っ. 登場人物に対してどう思っているか,④現在家族に対し. ているか>への回答について,家族から自分に対する情. てどんな気持ちがしているかを尋ねた。. 動的・認知的評価が言及されるものを, “家族の自分への. 2)否認のアセスメント. 関心有”とし,外的に観察可能な行為や事象の説明にと. 研究1で作成した否認の段階評定表を使用した。本人 に飲酒に対する考え方(お酒を上手に飲むことはできる. どまっているものは, “家族の自分への関心無”に分類し た。自分から家族に対しても同様とした。. と思うか,お酒のない生活を続けるための工夫など)の. 断酒の必要性を認めているかによる直接確率計算を行. 10項目を尋ね,日常での治療態度と照らし合わせ,アル. ったところ, 〔家族の自分への関心〕の有無の人数の偏り. コール・グループを担当する臨床心理士や精神保健福祉. ,受容群は家族の自分への が有意傾向であり(p=.051). 士と筆者で協議して評定した。. 関心を言語化する者が多いことがうかがえた (表3参照) 。. 3.実施手続き. 〔自分の家族への関心〕の有無の人数の偏りは有意では. 2006年10月∼12月に個別面接を行った。個別面接に対 して抵抗することが予想される者に対しては3∼5名の 集団で実施した。 結果 否認の段階を評定したところ,レベル1の者は調査依 頼に拒否し,本研究の対象とはならなかった。本研究で. なかった。 表3 断酒の必要性を認めているかによる家族の自分への関心の有無の人数. 断酒の必要性. n. 否 認. 13 15 28. 受 容 合 計. 家族の自分への関心 有 無  5  8   12  3   17  11. 3.各否認段階の個別事例検討. は,1段階あたりの対象者の人数が少なかったため,ア. 事例の抽出においては,時期・関心の観点から,各否. ルコール依存症だと認め,断酒の必要性を認めているか. 認の段階において最も多かった特徴,発言及び記述をし. という第一の否認・第二の否認の違いを基準として断酒. た者のうち,家族との関係修復が今後課題になってくる. の必要性否認群(レベル2∼4),断酒の必要性受容群. と思われる者を選択した。. (レベル5∼8)と分類し,その違いを捉えた。 1.否認による動的家族画の特徴の検討 〔時期〕は大過去,近過去(1年以内),現在,未来. (事例は省略する).

(4) 考察 1.否認と動的家族画の特徴 断酒の必要性否認群(レベル2∼4)は,受容群(レ. 3.動的家族画による家族関係の捉え方の援助の可能性 レベル7の B 氏が動的家族画を通して 「親孝行したい」 と言語化したように,動的家族画を用いることで,自発. ベル5∼8)より大過去を描く者が多いことが明らかに. 的には語られることのなかった家族への意識を言語化す. なった。金子(1996)は, 「否認」とは「今・ここ」の. る者がレベル5以降に多く見られた。アルコール依存症. 他者との関わり(目の前の他者と時間と空間を共有する. 者は,家族への罪悪感などを持っているものの,それを. こと)を他者と共有していないことだと述べている。断. 自発的に言語化することはない。動的家族画を通した言. 酒の必要性を否認するレベル2∼4の者に大過去を描い. 語化は,自発的に葛藤的なものを表出していると捉える. た者が多かったのは,他者(ここでは描画行為自体や面. ことができ,動的家族画における表現(描画,言語化). 接者)との関わりの中で「今・ここ」を生きることが難. は変化への兆しであると思われる。家族との関係修復を. しいという特徴のあらわれだと考えられる。. 願い,向き合う準備ができている者は,時期や場面(現. また,断酒の必要性受容者(レベル5∼8)は,入院. 在や葛藤を表現する)が特徴的でもあるが,それらに注. 中の患者では外泊時の様子,通院者では現在の様子を表. 目しながら,描画を契機に表現された家族への謝罪の念. 現することがうかがえた。葛藤状況を抱えきれず回避し. やその関係性の中での葛藤を丁寧に拾うことが大切であ. てしまいアルコールにのめりこんだ状態から回復するた. ろう。それらの気持ちを自ら表現していく中で,本人の. めには,さまざまな現実に気づいていく必要がある。現. ペースで次の段階の「気づき」が得られる可能性が示唆. 実に気づくことのできる心的構えが動的家族画において. された。. も現在に近い場面や葛藤状況を表現できることにつなが っていると思われる。. 総合考察. これらのことから,動的家族画の時期には家族関係と. 否認の段階評定表と家族関係の捉え方の援助的活用. の「向き合い方」が投映されていると考えられる。さら. について述べてきた中で,援助者が否認せざるを得ない. に, 大きさや家族間相互作用などの描画内容については,. 心的事情を理解しつつ,今の状態で何に焦点化できるか. まずアルコール依存症者がどのように家族関係と向き合. を考えることの重要性が示唆された。その否認への理解. っているかを検討した上で解釈する必要があることが示. の上で,否認との関連が見られた描画の特徴(時期)と. された。. 言語化されたもの(家族の関心,現在の家族への思い) の両方を総合的に理解し,どのように展開できるのかに. 2.否認と言語化された家族関係の特徴. ついて「気づき」の視点を重視して関わっていく必要が. 断酒の必要性受容者(レベル5∼8)は,家族の自分. あると思われる。アルコール依存症者にとって「家族関. への関心を言語化する者が多いことが示された。このこ. 係」は否認のあらわれる領域の一つである一方,アルコ. とは, 否認の段階表の家族や周囲の人との関係において,. ール依存症者をとりまく現実や現在の状況を的確に示し. レベル5から家族に対する意識の深まりが気づきとして. ている領域であり, 「今・ここ」で生きる可能性が残され. 進むことと関連していると考えられる。関心を言語化す. ている部分である。彼らが「今・ここ」で生きることが. るという視点の有効性が示唆されたとも言えるだろう。. できるように,現実にある家族の言動や思考についての. また,レベル2のA氏が,近過去(自分の入院のきっ. 捉え方において,自分のペースで意識と無意識,現実と. かけとなった場面と類似した場面)を描くものの,その. 過去をつなげる作業を促進していくことは重要なことで. 事実を受け入れることができず,楽観的に捉え,逆に娘. あろう。なお,動的家族画はアセスメントとして機能す. への不満として表出している一方で,同じく近過去を描. るだけでなく,気づきが多くなるにしたがって援助的に. いたレベル7のB氏は,同様の反省を求められるような. 展開することが可能になることが示唆された。. 葛藤的場面を描き,そこに罪責感が伴った表現をしてい. 今後は,DRSの適用と,レベルの移行について実用的. る。つまり,“そのとき”を「今・ここ」の自分がどう. に用いつつ検討していく必要がある。動的家族画を用い. 表現するかが重要であると思われる。描画の特徴と言語. た家族関係の捉え方への援助的可能性が示唆されたが,. 化されたものをくみあわせた上で,現実の状況と照らし. 本研究は横断的な検討にとどまっており,アルコール依. 合わせて家族関係の捉え方を理解していく必要があるだ. 存症の多様な背景や家族形態などを考慮すると,臨床事. ろう。. 例でその活用と展開について実際に検討していくことが 必要だろう。.

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